特許第6961758号(P6961758)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝エレベータ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6961758-エレベータ装置およびその制御方法 図000002
  • 特許6961758-エレベータ装置およびその制御方法 図000003
  • 特許6961758-エレベータ装置およびその制御方法 図000004
  • 特許6961758-エレベータ装置およびその制御方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6961758
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】エレベータ装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   B66B1/14 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-100662(P2020-100662)
(22)【出願日】2020年6月10日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政敏
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−222353(JP,A)
【文献】 特開2021−66600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00−1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
群管理装置による群管理が可能なエレベータ装置であって、
建屋の一角に設けられ、階床間を昇降運転される乗りかごと、
前記階床ごとに配置され、前記乗りかごを当該階床に着床させるための乗場呼び操作部と、
前記乗りかご内の荷重値を検出する荷重検出部と、
前記乗りかご内に配置され、当該乗りかご内を撮影する撮影部と、
前記乗りかご内の利用者に対し、乗降の案内を行う案内部と、
前記乗場呼び操作部の操作に応じて、次に停止しようとしている階床にて前記乗りかごを停止させることが可能な着床運転開始位置において、前記荷重検出部で検出された前記荷重値から当該乗りかご内の混雑状況を判断した結果、満員でない場合には、前記撮影部により撮影された撮影画像から当該乗りかご内の混雑状況を判断し、該乗りかごの出入口付近で混雑していることが判断されると、前記案内部より前記出入口付近での混雑を緩和させるための案内を行い、該案内を行っても前記出入口付近での混雑が緩和されない場合に、前記乗場呼び操作部が操作された階床での当該乗りかごの着床動作を無効とする制御部と、
を備えることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記乗場呼び操作部が操作された階床への到着時間が最も短い乗りかごに対する前記着床動作が無効化された場合、前記到着時間が次に短い乗りかごが選定し直されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記乗りかごのかご呼び操作が行われていない階床での乗場呼び操作があったことを判断すると、前記乗りかごの閉扉に伴って、前記荷重検出部による該乗りかご内の混雑状況の判断を開始し、満員でない場合に、前記撮影部による前記撮影画像から当該乗りかごの出入口付近での混雑状況を判断し、該混雑していることが判断される場合、当該乗りかごが前記着床運転開始位置に達するまでの間、前記案内部による前記出入口付近での混雑を緩和させるための前記案内を繰り返し行うように制御することを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のエレベータ装置の制御方法であって、
前記制御部は、
前記乗場呼び操作部の操作に応じて、次に停止しようとしている階床にて前記乗りかごを停止させることが可能な着床運転開始位置に、当該乗りかごが達するまでの間に、
前記荷重検出部で検出された前記荷重値から当該乗りかご内の混雑状況を判断し、
満員でない場合には、前記撮影部により撮影された撮影画像から当該乗りかご内の混雑状況を判断し、
該乗りかごの出入口付近で混雑していることが判断されると、前記案内部より前記出入口付近での混雑を緩和させるための案内を行い、
該案内を行っても前記出入口付近での混雑が緩和されない場合に、前記乗場呼び操作部が操作された階床での当該乗りかごの着床動作を無効とする
