特許第6961810号(P6961810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961810
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】乾式脱硫脱硝剤、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/86 20060101AFI20211025BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20211025BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20211025BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20211025BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B01D53/86 212
   B01D53/50 100
   B01D53/56ZAB
   B01D53/83
   B01D53/86 222
   B01J37/04 102
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-517788(P2020-517788)
(86)(22)【出願日】2018年8月29日
(65)【公表番号】特表2020-535952(P2020-535952A)
(43)【公表日】2020年12月10日
(86)【国際出願番号】CN2018103025
(87)【国際公開番号】WO2019062449
(87)【国際公開日】20190404
【審査請求日】2020年5月25日
(31)【優先権主張番号】201710938332.8
(32)【優先日】2017年9月30日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520101753
【氏名又は名称】中晶環境科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】童裳慧
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103301749(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第102824844(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105642339(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第105327614(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第106512980(CN,A)
【文献】 特開平07−185338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02−53/18
B01D 53/34−53/86
B01D 53/92
B01D 53/96
B01J 20/00−20/34
B01J 21/00−37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱硫脱硝剤の製造方法であって、
TiOとZrOを含むスラリーに、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOを加入し、回転数100〜300rpmで10〜60時間攪拌して混合スラリーを形成する工程であって、TiO、ZrO、V、CoO、Co、FeおよびMnOはいずれもナノスケール酸化物である工程(1)、
発振周波数15〜200kHzの超音波の作用下で、反応系のpH値が7〜9.5になるまで、濃度2〜19wt%のアンモニア水を前記混合スラリーに添加し、攪拌を2〜6時間続けた後、過マンガン酸カリウム溶液を反応系のpHが4〜6になるまで滴下し、攪拌を2〜6時間続け、真空吸引ろ過、加水洗浄を行い、ペーストを得る工程(2)、および、
前記ペーストを、100〜130℃で乾燥し、微細粒子に研磨し、そして、当該微細粒子を350〜1000℃で2〜6時間仮焼して前記脱硫脱硝剤を得る工程(3)、
を含み、
前記脱硫脱硝剤100重量部に対して、TiOが30〜60重量部、ZrOが9〜30重量部、Vが2〜10重量部、CoOが2〜10重量部、Coが1〜8重量部、Feが2〜10重量部、MnOが5〜15重量部、および、KMnOが2〜10重量部であり、前記脱硫脱硝剤の平均粒子径は0.8〜15ミクロンであり、前記脱硫脱硝剤におけるV、CoO、Co、Fe、及びMnOの粒子径は2〜100nmである、脱硫脱硝剤の製造方法。
