(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも電界強度が高い1つ又は2つ以上の高電界強度構造と、を含み、少なくとも1つの前記高電界強度構造の外面に金属原子を含み、かつ/または
前記針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも反応活性が高い1つ又は2つ以上の活性領域と、を含み、少なくとも1つの前記活性領域の外面に金属原子を含み、かつ/または
前記針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも電界強度が高い1つ又は2つ以上の高電界強度構造と、を含み、前記高電界強度構造の少なくとも一部の表面は反応活性の高い活性領域である、請求項1に記載の方法。
突起を含む針先は、真空条件下でガス分子との反応において、前記突起の少なくとも一部の表面の金属原子が、前記基板のその他の表面の部分と同じ反応活性、又はそれよりも高い反応活性を有し、
突起を含まない針先は、真空条件下でガス分子との反応において、前記基板の活性領域の表面の金属原子が、前記基板のその他の表面の部分よりも高い反応活性を有する、請求項3に記載の方法。
前記ガス分子は、水素含有ガス分子を含む、又は、水素含有ガス分子と、窒素含有ガス分子、炭素含有ガス分子又は酸素含有ガス分子のうちのいずれか1種又は2種以上のガス分子とを含む、請求項1に記載の方法。
前記電界はバイアスを印加することで形成され、ただし、前記バイアスの印加は、正のバイアスの印加、負のバイアスの印加又は正のバイアスと負のバイアスとの組み合わせの印加のいずれか1種又は2種以上を含む、請求項1に記載の方法。
正のバイアスを印加して放出点を形成する際に、前記針先に正のバイアスを印加して所定時間維持し、前記正のバイアスの値が、前記針先を電界蒸発させるバイアスの値より小さい、請求項11に記載の方法。
針先に1つ又は2つ以上の固定された放出点を形成した後、電界を印加することでガス分子を放出点に吸着させ、少なくとも1つの放出点を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに鑑みて、本公開は、安定的で、大きい電界放出電流を有し、悪い真空度下で動作可能な電子源を製造することができる製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本公開の1つの態様は、少なくとも1つの針先に1つ又は2つ以上の固定された放出点を形成し、前記放出点は、針先の表面の金属原子とガス分子とで形成された反応生成物を含む、電子源の製造方法を提供する。形成された放出点は、針先の表面に遊離するガス分子又は遊離粒子状物質等ではなく、針先の表面に固定された金属原子とガス分子とで形成された反応生成物であり、針先の表面に根を下ろしているため、従来技術における遊離状の物質が集中して新しい放出点を形成することに起因して過電流焼損を引き起こすことはなく、安定性を効果的に向上させ、また、形成された放出点は、針先の表面の金属原子とガス分子とで形成された反応生成物を含み、金属原子又はその他の金属化合物(例えば、金属ホウ化物等)に対して、動作環境において(ガス分子が存在する)より良い安定性を有し、例えば、動作環境における例えば水素ガス等とより作用又は反応しにくくなり、電子源の安定性をさらに向上させた。さらに、本公開が提供する電子源の製造方法により製造された放出点は1個又は2個以上の金属原子とガス分子とで形成された反応生成物であってもよく、すなわち、形成する放出点の数を制御することで低仕事関数を有する原子レベルの電子源を形成することができる。また、該反応生成物により、表面仕事関数が明らかに低下し、表面の放出点テーパの形成により、放出能も明らかに向上する。さらに、より多い数の放出点を製造することで電界放出電流の電流値を高めることができる。このようにして、安定的で大きい電界放出電流を有する電子源の製造が可能となる。
【0012】
本公開の実施形態によれば、電界下で前記金属原子と前記ガス分子とを反応させて前記放出点を形成する。このようにして、針先の所定位置、特に、電界優位性を有する位置(例えば針先の突起)に放出点を形成しやすくなる。
【0013】
本公開の実施形態によれば、1つの具体的な実施形態において、少なくとも1つの針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも電界強度が高い1つ又は2つ以上の高電界強度構造と、を含み、少なくとも1つの前記高電界強度構造の外面に金属原子を含み、該高電界強度構造の表面の金属原子は、電界強度優位性により同一環境においてガス分子とより反応生成物を形成しやすくなり、優先的に高電界強度構造で放出点を生成する。もう1つの具体的な実施形態において、少なくとも1つの針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも反応活性が高い1つ又は2つ以上の活性領域と、を含み、少なくとも1つの前記活性領域の外面に金属原子を含み、該活性領域の表面の金属原子は活性優位性により同一環境においてガス分子とより反応生成物を形成しやすくなり、優先的に活性領域で放出点を生成する。もう1つの具体的な実施形態において、少なくとも1つの針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも電界強度が高い1つ又は2つ以上の高電界強度構造と、を含み、前記高電界強度構造の少なくとも一部の表面は反応活性の高い活性領域であり、ただし、前記活性領域の外面に金属原子を含み、該活性領域の表面の金属原子は電界強度優位性及び活性優位性により同一環境においてガス分子とより反応生成物を形成しやすくなり、優先的に活性領域で放出点を生成する。
【0014】
本公開の実施形態によれば、前記高電界強度構造は突起を含む。
【0015】
本公開の実施形態によれば、前記突起のサイズはサブナノから100ナノオーダーである。
【0016】
本公開の実施形態によれば、前記突起は、熱処理、電界印加、熱電界処理、エッチング又はナノ加工のいずれか1種又は2種以上の方法、あるいは、例えば単結晶金属針先に1層の金属原子をめっきし、熱処理によって再構築して突起を形成する方法によって形成することができる。
