(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のような従来のロボット案内システムでは、自律移動型ロボット自体が、利用者の目的地を認識するように構成されている。そのため、その自律移動型ロボットは、種々のセンサ類の他に、利用者の目的地を把握するための入力用のインターフェースを備える必要があった。
【0005】
その結果、従来のロボット案内システムは、自律移動型ロボットの構造が複雑なものとなってしまい、種々のコスト(具体的には、導入コスト、管理・保守のためのコスト等)が増大してしまうおそれがあった。特に、複数の自律移動型ロボットを運用する場合には、コストが増大してしまうおそれが高かった。
【0006】
本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、利用者を案内する自律移動型ロボットの構成を簡略化することができるロボット案内システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のロボット案内システムは、
内蔵されているバッテリによって駆動し、非案内時には複数の待機領域のいずれか1カ所に待機し、利用者の目的地を認識した際に待機している前記待機領域から移動して、該利用者を
前記目的地まで案内する複数の自律移動型ロボットと、
前記複数の自律移動型ロボットとは別体として設けられ、前記目的地を認識する受付装置と、
前記複数の自律移動型ロボットの各々の状態を認識するとともに、認識した前記目的地及び認識した前記状態に基づいて、前記複数の自律移動型ロボットの各々の利用可否を管理するロボット管理部と
、
前記複数の自律移動型ロボットの各々のバッテリ残量を含む特性である移動特性を格納する移動特性格納部と、
前記複数の自律移動型ロボットのうちの少なくとも1つを、前記利用者を案内する自律移動型ロボットとして選択するロボット選択部と、
前記複数の待機領域の中から、前記複数の自律移動型ロボットの各々の待機する待機領域を決定する待機領域決定部とを備え
、
前記ロボット選択部は、前記受付装置が認識した前記目的地までの距離、前記複数の自律移動型ロボットの各々の前記バッテリ残量、及び、前記複数の待機領域のうちの前記目的地の最寄りの待機領域と該目的地との距離に基づいて、前記複数の自律移動型ロボットのうちの少なくとも1つを、前記利用者を案内する自律移動型ロボットとして選択し、
前記待機領域決定部は、前記目的地の最寄りの待機領域を、該目的地まで前記利用者を案内した自律移動型ロボットが該案内の後に待機する待機領域として決定することを特徴とすることを特徴とする。
【0008】
ここで、自律移動型ロボット(以下、単に「ロボット」ともいう。)の「状態」とは、ロボットの位置、ロボットの移動能力に関する特性である移動特性(例えば、バッテリ残量等)等、利用者を案内する際に、その案内のための動作に影響を与え得る状態を指す。
【0009】
このように、本発明のロボット案内システムでは、利用者を実際に案内する自律移動型ロボットと、利用者の目的地を認識する(すなわち、利用者の入力を受け付けるためのインターフェースを備える)受付装置とが、独立した構成となっている。
【0010】
これにより、利用者からの入力を受け付けるためのインターフェースをロボットから省略することができる。したがって、本発明のロボット案内システムによれば、利用者を案内する自律移動型ロボットの構成を簡略化することができる。
【0011】
なお、本発明におけるロボット管理部は、受付装置に設けてもよいし、複数の自律移動型ロボットの各々又はいずれかに搭載してもよいし、受付装置及びロボットのいずれとも別体として設けられたサーバ等に設けてもよい。
【0012】
また、本発明のロボット案内システムにおいては、
前記複数の自律移動型ロボットの各々の移動能力に関する特性である移動特性を格納する移動特性格納部と、
前記受付装置が認識した前記目的地、及び、前記移動特性格納部に格納されている移動特性に基づいて、前記複数の自律移動型ロボットのうちの少なくとも1つを、前記利用者を案内する自律移動型ロボットとして選択するロボット選択部とを備えてい
る。
【0013】
このように構成すると、ロボット案内システムにおいてロボットを効率的に運用することができる。
【0014】
移動特性を参照してロボットを選択する構成としては、具体的に
は、
前記複数の自律移動型ロボットの各々は、内蔵されているバッテリによって駆動し、
前記移動特性は、前記複数の自律移動型ロボットの各々のバッテリ残量を含む特性であり、
前記ロボット選択部は、前記受付装置が認識した前記目的地までの距離、及び、前記複数の自律移動型ロボットの各々の前記移動特性に基づいて、前記複数の自律移動型ロボットのうちの少なくとも1つを、前記利用者を案内する自律移動型ロボットとして選択するように
