(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961744
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】歯科用根管切削具
(51)【国際特許分類】
A61C 5/42 20170101AFI20211025BHJP
【FI】
A61C5/42
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-72926(P2020-72926)
(22)【出願日】2020年4月15日
(62)【分割の表示】特願2015-253267(P2015-253267)の分割
【原出願日】2015年12月25日
(65)【公開番号】特開2020-108857(P2020-108857A)
(43)【公開日】2020年7月16日
【審査請求日】2020年5月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390003229
【氏名又は名称】マニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180264
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 貴大
(72)【発明者】
【氏名】那花 光一
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 晋作
【審査官】
小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05947730(US,A)
【文献】
特開2002−253578(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0320517(US,A1)
【文献】
特開平05−092013(JP,A)
【文献】
特開2007−236933(JP,A)
【文献】
特開2011−104766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
螺旋状の切刃からなり先端に向かって細くなっている形状の作業部と、
前記作業部の後端に連なるシャフトと、
前記シャフトの後端に連なり歯科用ハンドピースに接続される把持部と、を有し、
前記シャフトの断面は円形であって、前記作業部の後端に向かって細くなっており断面が円形で切刃を有しないテーパー部と、前記テーパー部の後端に連なり前記テーパー部の最太部の径と同一径のストレート部と、からなり、前記テーパー部の最細部の径が前記作業部の後端断面の外接円の径よりも小さいことを特徴とする歯科用根管切削具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科治療において根管の拡大・清掃に用いられる歯科用根管切削具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療において根管拡大や清掃に用いられる歯科用根管切削具としては、リーマやファイルがある(特許文献1参照)。リーマは主に回転させることで根管内を切削し、ファイルは回転させたり軸方向に押し引きしたりして根管内の切削をするものである。
【0003】
従来の歯科用根管切削具はステンレス製であったが、近年は湾曲した根管の治療に適した弾力性の高いニッケルチタンが用いられることがある。更に、動力としては手動式だけでなく、歯科用ハンドピース(エンジン)に接続して用いられる電動式も増えている。そして、電動式にすることで、治療を迅速に行うことを可能としている。
【0004】
図4は、歯科用根管切削具の斜視図である。ここに示した歯科用根管切削具100は、歯科用ハンドピースに接続して用いられるファイルである。この歯科用根管切削具100は、螺旋状で先端に向かって細くなっている形状の切刃からなる作業部101と、その作業部101の後端に連なるシャフト102と、そのシャフト102の後端に連なり歯科用ハンドピースに取り付けられる把持部103と、を有している。
【0005】
このような歯科用根管切削具の一般的な製造方法は、まず、細い線材から作業部になる部分をセンターレス加工機により一定のテーパー率(例えば、2/100等)になるように加工し、その後、刃溝研削機により作業部の切刃になる溝を形成する。ここで、太い線材から加工すれば、作業部になる部分のテーパーと、切刃になる溝とを同時に形成することが技術的には可能であるが、研削量が多く砥石を傷めやすいことから、細い線材からテーパー形成と切刃形成の2段階に研削するという方法を採用することが多い。ニッケルチタンファイルの場合は、特に砥石を傷めやすいので、細い線材から形成するのがよい。
【0006】
しかし、太い線材から形成する場合であれば、作業部の長さを長くできるという利点があるのだが、細い線材から形成する場合は、作業部の長さを長くできないという不利益がある。つまり、歯科用ハンドピースに接続して迅速に根管内を切削しようとしても、作業部の長さが短いので、切削物を根管から円滑に排出することが難しいという問題を有することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4247346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
斯かる事情に鑑み、本発明は、歯科用ハンドピースに取り付けて使用する歯科用根管切削具であって、根管内を切削して生じた切削物の排出を円滑に行うことができるものを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る歯科用根管切削具は、螺旋状の切刃からなり先端に向かって細くなっている形状の作業部と、その作業部の後端に連なるシャフトと、そのシャフトの後端に連なり歯科用ハンドピースに接続される把持部と、を有し、前記シャフトが、作業部の後端に向かって細くなっているテーパー部と、そのテーパー部の後端に連なりテーパー部の最太部の径と同一径のストレート部と、からなり、テーパー部の最細部の径が作業部の後端断面の外接円の径よりも小さいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シャフトにテーパー部を設けることで、作業部が切削した切削物を根管の外へ円滑に排出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】シャフトに螺旋溝を有する歯科用根管切削具であって、(a)斜視図、(b)はシャフトの拡大平面図である。
