特許第6961812号(P6961812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961812
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ユニット型波動歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 1/32 20060101AFI20211025BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20211025BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   F16H1/32 B
   F16C17/10 Z
   F16C35/02 Z
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-518828(P2020-518828)
(86)(22)【出願日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】JP2018034839
(87)【国際公開番号】WO2020059081
(87)【国際公開日】20200326
【審査請求日】2020年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】清澤 芳秀
(72)【発明者】
【氏名】城越 教夫
【審査官】 鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/157910(WO,A1)
【文献】 特表2017−508113(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/024340(WO,A1)
【文献】 特開2010−242585(JP,A)
【文献】 特開2010−014207(JP,A)
【文献】 特開2016−023724(JP,A)
【文献】 特開2015−169256(JP,A)
【文献】 特開2000−033878(JP,A)
【文献】 特開2007−288870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16C 17/10
F16C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性の内歯歯車と、
前記内歯歯車にかみ合い可能な可撓性の外歯歯車と、
前記外歯歯車を非円形に撓めて前記内歯歯車に対して部分的にかみ合わせている波動発生器と、
前記内歯歯車および前記外歯歯車のうちの一方の歯車である第1歯車が取り付けられている筒状のユニットハウジングと、
前記内歯歯車および前記外歯歯車のうちの他方の歯車である第2歯車が取り付けられている出力部材と、
固定側部材である前記ユニットハウジングおよび前記第1歯車と、回転側部材である前記出力部材および前記第2歯車との間を、相対回転可能に支持している滑り軸受と、
前記固定側部材と前記回転側部材との間を、相対回転可能に支持している転がり軸受と、を有しており、
前記中心軸線に沿った方向における一方の側に前記滑り軸受が配置され、他方の側に前記転がり軸受が配置されており、
前記滑り軸受は、前記固定側部材に形成される固定側滑り軸受面と、前記回転側部材に形成され、前記固定側滑り軸受面に滑り接触する回転側滑り軸受面とを備え、
前記固定側滑り軸受面は、ユニット型波動歯車装置の中心軸線を中心線とする円錐面によって規定され、
前記回転側滑り軸受面は、前記固定側滑り軸受面とは逆向きの円錐面によって規定されており、
前記中心軸線を含む平面で切断した切断面において、前記滑り軸受における前記固定側滑り軸受面または前記回転側滑り軸受面と、前記中心軸線に直交する直交面とのなす軸受角度θは、
25° ≦ θ ≦ 35°
であることを特徴とするユニット型波動歯車装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記滑り軸受は、前記固定側部材に装着された円環形状の軸受ブッシュを備え、
前記軸受ブッシュに前記固定側滑り軸受面が形成されているユニット型波動歯車装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記滑り軸受として、前記中心軸線に沿った方向における一方の側に位置する第1滑り軸受と、他方の側に位置する第2滑り軸受とを備え、
