(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記補正工程の後に、前記透析液ポンプ及び排液ポンプを同時に駆動させるとともに、前記重量計の計測値の変化に基づいて、前記排液ポンプを補正することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液浄化装置。
前記静脈側血液回路の所定部位と透析液導入ラインとを連通可能な補液ラインを有し、前記補正工程時、当該補液ラインを介して前記透析液収容バッグ内の透析液を前記静脈側血液回路に流動させ得ることを特徴とする請求項1〜4の何れか1つに記載の血液浄化装置。
前記制御部は、前記補正工程時、前記透析液ポンプを複数の回転速度で駆動させ、それぞれの回転速度において取得される前記重量計の計測値の変化に基づいて、前記透析液ポンプの回転速度に応じた補正値を設定し得ることを特徴とする請求項1〜10の何れか1つに記載の血液浄化装置。
前記透析液ポンプにおける総回転数に対する流量変化率の特性データを予め記憶するとともに、前記制御部は、補正工程時、当該特性データに基づいて前記透析液ポンプの回転速度に応じた補正値を設定し得ることを特徴とする請求項1〜10の何れか1つに記載の血液浄化装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の血液浄化装置においては、透析液ポンプ及び排液ポンプのそれぞれの重量を計測するために2つの重量計(透析液側重量計及び排液側重量計)が必要とされていた。したがって、重量計の数分だけ製造コストが嵩んでしまうとともに、2つの重量計の誤差が累積してしまう虞があり、精度よく補正することができない虞があった。
【0007】
そこで、透析液収容バッグ及び排液収容バッグの双方を単一の(共通の)重量計で計測することにより、コストを低減させつつ精度よく補正を行わせることが考えられる。しかしながら、この場合、重量計の計測値と理論値とを比較することにより透析液ポンプ又は排液ポンプの回転駆動時の誤差を検出することができるものの、何れのポンプに誤差が生じているのか判断することができない。また、例えば、重量計の計測値に基づいて、透析液ポンプ又は排液ポンプの何れかに誤差が生じていると判断された場合、透析液ポンプには誤差が生じていないものとみなし、排液ポンプに対する補正を行うことも可能であるが、実際には透析液ポンプに誤差が生じている場合、血液浄化器に導入する透析液の流量に誤差が生じてしまい、血液浄化治療に悪影響が生じてしまう虞があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、単一の重量計にて透析液収容バッグ及び排液収容バッグの重量を計測させることによりコストを低下させつつ透析液ポンプ及び排液ポンプの回転速度を精度よく補正することができるとともに、血液浄化手段に導入する透析液の流量の誤差を抑制することができる血液浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有するとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化し得る血液浄化手段と、前記血液浄化手段に透析液を導入するための透析液導入ライン、及び当該血液浄化手段から排液を排出するための透析液排出ラインと、前記透析液導入ラインに配設されたしごき型ポンプから成り、回転駆動することによって当該透析液導入ラインの透析液を流動させ得る透析液ポンプと、前記透析液導入ラインの先端部に接続され、前記血液浄化手段に導入する透析液を収容した透析液収容バッグと、前記透析液排出ラインに配設されたしごき型ポンプから成り、回転駆動することによって当該透析液排出ラインの排液を流動させ得る排液ポンプと、前記透析液排出ラインの先端部に接続され、前記血液浄化手段から排出された排液を収容可能な排液収容バッグと、前記透析液収容バッグ及び排液収容バッグの総重量を計測し得る単一の重量計と、前記重量計の計測値に基づいて前記透析液ポンプ及び排液ポンプを制御可能な制御部とを備えた血液浄化装置において、前記制御部は、前記透析液ポンプを回転駆動させて前記透析液収容バッグ内の透析液を前記排液収容バッグに収容させることなく流動させ、その過程における前記重量計の計測値の変化に基づいて、当該透析液ポンプの回転速度又は回転速度に関連する値の補正値を算出し得るとともに、算出した前記補正値に基づいて、当該透析液ポンプの回転速度又は回転速度に関連する値を補正する補正工程時、前記透析液収容バッグ内の透析液を前記血液回路に流動させる
ものとされ、前記透析液導入ラインには、当該透析液導入ラインを流動する透析液を収容し得る可撓性の収容手段が接続されるとともに、前記補正工程時、当該収容手段に前記透析液収容バッグ内の透析液を収容させ得るよう構成され、且つ、前記制御部は、前記補正工程時、前記透析液ポンプを回転駆動させる前に前記収容手段内の液体を排出させて前記透析液ポンプの回転駆動によって流動する液体を収容するための容量を確保し得ることを特徴とする。
