【実施例】
【0037】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0038】
製造例1
ユーグレナ・グラシリスEOD-1株(独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許生物寄託
センター(NITE-IPOD)の乾燥粉末(神鋼環境ソリューション製、パラミロン含有率70%
以上)を下記配合でカプセル錠としたものを試験食とし、対照食としてコーンスターチを配合したカプセル錠を製造した。
【0039】
【表1】
【0040】
試験例1
試験概要は以下のとおりである。また、試験デザイン及び試験フローを
図1に示す。
図1中、対照食及び試験食は製造例1で製造したカプセル錠である。
・試験期間 : 対照食2週間、試験食2週間
・試験食の摂取量 : ユーグレナ乾燥粉末換算で 500mg/day
・対照食の摂取量 : 試験食と同量
・被験者 : 男性3名( Age 39.7歳、BMI 22)
【0041】
<被験者の選択>
同意を取得した被験者候補に、スクリーニング検査として便通、疲労等に関するアンケートを行った。スクリーニング検査の結果から、下記選択基準を満たし、便通不良と疲労の自覚があり、且つ下記のいずれの除外基準にも抵触しない適格な者(3名)を選択した
。
【0042】
選択基準
(1) 年齢が20歳以上60歳未満の男性の方
(2) 週の排便回数が週に5日以下の方
(3) 疲労やストレスを感じておられる方
(4) 健康な方で、現在何等かの疾患で治療をしていない方
(5) 非喫煙者の方
除外基準
(1) 現在、何等かの慢性疾患を患い薬物治療を受けている方
(2) 食品にアレルギー症状を示す恐れのある方
(3) 便秘薬、整腸薬および排便訴求のサプリメント類を日常的に摂取している方(難消化性デキストリン、オリゴ糖、食物繊維リッチなど)
(4) 重篤な疾患の既往歴・現病歴のある方
(5) 高度の貧血のある方
(6) 過去4週間以内に、健康食品を変更した方、あるいは新たに使い始めた方
(7) 過去4週間以内に、屋外での長時間の作業、運動、海水浴、レジャーなど、日常生活
を超えて紫外線を浴びた方、あるいは試験期間中にその予定がある方
(8) 夜勤および昼夜交代制のお仕事の方
(9) 同意取得時に、病気の治療や予防等のために病院やクリニックに通って処置(ホルモン補充療法、薬物療法、運動療法、その他)を受けている方、あるいは治療が必要と判断される方
(10) 糖代謝、脂質代謝、肝機能、腎機能、心臓、循環器、呼吸器、内分泌系、神経系の
重篤な疾患あるいは精神疾患の既往歴をお持ちの方
(11) アルコールおよび薬物依存の既往歴をお持ちの方
(12) 化粧品および食品に対してアレルギーの発症の恐れがある方
(13) 同意取得日前4週間以内に、他のヒト試験に参加している方、あるいはこの試験の実施予定期間中に他のヒト試験に参加する予定がある方
【0043】
<試験内容>
選択した被験者について、摂取開始前(以下、0w)検査として、ベースラインの測定を行った。まず、被検者にコップ1杯の水を摂取させた後に環境試験室にて20分間以上安静
待機させることにより、被検者を馴化した。馴化後、被検者にうがいをさせてから、検査(唾液中の免疫グロブリン濃度の測定、自律神経バランス(LF/HF)の測定、PVT検査、及びアンケート)を行った。検査終了後、対照食を被験者へ手渡し、摂取方法を説明し、規定日から摂取を開始させた。
【0044】
対照食の摂取期間は2週間とし、摂取開始から摂取2週後(2wと略)の検査日に試験実施機関に来場させ、0w検査と同様に検査を実施した。検査終了後、試験食を被験者へ手渡し、規定日から摂取を開始させた。
【0045】
試験食の摂取期間は2週間とし、摂取開始から摂取2週間後(4wと略)の検査日に試験実施機関に来場させ、0w及び2w検査と同様に検査を実施した。
【0046】
また、被験者には摂取期間を通して試験食の摂取状況や体調の変化などを日誌に記録させ、各検査日に記入済みの日誌を回収した。なお、毎回の検査は、おおむね同じ時間帯に行った。
