【実施例】
【0052】
(実施例1)再生可能原料油
本実施例は、高速熱水反応器を使用する、再生可能ナフサ、ジェット、およびディーゼル燃料のための前駆体へのトリグリセリド系再生可能油の変換を対象とする。再生可能油は、植物、藻類、または獣脂から導出され、野菜屑油を含むことができる。高速熱水反応器プロセスは、脂肪酸が、より低い分子量のイソパラフィンおよび直鎖パラフィンに加え、アルキルシクロパラフィンおよびアルキル芳香族化合物に分解および環化されるという点において、水素化処理、水素化分解、および水素化異性化プロセス等の従来の変換技術と比較して、独特な利点をもたらす。再生可能油の変換はまた、従来のニッケル−モリブデン水素化処理触媒を使用して水素化することによって、対応するパラフィンに還元されることができる、有機酸副産物を産生する。再生可能原油の水素化処理および分画は、その石油対応物とほぼ同じ化学、物理、および燃焼特性を呈する、再生可能ナフサ、ジェット、およびディーゼル燃料をもたらす。
【0053】
本実施例は、本発明による、ベンチスケール定常流熱水高速反応器システム内で行われた。ベンチシステムは、容量が40〜100cc/分の再生可能油原料油であるように設計された。ベンチスケールシステムの構成および動作は、
図1に説明されるプロセスと同様であった。ベンチスケールシステムでは、高速反応器は、高速で電気的に加熱された。反応器設計は、試験された条件において、10,000を上回るレイノルズ係数をもたらした。反応器生成物流の随意の急冷が、本実施例のために採用された。反応器圧力は、圧力解放弁を使用して制御され、ガス産生が、湿式試験メーターを使用して測定された。実際の流量率が、測定され、実際の給水比が、ガス産生率およびレイノルズ係数とともに計算された。表1は、試験条件の概要を提供する。
【表1】
【0054】
本実施例のための原料油は、大部分が、約25%飽和および75%不飽和脂肪酸を含む、C18脂肪酸から成る、ナタネのようなトリグリセリド油であった。再生可能トリグリセリド系油の場合、変換は、より低い分子量の化合物に分解および環化される脂肪酸のパーセンテージとして定義され、合成原油生成物中に残る脂肪酸のパーセンテージによって判定される。本実施例では、50〜80%の全体的変換レベルが、評価された温度範囲(500−530℃)にわたって達成された。本実施例における目標は、ディーゼル産生を最大限にすることであって、これは、中変換レベルで最も達成された。90%を優に超える変換レベルは、達成されることができるが、より高い収率のオフガス、ナフサ、および灯油と、より低い収率のディーゼルとをもたらし得る。副産物ガス分析は、大部分が、C2−C6炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、および水素を含有していたことを示した。二酸化炭素は、脂肪酸の分的脱炭酸を介して発生された。水素は、芳香族化合物へのシクロパラフィンおよびシクロオレフィン化合物の脱水素化から発生される。
【0055】
本実施例における熱水反応器の生成物は、ニッケル−モリブデン触媒を使用して水素化処理され、水への変換によって、残りの酸素を除去し、高速反応器内での分解の間に形成されたオレフィン二重結合を飽和させ、166〜0.2以下の残留酸素含有量の良好な測定値である、総酸価(TAN)を減少させる。水素化処理後、酸素は、超低レベルまで除去され、オレフィンの大部分が除去された。
図6は、得られた水素化処理された生成物全体の炭素数分布を示す。本生成物分布は、高ディーゼル収率を達成するために望ましい。
図7は、ガスクロマトグラフィ−質量分光(GC−MS)分析によって判定される炭化水素タイプ別に水素化処理された生成物全体の組成物を提供する。本説明の目的の場合、「全体」とは、具体的分画、すなわち、ナフサ、灯油、ディーゼル、VGO、および同等物に蒸留する前の水素化処理された生成物全体を指す。生成物のほぼ30%は、シクロパラフィンおよび芳香族化合物から成っていた。環式化合物が高速熱水反応器内で形成されるだけではなく、シクロパラフィンおよび芳香族化合物も、有機酸および酸素を合成原油から除去するために、水素化処理の間、留保された。
【0056】
図7を参照すると、Pは、パラフィンを指し、Iは、イソパラフィンを指し、Oは、オレフィンを指し、CPは、シクロパラフィンを指し、COは、シクロオレフィンを指し、Aは、芳香族系を指す。
【0057】