【請求項2】
前記脱硫脱硝剤100重量部に対して、TiOが35〜60重量部、ZrOが10〜20重量部、Vが6〜10重量部、CoOが2.5〜7重量部、Coが1.5〜6重量部、Feが3〜8重量部、MnOが6〜12重量部、および、KMnOが3〜8重量部である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱硫脱硝剤100重量部に対して、TiOが50〜52重量部、ZrOが10〜15重量部、Vが8〜10重量部、CoOが3〜6重量部、Coが3〜5重量部、Feが6〜8重量部、MnOが7〜9.5重量部、および、KMnOが5〜8重量部である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
TiOおよびZrOは担体であり、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOは活性成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アンモニア水の添加速度は0.2〜20mL/minである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
過マンガン酸カリウム溶液の滴下速度は0.2〜20mL/minである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
排煙の乾式脱硫脱硝方法であって、
TiOとZrOを含むスラリーに、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOを加入し、回転数100〜300rpmで10〜60時間攪拌して混合スラリーを形成する工程であって、TiO、ZrO、V、CoO、Co、FeおよびMnOはいずれもナノスケール酸化物である工程(1)、
発振周波数15〜200kHzの超音波の作用下で、反応系のpH値が7〜9.5になるまで、濃度2〜19wt%のアンモニア水を前記混合スラリーに添加し、攪拌を2〜6時間続けた後、過マンガン酸カリウム溶液を反応系のpHが4〜6になるまで滴下し、攪拌を2〜6時間続け、真空吸引ろ過、加水洗浄を行い、ペーストを得る工程(2)、
前記ペーストを、100〜130℃で乾燥し、微細粒子に研磨し、そして、当該微細粒子を350〜1000℃で2〜6時間仮焼して脱硫脱硝剤を得る工程(3)、
前記脱硫脱硝剤100重量部に対して、TiOが30〜60重量部、ZrOが9〜30重量部、Vが2〜10重量部、CoOが2〜10重量部、Coが1〜8重量部、Feが2〜10重量部、MnOが5〜15重量部、および、KMnOが2〜10重量部であり、前記脱硫脱硝剤の平均粒子径は0.8〜15ミクロンであり、前記脱硫脱硝剤におけるV、CoO、Co、Fe、及びMnOの粒子径は2〜100nmであり、
排煙を前記脱硫脱硝剤と十分に接触させた後、酸化マグネシウムを含む吸収剤乾燥粉と接触させることにより、排煙中の窒素酸化物及び二酸化硫黄を除去する工程(4)を含み、
前記酸化マグネシウムは、活性酸化マグネシウムを70〜85wt%含み、前記酸化マグネシウムにおけるナノスケール酸化マグネシウムの含有量が10〜20wt%であり、
前記脱硫脱硝剤と接触する前の排煙は、二酸化硫黄含有量が1000〜3000mg/Nmであり、窒素酸化物含有量が100〜600mg/Nmであり、流速が2〜5m/sであり、温度が110〜170℃である、排煙の乾式脱硫脱硝方法。
【請求項8】
前記脱硫脱硝剤100重量部に対して、TiOが35〜60重量部、ZrOが10〜20重量部、Vが6〜10重量部、CoOが2.5〜7重量部、Coが1.5〜6重量部、Feが3〜8重量部、MnOが6〜12重量部、および、KMnOが3〜8重量部である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記脱硫脱硝剤100重量部に対して、TiOが50〜52重量部、ZrOが10〜15重量部、Vが8〜10重量部、CoOが3〜6重量部、Coが3〜5重量部、Feが6〜8重量部、MnOが7〜9.5重量部、および、KMnOが5〜8重量部である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
TiOおよびZrOは担体であり、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOは活性成分である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
アンモニア水の添加速度は0.2〜20mL/minである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
