(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961822
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】天然油を含有するシリコーンエラストマーゲル
(51)【国際特許分類】
C08L 91/00 20060101AFI20211025BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20211025BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20211025BHJP
C08L 23/18 20060101ALI20211025BHJP
C08G 77/50 20060101ALI20211025BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20211025BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20211025BHJP
A61K 8/895 20060101ALI20211025BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20211025BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20211025BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
C08L91/00
C08L83/04
C08K5/01
C08L23/18
C08G77/50
A61K8/11
A61K8/89
A61K8/895
A61K8/92
A61K8/31
A61Q19/00
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-525854(P2020-525854)
(86)(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公表番号】特表2021-502438(P2021-502438A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(86)【国際出願番号】US2017062547
(87)【国際公開番号】WO2019099047
(87)【国際公開日】20190523
【審査請求日】2020年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(72)【発明者】
【氏名】アミターバ、ミトラ
(72)【発明者】
【氏名】マーガレット、ホイットン
(72)【発明者】
【氏名】チェルシー、グリム
【審査官】
小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−062493(JP,A)
【文献】
特開2005−154677(JP,A)
【文献】
特表2010−529233(JP,A)
【文献】
特開2000−198851(JP,A)
【文献】
特表2015−519426(JP,A)
【文献】
特開平08−048882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 91/00
C08K 5/01
C08L 23/18
C08L 83/04
C08G 77/50
A61K 8/11
A61K 8/89
A61K 8/895
A61K 8/92
A61K 8/31
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル中に遊離した、少なくとも1つの天然油を含むオルガノポリシロキサンゲルであって、
a) (A)脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンと、(B)Si−H官能性オルガノポリシロキサンと、(C)炭素数6以上のα−オレフィンとの反応生成物である架橋オルガノポリシロキサンゲル;
b) (D)少なくとも1つの炭化水素希釈剤;および
c) (E)少なくとも1つの天然油
を含有し、
前記(D)炭化水素希釈剤および(E)天然油の両方が、前記脂肪族不飽和オルガノポリシロキサン、Si−H官能性オルガノポリシロキサン、およびα−オレフィンの前記(a)の反応物を含有する反応混合物の完全なゲル化の前に組成物中に存在し、(F)ヒドロシリル化触媒の存在下で前記ゲル化が起こる、オルガノポリシロキサンゲル。
【請求項2】
前記脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンが、脂肪族不飽和の直鎖状、分岐状、環状または樹脂状のオルガノポリシロキサンを1つ以上含有する、請求項1に記載のゲル。
【請求項3】
前記Si−H官能性架橋剤が、平均して2個超のSi−H基を有する、直鎖状、分岐状、環状または樹脂状のオルガノポリシロキサンを1つ以上含有する、請求項1または2に記載のゲル。
【請求項4】
少なくとも1つの脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンが、式:
【化1】
[ここで、
aは1または2であり、bは1または2であり、合計a+bは3であり;
mは10〜200、好ましくは15〜75、より好ましくは15〜40であり;
nは0〜10、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜3、最も好ましくは0であり;
R
1は、脂肪族不飽和炭化水素基であり;
Rは、脂肪族不飽和を有さないC
1-20炭化水素基であり;
R
3は、Rまたは−OSiR
2−シロキシ基を有し、末端がR
3SiO−基もしくはR
1aR
bSiO−基(ここで、a、bおよび合計a+bは前に定義したとおりである。)であるオルガノシロキシもしくはポリオルガノシロキシ基である。]
を有するか、および/または、前記少なくとも1つの脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンが、T単位および/またはQ単位と、R
3SiO
1/2 M基と、好ましくは5〜100個、より好ましくは20〜80個のR
1R
2SiO
