特許第6961794号(P6961794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961794
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】全固体電池用の電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/547 20060101AFI20211025BHJP
   C01B 25/14 20060101ALI20211025BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20211025BHJP
   H01M 4/1397 20100101ALI20211025BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20211025BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C04B35/547
   C01B25/14
   H01M10/0562
   H01M4/1397
   H01M4/58
   H01B13/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-505862(P2020-505862)
(86)(22)【出願日】2017年8月4日
(65)【公表番号】特表2020-529386(P2020-529386A)
(43)【公表日】2020年10月8日
(86)【国際出願番号】EP2017069858
(87)【国際公開番号】WO2019025014
(87)【国際公開日】20190207
【審査請求日】2020年3月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】509043571
【氏名又は名称】トヨタ・モーター・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】TOYOTA MOTOR EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 祐樹
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−242456(JP,A)
【文献】 特開平11−097058(JP,A)
【文献】 特開2013−037897(JP,A)
【文献】 特開2016−006674(JP,A)
【文献】 特開2013−137889(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103401017(CN,A)
【文献】 SHEN YANGYUNら,All-Solid-State Rechargeable Lithium Batteries Using LiTi2(PS4)3 Cathode with Li2S-P2S5 Solid Electrolyte,Journal of The Electrochemical Society,2014年,Soc. 161,A154-a159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
C01B 25/14
H01M 10/0562
H01M 4/1397
H01M 4/58
H01B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全固体電池用のLiTi(PSからなる固体電解質および/または電極である焼結部材を製造する方法(100)であって、
チタンと硫黄とを含む粉末混合物を得るために、粉末を混合するステップ(102)と、
アモルファス化粉末混合物を得るために、前記粉末混合物をアモルファス化するステップ(104)と、
前記粉末混合物を含む部材を押圧するステップ(106)と、
チタンと硫黄とを含む中間焼結部材を得るために、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下で、500℃以下の定常焼結温度および20時間以下の定常焼結時間で、前記部材を焼結するステップ(108)と、
チタンと硫黄とを含む焼結部材を得るために、150Pa以下の硫黄分圧および200℃〜400℃の定常温度で前記中間焼結部材を焼結するステップ(114)とを含み、
前記焼結部材は、CuKα線を使用したX線回折測定において2θ=15.08°(±0.50°)、15.28°(±0.50°)、15.92°(±0.50°)、17.5°(±0.50°)、18.24°(±0.50°)、20.30°(±0.50°)、23.44°(±0.50°)、24.48°(±0.50°)、および26.66°(±0.50°)の位置にピークを示す、方法(100)。
【請求項2】
150Pa以下の硫黄分圧は、前記中間焼結部材に希ガスまたは窒素を流すことによって得られる、請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
150Pa以下の硫黄分圧は、前記中間焼結部材を含む密閉容器に存在するガスを連続的に排出することによって得られる、請求項1または2に記載の方法(100)。
【請求項4】
全固体電池用のLiTi(PSからなる固体電解質および/または電極である焼結部材を製造する方法(100)であって、
チタンと硫黄とを含む粉末混合物を得るために、粉末を混合するステップ(102)と、
アモルファス化粉末混合物を得るために、前記粉末混合物をアモルファス化するステップ(104)と、
前記粉末混合物を含む部材を押圧するステップ(106)と、