【0047】
<検査項目>
(1) PVT(Psychomoter Vigilance Task, 精神負荷タスク)検査 表示器の点灯に対する反応時間を経時的に測定し、疲れによる履行能力の変化を評価した。試験には米国A.M.I
社製の精神動態覚醒水準課題テストプログラムを用いた。画面上に繰り返し表示される課題に対する被験者の反応時間(点灯に対する反応時間)を測定した。1回5分間の課題を行い、これを連続して5回行った(合計25分間)。
【0048】
(2) 自律神経バランス(LF/HF)の測定
生体信号収録装置 Polymate (株式会社ミユキ技研)を用いて、PVT検査前・検査中・
検査後の心拍変動(R-R 間隔)から、副交感神経の活性度を評価した。
【0049】
(3) 唾液測定
PVT検査及び自律神経バランスの測定の前に唾液を採取し、唾液重量測定、及びELISA法を用いて唾液中の分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)濃度の測定を実施した。s-IgAの濃度
は、免疫力の指標となる値である。
【0050】
(4) アンケート
(4-1) 疲労感の評価。日本産業衛生学会産業疲労研究会が公開している「自覚症調べ」を用いた。本アンケートのアンケート用紙の内容を
図2において引用する。
【0051】
(4-2) 便秘の評価。日本語版便秘評価尺度(CAS)を用いた。本アンケートのアンケー
ト用紙の内容を
図3において引用する。
【0052】
(4-3) 睡眠の評価。OSA睡眠調査票を用いた。本アンケートのアンケート用紙の内容を
図4において引用する。該アンケートの設問番号と、各評価項目との対応関係を表2に示す。
【0053】
【表2】
【0054】
(4-5) 上記以外に、睡眠時間(就寝時刻・起床時刻・入眠までに要した時間)、及びOA機器使用時間について、回答してもらった。
【0055】
<試験結果>
(a) 自律神経バランスの測定の結果
安静時(PVT検査前)と事務的作業時(PVT検査中)におけるLF/HF値を
図5に示す。図
5に示されるように、ユーグレナ摂取により、安静時は副交感神経がより活性化(リラックス度がより向上)し、事務的作業時には交感神経がより活性化した。このことから、ユーグレナが自律神経バランス改善(定常化)作用を有することが示唆された。
【0056】
(b) 睡眠の評価結果
OSA睡眠調査票の回答結果より、日々変動する睡眠感を統計的に尺度化した値を算出し
た。算出は、被検者とは別の母集団(選択、排除を行っていない母集団)の平均点が50点となるようにして行った。この結果を
図6に示す。また、検査日の実質睡眠時間(=(起床時刻−就寝時刻)−入眠までの時間)を
図7に示す。
【0057】
図6に示されるように、ユーグレナ摂取により、入眠しやすくなり、睡眠による疲労回復効果が高まり、起床時の眠気が低減した。また、睡眠時間に大きな変動はないこと(
図7)から、睡眠の質が向上したことが示唆された。これらの結果は、安静時のリラックス度が向上(副交感神経が活性化)したことによる結果であると考えられた。
【0058】
(c) 集中力の評価結果
PVT検査における、5分ごとの平均反応時間と反応時間500ms以上となった回数の3人の平均値を、
図8及び9に示す。また、自覚症しらべによる疲労感の総スコアを
図10に示す。
【0059】
図8及び9に示されるように、ユーグレナ摂取により、集中力が向上し、さらにその持続時間がより長くなった。また、ユーグレナ摂取により事務的作業後の疲労感は低減すること(
図10)から、ユーグレナ摂取による集中力の向上及びその持続時間の延長は、身体に過剰な負荷をかけるものではないことが示唆された。これらの結果は、事務的作業時に交感神経がより活性化したことによる結果であると考えられた。
【0060】
(d) 唾液測定の結果
唾液中の分泌型免疫グロブリンA(s-IgA)濃度を
図11に示す。
【0061】
