(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レーザ切断工程が、前記カットエッジ面(13)の前記腐食改善ゾーン(19)において、前記レーザ切断操作から直接生じた前記基板領域(14)上のアルミニウムの表面割合が9%〜70%の間に含まれるように行われる、請求項1に記載の方法。
前記レーザ切断工程が、固体レーザ、例えば、Nd:YAGレーザ、ファイバレーザ、ディスクレーザ又はダイオードレーザを使用して行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
前記腐食改善ゾーン(19)が、前記カットエッジ面(13)の長さの一部分のみにわたって延在する前記カットエッジ面(13)の第1の部分を形成し、前記レーザ切断工程が、さらに、前記カットエッジ面(13)の第2の部分(20)では、前記カットエッジ面(13)の全高にわたって、且つ前記カットエッジ面(13)の長さの一部分のみにわたって延在し、前記レーザ切断操作から直接生じた前記基板領域(14)上のアルミニウムの表面割合が0.3%〜6%の間に含まれるように行われる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
レーザ切断工程が、前記カットエッジ面(13)の前記第2の部分(20)を得るために、前記第2の部分(20)にわたって、0.6kJ/cm以上のレーザ切断線形エネルギーを使用して行われる、請求項14に記載の方法。
前記腐食改善ゾーン(19)の長さが、前記レーザカットエッジ面(13)の全長よりも厳密に短く、前記レーザカットエッジ面(13)が、前記レーザカットエッジ面(13)の全高にわたって、且つ前記レーザカットエッジ面(13)の長さの一部分のみにわたって延在する第2の部分(20)をさらに含み、並びに前記第2の部分(20)の前記基板領域(14)上のアルミニウムの表面割合(STotal)が、0.3%〜6%の間に含まれる、請求項26〜29のいずれか一項に記載のプレコート鋼板(1)。
前記突合わせ溶接工程中、前記第1及び第2のプレコート鋼板(1)が、少なくとも一方の前記プレコート鋼板(1)の前記第2の部分(20)が他方の前記プレコート鋼板(1)の第2の部分(20)に面するように配置する、請求項17に記載の溶接ブランクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的の1つは、低コストで、縁部を含む良好な耐食性を有するプレコート鋼板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明は、プレコート鋼板の製造方法に関し、以下の連続する工程:
− 少なくとも一方の主面にプレコーティングを有する鋼基板を含むプレコート鋼帯を提供する工程であって、前記プレコーティングが金属間化合物合金層と前記金属間化合物合金層上に延在する金属合金層とを含み、前記金属合金層はアルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層である工程と、
− 少なくとも1枚のプレコート鋼板を得るために前記プレコート鋼帯をレーザ切断する工程であって、前記プレコート鋼板が前記切断操作から生じたカットエッジ面を含み、前記カットエッジ面が基板領域及びプレコーティング領域を含み、並びに前記プレコート鋼板の厚さは0.8mm〜5mmの間に含まれている工程、
を含み、
ここで、前記レーザ切断工程が、前記カットエッジ面の全高にわたって、且つ前記カットエッジ面の長さ以下である長さにわたって延在する前記カットエッジ面の腐食改善ゾーンを直接もたらし、前記レーザ切断操作から直接生じた前記カットエッジ面の前記腐食改善ゾーンの前記基板領域上のアルミニウムの表面割合は9%以上となり、前記レーザ切断工程から直接生じた前記カットエッジ面の前記腐食改善ゾーンの前記基板領域の下半分のアルミニウムの表面割合は0.5%以上となるように行われる。
【0007】
特定の実施形態によれば、この方法は、単独で又は任意の可能な組み合わせに従って、以下の特徴のうちの1つ以上を含んでよい:
− 前記レーザ切断が、前記カットエッジ面の前記腐食改善ゾーンにおいて、前記レーザ切断操作から直接生じた前記基板領域上のアルミニウムの表面割合が9%〜70%の間に含まれるように行われる。
− 前記レーザ切断工程が、不活性ガスをアシストガスとして使用して行われる。
− 前記アシストガスが、アルゴン、ヘリウム、窒素及びそれらのガスの混合物の中から選択される。
− 前記レーザ切断工程が、CO
2レーザを使用して行われる。
− 前記レーザ切断が、前記腐食改善ゾーンを得るために、0.18kJ/cm〜0.29kJ/cmの間に含まれるレーザ切断線形エネルギーEと、P
min=54.5×E−7.8バール〜P
maxの間に含まれるアシストガス圧力Pとを使用して行われ、それによって、E≦0.24kJ/cmの場合にP
maxは14バールに等しく、E>0.24kJ/cmの場合にP
maxは−80×E+33.2バールに等しい。
− 前記レーザ切断工程が、固体レーザ、例えば、Nd:YAGレーザ、ファイバレーザ、ディスクレーザ又はダイオードレーザを使用して行われる。
− 前記レーザ切断が、前記腐食改善ゾーンを得るために、0.08kJ/cm〜0.34kJ/cmの間に含まれるレーザ切断線形エネルギーEと、P
min〜P
maxの間に含まれるアシストガス圧力Pとを使用して行われ、それによって、E>0.2kJ/cmの場合にP
min=64.3×E−3.9バール、E≦0.2kJ/cmの場合にP
min=9バールであり、P
maxは、28.6×E+8.3バールに等しい。
− 前記レーザ切断が、前記カットエッジ面の前記腐食改善ゾーンにおいて、且つ前記レーザ切断工程から直接生じた前記プレコート鋼板の前記カットエッジ面の前記基板領域上のアルミニウムの表面割合が9%以上となり、且つ前記カットエッジ面の前記基板領域の下半分の前記レーザ切断操作から直接生じたアルミニウムの表面割合が1.5%以上となるように行われる。
− 前記レーザ切断が、前記腐食改善ゾーンを得るために、CO
2レーザを使用して、0.18kJ/cm〜0.29kJ/cmの間に含まれるレーザ切断線形エネルギーEと、P
min=72.7×E−11.1バール〜P
maxの間に含まれるアシストガス圧力Pとを使用して行われ、それによって、E≦0.24kJ/cmの場合にP
maxは14バールに等しく、E>0.24kJ/cmの場合にP
maxは−80×E+33.2バールに等しい。
− 前記レーザ切断が、さらに、前記腐食改善ゾーンにおいて、前記基板領域上のアルミニウムの表面割合を前記基板領域の下半分におけるアルミニウムの表面割合で割った比率が5.5以下となり、且つ前記レーザ切断操作 から直接生じた前記プレコート鋼板の前記カットエッジ面の前記基板領域上のアルミニウムの表面割合が11%以上となるように行われる。
− 前記レーザ切断が、前記腐食改善ゾーンを得るために、0.18kJ/cm〜0.24kJ/cmの間に含まれるレーザ切断線形エネルギーEと、P
min=200×E−34バール〜P
max=14バールの間に含まれるアシストガス圧力とを使用して行われる。
− 前記腐食改善ゾーンが、前記カットエッジ面の長さの一部分のみにわたって延在する前記カットエッジ面の第1の部分を形成し、前記レーザ切断工程は、さらに、前記カットエッジ面の第2の部分では、前記カットエッジ面の全高にわたって、且つ前記カットエッジ面の長さの一部分のみにわたって延在し、前記レーザ切断操作から直接生じた前記基板領域上のアルミニウムの表面割合が0.3%〜6%の間に含まれるように行われる。