チタンと硫黄とを含む中間焼結部材を得るために、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下で、500℃以下の定常焼結温度および20時間以下の定常焼結時間で、前記部材を焼結するステップ(108)と、
焼結部材を得るために、勾配温度で前記中間焼結部材を焼結するステップ(114)とを含み、前記中間焼結部材の最高温度は、200℃〜400℃の間にあり、
前記焼結部材は、CuKα線を使用したX線回折測定において2θ=15.08°(±0.50°)、15.28°(±0.50°)、15.92°(±0.50°)、17.5°(±0.50°)、18.24°(±0.50°)、20.30°(±0.50°)、23.44°(±0.50°)、24.48°(±0.50°)、および26.66°(±0.50°)の位置にピークを示す、方法(100)。
【請求項5】
前記中間焼結部材は、前記勾配温度での焼結中に密閉容器に密封される、請求項4に記載の方法(100)。
【請求項6】
200Pa〜0.2MPaの前記硫黄分圧は、固体硫黄を蒸発させることによって得られる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記部材は、容器に配置され、100Pa以下、好ましくは50Pa以下の圧力のアルゴン下で密封される、請求項6に記載の方法(100)。
【請求項8】
200Pa〜0.2MPaの前記硫黄分圧は、硫黄含有ガスから得られる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記部材は、25MPa以上の圧力で押圧される(106)、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
前記部材は、50MPa以上の圧力で押圧される(106)、請求項9に記載の方法(100)。
【請求項11】
前記部材は、75MPa以上の圧力で押圧される(106)、請求項10に記載の方法(100)。
【請求項12】
前記2つの焼結ステップ(108、114)の間に、前記中間焼結部材は、研磨され(110)、押圧される(112)、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項13】
前記研磨および押圧された中間焼結部材は、25MPa以上の圧力で押圧される(112)、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記研磨および押圧された中間焼結部材は、50MPa以上の圧力で押圧される(112)、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記研磨および押圧された中間焼結部材は、75MPa以上の圧力で押圧される(112)、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の分野
本開示は、全固体電池に関し、より具体的には、硫黄を含む固体電解質および/または電極を備えた固体電池に関する。
【背景技術】
【0002】
開示の背景
全固体電池は、高エネルギー密度を有する電池パックの提供を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
全固体電池用の固体電解質および/または電極について、異なる材料が研究されている。特に興味深い材料は、チタンと硫黄とを含み、CuKα線を使用したX線回折測定において2θ=15.08°(±0.50°)、15.28°(±0.50°)、15.92°(±0.50°)、17.5°(±0.50°)、18.24°(±0.50°)、20.30°(±0.50°)、23.44°(±0.50°)、24.48°(±0.50°)、および26.66°(±0.50°)の位置にピークを示す材料である。これらの材料は、一般的に、良好なリチウムイオン導電率を有するが、電子導電率が低い。
【0004】
したがって、これらの材料を固体電解質および/または電極として使用するために、その電子導電率を増加する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示の概要
したがって、本開示の実施形態によれば、全固体電池用のチタンと硫黄とを含む固体電解質および/または電極である焼結部材を製造する方法が提供される。この方法は、チタンと硫黄とを含む粉末混合物を得るために、粉末を混合するステップと、粉末混合物を含む部材を押圧するステップと、チタンと硫黄とを含む中間焼結部材を得るために、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下で部材を焼結するステップと、チタンと硫黄とを含む焼結部材を得るために、150Pa以下の硫黄分圧および200℃〜400℃の定常温度で中間焼結部材を焼結するステップとを含み、焼結部材は、CuKα線を使用したX線回折測定において2θ=15.08°(±0.50°)、15.28°(±0.50°)、15.92°(±0.50°)、17.5°(±0.50°)、18.24°(±0.50°)、20.30°(±0.50°)、23.44°(±0.50°)、24.48°(±0.50°)、および26.66°(±0.50°)の位置にピークを示す。
【0006】
本開示の実施形態によれば、全固体電池用のチタンと硫黄とを含む固体電解質および/または電極である焼結部材を製造する方法が提供される。この方法は、チタンと硫黄とを含む粉末混合物を得るために、粉末を混合するステップと、粉末混合物を含む部材を押圧するステップと、チタンと硫黄とを含む中間焼結部材を得るために、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下で部材を焼結するステップと、チタンと硫黄とを含む焼結部材を得るために、焼結部材を得るために、勾配温度で中間焼結部材を焼結するステップとを含み、中間焼結部材の最高温度は、200℃〜400℃の間にあり、焼結部材は、CuKα線を使用したX線回折測定において2θ=15.08°(±0.50°)、15.28°(±0.50°)、15.92°(±0.50°)、17.5°(±0.50°)、18.24°(±0.50°)、20.30°(±0.50°)、23.44°(±0.50°)、24.48°(±0.50°)、および26.66°(±0.50°)の位置にピークを示す。