前記第1滑り軸受は、前記固定側滑り軸受面として第1固定側滑り軸受面を備え、前記回転側滑り軸受面として第1回転側滑り軸受面を備え、
前記第2滑り軸受は、前記固定側滑り軸受面として、前記第1固定側滑り軸受面とは逆向きの第2固定側滑り軸受面を備え、前記回転側滑り軸受面として、前記第1回転側滑り軸受面とは逆向きの第2回転側滑り軸受面を備えているユニット型波動歯車装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記第1滑り軸受は、前記固定側部材に装着された円環形状の第1軸受ブッシュを備え、
前記第1軸受ブッシュに前記第1固定側滑り軸受面が形成されており、
前記第2滑り軸受は、前記固定側部材に装着された円環形状の第2軸受ブッシュを備え、
前記第2軸受ブッシュに前記第2固定側滑り軸受面が形成されているユニット型波動歯車装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記内歯歯車に対して、同軸に、並列配置され、前記出力部材と一体回転する円環状の回転側内歯歯車を備え、
前記内歯歯車は前記ユニットハウジングと一体回転する前記第1歯車であり、前記外歯歯車は前記第2歯車であり、
前記外歯歯車は、前記内歯歯車および前記回転側内歯歯車の内側に同軸に配置され、前記波動発生器によって非円形に撓められて、前記内歯歯車および前記回転側内歯歯車のそれぞれにかみ合っており、
前記波動発生器の回転に伴って、前記内歯歯車と前記外歯歯車との間に相対回転が発生するように、前記内歯歯車と前記外歯歯車とは歯数が相違し、
前記波動発生器の回転に伴って前記回転側内歯歯車と一体回転するように、前記外歯歯車は、前記回転側内歯歯車と同一の歯数を備えているユニット型波動歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、剛性の内歯歯車と可撓性の外歯歯車とを相対回転自在の状態で支持している滑り軸受を備えたユニット型波動歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニット型波動歯車装置は、内歯歯車、外歯歯車および波動発生器が組み込まれているユニットハウジングと、内歯歯車および外歯歯車の間を相対回転自在の状態で支持している軸受と、減速回転が出力される出力部材とが備わっている。ユニット型波動歯車装置では、特許文献1、2に記載されているように、軸受として、クロスローラベアリング、4点接触ボールベアリング等の転がり軸受が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−291237号公報
【特許文献2】特開2005−308131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユニット型波動歯車装置では、そのコンパクト化、部品点数の削減のために、例えば、転がり軸受の外輪にユニットハウジングを一体形成する等している。転がり軸受の代わりに、滑り軸受を用いることで、転がり軸受を用いる場合に比べて、ユニット構造の波動歯車装置の更なる小型化、コンパクト化を図ることが考えられる。本発明者は、国際特許出願PCT/JP2017/39444(出願日:2017年10月31日)において、滑り軸受を備えたユニット構造の波動歯車装置を提案している。
【0005】
滑り軸受を用いる場合には、内歯歯車と外歯歯車の間に生じるラジアル荷重およびスラスト荷重を受けるために、ラジアル滑り軸受およびスラスト滑り軸受の双方が配置される。また、ラジアル滑り軸受は、隙間調整機構が備わっていないので、ラジアル滑り軸受を構成する部位の加工精度を高め、また、ラジアル滑り軸受の組付け精度を高めるようにしている。
【0006】
本発明の目的は、間隔調整が容易な滑り軸受が備わっている、軽量でコンパクトなユニット型波動歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のユニット型波動歯車装置では、剛性の内歯歯車と可撓性の外歯歯車とを相対回転自在の状態で支持する軸受として、転がり軸受の代わりに、滑り軸受を使用している。また、滑り軸受として、その滑り軸受面を、ユニット型波動歯車装置の中心軸線に対して傾斜させることで、ラジアル滑り軸受を不要にし、かつ、隙間調整を容易にしている。