1/2 M基とを有するオルガノポリシロキサン樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項5】
前記Si−H官能性オルガノポリシロキサンが末端Si−H基を有さない、請求項1〜4のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項6】
少なくとも1つのSi−H官能性オルガノポリシロキサンが、式:
【化2】
[ここで、Rは
脂肪族不飽和を有さないC1-20炭化水素基であり、pは0〜200、好ましくは10〜150、より好ましくは40〜120であり、qは0〜200、好ましくは10〜150、より好ましくは20〜100であり、ここで、pのジオルガノシロキシ基およびqのハイドロジェンオルガノシロキシ基は、任意の様式で、好ましくはランダムに分布しており、好ましくはブロック状ではなく、p+qは少なくとも2であり、cは0または1、好ましくは0であり、dは2または3、好ましくは3であり、合計c+dは3である。]の一つである、請求項1〜5のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項7】
前記架橋ゲル(a)が、前記ゲルの全重量に対して5〜50重量%の量で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項8】
前記炭化水素希釈剤が、炭素数10〜20の少なくとも1つの脂肪族炭化水素を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項9】
前記炭化水素希釈剤が、前記ゲルの重量に対して前記ゲルの10〜50重量%を構成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項10】
前記天然油が、前記ゲルの重量に対して前記ゲルの10〜70重量%を構成する、請求項7〜9のいずれか一項に記載のゲル。
【請求項11】
少なくとも1つの脂肪族不飽和オルガノポリシロキサン、少なくとも1つのSi−H官能性オルガノポリシロキサン、および炭素数6以上の少なくとも1つのα−オレフィンを、炭化水素希釈剤、天然油およびヒドロシリル化触媒の存在下で反応させて、架橋ゲルを形成することを含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載のゲルの調製方法。
【請求項12】
前記ゲルの調製に続いて、前記ゲルを剪断してクリーム状ゲルを製造する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Si−H官能性オルガノポリシロキサン、炭化水素希釈剤、α−オレフィン、ヒドロシリル化触媒および天然油を最初に存在させ、次いで脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンを加え、それに次いでゲルへのヒドロシリル化が起こる、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
Si−H官能性オルガノポリシロキサン、炭化水素希釈剤、天然油およびα−オレフィンを、ヒドロシリル化触媒とともに最初に存在させ、反応混合物を加熱してヒドロシリル化を開始し、次いで脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンを加え、反応が架橋ゲルが形成されるまで続く、請求項11または12に記載の方法。
【請求項15】
請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法で製造される請求項1〜10のいずれか一項に記載のゲルのいずれかの、化粧品配合物、医薬配合物またはパーソナルケア製品配合物における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.本発明の属する技術分野
【0002】
本発明は、ヒドロシリル化により硬化し、遊離の天然油を含むオルガノポリシロキサンゲルに関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
【0004】
動物由来および植物由来の両方の天然油、特に後者は、料理に何千年もの間使用されていた。これは、オリーブ油やゴマ油等の油に特に当てはまる。これらの油はトリグリセリドである。石鹸を作るために、オリーブ油と同様に、脂肪のレンダリングからのトリグリセリドが使用されていた。ある天然油は、薬効を有すると思われた。より最近では、いわゆるオメガ−3およびオメガ−6多価不飽和トリグリセリドが、栄養補助食品として広く宣伝されている。
【0005】
業界は、トリグリセリドおよび他の天然油の一般的に優れた評価を利用して、それらの製品の宣伝を支援してきた。そのような天然油は、今日では至る所で使用されており、健康食品配合物、医薬品、ならびにヘアおよびパーソナルケア製品、特にヘアケア製品、ならびに口紅、リップバーム、スキンクリームおよびローション等の化粧品において見ることができ、多くの場合において天然油によって与えられた所望の特性を宣伝している。
【0006】
シリコーンオイルおよびゲルは、これらの分野においても多くの用途がある。これらのオルガノポリシロキサン製品は、一般的に、化粧品およびパーソナルケア製品の滑らかさ、肌触り等の官能特性を変えるために使用されている。そのような製品におけるシリコーンの利点は、それらが持続的な「シルクのような」感触(ヘアケア製品において重要である)を促進できることである。さらなる利点は、シリコーンの高い疎水性によって、それらをパーソナルケア製品における防湿層として機能させることができることである。シリコーンの欠点としては、やはりシリコーンの高い疎水性に起因して、配合が困難であることが挙げられる。しばしば、シリコーンを用いた配合物は、部分的または完全な、そして時に不可逆的な相分離を示す可能性がある。シリコーンに関連する課題を同時に解決しながらシリコーンの利点を提供できるようにするために、過去20年または30年にわたって多くの研究が行われている。
【0007】