する。
【0015】
このように、バッテリ残量を移動特性とした場合には、そのバッテリ残量と目的地とに応じて案内するロボットを選択することで、複数のロボットを効率的に運用することができる。これにより、ロボットの充電回数を抑制して、利用者の待ち時間を低減することができる。また、ロボット案内システムを構成するために必要となるロボットの数を抑制することができる。
【0018】
また、本発明のロボット案内システムにおいては、
複数の前記受付装置と、
前記受付装置の過去の利用回数を認識する、又は、予測される利用回数を推定する利用回数認識・推定部と、
前記利用回数に基づいて、複数の待機領域から前記複数の自律移動型ロボットの各々を待機させる待機領域、及び、前記複数の待機領域の各々に待機させる前記自律移動型ロボットの数を決定する待機領域決定部とを備えていることを特徴とする。
【0019】
このように構成すると、利用者が案内を希望したときにロボットが利用者に近い位置にいないという状況の発生を抑制することができるので、利用者の待ち時間を低減することができる。
【0020】
また、本発明のロボット案内システムにおいては、
前記複数の自律移動型ロボットの各々の運行ルートを決定する運行ルート決定部を備え、
前記複数の自律移動型ロボットは、第1の自律移動型ロボット及び第2の自律移動型ロボットを含み、
前記第1の自律移動型ロボットは、該第1の自律移動型ロボットの周辺の環境を認識するセンサを有し、
前記運行ルート決定部は、前記受付装置が認識した前記目的地、及び、前記第1の自律移動型ロボットの前記センサが認識した前記環境に基づいて、前記第2の自律移動型ロボットの運行ルートを決定することが好ましい。
【0021】
一般的に、ロボットの移動を阻害するような環境は、そのロボットに対応する又は同一の性能(例えば、サイズ、走行性能等)を有する他のロボットの移動も、その他のロボットに案内される利用者の移動も、阻害する可能性が高い。
【0022】
そこで、このように、ロボット(第1の自律移動型ロボット)の認識した環境(すなわち、他のロボットも通過する蓋然性の高いルートの周辺の環境)に基づいて他のロボット(第2の自律移動型ロボット)の運行ルートを決定するように構成すると、その第2の自律移動型ロボットが利用者をスムーズに案内できる。
【0023】
具体的には、例えば、第1の自律移動型ロボットが移動を阻害するような環境を認識した際に、その環境を迂回するように第2の自律移動型ロボットの運行ルートを決定するように構成すると、その環境によって第2の自律移動型ロボット及び第2の自律移動型ロボットに案内される利用者の移動が阻害されにくくなる。
【0024】
また、本発明のロボット案内システムにおいては、
前記複数の自律移動型ロボットの各々の運行ルートを決定する運行ルート決定部と、前記運行ルートの周辺の環境を認識するセンサとを備え、
前記複数の自律移動型ロボットは、第3の自律移動型ロボット、及び、前記第3の自律移動型ロボットの後を引き継いで前記利用者を案内する第4の自律移動型ロボットを含み、
前記運行ルート決定部は、前記第3の自律移動型ロボットの前記運行ルートの周辺に、前記利用者の移動を阻害せず、且つ、前記第3の自律移動型ロボットの移動を阻害する環境が認識された場合に、前記第4の自律移動型ロボットが該環境を通過した位置に移動するように、前記第4の自律移動型ロボットの前記運行ルートを決定することが好ましい。
【0025】
例えば、エスカレータ等、ロボット(第3の自律移動型ロボット)の移動は困難であるが利用者の移動はさほど困難ではない地形といった環境がある。そこで、そのような環境が認識された場合に、その環境を通過した位置(例えば、エスカレータの移動先)に、利用者の案内を引き継ぐ他のロボット(第4の自律移動型ロボット)が移動するように、その他のロボットの運行ルートを設定すると、環境による影響を抑制して、大きなタイムラグなく、利用者の案内を継続することができる。
【0026】
すなわち、ロボットの走行性能に基づく問題を複数のロボットが協働してカバーするように構成すると、環境に対応するための機能を適宜省略することができるようになるので、さらに、ロボットの構成を簡略化することができる。
【0027】
また、本発明のロボット案内システムにおいては、
複数の地点の各々について、前記利用者の前記目的地として設定された回数を蓄積する設定回数蓄積部を備えていることが好ましい。
【0028】