ことを特徴とするエレベータ装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、群単位での管理が可能なエレベータ装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デパートなどの大型の建屋の一角には複数台のエレベータが設置され、該エレベータを群管理するようにしたエレベータシステムが実用化されている。
【0003】
このようなエレベータシステムにおいて、満員通過運転機能を備えるエレベータが提案されている。
【0004】
満員通過運転機能とは、乗りかご内が利用者で満員になると、降者のいない途中の階床での乗場呼び登録を無視(無効化)して、該階床を通過させる。そして、該階床には別の乗りかごが着床されるように、複数台のエレベータの運行を管理することにより、利用者の便宜と運行の効率化とを図るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019−38683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来では、乗りかご内の総積載荷重を検出し、該総積載荷重が規定満員値(例えば、規定のかご内満員重量)を超えた場合に満員と判断するようにしている。そのため、例えば乗りかごの出入口付近に利用者が偏った状況で乗っていたりすると、満員でないにもかかわらず、乗場呼び登録により着床した階床の利用者が乗り込まないまま乗場ドア(ホール扉)が閉じられる場合があり、非効率であった。
【0007】
すなわち、乗場呼び登録により着床したにもかかわらず、利用者の乗降がない場合、昇降運転中の乗りかごを無駄に停止させることとなり、運行効率を低下させる要因となっている。
【0008】
本発明の実施形態は、昇降運転中の乗りかごが無駄に停止されるのを抑制でき、利用者の利便性と運行効率とを向上させることが可能なエレベータ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態は、群管理装置による群管理が可能なエレベータ装置であって、建屋の一角に設けられ、階床間を昇降運転される乗りかごと、前記階床ごとに配置され、前記乗りかごを当該階床に着床させるための乗場呼び操作部と、前記乗りかご内の荷重値を検出する荷重検出部と、前記乗りかご内に配置され、当該乗りかご内を撮影する撮影部と、前記乗りかご内の利用者に対し、乗降の案内を行う案内部と、前記乗場呼び操作部の操作に応じて、次に停止しようとしている階床にて前記乗りかごを停止させることが可能な着床運転開始位置において、前記荷重検出部で検出された前記荷重値から当該乗りかご内の混雑状況を判断した結果、満員でない場合には、前記撮影部により撮影された撮影画像から当該乗りかご内の混雑状況を判断し、該乗りかごの出入口付近で混雑していることが判断されると、前記案内部より前記出入口付近での混雑を緩和させるための案内を行い、該案内を行っても前記出入口付近での混雑が緩和されない場合に、前記乗場呼び操作部が操作された階床での当該乗りかごの着床動作を無効とする制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一実施形態は、エレベータ装置の制御方法であって、前記制御部は、前記乗場呼び操作部の操作に応じて、次に停止しようとしている階床にて前記乗りかごを停止させることが可能な着床運転開始位置に、当該乗りかごが達するまでの間に、前記荷重検出部で検出された前記荷重値から当該乗りかご内の混雑状況を判断し、満員でない場合には、前記撮影部により撮影された撮影画像から当該乗りかご内の混雑状況を判断し、該乗りかごの出入口付近で混雑していることが判断されると、前記案内部より前記出入口付近での混雑を緩和させるための案内を行い、該案内を行っても前記出入口付近での混雑が緩和されない場合に、前記乗場呼び操作部が操作された階床での当該乗りかごの着床動作を無効とすることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係るエレベータ装置が適用されるエレベータシステムの概略構成図。
図2】一実施形態に係るエレベータ装置の構成を示す概略図。
図3】一実施形態に係るエレベータ装置のかご内操作盤の構成例を示す概略図。
図4】一実施形態に係るエレベータ装置の動作を例示するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施の形態において、同一部分または関連する箇所には同一または類似の符号を付し、詳しい説明は省略する。
【0013】
(一実施形態)
図1は、一実施形態に係るエレベータ装置が適用されるエレベータシステム1の構成を概略的に示すものである。ここでは、複数の階床(フロア)を有する建屋の一角に設置された3台(3機または3基とも称する)のエレベータ装置Enを、一群として、群管理装置50により群単位で管理するようにした場合を例示している。