化粧品用のシリコーンゲルは、米国特許第6,423,322B1号にFryによって記載されている。この方法では、シリコーンゲルは、エチレン性不飽和基を有する第一のシリコーンと、Si−H基を有する第二のシリコーンとを縮合することにより調製された。第一のシリコーンは、分離に対してゲルを安定化させるのに役立つ、ケイ素結合したポリオキシアルキレン基も有していた。これらのゲルは引き続き使用されている一方、それらは、ある配合物においてわずかに不快な感触を示し、これは、ポリオキシアルキレン基の界面活性の性質によるものと考えられる。
【0008】
天然油も含むシリコーンゲルを提供することができれば有益であろう。天然油は、再生可能資源として役立つ。しかしながら、シリコーンと天然油とのどのような組合せでも、天然油を遊離した形態で保持すべきであり、そうでなければ、上記油による健康および美容上の利益は失われるからである。従来技術は、この課題に対する解決方法を提供していない。
【0009】
そのような解決方法の一つは、天然油を予め形成されたシリコーンゲル中に組み込むことであったかもしれない。しかしながら、この方法は、非常に技術上の要求が厳しく、油をシリコーン中に均一に分散させるために、ゲルと油を非常に高い剪断条件下で混合する必要がある。しかしながら、この非常に高い剪断は、シリコーンゲル構造を破壊する傾向にある。エネルギーおよび時間を消費することに加えて、多くの配合物は、調製時、または他のパーソナルケア製品の成分と混合した後に分離する傾向にある。この相分離は、分子レベルでの組込みとは対照的に、非常に微細な液滴の形態での天然油の分散が原因である可能性がある。
【0010】
Awadの米国特許第6,936,686B1号には、油性溶媒を含む非常に特定のシリコーンゲルが開示されているが、SiO
2単位(Q単位)またはSiO
3/2単位(T単位)は含まれていない。ヒドロシリル化によるゲル化は、油性溶媒中で行われ、当該溶媒は炭化水素油または低粘度シリコーン油であってもよい。天然油を含むゲルは開示されていない。
【0011】
Diasらの米国公開出願2010/0172856A1は、トリグリセリド等の天然油を含むシリコーンゲルにおける長年にわたる関心事を議論しており、内部エチレン性不飽和を有する天然油を大量のSi−H官能性シリコーンを用いて最初にヒドロシリル化し、続いてこの過剰のSi−H含有中間生成物を用いて、エチレン性不飽和基を有するポリシロキサンをヒドロシリル化することができる実施条件下における概して2段階プロセスでのヒドロシリル化によってシリコーンゲルを調製している。上記反応は、必要に応じて、有機溶媒中で行ってもよい。段落[0004]〜[0005]において、Diasは、油がゲルと共有結合するように油がSi−Hポリマーによって修飾されていることを明確に示している。この方法は、再生可能資源(天然油)を使用してゲルの一部を形成しているが、天然油はもはや遊離した形態ではなく、したがって遊離油の利点を得ることはできない。例えば、それは、ポリマーに結合した形態では表皮を通過して移行することはできない。さらに、ポリマーに組み込まれることのできる天然油の量は、少量に制限されている。
【0012】
良好な官能特性を示し、好ましくはポリオキシアルキレン基を有さず、大量の天然油を遊離した形態で組み込むことができるシリコーンゲルを提供することが望まれる。
【発明の概要】
【0013】
エチレン性不飽和を有するオルガノポリシロキサン、ケイ素結合した水素原子を有するオルガノポリシロキサン、長鎖1−アルケン、炭化水素溶媒、および天然油を、ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させることによって、大量の遊離の天然油を含むオルガノポリシロキサンゲルを調製できることが、驚くべきことに、また予想外に見出された。天然油は実質的には反応せず、ゲル化されたエラストマー中に遊離した形態で含まれる。上記ゲルを剪断して、分離のないクリーム状ゲルを製造してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に記載した方法によって、シリコーンゲルの大部分を安価な有機溶媒に置き換えることができ、さらに大きな割合を天然油に置き換えることができる。シリコーンの割合が小さいゲルを製造してもよい。デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)等の低分子量環状体を用いて調製されるゲルとは異なり、イソデカン等の溶媒および天然油を用いたゲルは、保存安定性が高く、D5を用いて調製されるゲル、または最初に完全なゲルを形成し、続いて天然油を加え、高剪断下で均質化することにより調製されるゲルのように分離することはない。後者の場合において、前述のように、非常に小さい(ナノサイズの)液滴の分散の形態ではなく、分子レベルでの天然油の組込みによって、ある程度分離しないようにできているのかもしれないと考えられる。
【0015】
他の成分は必要に応じて加えることができるが、5つの成分が本発明のゲルを製造する本発明の方法に必ず必要とされる。5つの必須の成分は、(A)最小限2つのエチレン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサン;(B)最小限2つのSi−H基を有するオルガノポリシロキサン、(C)長鎖1−アルケン、(D)天然油、および(F)ヒドロシリル化触媒である。これらの必要な成分の各々について、以下に説明する。
【0016】
(A)オルガノポリシロキサンは、エチレン性不飽和基を有するオルガノポリシロキサン樹脂、直鎖状の、α−ω−ジ(エチレン性不飽和)オルガノポリシロキサン、もしくはエチレン性不飽和基を有する分岐状オルガノポリシロキサン、またはこれらの任意の組合せであることができる。環状オルガノポリシロキサンは好ましくない。
【0017】
用語「樹脂」、「シリコーン樹脂」および「オルガノポリシロキサン樹脂」は、Noll,CHEMISTRY AND TECHNOLOGY OF SILICONES,Academic Press,N.Y.,1968に記載されているように、高度に架橋されたネットワーク様ポリマーとして、それらの当該技術分野において承認されている意味で使用される。したがって、直鎖状および分岐状オルガノポリシロキサンは、極度に高分子量の、そして固体または半固体のものであっても、シリコーン樹脂ではなく、また当業者はそれらを「樹脂状」であるとも記載しない。大部分のシリコーン樹脂は、低〜中程度の分子量を有しており、常にそうであるとは限らないが一般的には、固体であり、トルエン等の有機溶媒に可溶である。
【0018】