このように構成すると、システムの設定の修正等を行う際に、重視すべき目的地(例えば、利用頻度の高い)を容易に認識できるようになる。これにより、重視すべき目的地の特性(例えば、受付装置からの距離等)に応じて、運用するロボットについて追加・修正を行うべき機能も容易に把握することができるようになる。その結果、ロボットの機能を適宜省略することができるようになるので、さらに、ロボットの構成を簡略化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るロボット案内システム(以下、「案内システムS」という。)について説明する。
【0031】
なお、本実施形態においては、ショッピングモールMにおいて、利用者の目的となる店舗(店舗5a〜5eのいずれかの店舗)に案内するためのシステムとして、案内システムSを採用した場合について説明する(
図5参照)。しかし、本発明のロボット案内システムは、そのようなものに限定されるものではなく、自律移動型ロボットを用いて利用者を案内するためのものであればよい。
【0032】
例えば、ショッピングモールの他、空港等の他の施設に採用してもよい。また、施設だけではなく、所定の領域(例えば、一定範囲の観光地、商店街全体等)において、利用者を案内するためのシステムとして採用してもよい。
【0033】
まず、
図1〜
図4を参照して、運行管理システムSの概略構成について説明する。
【0034】
図1に示すように、案内システムSは、所定の領域内を自律移動する複数のロボット1(自律移動型ロボット)と、複数のロボット1とは別体として設けられ、利用者の目的地を認識する受付装置2と、ロボット1及び受付装置2と相互に通信可能なサーバ3とを備えている。
【0035】
図2に示すように、いわゆる倒立振子型車両であるロボット1は、基体10と、基体10の下部に設けられた移動動作部11とを備えている。
【0036】
ロボット1は、移動動作部11により、路面上を全方向(任意の方向)に移動し得るように構成されている。移動動作部11は、円環状の芯体11aと、この芯体11aの円周方向(軸心周り方向)に等角度間隔で並ぶようにして、芯体11aに外挿された複数の円環状のローラ11bとを有している。なお、
図2では、一部のローラ11bだけが代表的に図示されている。
【0037】
各ローラ11bは、芯体11aの軸心周りに、芯体11aと一体に回転可能となっている。また、各ローラ11bは、各ローラ11bの配置位置における芯体11aの横断面の中心軸(芯体11aの軸心を中心とする円周の接線方向の軸)周りに回転可能となっている。
【0038】
このように構成されている移動動作部11は、その下部のローラ11bを、ロボット1の移動環境の路面(床面、地面等)に接地させた状態で、芯体11aをその軸心周りに回転駆動すること、及び、各ローラ11bをその軸心周りに回転駆動することの一方又は両方を行うことで、路面上を全方向に移動することが可能となっている。
【0039】
基体10の内部には、移動動作部11を移動させる駆動力を発生するアクチュエータ装置12が搭載されている。このアクチュエータ装置12は、芯体11aを回転駆動する第1アクチュエータ12aと、各ローラ11bを回転駆動する第2アクチュエータ12bとから構成される。第1アクチュエータ12a及び第2アクチュエータ12bは、例えば、電動モータ、油圧アクチュエータ等を用いて構成すればよい。
【0040】
第1アクチュエータ12a及び第2アクチュエータ12bは、それぞれ、図示を省略する動力伝達機構を介して芯体11a、各ローラ11bに回転駆動力を付与する。動力伝達機構は、既知の構造のものを用いればよい。
【0041】
ロボット1は、内蔵されているバッテリ13によって駆動し、そのバッテリ残量は、後述する通信装置15を介して、定期的に又は所定のタイミング(例えば、案内を開始する時点又は完了した時点等)で、サーバ3に送信される。
【0042】
また、
図2での図示は省略したが、
図3に示すように、ロボット1には、ロボット1の動作制御のための構成要素として、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成された制御装置14と、ロボット1の動作状態又は外界状態(周辺の環境)等を観測するための各種センサと、サーバ3と制御装置14との間の無線通信を行うための通信装置15とが搭載されている。
【0043】
ロボット1に搭載されているセンサとしては、例えば、ロボット1の周辺の環境に存在する物体(人、移動物体、設置物等)を認識するためのカメラ16(外界認識センサ)、ロボット1の加速度を検出するための加速度センサ17、ロボット1の自己位置を検出するための位置センサ18等が含まれる。これらのセンサの出力(検出データ)が制御装置14に入力される。
【0044】