【0014】
すなわち、この一実施形態に係るエレベータシステム1は、例えば、3台のエレベータ装置En(第1エレベータE1,第2エレベータE2,第3エレベータE3)と、群管理装置50と、を備えてなる構成とされている。
【0015】
第1エレベータE1は、詳細については後述するが、建屋の各フロア間を昇降運転される乗りかご6-1を有している。該乗りかご6-1には、釣り合い錘7-1や第1エレベータ制御装置(制御部)10-1などが接続されている。また、該乗りかご6-1には、内部カメラ(撮影部)15-1や荷重検出部16-1などが設けられている。
【0016】
そして、乗りかご6-1が昇降運転される各フロアのホール(乗場)には、それぞれ、乗りかご6-1を当該乗場に着床させるための乗場操作盤(乗場呼び操作部)21-1などが配置されている。該乗場操作盤21-1の操作信号(乗場呼び信号)は、例えば、有線または無線通信により第1エレベータ制御装置10-1および群管理装置50に送られる。
【0017】
第2エレベータE2は、同様に、建屋の各フロア間を昇降運転される乗りかご6-2を有している。該乗りかご6-2には、釣り合い錘7-2や第2エレベータ制御装置(制御部)10-2などが接続されている。また、該乗りかご6-2には、内部カメラ(撮影部)15-2や荷重検出部16-2などが設けられている。
【0018】
そして、乗りかご6-2が昇降運転される各フロアの乗場には、それぞれ、乗りかご6-2を当該乗場に着床させるための乗場操作盤(乗場呼び操作部)21-2などが配置されている。該乗場操作盤21-2の操作信号(乗場呼び信号)は、例えば、有線または無線通信により第2エレベータ制御装置10-2および群管理装置50に送られる。
【0019】
第3エレベータE3は、同様に、建屋の各フロア間を昇降運転される乗りかご6-3を有している。該乗りかご6-3には、釣り合い錘7-3や第3エレベータ制御装置(制御部)10-3などが接続されている。また、該乗りかご6-3には、内部カメラ(撮影部)15-3や荷重検出部16-3などが設けられている。
【0020】
そして、乗りかご6-3が昇降運転される各フロアの乗場には、それぞれ、乗りかご6-3を当該乗場に着床させるための乗場操作盤(乗場呼び操作部)21-3などが配置されている。該乗場操作盤21-3の操作信号(乗場呼び信号)は、例えば、有線または無線通信により第3エレベータ制御装置10-3および群管理装置50に送られる。
【0021】
乗場操作盤21-1,21-2,21-3は、各号機ごとに設けられる場合に限らず、複数機で共有するようにしても良い。
【0022】
群管理装置50は、第1エレベータ制御装置10-1、第2エレベータ制御装置10-2、および、第3エレベータ制御装置10-3にそれぞれ接続されて、第1エレベータE1、第2エレベータE2、および、第3エレベータE3を一群とし、群単位で管理する。
【0023】
該群管理装置50によって、本エレベータシステム1は、満員通過運転機能が実現されている。すなわち、昇降運転時には、利用者で満員の乗りかご6-1,6-2,6-3を、降者のいない途中のフロアでの乗場呼びに応答させず、該フロア(呼び階)を通過させる。こうして、乗場呼び登録中のフロアには満員でない別の乗りかごを着床させるとともに、満員の乗りかごを乗場呼び登録中のフロアに着床させないようにする満員通過運転を行わせることにより、利用者の便宜と運行の効率化とが図られている。
【0024】
特に、規定のかご内満員重量(規定満員値)を乗りかご内の総積載荷重値が超えず、満員と判断しない場合にも、例えば、乗りかごの出入口付近に利用者が偏った状況で乗っているような場合には、当該乗りかごに満員通過運転を行わせる。これにより、出入口付近に存在する利用者によって、乗場呼び登録により着床したフロアの利用者が乗り込むことができないような場合にも、昇降運転中の乗りかごを無駄に停止(着床)させることとなって、運行効率を低下させるといった不具合を解消できる。
【0025】
ここで、図2を参照しつつ、第1エレベータE1、第2エレベータE2、および、第3エレベータE3の構成について、エレベータ装置Enを例示して、より具体的に説明する。
【0026】
すなわち、第1エレベータE1、第2エレベータE2、および、第3エレベータE3であるエレベータ装置Enは、例えば図2に示すように、当該建屋の利用者が主に乗降する一般的なエレベータである。
【0027】
本エレベータ装置Enは、昇降路11の上部の機械室12に配置された巻上機13にメインロープ14が掛け渡され、ロープ14の一端に乗りかご6が、ロープ14の他端に釣り合い錘7が、それぞれつるべ式に吊り下げられている。
【0028】