【0017】
本公開の実施形態によれば、突起を含む針先は、真空条件下でガス分子との反応において、前記突起の少なくとも一部の表面の金属原子が前記基板のその他の表面の部分と同じ反応活性、又はそれよりも高い反応活性を有し、すなわち、突起の表面の少なくとも一部の領域(例えば、指定領域)に、その他の領域に対して反応活性の高い金属原子を有する。突起を含まない針先は、真空条件下でガス分子との反応において、前記基板の活性領域の表面の金属原子が前記基板のその他の表面部分よりも高い反応活性を有する。
【0018】
本公開の実施形態によれば、前記方法は、前記針先の基板及び/又は高電界強度構造のサイズ及び形状を調節することで電子ビームのビーム角の大きさを調節するか、あるいは、高電界強度構造及び/又は活性領域のサイズを調節することで放出点の数を調節するか、あるいは、基板の構造及び/又は高電界強度構造を調節することで電子源放出電流の電圧の大きさ又は一致性を調節するか、あるいは、針先の頂部の形状を調節することで放出電流の方向を調節する操作をさらに含んでもよい。このようにして、利用者の各種の要求を満足し得る電子源の製造が容易になる。例えば、電界エッチング、電界蒸発などの方法により形成された針先の突起に放出点を形成することによって、放出電流が1マイクロアンペアの場合、電圧が−0.5KV未満となることができ(例えば、引出電圧が−0.4KVである)、これにより、電子銃の構造設計がよりコンパクトとなる。
【0019】
本公開の実施形態によれば、前記ガス分子は、水素含有ガス分子と、窒素含有ガス分子、炭素含有ガス分子又は酸素含有ガス分子のうちのいずれか1種又は2種以上のガス分子とを含む。
【0020】
本公開の実施形態によれば、前記水素含有ガス分子は、導入された水素含有ガス分子で構成されるか、及び/又は真空環境に残存したガス分子で構成され、これに応じて、水素含有ガス分子の導入量を調節することで前記放出点の形成速度を調節することができ、例えば水素含有ガス分子の導入量を多くとした場合に前記放出点の形成速度を高めることができる。
【0021】
本公開の実施形態によれば、前記水素含有ガス分子は水素ガス分子を含んでもよく、前記金属原子はタングステン原子であってもよく、これに応じて、前記放出点が水素タングステン化合物である。このようにして、従来のタングステン針を基に、安定的で大きい電界放出電流を有する電子源を製造することができ、かつ、従来技術との互換性が高い。
【0022】
本公開の実施形態によれば、前記電界はバイアスを印加することで形成される。ただし、前記バイアスの印加は、正のバイアスの印加、負のバイアスの印加又は正のバイアスと負のバイアスとの組み合わせの印加のいずれか1種又は2種以上である。ただし、バイアスの印加方式は、針先にバイアスを直接印加すること又は針先近傍の部品にバイアスを印加することで電界を生成することを含むが、これらに限られず、該電界が針先に一定の電界強度を形成するように作用することにより、針先の表面の金属原子とガス分子とが反応生成物を形成する。
【0023】
本公開の実施形態によれば、正のバイアスを印加する場合、形成した電界強度の範囲が1〜50V/nmであり、このようにして、正のバイアスによる電界エッチング、電界蒸発などにより放出点を形成できないのが避けられる。負のバイアスを印加する場合、形成した電界強度の範囲が1〜30V/nmであり、このようにして、放出電流が過大になることによる針先の焼損、又は針先の形貌変化が避けられる。
【0024】
本公開の実施形態によれば、負のバイアスを印加して放出点を形成する際に、まず、前記針先に負のバイアスを印加して、電流値がマイクロアンペアオーダーの放出電流を生成し、その後、所定値の放出電流を生成するまで、所定時間維持する又は前記負のバイアスを調節し、次いで、負のバイアスを調節することで前記電子源の放出電流をミリアンペアオーダーより小さくし、針先の形貌変化又は焼損を避けることができる。
【0025】
本公開の実施形態によれば、正のバイアスを印加して放出点を形成する際に、前記針先に正のバイアスを印加して所定時間維持し、前記正のバイアスの値が、前記突起を形成する電界蒸発のバイアスの値より小さい。
【0026】
本公開の実施形態によれば、前記印加するバイアスの値を調節すること、あるいは所定時間の値を調節することで、形成される放出点の数を調節することができる。このようにして、原子レベルの電子源又は放出電流が大きい電子源を実現することができる。
【0027】
本公開の実施形態によれば、電子源を製造する環境は、針先温度≦1000Kの場合、圧力≦10
−3Pa、あるいは、500K≦針先温度≦800Kの場合、圧力≦10
−6Pa、あるいは、針先温度≦150Kの場合、圧力≦10
−6Paのいずれか1種を含むことができる。放出点形成温度及び動作温度が低いため、電子源の構造が変わらず、動作時に電子源の構造が変わらず、印加する電圧値が変わらない。
【0028】
本公開の実施形態によれば、前記方法は、放出点の数を調節することで放出点の均一性を調節するか、あるいは、放出点の数を調節することで電流の大きさを調節するか、あるいは、放出点の数を増加させることで放出電流の安定性を増加させる操作のいずれか1種又は2種以上をさらに含んでもよい。
【0029】
本公開の実施形態によれば、前記方法は、少なくとも1つの針先に1つ又は2つ以上の固定された放出点を形成した後、電界を印加することでガス分子を放出点に吸着させ、少なくとも1つの放出点を除去する操作をさらに含んでもよい。
【0030】
本公開の実施形態によれば、前記基板の材料は導電材であるか、あるいは、前記高電界強度構造の材料は導電材であるか、あるいは、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面は金属原子であるか、あるいは、前記高電界強度構造の材料は基板の材料と同じ又は異なるか、あるいは、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子の材料は高電界強度構造の材料と同じ又は異なり、異なっている場合、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子は、蒸着又は電気めっき等の方法により形成されるか、あるいは、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子の材料は基板の材料と同じ又は異なり、異なっている場合、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子は、蒸着又は電気めっき等の方法によって形成される。