− 前記レーザ切断が、前記カットエッジ面の前記第2の部分を得るために、前記第2の部分にわたって、0.6kJ/cm以上、より具体的には0.8kJ/cm以上、より具体的には1.0kJ/cm以上、さらにより具体的には1.2kJ/cm以上のレーザ切断線形エネルギーを使用して行われる。
− 前記アシストガスの圧力が、2〜18バールの間に含まれる。
【0008】
前記プレコート鋼板の厚さは、1.0mm〜1.8mmの間、より具体的には1.0mm〜1.5mmの間に含まれる。
【0009】
本発明はまた、溶接ブランクの製造方法にも関し、以下の工程を含む:
− 第1及び第2のプレコート鋼板を製造する工程であって、前記第1及び第2のプレコート鋼板のうちの少なくとも一方が上記の方法を使用して製造される工程。
− 前記第1及び第2の鋼のプレコート鋼板を突合せ溶接して、前記プレコート鋼板の間に溶接継手を形成し、それにより溶接ブランクを得る工程であって、前記突合せ溶接工程が、少なくとも一方の前記プレコート鋼板の前記第2の部分が他方の前記プレコート鋼板の縁部、好ましくは第2の部分に面するように前記第1及び第2のプレコート鋼板を配置する工程。
【0010】
特定の実施形態によれば、この溶接ブランクの製造方法は、単独で又は任意の可能な組み合わせに従って、以下の特徴のうちの1つ以上を含んでよい:
− 前記溶接は、レーザ溶接操作である。
− 前記方法が、前記突合せ溶接工程に先立って、前記第1及び第2の鋼板のそれぞれについて、それぞれのプレコート鋼板の前記第2の部分に隣接する除去ゾーン内の前記金属合金層を除去する工程をさらに含み、並びに前記突合せ溶接工程中に、前記プレコート鋼板は、前記金属合金層が除去されたそれらの縁部で溶接される。
− 前記金属合金層の除去が、レーザビームを使用して行われる。
− 前記除去工程中に、前記金属間化合物合金層は、その高さの少なくとも一部にわたって除去ゾーンに残される。
【0011】
前記溶接は、充填材ワイヤ又は粉末添加材を使用して行われる。
【0012】
前記充填材ワイヤ又は粉末は、オーステナイト生成合金化元素を含む。
【0013】
本発明はまた、プレス硬化された鋼鉄部品を製造する方法に関し、以下の連続する工程:
− 上記の方法を行って溶接ブランクを得る工程と、
− 前記溶接ブランクを構成する前記プレコート鋼板の少なくとも一部がオーステナイト組織となるように前記溶接ブランクを加熱する工程と、
− プレス内で前記溶接ブランクを熱間成形してプレス成形鋼部品を得る工程と、
− 前記プレス内で前記鋼部品を冷却してプレス硬化鋼部品を得る工程と、
を含む。
【0014】
特定の実施形態によれば、前記冷却速度は、前記鋼板のマルテンサイト又はベイナイト臨界冷却速度以上である。
【0015】
本発明は、さらにプレコート鋼板に関し、以下:
− 鋼基板部分の少なくとも一方の表面にプレコーティング部分を有し、前記プレコーティング部分が金属間化合物合金層部分と前記金属間化合物合金層部分上に延在する金属合金層部分とを含み、前記金属合金層部分がアルミニウムの層、アルミニウム合金の層又はアルミニウム系合金の層であり、前記プレコート鋼板の厚さは0.8mm〜5mmの間に含まれていることと、
− 少なくとも1つのレーザカットエッジ面であって、前記レーザカットエッジ面は基板部分と少なくとも1つのプレコーティング部分とを含むことと、
を含み、
ここで、前記プレコート鋼板が、前記レーザカットエッジ面上に複数の凝固縞を含み、
前記レーザカットエッジ面が、前記レーザカットエッジ面の全高にわたって、且つ前記レーザカットエッジ面の長さ以下の長さにわたって延在する腐食改善ゾーンを含み、並びに、
前記腐食改善ゾーン19の前記基板領域上のアルミニウムの表面割合は9%以上であり、且つ前記腐食改善ゾーンの前記基板領域の下半分のアルミニウムの表面割合は0.5%以上である。
【0016】
前記プレコート鋼板の特定の実施形態によれば:
− 前記腐食改善ゾーンの前記基板領域上のアルミニウムの表面割合が、9%〜70%の間に含まれ、
− 前記腐食改善ゾーンの前記基板領域の下半分のアルミニウムの表面割合が、1.5%以上であり、
− 前記腐食改善ゾーンの前記基板領域上のアルミニウムの表面割合を前記腐食改善ゾーンの前記基板領域の下半分におけるアルミニウムの表面割合で割った比率は、5.5以下であり、且つ前記腐食改善ゾーンの前記基板領域上のアルミニウムの表面割合は11%以上であり、
− 前記腐食改善ゾーンが、前記レーザカットエッジ面の全長にわたって延在し、
− 前記腐食改善ゾーンの長さが、前記レーザカットエッジ面の全長よりも厳密に短く、前記レーザカットエッジ面は、前記レーザカットエッジ面の全高にわたって、且つ前記レーザカットエッジ面の長さの一部分のみにわたって延在する第2の部分をさらに含み、並びに前記第2の部分の前記基板領域上のアルミニウムの表面割合は、0.3%〜6%の間に含まれ、
− 前記プレコート鋼板の厚さは、1.0mm〜1.8mmの間、より具体的には1.0mm〜1.5mmの間に含まれる。
【0017】
本発明は、添付の図面を参照しながら、例としてのみ与えられる以下の明細書を読むことにより、よりよく理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、プレコート鋼板1の製造方法に関する。
【0020】
この方法は、
図1の断面図に示すように、プレコート鋼帯2を提供する第1の工程を含む。
【0021】
図1に示すように、プレコート鋼帯2は、その表面の少なくとも一方にプレコーティング5を有する金属基板3を含む。プレコーティング5は、基板3上に重ね合わされ、基板3と接触している。
【0022】
金属基板3は、より具体的には鋼基板である。
【0023】
基板3の鋼は、より具体的にはフェライト−パーライト微細組織を有する鋼である。
【0024】
基板3は、有利には、熱処理を意図した鋼、より具体的にはプレス硬化可能な鋼、例えば、22MnB5タイプの鋼などのマンガンボロン鋼で製造される。
【0025】
一実施形態によれば、基板3の鋼は、重量で以下:
0.10%≦C≦0.5%
0.5%≦Mn≦3%
0.1%≦Si≦1%
0.01%≦Cr≦1%
Ti≦0.2%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.010%
を含み、残部は鉄及び製造に起因する不純物である。
【0026】
より具体的には、基板3の鋼は、重量で以下:
0.15%≦C≦0.25%
0.8%≦Mn≦1.8%
0.1%≦Si≦0.35%
0.01%≦Cr≦0.5%
Ti≦0.1%
Al≦0.1%
S≦0.05%
P≦0.1%
B≦0.005%
を含み、残部は鉄及び製造に起因する不純物である。
【0027】
代替例によれば、基板3の鋼は、重量で以下:
0.040%≦C≦0.100%
0.80%≦Mn≦2.00%
Si≦0.30%
S≦0.005%
P≦0.030%
0.010%≦Al≦0.070%
0.015%≦Nb≦0.100%
Ti≦0.080%
N≦0.009%
Cu≦0.100%
Ni≦0.100%
Cr≦0.100%
Mo≦0.100%
Ca≦0.006%
を含み、残部は鉄及び製造に起因する不純物である。
【0028】
代替例によれば、基板3の鋼は、重量で以下:
0.24%≦C≦0.38%
0.40%≦Mn≦3%
0.10%≦Si≦0.70%
0.015%≦Al≦0.070%
0%≦Cr≦2%
0.25%≦Ni≦2%
0.015%≦Ti≦0.10%
0%≦Nb≦0.060%
0.0005%≦B≦0.0040%
0.003%≦N≦0.010%
0.0001%≦S≦0.005%
0.0001%≦P≦0.025%
を含み、チタン及び窒素の含有量は以下の関係
Ti/N>3.42
を満たし、炭素、マンガン、クロム及びケイ素の含有量は以下の関係
【0029】
【数1】