なお、外界認識センサは、ロボット1の周辺の環境を認識し得るものであればよい。そのため、外界認識センサとしては、カメラ16の代わりに、又は、カメラ16に加えて、例えば、レーザ・レンジ・ファインダー等の測距センサ、又は、レーダ装置等を用いてもよい。
【0045】
制御装置14は、実装されるハードウェア構成又はプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能として、第1アクチュエータ12a及び第2アクチュエータ12bの動作制御(ひいては、移動動作部11の移動制御)を行う機能を有するように構成されている。
【0046】
図1に戻り、受付装置2は、デスクトップパソコン、携帯情報端末(タブレット、スマートフォン等)であり、入力部20と、出力部21と、通信部(不図示)とを備えている。
【0047】
入力部20は、キーボード、マウス、タッチパネル、マイク等の入力機器によって構成されている。出力部21は、ユーザに対して五感を通じて情報を伝達する出力機器(例えば、液晶ディスプレイ、スピーカ等)によって構成されている。受付装置2では、これらの入力部20及び出力部21によって、利用者が目的地を入力するための入力用のインターフェースが構成されている。
【0048】
これにより、利用者が入力部20を介して入力した情報は、通信部を介して、サーバ3に送信される。また、送信された情報に基づいてサーバ3が行った処理の結果(例えば、複数のロボット1のうちどのロボット1が利用者を案内するか等)は、通信部を介して、受付装置2に送信され、出力部21を介してユーザに対して提示される。
【0049】
案内システムSでは、このように構成された受付装置2が、案内システムSが導入されている施設(例えば、後述するショッピングモールM)の複数の地点に設置される。その設置地点には、利用者を案内していない状態にあるロボットが待機するための待機領域が設けられている(
図5参照)。
【0050】
なお、本発明の受付装置は、このような構成に限定されるものではない。例えば、施設に1つだけ設けてもよい。また、受付装置として、利用者個人の所有する携帯情報端末を用いてもよい。
【0051】
図4に示すように、案内システムSでは、ロボット1、受付装置2、及び、サーバ3の少なくとも1つに実装されたハードウェア構成又はプログラムにより実現される機能として、ロボット管理部4を備えている。
【0052】
ロボット管理部4は、利用者の目的地を認識する目的地認識部40と、受付装置2の利用回数を認識する利用回数認識・推定部41と、目的地の候補となる地点について、目的地として設定された回数を蓄積する設定回数蓄積部42と、ロボット1の現在位置を認識する現在位置認識部43と、ロボット1の移動特性を格納する移動特性格納部44と、ロボット1の待機する待機領域を決定する待機領域決定部45と、ロボット1の運行ルートを決定する運行ルート決定部46と、利用者を案内するロボット1を選択するロボット選択部47とを有している。
【0053】
目的地認識部40は、受付装置2の入力部20を介して、利用者が入力した目的地を認識する。目的地としては、例えば、ショッピングモールMの各店舗5a〜5eのいずれか等の具体的な目的地の他、出力部21に表示された地図上の座標であってもよい。
【0054】
利用回数認識・推定部41は、過去の利用回数として、複数の受付装置2の各々について、過去の所定の時点(例えば、現時点から1時間前)から現時点までにおいて、その受付装置2を介して、各受付装置2の過去の利用回数(すなわち、その受付装置2に、利用者によって目的地が入力され、案内が要請された回数)を認識する。
【0055】
また、利用回数認識・推定部41は、複数の受付装置2の各々について、時間帯ごとに(例えば、1時間ごとに)分けて利用回数を蓄積する。その蓄積されたデータに基づいて、利用回数認識・推定部41は、各受付装置2について、予測される利用回数を時間帯ごとに推定する。
【0056】
設定回数蓄積部42は、目的地の候補となる複数の地点の各々について、受付装置2を介して目的地として設定された回数を蓄積する。
【0057】
本実施形態の案内システムSでは、この設定回数蓄積部42を備えることによって、その設定の修正等を行う際に、重視すべき(例えば、利用頻度の高い)目的地を容易に認識できるようになっている。これにより、案内システムSでは、重視すべき目的地の特性(例えば、受付装置2からの距離等)に応じて、運用するロボット1について追加・修正を行うべき機能を容易に把握することができるようになっている。
【0058】
なお、本発明のロボット案内システムは、このような構成に限定されるものではない。例えば、導入時にのみシステムの設定を行うような構成である場合には、設定回数蓄積部42を省略してもよい。
【0059】