【0031】
本公開の実施形態によれば、任意に、前記基板の材料は融点1000K超の導電材であるか、または、前記高電界強度構造の材料は融点1000K超の導電材であるか、または、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子の材料は融点1000K超の金属材料であるか、及び、前記金属原子とガス分子との反応生成物は、真空条件下で融点1000K超の金属原子とガス分子との反応生成物を含む。
【0032】
本公開の実施形態によれば、任意に、高電界強度構造又は反応活性が高い領域は前記基板の表面の中心位置に位置するか、あるいは、高電界強度構造はサイズが所定閾値よりも大きい基板上に位置するか、あるいは、前記金属原子は前記高電界強度構造の頂端又は前記基板の表面の中心位置に位置する。
【0033】
本公開の実施形態によれば、前記放出点の消失温度が前記基板、前記高電界強度構造及び前記金属原子の消失温度の最小値よりも低く、かつ前記放出点の消失温度が前記電子源の動作温度よりも高いか、あるいは、前記放出点の消失温度が前記基板、前記高電界強度構造及び前記金属原子の消失温度の最小値よりも低く、かつ、前記放出点の消失温度が前記電子源の動作温度及び任意の針先に吸着されたガス分子の脱着温度の最大値よりも高い。
【0034】
本公開の実施形態によれば、前記放出点のサイズがナノオーダー又はサブナノオーダーであり、かつ、動作電圧を調節することにより、針先の放出点から放出される電流の値が10mAオーダーに達することができる。
【0035】
本公開の実施形態によれば、前記電子源は、冷陰極電界放出の特徴を有し、引出電圧を調節することによって放出電流の大きさを調節する。
【0036】
下記の図面を参照しながら本公開の実施形態を説明し、本公開の上記目的及びその他の目的、特徴及び利点をより明らかにする。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照しながら本公開の実施形態を説明する。しかしながら、これらの説明は例示的なものに過ぎず、本公開の範囲を限定するものではないことを理解されたい。以下の詳細な説明では、説明の便宜上、本公開の実施形態を全般的に理解されるように多数の具体的な詳細を説明している。しかしながら、1つまたは2つ以上の実施形態がこれらの具体的な詳細がなくても実施可能であることは明らかである。さらに、本公開の概念を不必要にあいまいにすることを避けるために、以下の説明では、周知の構造および技術の説明は省略する。
【0039】
本明細書で使用される用語は、本公開を制限することを意図するものではなく、特定の実施形態を説明するためのものに過ぎない。ここで用いる用語「有する」、「含む」等は、全ての特徴、ステップ、操作及び/又は部品の存在を説明するが、1つまたは2つ以上のその他の特徴、ステップ、操作又は部品を添加することが排除されない。
【0040】
本明細書で使用される全ての用語(技術的および科学的用語を含む)は、他に定義されない限り、当業者によって一般的に理解される意味を有する。本明細書で使用される用語は、本明細書の文脈と矛盾しない意味を有すると解釈されるべきであり、理想的なまたはあまりにも厳格な方法で解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0041】
「A、B、およびC等のうちの少なくとも1つ」と同様の表現が使用される場合、一般的には、当業者によって一般に理解される表現の意味に従って解釈されるべきである(例えば、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つを有する操作」は、単独でAを有し、単独でBを有し、単独でCを有し、AおよびBを有し、AおよびCを有し、BおよびCを有し、および/またはA、B、Cを有する操作などを含むが、これらに限定されない。)。「A、BまたはCなどのうちの少なくとも1つ」と同様の表現が使用される場合、一般的に、当業者によって一般に理解される表現の意味に従って解釈されるべきである(例えば、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つを有する操作」は、単独でAを有し、単独でBを有し、単独でCを有し、AおよびBを有し、AおよびCを有し、BおよびCを有し、および/またはA、B、Cを有する操作などを含むが、これらに限定されない。)。当業者は、また、明細書、特許請求の範囲、または図面において、実質的に2つ以上の任意の項目を任意に表す転換接続詞および/または句は、これらの項目の1つ、これらの項目のいずれか1つ、あるいは両方の項目を含む可能性があると解釈されるべきであることを理解されよう。例えば、句「AまたはB」は、「A」または「B」、または「AおよびB」の可能性を含むと理解されるべきである。
【0042】
以下、まず、本公開の技術的態様をより良く理解されるように従来技術における電界放出行為を説明する。
【0043】
従来の電子源、例えば、タングステン(310)単結晶針先の電子源は、使用過程において3つの段階を経過し、まず、清潔な電子源であり、ガスの吸着に伴い、安定期(Stability)となるが、ガスの更なる吸着に伴い、電流ノイズが徐々に現れ、不安定期(Instability)となり、電子源の安定性が悪くなり、改めて安定状態に戻るためには、フラッシュ(Flash)処理(短時間で約2000℃まで加熱する)を行う必要がある。早急に処理しないと、表面に汚染物が徐々に現れ、放出電流が急激に変動し、最後に焼損を招いてしまう。
【0044】
上記の焼損について、発明者がさらに研究したところ、それがイオン衝撃に緊密に関連することがわかった。これは、電子は放出された後に周囲空間のガス分子を電離し、さらに針先へ衝撃するからである。もう1つの可能性は、針先の表面が衝撃されて複数個の突起を形成し、複数の突起がそれぞれ放出点となり、最後に過電流を招き、焼損してしまうことにある。さらにもう1つのメカニズムがあり、つまり、針先の表面に吸着されたガス分子又はそれと他の物質との結合物質が、電界作用により絶え間なく移動し、最後に表面の1つの欠陥点(例えばイオン衝撃により発生した点)に1つのナノオーダーの突起を放出点として集め、放出点の迅速な成長により過電流を招き、最後に針先の焼損を招くことである。
