(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピストンの外周には、前記シリンダーの内周との間に隙間を形成する切欠き部が、前記一端側から前記他端側に向けて形成されており、この切欠き部に、前記切込みが位置するように設けられている請求項1〜4のいずれか1つに記載のダンパー。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係るダンパーの、第1実施形態について説明する。
【0013】
図1に示されるダンパー10は、互いに近接離反する一対の部材に取付けられ、該一対の部材が近接又は離反するときに制動力を付与するものであって、例えば、自動車のインストルメントパネルに設けられた収容部の開口部に、開閉可能に取付けられたグローブボックスやリッド等の、制動用として用いることができる。なお、以下の実施形態においては、一方の部材を、インストルメントパネルの収容部等の固定体とし、他方の部材を、固定体の開口部に開閉可能に取付けられた、グローブボックスやリッド等の開閉体として説明するが、一対の部材は互いに近接離反可能なものであれば、特に限定はされない。
【0014】
図1に示すように、この実施形態のダンパー10は、略円筒状をなしたシリンダー20と、該シリンダー20内に移動可能に挿入されたロッド30と、このロッド30の軸方向先端側に装着された弾性樹脂材料からなるピストン50と、シリンダー20の開口部22に装着されるキャップ80とから、主として構成されている。
【0015】
図1や
図7に示すように、この実施形態のシリンダー20は、所定長さで延びる略円筒状の壁部21を有しており、その軸方向の一端側が開口して開口部22をなしている。また、壁部21の他端側は端部壁23によって閉塞されている。この端部壁23の外側には環状をなした取付部24が設けられており、該取付部24を介して、インストルメントパネル等の一方の部材に、シリンダー20が取付けられるようになっている。更に、壁部21の一端側には、円形状の嵌合孔25,25が周方向に対向して形成されている(
図1参照)。なお、壁部21の他端側を開口させて、オリフィスを設けたキャップを装着してもよく、更に、取付部を、壁部21外周の軸方向所定箇所に設けてもよい。また、シリンダー20は、その外径が12mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
【0016】
図6(a),(b)に示すように、この実施形態における前記キャップ80は、この実施形態における前記キャップ80は、半割の円筒状をなした一対の半割体81,81を有しており、これらを係止片88やこれに係止する被係止部90を介して互いに係合させることで、一体化されるようになっている。各半割体81は、その基端外周にフランジ部83が設けられており、また、軸方向途中の外周に嵌合突部84が突設されている。そして、キャップ80は、その先端側からシリンダー20の開口部22内に挿入されて、各フランジ部83をシリンダー20の基端面に係止させると共に、各嵌合突部84をシリンダー20の嵌合孔25,25に嵌合させることで、シリンダー20の基端側に装着されるようになっている(
図7及び
図8参照)。
【0017】
上記ロッド30は、上記シリンダー20の開口部22を通して、その先端側からシリンダー20内に移動可能に挿入されるものであって、円柱状をなした軸部31と、その先端側に連設され、ピストン50が装着されるピストン装着部32とを有している。前記軸部31の基端側には、環状をなした取付部33が設けられており、該取付部33を介して、グローブボックス等の他方の部材に、ロッド30が取付けられるようになっている。
【0018】
図2(a)〜(c)を併せて参照すると、前記ピストン装着部32は、ロッド30の軸方向の最先端に設けられ、略円板状をなした第1係合部34と、この第1係合部34に対して、ロッド基端側に所定間隔をあけて設けられたストッパー部35とを有している。
【0019】
前記第1係合部34は、ダンパーが制動力を付与する方向となる制動方向に、ロッド30が移動する際に、
図11に示すように、ピストン50に係合する部分となっている(こでは第1係合部34はピストン50の一端側に係合する)。なお、この実施形態におけるダンパーの制動方向とは、第1係合部34がシリンダー20の端部壁23(
図7参照)から離れて、シリンダー20の開口部22からの、ロッド30の引出し量が増大する方向を意味する(
図7や
図10,11の矢印F1参照)。
【0020】