【0008】
すなわち、本発明のユニット型波動歯車装置は、
剛性の内歯歯車と、
前記内歯歯車にかみ合い可能な可撓性の外歯歯車と、
前記外歯歯車を非円形に撓めて前記内歯歯車に対して部分的にかみ合わせている波動発生器と、
前記内歯歯車および前記外歯歯車のうちの一方の歯車である第1歯車が取り付けられている筒状のユニットハウジングと、
前記内歯歯車および前記外歯歯車のうちの他方の歯車である第2歯車が取り付けられている出力部材と、
固定側部材である前記ユニットハウジングおよび前記第1歯車と、回転側部材である前記出力部材および前記第2歯車との間を、相対回転可能に支持している滑り軸受と、
前記固定側部材と前記回転側部材との間を、相対回転可能に支持している転がり軸受と、を有しており、
前記中心軸線に沿った方向における一方の側に前記滑り軸受が配置され、他方の側に前記転がり軸受が配置されており、
前記滑り軸受は、前記固定側部材に形成される固定側滑り軸受面と、前記回転側部材に形成され、前記固定側滑り軸受面に滑り接触する回転側滑り軸受面とを備え、
前記固定側滑り軸受面は、ユニット型波動歯車装置の中心軸線を中心線とする円錐面によって規定され、
前記回転側滑り軸受面は、前記固定側滑り軸受面とは逆向きの円錐面によって規定されており、
前記中心軸線を含む平面で切断した切断面において、前記滑り軸受における前記固定側滑り軸受面または前記回転側滑り軸受面と、前記中心軸線に直交する直交面とのなす軸受角度θは、
25° ≦ θ ≦ 35°
であることを特徴としている。
【0009】
滑り軸受として、自己潤滑型滑り軸受を用いることができる。例えば、固定側滑り軸受面が形成された円環形状の軸受ブッシュが、固定側部材に装着された構成の滑り軸受を用いることができる。また、一対の滑り軸受が、固定側部材と回転側部材の間に配置される場合もある。一対の滑り軸受の代わりに、滑り軸受と転がり軸受とを用いることもできる。転がり軸受として、例えば、深溝玉軸受を用いる。
【0010】
中心軸線に対して傾斜した滑り軸受面を備えた滑り軸受は、スラスト荷重およびラジアル荷重の双方を受けることができる。スラスト滑り軸受およびラジアル滑り軸受を配置する場合に比べて、ユニット型波動歯車装置の小型化、コンパクト化が容易な場合がある。また、ラジアル隙間の調整機能を持たないラジアル滑り軸受を配置する場合に比べて、滑り軸受面の間の間隔調整も容易になる。
【0011】
ユニットハウジング、内歯歯車および出力部材を、それぞれ、鋼、軽合金、セラミックスおよびプラスチックのうちのいずれか一つの素材からなる部品とすることができる。これらの部品を、アルミニウム合金、マグネシウム合金などの軽合金、プラスチックなど、鉄系素材よりも軽量の素材から製造することにより、装置の軽量化が図れる。
【0012】
この場合、滑り軸受面が形成される表面部分を、硬質メッキ処理、固体潤滑剤メッキ処理などを施したメッキ処理面とする。これにより、必要とされる表面硬度、耐摩耗・摩擦性、潤滑性などの特性を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】実施の形態1のユニット型波動歯車装置を示す縦断面図である。
図1B図1Aの1B−1B線で切断した部分を示す概略横断面図である。
図2A図1Aのユニット型波動歯車装置の滑り軸受に作用する力を示す説明図である。
図2B】スラスト滑り軸受およびラジアル滑り軸受を備えたユニット型波動歯車装置(比較装置)における滑り軸受に作用する力を示す説明図である。
図3】実施の形態2のユニット型波動歯車装置を示す縦断面図である。
図4】実施の形態3のユニット型波動歯車装置を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したユニット型波動歯車装置の実施の形態を説明する。以下の実施の形態は、本発明をフラット型波動歯車装置に適用した場合の例である。本発明は、カップ形状の外歯歯車を備えたカップ型波動歯車装置、シルクハット形状の外歯歯車を備えたシルクハット型波動歯車装置に対しても同様に適用可能である。また、実施の形態のユニット型波動歯車装置では、可撓性の外歯歯車が波動発生器によって楕円状に撓められて剛性の内歯歯車に対して円周方向の2か所で同時にかみ合う。本発明は、外歯歯車が3ローブ状に撓められて内歯歯車に対して3か所で同時にかみ合う構造の波動歯車装置にも同様に適用可能である。