請求項2記載の発明は、動脈側血液回路及び静脈側血液回路を有するとともに、当該動脈側血液回路の先端から静脈側血液回路の先端まで患者の血液を体外循環させ得る血液回路と、該血液回路の動脈側血液回路及び静脈側血液回路の間に介装されて当該血液回路を流れる血液を浄化し得る血液浄化手段と、前記血液浄化手段に透析液を導入するための透析液導入ライン、及び当該血液浄化手段から排液を排出するための透析液排出ラインと、前記透析液導入ラインに配設されたしごき型ポンプから成り、回転駆動することによって当該透析液導入ラインの透析液を流動させ得る透析液ポンプと、前記透析液導入ラインの先端部に接続され、前記血液浄化手段に導入する透析液を収容した透析液収容バッグと、前記透析液排出ラインに配設されたしごき型ポンプから成り、回転駆動することによって当該透析液排出ラインの排液を流動させ得る排液ポンプと、前記透析液排出ラインの先端部に接続され、前記血液浄化手段から排出された排液を収容可能な排液収容バッグと、前記透析液収容バッグ及び排液収容バッグの総重量を計測し得る単一の重量計と、前記重量計の計測値に基づいて前記透析液ポンプ及び排液ポンプを制御可能な制御部とを備えた血液浄化装置において、前記制御部は、前記透析液ポンプを回転駆動させて前記透析液収容バッグ内の透析液を前記排液収容バッグに収容させることなく流動させ、その過程における前記重量計の計測値の変化に基づいて、当該透析液ポンプの回転速度又は回転速度に関連する値の補正値を算出し得るとともに、算出した前記補正値に基づいて、当該透析液ポンプの回転速度又は回転速度に関連する値を補正する補正工程時、前記透析液収容バッグ内の透析液を前記血液回路に流動させるものとされ、前記透析液導入ラインには、当該透析液導入ラインを流動する透析液を収容し得る可撓性の収容手段が接続されるとともに、前記補正工程時、当該収容手段に前記透析液収容バッグ内の透析液を収容させ得るよう構成され、且つ、前記収容手段は、血液浄化治療時、前記透析液導入ラインを流動する透析液を加温するための加温バッグから成ることを特徴とする。
【0010】
請求項
3記載の発明は、請求項1
又は請求項2記載の血液浄化装置において、前記制御部は、前記補正工程の後に、前記透析液ポンプ及び排液ポンプを同時に駆動させるとともに、前記重量計の計測値の変化に基づいて、前記排液ポンプを補正することを特徴とする。
【0011】
請求項
4記載の発明は、請求項1
〜3の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記動脈側血液回路に配設されたしごき型ポンプから成る血液ポンプを具備するとともに、前記補正工程時、前記血液ポンプを停止させることを特徴とする。
【0012】
請求項
5記載の発明は、請求項1〜
4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記血液浄化手段を介して前記透析液収容バッグ内の透析液を前記静脈側血液回路に流動させ得ることを特徴とする。
【0013】
請求項
6記載の発明は、請求項1〜
4の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記静脈側血液回路の所定部位と透析液導入ラインとを連通可能な補液ラインを有し、前記補正工程時、当該補液ラインを介して前記透析液収容バッグ内の透析液を前記静脈側血液回路に流動させ得ることを特徴とする。
【0014】
請求項
7記載の発明は、請求項
5又は請求項
6記載の血液浄化装置において、前記補正工程時、前記静脈側血液回路の先端に液体を収容し得る収容バッグが接続されたことを特徴とする。
【0018】
請求項
8記載の発明は、請求項1〜
7の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記補正工程は、血液浄化治療前に行われることを特徴とする。
【0019】
請求項
9記載の発明は、請求項1〜
7の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記補正工程は、血液浄化治療中に行われることを特徴とする。
【0020】
請求項
10記載の発明は、請求項1〜
9の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記制御部は、前記補正工程時、前記重量計の計測値と理論値との誤差に基づき、前記透析液ポンプの回転速度を補正して制御することを特徴とする。
【0021】
請求項
11記載の発明は、請求項1〜
10の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記制御部は、前記補正工程時、前記透析液ポンプを複数の回転速度で駆動させ、それぞれの回転速度において取得される前記重量計の計測値の変化に基づいて、前記透析液ポンプの回転速度に応じた補正値を設定し得ることを特徴とする。
【0022】
請求項
12記載の発明は、請求項1〜
10の何れか1つに記載の血液浄化装置において、前記透析液ポンプにおける総回転数に対する流量変化率の特性データを予め記憶するとともに、前記制御部は、補正工程時、当該特性データに基づいて前記透析液ポンプの回転速度に応じた補正値を設定し得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
請求項1
、2の発明によれば、制御部は、透析液ポンプを回転駆動させて透析液収容バッグ内の透析液を排液収容バッグに収容させることなく流動させ、その過程における重量計の計測値の変化に基づいて、当該透析液ポンプの回転速度又は回転速度に関連する値の補正値を算出し得るので、単一の重量計にて透析液収容バッグ及び排液収容バッグの重量を計測させることによりコストを低下させつつ透析液ポンプ及び排液ポンプの回転速度を精度よく補正することができるとともに、血液浄化手段に導入する透析液の流量の誤差を抑制することができる。