【
図2】シャフトにテーパー部を有する歯科用根管切削具であって、(a)斜視図、(b)はシャフトの拡大平面図である。
【
図3】作業部の後端断面を示す図であって、(a)は作業部断面が三角形の場合、(b)は作業部断面が円形の一部を切り取った形状の場合である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、シャフトに切削物の排出性を向上させる機能を付加した歯科用根管切削具である。以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、シャフトに螺旋溝を有する歯科用根管切削具であって、(a)斜視図、(b)はシャフトの拡大平面図である。
【0014】
この歯科用根管切削具10は、螺旋状の切刃からなり先端に向かって細くなっている形状の作業部11と、その作業部11の後端に連なり作業部11の後端断面の外接円と同一径のシャフト12と、そのシャフト12の後端に連なり図示しない歯科用ハンドピースに接続される把持部13と、を有するものである。つまり、歯科用ハンドピースに接続して使用される歯科用根管切削具10であって、ステンレス鋼製やニッケルチタン製等のファイルが該当する。
【0015】
ここで、シャフト12には、作業部11の切刃から連続する螺旋溝12aが形成されている。なお、その螺旋溝12aは、切刃の螺旋状よりも螺旋ピッチが大きいことにしたり、切刃の螺旋状よりも溝幅が大きいことにしたりすることで、切削物の排出性をさらに向上させることができる。ただし、螺旋溝12aの長さなどの詳細な形状を設計する際には、切削物の排出性と歯科用根管治療器具10の破断強度とのバランスを検討する必要がある。
【0016】
図2は、シャフトにテーパー部を有する歯科用根管切削具であって、(a)斜視図、(b)はシャフトの拡大平面図である。なお、テーパー部22aを設けず、シャンク22の全長を細い径にすると、切削物の排出性を向上させることはできるのだが、歯科用根管切削具20の破断強度は弱くなるため、テーパー部22aとすることで破断強度を担保している。
【0017】
この歯科用根管切削具20は、
図1で示したものと同様に、螺旋状の切刃からなり先端に向かって細くなっている形状の作業部21と、その作業部21の後端に連なるシャフト22と、そのシャフト22の後端に連なり図示していない歯科用ハンドピースに接続される把持部23と、を有するものである。
【0018】
ここで、シャフト22は、作業部21の後端に向かって細くなっているテーパー部22aと、テーパー部22aの後端に連なりテーパー部22aの最太部の径と同一径のストレート部22bと、からなる。
【0019】
そして、テーパー部22aの最細部の径は、作業部21の後端断面の外接円の径よりも小さいこととする。
図3は、作業部の後端断面を示す図であって、(a)は作業部断面が三角形の場合、(b)は作業部断面が円形の一部を切り取った形状の場合である。なお、当然この作業部21の後端21aの形状は例示であり、この二種類に限定されるものではない。
【0020】
ここで、作業部21は先端が細くなっているテーパー形状なので、作業部21の後端21aは、作業部21の最太部ということになる。そして、外接円21cというのは、その作業部21の後端21aの断面を内接する円のことであり、図では二点鎖線で示している。つまり、外接円21cは、
図3(a)のように作業部21の後端21aの断面形状が三角形などの多角形の場合は、その多角形の各頂点が円周上を通る円となる。また、
図3(b)のように断面形状が円の一部を切り取って切刃を形成しているような形状の場合は、その切り取られた一部を仮想的に埋めた円を外接円21cと考えればよい。
【0021】
なお、切削物の排出性を考えると、テーパー部22aの最細部の径22a1は、
図3(a)のように作業部の後端21aの断面が多角形の場合は、破線に示すような、その多角形の内接円くらいの径又はそれ以下の径にするのがよいと考えられる。同様に、
図3(b)のように作業部21の後端21aの断面が円の一部を切り取った形状の場合は、
図3(b)の破線に示すような、その切り取られた部分の底の位置に接するような径又はそれ以下の径にするのがよい。これらのような形状にすれば、螺旋状の切刃を通ってきた切削物を、滑らかにテーパー部22aに侵入させて排出することができるからである。
【0022】
まとめると、テーパー部22aの最細部の径22a1は、作業部の後端21aの外接円21cよりも小さい径であって、できれば、作業部の後端21aの内接円程度の径にするのがよい。ただし、最細部の径22a1が小さい場合には、歯科用根管切削具としての破断強度が弱くなるので、強度と排出性のバランスを考えた設計が必要となる。
【0023】
以上のように、本発明では、シャンクに螺旋溝やテーパー部を設けることで切削物の排出性を高めているので、基本的には、歯科用ハンドピースに取り付けるものが対象となっている。把手を設けて、手で動かすタイプの場合は、切削物の排出量がそれ程多くないため、螺旋溝やテーパー部を設けても排出を促す効果は小さいからである。ただし、手動の場合でも、切削物は排出されるので、本発明と同様の螺旋溝やテーパー部を設けても問題はない。
【符号の説明】
【0024】
10、20 歯科用根管切削具
11、21 作業部
21a 作業部の後端
12、22 シャフト
12a 螺旋溝
22a テーパー部
22a1 最細部の径
22b ストレート部
13、23 把持部