現在位置認識部43は、ロボット1の制御装置14からの信号に基づいて、複数のロボット1の各々の現在位置を認識する。なお、ロボット1の制御装置14からの信号に代わり、又は、その信号と併用して、導入された施設に設けられているカメラ等からの信号を用いて、現在位置認識部43が、各ロボット1の現在位置を推定するようにしてもよい。
【0060】
移動特性格納部44は、複数のロボット1の各々の移動特性を格納する。ここで、「移動特性」とは、ロボット1の移動能力に関する特性であり、利用者を案内する際に、その案内のための動作に影響を与え得る特性である。
【0061】
移動特性としては、例えば、バッテリ残量に基づく移動可能距離等の現時点における特性(すなわち、経時変化のある特性)の他、ロボット1のサイズ(すなわち、移動可能な通路の大きさ)、ロボット1が搭乗可能なものであるか否か等のロボット1の構成に基づく特性(すなわち、経時変化のない特性)等が挙げられる。
【0062】
待機領域決定部45は、利用回数認識・推定部41が認識した複数の受付装置2の各々の利用回数に基づいて、複数の待機領域のうちから複数のロボット1の各々を待機させる待機領域、及び、複数の待機領域の各々に待機させるロボット1の数を決定する。
【0063】
ここで、「待機領域」とは、利用者を案内していない状態にあるロボットが待機するための領域である。本実施形態の案内システムSでは、このようにしてロボット1の待機領域を決定することによって、利用者が案内を希望したときにロボット1が利用者に近い位置にいないという状況の発生を抑制している。これにより、案内システムSでは、利用者の待ち時間の低減を図っている。
【0064】
なお、本発明のロボット案内システムは、このような構成に限定されるものではない。例えば、待機領域を設ける位置は、受付装置の周辺に限定されるものではなく、ロボット案内システムを導入する施設の形状等に応じて、適宜設定して良い。また、例えば、待機領域が1カ所しかない場合、又は、ロボット1が常に巡回しており待機領域が存在しない場合等には、利用回数認識・推定部及び待機領域決定部を省略してもよい。
【0065】
運行ルート決定部46は、受付装置2が認識した目的地、及び、いずれかのロボット1に搭載されているカメラ16が認識したそのロボット1の周辺の環境に基づいて、複数のロボット1の各々の運行ルートを決定する。
【0066】
なお、本発明のロボット案内システムは、このような構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態の案内システムSでは、ロボット1の全てに搭載されているカメラ16によって取得されたそのロボット1の周辺の環境を参照して、運行ルートを決定している。しかし、そのような周辺の環境を参照せず、認識した目的地のみに基づいて運行ルートを決定してもよい。
【0067】
また、例えば、本実施形態の案内システムSでは、ロボット1に搭載されているカメラ16によって認識されたそのロボット1の周辺の環境は、他のロボット1の運行ルートの周辺の環境となる可能性が高いので、カメラ16によって認識された環境に基づいて運行ルートを決定している。しかし、施設内に十分な数のカメラ等のセンサが設置されている場合には、それらのセンサによって認識された環境に基づいて、運行ルートを決定してもよい。
【0068】
ロボット選択部47は、受付装置2が認識した目的地、及び、移動特性格納部44に格納されている複数のロボット1の各々の移動特性に基づいて、複数のロボット1のうちの少なくとも1つを、利用者を案内するためのロボット1として選択する。
【0069】
具体的には、案内システムSでは、受付装置2が認識した目的地までの距離、目的地までの運行ルート、複数のロボット1の現在位置、及び、複数のロボット1の各々のバッテリ残量に基づいて、原則として、利用者を案内するロボット1を、その受付装置2の周辺に設けられた待機領域に待機している複数のロボット1のうちから、利用者を案内するためのロボット1を選択する。
【0070】
このように構成することによって、案内システムSでは、ロボット1の充電回数を抑制して、利用者の待ち時間の低減を図っている。
【0071】
なお、本発明のロボット案内システムは、このような構成に限定されるものではない。例えば、本実施形態の案内システムSとは異なり、経時変化のない移動特性の異なる複数種類の自律移動型ロボットを運用するタイプのロボット案内システムの場合には、案内するルートの内容(階段の有無等)等に応じて、利用者を案内する自律移動型ロボットを選択するように構成してもよい。
【0072】
このように構成すると、ロボット案内システムで運用するロボットとして、一部の機能(例えば、階段を昇降できる機能等)を省略したロボットも採用することができる。
【0073】