さらに、請求項1、2の発明によれば、透析液導入ラインには、当該透析液導入ラインを流動する透析液を収容し得る可撓性の収容手段が接続されるとともに、補正工程時、当該収容手段に透析液収容バッグ内の透析液を収容させ得るので、透析液ポンプの回転駆動によって流動した液体が血液回路側に流動するのを回避することができる。また、収容手段が可撓性であるため、透析液ポンプの回転駆動によって流動した液体の流量に応じて収容手段が膨張可能とされ、当該液体の流動時に抵抗(流動抵抗)が生じてしまうのを抑制でき、より精度よく透析液ポンプの回転速度を補正することができる。
請求項1の発明によれば、制御部は、補正工程時、透析液ポンプを回転駆動させる前に収容手段内の液体を排出させて透析液ポンプの回転駆動によって流動する液体を収容するための容量を確保し得るので、透析液ポンプの回転駆動によって流動した液体をより確実に収容手段に収容させることができる。請求項2の発明によれば、収容手段は、血液浄化治療時、透析液導入ラインを流動する透析液を加温するための加温バッグから成るので、血液浄化治療時に必要な加温バッグを流用して透析液ポンプの回転駆動によって流動した液体を収容させることができる。
【0025】
請求項
5の発明によれば、血液浄化手段を介して透析液収容バッグ内の透析液を静脈側血液回路に流動させ得るので、別途特別な流路を追加することなく、透析液収容バッグ内の透析液を静脈側血液回路に流動させることができる。
【0026】
請求項
6の発明によれば、静脈側血液回路の所定部位と透析液導入ラインとを連通可能な補液ラインを有し、補正工程時、当該補液ラインを介して透析液収容バッグ内の透析液を静脈側血液回路に流動させ得るので、血液浄化手段を経由させず血液回路側に透析液を流動させることができる。
【0027】
請求項
7の発明によれば、補正工程時、静脈側血液回路の先端に液体を収容し得る収容バッグが接続されたので、透析液ポンプの回転駆動によって静脈側血液回路にて流動した液体が当該静脈側血液回路の先端からこぼれてしまうのを防止することができる。
【0031】
請求項
8の発明によれば、補正工程は、血液浄化治療前に行われるので、直ちに血液浄化治療を開始することができる。
【0032】
請求項
9の発明によれば、補正工程は、血液浄化治療中に行われるので、血液浄化治療中に透析液ポンプの特性が変化したとしても、当該透析液ポンプの回転速度を補正することができる。
【0033】
請求項
10の発明によれば、制御部は、補正工程時、重量計の計測値と理論値との誤差に基づき、透析液ポンプの回転速度を補正して制御するので、透析液ポンプの回転速度をより精度よく補正することができ、当該透析液ポンプの回転駆動による流量誤差をより小さくすることができる。
【0034】
請求項
11の発明によれば、制御部は、補正工程時、透析液ポンプを複数の回転速度で駆動させ、それぞれの回転速度において取得される重量計の計測値の変化に基づいて、透析液ポンプの回転速度に応じた補正値を設定し得るので、透析液ポンプの回転駆動による流量誤差をより一層小さくすることができる。
【0035】
請求項
12の発明によれば、透析液ポンプにおける総回転数に対する流量変化率の特性データを予め記憶するとともに、制御部は、補正工程時、当該特性データに基づいて透析液ポンプの回転速度に応じた補正値を設定し得るので、透析液ポンプの経時的変化によって流量誤差が生じたとしても、複数の回転速度で駆動させることなく、より円滑に透析液ポンプの回転速度に応じた補正値を設定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
第1の実施形態に係る血液浄化装置は、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための血液透析装置に適用されたもので、
図1に示すように、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bを有する血液回路1と、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bの間に介装されて血液回路1を流れる血液を浄化するダイアライザ2(血液浄化手段)と、動脈側血液回路1aに配設されたしごき型ポンプから成る血液ポンプP1と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2と、これら透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2にそれぞれ配設された透析液ポンプP2及び排液ポンプP3と、補液ラインL3と、ダイアライザ2に導入する透析液を収容した透析液収容バッグB1と、ダイアライザ2から排出された排液を収容する排液収容バッグB2と、プライミング液を収容したプライミング液収容バッグB3と、重量計4と、制御部7とを有して構成されている。なお、図中符号P、Paは、圧力検出手段(圧力計)、符号Tは、温度検出手段をそれぞれ示している。
【0038】
動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bには、それぞれの先端にコネクタが接続されており、当該コネクタを介して動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針(不図示)が接続可能とされている。そして、動脈側血液回路1aの先端に接続された動脈側穿刺針及び静脈側血液回路1bの先端に接続された静脈側穿刺針を患者に穿刺した状態で、血液ポンプP1を回転駆動(正回転駆動)させると、患者の血液は、動脈側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、該ダイアライザ2によって血液浄化が施された後、静脈側血液回路1bを通って患者の体内に戻るようになっている。なお、動脈側穿刺針及び静脈側穿刺針を患者の血管に穿刺する形態に代えて、ダブルルーメンカテーテルを患者の鎖骨下静脈或いは大腿静脈に挿入、或いは患者の腕の血管に挿入する等の形態であってもよい。