過マンガン酸カリウム溶液の滴下速度は0.2〜20mL/minである、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式脱硫脱硝剤、その製造方法及び使用に関し、特に、乾式脱硫脱硝剤、その製造方法及び排煙の乾式脱硫脱硝方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界経済の発展に伴い、工業化と都市化が加速し、排煙の排出量は年々増加している。このため、大気汚染は21世紀に最も深刻な汚染問題となっている。産業排ガスの酸性汚染は大気汚染の要因であり、その汚染範囲が広く、汚染物質の発生量が多く、環境酸化の原因となっている。環境酸化はSO、NOxによる問題であり、酸性雨が主な表現である。1960年代、多くの産業発達地域の環境は産業排ガスの影響を受け、降水pH値が5以下に低下し、その後汚染範囲が拡大してきて、環境が深刻に損なわれた。21世紀に入って以来、中国経済は急速に進展しているが、排ガスの量も地球規模で高く、各工業都市の環境汚染が激しくなる。
【0003】
このため、信頼性の高い排煙脱硫脱硝技術の開発が必要である。CN101954284Aには、銅含有化合物、鉄含有化合物、コバルト含有化合物及び亜鉛含有化合物を混合した後、活性炭を溶液に分散させて脱硫触媒を製造する活性炭脱硫触媒の製造方法が開示されている。当該触媒は比較的に高い脱硫効率を有する。しかし、当該触媒は製造方法が複雑であり、また、必要な原料成分が多く、特に窒素酸化物を除去する能力を有するか否かについては言及されていない。CN102527369Aには、活性炭を脱硝触媒担体とし、触媒活性成分として希土類金属セリウム又はランタンとセリウムの2成分を用いて窒素酸化物を還元し、高い空間速度で脱硝率95%以上を維持できる活性炭に希土類金属酸化物が担持されている還元脱硝触媒の製造方法が開示されている。しかし、当該特許文献には、触媒が脱硫可能か否かについて言及されていない。また、当該触媒は、高価な希土類化合物を活性成分として使用するため、コストが高くなる。CN1597094Aには、活性炭粉末にフェノール樹脂やフラン樹脂バインダーを添加し、押出成形した後、炭素化し、メタバナジン酸アンモニウムとシュウ酸を混合した溶液に浸漬し、乾燥、焼成、酸化して触媒を製造する脱硫脱硝用のハニカム活性炭系触媒の製造方法が開示されている。この触媒は、硫黄容量が67〜90mgSO/100g触媒であり、NO転化率が55〜90%に達し、未だ改善の余地がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、脱硫脱硝効率が高く、しかも希土類金属を使用しないためコストが低い乾式脱硫脱硝剤を提供することを目的とする。
【0005】
本発明は、さらにプロセスが簡単で省エネルギー、環境にやさしい脱硫脱硝剤の製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、また、脱硫脱硝剤の使用効果を改善できる排煙乾式脱硫脱硝方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成を採用する。
【0008】
本発明は、
乾式脱硫脱硝剤であって、組成成分として、当該乾式脱硫脱硝剤100重量部に対して、
TiO 30〜60重量部、
ZrO 9〜30重量部、
2〜10重量部、
CoO 2〜10重量部、
Co 1〜8重量部、
Fe 2〜10重量部、
MnO 5〜15重量部、および、
KMnO 2〜10重量部、
を含む原料から得られる乾式脱硫脱硝剤を提供する。
本発明における脱硫脱硝剤によれば、好ましくは、脱硫脱硝剤は、組成成分として、当該脱硫脱硝剤100重量部に対して、
TiO 35〜60重量部、
ZrO 10〜20重量部、
6〜10重量部、
CoO 2.5〜7重量部
Co 1.5〜6重量部、
Fe 3〜8重量部
MnO 6〜12重量部、および、
KMnO 3〜8重量部
を含む原料から得られるものである。
【0009】
本発明における脱硫脱硝剤によれば、好ましくは、脱硫脱硝剤は、組成成分として、当該脱硫脱硝剤100重量部に対して、
TiO 50〜52重量部、
ZrO 10〜15重量部、
8〜10重量部、
CoO 3〜6重量部、
Co 3〜5重量部、
Fe 6〜8重量部、
MnO 7〜9.5重量部、および、
KMnO 5〜8重量部
を含む原料から得られるものである。
【0010】
本発明における脱硫脱硝剤によれば、好ましくは、当該脱硫脱硝剤は、TiOおよびZrOが担体であり、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOが活性成分である。
【0011】
本発明における脱硫脱硝剤によれば、好ましくは、前記脱硫脱硝剤の平均粒子径は0.8〜15ミクロンである。