案内システムSでは、このように構成されたロボット管理部4を備えることによって、認識した目的地、及び、認識したロボット1の状態に基づいて、複数のロボット1の各々の利用可否を管理している。
【0074】
ここで、ロボット1の「状態」とは、ロボット1の位置、ロボット1の移動能力に関する特性である移動特性(例えば、バッテリ残量等)等、利用者を案内する際に、その案内のための動作に影響を与え得る状態を指す。
【0075】
次に、
図5〜
図7を参照して、案内システムSの行う処理について説明する。ここでは、一例として、ショッピングモールMにおいて、利用者を目的の店舗に案内するシステムとして、案内システムSを採用している場合について説明する。
【0076】
まず、
図5及び
図6を参照して、利用者を案内していない状態、又は、利用者を案内し終わった状態にあるロボット1aを、受付装置2aの周辺に設けられた待機領域A1、及び、受付装置2bの周辺に設けられた待機領域A2のいずれかに待機させる際に、案内システムSが行う処理について説明する。なお、
図6は、その場合に案内システムSが行う処理を示すフローチャートである。
【0077】
この処理においては、まず、ロボット管理部4の現在位置認識部43が、複数のロボット1の各々の制御装置14からの信号に基づいて、各ロボット1の現在位置を認識する(
図6/STEP10)。
【0078】
次に、ロボット管理部4の利用回数認識・推定部41が、受付装置2a及び受付装置2bについて、設定回数蓄積部42に格納されている情報に基づいて、過去の利用回数を認識するとともに、予測される利用回数を推定する(
図6/STEP11)。
【0079】
次に、ロボット管理部4の待機領域決定部45が、利用回数認識・推定部41が認識・推定した利用回数、並びに、待機領域A1に既に待機しているロボット1bの数、及び、待機領域A1に既に待機しているロボット1bの数に基づいて、ロボット1aを待機領域A1及び待機領域A2のいずれに待機させるかを決定する(
図6/STEP12)。
【0080】
本実施形態では、待機領域A1に対応する受付装置2aの利用回数と待機領域A1に対応する受付装置2bの利用回数とが、ほぼ同じであり、且つ、待機領域A1に待機済みのロボット1bの数が、待機領域A2に待機済みのロボット1bの数よりも少ないので、ロボット1aを待機させる待機領域として、待機領域A1が決定されたとする。
【0081】
次に、運行ルート決定部46は、ロボット1aの現在位置、決定された待機領域A1の位置、他のロボット1cの認識した環境に基づいて、ロボット1aが待機領域A1へ移動するための運行ルートを決定する(
図6/STEP13)。
【0082】
具体的には、巡回中のロボット1cが、運行ルートとなり得る第1ルートR1上に、ロボット1aの移動の障害となる環境(本実施形態では、店舗5aと店舗5bとの間に搬入用の荷物Lが存在していること)を認識したので、運行ルート決定部46は、その環境を通過する第1ルートR1ではなく、その環境を迂回する第2ルートR2を、ロボット1aの運行ルートとして決定する。
【0083】
最後に、ロボット1aの制御装置14が、運行ルート決定部46が決定した運行ルートに従って、ロボット1aを待機領域A1まで移動させて(
図6/STEP14)、今回の処理を終了する。
【0084】
以上の処理によって、利用者を案内していない状態、又は、利用者を案内し終わった状態にあるロボット1aは、受付装置a1の周辺に設けられた待機領域A1に待機させられる。
【0085】
次に、
図7及び
図8を参照して、案内システムSが、利用者Uを地点P1(受付装置2aの近傍)から地点P2(店舗5bの入り口)に向かって案内するために、ロボット1d及びロボット1eの運行ルートを設定する場合に行う処理について説明する。なお、
図8は、その場合に案内システムSが行う処理を示すフローチャートである。
【0086】
この処理においては、まず、ロボット管理部4の目的地認識部40が、受付装置2aの入力部20を介して利用者によって入力された目的地を認識する(
図8/STEP20)。
【0087】
本実施形態では、第1フロアF1の受付装置2aの近傍(地点P1)にいる利用者Uが、エスカレータEを介して移動した上階である第2フロアF2にある店舗5eの入り口(地点P2)への案内を要請したとする。
【0088】
このとき、ロボット管理部4の利用回数認識・推定部41が、利用者Uが入力した目的地を含む入力情報を認識するとともに、その入力情報を設定回数蓄積部42に蓄積する(
図8/STEP21)。
【0089】
入力情報としては、具体的には、受付装置2aを特定するための情報(例えば、設置位置等)、入力された目的地、及び、入力が行われた時間(例えば、入力時刻の他、所定の時間ごとに区切られて設定された時間帯、午後であるか午前であるか等)等が挙げられる。