【0039】
また、静脈側血液回路1bの途中には、エアトラップチャンバ3が接続されており、体外循環する血液は、当該エアトラップチャンバ3にて気泡が取り除かれた後、患者に戻ることとなる。エアトラップチャンバ3の上部からは、空気の流路が延設されており、その先端の圧力検出手段Pにて静脈圧を検出し得るようになっている。さらに、静脈側血液回路1bの先端部(静脈側血液回路1bの先端とエアトラップチャンバ3との間)には、開閉して流路を開放又は閉塞し得るクランプ手段5が配設されている。
【0040】
補液ラインL3は、静脈側血液回路1bの所定部位(本実施形態においては、エアトラップチャンバ3)と透析液導入ラインL1とを連通可能な流路から成り、血液浄化治療中、補液としての透析液を静脈側血液回路1bに供給し得るものである。なお、本実施形態においては、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bの先端には、プライミング液を収容したプライミング液収容バッグB3が接続されており、血液ポンプP1を回転駆動させることにより、プライミング液収容バッグB3内のプライミング液を血液回路1に供給してプライミング可能とされている。
【0041】
ダイアライザ2は、その筐体部に、血液導入口2a(血液導入ポート)、血液導出口2b(血液導出ポート)、透析液導入口2c(透析液流路入口:透析液導入ポート)及び透析液導出口2d(透析液流路出口:透析液導出ポート)が形成されており、このうち血液導入口2aには動脈側血液回路1aの基端が、血液導出口2bには静脈側血液回路1bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入口2c及び透析液導出口2dは、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0042】
ダイアライザ2内には、複数の中空糸膜(不図示)が収容されており、この中空糸が血液を浄化するための血液浄化膜を構成している。かかるダイアライザ2には、血液浄化膜を介して患者の血液が流れる血液流路(血液導入口2aと血液導出口2bとの間の流路)及び透析液が流れる透析液流路(透析液導入口2cと透析液導出口2dとの間の流路)が形成されている。そして、血液浄化膜を構成する中空糸膜は、その外周面と内周面とを貫通した微小な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0043】
透析液導入ラインL1は、ダイアライザ2に透析液を導入するための流路から成り、一端がダイアライザ2の透析液導入口2cに接続されるとともに、当該透析液導入ラインL1の流路を構成する可撓性チューブを扱いて送液するしごき型ポンプから成る透析液ポンプP2が配設されている。かかる透析液導入ラインL1の他端は、透析液を所定容量収容した透析液収容バッグB1と接続されており、透析液ポンプP2を駆動(正回転駆動)させることにより、透析液収容バッグB1内の透析液をダイアライザ2に導入し得るようになっている。
【0044】
また、透析液導入ラインL1における透析液ポンプP2と補液ラインL3の接続部との間には、当該透析液導入ラインL1を流動する透析液を収容し得る可撓性の加温バッグ6(収容手段)が接続されている。かかる加温バッグ6は、血液浄化治療時、透析液導入ラインL1を流動する透析液を加温するためのもので、
図2に示すように、可撓性のシートを2枚重ねて溶着することによって流路6aが形成されるとともに、当該流路6aの一端側及び他端側に透析液導入ラインL1と接続可能な接続部6b、6cを有して構成されている。
【0045】
この加温バッグ6は、透析液を加温し得るヒータから成る加温手段hに取り付け可能とされている。かかる加温手段hは、
図3に示すように、透析装置本体に取り付けられる筐体部Hに形成されたもので、蓋部Mと、筐体部H側及び蓋部M側にそれぞれ形成された加温部Cを有して構成されている。加温部Cは、金属製板材から成り、図示しない熱源(電熱線等)の熱が伝達され得るようになっている。そして、
図4に示すように、蓋部M側の加温部Cに加温バッグ6を取り付けた後、
図5に示すように、蓋部Mを閉状態とすることにより、筐体部H側及び蓋部M側の加温部Cにて加温バッグ6を挟持させ、熱源の熱によって流路6aを流れる透析液を加温し得るよう構成されている。
【0046】
透析液排出ラインL2は、
図1に示すように、ダイアライザ2から排液を排出するための流路から成り、一端がダイアライザ2の透析液導出口2dに接続されるとともに、当該透析液排出ラインL2の流路を構成する可撓性チューブを扱いて送液するしごき型ポンプから成る排液ポンプP3が配設されている。かかる透析液排出ラインL2の他端は、所定量の排液を収容可能な排液収容バッグB2と接続されており、排液ポンプP3を駆動(正回転駆動)させることにより、ダイアライザ2から排出された透析液(排液)を排液収容バッグB2内に導入し得るようになっている。
【0047】