【0012】
本発明は、さらに、
TiOとZrOを含むスラリーに、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOを加入し、回転数100〜300rpmで10〜60時間攪拌して混合スラリーを形成する工程であって、TiO、ZrO、V、CoO、Co、FeおよびMnOはいずれもナノスケール酸化物である工程(1)、
発振周波数15〜200kHzの超音波の作用下で、反応系のpH値が7〜9.5になるまで、濃度2〜19wt%のアンモニア水を前記混合スラリーに添加し、2〜攪拌を6時間続けた後、反応系のpH値が4〜6になるまで、過マンガン酸カリウム溶液を滴下し、攪拌を2〜6時間続け、真空吸引ろ過、加水洗浄を行い、ペーストを得る工程(2)、および、
前記ペーストを100〜130℃で乾燥し、微細粒子に研磨し、そして、当該微細粒子を350〜1000℃で2〜6時間仮焼して脱硫脱硝剤を得る工程(3)、
を含む前記脱硫脱硝剤の製造方法を提供する。
【0013】
本発明における製造方法によれば、好ましくは、工程(2)において、アンモニア水の添加速度は0.2〜20mL/minである。
【0014】
本発明における製造方法によれば、好ましくは、工程(2)において、過マンガン酸カリウム溶液の滴下速度は0.2〜20mL/minである。
【0015】
本発明は、排煙を前記脱硫脱硝剤と十分に接触させた後、酸化マグネシウムを含む吸収剤乾燥粉末と接触させることにより、排煙中の窒素酸化物及び二酸化硫黄を除去する排煙の乾式脱硫脱硝方法であって、前記酸化マグネシウムは、活性酸化マグネシウムを70〜85wt%含み、前記酸化マグネシウムにおけるナノスケールの酸化マグネシウムの含有量が10〜20wt%である排煙の乾式脱硫脱硝方法をさらに提供する。
【0016】
本発明における方法によれば、脱硫脱硝剤と接触する前の排煙は、二酸化硫黄の含有量が1000〜3000mg/Nmであり、窒素酸化物の含有量が100〜600mg/Nmであり、流速が2〜5m/sであり、温度が110〜170℃である。
【0017】
本発明における乾式脱硫脱硝剤は、低価数の窒素酸化物を二酸化窒素等の高価数の窒素酸化物に酸化し、かつ二酸化硫黄を三酸化硫黄に酸化した後、酸化マグネシウム等の吸収剤で吸収することにより脱硫脱硝効果を達成することができる。本発明における脱硫脱硝剤は、脱硫脱硝効果が高く、低エネルギーで低コストである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明において、ナノスケールとは、1〜100nm、好ましくは10〜60nmを表す。
【0020】
<乾式脱硫脱硝剤>
本発明における脱硫脱硝剤は、脱硫脱硝触媒である。当該脱硫脱硝剤は、担体及び活性組成成分を含んでもよい。担体は、ナノスケールの両性酸化物であってもよく、好ましくはTiOとZrOの組合せである。活性組成成分は、ナノスケールの金属酸化物およびKMnOを含む。ナノスケール金属酸化物はV、CoO、Co、Fe、MnOを含む。これらの活性組成成分を担体に担持させて脱硫脱硝剤を形成する。これらの活性組成成分は、協力して二酸化硫黄を三酸化硫黄に酸化し、かつ、低価数の窒素酸化物であるNOをNOなどに接触酸化する。このような組合せにより、接触酸化作用が十分に発揮され、さらに脱硫脱硝効果が改善される。
【0021】
本発明は、脱硫脱硝剤の活性組成成分として、バナジウム、コバルト、鉄、マンガンを使用する。これらは、V、CoO、Co、Fe、MnOとして存在し、接触反応の活性サイトを提供し、反応物であるSO、NOを吸着し、かつ、反応の進行を促進する。
【0022】
Tiは、活性組成成分の主な担体であり、TiOとして存在する。TiはNOを吸着し、脱硫脱硝剤表面への反応物の吸着確率を増やす役割がある。ZrOとTiOは、結合して担体となり、Zrは本来の結晶格子中のTiの位置を置換してZrTiOを形成することができる。この場合、担体に新たな酸性度と塩基性度を形成し、SO、NOが脱硫脱硝剤に取り込まると、これらの塩基性サイトがSO、NOを引き寄せて、取り込みのターゲットサイトを形成し、活性組成成分の活性サイトを有効に保護する。
【0023】