を満たし、鋼は任意選択的に以下の元素の1つ以上:
0.05%≦Mo≦0.65%
0.001%≦W≦0.30%%
0.0005%≦Ca≦0.005%
を含み、
残部は鉄及び製造に不可避的に起因する不純物である。
【0030】
基板3は、その所望の厚さに応じて、熱間圧延及び/又は冷間圧延に続くアニーリング又は任意の他の適切な方法により得ることができる。
【0031】
基板3は、有利には、0.8mm〜5mmの間に含まれ、より具体的には1.0mm〜2.5mmの間、さらにより具体的には1.2mm〜2.5mmの間又はさらに1.0mm〜2.0mmの間に含まれる厚さを有する。
【0032】
より特定の例によれば、基板3は、1.0mm〜1.8mmの間、より具体的には1.0mm〜1.5mmの間に含まれる厚さを有する。
【0033】
プレコーティング5は、溶融めっきにより、すなわち、溶融金属槽中への基板3の浸漬により得られる。プレコーティング5は、基板3と接触する金属間化合物合金層9とこの金属間化合物合金層9の上に延在する金属合金層11とを含む。
【0034】
金属間化合物合金層9は、基板3と槽の溶融金属との間の反応により形成される。金属間化合物合金層9は、金属合金層11からの少なくとも1種の元素及び基板3からの少なくとも1種の元素を含む、金属間化合物を含む。
【0035】
金属間化合物合金層9の厚さは一般に、数マイクロメートルのオーダーである。特に、その平均厚さは通常、2〜7マイクロメートルの間に含まれる。
【0036】
金属合金層11は、槽内の溶融金属の組成に近い組成を有する。金属合金層11は、溶融めっき中にストリップが溶融金属槽を通過する際に、ストリップによって運び去られた溶融金属によって形成される。
【0037】
金属合金層11は、例えば、19μm〜33μmの間又は10μm〜20μmの間に含まれる厚さを有する。
【0038】
金属合金層11は、アルミニウムの層又はアルミニウム合金の層若しくはアルミニウム系合金の層である。
【0039】
この文脈において、アルミニウム合金とは、50重量%を超えるアルミニウムを含む合金を指す。アルミニウム系合金は、重量でアルミニウムを主成分とする合金である。
【0040】
金属間化合物合金層9は、Fe
x−Al
yタイプの金属間化合物、より具体的にはFe
2Al
5を含む。
【0041】
溶融めっきによって得られるプレコーティング5の特定の組織は、特に、特許EP2007545に開示されている。
【0042】
一実施形態によれば、金属合金層11は、ケイ素をさらに含むアルミニウム合金の層である。
【0043】
一例によれば、金属合金層11は、重量で以下:
8%≦Si≦11%
2%≦Fe≦4%
を含み、残部はアルミニウム及び可能性のある不純物である。
【0044】
有利には、
図1に示されるように、基板3は、その両面に上記のようなプレコーティング5を備えている。
【0045】
プレコート鋼板1の製造方法は、少なくとも1枚のプレコート鋼板1を得るために、前記プレコート鋼帯2を切断する工程をさらに含む。切断は、レーザ切断により行われる。
【0046】
プレコート鋼板1の厚さは、プレコート鋼帯2の厚さと同じである。その厚さは、0.8mm〜5mmの間に含まれ、より具体的には1.0mm〜2.5mmの間、さらにより具体的には1.2mm〜2.5mmの間、さらには1.0mm〜2.0mmの間に含まれる。より特定の例によれば、プレコート鋼板1の厚さは、1.0mm〜1.8mmの間、より具体的には1.0mm〜1.5mmの間に含まれる。
【0047】
図2は、そのようなプレコート鋼板1の概略斜視図である。
【0048】
プレコート鋼板1は、基板部分3’及び少なくとも1つのプレコーティング部分5’を含み、プレコーティング部分5’は、金属間化合物合金層部分9’及び金属合金層部分11’を含む。
【0049】
プレコート鋼板1はさらに、2つの主対向面4’と面4’の間でシート1の外縁の周りに延在する周縁部12とを含む。周縁部12の長さは、シート1の周長に等しい。周縁部12の高さhは、シート1の厚さに等しい。
【0050】
この特許出願の文脈では、要素の高さは、プレコートシート1の厚さの方向(図中のz方向)に沿ったこの要素の寸法である。
【0051】
周縁部12は、面4’に対して実質的に垂直に延在する。この文脈において、「実質的に」とは、周縁部12が、面4’の1つに対して65°〜90°の間を含むある角度で延在することを意味する。面4’に対する周縁部12の角度は、シート1の外縁に沿って変化し得る。
【0052】
図2に示す例では、周縁部12は、4つの直線的な側面を含む実質的に長方形の輪郭を有する。ただし、用途に応じて、任意の他の輪郭を使用することもできる。
【0053】
周縁部12は、レーザ切断から生じたカットエッジ面13を含む。
【0054】
レーザ切断工程中、レーザ切断装置のレーザビームが所定の経路に沿って鋼帯2に照射され、カットエッジ面13が形成される。所定の経路は、シート1の面4’の平面内に延在する。
【0055】
カットエッジ面13は、プレコート鋼板1の面4’間で一方の面4’から他方の面4’まで延在する。カットエッジ面13は、周縁部12の全高hにわたって延在する。
【0056】
カットエッジ面13は、少なくとも1つの実質的に平面の部分を含んでもよい。
【0057】
有利には、プレコート鋼板1は、その輪郭全体に沿って切断することにより得られる。この場合、周縁部12は、カットエッジ面13からなる。したがって、カットエッジ面13は、シート1の全周にわたって延在する。
【0058】
代替例によれば、カットエッジ面13は、周縁部12の長さの一部分にわたってのみ延在する。この場合、周縁部12の残りの部分は、鋼帯2の元の側縁部と一致してもよい。
【0059】
この特許出願の文脈では、要素の長さは、プレコート鋼板1の所定の面4’の平面におけるこの要素の寸法である。したがって、カットエッジ面13の長さは、特に、レーザ切断中のレーザビームの経路に沿ったカットエッジ面13の寸法に相当する。
【0060】
図2及び
図3に見られるように、カットエッジ面13は、基板領域14及び少なくとも1つのプレコーティング領域15を含む。基板領域14は、カットエッジ面13に位置する基板3’の表面に相当する。基板領域14は、本質的に基板3の材料からなる。プレコーティング領域15は、カットエッジ面13に位置するプレコーティング5’の表面に相当する。プレコーティング領域15は、本質的にプレコーティング5の材料からなる。
【0061】
本発明によれば、
図3に示すように、カットエッジ面13は、カットエッジ面13の全高にわたって、カットエッジ面13の全長以下である長さにわたって延在する腐食改善ゾーン19を含む。
【0062】
腐食改善ゾーン19は、レーザ切断操作から直接もたらされる。
【0063】
有利には、腐食改善ゾーン19は、少なくとも3mmに等しい長さにわたって、より具体的には少なくとも10mmにわたって延在する。
【0064】
一実施形態によれば、カットエッジ面13の腐食改善ゾーン19は、カットエッジ面13の全長にわたって延在する。換言すれば、その腐食改善ゾーン19は、レーザ切断中のレーザビームの変位の全経路にわたって延在する。
【0065】
別の実施形態によれば、カットエッジ面13の腐食改善ゾーン19は、カットエッジ面13の長さの一部分のみにわたって延在する。
【0066】
図2に示す実施形態では、プレコート鋼板1は長方形の輪郭を有し、カットエッジ面13はこの長方形の1つ以上の辺上に延在してもよい。腐食改善ゾーン19は、長方形の少なくとも1つの辺上に延在してもよい。
【0067】
有利には、カットエッジ面13は、長方形のプレコート鋼板1の全周にわたって延在してもよく、腐食改善ゾーン19は、長方形の1、2、3又は4辺、好ましくはその3又は4辺上に延在してもよい。