しかして、透析液ポンプP2の正回転駆動により、透析液収容バッグB1の透析液がダイアライザ2に向かって流れるとともに、排液ポンプP3の正回転駆動により、ダイアライザ2の透析液(排液)が排液収容バッグB2に向かって流れることとなる。重量計4は、透析液収容バッグB1と排液収容バッグB2とをフックに引っ掛けて保持するとともに、それら透析液収容バッグB1及び排液収容バッグB2の重量(透析液収容バッグB1及び排液収容バッグB2の総重量)をリアルタイムに計測し得る単一のもの(透析液収容バッグB1及び排液収容バッグB2において共通のもの)とされている。なお、透析液収容バッグB1及び排液収容バッグB2(プライミング液収容バッグB3も同様)は、柔軟性を有した収容容器から成り、このうち排液収容バッグB2は、血液浄化治療を開始する前において、内部に排液が収容されていない空の状態とされている。
【0048】
ところで、本実施形態に適用される血液ポンプP1、透析液ポンプP2及び排液ポンプP3等のしごき型ポンプは、
図6に示すように、ステータ8と、当該ステータ8内で回転駆動可能なロータ9と、該ロータ9に形成されたローラ10(しごき部)と、一対のガイドピン11とから主に構成されている。なお、同図においては、ステータ8の上部を覆うカバーについて省略してある。
【0049】
ステータ8は、被しごきチューブDが取り付けられる取付凹部8aが形成されており、当該取付凹部8aを形成する内周壁面に沿って被しごきチューブDが取り付けられるよう構成されている。なお、被しごきチューブDには、可撓性チューブF(血液ポンプP1においては動脈側血液回路1a、透析液ポンプP2においては透析液導入ラインL1、排液ポンプP3においては透析液排出ラインL2の流路を構成する可撓性チューブ)が接続される。また、取付凹部8aの略中央には、モータにより回転駆動可能なロータ9が配設されている。かかるロータ9の側面(取付凹部8aの内周壁面と対向する面)には、一対のローラ10と、ガイドピン11とが配設されている。
【0050】
ローラ10は、ロータ9の外縁側に形成された回転軸Lを中心として回転可能とされたもので、取付凹部8aに取り付けられた被しごきチューブDを径方向に圧縮して流路を締切しつつ当該ロータ9の回転に伴い長手方向(液体の流動方向)にしごくことにより、血液や透析液等の液体を流動させ得るものである。すなわち、取付凹部8a内に被しごきチューブDを取り付けてロータ9を回転駆動させると、ローラ10と取付凹部8aの内周壁面との間で当該被しごきチューブDが圧縮されて流路が締め切られる(閉止される)とともに、ロータ9の回転駆動に伴ってその回転方向(長手方向)にしごき得るのである。かかるしごき作用により、被しごきチューブD内の液体がロータ9の回転方向に吐出されることとなる。
【0051】
図1に示す制御部7は、血液浄化装置に配設されたマイコン等から成り、重量計4で計測された重量や予め記憶された設定値に基づいて血液ポンプP1、透析液ポンプP2及び排液ポンプP3の駆動が制御可能とされている。ここで、本実施形態に係る制御部7は、排液ポンプP3を停止させつつ透析液ポンプP2を回転駆動させて透析液収容バッグB1内の透析液を排液収容バッグB2に収容させることなく流動させ、その過程における重量計4の計測値の変化に基づいて、当該透析液ポンプP2の回転速度又は回転速度に関連する値の補正値を算出し得るとともに、当該透析液ポンプP2の回転速度を補正する補正工程を行わせ得るものとされている。具体的には、補正工程時、
図7に示すように、クランプ手段5を開状態として流路を開放するとともに、透析液ポンプP2を回転駆動(正回転駆動)させつつ排液ポンプP3を停止させる。なお、血液ポンプP1は停止させておくのが好ましい。
【0052】
これにより、透析液収容バッグB1内の透析液は、透析液導入ラインL1を流動した後、補液ラインL3を介して静脈側血液回路1bに流動することとなり、排液収容バッグB2に至ることはない。したがって、透析液収容バッグB1内の透析液を静脈側血液回路1bに流動させる過程において、重量計4の計測値の変化に基づいて、透析液ポンプP2の回転速度を補正することができる。なお、補正方法については後述する。また、透析液ポンプP2の駆動によって流動した液体(透析液収容バッグB1内の透析液及びプライミング液等)は、静脈側血液回路1bの先端に接続された収容バッグ(本実施形態においては、プライミング液収容バッグB3)内に収容されることとなる。
【0053】
しかるに、
図8に示すように、補液ラインL3を具備しない場合において、補正工程時、同図に示すように、クランプ手段5を開状態として流路を開放するとともに、透析液ポンプP2を回転駆動(正回転駆動)させつつ排液ポンプP3を停止させるものとしてもよい。なお、血液ポンプP1は停止させておくのが好ましい。この場合、ダイアライザ2を介して透析液収容バッグB1内の透析液を静脈側血液回路1bに流動させ得るので、補液ラインL3の如き別途特別な流路を追加することなく、透析液収容バッグB1内の透析液を静脈側血液回路1bに流動させることができる。
【0054】
本実施形態によれば、制御部7は、透析液ポンプP2を回転駆動させて透析液収容バッグB1内の透析液を排液収容バッグB2に収容させることなく流動させ、その過程における重量計4の計測値の変化に基づいて、当該透析液ポンプP2の回転速度を補正する補正工程を行わせ得るので、単一の重量計4にて透析液収容バッグB1及び排液収容バッグB2の重量を計測させることによりコストを低下させつつ透析液ポンプP2の回転速度を精度よく補正することができるとともに、ダイアライザ2に導入する透析液の流量の誤差を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態に係る制御部7は、補正工程時、排液ポンプP3を停止させつつ透析液ポンプP2を回転駆動させるので、補正工程において透析液収容バッグB1から流動した透析液が排液収容バッグB2に収容されてしまうのを確実に防止することができる。さらに、静脈側血液回路1bの所定部位と透析液導入ラインL1とを連通可能な補液ラインL3を有し、補正工程時、当該補液ラインL3を介して透析液収容バッグB1内の透析液を静脈側血液回路1bに流動させ得るので、ダイアライザ2を経由させず血液回路1側に透析液を流動させることができる。