シリコーン樹脂は、M、D、TおよびQ単位から構成される。これらの構成要素は、それぞれ、1、2、3および4つのシロキシ結合を提供する。この命名は当業者によく知られている。一般的な有機基として「R’」を使用すると、M、D、TおよびQ基の式は:
【0019】
(M)R’
3SiO
1/2、例えば、(CH
3)
3−Si−O−、
【0020】
(D)R’
2SiO
2/2、例えば、−O−Si(Me
2)−O−、
【0021】
(T)R
3SiO
3/2、例えば、
【化1】
【0022】
(Q)SiO
4/2、つまり「ケイ酸塩」、
である。
【0023】
この専門用語は、全てのシリコーン樹脂のために使用することができる。以上のように、M基は末端基または鎖停止部として機能し、D基は分子に直鎖部を与え、TおよびQ単位は分岐部位を提供する。シリコーン樹脂は、少なくとも1つのTまたはQ基を有する必要がある。一般的なシリコーン樹脂は、MQ、MT、MTQ、T、MDT、MDQ等として記載してもよい。D基の割合は、小さく、一般的には20モル%未満であり、通常はこれよりもかなり小さく、結果として、上記樹脂は極めて高度に三次元架橋している。成分(A)として使用されるシリコーン樹脂において、R
1基は以下に記載するRおよびR
1である。シリコーン樹脂は、最小限2個のR
1基を有し、好ましくは5〜100個、より好ましくは20〜80個のR
1基を有する。
【0024】
(A)オルガノポリシロキサンは、複数の末端脂肪族不飽和基を有し、そのような基を平均して少なくとも2つ有し、好ましくは一般式:
【化2】
に相当し、
ここで、aは1または2であり、bは1または2であり、合計a+bは3であり;mは好ましくは10〜200、より好ましくは15〜75、さらにより好ましくは15〜40であり;nは0〜10、好ましくは0〜5、より好ましくは0〜3、最も好ましくは0であり;
R
1は、脂肪族不飽和炭化水素基であり;
Rは、脂肪族不飽和を有さないC
1-20炭化水素基であり;
R
3は、Rまたは−OSiR
2−シロキシ基を有し、末端がR
3SiO−基もしくはR
1aR
bSiO−基(ここで、a、bおよび合計a+bは前に定義したとおりである。)であるオルガノシロキシもしくはポリオルガノシロキシ基である。
【0025】
好ましい(A)オルガノポリシロキサンポリマーは、シリコーン樹脂、および/または、末端脂肪族不飽和基を有し、好ましくは一つのそのような基を各々のポリマー鎖末端に有する直鎖状もしくは軽度に分岐したシリコーンポリマーである。(A)直鎖状ポリマーが好ましい。(A)軽度に分岐したポリマーの場合、オルガノシロキシまたはポリオルガノシロキシ基は非官能性でもよく、あるいは、脂肪族不飽和を有してもよい。非官能性の分岐は、存在する場合、好ましくはトリメチルシリル基等の基により終端されている。(A)シリコーン樹脂は、末端M基中に、それらの脂肪族不飽和、好ましくはオレフィン性不飽和を有することが好ましい。
【0026】
適切な炭化水素基Rは、置換されていてもよいC
1-20炭化水素基であり、適切な多くの炭化水素基の中でも、アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピルおよびイソプロピル、n−ブチル基等のブチル基、n−ペンチル基等のペンチル基、n−ヘキシル基等のヘキシル基、n−ヘプチル基等のヘプチル基、n−オクチル、イソオクチルおよび2−エチルヘキシル基等のオクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基ならびにエイコシル基;シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、シクロヘキシルおよびメチルシクロヘキシル基;アリール基、例えば、フェニル、ナフチルおよびアントラシル;アラルキル基、例えば、ベンジル基ならびにα−およびβ−フェニルエチル基が挙げられる。式(I)には示していないが、C
1-20炭化水素基に加えて、炭素数が20を超えるR基を挙げることもできるが、これは好ましくない。
【0027】
炭化水素基が置換されている場合、好ましい置換基は、臭素、塩素およびフッ素等のハロゲン、シアノ基、アシル基、エポキシ基等であり、好ましくはシアノおよびクロロ基である。置換された炭化水素基の例は、クロロフェニル、トリフルオロメチル、ヘキサフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、o,mおよびp−クロロトリル等である。
【0028】
好ましいR基は、メチル、エチル、n−プロピル、ヘキサフルオロプロピル、ヘプタフルオロプロピル、エチルフェニルおよびフェニル基である。メチル基が最も好ましい。
【0029】
脂肪族不飽和基R
1としては、ビニル、アリル、2−プロペニル、3−ブテニル、5−ヘキセニルおよびプロパルギル基等のC
2-18脂肪族不飽和炭化水素が挙げられ、特に、末端エチレン性不飽和を有する脂肪族炭化水素が挙げられる。好ましい脂肪族不飽和炭化水素R
1は、ビニルおよびアリル基であり、最も好ましくはビニル基である。エチレン性またはエチレン性不飽和が末端であることが好ましい。
【0030】
R
3は、好ましくはRであり、より好ましくはメチルである。R
3は、R
3SiO−またはR
1R
2SiO−等のオルガノシロキシ基であってもよく、あるいは、一般式:
【化3】
のうちの一つ等のオルガノポリシロキサン基であってもよく、ここで、oは0〜50、好ましくは1〜30である。最も好ましくは、R
3はRであり、換言すれば、(A)オルガノポリシロキサンは直鎖状の分岐していない分子であるか、本質的に分岐していない。この文脈において、「本質的に分岐していない」とは、オルガノシロキシまたはオルガノポリシロキシ分岐が(A)オルガノポリシロキサンの合成中に意図的に加えられはしないことを意味する。R
3部位を含むシロキシ単位の数は、平均して、好ましくは5未満、より好ましくは4未満、さらに好ましくは3未満、よりさらに好ましくは2以下である。最も好ましくは、(A)オルガノポリシロキサンは、分岐しておらず、すなわちシロキシまたはポリシロキシ基である基R
3を平均して有さない。後者の用語は、R
3シロキシまたはポリシロキシ基の数が本質的に0であり、オルガノポリシロキサン合成時の不可避のアーチファクトとして分岐したシロキシ基を有するだけであることを意味する。