【0090】
次に、ロボット管理部4の運行ルート決定部46が、入力を受け付けた受付装置2aの位置、受付装置2aが認識した目的地、及び、ロボット1dに搭載されているカメラ16が認識したそのロボット1dの周辺の環境に基づいて、案内するためのルート(すなわち、ロボット1dの運行ルート)を決定する(
図8/STEP22)。
【0091】
本実施形態では、運行ルート決定部46は、入力を受け付けた受付装置2aの位置(地点P1)から、店舗5bの周辺にある荷物L、店舗5cと店舗5dとの間にある工事現場、及び、受付装置2bの周辺の人混み等を迂回することができる第3ルートR3を、運行ルートとして決定する。
【0092】
このように、案内システムSでは、ロボット1dに搭載されているカメラ16(外界認識センサ)が認識したそのロボット1dの周辺の環境も参照して、運行ルートを決定している。
【0093】
この案内システムSでは、第1フロアF1に存在するロボット1d,1eの性能(例えば、サイズ、走行性能等)は、ほぼ同一のものとなっている。そのため、実際に利用者Uの案内に用いられるロボット1d(第1の自律移動型ロボット)の移動を阻害するような環境は、ロボット1e(第2の自律移動型ロボット)の移動も阻害する可能性が高い。ひいては、ロボット1d又はロボット1eに案内される利用者Uの移動も阻害する可能性が高い。
【0094】
そこで、案内システムSでは、ロボット1dの認識した環境に基づいてロボット1eの運行ルートを決定するように構成して、ロボット1e及びロボット1eに案内される利用者Uの移動をスムーズに行わせることができるようにしている。
【0095】
なお、本発明のロボット案内システムにおける第1の自律移動型ロボットと第2の自律移動型ロボットとは、このような構成に限定されるものではなく、必ずしもその性能が同一のものである必要はない。
【0096】
そして、第1の自律移動型ロボットと第2の自律移動型ロボットの性能が異なる場合には、運行ルート決定部は、第1の自律移動型ロボットのセンサが認識した環境、及び、第1の自律移動型ロボットと第2の自律移動型ロボットの性能の差異に基づいて、運行ルートを決定するようにすると好ましい。
【0097】
次に、ロボット管理部4のロボット選択部47は、決定された運行ルート(すなわち、受付装置2aが認識した目的地)、及び、移動特性格納部44に格納されているロボット1d〜1fの移動特性に基づいて、ロボット1d〜1fのうちから、利用者Uを案内するロボットを選択する(
図8/STEP23)。
【0098】
本実施形態では、ロボット選択部47は、決定された運行ルートにエレベータEが含まれていること(すなわち、運行ルートに利用者Uの移動を阻害せず、且つ、ロボット1d〜1fの移動を阻害する環境が含まれていること)、及び、ロボット1d〜1fの各々の現在位置と、エレベータEを移動できないという特性と、バッテリ残量とを、選択の際の基準としている。
【0099】
その基準に基づいて、まず、ロボット選択部47は、第1フロアF1の受付装置2aの近傍(地点P1)からエレベータEの手前(地点P3)までの区間である第1区間で利用者Uを案内するロボットだけでなく、エレベータEを降りた地点(地点P4)から店舗5bの入り口(地点P2)までの区間である第2区間で利用者Uを案内するロボットが必要となることを認識する。
【0100】
すなわち、ロボット選択部47は、エレベータEを通過することができないというロボット1d〜1fの走行性能に基づく問題を、複数のロボットが協働してカバーするように構成する必要があることを認識する。
【0101】
その後、ロボット選択部47は、第1区間で利用者Uを案内するためのロボット(第3の自律移動型ロボット)を選択する。
【0102】
具体的には、ロボット選択部47は、受付装置2aの周辺に設けられた待機領域A1に待機している複数のロボット1eを、第1区間で利用者を案内するための候補とする。
【0103】
そして、その候補となった複数のロボット1eのうち、バッテリ残量が、第1区間を移動した後、最寄りの待機領域(本実施形態では、受付装置2bの周辺に設けられた待機領域A2)まで移動するために必要な量を超え、且つ、最も少ないロボットを、第1区間で利用者を案内するためのロボットとして選択する。
【0104】
なお、待機領域A1にロボットが待機していない場合、待機しているロボット1eのバッテリ残量が少ない場合等には、ロボット選択部47は、待機領域A1に待機しているロボット1eだけでなく、待機領域A1以外の位置に存在しているロボット(例えば、ロボット1d)も、第1区間で利用者Uを案内するためのロボットの候補とする。
【0105】