水素化処理された油は、ナフサ、ジェット/灯油、およびディーゼル留出物に分画された。表2は、生成物タイプ別の(蒸留ユニット内で分画されたこれらの特定の分画に対して沸点範囲を伴う)質量および体積収率の概要を提供する。加えて、産生された再生可能ディーゼルは、夏用超低硫黄番号2−Dディーゼル燃料のASTMD975規格を容易に満たした。
【表2】
【0058】
表3は、重要なディーゼル燃料特性を提供する。高パラフィン濃度の本ディーゼルは、比較的に低比重および高セタン指数をもたらした。十分な環式異性体が、容認可能低温特性をもたらすように形成された。
【表3】
【0059】
加えて、他のタイプの再生可能油が、高速熱水ベンチおよびパイロット反応器システムを介して、合成再生可能原油に品質改良された。大豆油(代用原料油)が、広範囲の動作条件にわたって試験された。いくつかの大豆油試験からの結果は、
図8に要約される。これらの試験は全て、3200psigを上回る動作圧力および給油率の30−50%の給水濃度で行われた。前述で定義された変換は、40%〜90%を上回る範囲であった。動作温度は、500℃〜約600℃の範囲であった。滞留時間は、7秒〜65秒の範囲であった。レイノルズ係数は、11,500〜80,000の範囲であった。本概要は、変換率は、特定の原料油に適応するように、または生成物収率および規格要件を満たすように、変動されることができる、広範囲の条件にわたって得られることを実証した。
(実施例2)ナフサ原料油
【0060】
ベンチスケール定常流高速反応器システムが、加工および試験された。ベンチスケールシステムの構成は、
図1と同じである。ナフサ原料油が、植物油の触媒熱水分解によって産生され、次いで、水素化処理され、ナフサ、ジェット、および底存物に分画された。原料油特性は、表4に示される。本原料油は、8%芳香族化合物、19%シクロパラフィン化合物、および68%を上回る直鎖パラフィンを含有していた。ナフサ原料油は、高度に飽和し、臭素価1.0未満を有していた。
【表4】
【0061】
送給ポンプは、水およびナフサ原料の全体的送給率を制御した。原料混合物は、高速改質反応器の中に流動する前に、原料−流出液熱交換器によって予熱された。反応器システムは、試験された条件で10,000を上回るレイノルズ係数を達成するように設計された。反応器は、高放射熱束を得て、原料混合物を反応温度まで急速に加熱するように、電気的に加熱された。急冷水は、直接、反応器の直後の反応器流出液流に圧送され、改質反応を急冷させた。生成物は、原料−流出液熱交換器および生成物冷却熱交換器によってさらに冷却された。圧力は、圧力解放弁を使用して低下され、ガス産生が、湿式試験メーターを使用して測定された。表5は、試験条件および結果の概要を提供する。
【0062】
本実施例では、試験目的は、改質の程度およびベンゼンの産生を制御するための能力に及ぼす反応器平均温度および滞留時間の影響を実証することであった。4つの異なる条件が、評価され、試料が、各条件において収集され、GC−MSによって分析された。条件S5およびS6の場合の表面滞留時間は、64秒であって、条件S7およびS8の場合、それぞれ、50および49秒であった。実際の流量率が、測定され、実際の給水と急冷水の比は、ガス産生率、表面滞留時間、およびレイノルズ係数とともに計算された。
【0063】
直鎖パラフィン濃度は、全ての場合において、約50%減少された。環式化合物(シクロパラフィンとアルキルベンゼン)の総量は、ナフサ原料中の27%から生成物中の51〜59%と約2倍となった。条件S5(570℃)では、ベンゼンは形成されず、条件S6(581℃)では、4.7%ベンゼンが形成された。これは、ベンゼンの産生をともなわずに、有意な改質が達成されることができ、ベンゼン形成が、反応器温度によって容易に制御されることができることを実証した。同一の結果は、より短い滞留時間(条件S6およびS7)でも証明された。条件S6(575℃)では、ベンゼンは形成されず、条件S7(588℃)では、4.5%ベンゼンが形成された。臭素価は、比較的に高く、有意な量の高オクタン価オレフィン系化合物を示した。必要に応じて、臭素価(オレフィン濃度)は、非常に穏やかな水素化処理によって減少されることができる。
【0064】
GC−MSによる分析は、条件S5の間に形成された副産物ガスの炭化水素部分が約90%オレフィンであることを示した。オレフィン分画は、約23%プロペン、35%イソブテン、ならびに
図2および3に示される本発明の他の実施形態によるオリゴマー化のための非常に良好な原料油である他の線状およびシクロオレフィンの混合物を含有していた。
【表5】
【0065】