【0031】
(A)環状脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンは、式
【化4】
を有する。
【0032】
上記式中、RおよびR
1は前に定義したとおりであり、rは0〜10であり、sは2〜10であり、合計r+sは平均して3〜10である。脂肪族不飽和環状オルガノポリシロキサンの使用は好ましくなく、これらは存在しないことが好ましい。このような環状オルガノポリシロキサンは、直鎖状または軽度に分岐したオルガノポリシロキサン中にそれらの調製方法に起因してしばしば少量存在することに留意すべきである。用語「脂肪族不飽和環状オルガノポリシロキサンがない」は、意図的に加えられるのではなく、直鎖状または軽度に分岐した脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンの調製方法に起因して、20重量%未満、より好ましくは10重量%未満、さらにより好ましくは5重量%未満の少量で存在してもよいそのようなオルガノポリシロキサンの存在を除外するものではない。これらの重量%は、環状ならびに直鎖状および/または軽度に分岐したオルガノポリシロキサンの合計量を基準とする。
【0033】
(A)オルガノポリシロキサンは、市販品であるか、あるいは有機ケイ素化学の既知の方法で調製することができる。
【0034】
オルガノポリシロキサン架橋剤は、ケイ素結合した水素原子(「Si−H」基)を複数含む。これらのSi−H基は、好ましい直鎖状または軽度に分岐した架橋剤の鎖に沿って存在することが好ましく、末端基として存在してもよいが、しかしながらそれは好ましくはない。そのような架橋剤は、上記脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンと本質的に同一の式を有し、ここで、いくつかのR基および/またはR
1基は、Hにより置換されている。Si−H官能性架橋剤は、脂肪族不飽和およびケイ素結合した水素原子の両方を含むものではないことが最も好ましいが、とはいえこれは可能ではある。ケイ素結合した水素原子および脂肪族不飽和の両方が存在すると、ある分子は、Si−H含有架橋剤の全てまたは一部として機能することができ、脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンの全てまたは一部としても機能することができる。したがって、同一のオルガノポリシロキサンが、エチレン性不飽和オルガノポリシロキサンおよびSi−H官能性架橋剤の両方として作用することができるが、これは好ましくはない。
【0035】
(B)オルガノポリシロキサン架橋剤は、好ましくは一般式
【化5】
を有する。
【0036】
上記式中、Rは前に定義したとおりであり、pは0〜200、好ましくは10〜150、より好ましくは40〜120であり、qは0〜200、好ましくは10〜150、より好ましくは20〜100であり、ここで、pのジオルガノシロキシ基およびqのハイドロジェンオルガノシロキシ基は、任意の様式で、好ましくはランダムに分布しており、好ましくはブロック状ではなく、合計p+qは少なくとも2である。Rは、好ましくはメチル、エチルまたはフェニルであり、より好ましくはメチルである。(II)架橋剤において、cは0または1、好ましくは0であり、dは2または3、好ましくは3であり、合計c+dは3である。トリ(炭化水素)置換されたシロキシまたはシリル基R
3SiO−またはR
3Si−の一方または両方が存在する(B)オルガノポリシロキサン/架橋剤が好ましい。ケイ素結合した水素原子を含む末端基がないことが最も好ましい。ケイ素結合した水素原子を有するシロキシ基のモル百分率は、好ましくは少なくとも5モル%、より好ましくは少なくとも15モル%、最も好ましくは少なくとも25モル%である。
【0037】
(B)オルガノポリシロキサンは、市販品であるか、あるいは有機ケイ素化学の既知の方法で調製することができる。
【0038】
(C)長鎖1−オレフィン(「α−オレフィン」)は、炭素数が最小限6の、より好ましくは炭素数8〜20、最も好ましくは炭素数10〜18の末端エチレン性不飽和炭化水素である。内部オレフィン性不飽和は反応性が非常に低いので、末端エチレン性不飽和が一つしかない限り、長鎖α−オレフィンは多価不飽和であってもよい。この点において、例えば、Durfeeらによる米国特許5,436,308号を参照。多価エチレン性不飽和である長鎖α−オレフィンを使用することは可能ではあるが、好ましくはない。分岐状α−オレフィンも適切ではあるが、直鎖状α−オレフィンが好ましい。
【0039】
適切な(C)α−オレフィンとしては、例えば、1−ヘキセン、1,5−ヘキサジエン、1−オクテン、1−ウンデセン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンが挙げられる。そのような化合物は、広く市販されている。
【0040】
(D)炭化水素溶媒は、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族またはアルカリールであることができる。脂肪族直鎖状または分岐状炭化水素およびこれらの混合物が好ましい。最も好ましくは、化粧品に適した炭化水素溶媒である。適切な炭化水素溶媒の例は、n−ドデカン、i−ドデカン、テトラデカン、オクタデカン、トルエン、キシレン等である。炭化水素溶媒の様々な蒸留留分もまた好ましい。好ましくは、イソドカンおよび様々なドデカン異性体混合物、ならびに主にC
8-20脂肪族直鎖状および/または分岐状炭化水素を含む石油留分である。そのような溶媒および溶媒混合物は、広く利用可能である。
【0041】
(E)天然油は、1つ、2つまたは3つの炭化水素部位をエステル化された基としてそれぞれ有する、モノ、ジおよびトリエステル油であることが好ましい。これらの天然油は、再生可能な天然源である動物および植物の両方から利用可能である。エステル化された炭化水素部位は、飽和であっても不飽和であってもよい。天然油は、天然に存在するトリグリセリドであることが最も好ましく、それは必要に応じて部分的に鹸化されていてもよい。さらなる天然油としては、特記がない限り、ビタミン油およびそれらの油性で液状の誘導体が挙げられ、例えば、α−トコフェロール、カルシフェロールおよびレチノールである。(E)天然油は、遊離のまたはエステル化されたヒドロキシルまたはカルボン酸基を有してもよい。