また、ストッパー部35は、全体として略円形突起状をなしていると共に、その周方向両側であって、第1係合部34側の位置に、壁部をカットしてなるカット部35a,35aがそれぞれ形成されている。各カット部35aには、後述する第2柱部39に設けた平坦面40に連続する平坦面が設けられている(
図2(a)参照)。なお、第1係合部34及びストッパー部35は、その外径が、ピストン50の内径よりも大きく形成されており、更に第1係合部34とストッパー部35との距離は、ピストン50の軸方向長さよりも長く形成されており、第1係合部34とストッパー部35との間で、ピストン50が軸方向に伸縮可能に装着されるようになっている。
【0021】
更にピストン装着部32は、第1係合部34の内面側からロッド基端側に向けて延びる略円柱状の第1柱部36と、この第1柱部36の延出方向先端に連設された略円形突起状をなすと共に、ロッド30がダンパーの制動方向とは反対の戻り方向に移動する際に(
図12及び
図13の矢印F2参照)、ピストン50に係合する第2係合部37と、この第2係合部37の基端側から、凹部38を介してロッド基端側に延びて、前記ストッパー部35に連結された、略円柱状をなした第2柱部39とを有している。
【0022】
なお、この実施形態におけるダンパーの制動方向とは反対の戻り方向(以下、単に「戻り方向」ともいう)とは、第1係合部34がシリンダー20の端部壁23(
図7参照)に近接して、シリンダー20内への、ロッド30の押込み量が増大する方向に、ロッド30が移動することを意味する(
図8や
図12,13の矢印F2参照)。
【0023】
また、前記第2係合部37は、
図9や
図12(a),
図13(a)に示すように、ピストン50の後述する圧接部53よりも、ダンパーの戻り方向側に配置されている。更に、第2係合部37及び第2柱部39は、第1柱部36よりも大径で且つ第1係合部34やストッパー部35よりも小径とされており、また、第1柱部36よりも第2柱部39の方が長く形成されている。
【0024】
なお、この実施形態においては、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際に、
図12(a),
図13(a)に示すように、前記第2係合部37がピストン50の後述する被係合部61に係合するようになっている。すなわち、本発明におけるロッドの「係合部」とは、上記第2係合部37を意味している。また、上記の
図12に示す状態から、更にロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、軸方向に縮んでシリンダー内周に圧接した状態のピストン50が、延びた状態に弾性復帰するようになっているが(
図13参照)、同
図13に示すように、ピストン50が最も長く延びた状態では、前記ストッパー部35がピストン50の他端側に当接して、ピストン50の移動が規制されるようになっている。
【0025】
また、
図2(a)に示すように、第1係合部34、ストッパー部35、第1柱部36、及び第2柱部39の外周であって、その周方向の2か所には、ロッド30の軸方向に沿って平面状にカットされてなる、平坦面40,40が互いに平行となるように形成されている。なお、第2柱部39に形成された平坦面40は、ストッパー部35に設けたカット部35a,35aの平坦面に対して面一とされている。この平坦面40により、シリンダー20内周やピストン50内周に対して、隙間が形成されるようになっている。
【0026】
更に
図2(a)に示すように、ロッド30の第2係合部37側から基端側に向けて、ピストン50の内周に当接する突条41が軸方向に延びるように、かつ、周方向に所定間隔で並んで複数形成されている。具体的にこの実施形態では、
図2(c)に示すように、第2柱部39の外周であって、前記平坦面40の周方向両側には、ロッド30の軸方向に沿って延びる突条41,41が、ロッド30の第2係合部37側寄りの先端部分から、ストッパー部35の手前部分に至る長さで突設されている(この実施形態では合計4か所に突条41が設けられている)。この突条41によって、ピストン50内周と第2柱部39外周との間に、隙間が形成されるようになっている。
【0027】
更に
図2(a)や
図2(b)に示すように、第1係合部34の内面の周方向一箇所から、第1柱部36の軸方向に沿って、所定深さで溝部43が形成されている。
図2(b)に示すように、この溝部43は、第1係合部34に設けた平坦面40,40の間であって、その中間となるように設けられている。この溝部43によって、
図11(a)に示すように、第1係合部34の内面にピストン50の一端面が当接した状態においても、第1係合部34の内面とピストン50の一端面との間に隙間を確保でき、また、第1柱部36の外周とピストン50の被係合部61(