【0056】
また、ダイアライザ2を介して透析液収容バッグB1内の透析液を静脈側血液回路1bに流動させ得るよう構成すれば、別途特別な流路を追加することなく、透析液収容バッグB1内の透析液を静脈側血液回路1bに流動させることができる。またさらに、補正工程時、静脈側血液回路1bの先端に液体を収容し得る収容バッグ(プライミング液収容バッグB3)が接続されたので、透析液ポンプP2の回転駆動によって静脈側血液回路1bにて流動した液体が当該静脈側血液回路1bの先端からこぼれてしまうのを防止することができる。
【0057】
なお、排液ポンプP3の回転速度は、治療の条件として患者から除水を行わない場合は、透析液ポンプP2と同一の回転速度となるよう制御されるとともに、除水を行う場合は、その除水による流量分を加算した回転速度となるよう制御される。そして、所定時間経過後、重量計4にて検出された透析液収容バッグB1及び排液収容バッグB2の重量と理論上の重量との間に誤差がある場合は、その誤差をなくすため、排液ポンプP3の回転速度を自動的に補正し得るようになっている。
【0058】
すなわち、本発明である透析液ポンプP2に関する補正と、従来技術である排液ポンプP3に関する補正を組み合わせることにより、単一の重量計にて透析液収容バッグ及び排液収容バッグの重量を計測させることによる製造コスト低下、血液浄化手段に導入する透析液の流量の誤差の抑制、更には治療における除水誤差の抑制を実現することができることとなる。
【0059】
次に、本実施形態に係る制御部7の補正工程における制御について、
図9、10のフローチャートに基づいて説明する。
まず、補正のための測定工程が開始されると、
図9に示すように、S1にて重量計4の計測値(m0)を記憶させる。その後、
図7に示すように、クランプ手段5を開状態として流路を開放するとともに、透析液ポンプP2を回転駆動(回転速度n1、回転時間t1にて正回転駆動)させつつ排液ポンプP3を停止させ(S2)、その状態にて重量計4の計測値(m1)を記憶させる(S3)。
【0060】
そして、S1にて記憶した計測値(m0)及びS3にて記憶した計測値(m1)を用いて、V=(m0−m1)/ρ/(n1・t1)(但し、ρは透析液の密度)なる演算式に基づいて補正値V(1回転あたりの吐出量)を求める(S4)。このS4にて用いられる演算式は、重量計4の計測値と理論値との誤差に基づき、透析液ポンプP2の回転速度を補正するための補正値を得ることができるものである。
【0061】
以上で補正のための測定工程が終了し、その後、補正処理工程が開始される。かかる補正処理工程においては、
図10に示すように、操作者により入力された設定流量Q(S1)に基づき、回転速度(n)=設定流量(Q)/補正値(V)なる演算式に基づいて透析液ポンプP2の回転速度(n)を補正して制御する(S2)。このように、制御部7は、補正工程時、重量計4の計測値と理論値との誤差に基づき、透析液ポンプP2の回転速度を補正して制御するので、透析液ポンプP2の回転速度をより精度よく補正することができ、当該透析液ポンプP2の回転駆動による流量誤差をより小さくすることができる。
【0062】
また、他の実施形態に係る補正工程の制御部7の制御として、
図11、12に示すフローチャートに基づくものとすることができる。
まず、補正のための測定工程が開始されると、
図11に示すように、S1にて重量計4の計測値(m0)を記憶させる。その後、
図7に示すように、クランプ手段5を開状態として流路を開放するとともに、透析液ポンプP2を回転駆動(回転速度n1、回転時間t1にて正回転駆動)させつつ排液ポンプP3を停止させ(S2)、その状態にて重量計4の計測値(m1)を記憶させる(S3)。
【0063】
さらに、透析液ポンプP2を回転速度n2、回転時間t2にて回転駆動(正回転駆動)させつつ排液ポンプP3を停止させ(S4)、その状態にて重量計4の計測値(m2)を記憶させる(S5)。そして、S1にて記憶した計測値(m0)、S3にて記憶した計測値(m1)及びS5にて記憶した計測値(m2)を用いて、V1=(m0−m1)/ρ/(n1・t1)、V2=(m1−m2)/ρ/(n2・t2)(但し、ρは透析液の密度)なる演算式に基づいて補正値V1、V2をそれぞれ求める(S6)。このS6にて用いられる演算式は、重量計4の計測値と理論値との誤差に基づき、透析液ポンプP2の回転速度を補正するための補正値を得ることができるものである。その後、これら補正値V1、V2を用いて、Q1=n1・V1、Q2=n2・V2なる演算式により、流量Q1、Q2を求める(S7)。
【0064】
以上で補正のための測定工程が終了し、その後、補正処理工程が開始される。かかる補正処理工程においては、