【0042】
(D)炭化水素溶媒および(E)天然油をともに、「希釈剤」と称してもよい。
【0043】
本発明における成分(B)として適切な植物油の代表的な、限定されない例としては、例えば、ココナッツ油、ホホバ油、大豆油、サフラワー油、亜麻仁油、コーン油、ひまわり油、キャノーラ油、ゴマ油、綿実油、パーム油、菜種油、桐油、魚油、ピーナッツ油、スイートアーモンド油、ビューティーリーフ油、パーム油、ブドウ種子油、アララ油、綿実油、アプリコット油、ヒマシ油、アルファルファ油、マロー油、カシューナッツ油、オート麦油、ルピナス油、ケナフ油、キンセンカ油、ユーフォルビア油、カボチャ種子油、コリアンダーオイル、マスタードシードオイル、ブラックカラントオイル、カメリナオイル、キリ油ツリーオイル、ピーナッツオイル、ケシ油、トウゴマ油、ペカンナッツオイル、ブラジルナッツオイル、ブラジル産オイル、小麦胚芽オイル、キャンドルナッツオイル、マロー油、カラテバター油、大麦油、キビ油、ブラックカラント種子油、シア油(別名シアバター)、トウモロコシ油、月見草油、パッションフラワー油、パッションフルーツ油、キノア油、マスクローズ油、マカダミア油、マスカットローズ油、ヘーゼルナッツ油、アボカド油、オリーブ油または穀物(トウモロコシ、小麦、大麦またはライ麦)の胚芽油およびそれらの組合せが挙げられる。
【0044】
(F)ヒドロシリル化触媒は、よく知られており、一般的に白金族元素の金属、またはこれらの化合物もしくは錯体である。(F)触媒としては、例えば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは活性炭等の担体上に存在することができる金属性の微粉白金、白金の化合物または錯体、例えば、PtCl
4、H
2PtCl
6・6H
2O、Na
2PtCl
4・4H
2O等のハロゲン化白金、白金−オレフィン錯体、白金−アルコール錯体、白金−アルコキシド錯体、白金−エーテル錯体、白金−アルデヒド錯体、H
2PtCl
6・6H
2Oとシクロヘキサノンとの反応生成物等の白金−ケトン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、特に、検出可能な無機結合したハロゲンを有する/有さない白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、ビス(ガンマ−ピコリン)白金ジクロリド、トリメチレンジピリジン白金ジクロリド、ジシクロペンタジエン白金ジクロリド、(ジメチルスルホキシド)エチレン白金(II)ジクロリド、および四塩化白金とオレフィンおよび第1級アミンもしくは第2級アミン、または第1級および第2級アミンとの反応生成物、例えば、1−オクテンに溶解した四塩化白金とsec−ブチルアミンとの反応生成物、またはアンモニウム−白金錯体が挙げられる。
【0045】
特に好ましい(F)触媒は、いわゆるKarstedt触媒、すなわちPt(0)錯体、特に式Pt
2[[(CH
2=CH)(CH
3)
2Si]
2O]
3の白金(0)−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体である。
【0046】
触媒は、(B)Si−H官能性架橋剤による、(A)エチレン性不飽和オルガノポリシロキサンとα−オレフィンとのヒドロシリル化が充分となる量である必要がある。触媒は、1つ以上の工程で添加してもよい。添加される全触媒は、1ppm〜100ppm、より好ましくは1ppm〜50ppm、最も好ましくは2ppm〜20ppmであってよく、全て白金元素に基づき、そして、エチレン性不飽和オルガノポリシロキサン、Si−H官能性架橋剤、α−オレフィンおよび希釈剤の全重量に基づき計算される。
【0047】
反応温度は、好ましくは30℃から150℃未満、より好ましくは50℃から90℃、最も好ましくは70℃から90℃未満である。上記反応は発熱性であるので、上記反応は最初は低温で進行する可能性があり、上記温度は反応開始からしばらくすると好ましい範囲に到達する。同様に、上記発熱は上記反応を少なくとも一時的により高い温度に駆動する可能性があるが、これは好ましくはない。上記反応は、数分から数時間、例えば3〜4時間、好ましくは1.5〜2.5時間続く場合があるが、反応終了時に触媒毒または抑制剤を添加して、ヒドロシリル化触媒を不活性化してもよい。適切な触媒毒は知られており、メルカプタンおよびメルカプト官能性オルガノポリシロキサンが挙げられる。
【0048】
ヒドロシリル化は、天然油がゲルに共有結合的に化学結合するようになったとしても実質的にほとんどないような条件下で行われる。存在する天然油の好ましくは10モル%未満が化学的に結合しており、より好ましくは5モル%未満、さらにより好ましくは3モル%未満、最も好ましくは2モル%未満、そして1モル%未満である。化学的に結合する天然油がないことが最も好ましい。遊離したままの油の量は、得られるゲルを、上記油が可溶な有機溶媒で抽出し、この抽出物をGPCまたはHPLCにより解析することによって測定することができる。
【0049】
ゲル化組成物中に存在するシリコーンゲルの量は、ゲルの全重量に対して約5重量%〜約50重量%、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは15〜35重量%であってよい。20〜30重量%という量が特に有用であることが分かっている。シリコーンゲルの重量は、炭化水素希釈剤および天然油も含むゲル生成物の全重量に対する、エチレン性不飽和オルガノポリシロキサンおよびSi−H官能性架橋剤の全重量に基づく。存在するゲルの量は、得られる組成物が、調製時にまたは剪断されてクリーム状ゲルを形成した後のいずれかで、分離に関して安定となる量であることが好ましい。
【0050】
エチレン性不飽和オルガノポリシロキサンおよびSi−H官能性オルガノポリシロキサンの間において、平均官能性は、2を超える必要があり、好ましくは2.2を超え、より好ましくは2.5を超え、さらにより好ましくは3以上である。多数のSi−H基(これらは末端ではなくむしろオルガノポリシロキサン鎖に沿って位置していることが好ましい)を有する、Si−H官能性直鎖状または軽度に分岐したオルガノポリシロキサンと同様に、少なくとも2つの末端エチレン性不飽和基、好ましくはビニル基を有する、エチレン性不飽和直鎖状もしくは軽度に分岐したオルガノポリシロキサンの使用、またはM