さらにその後、ロボット選択部47は、第1区間で利用者Uを案内したロボット1eの後を引き継いで利用者Uを案内するロボット(第4の自律移動型ロボット)を選択する。
【0106】
具体的には、ロボット選択部47は、エレベータEを通過した位置(第2フロアF2)に存在する複数のロボット1fのうち、バッテリ残量が、現在位置から利用者Uを迎える地点(すなわち、地点P4)を通過し、第2区間を移動した後、最寄りの待機領域(本実施形態では、受付装置2cの周辺に設けられた待機領域A3)まで移動するために必要な量を超え、且つ、最も少ないロボットを、第2区間で利用者を案内するためのロボットとして選択する。
【0107】
最後に、選択されたロボット1eの制御装置14が、運行ルート決定部46が決定した運行ルートに従って、選択されたロボット1eを地点P1から地点P3まで移動させることによって、第1区間において利用者Uを案内する。また、選択されたロボット1fの制御装置14が、運行ルート決定部46が決定した運行ルートに従って、ロボット1eが地点P3に移動するまでに、選択されたロボット1fを地点P4まで移動させておき、利用者UがエレベータEを通過した後に、地点P4から地点P2まで移動させることによって、第2区間において利用者Uを案内して(
図8/STEP24)、今回の処理を終了する。
【0108】
なお、案内が終了したロボット1e,1fは、それぞれ、最寄りの待機領域(待機領域A2,待機領域A3)まで、移動する。
【0109】
以上説明したように、本実施形態の案内システムSでは、利用者を実際に案内するロボット1と、利用者の目的地を認識する(すなわち、利用者の入力を受け付けるためのインターフェースを備える)受付装置2とが、独立した構成となっている。
【0110】
これにより、利用者からの入力を受け付けるためのインターフェースをロボット1から省略することができる。したがって、本実施形態の案内システムSによれば、利用者を案内するロボット1の構成を簡略化することができる。
【0111】
また、このように構成されている案内システムSでは、ロボット管理部4を、受付装置2a〜2c並びにサーバ3に実装されたハードウェア構成又はプログラムにより構成した場合には、複数のロボット1を、受付装置2a〜2cによって分散管理したり、サーバ3によって集中管理したりすることができる。
【0112】
これにより、管理の一元化及び多元化を導入する施設に応じて適宜設定できるようになるので、導入後におけるロボット1の管理・運用を迅速・容易に行うことができるようになる。
【0113】
以上、図示の実施形態について説明したが、本発明はこのような形態に限られるものではない。
【0114】
例えば、上記実施形態では、ロボット1と、受付装置2と、サーバ3とを備えるとともに、それらに実装されたハードウェア構成又はプログラムにより実現される機能として、ロボット管理部4を備える構成となっている。しかし、本発明のロボット案内システムは、このような構成に限定されるものではなく、自律移動型ロボットと、受付装置と、ロボット管理部を備える構成であればよい。例えば、ロボット管理部は、受付装置に設けてもよいし、複数の自律移動型ロボットの各々又はいずれかに搭載してもよい。
【0115】
また、上記実施形態の案内システムSにおけるロボット1は、利用者とともに移動して利用者を先導するロボットであり、複数のロボット1は、いずれも同様の機能を備えている。しかし、本発明のロボット案内システムは、そのような構成に限定されるものではなく、ロボット案内システムを適用する施設の大きさ、構造等の特性に応じて、種々様々なロボットを採用してよい。
【0116】
例えば、利用者とともに移動して利用者を先導するのみであり、利用者が搭乗可能でないロボット(非搭乗ロボット)とともに、利用者が搭乗可能なロボット(搭乗ロボット)を採用してもよい。そして、そのように複数種類のロボットを採用した場合には、ロボット選択部によって、目的地とロボットの移動特性(例えば、先導のみ可能なものである、搭乗可能であるといった特性(搭乗可能性))とによって案内を行うロボットを選択するように構成するとよい。
【0117】
また、上記実施形態の案内システムSにおける受付装置2の一例として、デスクトップパソコン、携帯情報端末を挙げたが、本発明の受付装置は、そのような構成に限定されるものではなく、利用者の目的地を認識可能なものであり、自律移動型ロボットと別体設けられたものであればよい。
【0118】
例えば、利用者と会話する人等の形態を模したロボットであってもよい。具体的には、人型のロボットに、入力用のインターフェースとしてのマイクと、出力用のインターフェースとしてのスピーカ並びに人の頭部及び手の形態を模したマニピュレータとを備えたものであってもよい。