【0015】
(実施の形態1)
図1Aは実施の形態1に係るユニット型波動歯車装置を示す縦断面図である。図1B図1Aの1B−1B線で切断した部分を示す概略横断面図であり、内歯歯車に対する外歯歯車のかみ合い状態を示す。ユニット型波動歯車装置1(以下、単に「波動歯車装置1」と呼ぶ。)は、円筒状のユニットハウジング2を備えている。ユニットハウジング2は、例えば、中心軸線1aの方向から同軸に締結固定された円筒状の第1ハウジング2aと、円筒状の第2ハウジング2bから構成される。
【0016】
ユニットハウジング2の内部には、剛性の第1内歯歯車3および剛性の第2内歯歯車4が配置されている。第1、第2内歯歯車3、4は、中心軸線1aの方向に、同軸に並列配置されている。一方の第1内歯歯車3は、ユニットハウジング2の第1ハウジング2aに一体形成されている。第1ハウジング2aと第1内歯歯車3とを別部品として製作し、第1ハウジング2aに第1内歯歯車3を同軸に固定してもよい。他方の第2内歯歯車4には、円筒状の出力軸5が一体形成されている。第2内歯歯車4と出力軸5とを別部品として製作し、これらを同軸に固定してもよい。第1、第2内歯歯車3、4の内側には、円筒形状をした可撓性の外歯歯車6が同軸に配置されている。外歯歯車6の内側には、楕円状輪郭の波動発生器7が同軸に配置されている。
【0017】
ユニットハウジング2および第1内歯歯車3は、不図示の取付け部に締結固定される固定側部材Aである。外歯歯車6、第2内歯歯車4(回転側内歯歯車)および出力軸5は回転側部材Bである。回転側部材Bは、中心軸線1aの方向に間隔を開けて配置された第1滑り軸受8および第2滑り軸受9を介して、固定側部材Aによって相対回転可能に支持されている。波動発生器7は、中心軸線1aの方向の一方の側において、玉軸受等の第1転がり軸受11を介して、ユニットハウジング2によって回転可能に支持されており、他方の側において、玉軸受等の第2転がり軸受12を介して、出力軸5に対して相対回転可能に支持されている。
【0018】
波動発生器7は、中空入力軸7aと、中空入力軸7aの外周面に一体形成された一定幅の楕円状輪郭の剛性プラグ7bと、剛性プラグ7bの楕円状外周面に装着したウエーブベアリング7cとから構成されている。中空入力軸7aにおける剛性プラグ7bの両側の外周面部分が、第1、第2転がり軸受11、12によって支持されている。例えば、中空入力軸7aには回転入力用の歯車が固定されており、波動発生器7には、モータなどから高速回転が入力される。
【0019】
外歯歯車6は、波動発生器7によって楕円形状に撓められており、楕円形状の長軸Lmaxの位置において、第1、第2内歯歯車3、4のそれぞれにかみ合っている。第1内歯歯車3と外歯歯車6とは歯数が相違し、第2内歯歯車4と外歯歯車6とは歯数が同一である。波動発生器7が回転すると、固定側の第1内歯歯車3に対して外歯歯車6が相対回転する。外歯歯車6と同一歯数の第2内歯歯車4は、外歯歯車6と一体回転する。外歯歯車6に一体形成されている出力軸5から、減速回転が出力される。
【0020】
次に、第1滑り軸受8について説明する。第1滑り軸受8は、第1軸受ブッシュ8aと、この第1軸受ブッシュ8aに形成されている第1固定側滑り軸受面8bと、この第1固定側滑り軸受面8bに滑り接触する第1回転側滑り軸受面8cとを備えている。固定側部材Aにおけるユニットハウジング2の内周面部分には、内側に開口した円環状の凹部が形成されている。凹部における第1内歯歯車3が形成されている側の内側端面部分に、第1軸受ブッシュ8aが中心軸線1aの方向から装着されている。第1軸受ブッシュ8aは、必要に応じて、間隔調整用のシム板(図示せず)を挟み、装着される。第1軸受ブッシュ8aにおける第2滑り軸受9の側の円環状端面は、中心軸線1aを中心線とする円錐面によって規定される第1固定側滑り軸受面8bである。軸受角度θは、0<θ<90°であり、中心軸線1aに対する傾斜角度は(90°−θ)になる。
【0021】
回転側部材Bにおいて、出力軸5に一体形成されている第2内歯歯車4の端面部分には、第1回転側滑り軸受面8cが形成されている。第1回転側滑り軸受面8cは、第1固定側滑り軸受面8bとは相補的な形状の円錐面によって規定され、第1固定側滑り軸受面8bに対して滑り接触している。
【0022】