本発明の1つの実施形態によれば、当該脱硫脱硝剤は、脱硫脱硝剤100重量部に対して、TiO30〜60重量部、ZrO9〜30重量部、V2〜10重量部、CoO 2〜10重量部、Co1〜8重量部、Fe2〜10重量部、MnO5〜15重量部、および、KMnO2〜10重量部を含む。好ましくは、当該脱硫脱硝剤は、TiO35〜60重量部、ZrO10〜20重量部、V6〜10重量部、CoO 2.5〜7重量部、Co1.5〜6重量部、Fe3〜8重量部、MnO6〜12重量部およびKMnO3〜8重量部を含む。より好ましくは、当該脱硫脱硝剤は、TiO50〜52重量部、ZrO10〜15重量部、V8〜10重量部、CoO 3〜6重量部、Co3〜5重量部、Fe6〜8重量部、MnO7〜9.5重量部およびKMnO5〜8重量部を含む。活性組成成分を前記範囲に制御することにより、排煙における二酸化硫黄や低価数の窒素酸化物に対する活性組成成分の酸化効果を著しく改善させて脱硫脱硝効果を向上させることができる。本発明において、脱硫脱硝剤は、前記TiO、ZrO、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOを含む原料からなるものである。本発明の1つの好ましい実施形態によれば、脱硫脱硝剤は、前記原料としてのTiO、ZrO、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOのみからなるものである。
【0024】
本発明における脱硫脱硝剤の平均粒子径は0.8〜15ミクロンであり、好ましくは、1〜5ミクロンである。平均粒子径は、篩い分け法により計算される。成形された脱硫脱硝剤において、V、CoO、Co、FeおよびMnOのサイズは、2〜100nmであってもよく、比表面積は、100〜300m/gに達することができる。
【0025】
<製造方法>
本発明における脱硫脱硝剤は、ナノ金属酸化物を用いて製造することができる。まず、V、CoO、Co、FeおよびMnOのナノスケール金属酸化物を製造する。周知の方法としては、ゾル‐ゲル法、加水分解法、水熱合成法等があり、好ましくは、ゾル‐ゲル法を用いる。例えば、バナジウム、コバルト、鉄、マンガンの硝酸塩溶液を前駆体とし、それぞれの硝酸塩を溶液中で加水分解、縮合させてゾル液とし、その後加熱して溶媒を除去してゲルになり、最終的に結晶型、粒度の制御可能で粒子の均一度が高いナノスケールの金属酸化物を製造する。これらの方法は当業界で周知の方法であり、ここではその説明を省略する。
【0026】
本発明における製造方法は、混合工程(1)、反応工程(2)、乾燥仮焼工程(3)などを含む。
【0027】
本発明における混合工程は、TiOとZrOを含むスラリーに、V、CoO、Co、Fe、MnOおよびKMnOを加入し、回転数100〜300rpmで10〜60時間攪拌して混合スラリーに形成する工程である。回転数は、好ましくは200〜250rpmであり、攪拌時間は、好ましくは10〜48時間である。本発明の1つの実施形態によれば、TiO、ZrO、V、CoO、Co、FeおよびMnOは、いずれもナノスケール酸化物である。
【0028】
本発明における反応工程は、発振周波数15〜200kHz、好ましくは50〜100kHzの超音波の作用下で濃度2〜19wt%、好ましくは5〜10wt%のアンモニア水を、反応システムのpH値が7〜9.5、例えば、7〜8になるまで前記混合スラリーに添加し、引き続き2〜6時間、好ましくは2〜3時間攪拌した後、反応システムのpH値が4〜6、例えば、5〜5.5になるまで過マンガン酸カリウム溶液を添加し、引き続き2〜6時間、好ましくは2〜3時間攪拌し、真空吸引濾過、加水洗浄を行って、ペーストを得ることを含む。アンモニア水の添加速度は、0.2〜20mL/minであってもよく、好ましくは3〜10mL/minであり、過マンガン酸カリウム溶液の滴下速度は0.2〜20mL/minであり、好ましくは1〜5mL/minである。これは、サイズが均一なナノ金属酸化物を得るのに有利である。本発明に用いられる過マンガン酸カリウム溶液は、好ましくは酸性過マンガン酸カリウム溶液である。
【0029】
本発明における乾燥仮焼工程は、前記ペーストを100〜130℃、例えば105〜110℃で乾燥させて乾燥物を得、そして乾燥物を、微細粒子に研磨すること、および、前記微細粒子を350〜1000℃、好ましくは500〜800℃で2〜6時間、好ましくは2〜3時間仮焼して脱硫脱硝剤を得ることを含む。
【0030】
<排煙の乾式脱硫脱硝方法>
本発明における排煙の乾式脱硫脱硝方法は:排煙と前記脱硫脱硝剤を十分に接触させ、そして酸化マグネシウムを含む吸収剤乾燥粉と接触させて排煙中の二酸化硫黄および窒素酸化物を除去する排煙脱硫脱硝工程を含む。
【0031】
本発明の方法において、排煙における二酸化硫黄の含有量は1000〜3000mg/Nmであってもよく、好ましくは1500〜2500mg/Nmであり、より好ましくは1600〜2000mg/Nmである。窒素酸化物の含有量は、100〜600mg/Nmであり、好ましくは150〜500mg/Nmであり、より好ましくは300〜450mg/Nmである。酸素含有量は10〜25vol%であり、好ましくは15〜20vol%である。温度は110〜170℃であってもよく、好ましくは120〜135℃である。また、排煙の流速は2〜5m/sであってもよく、好ましくは2.5〜3.5m/sである。前記排煙のパラメータは、いずれも排煙入口のパラメータであり、排煙出口のパラメータは実際の脱硫脱硝の状況に応じて設定する。上記プロセスパラメータを採用することは、脱硫脱硝効率の改善に有利である。排煙を脱硫脱硝剤と十分に接触させることにより、排煙における低次窒素酸化物を二酸化窒素等に転化させ、かつ、二酸化硫黄を三酸化硫黄に転化させて前処理排煙とする。