【0007】
焼結部材、すなわち、CuKα線を使用したX線回折測定において2θ=15.08°(±0.50°)、15.28°(±0.50°)、15.92°(±0.50°)、17.5°(±0.50°)、18.24°(±0.50°)、20.30°(±0.50°)、23.44°(±0.50°)、24.48°(±0.50°)、および26.66°(±0.50°)の位置にピークを示す固体電解質および/または電極は、一般的に、良好なリチウムイオン導電率を有するが、電子導電率が低い。
【0008】
これらの方法を提供することによって、部材が200Pa(パスカル)〜0.2MPaの硫黄分圧下で焼結されるため、焼結中に硫黄の蒸発が制限され、容積密度を増加する中間焼結部材を得ることができる。実際には、焼結中に硫黄の蒸発が制限され、中間焼結部材の容積密度が増加される。これによって、中間焼結部材の気孔率が減らされる。
【0009】
固体電解質および/または電極全体の電子導電率の増加は、150Pa以下の硫黄分圧および200℃〜400℃の定常温度で中間焼結部材を焼結することによってまたは中間焼結部材の最高温度が200℃〜400℃の間にある勾配温度で中間焼結部材を焼結することによって得られる。
【0010】
150Pa以下の硫黄分圧および200℃〜400℃の定常温度で中間焼結部材を焼結することによってまたは中間焼結部材の最高温度が200℃〜400℃の間にある勾配温度で中間焼結部材を焼結することによって、中間焼結部材に存在している硫黄の一部は、蒸発させられ、チタンの一部は、Ti4+からTi3+以下に、すなわち、Ti2+またはTiに還元される。チタンを還元することによって、焼結部材の電子導電率が増加される。
【0011】
いくつかの実施形態において、150Pa以下の硫黄分圧は、中間焼結部材に希ガスまたは窒素を流すことによって得られる。
【0012】
いくつかの実施形態において、150Pa以下の硫黄分圧は、中間焼結部材を含む密閉容器内に存在するガスを連続的に排出することにより得られる。
【0013】
いくつかの実施形態において、中間焼結部材は、勾配温度での焼結中に密閉容器に密封される。
【0014】
いくつかの実施形態において、焼結部材は、XTi(PSを含み、Xは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)または銀(Ag)である。
【0015】
いくつかの実施形態において、方法は、アモルファス化粉末混合物を得るために、粉末混合物をアモルファス化するステップを含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下での焼結は、500℃以下、好ましくは400℃以下の定常焼結温度を含む。
【0017】
粉末混合物をアモルファス化すると、粉末混合物は、より反応し易くなる。よって、500℃以下の温度で粉末混合物を焼結することができる。
【0018】
一部の実施形態において、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下での焼結は、20時間以下、好ましくは10時間以下の定常焼結時間を含む。
【0019】
粉末混合物をアモルファス化すると、粉末混合物は、より反応し易くなる。よって、20時間以下、好ましくは10時間以下の定常焼結時間で粉末混合物を焼結することができる。
【0020】
いくつかの実施形態において、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧は、固体硫黄を蒸発させることによって得られる。
【0021】
いくつかの実施形態において、部材は、容器に配置され、100Pa以下、好ましくは50Pa以下の圧力のアルゴン下で密封される。
【0022】
いくつかの実施形態において、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧は、硫黄含有ガスから得られる。
【0023】
硫黄含有ガスは、硫化水素、硫化炭素または硫化燐などのガスであってもよい。
いくつかの実施形態において、部材は、25MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは75MPa以上、500MPa以下、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下の圧力で押圧される。
【0024】
いくつかの実施形態において、2つの焼結ステップの間に、中間焼結部材は、研磨され、押圧される。
【0025】
いくつかの実施形態において、研磨および押圧された中間焼結部材は、25MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは75MPa以上、500MPa以下、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下の圧力で押圧される。
【0026】
互いに矛盾しない限り、上述した要素と本明細書に記載の要素とを組み合わせることは、意図されている。
【0027】
理解すべきことは、上記の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方は、例示および説明のみであり、特許請求の範囲に記載の本開示を限定しないことである。