第2滑り軸受9は、第2軸受ブッシュ9aと、この第2軸受ブッシュ9aに形成した第2固定側滑り軸受面9bと、この第2固定側滑り軸受面に滑り接触する第2回転側滑り軸受面9cとを備えている。固定側部材Aにおけるユニットハウジング2の内周面部分に形成した凹部において、第1内歯歯車3とは反対側の内側端面部分には、第2軸受ブッシュ9aが、中心軸線1aの方向から装着されている。第2軸受ブッシュ9aも、必要に応じて間隔調整用のシム板(図示せず)を挟み、装着される。第2軸受ブッシュ9aにおける第1軸受ブッシュ8aの側の円環状端面は、中心軸線1aを中心線とする円錐面によって規定される第2固定側滑り軸受面9bである。本例では、第2固定側滑り軸受面9bは、第1回転側滑り軸受面8bとは逆向きの円錐面であり、第1回転側滑り軸受面8bに対して、逆方向に同一角度で傾斜している。
【0023】
回転側部材Bにおいて、出力軸5における第2内歯歯車4とは反対側の端面部分に、第2回転側滑り軸受面9cが形成されている。第2回転側滑り軸受面9cは、第2固定側滑り軸受面9bとは相補的な形状の円錐面によって規定され、第2固定側滑り軸受面9bに対して滑り接触している。
【0024】
上記のように、波動歯車装置1では、固定側部材Aと回転側部材Bとの間を相対回転自在の状態で支持する軸受として、中心軸線1aに対して所定の角度だけ傾斜した滑り軸受面を備えた第1、第2滑り軸受8、9が配置されている。それぞれの第1、第2滑り軸受8、9は、ラジアル荷重およびスラスト荷重を受ける。間隔調整機能を持たないラジアル滑り軸受が不要となり、滑り軸受面の間隔調整も容易になる。
【0025】
ここで、ユニットハウジング2、第1内歯歯車3、第2内歯歯車4、外歯歯車6、波動発生器7の中空入力軸7a、剛性プラグ7b、出力軸5は、それぞれ、鋼、軽合金、セラミックスおよびプラスチックのうちのいずれか一つの素材から製作できる。これらの部品を、軽合金、プラスチックなどの素材から製造すると、装置の軽量化を図れる。
【0026】
また、回転側部材Bにおいて、第1、第2滑り軸受8、9の第1、第2回転側滑り軸受面8c、9cが形成されている表面部分の硬度、摩耗・摩擦性、潤滑性などの特性が、必要とされる特性に満たない場合がある。このような場合には、これらの表面部分に、硬質メッキ処理、固体潤滑剤分散メッキ処理などの表面処理を施す。表面処理を施すことで、所望の表面硬度、耐摩耗・摩擦性、潤滑性を付与できる。
【0027】
(滑り軸受の軸受角度)
図2Aは、本例の波動歯車装置1において、外部荷重(ラジアル荷重)が加わった場合に、第1、第2滑り軸受8、9に生じる荷重を示す説明図である。図2Bは、ラジアル滑り軸受と一対のスラスト滑り軸受を備えたユニット型波動歯車装置(以下、「比較装置」と呼ぶ。)に外部荷重が加わった場合に、各軸受に生じる荷重を示す説明図である。
【0028】
図2Bに示す比較装置(ユニット型波動歯車装置)の構成を簡単に説明する。比較装置100は、円筒状のユニットハウジング122と、この内側に配置された第1内歯歯車133および第2内歯歯車134と、第1、第2内歯歯車133、134の内側に配置された円筒状の外歯歯車136と、外歯歯車136の内側に配置した波動発生器137と、第2内歯歯車134と一体回転する出力軸135とを備えている。ユニットハウジング122および第1内歯歯車133が固定側部材であり、第2内歯歯車134および出力軸135が回転側部材である。固定側部材と回転側部材との間には、ラジアル滑り軸受128と、一対のスラスト滑り軸受129、130とが装着されている。回転側部材は、これらの滑り軸受128、129、130を介して、相対回転可能な状態で、固定側部材によって支持されている。
【0029】
図2A図2Bにおける各符号を以下に列記する。
Fro:外部荷重(ラジアル荷重)(N)
L:軸受中心からの距離(mm)
dp:軸受のピッチ(mm)
M:モーメント荷重(N・M)
Fr(=Fro):軸受中心に作用するラジアル荷重(N)
F1,F2,F3:軸受荷重(N)
θ:軸受角度(deg)
F11,F12,F13:軸受荷重(N)
【0030】
図2Aに示す本例の波動歯車装置1では、モーメント荷重Mおよび軸受荷重F1、F2、F3は次式の通りである。
M=Fro×L
F1=M×dp/cosθ+Fr/2sinθ
F2=M×dp/cosθ
F3=Fr/2sinθ
【0031】