乗りかご6は、各フロアの乗場20a,20b,…,20nの全ホール扉22a,22b,…,22nに対向して配置され、各ホール扉22a,22b,…,22nとともに開閉動作する乗りかご扉17を備えている。そして、例えば、乗りかご扉17の近傍には、搭乗者である利用者が行先階(目的階)を指定するかご呼び操作などを行うためのかご内操作盤40が設けられている。
【0029】
かご内操作盤40には、例えば図3に示すように、開ボタン41a、閉ボタン41b、行先階ボタン42、スピーカ(案内部)45、および、表示器46などが設けられている。開ボタン41aおよび閉ボタン41bは、乗りかご扉17の開閉時に使用される。行先階ボタン42は、行先階を指定するために使用される。スピーカ45は、音声案内を行う際に使用される。表示器46は、到着階(目的階)などを表示するためのものである。
【0030】
また、例えば図2に示すように、乗りかご6には、内部を撮影し、当該乗りかご6の利用者の混雑状況を把握するための内部カメラ(撮影部)15や、全利用者の重量(総積載荷重値)を検出する荷重検出部16などが設けられている。内部カメラ15は、例えば、乗りかご6の天井部分に設けられて、特に、乗りかご6の出入口(乗りかご扉17)付近のカメラ画像である撮影画像を取得可能とされている。
【0031】
なお、内部カメラ15の出力および荷重検出器16の出力は、無線、または、テールコード3を介して、エレベータ制御装置10に送られる。
【0032】
そして、各フロアには、乗場20a,20b,…,20nごとにホール扉22a,22b,…,22nが設けられている。各ホール扉22a,22b,…,22nの近傍には、利用者が行先方向を指定する乗場呼び操作を行うための乗場操作盤(乗場呼び操作部)21a,21b,…,21nや、乗りかご6の到着を知らせるための通知ランプ(図示省略)などが設けられている。
【0033】
一方、機械室12には、巻上機13のほか、テールコード3を介して、乗りかご6に接続されたエレベータ制御装置10が配置されている。エレベータ制御装置10は、例えば、運転制御部30、利用者検知部33、表示制御部35、および、音声案内部37などから構成されている。
【0034】
音声案内部37は、例えば、運転制御部30によって制御され、かご内操作盤40のスピーカ45から発せられる各種の音声案内を出力する。
【0035】
表示制御部35は、例えば、運転制御部30によって制御され、かご内操作盤40の表示器46に表示される各種の案内を出力する。
【0036】
利用者検知部33は、乗りかご6内の混雑の状況を判断するための荷重検出部16の出力(総積載荷重値)を、運転制御部30に提供するものである。また、利用者検知部33は、例えば、乗りかご6内の、特に、出入口付近での混雑の状況を判断するための内部カメラ15の撮影画像を、運転制御部30に提供するようになっている。
【0037】
運転制御部30は、いずれも図示していないが、例えば、乗場呼び登録やかご呼び登録のための登録部、規定満員値などを記憶する記憶部、などを有している。そして、群管理装置50の制御の下、かご内操作盤40や乗場操作盤21a,21b,…,21nの操作に基づいて巻上機13、表示制御部35、音声案内部37、乗りかご扉17などを制御し、乗りかご6の昇降運転(運行制御)を行うようになっている。
【0038】
また、運転制御部30は、利用者検知部33の出力(総積載荷重値)を規定満員値と比較し、乗りかご6内が利用者によって満員の状態か否かを判断する。
【0039】
また、運転制御部30は、利用者検知部33の出力(カメラ画像)を分析し、乗りかご6内の、特に、利用者の出入口付近での混雑の状況を判断する。
【0040】
なお、混雑の状況を判断する際には、荷重のみによらず、荷物やカート、ベビーカーまたは車いすなどが占有するスペース(専有面積)などを勘案することが望ましい。
【0041】
そして、運転制御部30は、詳細については後述するが、混雑状況の判断の結果を群管理装置50に出力し、必要に応じて、満員通過運転を実施するようになっている。
【0042】
次に、この一実施形態に係るエレベータシステム1の動作、特に、乗場呼び時の満員通過運転について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
まずは、最寄りの目的階に向けてエレベータ装置Enを昇降運転中に、該目的階までのいずれかのフロアの乗場操作盤21a,21b,…,21nが操作されて、「乗場呼び」が行われたとする。
【0044】
すると、群管理装置50において、乗場呼びが行われたフロアへの到着時間(着床までの応答時間)が最短であり、移動の方向が一致するエレベータ装置Enが選定されて、そのエレベータ制御装置10に対して、乗場呼び登録のための指示信号が出力される。
【0045】
これにより、該当するエレベータ制御装置10は、例えば、運転制御部30において、乗場呼び登録を行うとともに、乗りかご6内が利用者で満員か否かを判断する(ステップS1)。