【0045】
さらに、前述した問題は、大きい放出電流下でより厳しくなる。一般的に、長時間で安定的に動作可能な総放出電流が〜10マイクロアンペアであり、かつ、利用率が非常に低い。前述した欠点に鑑み、高輝度電子源分野において支配的なのはショットキー電界放出型電子源(Schottky thermal‐field emission source)である。
【0046】
本質的に言えば、CFEに対して、いかなる材料でもガス吸着及びイオン衝撃による影響を避けることができない。しかし、大電流下(>10マイクロアンペア)で動作すれば、電子激励脱気(特に電子が引出電極を衝撃する時に発生する)は真空度をさらに劣化させることで、針先の放出安定性が非常に悪くなり、変動の幅が極めて大きく、ますます長期間安定的に動作できなくなる。したがって、如何に安定的で大きい電界放出電流を提供するかということは、ずっと冷陰極電界放出型電子源の発展過程において最も主要なチャレンジである。
【0047】
上述したガス吸着及びイオン衝撃による影響を避けるために、現在の電界放出型電子源(一般的には金属針先のものを指す)は、超高真空中でしか動作(<10
−8Pa)できず、CFEの適用範囲が厳しく制限され、発明者は、これに対してさらに鋭意に研究したところ、真空中に残存したガス成分がH
2、CO、CO
2を含み、主成分がH
2であり、H
2の吸着により、清潔表面の放出能が徐々に悪くなる特徴を見出した。該真空範囲において、H
2による影響は針先の電界放出性能を根本的に決定していると言える。したがって、どのようにしてH
2による影響に対応するかということは、高安定性の針先を実現する鍵となった。従来技術には、ガス吸着の問題を緩和する技術的態様も幾つか存在し、例えばキャビティの真空度を1×10
−9Paオーダーまでさらに向上させることであり、Keigo Kasuyaらは、W(310)面をずっと清潔な放出状態にあるようにし、その使用時間を延長して高放出能を得る技術(mild flashings at 700℃)を発明した。該特許の技術的態様は、現在、Hitachiの電子顕微鏡製品中に広く使用されている。
【0048】
また、針先の表面の幾つかの遊離粒子状物質(atomic clusters)を放出点として直接利用する技術的態様も幾つか存在し、これも解決方式の1種の試みである。これらの遊離粒子状物質は、悪い真空度下で長時間放置して形成された汚染物であってもよく、電界作用によりこれらの遊離粒子状物質が針先のどこかに移動することができる。このような放出点は放出角が非常に小さく(〜5°)、引出電圧が極めて低く、輝度が従来のW(310)の10倍以上に達することができる。大きい放出電流(一般的には、〜10nAを安定的に提供することができる)を形成できないにもかかわらず、極めて良い安定性(<1×10
−7Pa)を示している。1つの可能性は、極めて小さいビーム角及び放出面積がイオン衝撃による影響を効果的に低下させることができると推定される。しかしながら、前述したように、このような遊離粒子状物質が固定されておらず、発明者は、電流が大きい場合(>1μA)、このような電子源が焼損しやすく、かつ、動作過程において、さらにこのような物質が絶え間なく現れ、その放出状態を徐々に変え、長時間維持することが非常に困難であることを見出した。もう1つの問題は、大気に暴露した場合、このような物質はサイズがガス分子に近いため、極めてガスに干渉されやすいことである。
【0049】
上記の種々の分析、推理及び実験に基づき、発明者は、本公開の電子源製造方法を提供して、長時間で安定的な動作を可能にするために、大きい電界放出電流を提供することができ、悪い真空環境下で動作可能であり、かつ、大気に暴露した場合でもガスに干渉されにくい電子源を提供する。
【0050】
本公開は、少なくとも1つの針先に1つ又は2つ以上の固定された放出点を形成し、前記放出点は針先の表面の金属原子とガス分子とで形成された反応生成物を含む電子源の製造方法を提供する。針先の表面の金属原子を反応物質として用いるため、それとガス分子とで形成された反応生成物は針先の表面に根を下ろし、かつ、該反応生成物は、金属原子とガス分子とが、動作に類似する条件下で反応して形成された反応生成物であり、該反応生成物は、ガス分子と再び反応する活性が低いので、安定性が高く、また、反応生成物の数を制御することができるので、反応生成物の数を増加させることで大きい電界放出電流の提供を実現することができる。さらに、反応生成物は金属原子とガス分子とが反応して形成された反応生成物であるため、大気に暴露してもガスに干渉されにくい。
【0051】
上記放出点は、電界を印加して金属原子とガス分子とを反応させる方式によって形成することができる。
【0052】
1つの実施形態において、前記電界は、バイアスを印加することで形成され、前記バイアスの印加は、正のバイアスの印加、負のバイアスの印加又は正のバイアスと負のバイアスとの組み合わせの印加のいずれか1種又は2種以上である。電界印加によって針先の表面の金属原子とガス分子とが反応生成物を形成することは、具体的に幾つかの実現方式を用いることができ、例えば、針先に電圧を直接印加して針先の表面に高い電界強度を形成することで針先の表面の金属原子とガス分子とが反応して反応生成物を形成することを促進してもよいし、針先近傍の電界強度発生構造(例えば電極等)に電圧を印加して電界を形成し、さらに針先の表面に高い電界強度を形成することで針先の表面の金属原子とガス分子とが反応して反応生成物を形成することを促進してもよい。要するに、針先の表面に形成されたフィールド、及び該フィールドの形成方式については限定されなく、針先の表面の金属原子とガス分子とが反応して反応生成物を形成することを促進するフィールドを針先の表面に形成することができればよい。
【0053】
以下、針先にバイアスを印加して電界を形成する方式を、針先の表面に放出点を形成する例で説明する。
【0054】