図11に示されるように、ユーグレナ摂取により、s-IgA濃度が向上した、すなわち免
疫力が向上した。この結果は、自律神経バランスの改善(定常化)、睡眠の質的改善による結果であると考えられた。
【0062】
(e) 便通の評価結果
日本語版便秘評価尺度(CAS)の各項目の評価結果を
図12に示し、総スコアを
図13
に示す。
【0063】
図12及び13に示されるように、ユーグレナ摂取時において、便秘の状態・程度に関するCAS項目(お腹がはった感じ(膨れた感じ)、直腸に便が充満している感じ、便の排
出状態、滲み出る水様便、総スコア)の評価点が低減した。この結果より、ユーグレナ摂取により自律神経バランスが改善することで、便の状態・程度も改善されることが示唆された。
【0064】
試験例2
試験概要は以下のとおりである。また、試験デザイン及び試験フローを
図14に示す。
図14中、対照食及び試験食は製造例1で製造したカプセル錠である。
・試験期間 : 対照食4週間→ウォッシュアウト4週間→試験食4週間、又は試験食4週間→ウォッシュアウト4週間→対照食4週間
・試験食の摂取量 : ユーグレナ乾燥粉末換算で 500mg/day
・対照食の摂取量 : 試験食と同量
・被験者 : 男性7名
【0065】
<試験内容>
被験者を2群に分けた。各群の被験者について、摂取開始前(以下、0w)検査として、
ベースラインの測定を行った。まず、被検者にコップ1杯の水を摂取させた後に環境試験
室にて20分間以上安静待機させることにより、被検者を馴化した。馴化後、被検者にうがいをさせてから、唾液中の免疫グロブリン測定検査を行った。具体的には次のようにして行った。まず、無味の滅菌綿を被検者の口内に入れ、1分間口中で保持させた後に、回収
した。続いて、回収した無味の滅菌綿から得られた唾液について、重量測定に基づいて容量を算出し、さらにELISA法により唾液中のs-IgA濃度を測定した。s-IgA濃度と唾液容量
で乗した値をs-IgA重量とし、s-IgA重量を唾液回収時間(1分間)で除した値をs-IgA分泌速度とした。検査終了後、対照食または試験食を手渡し、摂取方法を説明し、規定日から摂取を開始させた。
【0066】
対照食又は試験食の摂取期間は4週間とし、摂取開始から摂取4週後(4wと略)の検査日に試験実施機関に来場させ、0w検査と同様に唾液中の免疫グロブリン測定検査を行った。検査終了後は、試験食及び対照食のいずれも渡さなかった。
【0067】
ウォッシュアウト期間は4週間とし、4wからさらに4週間後(8wと略)の検査日に試験実施機関に来場させ、0w及び4w検査と同様に唾液中の免疫グロブリン測定検査を行った。検査終了後、0wに対照食を手渡した群には試験食を手渡し、0wに試験食を手渡した群には対照食を手渡し、規定日から摂取を開始させた。
【0068】
試験食又は対照食の摂取期間は4週間とし、摂取開始から摂取4週間後(12wと略)の検
査日に試験実施機関に来場させ、0w、4w及び8w検査と同様に唾液中の免疫グロブリン測定検査を行った。
【0069】
また、被験者には摂取期間を通して試験食及び対照食の摂取状況や体調の変化などを日誌に記録させ、各検査日に記入済みの日誌を回収した。なお、毎回の検査は、おおむね同じ時間帯に行った。
【0070】
<試験結果>
s-IgA濃度及びs-IgA分泌速度それぞれについて、試験食又は対照食摂取前(0w又は8w)の測定値に対する、試験食又は対照食摂取後(4w又は12w)の測定値の平均値(変化率)
を算出した。摂取前後(「0w又は8w」と「4w又は12w」との間)の有意差はWilcoxon sign
ed-rank testで求め、試験食群と対照食群との有意差はMann-Whitney U test で求めた。s-IgA濃度の変化率を
図15に示し、s-IgA分泌速度の変化率を
図16に示す。
【0071】
図15及び16に示されるように、ユーグレナ摂取により、s-IgA濃度及びs-IgA分泌速度が向上した。このことから、ユーグレナ摂取により、分泌されるs-IgAの「量」が増加
することが分かった。