図4(c)参照)の内周との間に、隙間を確保できるようになっている。
【0028】
また、軸部31の先端側外周、すなわち、軸部31とストッパー部35との連結部分の外周には、ロッド30の基端側に向けて次第に縮径した、傾斜部44が形成されている。更に、第1柱部36の先端側外周にも、ロッド30の基端側に向けて次第に縮径した傾斜部45が形成されている。
【0029】
なお、上記構造をなしたロッド30は、上述したように、シリンダー20内に先端の第1係合部34側から挿入されて、シリンダー20内で移動可能に配置されるが、この際、
図7や
図8に示すように、ロッド30の第1係合部34を境にして、ロッド30の、ダンパーの戻り方向側に位置する第1室R1と、ロッド30の、ダンパーの制動方向側に位置する第2室R2とが形成されるようになっている。この実施形態では、シリンダー20の端部壁23側に第1室R1が形成され、同シリンダー20の開口部22側に第2室R2が形成される。また、以上説明したロッド30は、軸部31や、取付部33、第1係合部34、ストッパー部35、第2係合部37、その他、第1柱部36や、第2柱部39、複数の突条41等が、すべて一体的に形成されている。
【0030】
次に、
図3〜5を参照して、ロッド30の軸方向に沿って所定長さで延び、ロッドの30の第1係合部34の基端側に、ロッド30を囲むように装着され、弾性樹脂材料からなるピストン50について説明する。このピストン50は、例えば、ラバーやエラストマー等のゴム弾性材料や、スポンジ等の樹脂材料から形成されており、ピストン50が軸方向に圧縮された場合には拡径し、軸方向に引張られた場合には縮径するようになっている。なお、上記ピストン50は、ロッド30がダンパーの制動方向に移動する際に、追随してダンパーの制動方向に移動し、一方、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際にも、追随してダンパーの戻り方向に移動する。
【0031】
この実施形態のピストン50は、略円筒状をなすように所定長さで延び、その外周が円周形状とされた本体51を有している。この本体51の、ダンパーの制動方向とは反対側の一端部52(ピストン50がロッド30に装着された状態で、第1係合部34側に位置する端部)の外周は、本体51の軸方向の一端面に向かって次第に縮径するテーパ状をなしている。
【0032】
また、本体51の、ダンパーの制動方向側の他端部(ピストン50がロッド30に装着された状態で、ストッパー部35側に位置する端部)の外周には、シリンダー20の内周に常時圧接されて、ロッド30の移動時(ダンパーの移動方向及びダンパーの戻り方向の両方)に、ピストン50に制動力を付与するための圧接部53が設けられている。
【0033】
なお、以下の説明においては、ピストンにおける、ダンパーの制動方向とは反対側の一端部又は一端を、単に「一端部」又は「一端」とし、ダンパーの制動方向側の他端部又は他端を、単に「他端部」又は「他端」として説明する。
【0034】
また、
図4(c)や
図4(d)に示すように、ピストン50の外周は、ピストン50の一端側から他端側に向けて拡径するテーパ状をなしている。この実施形態では、ピストン50を構成する本体51の外周が、テーパ状をなした一端部52の他端側から前記圧接部53に向けて、次第に拡径するテーパ状に形成されている。
【0035】
更に、本体51の外周には、テーパ状をなした一端部52の他端側から、軸方向に沿って延びる切欠き部54が形成されている。この切欠き部54は、シリンダー内周と、ピストン外周(本体51や圧接部53)との間に、空気の逃げ道を形成して、ピストン50を伸縮変形させやすくすると共に、ピストン50によるダンパー制動力の調整を図るものである。
図4(e)に示すように、この切欠き部54は、ピストン50を軸方向から見たときに、本体51の外周の、円周形状の一部を一平面でカットした形状をなしており、本体51の周方向の2箇所に互いに平行となるように形成されている。更に
図3に示すように、この実施形態における切欠き部54は、前記圧接部53を軸方向に貫通して、本体51の他端に至るまで形成されている。このような切欠き部54を設けることにより、ダンパーの制動力が作用していない状態で、本体51の圧接部53から一端側に至るまでの外周部分と、シリンダー20の内周との間に隙間が形成される。また、圧接部53に切欠き部54を形成したことで、ロッド30やピストン50の静止時や、ダンパーの制動時、ダンパーの制動解除時のいずれにおいても、圧接部53の切欠き部54がシリンダー20の内周に密着せず、シリンダー20内周との間で隙間が形成されるようになっている。
【0036】