図1は本公開の実施形態に係る電子源の製造過程の概略図を模式的に示す。
【0055】
図1に示すように、
図1の左の図からわかるように、針先にバイアスを印加した後、針先の表面と環境中のガス分子は高い電界強度の箇所へ移動し続き、次いで、高い電界の作用により、針先の表面の少なくとも一部の金属原子とガス分子とが反応生成物、つまり放出点を生成する。右の図は左の図中の上方の破線枠における画像の拡大概略図であり、左の図の下方の破線枠が模式的な基板である。左の図から明らかなように、針先にバイアスを印加した後、針先の頂端、例えば突起での電界強度が最も強いため、環境中のガス分子及び針先の表面に吸着されたガス分子(左の図中のグレードット)が徐々に針先の頂端へ移動することとなる。右の図から明らかなように、ガス分子の電子源の針先の頂端への移動につれて、針先にフィールド(例えば電界等)を形成することでガス分子と針先の表面の金属原子(白色ドット)とが反応生成物(黒丸、すなわち放出点であり、Ma1と略称する)を形成することを促し、該放出点は、針先の表面に遊離することはなく、針先の表面に根を下ろすこととなる。
【0056】
図2は本公開のもう1つの実施形態に係る電子源の製造過程の概略図を模式的に示す。
【0057】
図2に示すように、図中の網掛け部分は、反応活性が高い領域を表し、放出点は、上記反応活性が高い領域に形成される。具体的に、反応活性が高い領域の表面は、ガス分子との反応活性が高い金属原子で構成されてもよく、このようにして、これらの金属原子は、例えば電界の作用により、優先的にガス分子と反応して反応生成物を形成し、図中の黒丸に示すように、指定領域に放出点を形成する。
【0058】
図3Aは本公開の実施形態に係る放出領域形成用の針先構造の概略図を模式的に示す。
【0059】
図3Aに示すように、少なくとも1つの針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも電界強度が高い1つ又は2つ以上の高電界強度構造とを含み、少なくとも1つの前記高電界強度構造の外面に金属原子を含む。基板は、針先の、頂端に近い部分であってもよく、針先の表面に別途形成された導電材などであってもよい。
【0060】
図3Bは、本公開の実施形態に係る高電界強度構造の概略図を模式的に示す。
【0061】
図3Bに示すように、高電界強度構造の形状は、テーパ状、台形、楕円体状、半球状等であってもよく、高電界強度構造の数は1個、3個、5個、10個等であってもよく、ここでは限定されない。
【0062】
なお、前記高電界強度構造の材料は基板の材料と同じであっても異なっていてもよい。また、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子の材料は高電界強度構造の材料と同じ又は異なり、異なっている場合、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子は、蒸着又は電気めっきの方法により形成されてもよい。さらに、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子の材料は基板の材料と同じ又は異なり、異なっている場合、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面の金属原子は、蒸着又は電気めっきの方法により形成されてもよい。また、前記基板の材料、前記高電界強度構造の材料は前記針先の本体の材料と同じ又は異なり、ここでは限定されない。
【0063】
図3Bに示すように、前記高電界強度構造は突起(Protrusion)を含んでもよく、
図3AにおけるLo1の位置に対応する。ただし、前記突起のサイズはサブナノから100ナノオーダーであってもよい。突起に高電界強度優位性を有するため、針先に電圧を印加すると、電界強度の作用により、突起の表面の少なくとも一部の金属原子がガス分子と反応して反応生成物を形成する。このようにして、針先の表面の所定位置で放出点を簡単で迅速に形成することができる。また、突起に形成された放出点の数を制御可能であり、例えば、バイアスの印加時間を増加させたり突起のサイズを大きくしたりすることでより多くの放出点を形成して放出電流を大きくする等が可能である。
【0064】
前記突起が、熱処理、電界印加、熱電界処理、エッチング又はナノ加工等のいずれか1種又は2種以上の方法により形成されるか、あるいは、例えば、単結晶金属針先の上面に1層の金属原子をめっきし、熱処理により再構築して突起を形成する方法により形成される。なお、針先の表面に突起を形成できる方法であればいずれも適用可能であり、ここでは限定されない。
【0065】
任意に、前記基板の材料は導電材であり、前記高電界強度構造の材料は導電材であり、前記基板及び/又は高電界強度構造の表面は金属原子である。前記金属原子の種類が針先本体又は基板の種類と異なっている場合、蒸着、電気めっきなどの方法により針先の表面に形成された異なる種類の金属原子であってもよい。好ましくは、前記基板の材料、高電界強度構造の材料の融点が1000K超であり、該金属原子の材料は融点が1000K超の金属材料であり、安定性がより良くなり、かつ、フラッシュ(Flash)(短時間高温加熱)技術等を用いて熱処理することで針先の洗浄が便利になる。例えば、該金属材料は、タングステン、タンタル、ニオブ、モリブデン、レニウム、ハフニウム、イリジウム、オスミウム、ロジウム、ルテニウム、白金、パラジウム、金、クロム、バナジウム、ジルコニウム、チタニウム又は金属六ホウ化物のうちのいずれか1種又は2種以上を含んでもよく、例えば、そのうちの1種の金属原子を単独で針先の表面の金属原子としたり、そのうちの2種以上の金属原子で形成された積層、例えばチタン層/白金層/タングステン層で形成された積層等としたり、あるいは、そのうちの2種以上の金属原子を混合して形成された非単体の金属層としたりしてもよく、ここでは限定されない。1つの好ましい実施形態において、前記金属原子はタングステン原子を含み、前記ガス分子は水素ガス分子を含み、これに応じて、前記放出点は水素タングステン化合物となる。
【0066】
図3Cは、本公開の実施形態に係る突起の表面の金属原子の概略図を模式的に示す。
【0067】