【0068】
本発明によれば、レーザ切断工程中に、腐食改善ゾーン19に2つの特徴が存在するようにレーザ切断が行われる:
(a)前記レーザ切断操作から直接生じた腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalが9%以上、より具体的には9.0%以上である。
(b)前記レーザ切断操作から直接生じた腐食改善ゾーン19の基板領域14の下半分におけるアルミニウムの表面割合S
Bottomが0.5%以上である。
【0069】
この文脈において、「直接生じた」とは、特に、レーザ切断装置のレーザビームがプレコート鋼帯2からプレコート鋼板1を切断した直後、特に、プレコート鋼板1のカットエッジ面13に対してさらなる工程が行われる前、例えば、ブラッシング、機械加工、ミリング、サンドブラスティング又はストリッピングなどのカットエッジ面13の可能性のある仕上げ工程の前に、アルミニウムの割合又は比率が測定されることを意味する。
【0070】
腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、以下のように測定することができる:
− 走査型電子顕微鏡を使用して、腐食改善ゾーン19の基板領域14を画像化する。
− 走査型電子顕微鏡から得られたデータを処理して、すべての合金化元素のうち、対象の基板領域14上に存在するアルミニウムのみを示すEDS(エネルギー分散型X線分光法)画像を得る。例えば、画像は、対象の基板領域14上に存在するアルミニウムトレースが、黒色の背景と強く対照的な赤色などの色で表示されるように処理される。切断中のレーザ変位の結果として、アルミニウムは傾斜した液だれ跡のように見える。
【0071】
このようなEDS画像の一例を
図4に示す。この白黒の画像では、他では赤色で表示され得るアルミニウムトレースが、黒色の背景に白色で表示される。
【0072】
このようにして得られたEDS画像は、次に、画像中のアルミニウムの表面割合を測定するために、画像処理によって処理される。
【0073】
この目的のため、対象の基板領域14のEDS画像におけるアルミニウムに対応するピクセル数Nは、画像処理を使用して測定される。
【0074】
アルミニウムに対応するピクセル数Nは、以下のように測定することができる。EDS画像の各ピクセルについて、このピクセルを赤色、すなわち、アルミニウムピクセルとして見なされるかどうかを決定するために、赤色のRGBパラメータの値に閾値が設定される。特に、閾値Tは、
【0075】
【数2】
に設定され、それにより、あるピクセルの赤色のRGBパラメータの値が閾値Tより大きい場合、このピクセルがこの分析の目的のために赤色のピクセルであると見なされる。
【0076】
例えば、この画像処理は、例えば、Gimp画像解析ソフトウェアなどの、それ自体が既知の従来の画像処理解析ソフトウェアを介して実行してもよい。
【0077】
次に、腐食改善ゾーン19の基板領域14におけるアルミニウムの総表面割合S
Totalは、このように測定されたアルミニウムピクセル、すなわち、例えば、赤色のピクセル数Nを、対象の基板領域14の画像における総ピクセル数で割ることによって得られる。
【0078】
同じ方法が、腐食改善ゾーン19の基板領域14の下半分におけるアルミニウムの表面割合S
Bottomを測定するために使用されるが、それは、カットエッジ面13の腐食改善ゾーン19の基板領域14の下半分の画像の分析に基づく。
【0079】
本発明の発明者らは、カットエッジ面13のゾーンに前述の特徴(a)及び(b)が得られるような方法でレーザ切断が行われる場合、機械的切断又はアルミニウム被覆鋼ブランクの通常のレーザ切断パラメータで行われるレーザ切断と比較して、このゾーンが改善された耐食性を有することを見出した。さらに、この改善された耐食性は、追加の表面処理工程によってではなく、レーザ切断操作自体によって直接得られるため、比較的低コストで得られる。
【0080】
有利には、腐食改善ゾーン19では、レーザ切断操作から直接生じた腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、9%〜70%の間、より具体的には9.0%〜70%の間に含まれる。実際、この範囲内に含まれるアルミニウム表面割合は、カットエッジ面13のゾーン19の費用効果が高く効率的な腐食保護を可能にする。
【0081】
本発明による方法の第1の実施形態によれば、レーザ切断は、アシストガスとして不活性ガスを用いたCO
2レーザを使用して行われる。不活性ガスは、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン又はそれらのガスの混合物、例えば、窒素/アルゴン、窒素/ヘリウム、アルゴン/ヘリウム又は窒素/ヘリウム/アルゴン混合物である。特にヘリウムと比較して、これらのガスは比較的安価であるため、不活性ガスとして窒素、アルゴン又はそれらの混合物を使用することは特に興味深い。そのような混合物は純粋なヘリウムよりも安価であるため、窒素及び/又はアルゴンとヘリウムとの混合物を使用することも興味深い。
【0082】
CO
2レーザは、有利には連続レーザである。
【0083】
CO
2レーザは、特に、2kW〜7kWの間、好ましくは4kW〜6kWの間に含まれる出力を有する。
【0084】
より具体的には、カットエッジ面13の腐食改善ゾーン19は、切断工程中に、
図5の多角形ABCDEによって画定された境界を含んだ境界内に含まれるレーザ切断線形エネルギーE及びアシストガスの圧力を使用することによって得られる。より具体的には、レーザ切断線形エネルギーEは、0.18kJ/cm〜0.29kJ/cmの間に含まれ、アシストガスの圧力は、P
min=54.5×E−7.8バール〜P
maxの間に含まれ、それによって、E≦0.24kJ/cmの場合にP
maxは14バールに等しく、E>0.24kJ/cmの場合にP
maxは−80×E+33.2バールに等しい。
【0085】
レーザ切断線形エネルギーは、単位長さあたりのレーザ切断中にレーザビームによって送られるエネルギーの量に相当する。レーザ切断線形エネルギーは、レーザビームの出力を切断速度で割ることにより計算した。
【0086】
これらのレーザ切断パラメータを使用することにより、これらのパラメータを使用したレーザ切断により得られたカットエッジ13のゾーンにおいて、レーザ切断操作から直接生じた基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、9%〜70%の間、特に、9.0%〜70%の間に含まれ、レーザ切断操作から直接生じた基板領域14の下半分におけるアルミニウムの表面割合S
Bottomは、0.5%以上であることを可能にする。
【0087】
有利には、レーザ切断は、腐食改善ゾーン19において、下記:
(a)レーザ切断操作から直接生じた腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalが9%以上、より具体的には9.0%以上となり、
(b1)レーザ切断操作から直接生じた腐食改善ゾーン19の基板領域14の下半分におけるアルミニウムの表面割合S
Bottomが1.5%以上となる、
ように行われる。
【0088】
実際、本願発明者らは、特徴(a)及び(b1)が腐食改善ゾーン19に存在する場合、腐食改善ゾーン19のさらに良好な腐食保護が得られることを見出した。
【0089】
特徴(a)及び(b1)を得るために、腐食改善ゾーン19は、特に、レーザ切断工程中に、
図5の多角形ABCEによって画定された境界を含んだ境界内に含まれるレーザ切断線形エネルギーE及びアシストガスの圧力を使用して得られる。より具体的には、レーザ切断線形エネルギーEは、0.18kJ/cm〜0.29kJ/cmの間に含まれ、アシストガスの圧力は、P