なお、この実施形態における切欠き部54は、本体51の一端部52の他端側から、本体51の他端に至るまで形成されているが、本体51の一端部52がテーパ状となっていない場合には、切欠き部を本体51の一端から他端に至るまで形成してもよい。但し、切欠き部は、本体51の一端から軸方向途中まで形成してもよく、また、本体51の外周に形成せず、本体51の他端側の圧接部53のみに設けてもよい。
【0037】
また、
図3(a),(b)に示すように、この実施形態における前記圧接部53は、ピストン50の本体51の外径方向に突出し、かつ、本体51の周方向に沿って細長く延びる、環状をなした一対の環状凸部56,56を有している。これらの一対の環状凸部56,56は、本体51の他端部外周であって、圧接部53の周方向2か所に設けた切欠き部54,54の間に、それぞれ配置されている(
図4(e)参照)。具体的に説明すると、各環状凸部56は、本体51の他端外周に配置され、本体51の周方向に沿って延びる第1凸部57と、この第1凸部57に対して、ピストン50の一端側に所定間隔をあけて平行に配置されると共に、本体51の周方向に沿って延びる第2凸部58と、第1凸部57及び第2凸部58の周方向両端部どうしを互いに連結する連結凸部59,59とからなる。また、凸部57,58,59の内側には、本体51の周方向に沿って所定深さで延びる凹溝状をなした凹部60が設けられている。更に、各凸部57,58,59の最外径は、シリンダー20の内径よりも大きく形成されており、各凸部57,58,59がシリンダー20の内周に常時圧接されるようになっている。
【0038】
また、
図4(c),(d)に示すように、本体51の一端側内周には、その周方向に沿って環状に突出した、被係合部61が設けられている。この被係合部61は、
図8の矢印F2に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際に、ロッド30の第2係合部37に係合するようになっている(
図12(a)参照)。また、この際には、
図12(b)に示すように、ロッド30の第1係合部34と、ピストン50の一端との間に、隙間が形成される。
【0039】
更に
図3(b)や、
図4(c),(d)に示すように、本体51の内周であって、前記一対の切欠き部54,54に対応する位置に、本体51の一端から他端側に向けて軸方向に沿って延びる、凹溝状をなした空気流通溝62,62が形成されている。
図9に示すように、この空気流通溝62は、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合した状態で、本体51の一端から、ロッド30の第2係合部37や凹部38を超えて、第2柱部39の一端に至る長さで延びている。そして、この空気流通溝62は、ロッド30の第1柱部36や第2係合部37、第2柱部39の一端側の外周との間に、隙間を形成して、ロッド30とピストン50との間に空気を流通させる部分となる。なお、上記空気流通溝は、ロッド30の外周とピストン50の内周との間に形成されていればよく、例えば、ロッドの外周側に形成してもよい。
【0040】
また、
図3や
図4(a)に示すように、本体51の外周に設けた一方の切欠き部54には、ピストン50の一端から他端に向けて、ピストン50の軸方向全域に亘って切込み55が形成されている。この切込み55は、
図4(d)や
図4(e)に示すように、ピストン50の内周に形成した一対の空気流通溝62,62のうち、一方の空気流通溝62に連通している。そして、この切込み55は、ピストン50がダンパーの制動方向に移動する際には、空気流通溝62内が減圧されるために閉じており(
図7参照)、一方、ピストン50がダンパーの戻り方向に移動する際には、空気流通溝62から流入した空気によって押されて、開くように構成されている(
図5及び
図8参照)。
【0041】
また、本体51に設けた切込み55によって、本体51を軸方向に沿って2つに分離することができるようになっているので、ロッド30の外径側からピストン装着部32にピストン50を装着可能となっている。なお、切込み55は、本体51の一端から他端に亘る軸方向全域に形成するのではなく、本体51の一端から他端側に向けて、軸方向途中に至る長さで形成してもよい。
【0042】
そして、ロッド30やピストン50がダンパーの制動方向や戻り方向に移動せず、静止した状態、すなわち、ピストン50が伸縮していない平常時においては、
図9に示すように、ロッド30の第1係合部34と、ピストン50の一端との間に、隙間が形成されると共に、ロッド30のストッパー部35と、ピストン50の他端との間にも、ストッパー部35に設けたカット部35aによって隙間が形成されるようになっている。