なお、前記基板、前記高電界強度構造及び前記針先の本体の材料はいずれも金属材料であってもよく、あるいは金属材料ではなく(例えば導電材であればよい)、電子源が高電界強度構造を含まない場合には、前記基板の表面は反応活性の高い金属原子を含み、かつ前記基板に電流を導入できるのを保証すればよい。電子源が高電界強度構造を含む場合、前記高電界強度構造の表面が金属原子を含み、かつ前記高電界強度構造に電流を導入できるのを保証すればよい。
【0068】
1つの好ましい実施形態において、高電界強度構造が前記基板の表面の中心位置に位置するか、あるいは高電界強度構造が所定閾値よりもサイズが大きい基板上、例えばサイズの大きい基板上に位置するか、あるいは、前記金属原子が前記高電界強度構造の頂端の表面の中心位置に位置する。
【0069】
また、前記針先の基板及び/又は高電界強度構造のサイズ及び形状を調節することで電子ビームのビーム角の大きさを調節することができ、さらに高電界強度構造及び/又は活性領域のサイズを調節することで放出点の数を調節することができ、また、基板の構造及び/又は高電界強度構造を調節することで電子源放出電流の電圧の大きさ又は一致性を調節することもでき、かつ、針先頂部の形状を調節することで放出電流の方向を調節することができる。例えば、基板のサイズを大きくすると、ビーム角が小さくなり、電界蒸発により突起の高さを低くすると、ビーム角が小さくなり、突起のサイズが小さければ小さいほど、放出点の数が少なくなる等である。ただし、引出電圧は−0.5KV未満であってもよく、例えば引出電圧が−0.4KVである。
【0070】
図4は、本公開のもう1つの実施形態に係る放出領域形成用針先構造の概略図を模式的に示す。
【0071】
図4に示すように、少なくとも1つの針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも反応活性の高い1つ又は2つ以上の活性領域(Lo2位置に対応)とを含み、少なくとも1つの前記活性領域の外面に金属原子を含む。活性領域は、
図4の網掛け領域に示されている通りである。活性領域の個数は1個、3個、5個、10個等であってもよく、ここでは限定されず、放出点は、針先の頂部領域に位置する活性領域中に優先的に形成することができる。
【0072】
なお、突起を含まない針先に対して、真空条件下でガス分子との反応において、前記基板の活性領域の表面の金属原子は前記基板の他の表面の部分よりも高い反応活性を有する。基板の材料と前記針先の本体の材料とは同一であっても異なっていてもよい。前記活性領域の金属原子は、蒸着又は電気めっき等の方法により形成されてもよく、例えば、電気めっきにより針先の軸線と表面とが交差する箇所で一定面積の金属原子層を形成し、該金属原子層の材料が基板のその他の表面の材料よりもガス分子との反応活性が高い。相応的に、真空条件下でガス分子との反応において、前記基板の活性領域の表面の金属原子が前記基板のその他の表面部分よりも高い反応活性を有する。
【0073】
1つの好ましい実施形態において、反応活性の高い領域が前記基板の表面の中心位置に位置するか、あるいは、前記金属原子が前記基板の表面の中心位置に位置する。
【0074】
本公開が提供する電子源において、少なくとも1つの針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも反応活性の高い1つ又は2つ以上の活性領域とを含み、少なくとも1つの前記活性領域の外面に金属原子を含み、該活性領域の表面の金属原子は活性優位性により同一環境においてよりガス分子と反応して反応生成物を形成しやすくて、活性領域において放出点を優先的に生成する。
【0075】
図5は本公開のもう1つの実施形態に係る放出領域形成用針先構造の概略図を模式的に示す。
【0076】
図5に示すように、少なくとも1つの針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも電界強度が高い1つ又は2つ以上の高電界強度構造とを含み、前記高電界強度構造の少なくとも一部の表面は反応活性の高い活性領域であり、Lo3位置に対応し、前記活性領域の外面に金属原子を含む。
【0077】
本実施形態において、突起を含む針先は、真空条件下でガス分子との反応において、前記突起の少なくとも一部の表面の金属原子が前記基板のその他の表面部分と同じ反応活性又はそれよりも高い反応活性を有し、このようにして、放出点の、突起の指定領域上の形成をより精確に制御することができ、例えば
図5の突起の網掛け領域に放出点を形成することができる。活性領域の表面の金属原子の形成方式は、前述した実施形態において活性領域を形成する方式を参照することができ、ここではその説明を省略する。
【0078】
本公開が提供する電子源において、少なくとも1つの針先は、基板と、前記基板上の、前記基板の他の箇所よりも電界強度が高い1つ又は2つ以上の高電界強度構造とを含み、前記高電界強度構造の少なくとも一部の表面は反応活性の高い活性領域であり、前記活性領域の外面に金属原子を含み、該活性領域の表面の金属原子は電界強度優位性及び活性優位性により同一環境においてよりガス分子と反応して反応生成物を形成しやすくて、活性領域において放出点を優先的に生成する。
【0079】
図6は本公開の実施形態に係る放出点形成過程の概略図を模式的に示す。
【0080】
強電界の作用下でのガス分子と表面の原子との反応により放出点Ma1の形成を実現し、Malの形成が一定温度下で行われる。放出点の形成過程は、針先の表面の1つの小さい領域内の水素ガス吸着行為に基づいて鋭意に検討した後に確定した製造方法である。
【0081】
1つの実施形態において、負のバイアスを印加して放出点を形成する際に、まず、前記針先に負のバイアスを印加して、電流値がマイクロアンペアオーダーの放出電流を生成し、その後、所定値の放出電流を生成するまで、所定時間維持する又は前記負のバイアスを調節し、次いで、負のバイアスを調節することで前記電子源の放出電流をミリアンペアオーダーより小さくし、針先の形貌変化又は焼損を避けることができる。
【0082】
もう1つの実施形態において、正のバイアスを印加して放出点を形成する際に、前記針先に正のバイアスを印加して所定時間維持し、前記正のバイアスの値が、針先を電界蒸発させるバイアスの値より小さい。
【0083】