【0046】
運転制御部30は、例えば乗りかご扉17の閉扉後に、利用者検知部33からの荷重検出部16の出力が規定満員値に達している場合に満員と判断し(ステップS1のYES)、群管理装置50にその旨(満員)を通知する。
【0047】
また、この通知とともに、例えば着床運転開始位置(後述する)において、先の乗場呼び登録を無視(無効化)し、巻上機13、表示制御部35、および、音声案内部37などを制御して、当該乗りかご6の乗場呼びが行われたフロアを通過させる満員通過運転を行う(ステップS2)。
【0048】
すなわち、エレベータ装置Enでは、乗場呼びから判別される呼び階が最上階や基準階(例えば、1階)または行先階ボタン42によるかご呼び操作により指定された目的階でない場合に、該呼び階に満員の乗りかご6を停止させない満員通過運転を行うように制御される。
【0049】
また、群管理装置50からは、満員通過運転される乗りかご6に代えて、乗場呼びが行われたフロアに着床させるエレベータ装置Enが選定し直されて、該エレベータ装置Enのエレベータ制御装置10に対して乗場呼び登録のための指示信号が出力される。つまり、乗場呼びが行われた呼び階に、満員通過運転される乗りかご6の次に早く到着するであろう、移動の方向が一致し、満員でないエレベータ装置Enが、着床動作を行う乗りかご6の候補として新たに選定される。
【0050】
一方、荷重検出部16の出力が規定満員値に達していない場合に、エレベータ制御装置10の運転制御部30は、当該乗りかご6が満員でないと判断する(ステップS1のNO)。
【0051】
次いで、運転制御部30は、例えば、利用者検知部33からの内部カメラ15の出力を分析し(ステップS10)、乗りかご6の出入口付近での混雑の状況を判断する(ステップS11)。
【0052】
そして、乗りかご6の出入口付近での混雑を確認できない場合には(ステップS11のNO)、巻上機13、表示制御部35、および、音声案内部37などを制御して、乗場呼びが行われたフロアに着床させるべく、乗りかご6を移動させる(ステップS3)。
【0053】
こうして、通常の昇降運転が行われて、乗場呼びが行われたフロアに乗りかご6が着床すると(ステップS4のYES)、エレベータ制御装置10の運転制御部30は、乗りかご扉17を開扉させて(ステップS5)、所定の時間、利用者の乗降を行わせる。
【0054】
所定の時間が経過する、もしくは、所定の時間内において、かご内操作盤40の閉ボタン41bが操作されると(ステップS6のYES)、エレベータ制御装置10の運転制御部30は、乗りかご扉17を閉扉させる(ステップS7)。そして、巻上機13、表示制御部35、および、音声案内部37などを制御して、通常の昇降運転を行い(ステップS8)、例えば、かご内操作盤40の行先階ボタン42により指定された行先階(目的階)のフロアに着床させるべく、乗りかご6を移動させる。
【0055】
これに対し、上記において、エレベータ制御装置10の運転制御部30が、カメラ画像から乗りかご6の出入口付近での混雑を確認した場合には(ステップS11のYES)、処理がステップS2に移行されて、上述の満員通過運転が行われる。
【0056】
すなわち、乗りかご6の出入口付近で多くの利用者の存在が確認された場合には、例えば、当該乗りかご6に対する乗場呼び登録を無効とし、該当するフロアを通過させる満員通過運転が行われるようになっている。
【0057】
例えば、乗りかご6の、特に出入口付近に利用者が偏った状況で乗っていたりすると、満員でないにもかかわらず、出入口付近の利用者が妨げとなって、乗場呼び登録により着床したフロアの利用者が乗り込むことができないような場合がある。このような場合においても、昇降運転中の乗りかご6を無駄に停止させることとなって、運行効率を低下させるといった不具合を解消できる。
【0058】
この一実施形態に係るエレベータシステム1においては、エレベータ装置Enとして、例えば3台のエレベータE1,E2,E3を一群として管理するようにしている。そのため、乗場呼び登録のあったフロアに対しては、群管理装置50の制御の下、満員でない別の乗りかご6を着床させることにより、利用者の利便性(便宜)を損なうことなしに、運行の効率化を図ることが可能となる。
【0059】
上記したように、一実施形態に係るエレベータシステム1によれば、たとえ満員でなくとも、乗りかご6の出入口付近に利用者が偏った状態で乗っている場合を満員と仮定して、満員通過運転が行われるようにしている。すなわち、内部カメラ15のカメラ画像から乗りかご6の出入り口付近での混雑が読み取れた場合を、満員通過運転の判断の条件の一つとして加えるようにしている。これにより、乗りかご6の無駄な着床(停止)動作を減少でき、運行効率の向上が可能とされる。