min=72.7×E−11.1バール〜P
maxの間に含まれ、それによって、E≦0.24kJ/cmの場合にP
maxは14バールに等しく、E>0.24kJ/cmの場合にP
maxは−80×E+33.2バールに等しい。
【0090】
さらに有利には、レーザ切断は、腐食改善ゾーン19において、下記:
(a1)レーザ切断操作から直接生じた腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalが11%以上となり、
(b1)レーザ切断操作から直接生じた腐食改善ゾーン19の基板領域14の下半分におけるアルミニウムの表面割合S
Bottomが1.5%以上となり、
(c)S
TotalとS
Bottomとの比率
【0091】
【数3】
が5.5以下となる、
ように行われる。
【0092】
実際、本願発明者らは、特徴(a1)、(b1)及び(c)が組み合わされて存在する場合、腐食改善ゾーン19の耐食性は、特徴(a)及び(b1)のみが存在する場合よりもさらに良好であることを見出した。特に、腐食改善ゾーン19にわたるアルミニウムのより均一な分布によって、腐食に対する保護がより均一になる。
【0093】
特徴(a1)、(b1)及び(c1)の組み合わせを有する腐食改善ゾーン19を得るために、レーザ切断は、
図5の三角形ABEによって画定された境界を含んだ境界内に含まれるレーザ切断線形エネルギーE及びアシストガスの圧力を使用して、腐食改善ゾーン19にわたって行われてもよい。より具体的には、レーザ切断線形エネルギーEは、0.18kJ/cm〜0.24kJ/cmの間に含まれ、アシストガスの圧力は、P
min=200×E−34バール〜P
max=14バールの間に含まれる。
【0094】
第2の実施形態による方法は、レーザ切断がCO
2レーザの代わりに固体レーザを使用して行われるという点で第1の実施形態による方法とは異なる。固体レーザは、有利には連続レーザである。
【0095】
固体レーザは、例えば、Nd:YAG(ネオジムドープドイットリウム・アルミニウム・ガーネット)レーザ、ダイオードレーザ、ファイバレーザ又はディスクレーザである。
【0096】
固体レーザは、特に、2kW〜15kWの間、好ましくは4kW〜12kWの間、より好ましくは4kW〜10kWの間、さらに好ましくは4kW〜8kWの間に含まれる出力を有する。
【0097】
レーザ切断は、第1の実施形態と同様に、アシストガスとして不活性ガスを使用して行われる。不活性ガスは、例えば、窒素、ヘリウム、アルゴン又はそれらのガスの混合物、例えば、窒素/アルゴン、窒素/ヘリウム、アルゴン/ヘリウム又は窒素/ヘリウム/アルゴン混合物である。
【0098】
この実施形態では、カットエッジ面13の腐食改善ゾーン19は、
図6の多角形A’B’C’D’によって画定された境界を含んだ境界内に含まれるレーザ切断線形エネルギーE及びアシストガスの圧力を使用することによって得ることができる。より具体的には、レーザ切断線形エネルギーEは、0.08kJ/cm及び0.34kJ/cmを含み、アシストガスの圧力は、P
min〜P
maxの間に含まれ、それによって、E>0.2kJ/cmの場合にP
min=64.3×E−3.9バール、E≦0.2kJ/cmの場合にP
min=9バールであり、P
maxは、28.6×E+8.3バールに等しい。
【0099】
これらのパラメータ内でレーザ切断を行うことにより、これらのパラメータを使用した切断により得られたカットエッジ13のゾーンにおいて、レーザ切断操作から直接生じた基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、9%以上、特に、9.0%以上(特徴(a))、より具体的には9%〜70%の間、さらに具体的には9.0%〜70%の間に含まれ、レーザ切断操作から直接生じた基板領域14の下半分におけるアルミニウムの表面割合S
Bottomは、0.5%以上(特徴(b))、さらには1.5%以上(特徴(b1))でもあることを可能にする。
【0100】
前述のように、本発明の発明者らは、カットエッジ面13の所定のゾーンにおいて特徴(a)及び(b)が尊重されるような方法でレーザ切断が行われる場合、改善されたこのゾーンの耐食性は比較的低コストで得ることができることを見出した。特徴(a)及び(b1)が得られる場合、耐食性はさらに良好である。
【0101】
腐食改善ゾーン19がカットエッジ面13全体にわたって延在する実施形態では、カットエッジ面13全体が、同じレーザ切断パラメータを使用して得られることが好ましい。
【0102】
本発明はまた、
図2に関連して上記の特徴を有するプレコート鋼板1にも関する。
【0103】
レーザ切断の使用により、カットエッジ面13の特定の形状が得られる。実際、それは、カットエッジ面13において基板3の材料とプレコーティング5の材料との融合をもたらし、その後、再凝固して凝固リップルとも呼ばれる凝固縞を形成し、その間隔は、特に、レーザ切断速度、アシストガスの性質及び圧力に依存する。したがって、プレコート鋼板1は、カットエッジ面13に複数の凝固縞又はリップルを含む。
【0104】
さらに、プレコート鋼板1は、カットエッジ面13に熱影響部を含む。この熱影響部は、レーザ切断中、カットエッジ面13の加熱から生じる。それは、熱影響部の存在を検出するための従来の手段によって、例えば、マイクロ硬度測定若しくはナノ硬度測定によって、又は適合したエッチング後の金属組織観察によって観察され得る。
【0105】
前述のように、プレコート鋼板1のカットエッジ面13は、カットエッジ面13の全高hにわたって、カットエッジ面13の長さ以下である長さにわたって延在する腐食改善ゾーン19を含み、腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、9%以上、より具体的には9.0%以上であり、腐食改善ゾーン19の基板領域14の下半分のアルミニウムの表面割合S
Bottomは、0.5%以上である。
【0106】
好ましくは、腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、9%〜70%の間、より具体的には9.0%〜70%の間に含まれる。
【0107】
より好ましくは、腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、11%以上である。
【0108】
有利には、腐食改善ゾーン19の基板領域14の下半分のアルミニウムの表面割合S
Bottomは、1.5%以上である。
【0109】
さらにより好ましくは、腐食改善ゾーン19の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalを、腐食改善ゾーン19の基板領域14の下半分におけるアルミニウムの表面割合S
Bottomで割った比率Rは、5.5以下である。
【0110】
次に、
図7を参照して、本発明の特定の実施形態によるプレコート鋼板1を得る方法を説明する。
【0111】
この特定の実施形態によれば、カットエッジ面13の腐食改善ゾーン19は、カットエッジ面13の長さの一部分のみにわたって延在し、カットエッジ面13の第1の部分を形成する。
【0112】
この実施形態では、カットエッジ面13は、第1の部分19に加えて、第2の部分20を含む。第2の部分20は、カットエッジ面13の全高にわたって、カットエッジ面13の長さよりも厳密に短い長さにわたって延在する。
【0113】
第2の部分20は、例えば、カットエッジ面13の長さに沿って第1の部分19に隣接している。
【0114】