【0043】
上記構成をなしたダンパー10は、ダンパーの制動時に、ロッド30の第1係合部34が、ピストン50の一端部52に当接し、シリンダー20の内周に常時圧接された、圧接部53の環状凸部56,56との間で、ピストン50に対して、軸方向圧縮力が作用するように構成されている。すなわち、
図10(a)に示すように、ダンパーに制動力が付与されていない状態では、
図10(b)において、ピストン50の一対の環状凸部56,56が、シリンダー20の内周に圧接されているが、この状態から、ロッド30がダンパーの制動方向に移動すると、
図11(a)に示すように、第1係合部34がピストン50の一端部52に当接し、シリンダー20の内周に圧接された圧接部53との間で、ピストン50に対して軸方向圧縮力が作用することで、ピストン50が拡径してシリンダー内周に対する圧接量が増大する。その結果、
図11(b)に示すように、ピストン50の、シリンダー20の内周に圧接する部分S(点描のハッチングで表現した部分)を増大させて、シリンダー20内周に対するピストン50の摩擦力を高めることができ、ダンパーの制動力を増大させることが可能となっている。
【0044】
また、この実施形態におけるダンパー10は、シリンダー20内において、ピストン50に対して空気を通過させるための通路として、(1)ロッド30の第1係合部34の平坦面40とシリンダー20内周との隙間、(2)ロッド30の第1係合部34とピストン50の一端との隙間、(3)ロッド30の溝部43とピストン50内周との隙間、(4)ロッド30外周とピストン50の空気流通溝62との隙間、(5)ロッド30の凹部38とピストン50内周との隙間、(6)突条41によるロッド30の第2柱部39とピストン50内周との隙間、(7)ロッド30のストッパー部35のカット部35aとピストン50の他端との隙間、(8)ロッド30のストッパー部35の平坦面40とシリンダー20内周との隙間、が設けられている。
【0045】
そして、
図9に示すように、ロッド30が静止してダンパーの制動力が付与されていない状態では、上記(1)〜(8)の隙間が確保される。また、
図11に示すように、ロッド30がダンパーの制動方向に移動する際には、ロッド30の第1係合部34がピストン50の一端に当接するため、上記(2)の隙間はなくなるが、上記(1)及び(3)〜(8)の隙間は確保される。更に
図12に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際には、ロッド30の第1係合部34が再びピストン50の一端から離れるため、上記(1)〜(8)の隙間が確保される。
【0046】
また、このダンパー10においては、ダンパーが制動された状態から、ダンパーの制動力が解除される状態に切り替わるとき、すなわち、
図11に示すような、ピストン50に軸方向圧縮力が作用して、ピストン50が拡径してシリンダー20内周に対する摩擦力が増大した状態から、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動する際に、次のような動作がなされることで、ピストン50を所定位置に戻しやすい構造となっている。すなわち、
図11に示す状態から、
図12に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して、ピストン50に対して軸方向引張力を作用させて、ピストン50の一端側を、圧接部53により移動規制された他端側に対して引き延ばして、ピストン50を元の形状に縮径させることが可能となっている(
図13参照)。その結果、ピストン50の、シリンダー20の内周に対する摩擦力を低減させて、ピストン50を戻しやすくすることができるようになっている。
【0047】
次に、上記構成からなるダンパー10の作用効果について説明する。
【0048】
すなわち、このダンパー10においては、インストルメントパネル等の一方の部材に対して、開閉体等の他方の部材が開いて、
図7の矢印F1に示すように、ロッド30がダンパーの制動方向に移動すると、第1係合部34がピストン50の一端部52に当接して圧接部53との間で、ピストン50に軸方向圧縮力が作用して、ピストン50が拡径してシリンダー内周に対する圧接量が増大するので、ピストン50の、シリンダー20の内周に圧接する部分Sを増大させて(
図11(b)参照)、ダンパーの制動力を増大させることができ、ロッド30の移動速度に応じて制動力が変動する、荷重応答特性に優れたダンパー10を得ることができる。
【0049】
一方、ロッド30がダンパーの制動方向に移動して、ピストン50が圧縮されてシリンダー内周に対する圧接量が増大した状態(