図12に示すように、操作者により入力された設定流量Q(S1)に基づき、0≦Q<Q1なる関係の場合、回転速度(n)=(n1/Q1)・Qなる演算式に基づいて透析液ポンプP2の回転速度(n)を補正して制御するとともに、Q≧Q2なる関係の場合、回転速度(n)=((n2−n1)/(Q2−Q1))・Q+(n1−((n2−n1)/(Q2−Q1))・Q1)なる演算式に基づいて透析液ポンプP2の回転速度(n)を補正して制御する。このように、制御部7は、補正工程時、透析液ポンプP2を複数の回転速度で駆動させ、それぞれの回転速度において取得される重量計4の計測値の変化に基づいて、透析液ポンプP2の回転速度に応じた補正値を設定し得るので、透析液ポンプP2の回転駆動による流量誤差をより一層小さくすることができる。
【0065】
加えて、更に他の実施形態に係る補正工程の制御部7の制御として、
図13、14に示すフローチャートに基づくものとすることができる。
まず、補正のための測定工程が開始されると、
図13に示すように、S1にて重量計4の計測値(m0)を記憶させる。その後、
図7に示すように、クランプ手段5を開状態として流路を開放するとともに、透析液ポンプP2を回転駆動(回転速度n1、回転時間t1にて正回転駆動)させつつ排液ポンプP3を停止させ(S2)、その状態にて重量計4の計測値(m1)を記憶させる(S3)。
【0066】
そして、S1にて記憶した計測値(m0)及びS3にて記憶した計測値(m1)を用いて、V0=(m0−m1)/ρ/(n1・t1)(但し、ρは透析液の密度)なる演算式に基づいて補正値V0(1回転あたり吐出量初期値)を求める(S4)。このS4にて用いられる演算式は、重量計4の計測値と理論値との誤差に基づき、透析液ポンプP2の回転速度を補正するための補正値を得ることができるものである。
【0067】
以上で補正のための測定工程が終了し、その後、補正処理工程が開始される。かかる補正処理工程においては、
図15に示すように、透析液ポンプP2における総回転数Zに対する流量変化率(容積変化率)の特性データを予め記憶しておく。そして、補正処理工程が開始されると、
図14に示すように、操作者により入力された設定流量Q(S1)、及び予め記憶された特性データに基づき、回転速度(n)=設定流量(Q)/(補正値(V0)・容積変化率(c))なる演算式に基づいて透析液ポンプP2の回転速度(n)を補正して制御する(S2)。
【0068】
このように、透析液ポンプP2における総回転数Zに対する流量変化率(容量変化率c)の特性データを予め記憶するとともに、制御部7は、補正工程時、当該特性データに基づいて透析液ポンプP2の回転速度に応じた補正値を設定し得るので、透析液ポンプP2の経時的変化によって流量誤差が生じたとしても、複数の回転速度で駆動させることなく、より円滑に透析液ポンプP2の回転速度に応じた補正値を設定することができる。
【0069】
次に、本発明に係る第2の実施形態に係る血液浄化装置について説明する。
第2の実施形態に係る血液浄化装置は、第1の実施形態と同様、患者の血液を体外循環させつつ浄化するための血液透析装置に適用されたもので、
図1に示すように、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bを有する血液回路1と、動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bの間に介装されて血液回路1を流れる血液を浄化するダイアライザ2(血液浄化手段)と、動脈側血液回路1aに配設されたしごき型ポンプから成る血液ポンプP1と、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2と、これら透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2にそれぞれ配設された透析液ポンプP2及び排液ポンプP3と、補液ラインL3と、ダイアライザ2に導入する透析液を収容した透析液収容バッグB1と、ダイアライザ2から排出された排液を収容する排液収容バッグB2と、プライミング液を収容したプライミング液収容バッグB3と、重量計4と、制御部7とを有して構成されている。なお、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0070】
ここで、本実施形態に係る制御部7は、排液ポンプP3を停止させつつ透析液ポンプP2を回転駆動させて透析液収容バッグB1内の透析液を排液収容バッグB2に収容させることなく流動させ、その過程における重量計4の計測値の変化に基づいて、当該透析液ポンプP2の回転速度を補正する補正工程を行わせ得るもので、当該補正工程時、透析液導入ラインL1に接続された加温バッグ6(収容手段)に透析液収容バッグB1内の透析液を収容させ得るよう構成されている。
【0071】
具体的には、
図16に示すように、補正工程時、前記のように透析液ポンプP2を回転駆動させる前に透析液ポンプP2を停止させつつ排液ポンプP3を駆動(正回転駆動)させる(このとき、クランプ手段5は閉状態となっている)ことにより、加温バッグ6(収容手段)内の液体を排出させて透析液ポンプP2の回転駆動によって流動する液体を収容するための容量を確保しておく。なお、排液ポンプP3を駆動(正回転駆動)させた後、排液ラインL2に取り付けられた圧力検出手段(圧力計)の計測値が所定値に達したことを条件として当該排液ポンプP3を停止させるようにするのが好ましい。これにより、透析液導入ラインL1内が負圧となって発泡したり或いは過大圧になって液体の漏れ等が生じてしまうのを防止することができる。
【0072】
その後、