別の試験も、オクタン分析のために改質されたナフサの試料を得るために行われた。同一の原料油および類似プロセス条件が、前述のように採用された。生成物試料が、収集され、GC−MSによって分析された。
図9は、改質されたナフサ生成物の化学組成物を提供する。
図9では、npは、n−パラフィンを指し、iPは、イソパラフィンを指し、Oは、オレフィンを指し、iOは、イソオレフィンを指し、cOは、シクロオレフィンを指し、Nは、ナフテン/シクロパラフィンを指し、A=芳香族である。直鎖パラフィン濃度は、50%〜約30%まで減少された。芳香族濃度は、11%〜約28%まで増加した。ナフテン組成物は、若干減少し、約5%シクロオレフィンが形成された。これは、シクロオレフィンおよびナフテンがパラフィンおよびオレフィンから形成され、次いで、脱水素化され、対応する芳香族化合物を形成した改質機構の動作を示す。
【0066】
改質されたナフサは、水素化処理されず、したがって、非常に不飽和性であった。これは、表6に示されるように、2未満〜約40の臭素価の増加によって実証された。高臭素価は、オレフィンが、概して、対応するパラフィン化合物より高いオクタン価を呈し、自動車用ガソリンが、典型的には、臭素価約30を有するため、ガソリン混成資源として、改質されたナフサの価値に対して容認可能である。必要に応じて、改質されたナフサは、穏やかに水素化処理され、ほとんどの反応性オレフィン(ジエンおよびシクロオレフィン)を飽和させ、安定化したナフサ生成物を産生することができる。オクタン改良は、表6に示されるように、明らかに実証された。リサーチ法オクタン数(RON)は、17ポイントを上回って増加し、モーター法オクタン数(MON)は、10ポイント増加した。
【表6】
(実施例3)フィッシャー・トロプシュ法(FT)蝋
【0067】
本実施例は、高速熱水プロセスが、フィッシャー・トロプシュ法(FT)蝋を留出物生成物に変換するために使用されることができることを図示する。「鎖状ガス」または合成ガスを液体生成物に変換するための小型の(5000バレル/日未満)FTシステムに特に関心が高まっている。大型の市販のFTシステムは、水素化分解を使用して、高融点FT蝋を留出物に変換するが、水素化分解は、複雑性およびコストのため、小型のFTシステムには、魅力的ではない。
【0068】
FTプロセスからの生成物は、軽質ナフサからC80+蝋までの広範囲の分子量を呈する。典型的には、液体分画(C22より小さい)は、蝋から分離され、多くの場合、最高分子量蝋(C50より大きい)もまた、他の用途のために分離される。本実施例で使用されるFT蝋は、C20からC55蝋を含有する留出物生成物であって、IGI1339Aとして識別される市販の生成物である。IGI1339A蝋のアッセイは、表7に示されるシミュレートされた蒸留および結果を使用して概算された。本FT蝋の約96%は、ディーゼル沸騰範囲(650゜Fを上回る)を上回って沸騰し、したがって、より軽質の分
画が、既に除去されていることが明白である。本蝋は、ほぼ100%n−パラフィン化合物である。
【表7】
【0069】
真空軽油(VGO)および残油の100%を単回通過動作において分解することが可能である。しかしながら、本アプローチは、技術的または経済的いずれにおいても有利ではない。FT蝋の触媒水素化分解の間、ある技法は、部分的に、VGOおよび残油分画を分解し、留出物生成物を未分解材料から分離し、未分解部分をリサイクルし、より完全な変換を達成する。単一ステップにおいて蝋の全てを留出物に変換する試みは、概して、ガスおよび軽質ナフサへの過剰な二次分解をもたらし、より急速な触媒非活性化が、観察されるであろう。液体留出物収率を最大限にし、副産物ガス形成を最小限にするために、反応器条件は、単回通過において部分的変換をもたらすように選択された。
【0070】
本実施例のために使用されるベンチスケールシステムの構成および動作は、
図1に説明されるプロセスと同様であった。ベンチスケールシステムでは、高速熱水反応器は、高速で電気的に加熱された。本実施例では、20,000を上回る反応器レイノルズ係数が、条件試験された条件で達成された。反応器圧力は、圧力解放弁を使用して制御され、ガス産生が、湿式試験メーターを使用して測定された。実際の送給流量率およびガス産生率が測定され、滞留時間およびレイノルズ係数が計算された。表8は、試験条件の概要を提供する。
【表8】
【0071】
図10は、IGI1339A蝋原料油の炭素分布および高速熱水反応器から部分的に分解された生成物の炭素分布を示す。本グラフは、より低い分子量留出物への高分子量蝋の有意な変換を示す表現を提供する。