Vi基を有するオルガノポリシロキサン樹脂の使用が好ましい。ゲル形成性反応物の平均官能性が低すぎると、本質的に直鎖状または延長反応生成物が形成される可能性があり、これらは架橋ゲルというよりもむしろ、一般的に液体または熱可塑性ゴムである。架橋ゲルを製造するためのオルガノポリシロキサンゲル形成性成分(A)および(B)の量は、当業者の知識の範囲内で調整される。
【0051】
エチレン性不飽和基またはSi−H基のいずれかは過剰に存在してもよく、あるいは、これらは化学量論量で存在してもよい。組み合わされるα−オレフィンおよびオルガノポリシロキサンからのエチレン性不飽和基の総モル数は、Si−H基のモルに対して少なくとも化学量論量または過剰であることが好ましい。エチレン性不飽和基の総モルとSi−Hとの比は、1:1〜10:1またはそれ以上であり得る。
【0052】
α−オレフィンは、ゲル調製の開始近くにおいて、Si−H官能性オルガノポリシロキサンに完全にまたは少なくとも部分的に反応することが重要である。長鎖α−オレフィンは、天然油のゲルとの親和性を確保し、それは後の分離を避けるために必要である。α−オレフィンは、内部脂肪族不飽和を有する天然油の当該内部不飽和よりもヒドロシリル化の反応性がはるかに高いので、いくつかの調製方法が適切である。そのような方法の一つにおいて、Si−H官能性架橋剤、α−オレフィン、炭化水素希釈剤および天然油を適切な反応器に最初に装入し、次いで脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンを加える。はるかに反応性の高い、α−オレフィンおよびエチレン性不飽和オルガノポリシロキサンが存在するために、希釈剤と見なすこともできる天然油の反応はほとんどまたは全く起こらない。本発明の一つの変形では、(B)Si−H官能性オルガノポリシロキサンを別の工程でα−オレフィンと反応させるか、あるいは(B)Si−H官能性オルガノポリシロキサンを(A)オルガノポリシロキサンの中にその調製時に含ませる。
【0053】
さらなる好ましい実施形態において、第1工程で、α−オレフィン、Si−H官能性架橋剤、希釈剤およびヒドロシリル化触媒を混合し、天然油の存在下で反応を起こさせ、次いで脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンを好ましくは追加の触媒とともに加え、ゲル化が起こるまでさらなる反応を進める。いずれかの場合においても、炭化水素希釈剤の全てのまたは一部の添加を遅らせてもよいが、ゲル化の前に加えられる。両方の反応において、最終的なゲル生成物を、例えばローター/ステーターミキサーを用いて剪断し、均一なクリーム状ゲルを提供してもよい。他の反応順序も可能ではあるが、とはいえしかしながら、天然油の任意の実質的な共有結合的組込み(これは、ゲル中において天然油が遊離できることを妨げる)を避けるため、長鎖α−オレフィンおよび脂肪族不飽和オルガノポリシロキサンの一方または双方が存在することなく、天然油およびSi−H官能性オルガノポリシロキサンはヒドロシリル化触媒の存在下に、高温で長期間共存すべきではない。
【0054】
他の成分を、好ましくはゲル化の前に加えてもよいが、その後、特にクリーム状ゲルに加えてもよい。多価不飽和α−オレフィン、すなわち、様々なオクタジエン異性体、1,5−ヘキサジエンまたはブタジエン等のα,ω−ジビニルまたはジアリル炭化水素を加えて、反応中にさらなる架橋剤として機能させてもよい。これらはヒドロシリル化が依然として起こっている間に加える必要がある。香料、顔料、充填剤、可塑剤(反応性および非反応性の両方)、低分子量の揮発性シロキサン(直鎖状または環状)、防腐剤(バイオサイド)、染料、ビタミン、植物抽出物、表皮輸送促進剤(ジメチルスルホキシドやジメチルスルホン等)、非反応性オルガノポリシロキサンおよびシリコーン樹脂、保湿剤(プロピレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール等)、薬剤などを添加してもよい。これらは全て、完全にゲル化する前に加えることが好ましい。低分子量の直鎖状または環状シリコーン(D4およびD5等)等の揮発性シリコーンの量は、最小限に維持するか、または存在しないことが好ましい。Si−H官能性架橋剤および/または脂肪族不飽和オルガノポリシロキサン中に組み込まれてもよい、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン基およびポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)基等のポリオキシアルキレン基の量は、最小限に維持することもまた好ましい。このような基は、化粧品およびパーソナルケア用途におけるゲルの感触を妨げる可能性があるので、全く存在しないことが好ましい。
【0055】
本発明を、ゲル調製の実施例、および本発明に関するゲルのいくつかの使用に向けられた実施例によりさらに説明する。これらの実施例は例示であって、本発明の範囲を限定するものみなされるべきではない。
【実施例】
【0056】
方法A:1段階反応
【0057】
2000mlのガラス反応器は、凝縮器、窒素導入管、温度プローブ、ワイパーアタッチメント付きアンカースターラー、および温度制御システムを備える。上記反応器を窒素でパージし、反応を連続窒素気流下で行う。75rpmで撹拌しながら、希釈剤、ヒドロシリル化触媒およびSiH官能性架橋剤を加える。この時点で、不飽和オルガノポリシロキサン樹脂またはビニル末端シロキサンを加え、混合物を約1分間撹拌する。反応混合物を、80℃に温度制御されたオイルバス中、撹拌速度約50rpmで2時間加熱する。続いて触媒抑制剤を加え、混合物を50rpmで15分間混合する。加熱を止め、混合物を50rpmで撹拌しながら室温に冷却する。ULTRA−TURRAX(登録商標)T25ホモジナイザーを用いて、混合物を800rpmで5分間均質化する。
【0058】
方法B:2段階反応
【0059】