図11参照)から、インストルメントパネル等の部材に対して開閉体等の部材を閉じて、
図8の矢印F2に示すように、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動すると、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して(
図12(a)参照)、ピストン50をダンパーの戻り方向側に押し込む。このとき、ピストン50の圧接部53はシリンダー20の内周に圧接された状態となっているので、ピストン50の他端側の移動は抑制されつつ、一端側が他端側から離れる方向に押されて、ピストン50に対して軸方向引張力が作用して、縮径状態とされた弾性樹脂材料からなるピストン50が軸方向に引き延ばされつつ、ロッド30の第1係合部34が、ピストン50の一端側から離れる。
【0050】
すると、
図9の矢印に示すように、第1室R1内の空気が、上記(1)のロッド30の第1係合部34の平坦面40とシリンダー20内周との隙間を通って、上記(2)ロッド30の第1係合部34とピストン50の一端との隙間から、主として、ロッド30外周とピストン50の空気流通溝62との隙間に流れ込む。その結果、閉じた状態の切込み55が、
図5や
図8に示すように、空気圧によって押されて、切込み55の内縁部側から押されて徐々に開くので(この場合、ピストン50の一端側が比較的大きく開き、他端側に向けて開き量が徐々に小さくなる)、この切込み55からロッド30外周とピストン50内周との間の空気を、ピストン50の他端側へ排出することができる。
【0051】
排出された空気は、上記(7)ロッド30のストッパー部35のカット部35aとピストン50の他端との隙間や、上記(8)ロッド30のストッパー部35の平坦面40とシリンダー20内周との隙間を通して、ロッド30のピストン装着部32の外方へ排出される。また、空気の一部は、上記の(3)ロッド30の溝部43とピストン50内周との隙間や、上記(4)ロッド30外周とピストン50の空気流通溝62との隙間、上記(5)ロッド30の凹部38とピストン50内周との隙間、更に上記(6)突条41によるロッド30の第2柱部39とピストン50内周との隙間を通って、ピストン50の他端側から排出される。
【0052】
なお、
図13に示すように、ダンパーの戻り方向に移動するロッド30によって、拡径状態から縮径して引き延ばされたピストン50は、その弾性復元力によって元の形状に戻るようになっている。
【0053】
以上のように、このダンパー10においては、ピストン50の本体51には、ダンパーの制動方向とは反対側の一端から、ダンパーの制動方向側の他端に向けて、切込み55が設けられているので、ピストン50がピストン戻り方向に移動するときに、閉じた状態の切込み55が、
図5や
図8に示すように押されて開くため、ロッド30とピストン50との間の空気を排出しやすくすることができ、その結果、ピストン50がピストン戻り方向に移動するときの抵抗を低減して、ピストン50をシリンダー20の所定位置に戻しやすくすることができる。
【0054】
また、ピストン50に切込み55を設けたことで、ロッド30がダンパーの戻り方向に移動するときに、切込み55が開いて空気流通路を確保することができるので、ロッド30の第1係合部34と、ピストン50の他端との、軸方向の隙間を小さくすることができる。その結果、ロッド30がダンパーの制動方向に移動するときに、ロッド30の第1係合部34を、ピストン50の他端に速やかに当接させて、制動力を発揮させることができるので、ダンパー制動時のピストン50の空走距離を少なくすることができる(ダンパー制動時におけるピストン50の応答性を高めて、ダンパーの制動開始までの遊びを少なくすることができる)。
【0055】
また、上述したように、ピストン50を所定位置に戻しやすくすることができるので、シリンダー20やピストン50の大型化を抑制することができ、ダンパー10の大型化を抑止することができる。なお、ロッド30がダンパーの制動方向に移動して、ピストン50もダンパーの制動方向に移動する際には、切込み55が閉じるので、シリンダー20の内周に対するピストン50の外周の圧接力が損なわれることを抑制できるので、ダンパーの制動力への影響を少なくすることができる。
【0056】
また、この実施形態においては、
図4(d)に示すように、ロッド30の外周とピストン50の内周との間には、切込み55に連通する空気流通溝62が形成されている。そのため、ピストン50がピストン戻り方向に移動して、空気流通溝62に空気が入り込むと、閉じた状態の切込み55が、
図5や