例えば、タングステン単結晶(111)の針先を1つ提供することができ、前述した方法により針先に突起を形成し、例えばフラッシュ(Flash)処理(1200Kに加熱して、3s持続し、その間、バイアス等で補助してもよい)を行い、このようにして、針先の表面の中間位置に1つのナノオーダーの突起を形成することができ、その表面が清潔であり、
図6aに示すように、針先に負圧を−2KVまで印加すると、電界放出モード(field electron emission mode)を形成した。イオン衝撃による影響を避けるために、Ma1の形成温度を〜50Kとした。放出点の全形成過程において、放出電流(I
E)がずっと5nA以内に制御され、真空度が10
−7Paであった。
【0084】
図6bから
図6eに示すように、ガス吸着は、まず放出能の低下を引き起こし、蛍光体スクリーンの表示画面上の放出パターンが徐々に暗くなり、放出電流が徐々に低下し、すなわち、従来のタングステンの清潔表面の放出能が徐々に低下する。
【0085】
図6fに示すように、時間の経過につれて、放出パターンがほぼ完全に消え、この時、従来のタングステンの清潔表面の放出能がほぼ完全に消えた。
【0086】
図6gに示すように、電子源にバイアスを印加し続けるにつれて、本公開に記載の放出点の形成が始まり、この時の放出点は前の放出物質と構成が異なり、タングステンを例として説明すれば、前の放出物質がタングステン単結晶のタングステン原子であり、この時の放出点が針先の表面のタングステン原子とガス分子との反応生成物、例えば、タングステン原子と水素ガス分子との反応生成物であり、該反応生成物が針先の表面に固定されている。
【0087】
図6hから
図6kに示すように、電子源にバイアスを印加し続けたり、待ち続けたりすることにより、最後に、当該放出点が明るくなった。
【0088】
図6lに示すように、最後に、高放出能の放出点を形成し、放出電流がさらに増大し、
図6aと
図6lとを比較することにより、放出点の放出能が明らかに向上し、かつ放出点がより中間の突起の位置に集中することが明らかになった。
【0089】
上記の過程において、電流がずっと非常に小さく制御され、かつ蛍光スクリーンが針先から遠く離れ、かつ真空度が非常に良いので、イオン衝撃による影響を排除することができる。さらに、正の高圧を印加することで同じ電界放出特性の物質を形成することができる。しかも、この時には放出電流が全くないので、イオン衝撃による遊離状の原子レベル粒状物質が放出点Ma1の形成過程に参与しなかったことを証明している。
【0090】
放出点Ma1の形成過程において、ガス(例えばH
2)は、吸着、電界下での解離を経て、さらに表面金属原子と結合し、あるH‐W反応生成物(化合物(compound))を生成し、これはMalの1種に属し、このような化合物(compound)は表面と直接結合し、移動しないようである。例えば、その他の位置にも類似する物質が形成可能であるが、それが移動することなく、ずっと位置が安定した放出点である。
【0091】
放出能に関連するパラメータのうち、単独の放出点の放出能が30μA以上に到達可能であり、従来のCFEの単独の点の放出能力(〜10マイクロアンペア)を遥かに超えており、1つの集中する放出領域を形成すれば、放出パターンが一様に連続し、総電流が100μAオーダーに到達することができる。放出面積を増大すれば、mAの放出電流を実現することができる。
【0092】
異なる真空度下で、異なる放出能を有する。一般的には、高真空の場合には、放出電流が大きく、低真空の場合には、最大放出電流が迅速に減衰する。形成した放出点の針先(The tip terminated by emission site)は電界放出一致性を有し、すなわち、放出電流の電圧は一致性を有し、例えば、放出電流が1マイクロアンペアである場合には、電圧が−1.2±0.1KVである。
【0093】
以下、完全な製造プロセスで例示的に説明する。
【0094】
(一)製造条件について
放出点は、真空環境下、かつ一定の温度範囲で、電界の作用により針先の表面の金属原子とガス分子とが生成された反応生成物である。ただし、電界は、正のバイアス又は負のバイアスを印加して形成された電界であってもよく、例えば、正のバイアスを印加した場合、電界強度が1〜50V/nmであり、負のバイアスを印加した場合、電界強度が1〜30V/nmである。
【0095】
具体的に、製造装置は、真空チャンバ、冷凍ヘッド(該冷凍ヘッドは加熱装置を含んでもよい)、サンプルホルダー、加熱シート、電源、ガス導入装置及び蛍光体スクリーンを含んでもよく、ただし、真空チャンバのバックグラウンド真空度≦10
−3Paである(一般的には10
−6Paが好適である)。冷凍ヘッドcold head上には1つの絶縁性サンプルホルダー(sample holder)があり、サンプルホルダー(sample holder)に1つの加熱装置(例えば加熱シート、加熱棒等)を設置するのを実現することができ、温度を10〜500Kの間で調整することができる。予め処理された針先(例えば、タングステン単結晶針先であり、該タングステン単結晶針先は突起を有する針先であってもよく、突起のサイズがnm〜100nmオーダーであってもよく、反応活性の高い領域を有する針先であってもよい。)をサンプルホルダー上に放置し、該針先に電圧を印加し、電圧は正の高圧V
Pであってもよいし、負の高圧V
Nであってもよい。電源は2パス出力高圧電源であってもよく、その出力範囲が±0〜30kvである。ガス導入装置は、反応ガス分子、例えばH
2、さらにその他の反応ガス、例えばH元素含有ガス、水、CH
4等を導入するためであり、ガスの導入量を動的に調整することができ、一般的には、導入時の真空度が<10
−4Paであり(なお、チャンバ内の残存ガス分子を直接に利用することもでき、その主成分が水素ガスである。)、具体的に、前記ガス分子は、水素含有ガス分子と、窒素含有ガス分子、炭素含有ガス分子又は酸素含有ガス分子のうちのいずれか1種又は2種以上のガス分子とを含む。さらに、水素含有ガス分子の導入量を調節することで前記放出点の形成速度を調節することができる。蛍光体スクリーンは、粒子線画像を光学画像に変換するためであり、信号が非常に小さい場合には、蛍光スクリーン‐マルチチャンネルボードアセンブリを用いて信号を増幅することができる。針先に電圧を印加すると、粒子線を引き出すことができ、該印加する電圧は正の電圧であってもよく、負の電圧であってもよい。正の電圧である場合には、結像ガスがある時、正のイオンビームを出力し、負の電圧である場合には、電子ビームを出力する。放出点形成温度及び動作温度が低いため、動作時に電子源の構造が変わらず、印加電圧値が変わらず、電圧値が安定的であり、電子銃の設計がよりコンパクトとなる。