【0060】
(他の実施形態)
上述した一実施形態においては、乗りかご6の出入口付近で多くの利用者の存在が確認された場合に、満員かどうかにかかわらず、乗場呼び登録されたフロアを乗りかご6が通過する満員通過運転を行うようにした場合について説明したが、これに限定されない。
【0061】
すなわち、乗りかご6の出入口付近で多くの利用者の存在が確認されたものの、満員でない場合には、例えば乗場呼び登録のあったフロアに着床する以前に、スピーカ45から『乗る人がいます。奥へお詰め下さい。』などの音声案内(アナウンス)を行うようにしても良い。
【0062】
そして、例えば図4のステップS11において、乗場呼び操作が行われたフロアにて乗りかご6を安全に停止させることが可能な着床運転開始位置までの間に、該アナウンスによって扉前から利用者が移動し、乗りかご6の出入口付近での混雑が緩和されたことが確認できた場合には、満員通過運転を取りやめるようにしても良い。
【0063】
つまり、乗場呼び操作が行われたフロアに乗りかご6を着床させるために、例えば、定格の速度から停止のための減速を開始する昇降路位置(着床運転開始位置)に乗りかご6が達するまで、該アナウンスが繰り返し行われるようにする。そして、このアナウンスの結果により、昇降路位置のカメラ画像から、乗りかご6の出入口付近での混雑が緩和されたことが確認できない場合には着床動作を無効にして、満員通過運転を行う。
【0064】
逆に、昇降路位置のカメラ画像から、乗りかご6の出入口付近での混雑の緩和が確認できた場合には着床動作を無効化せず、満員通過運転を取りやめて、乗場呼び操作が行われたフロアへの停止運転を行わせるようにしても良い。
【0065】
これにより、本エレベータシステム1においては、利用者のスムーズな乗降が可能となり、乗場呼び登録により着床したにもかかわらず、利用者の乗降がない場合には昇降運転中の乗りかご6を無駄に停止させることになる、といった不都合を解消できる。
【0066】
なお、混雑を解消するための案内としては、音声に限らず、表示器46を用いて行うことも可能であり、音声案内と併用するようにしても良い。
【0067】
上述した一実施形態および他の実施形態においては、総積載荷重値を規定満員値と比較し、乗りかご6内が利用者によって満員の状態か否かを判断する機能を、群管理装置50が備えるようにしても良い。
【0068】
また、カメラ画像を分析し、乗りかご6内の、特に、利用者の出入口付近での混雑の状況を確認する機能を、群管理装置50が備えるようにしても良い。
【0069】
また、複数台のエレベータを群管理するようにしたエレベータシステム1を例に説明したが、これに限らず、1台のエレベータ装置Enが設置されてなる場合にも適用できる。
【0070】
また、乗場呼び時に、ホールにいる利用者の人数を検出し、乗りかご6に乗り込もうとする利用者の人数と、乗りかご6内の利用者の人数から割り出される乗りかご6に乗り込むことが可能な人数と、を比較する。そして、ホールにいる全ての利用者が乗りかご6内に乗り込むことができない場合に、上述の満員通過運転を行うようにしても良い。
【0071】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0072】
1…エレベータシステム、En(E1,E2,E3)…エレベータ装置、6(6-1,6-2,6-3)…乗りかご、10(10-1,10-2,10-3)…エレベータ制御装置(制御部)、15(15-1,15-2,15-3)…内部カメラ(撮影部)、16(16-1,16-2,16-3)…荷重検出部、21a,21b,…,21n(21-1,21-2,21-3)…乗場操作盤(乗場呼び操作部)、30…運転制御部、40…かご内操作盤、45…スピーカ(案内部)、50…群管理装置。
【要約】
【課題】昇降運転中の乗りかごが無駄に停止されるのを抑制でき、利用者の利便性と運行効率とを向上させることができる。
【解決手段】階床間を昇降運転される3台の乗りかご6-1,6-2,6-3と、階床ごとに配置され、各乗りかご6-1,6-2,6-3を当該階床に着床させるための乗場操作盤21-1,21-2,21-3と、各乗りかご6-1,6-2,6-3内に配置され、当該乗りかご6-1,6-2,6-3内を撮影する内部カメラ15-1,15-2,15-3と、内部カメラ15-1,15-2,15-3により撮影された撮影画像から当該乗りかご6-1,6-2,6-3内の混雑状況を判断し、該乗りかご6-1,6-2,6-3の出入口付近での混雑が判断されると、乗場操作盤21-1,21-2,21-3が操作された階床での当該乗りかご6-1,6-2,6-3の着床動作を無効とするエレベータ制御装置10-1,10-2,10-3と、を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4