図17に示すように、クランプ手段5を閉状態として流路を閉塞するとともに、透析液ポンプP2を回転駆動(正回転駆動)させつつ排液ポンプP3を停止させる。このとき、血液ポンプP1は停止させておくのが好ましい。これにより、透析液収容バッグB1内の透析液は、加温バッグ6内に収容されることとなり、排液収容バッグB2に至ることはない。なお、透析液が加温バッグ6内に収容される際、当該加温バッグ6が可撓性材料にて成形されているため、流入する透析液の量に応じて膨らむこととなる。したがって、透析液収容バッグB1内の透析液を加温バッグ6に収容させる過程において、重量計4の計測値の変化に基づいて、透析液ポンプP2の回転速度を補正することができる。なお、補正方法については第1の実施形態(他の実施形態及び更に他の実施形態含む)と同様である。
【0073】
本実施形態によれば、制御部7は、透析液ポンプP2を回転駆動させて透析液収容バッグB1内の透析液を排液収容バッグB2に収容させることなく流動させ、その過程における重量計4の計測値の変化に基づいて、当該透析液ポンプP2の回転速度を補正する補正工程を行わせ得るので、単一の重量計4にて透析液収容バッグB1及び排液収容バッグB2の重量を計測させることによりコストを低下させつつ透析液ポンプP2及び排液ポンプP3の回転速度を精度よく補正することができるとともに、ダイアライザ2に導入する透析液の流量の誤差を抑制することができる。
【0074】
また、本実施形態に係る制御部7は、補正工程時、排液ポンプP3を停止させつつ透析液ポンプP2を回転駆動させるので、補正工程において透析液収容バッグB1から流動した透析液が排液収容バッグB2に収容されてしまうのを確実に防止することができる。さらに、透析液導入ラインL1には、当該透析液導入ラインL1を流動する透析液を収容し得る可撓性の収容手段としての加温バッグ6が接続されるとともに、補正工程時、当該加温バッグ6に透析液収容バッグB1内の透析液を収容させ得るので、透析液ポンプP2の回転駆動によって流動した液体が血液回路1側に流動するのを回避することができる。
【0075】
特に、収容手段としての加温バッグ6が可撓性であるため、透析液ポンプP2の回転駆動によって流動した液体の流量に応じて加温バッグ6が膨張可能とされ、当該液体の流動時に抵抗(流動抵抗)が生じてしまうのを抑制でき、より精度よく透析液ポンプP2の回転速度を補正することができる。さらに、収容手段は、血液浄化治療時、透析液導入ラインL1を流動する透析液を加温するための加温バッグ6から成るので、血液浄化治療時に必要な加温バッグ6を流用して透析液ポンプP2の回転駆動によって流動した液体を収容させることができる。加えて、制御部7は、補正工程時、透析液ポンプP2を回転駆動させる前に加温バッグ6内の液体を排出させて透析液ポンプP2の回転駆動(正回転駆動)によって流動する液体を収容するための容量を確保し得るので、透析液ポンプP2の回転駆動によって流動した液体をより確実に加温バッグ6に収容させることができる。
【0076】
なお、第1、第2の実施形態に係る補正工程後、透析液ポンプP2及び排液ポンプP3を同時に駆動させるとともに、重量計4の計測値の変化に基づいて、排液ポンプP3の回転速度を補正する。すなわち、透析液ポンプP2は、その駆動による流動誤差がない(或いは流動誤差が小さくなっている)状態とされているので、重量計4の計測値の変化に基づいて検出される誤差は、排液ポンプP3の誤差であると判別でき、当該排液ポンプP3を補正することができるのである。
【0077】
しかるに、第1、第2の実施形態に係る補正工程は、血液浄化治療前(プライミング終了後)に行われるものとされており、直ちに血液浄化治療を開始することができるようになっている。また、補正工程を血液浄化治療中(動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bの先端に取り付けられた穿刺針を患者に穿刺させて血液回路1によって患者の血液を体外循環させる間)に行うようにしてもよく、この場合、血液浄化治療中に透析液ポンプP2の特性が変化したとしても、当該透析液ポンプP2の回転速度を補正することができる。
【0078】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、例えば補正工程時、透析液ポンプP2を回転駆動させて透析液収容バッグB1内の透析液を排液収容バッグB2に収容させることなく流動させ、その過程における重量計4の計測値の変化に基づいて、当該透析液ポンプP2の回転速度を補正し得るものであれば、補正工程時、排液ポンプP3を駆動させるものとしてもよい。
【0079】
また、制御部7にて透析液ポンプP2の回転速度等(回転速度に関する値を含む)の補正値を算出した後、この補正値に基づき、手動で透析液ポンプP2の回転速度等を補正するようにしてもよい。なお、補正値等(補正値に基づき補正された回転速度等を含む)を、報知手段により報知することが好ましい。報知手段の例としては、補正値等を表示する表示装置、補正値等を音声として出力する音声出力装置、および透析液ポンプP2の実際の回転速度が、補正された回転速度と一致したとき又は一致しなかったときに点灯又は消灯するランプなどが挙げられる。このような実施形態では、手動による透析液ポンプP2の精度のよい補正を支援(補助)することができるとの効果を発揮することができる。
【0080】
また、第1の実施形態において、補液ラインL3に対して電磁弁等を接続し、補正工程時、その電磁弁を開状態とするよう構成してもよく、第2の実施形態において、加温バッグ6に代えて、他の可撓性の収容手段(すなわち、透析液の流量に応じて膨張可能な収容容器)を透析液導入ラインL1に接続するようにしてもよい。なお、適用される血液浄化治療は、透析治療に限定されず、患者の血液を体外循環させつつ浄化する他の治療であってもよい。