図8に示すように押されて開くため、ロッド30とピストン50との間の空気を排出しやすくすることができる。すなわち、空気流通溝62を設けたことで、閉じた状態の切込み55を開きやすくすることができる。その結果、ピストン50がピストン戻り方向に移動するときの抵抗をより低減して、ピストン50をシリンダー20の所定位置により一層戻しやすくすることができる。更に、ロッド30及びピストン50がダンパーの制動方向に移動する際には、空気流通溝62内が減圧されることで、切込み55をスムーズに閉じることができるので、シリンダー内周に対するピストン50の圧接力の低減を効果的に抑制でき、ダンパーの制動力への影響をより少なくすることができる。
【0057】
また、この実施形態においては、
図3や
図4(a)に示すように、ピストン50に設けた切込み55は、ピストン50の一端から他端に向けて、ピストン50の軸方向全域に亘って設けられているので、
図8に示すように、ピストン50がピストン戻り方向に移動する際に、空気流通溝62に入り込んだ空気によって、切込み55をより開きやすくすることができ、ピストン50を所定位置により戻しやすくすることができる。また、切込みを55介して、ピストン50全体を軸方向に開くことができるので、ロッド30の外周(ここではロッド30のピストン装着部32)にピストン50を装着しやすくすることができる。
【0058】
更にこの実施形態においては、
図4(c)や
図4(d)に示すように、ピストン50の外周(ここでは本体51の外周)は、ピストン50の一端側から他端側に向けて拡径するテーパ状をなしている。そのため、
図8に示すように、ピストン50がダンパーの戻り方向に移動する際に、ピストン50の、切込み55を設けた部分の外周が、シリンダー20の内周からの面圧を徐々に受けるため、切込み55を開きやすくすることができ、ピストン50を所定位置により一層戻しやすくすることができる。
【0059】
また、この実施形態においては、
図3や、
図4(a),(d)に示すように、ピストン50の外周には、シリンダー20の内周との間に隙間を形成する切欠き部54が、一端側から他端側に向けて形成されており、この切欠き部54に、切込み55が位置するように設けられている。これによれば、ピストン50の外周に設けた切欠き部54に、切込み55を設けることにより、ピストン50の、切欠き部54以外の部分のシール性(シリンダー20の内周に対する密着性)を損なうことなく、切込み55を設けることができ、ダンパーの制動力に、影響をでにくくすることができる。
【0060】
なお、この実施形態においては、ロッド30の第1係合部34がシリンダー20の端部壁23から離反する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力が付与され、同第1係合部34がシリンダー20の端部壁23に近接する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力が解除されるように構成されているが、これとは逆に、ロッドの第1係合部がシリンダーの端部壁(シリンダー端部に装着されるキャップも含む意味である)に近接する方向に移動したときに、ダンパーによる制動力を付与して、離反する方向に移動したときに制動力を解除するように構成してもよい。
【0061】
例えば、
図14には、ダンパーの制動方向を逆向きとしたダンパー10Аの要部拡大説明図が示されているが、このダンパー10Aは、ロッドの形状及びピストンの装着向きが前記実施形態と異なっている。ロッド30は、第1柱部36が第2柱部39よりも長く延びた形状をなしている。また、ピストン50は、その一端部52をロッド30のストッパー部35に向け、ピストン50の圧接部53をロッド30の第1係合部34に向けた状態で、ロッド30のピストン装着部32にピストン50が装着されており、上記各実施形態のダンパーとは、ピストン50の装着向きが逆となっている。そして、ロッド30の第1係合部34が、シリンダー20の図示しない端部壁(図中左側)に近接する方向に移動したとき、すなわち、
図14の矢印F1に示す向きに移動したときに、ロッド30のストッパー部35がピストン50の一端部52に当接して、圧接部53との間で軸方向圧縮力が作用するので、ダンパーによる制動力が付与される。一方、ロッド30の第1係合部34が、シリンダー20の図示しない端部壁から離反する方向に移動したとき、すなわち、
図14の矢印F2に示す向きに移動したときに、ロッド30の第2係合部37がピストン50の被係合部61に係合して、ピストン50に対して軸方向引張力を作用させるので、ダンパーの制動力が解除されるようになっている。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。