【0072】
アッセイが、FT蝋生成物に行われ、その結果は、表9に提供される。原油は、原油を特性評価するために、精製産業によって典型的に使用される留分に分画することによって特性評価された。ASTMD2887によってシミュレートされた蒸留によって判定された各留分温度および体積は、表9によって提供される。FT蝋生成物はまた、ASTMD2892蒸留によっても分画された。さらなる分析のために、軽質および重質ナフサ分画は、組み合わせられ、灯油およびディーゼル留出物は、組み合わせられた。
【表9】
【0073】
部分分解の変換目的が、明確に実証された。VGOおよび残油分画は、原料の96%から生成物の45.7%に減少され、すなわち、52%の減少であって、生成物の21.2%は、ナフサであって、生成物の33.2%は、灯油およびディーゼル沸騰範囲内である。
【0074】
表9における炭化水素タイプ分析は、有意な量のオレフィンおよびいくつかのイソオレフィンおよびシクロオレフィンの形成を示す。ナフテンおよび芳香族化合物の形成は、本実施例の場合、試験された条件では、低かった。本技術のある用途の場合、品質改良された生成物の高オレフィン含有量は、水素化処理と統合された高速改質器を使用して、
図4に描写されるような本発明の別の実施形態に従って、付加的処理によって、パラフィンに変換されることができる。本発明の統合された改質器実施形態では、ナフサの一部は、高水素濃度(50〜75%)を有する、高環化ナフサおよび改質ガスを産生するように改質される。改質ガスは、オレフィン、イソオレフィン、およびシクロオレフィンを対応するパラフィン化合物に飽和させるために十分な水素を容易に提供することができる。従来のニッケル−モリブデン触媒は、ナフテン環を開環する、または芳香族化合物を水素化することなく、非常に穏やかな条件でオレフィンを飽和させるであろう。
(実施例4)黄蝋原油
【0075】
本実施例は、高速熱水プロセスが、Uintah Basin(Utah)からの黄蝋等の含蝋原油の流動点を低下させるために使用されることができることを実証する。含蝋原油は、高流動点を呈し、したがって、加熱されたタンカーまたはレールカー内で輸送されなければならず、非加熱原油パイプラインに移されることができない。本実施例は、ベンチスケール定常流熱水高速反応器システム内で行われた。ベンチシステム設計容量は、有機原料油の40〜100cc/分であった。ベンチスケールシステムの構成および動作は、
図1に説明されるプロセスと同様であった。ベンチスケールシステムでは、高速改質反応器は、高速で電気的に加熱された。反応器設計は、試験された条件において、10,000を上回るレイノルズ係数をもたらした。反応器圧力は、圧力解放弁を使用して制御され、ガス産生が、湿式試験メーターを使用して測定された。実際の流量率が、測定され、実際の給水比が、ガス産生率およびレイノルズ係数とともに計算された。表10は、試験条件の概要を提供する。
【表10】
【0076】
黄蝋油は、周囲条件で高度にパラフィン系かつ固体であった。アッセイが、黄蝋原油で行われ、結果は、表11に提供される。原油は、原油を特性評価するために、精製産業によって典型的に使用される留分に分画することによって特性評価された。ASTMD2892蒸留によって判定される各留分温度および体積は、表11に提供される。黄蝋原油の約60%は、真空軽油(VGO)および残油(残油)として特性評価され、わずか40%が、「留出物」として特性評価された。本原油は、ほとんどの石油原油よりはるかに高い、API度43を有していたが、VGOおよび残油含有量もまた、高濃度の高分子量パラフィン蝋のため、はるかに高かった。したがって、原油全体の流動点もまた、42℃と非常に高く、周囲温度をはるかに上回り、典型的石油原油の流動点よりはるかに高い。
【表11】
【0077】
表10に識別される条件において、高速熱水反応器内で黄蝋原油を処理後、VGOおよび残油分画の50%が、ナフサ、灯油、およびディーゼルを含む、より低い沸騰留出物に変換された。加えて、生成物全体の流動点は、42℃から−6℃に低下された一方、API度は、43
oから51
oに増加した。表12は、高分子量蝋がナフサ、灯油、およびディーゼル留出物に分解されたことを示す、品質改良された生成物のアッセイを報告する。また、品質改良後の灯油およびディーゼル留出物の特性も、著しく改良される。品質改良された灯油分画は、ジェット燃料比重および凝固点規格要件を満たす一方、直留灯油は、満たさなかった。同様に、品質改良されたディーゼル留出物は、対応する直留ディーゼルより10℃低い曇点および流動点値を呈した。