有利には、第2の部分20は、少なくとも3mmに等しい長さにわたって、より具体的には少なくとも10mmにわたって延在する。
【0115】
特に、第2の部分20は、第1の部分19に対してある角度で延在する。
【0116】
好ましくは、第2の部分20は、実質的に平面である。第2の部分20は、例えば、シート1を別のシートに溶接するための溶接エッジ、すなわち、プレコート鋼板1を別の鋼板に溶接するように意図されている周縁部12のゾーンを構成することができる。この場合、第2の部分20は、溶接継手に組み込まれることが意図されている。
【0117】
一例によれば、カットエッジ面13は、第1の部分19及び第2の部分20からなる。
【0118】
図7に示す例では、プレコート鋼板1は、長方形の輪郭を有する。この場合、例えば、第1の部分19は、長方形の3つの辺上に延在してもよく、第2の部分20は、長方形の残りの第4の辺上に延在してもよい。変形例によれば、第1の部分19は、長方形の2つの辺上に延在してもよく、第2の部分20は、長方形の残りの2つの辺上に延在してもよい。この変形例によれば、第1の部分19及び第2の部分20は、シート1の外縁に沿って交互になり得る。
【0119】
好ましくは、第2の部分20の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、0.3%〜6%の間に含まれる。
【0120】
この特定の実施形態では、プレコート鋼板1の厚さは、好ましくは1.0mm〜5.0mmの間、より好ましくは1.0mm〜2.5mmの間、さらにより好ましくは1.2mm〜2.5mmの間に含まれる。
【0121】
この特定の実施形態による方法では、第2の部分20は、特に、第1の部分19とは異なるレーザ切断パラメータを使用するレーザ切断によって得ることができる。
【0122】
より具体的には、レーザ切断操作中に、第2の部分20上で、レーザ切断工程から直接生じた第2の部分20の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalが0.3%〜6%の間に含まれるように、レーザ切断が行われる。
【0123】
これらの特性を有する第2の部分20を得るために、レーザ切断工程は、第2の部分20にわたって、0.6kJ/cm以上のレーザ切断線形エネルギー及びアシストガスとして不活性ガスを使用して行われてもよい。
【0124】
実際、本願発明者らは、これらのレーザ切断パラメータを使用してカットエッジ面13の部分が形成される場合、カットエッジ面13のこの部分の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalは、0.3%〜6%の間に含まれることを見出した。
【0125】
有利には、第2の部分20を得るために使用されるレーザ切断線形エネルギーは、0.8kJ/cm以上、より具体的には1.0kJ/cm以上、さらにより具体的には1.2kJ/cm以上である。特に、本発明の発明者らは、第2の部分20におけるアルミニウムの表面割合の低減に関してさらに良好な結果が、線形エネルギーの増加とともに得られることを観察した。
【0126】
好ましくは、アシストガスの圧力は、2バール〜18バールの間、より好ましくは6バール〜18バールの間、さらにより好ましくは10バール〜18バールの間に含まれる。
【0127】
例えば、第2の部分20を得るために、レーザ切断は、第2の部分20にわたって、0.8kJ/cm以上のレーザ切断線形エネルギー及び2バール〜18バールの間に含まれるアシストガス圧力を使用して行われる。
【0128】
別の例によれば、第2の部分20を得るために、レーザ切断は、第2の部分20にわたって、1.0kJ/cm以上のレーザ切断線形エネルギー及び2バール〜18バールの間に含まれるアシストガス圧力を使用して行われる。
【0129】
さらなる例によれば、第2の部分20を得るために、レーザ切断は、第2の部分20にわたって、1.0kJ/cm以上のレーザ切断線形エネルギー及び10バール〜18バールに含まれるアシストガス圧力を使用して行われる。
【0130】
好ましくは、カットエッジ面13の第2の部分20を得るために使用される不活性ガスのタイプ並びにレーザのタイプ及び出力は、第1の部分19の場合と同じである。
【0131】
切断速度、すなわち、ストリップ2に対するレーザビームの相対変位速度のみが、第1の部分19と第2の部分20との間で変更され、第2の部分20は、第1の部分19を得るために使用されるものよりも厳密に遅い切断速度を使用して得られることが好ましい。
【0132】
例えば、同じレーザビームについて、すなわち、特に同じレーザタイプ及び出力について、第2の部分20を得るためよりも第1の部分19を得るために、より速い切断速度を使用することができる。このようにして、レーザ切断線形エネルギーは、第2の部分20よりも第1の部分19の方が低くなる。
【0133】
このような切断工程中のレーザ切断パラメータの調整は、レーザ切断装置によって自動的に行われてもよい。また、操作者が手動で行ってもよい。
【0134】
例えば、レーザ切断工程は、14バールに等しいアシストガス圧力を使用して、アシストガスとして窒素を用いた連続4kWCO
2レーザを使用して行われる。第1の部分19は、例えば、10m/分に等しい切断速度を使用して得られ、第2の部分20は、例えば、2m/分に等しい切断速度を使用して得られる。
【0135】
別の例によれば、レーザ切断工程は、10バールに等しいアシストガス圧力を使用して、アシストガスとして窒素を用いた4kWダイオードレーザを使用して行われる。第1の部分19は、例えば、20m/分に等しい切断速度を使用して得られ、第2の部分20は、例えば、2m/分に等しい切断速度を使用して得られる。
【0136】
任意選択的に、この実施形態によれば、プレコート鋼板1の製造方法は、例えば、レーザ切断を行った直後に、カットエッジ面13の第2の部分20をブラッシングする工程を含む。このようなブラッシング工程は、カットエッジ面13の第2の部分におけるアルミニウムの割合をさらに低減させる。本発明の発明者らは、レーザ切断中にカットエッジ面13上に流れ込んだ可能性のあるアルミニウムのプレコート鋼板1の基板3’への高い接着性により、カットエッジ面13のブラッシングによって除去されるアルミニウムの量が非常に限られることを観察した。
【0137】
本発明はまた、溶接ブランクの製造方法にも関し、以下の工程を含む:
− 第1及び第2のプレコート鋼板1を製造する工程であって、第1及び第2のプレコート鋼板1のうちの少なくとも1つ、好ましくは第1及び第2のプレコート鋼板1が
図7を参照して既に述べたような特定の実施形態による方法を使用して製造される工程。
− 第1及び第2のプレコート鋼板1を突合せ溶接して、前記プレコート鋼板1の間に溶接継手を形成し、それにより溶接ブランクを得る工程。
【0138】
突合せ溶接工程は、少なくとも1つのプレコートシート1の第2の部分20が他のシート1の縁部、好ましくは第2の部分20に面するように第1及び第2のプレコート鋼板1を配置する工程を含む。
【0139】
前記第1及び第2のプレコート鋼板1の間の溶接継手は、それらの対向する縁部、特にその2つの第2の部分20の間の溶融により得られる。
【0141】
溶接は、ガス溶接であってもよく、すなわち、例えば、ワイヤ又は粉末の形態で充填材材料を加えなくてもよい。
【0142】
代替例によれば、溶接は、適切な充填材材料、特に充填材ワイヤ又は粉末を使用して行われる。特に、充填材ワイヤ又は粉末は、オーステナイト生成元素を含み、フェライト生成及び/又はプレコーティング5’からのアルミニウムの金属間化合物生成効果のバランスをとる。
【0143】
有利には、