2000mlのガラス反応器は、凝縮器、窒素導入管、温度プローブ、ワイパーアタッチメント付きアンカースターラー、および温度制御システムを備える。上記反応器を窒素でパージし、反応を連続窒素気流下で行う。第1段階において、75rpmで撹拌しながら、希釈剤、1−オクタデセン、ヒドロシリル化触媒およびSiH官能性架橋剤を加える。混合物を、80℃に温度制御されたオイルバス中で加熱し、この温度で30分間混合する。この時点で、不飽和オルガノポリシロキサン樹脂またはビニルシロキサンを加え、混合物を約1分間撹拌する。2回目の用量のヒドロシリル化触媒を加え、反応混合物を撹拌速度約50rpmで80Cで加熱する。それをこの温度で2時間撹拌する。続いて触媒抑制剤を加え、混合物を50rpmで15分間混合する。加熱を止め、混合物を50rpmで撹拌しながら室温に冷却する。ULTRA−TURRAX(登録商標)T25ホモジナイザーを用いて、混合物を800rpmで5分間均質化する。
【0060】
【表1】
1 比M/MVi/Q=7.6/1/11.4、Mn=2570、MW=5440、ヨウ素価=18;
2 粘度=20mm
2/s、ヨウ素価=25
3 近似式 M(D)
x(D
H)
yM[0.46% w/w H含有量、x+y=140]のポリ(メチルシロキサン−共−ジメチルシロキサン);
4 Wacker Chemie AGから入手可能なWACKER(登録商標)CATALYST OL(1% w/w Pt含有量)
5 3−メルカプトプロピル基を有するポリシロキサン;25℃における粘度190mm
2/s、メルカプタン含有量0.29重量%;
【0061】
このようにして、アルキル置換および希釈剤としてのココナッツ油およびイソドデカンの混合物とを伴う場合にのみ、安定なゲルが得られた。比較例は、一方はα−オレフィンによるアルキル置換を伴わず、他方はオクタデシル置換を伴うが、希釈剤としてのココナッツ油およびシクロペンタシロキサンの混合物を用い炭化水素希釈剤を用いないところ、安定ではなかった。
【0062】
未加工エラストマーゲルサンプルについての肌触りの評価:
【0063】
6人のパネリストが、実施例1および実施例2で得られた安定なエラストマーゲルの官能特性を、市販のエラストマーゲル BELSIL(登録商標)RG 90(INCI:イソドデカン(および)ビニルジメチル/トリメチルシロキシシリケート ステアリル ジメチコン クロスポリマー)と比較した。これのために、0.025gのサンプルを、各々のパネリストの前腕上に当て、パネリストは指一本を用いて前腕上の上記配合物を4cm
2の領域にわたってこすった。肌への適用後、残留物の官能特性を互いに比較して評価した。各々のパネリストに1(悪い)から3(良い)の間での相対スコアを各々のサンプル(「油性」および「粘着性」の場合を除く;これらについては数値が小さいほど「良い」を意味し、数値が大きいほど「悪い」を意味する)に与えるよう依頼した。下記表は、6人のパネリストが各々のサンプルに与えた累積スコアを示す。
【0064】
【表2】
【0065】
このようにして、本発明に関する実施例1および実施例2は、比較例に対して、より良い展延性と、よりベルベットのようであり、滑らかであり、保湿性があり、より粘着性が低い感触とを与えると、パネリストにより判断された。加えて、パネリストは実施例2のゲルが最良の全体の感触を与えると判断した。
【0066】
配合例:
【0067】
ボディーバター配合物を、対比用のエラストマーゲル BELSIL(登録商標)RG 90(INCI:イソドデカンおよびビニルジメチル/トリメチルシロキシシリケート ステアリル ジメチコン クロスポリマー、配合物1)および本発明に関する2つの実施例:実施例1(配合物2)および実施例2(配合物3)を用いて以下のとおり作成した。
【0068】
【表3】
【0069】
調製は以下のとおりである:フェーズAを混合し、80Cへの加熱を開始する。フェーズBを調製し、80〜85Cに加熱する。Ultra−Turrax(登録商標)ミキサーを用いて混合しながら、フェーズBをフェーズAに加える。ゆっくり撹拌しながら、冷却を開始する。
【0070】
フェーズCを調製し、少なくとも10分間撹拌し、フェーズABに60Cで加える。フェーズDを一つずつ加える。再びUltra−Turraxを用いて均質化する。40C未満でゆっくり撹拌しながら、他のフェーズを一つずつ加える。
【0071】
配合物の評価
【0072】
7人のパネリストが、ボディーバター配合物1、2および3の官能特性を評価した。これのために、0.025gのサンプルを、各々のパネリストの前腕上に当て、パネリストは指一本を用いて前腕上の上記配合物を4cm
2の領域にわたってこすった。肌への適用後、残留物の官能特性を互いに比較して評価した。各々のパネリストに1から3の間でのスコアを各々のサンプルに与えるよう依頼した。
【0073】
下記表は、7人のパネリストが各々のサンプルに与えた累積スコアを示す。
【0074】
【表4】
【0075】
このようにして、(本発明に関する実施例1に基づく)配合物2および(本発明に関する実施例2に基づく)配合物3は、より滑りやすく、より保湿性がある感触を与えると、パネリストにより判断された。配合物3は、3つのサンプルのうち、最も大きい展延性と、最も小さい粘着性とを有すると、判断された。本発明に関する実施例に基づく配合物2および3の両方が、比較例である配合物1と比較して、全体の感触がより良いと、パネリストにより判断された。
【0076】
要求に応じて、本発明の詳細な実施形態を本明細書に開示するが、開示された実施形態は、様々な代替形態で実施され得る本発明の単なる例示に過ぎないと理解すべきである。図面は必ずしも縮尺どおりである必要はなく、特定の要素の詳細を示すため、誇張してまたは最小化してある特徴もある。したがって、本明細書に開示された、特定の構造上および機能上の詳細は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではなく、単に当業者に本発明を様々に使用するように教示するための代表的な基盤に過ぎないと解釈されるべきである。
【0077】
例示的な実施形態は上述のとおりであるが、これらの実施形態が本発明の全ての可能な形態を記載することを意図しているのではない。むしろ、本明細書中で使用される用語は、限定ではなく説明の用語であり、本発明の主旨および範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能であると理解される。その上、様々な実施形態の特徴を組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成してもよい。