【0032】
本発明における酸化マグネシウムは、軽焼酸化マグネシウム、ミクロンスケール酸化マグネシウムおよび/またはナノスケール酸化マグネシウムであってもよい。本発明の1つの実施形態によれば、前記酸化マグネシウムは活性酸化マグネシウム70〜85wt%、好ましくは活性酸化マグネシウム80〜85%を含み、かつ、前記酸化マグネシウムにおけるナノスケール酸化マグネシウムの含有量は10〜20wt%であり、好ましくは15〜20wt%である。ナノスケール酸化マグネシウムのナノ微粒子のユニークな特性を活用することで脱硫脱硝効率を向上させることができる。これは、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウムの形成に有利であるため、排煙脱硫脱硝効果を改善することができる。本発明において、前記吸收剤は、前記酸化マグネシウムのみを含んでもよく、また、前記吸收剤は、さらに酸化カルシウムおよびシリカ等の改質剤を含んでもよい。改質剤は、ミクロンスケール、ナノスケールの金属酸化物である。本発明における吸収剤は、除去効率を高めるために粉末形態とする。その粒子径は、0.8〜15ミクロンであってもく、好ましくは1〜5ミクロンである。これにより、吸収剤を排煙に直接混合して排煙中の二酸化硫黄および窒素酸化物を除去することができ、大量の産業排水を必要とせずに排煙の脱硫脱硝を実現でき、かつ、大量の産業廃液を生成することがない。例えば、吸収剤乾粉と前処理排煙とを排煙パイプラインで十分に混合した後、吸収塔に供給して脱硫脱硝処理を行い、脱硫脱硝後の排煙を煙突から排出する。
【0033】
実施例1
表1の配合に従って脱硫脱硝剤を製造した。TiOとZrOを含むスラリーに、V、CoO、Co、Fe、MnO(前記化合物はいずれもナノスケールの金属酸化物である。)およびKMnOを加入し、回転数250pmで45時間攪拌し、混合スラリーを形成した。発振周波数70kHzの超音波の作用下で濃度10wt%のアンモニア水を、反応システムのpH値が7になるまで前記混合スラリーに添加し、引き続き3時間攪拌した後、反応システムのpH値が5になるまで過マンガン酸カリウム溶液を滴下し、引き続き2時間攪拌し、真空吸引ろ過し、加水洗浄し、ペーストを得た。アンモニア水の添加速度は5mL/minであり、過マンガン酸カリウム溶液の滴下速度は2mL/minであった。前記ペーストを100℃で乾燥させて微細粒子に研磨し、当該微細粒子を500℃で3時間仮焼し、脱硫脱硝剤H1を得た。
【0034】
表1、脱硫脱硝剤H1の配合
【0035】
当該脱硫脱硝剤を用いて排煙を接触酸化させ、かつ、酸化マグネシウム乾粉を用いて吸収した。排煙の流速は2.5m/sであり、排煙入口の他のパラメータ、排煙出口パラメータは、表2および表3に示した。
【0036】
表2、排煙入口パラメータ
【0037】
表3、排煙出口パラメータ
【0038】
浄化後の排煙は、二酸化硫黄の濃度が23mg/Nmであり、窒素酸化物の濃度が50mg/Nmであった。脱硫率は99.51%になり、脱硝率は96%であった。
【0039】
実施例2
表4の配合に従って脱硫脱硝剤H2を得、その他の条件は実施例1と同じであった。当該脱硫脱硝剤を用いて排煙を接触酸化し、かつ、酸化マグネシウム粉を用いて吸収を行った。排煙入口パラメータは、実施例1と同じ、排煙出口パラメータは表5に示した。
【0040】
表4、脱硫脱硝剤H2の配合
【0041】
表5、排煙出口パラメータ
浄化後の排煙における二酸化硫黄の濃度は19mg/Nmであり、窒素酸化物の濃度は43mg/Nmであった。脱硫率は99.60%になり、脱硝率は96.02%であった。
【0042】
実施例3
表6の配合に従って脱硫脱硝剤H3を得、その他の条件は実施例1と同じであった。当該脱硫脱硝剤を用いて排煙を接触酸化し、かつ、酸化マグネシウム乾粉を用いて吸収を行った。排煙入口パラメータは、実施例1と同じ、排煙出口パラメータは表7に示した。
【0043】
表6、脱硫脱硝剤H3の配合
【0044】
表7、排煙出口パラメータ
【0045】
浄化後の排煙は、二酸化硫黄の濃度が13mg/Nmであり、窒素酸化物の濃度が29mg/Nmであった。脱硫率は99.73%になり、脱硝率は97.39%であった。
【0046】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者が思いつく任意の変形、改良、置換等を本発明の範囲に含まれるものとする。