【表12】
【0078】
表12における炭化水素タイプ分析は、有意な量のオレフィン、イソオレフィン、およびシクロオレフィンの形成を示す。品質改良された生成物の高オレフィン含有量は、
図4に説明および示されるような統合された高速熱水ナフサ改質器を使用して減少されることができる。本発明の統合された改質器実施形態では、ナフサの一部は、高水素濃度(50〜75%)を有する高環化ナフサおよび改質ガスを産生するように改質される。改質ガスは、オレフィン、イソオレフィン、およびシクロオレフィンを対応するパラフィン化合物に飽和させるために十分な水素を容易に提供することができる。従来のニッケル−モリブデン触媒は、ナフテン環を開環せずに、または芳香族化合物を水素化せずに、非常に穏やかな条件でオレフィンを飽和させることができる。高品質改質ガスは、ほとんど不純物を含有せず、使用の前に、殆どまたは全く処理を要求しない。本アプローチの利点として、1)超低臭素価を伴う品質改良された生成物、2)直留ナフサより高いオクタン価を呈する高品質ナフサ、3)最大限にされた水素含有量を伴う生成物、4)燃料ガス産生の減少、および5)現場での水素発生の必要性の排除が挙げられる。
(実施例5)常圧軽油
【0079】
本発明の高速熱水プロセスが、全体的ナフサおよび留出物収率を増加させるために十分にAGO(常圧軽油)を品質改良するために使用された。精製容量および採算性は、精製され得る原油の体積と強く結び付けられ、それによって制限される。多くの製油所は、AGOおよび真空軽油(VGO)を留出物生成物に処理するその能力によって制限される。標準的産業実践は、AGOを水素添加分解装置または流動接触分解装置(FCC)内で分解する。水素化分解によって処理される場合、AGOまたはVGOは、水素化分解触媒を非活性化するであろう不純物を除去するために、最初に水素化処理される必要があり得る。本発明の高速熱水プロセスは、汚染物質(硫黄、窒素、酸素、金属等)にあまり敏感ではなく、より小型であって、資本コストが安く、かつ水素または水素化分解触媒を要求しない、水素化分解代替を提供する。
【0080】
本実施例は、ベンチスケール定常流熱水高速反応器システム内で行われた。ベンチシステム設計容量は、有機原料油の40〜100cc/分であった。ベンチスケールシステムの構成および動作は、
図1に説明される本発明の実施形態と類似した。ベンチスケールシステムでは、高速反応器は、高速で電気的に加熱された。反応器設計は、急冷を用いた試験された条件において、10,000を上回るレイノルズ係数をもたらした。反応器圧力は、圧力解放弁を使用して制御され、ガス産生が、湿式試験メーターを使用して測定された。実際の流量率が、測定され、実際の給水比が、ガス産生率およびレイノルズ係数とともに計算された。表13は、試験条件の概要を提供する。
【表13】
【0081】
試験されたAGO原料の分析結果は、表14に要約される。粘度および密度に加え、AGO留出物は、シミュレートされた蒸留によって特性評価された。故に、ASTMD2887に対して、AGOの大部分(87%)は、AGOの場合の典型的であるディーゼル留分境界点650゜Fを上回って沸騰した。API度は、24.3
oと比較的に低く、粘度は、20.4cStと高かった。
【表14】
【0082】
表15は、高速熱水反応器内で処理後、品質改良されたAGOの部分的アッセイを提供する。有意な量の分解が、試験された条件で証明された。650゜Fを上回る油の分画は
、87%から56.3%まで減少され、これは、開始量から35%の減少であった。加えて、生成物のAPI度は、24.3から28.6
oに増加し、粘度は、20.4から1.8cStに減少した。ナフサ、灯油、およびディーゼル収率は、比例して増加した。本実施例は、AGOおよび他の精製中間流のための水素化分解の代替としての潜在的または高速の熱水反応器プロセスを実証する。
【表15】
【0083】
本発明は、現在、最も実践的かつ好ましい実施形態と考えられるものに基づいて、例証の目的のために詳細に説明されたが、そのような詳細は、単に、その目的のためであって、本発明は、開示される実施形態に限定されず、対照的に、本説明の精神および範囲内の修正および均等物配列を網羅することが意図されることを理解されたい。例えば、本発明は、可能な範囲内において、任意の実施形態の1つ以上の特徴が、任意の他の実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせられることができることが想定されることを理解されたい。