図8に示すように、突合せ溶接に先立って、各プレコート鋼板1について、金属合金層11’は、対象のプレコート鋼板1の第2の部分20に隣接する除去ゾーン25上のプレコート鋼板1の少なくとも1つの面4’で除去され、突合せ溶接工程中、プレコート鋼板1は、金属合金層11’が除去されたそれぞれの縁部で溶接される。
【0144】
除去ゾーン25は、有利には、第2の部分20から対象の面4’の一部にわたって延在する。
【0145】
金属合金層11’の除去は、先行出願WO2007/118939に開示されているように、レーザアブレーションによって有利に行われる。
【0146】
各鋼板1の除去ゾーン25の幅は、例えば、0.2〜2.2mmの間に含まれる。
【0147】
好ましくは、除去工程は、金属間化合物合金層9’を残して金属合金層11’のみを除去するように行われる。したがって、金属間化合物合金層9’は、その高さの少なくとも一部にわたって除去ゾーン25に残される。この場合、残存する金属間化合物合金層9’は、溶接継手に直接隣接した溶接ブランクの領域を、後続の熱間成形工程中の酸化及び脱炭から、並びに使用中の腐食から保護する。
【0148】
任意選択的に、溶接ブランクの製造方法は、溶接工程に先立って、第1及び第2の鋼板1のうちの少なくとも一方、好ましくは第1及び第2の鋼板1の両方の溶接される縁部をブラッシングする工程を含む。
【0149】
この方法が溶接に先立って金属合金層11’の除去を含む場合、ブラッシングはこの除去工程の後に行われることが好ましい。この場合、ブラッシングは、除去操作中に、溶接されるシート1の縁部に飛散した可能性のあるアルミニウムトレースを除去する。このような飛散は、除去がレーザアブレーションによって行われる場合に特に発生し得る。このような飛散物は、縁部への付着性が比較的低く、したがって、ブラッシングによって比較的容易に除去することができる。したがって、ブラッシングにより、溶接継手中のアルミニウム含有量をさらに低減することができる。
【0150】
本発明はまた、プレス硬化鋼部品の製造方法にも関し、以下の工程:
− 上記の方法を使用して溶接ブランクを製造する工程、
− 溶接ブランクを構成する鋼板1の少なくとも一部がオーステナイト組織となるように溶接ブランクを加熱する工程、
− プレスで溶接ブランクを熱間成形して鋼部品を得る工程、
−プレスで鋼部品を冷却してプレス硬化鋼部品を得る工程、
を含む。
【0151】
より具体的には、溶接ブランクは、鋼板1の上部オーステナイト変態温度Ac3よりも高い温度まで加熱される。
【0152】
冷却工程中、冷却速度は、有利には、鋼板1のマルテンサイト又はベイナイト臨界冷却速度以上である。
【0153】
特定の実施形態による方法及びプレコート鋼板は、第2の部分20が別の部品に溶接するための溶接エッジを構成するように意図されている場合に特に有利である。
【0154】
実際、本発明の発明者らは、溶接エッジの基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalが0.3%〜6%の間に含まれる場合、プレス硬化後、特に溶接に先立って溶接エッジに隣接する除去ゾーン25においてプレコーティング5の少なくとも金属合金層11’を除去した後に、良好な硬度及び機械的強度特性を有する溶接継手を得ることができることを示した。特に、このようにして得られた溶接部の硬度及び機械的強度特性は、ブラッシングの後であっても従来のパラメータを使用してレーザ切断によって得られたプレコート鋼板で得られるものよりもはるかに優れている。実際、上記で説明したように、レーザ切断中にカットエッジ面13上に流れ込んだ可能性のあるアルミニウムのプレコート鋼板1の基板3’への高い接着性により、カットエッジ面のブラッシングによって除去されるアルミニウムの量は非常に限られる。
【0155】
特定の実施形態による方法を使用して得られたプレコート鋼板1は、その溶接エッジ特性が良好な溶接継手を得ることを可能し、一方、別の部品に溶接されることを意図されていない第1の部分19に相当するカットエッジ面13の残りの部分が改善された耐食性を有するため、所望の用途に特によく適合する。
【0156】
特定の実施形態による方法は、生産性の向上に関してさらに特に有利である。
【0157】
実際、それは、単に必要に応じてレーザ切断パラメータを適切に制御することによって、溶接エッジとなることを意図されていないすべての縁部に改善された腐食保護を選択的に提供すると同時に、溶接エッジの基板領域14上に存在するアルミニウムの量を大幅に低減させることによって、溶接の観点から溶接エッジに改善された特性を提供することを可能にする。
【0158】
第2の部分20の基板領域14上で0.3%未満のアルミニウムの総表面割合S
Totalを得ることは、経済的な観点からはコストがかかりすぎる。
【0159】
溶接に先立って、プレコート鋼板1のコーティングが、前述のように溶接される縁部に沿って少なくとも部分的に除去されている場合、及び/又はオーステナイト生成元素を含む充填材ワイヤ又は粉末が使用される場合、溶接継手の特に申し分のない機械的特性を得ることができる。このような機械的特性は、部品が侵入防止部品、構造部品又は自動車の安全に寄与する部品を形成することを目的としている場合、特に重要である。
【0160】
さらに、このような部品は、溶接操作に先立って溶接エッジに存在するアルミニウムのトレースを除去するための、又は溶接及び/若しくは熱間成形に先立って保管中のプレコート鋼板を腐食から保護するための追加の操作が必要ないため、高い生産性で得ることができる。
【実施例】
【0161】
本発明の発明者らは、以下の実験を行った。
【0162】
1.5mmの厚みを有するプレコート鋼板1を、アシストガスとして純粋な窒素を使用して、種々のレーザ切断線形エネルギー及びアシストガス圧力を使用して、レーザ切断によってプレコート鋼帯2から切り出した。
【0163】
プレコート鋼板1は、長方形の形状を有していた。
【0164】
プレコート鋼帯2は、既に述べたような組成及びプレコーティングを有するストリップであった。
【0165】
より具体的には、鋼帯2は、重量で以下:
C:0.22%
Mn:1.16%
Al:0.03%
Si:0.26%
Cr:0.17%
B:0.003%
Ti:0.035%
S:0.001%
N:0.005%
を含み、残部は鉄及び精錬に起因する可能性のある不純物である。
【0166】
この鋼は、商品名Usibor1500で知られている。
【0167】
プレコーティング5は、溶融金属槽中で鋼帯2を溶融めっきすることによって得られた。
【0168】
プレコーティング5の金属合金層は、重量で以下:
Si:9%
Fe:3%
を含み、残部はアルミニウム及び精錬に起因する可能性のある不純物からなる。
【0169】
金属合金層の平均合計厚さは20μmであった。
【0170】
金属間化合物合金層には、Fe
x−Al
yタイプの金属間化合物が含まれ、主にFe
2Al
3、Fe
2Al
5及びFe
xAl
ySi
zの平均厚さは5μmであった。
【0171】
第1の一連の実験(サンプルS1〜S8)では、レーザ切断工程は、4kWの出力を有するCO
2レーザを使用して行われた。
【0172】
このようにして得られた各サンプルについて、本願発明者らは、対応するプレコート鋼板1のカットエッジ面13の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Total、プレコート鋼板1のカットエッジ面13の基板領域14の下半分のアルミニウムの表面割合S
Bottom、並びにS
TotalとS
Bottomとの比率Rを測定した。
【0173】
測定は、走査型電子顕微鏡で撮影されたカットエッジ面13の画像に基づいて行われ、以下のパラメータ:
− 倍率:×60
− 分析長:3mm
− 電子ビームエネルギー:15〜25keVの間
を使用した。
【0174】
そして、本願発明者らは、このようにして得られたサンプルS1〜S8の耐食性を以下の方法を使用して測定した。これらのサンプルは、密閉されたチャンバ内で湿度100%、温度70℃で280時間保持した。次に、このサンプルを目視で分析して、腐食の存在を検出した。
【0175】
耐食性は次のように等級付けされた:
− グレード「1」は、赤錆の形成が観察されなかったサンプルに相当し、優れた耐食性に相当する。
− グレード「2」は、少量の赤錆のみが観察されたサンプルに相当し、良好な耐食性に相当する。
− グレード「3」は、強い腐食に相当し、耐食性が低いため、許容できない量の赤錆の形成が観察された場合に相当する。
【0176】
以下のhyou1は、第1の一連の実験の各サンプルについて、サンプルを得るために使用されたレーザ切断パラメータに加えて、それによって生じたプレコート鋼板1のカットエッジ面13の基板領域14上のアルミニウムの表面割合S
Total及びS
Bottom、S
TotalとS
Bottomとの比率R、並びに耐食性のグレードについてまとめている。
【0177】
【表1】
【0178】
上記表1において、本発明によらないサンプルには下線が引かれている。
【0179】
上記の結果は、本発明によるすべてのサンプル(サンプルS1〜S5)について、優れた耐食性に相当する腐食が観察されなかったこと、又は良好な耐食性に相当するごく少量の腐食が観察されことを示す。
【0180】
これに対して、本発明によらないすべてのサンプル(サンプルS6〜S8)については、カットエッジ面13の強い腐食に相当する許容できない量の赤錆の形成が観察された。
【0181】
本願発明者らは、さらに以下の追加実験を行った。
【0182】
第1の比較例として、本願発明者らは、レーザ切断の代わりに剪断を使用して、上記のプレコート鋼帯2からプレコート鋼板サンプルを得た。このような機械的に切断されたサンプルのカットエッジ面の走査型電子顕微鏡により得られた画像を
図9に示す。この画像に見ることができるように、剪断により得られたサンプルは、カットエッジ面13の基板領域14の上半分UHにアルミニウムの高い表面割合を有するが、下半分BHにはアルミニウムを有さない。
【0183】
第2の比較プレコート鋼板サンプルは、プレコート鋼帯2から剪断、続いてカットエッジ面のミリングによって得られた。
【0184】
第3の比較プレコート鋼板サンプルは、プレコート鋼帯2からレーザ切断ではなく鋸引きによって得られた。
【0185】
これらの比較サンプルの耐食性は、上述の方法を使用して測定された。
【0186】
前述の3つの比較例(剪断、剪断及びミリング又は鋸引きにより得られた)については、カットエッジ面の強い腐食に相当する許容できない量の赤錆の形成が観察された。
【0187】
これらの結果は、本発明による方法が、機械的切断と比較して、切断自体に加えて追加の工程の実施を必要とせずに、改善された耐食性をもたらすことを裏付ける。したがって、本発明によるプレコート鋼板1を得る方法は、切断自体が自動的に縁部の所望の腐食保護をもたらすので、特に有利である。
【0188】
この結果はさらに、サンプルS1、S2、S3及びS5では赤錆の形成が観察されないのに対して、サンプルS4では少量の赤錆が観察されるため、特徴(a)及び(b1)が同時に存在する場合、耐食性がさらに改善されることを示す。
【0189】
本願発明者らはさらに、サンプルS1、S2及びS5の場合のように、特徴(a1)、(b1)及び(c)が同時に存在する場合、カットエッジ面13上のアルミニウムの総量がより多く、カットエッジ面13にわたるアルミニウムの分布がさらにより均一であり、結果としてカットエッジ面13にわたる腐食保護のより大きな均質性をもたらすことを観察した。
【0190】
第2の一連の実験(サンプルS9〜S18)では、本願発明者らは、CO
2レーザの代わりに、レーザ切断工程に4kWの出力を有するディスクレーザを使用して類似の実験を行った。
【0191】
以下の表2は、第2の一連の実験の各サンプルS9〜S18について、サンプルを得るために使用されたレーザ切断パラメータに加えて、それによって生じたプレコート鋼板のカットエッジ面13の基板領域14上のアルミニウムの表面割合S
Total及びS
Bottom、並びに耐食性のグレードについてまとめている。
【0192】
【表2】
【0193】
上記表2において、本発明によらないサンプルには下線が引かれている。
【0194】
これらの実験は、本発明によるすべてのサンプル(サンプルS9〜S14)について、優れた耐食性に相当する腐食が観察されなかったことを確認する(グレード1)。
【0195】
これに対して、本発明によらないサンプル(サンプルS15〜S18)については、カットエッジ面13の強い腐食に相当する許容できない量の赤錆の形成が観察された(グレード3)。
【0196】
本願発明者らは、さらに、本発明の特定の実施形態に対して以下の第3の一連の実験を行った。
【0197】
第1の一連の実験に関連して上述したのと同じ特性を有するプレコート鋼帯2を使用して、アシストガスとして純粋な窒素を用いた4kWCO
2レーザを使用し、異なるレーザ切断線形エネルギーを使用したレーザ切断によってプレコート鋼板1を製造した。窒素圧は、2バール〜18バールの間であった。
【0198】
得られたプレコート鋼板1は、長方形の形状を有していた。
【0199】
各レーザ切断線形エネルギーについて、本願発明者らは、カットエッジ面13の基板領域14上のアルミニウムの表面割合を測定した。
【0200】
図10は、レーザ切断線形エネルギーの関数として、プレコート鋼板1の対象のカットエッジ面13の基板領域14上のアルミニウムの総表面割合S
Totalを示すグラフである。
【0201】
図10に見られるように、0.6kJ/cmよりも厳密に小さいレーザ切断線形エネルギーでは、レーザ切断から生じた対象のエッジ面13の基板領域14上のアルミニウムの表面割合は、厳密に6%より高い。
【0202】
これに対して、0.6kJ/cm以上のレーザ切断線形エネルギーでは、カットエッジ面13のアルミニウム表面割合は約6%以下になる。それはさらに0.3%以上である。
【0203】
1.20kJ/cmに等しい線形切断エネルギーでは、カットエッジ面13の基板領域14上のアルミニウムの表面割合は、0.3%〜4.5%の間にさえ含まれる。
【0204】
したがって、0.6kJ/cm以上のレーザ切断線形エネルギーでプレコート鋼帯2をレーザ切断すると、レーザ切断操作によってカットエッジ面13に沈着するアルミニウムの量が特に少なくなる。
【0205】
本願発明者らはさらに、他の種類の不活性ガス、特にアルゴンを使用した場合、類似の結果が得られることを観察した。
【0206】
本願発明者らはさらに、本発明の特定の実施形態による、その基板領域14上に0.3%〜6%の間に含まれるアルミニウムの総表面割合S
Totalを有する第2の部分20を含む2枚のプレコート鋼板1をガスレーザ溶接によって、すなわち、溶接ワイヤ又は粉末を使用せずに突合せ溶接して溶接ブランクを作製し、このようにして得られた溶接ブランクを熱間成形し、プレス硬化してプレス硬化鋼部品を得る実験を行った。
【0207】
このようにして得られた鋼部品の溶接継手に対して行われた硬度測定は、この溶接継手が、本発明によらないプレコート鋼板を使用した場合に得られる硬度よりも高い硬度を有し、例えば、より小さなレーザ切断線形エネルギーによるレーザ切断によって得られた硬度であることを示す。
【0208】
したがって、本発明の特定の実施形態による方法は、溶接部に相対的な硬度低下が生じないため、有利である。