図2Bに示す比較装置100では、モーメント荷重Mおよび軸受荷重F11、F12、F13は次式の通りである。
M=Fro×L
F11=M×dp
F12=Fr=Fro
F13=F11
【0032】
波動歯車装置1において軸受角度θを変え、また、波動歯車装置1および比較装置100において外部荷重Fro(ラジアル荷重)の作用点(距離L)を変えて、第1、第2滑り軸受8、9およびラジアル滑り軸受128、スラスト滑り軸受129、130に作用する荷重を算出して比較検討した。外部荷重Froが作用する場合においては、本例の波動歯車装置1では軸受荷重F1が最も大きく、図2Bの比較装置100では軸受荷重F12が最も大きい。
【0033】
本例の波動歯車装置1の第1、第2滑り軸受8、9の場合には、軸受角度θが大きくなるにつれて、軸受荷重F1は小さくなる。軸受荷重F1と比較装置100の軸受荷重F12を比較すると、軸受角度θが30°前後において、軸受荷重F1は、同一の外部荷重Froが作用する場合の比較装置100の軸受荷重F12とほぼ等しくなり、軸受角度θが30°よりも小さいと軸受荷重F1は軸受荷重F2よりも大きく、軸受角度θが30°を超えると、軸受荷重F1は軸受荷重F2よりも小さくなる。また、荷重点の距離Lの変化は、本例の波動歯車装置1の場合には軸受荷重F2に影響し、比較装置100の場合には軸受荷重F11に影響するが、本例の波動歯車装置1における軸受荷重F1、比較装置100における軸受荷重F12への影響はごく僅かである。
【0034】
このように、本例の波動歯車装置1の第1、第2滑り軸受8、9の場合には、最大軸受荷重である軸受荷重F1を小さくするには、軸受角度θを大きくすればよい。例えば、軸受角度θを、30°程度の値、あるいはそれ以上の値に設定すれば、軸受荷重F1を、比較装置100のように、ラジアル滑り軸受と一対のスラスト滑り軸受を備えた波動歯車装置の場合と同程度、あるいは、それ以下にすることができる。
【0035】
しかしながら、軸受荷重F1を小さくするために、軸受角度θが大きくなり過ぎると、滑り軸受面等の加工が困難になる。また、滑り軸受面の間の間隔調整にも高い精度が必要になる。これらの点も考慮すると、本例の波動歯車装置1においては、第1、第2滑り軸受8、9の軸受角度θを、25°≦θ≦35°の範囲内に設定することが望ましい。
【0036】
(実施の形態2)
図3は、本発明を適用した実施の形態2に係る波動歯車装置を示す縦断面図である。本例の波動歯車装置20は、図1に示す波動歯車装置1の基本構成と同一であるので、対応する部位には同一の符号を使用し、それらの説明は省略する。波動歯車装置20は、第1滑り軸受8の代わりに第1滑り軸受28を備えており、第2滑り軸受9の代わりに第2滑り軸受29を備えている。
【0037】
第1滑り軸受28は、第1滑り軸受8の第1固定側滑り軸受面8b、第1回転側滑り軸受面8cを規定している円錐面に対して、逆向きの円錐面によって規定される第1固定側滑り軸受面28bおよび第1回転側滑り軸受面28cを備えている。第1固定側滑り軸受面28bは、第1軸受ブッシュ28aの端面に形成されている。同様に、第2滑り軸受29は、第2滑り軸受9の第2固定側滑り軸受面9b、第2回転側滑り軸受面9cを規定している円錐面に対して、逆向きの円錐面によって規定される第2固定側滑り軸受面29bおよび第2回転側滑り軸受面29cを備えている。第2固定側滑り軸受面29bは、第2軸受ブッシュ29aの端面に形成されている。この場合においても、軸受角度θを、25°≦θ≦35°の範囲内の角度にすることが望ましく、ほぼ30°に設定することがより望ましい。
【0038】
(実施の形態3)
図4は、本発明を適用した実施の形態3に係る波動歯車装置を示す縦断面図である。本例の波動歯車装置40の基本構成は、図3に示す波動歯車装置20と同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。波動歯車装置40は、第2滑り軸受29の代わりに、転がり軸受49、例えば、深溝玉軸受を備えている。このように、一方の軸受を、転がり軸受とし、他方の軸受を滑り軸受とすることができる。この場合においても、第1滑り軸受28の軸受角度θを、25°≦θ≦35°の範囲内の角度にすることが望ましく、ほぼ30°に設定することがより望ましい。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4