【0028】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本開示の実施形態を例示し、以下の説明と共に、本開示の原理を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本開示の実施形態に係る方法を示すフローチャートである。
図2】本開示のサンプルのX線回折スペクトルを示す図である。
図3】比較例のサンプルのX線回折スペクトルを示す図である。
図4】周波数に従って変化する電気伝導率の実数部を示す図である。
図5】周波数に従って変化する電気伝導率の実数部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
実施形態の説明
以下、添付の図面に示されている例示を参照して、本開示の例示的な実施形態を詳細に説明する。可能な場合、全ての図面において、同一の参照番号を用いて、同一または類似の部品を指す。
【0031】
図1は、本開示の実施形態に係る方法のフローチャートを示す。
サンプル1は、本開示のサンプルであり、サンプル2は、比較例のサンプルである。
【0032】
サンプル1およびサンプル2は、両方ともLiTi(PS固体電解質または電極である。
【0033】
全ての実験は、空気と接触しないように、アルゴンまたは真空または硫黄雰囲気下で行われる。
【0034】
図1を参照して、サンプル1を用いて、全固体電池用のチタンと硫黄とを含む固体電解質および/または電極を製造する方法100を説明する。
【0035】
ステップ102において、0.0396g(グラム)のLiS、0.5745gのPおよび0.3859gのTiSを混合して、粉末混合物を得る。LiS(99%、硫化リチウム、Sigma-Aldrich社(登録商標))、P(98%、五硫化燐、Sigma-Aldrich社(登録商標))およびTiS(99.9%、二硫化チタン、Sigma-Aldrich社(登録商標))は、99質量%以上の純度を有する粉末である。
【0036】
必須のステップではないステップ104において、粉末混合物は、遊星型研磨装置(Fritsch社、P7)でアモルファス化される。粉末混合物は、アルゴン下でジルコニウムポットに配置された。このジルコニウムポットは、45mL(ミリメートル)の容積を有し、10mm(ミリメートル)の直径を有する18個のジルコニウムボールを含む。370rpm(毎分回転数)で40時間粉末混合物をアモルファス化することによって、アモルファス化粉末混合物を得た。
【0037】
ステップ106において、アモルファス化粉末混合物は、25MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは75MPa以上、500MPa以下、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下の圧力で押圧される。
【0038】
例えば、100mgのアモルファス化粉末混合物を200MPaで押圧することによって、部材を形成する。
【0039】
ステップ108において、150Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下で部材を焼結することによって、チタンと硫黄とを含む中間焼結部材を形成する。
【0040】
例えば、100mgの部材を、Sigma-Aldrich社(登録商標)からの5mgの硫黄フレーク(99.99%)と共にガラス管に投入し、ガラス管を非常に低い圧力、例えば30Paのアルゴン下で密封する。400℃(摂氏)の定常温度および8時間の定常時間で部材を焼結することによって、チタンと硫黄とを含む中間焼結部材を形成する。加熱すると、固体の硫黄フレークによって、密封されたガラス管内の硫黄分圧が、200Pa〜0.2MPaになる。
【0041】
代替的には、150Pa〜0.2MPaの硫黄分圧は、硫黄含有ガス、例えば硫化水素(HS)、二硫化炭素(CS)または硫化燐(P、例えばP、PまたはP)を密閉容器、例えば密封されたガラス管に密封することによって、または開放容器にガスを流すことによって得ることができる。
【0042】
次に、中間焼結部材を150Pa以下の硫黄分圧および200℃〜400℃の定常温度で焼結する(ステップ114)ことによって、チタンと硫黄とを含む焼結部材を形成する。
【0043】
例えば、中間焼結部材は、開放容器において、アルゴン雰囲気下で、すなわち、中間焼結部材にアルゴンを流すことによって、300℃の定常温度および8時間の定常時間で焼結することができる。他のガス、例えば窒素、ヘリウム、ネオンおよびキセノンを使用してもよい。
【0044】
2つの焼結ステップ108および114の間に、中間焼結部材を研磨する(ステップ110)ことができ、押圧する(ステップ112)ことができる。これらのステップ110および112は、任意である。
【0045】
ステップ106および112に使用された圧力は、異なってもよい。ステップ106および112に使用された圧力は、等しくてもよい。しかしながら、ステップ106および112の両方に使用された圧力は、25MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは75MPa以上、500MPa以下、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下である。
【0046】
例えば、ステップ106の圧力は、200MPaに等しくてもよく、ステップ112の圧力は、100MPaに等しくてもよい。
【0047】
サンプル2の製造方法は、150Pa未満の硫黄分圧下で部材および中間焼結部材を焼結することを除いて、サンプル1の製造方法と同様である。
【0048】
部材および中間焼結部材の両方は、例えばサンプル2の部材および中間焼結部材を非常に低い圧力、例えば30Paのアルゴンと共にガラス管に密封することによって、150Pa未満の硫黄分圧下で400℃で8時間に焼結される。したがって、サンプル2の焼結部材は、150MPa未満の硫黄分圧下で400℃で16時間に焼結されている。
【0049】
図2および図3は、サンプル1およびサンプル2のX線回折スペクトルを各々示している。図3および4から分かるように、サンプル1およびサンプル2の両方は、CuKα線を使用したX線回折測定において2θ=15.08°(±0.50°)、15.28°(±0.50°)、15.92°(±0.50°)、17.5°(±0.50°)、18.24°(±0.50°)、20.30°(±0.50°)、23.44°(±0.50°)、24.48°(±0.50°)、および26.66°(±0.50°)の位置にピークを示す。
【0050】
サンプル1およびサンプル2を2つのSUS集電体(ステンレス鋼、SUS301)の間に各々挟み、バイオロジック社製のインピーダンス利得位相アナライザを用いて、サンプル1とサンプル2の両方のインピーダンスを測定した。バイオロジック社製のVMP3を周波数応答アナライザ(FRA)として測定に使用した。測定は、10mV(ミリボルト)の交流電圧および1Hz(ヘルツ)〜1MHzの周波数を有する高周波数範囲から開始した。
【0051】
サンプル1の電子伝導率は、6.1×10−5S/cm(シーメンス/センチメートル)である。一方、サンプル2のイオン伝導率は、4.6×10−10S/cmである。
【0052】
したがって、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下での焼結およびその後の硫黄を蒸発させる焼結によって、焼結部材の電子導電率が著しく増加した。
【0053】
図4および5は、周波数(Hz)に従って変化するサンプル1およびサンプル2の各々の電気伝導率(S/cm)の実数部を示している。
【0054】
サンプル2は、明確な温度依存性を示している。一方、サンプル1は、60℃の温度まで非常に小さな温度依存性を示している。イオン伝導率が温度に強く依存するため、周波数に従って変化するサンプル1の電気伝導率の実数部の準非依存性は、サンプル1の焼結部材が電子伝導を示すことを表す。電気伝導率は、イオン伝導率と電子伝導率の合計である。
【0055】
全てのステップ102〜114を実施することによってサンプル1を得たが、ステップ104および/またはステップ110および112を実施してもしなくても、同様の結果を得ることができる。
【0056】
代替的には、150Pa以下の硫黄分圧は、中間焼結部材を含む密閉容器に存在するガスを連続的に排出することにより得ることができる。
【0057】
代替的には、中間焼結部材の最高温度が200℃〜400℃の間にある勾配温度の下で中間焼結部材を焼結する(ステップ114)ことによって、焼結部材を形成することができる。
【0058】
例えば、中間焼結部材は、例えば30Paの非常に低い圧力のアルゴン下でガラス管に密封され、一方側が300℃であり、他方側が100℃である勾配温度で、8時間の焼結時間で焼結されてもよい。
【0059】
粉末混合物がアモルファス化されていない場合、すなわち、ステップ104が行われていない場合、ステップ106において、25MPa以上、好ましくは50MPa以上、より好ましくは75MPa以上、500MPa以下、好ましくは400MPa以下、より好ましくは300MPa以下の圧力で粉末混合物を押圧する。
【0060】
例えば、100mgの粉末混合物を200MPaで押圧することによって、部材を形成する。
【0061】
ステップ108において、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧下で部材を焼結することによって、硫黄を含む中間焼結部材を形成する。
【0062】
例えば、100mgの部材を、Sigma-Aldrich社(登録商標)から5mgの硫黄フレーク(99.99%)と共にガラス管に投入し、ガラス管を非常に低い圧力、例えば30Paのアルゴン下で密封する。500℃(摂氏)を超える定常温度、例えば750℃および10時間の定常時間で部材を焼結することによって、チタンと硫黄とを含む中間焼結部材を形成する。
【0063】
代替的には、200Pa〜0.2MPaの硫黄分圧は、密閉容器、例えば密封されたガラス管に硫黄含有ガス、例えば硫化水素(HS)、二硫化炭素(CS)または硫化燐(P、例えばP、PまたはP)を密封することによって、または開放容器にガスを流すことによって得ることができる。
【0064】
中間焼結部材の焼結114の条件は、上記と同様である。
特許請求の範囲を含む明細書の全体において、「含む」という用語は、特に明記しない限り、「少なくとも1つを含む」と同義であると理解すべきである。さらに、特許請求の範囲を含む説明に記載された範囲は、特に明記しない限り、両端値を含むものとして理解すべきである。記載された要素の特定の値は、当業者に知られている製造または業界誤差の許容範囲に入ると理解すべきである。「実質的に」および/または「約」および/または「一般的に」という用語は、そのような許容範囲に入ると理解すべきである。
【0065】
本開示を特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態は、本開示の原理および用途の単なる例示にすぎないことを理解すべきである。
【0066】
本明細書および実施例は、例示のみであり、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲によって示される。
図1
図2
図3
図4
図5