【0096】
(二)製造過程について
1.まず、高電界強度構造を形成し、高電界強度構造を形成する過程は下記の操作を含んでもよい。
【0097】
針先の表面に電界強度の強い領域、例えば突起を形成し、好ましくは、針先の真ん中に突起を形成する。
【0098】
ただし、突起の材料は基板と同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、突起の材料が導電材料であり、突起の最表面の1層又は複数層の原子が金属原子であり、突起のサイズがnm〜100nmオーダーであり、突起は、電気化学エッチング、電界イオンエッチング、熱処理、電界印加、ナノ加工等の方法又は幾つかの方法の組み合わせにより形成されてもよく、あるいは、例えば単結晶金属針先の上に1層の金属原子をめっきし、熱処理によって再構築して突起を形成する方法により形成されてもよい。
【0099】
2.針先を適切な真空環境内に置き、ただし、真空環境内に固定のガス元素を含み、具体的には下記の操作を含んでもよい。
【0100】
針先を真空チャンバに放置した後に真空引きを行い、その後、ガス(H
2、N
2、H元素含有ガスであってもよく、例えば、主にH
2又はH元素含有ガス)を導入し、ガス分子の数を調節することで、放出点の形成速度に影響を与えることができる。さらに、ガスは真空チャンバ中に残存したガス、例えばH
2、H
2O、CO、CO
2等であってもよい。チャンバの真空度を10
−3Pa未満とすべきであり、好ましくは、真空度を10
−6Pa未満としてもよい。
【0101】
3.バイアスを印加する前に針先の温度を調整することができる。針先温度を1000K未満とすべきであり、好ましくは、低温を150K未満とし、高温を500〜800Kの範囲とすべきである。針先温度が1000K超である場合、形成された放出点が除去されてしまう。表1は、放出点の形成条件を示している。
【0103】
例えば、針先温度≦1000Kの場合、圧力≦10
−3Pa、あるいは、500K≦針先温度≦800Kの場合、圧力≦10
−6Pa、あるいは、針先温度≦150Kの場合、圧力≦10
−6Paである。放出点形成温度及び動作温度が低いため、電子源構造が変わらず、動作時に電子源構造が変わらず、印加電圧値が変わらない。
【0104】
4.針先にバイアスを印加する。電界の作用により、ガス分子と高電界強度構造(例えば突起)の表面の金属原子とを反応させ、表面に根を下ろした放出点を形成し、印加されるバイアスは正のバイアス又は負のバイアス、あるいは両者の組み合わせであってもよい。
【0105】
ただし、正のバイアスを印加する場合、印加される正のバイアスの電圧を電界蒸発の電圧よりも低くすべきであり、電界強度を1〜50V/nmとすべきである。負のバイアスを印加する場合、印加される負のバイアスを焼損電圧より低くすべきであり、電界強度を1〜30V/nmとすべきであり、さらに、負のバイアスを印加する場合に、電流が過大になることによる針先形状の変化又は焼損を避けるように電圧を早急に調節すべきであり、一般的に、針先の電流をmAオーダーより小さく制御すべきである。
【0106】
1つの具体的な実施形態において、負のバイアスの作用により放出点を形成する例で説明する。まず、予め処理された針先(例えば突起を有して表面が清潔である針先)を真空環境内に放置し、好ましくは、真空度が1E
−7Paである。針先の温度を調節し、針先の温度を1000K未満とすべきであり、針先の温度は、好ましくは150K未満の低温又は500〜800K範囲の高温であり、針先の温度が1000Kを超えた場合、形成された放出点が除去されてしまう。
【0107】
その後、針先に負のバイアスを印加し、電界の作用により、ガス分子又は針の表面に吸着されたイオンが針先の特定の領域に移動し続き、特定領域は高電界強度構造領域及び/又は反応活性の高い領域であってもよい。
【0108】
次いで、負のバイアスを一定値(例えば−3KV)に増加すると、ガス分子が針先の表面の金属原子(例えば、タングステン)と反応して放出点を形成し、微小な放出電流(例えば1μA未満)を生成し、放出点を形成し続けるにつれて、放出点の数が増加し続き、総放出電流が増大し続く(例えば1μA〜数十(tens of)μA)。
【0109】
その後、待ち続けたり電圧を調節したりして、放出電流が数百(hundreds of)μA〜1mAまで急激に増大し、針先の焼損を避けるように負のバイアスを早急に迅速に低減又は遮断する必要があり、一般的に、電流をmAオーダーよりも小さく制御し、負の高圧を複数回でゆっくり印加することにより、所望の放出電流を得る。
【0110】
なお、上述した負のバイアスの印加過程において、針先が
図3Aに示す突起構造(例えば針先に正のバイアスを印加して電界エッチングを行って得られたスーパー針構造であり、すなわち、針先に正のバイアスを印加したことがある)を含んでいれば、負のバイアスを一定値(例えば−1.2KV)に増加すると、ガス分子が針先の表面の金属原子(例えば、タングステン)と反応して放出点を形成し、微小な放出電流(例えば1μA未満)を生成する。電圧を高めることで放出点を持続的に形成し、放出電流が数十(tens of)μA(例えば30μA)に増大することができる。その後、待ち続けたり電圧を高めたりして、電界放出点を持続的に形成する。電界放出点の数が徐々に多くなり、総放出電流が徐々に増大する。ただし、突起構造は針先に正のバイアスを印加して電界エッチングを行って得られたスーパー針構造であり、電界エッチングの電圧が一致している場合、放出電流の電圧に一致性を有させることができ、例えば電界エッチングの電圧が+8KVであり、突起が形成されると、電流を安定的に放出する電圧が−1KVである。
【0111】
図6を参照して、W針先(111)の突起の清潔表面に放出点を形成する過程を以下のように示す。針先温度が〜50Kであり、真空度が10E
−7Paであり、針先に負のバイアスを印加し、W針先(111)の突起の清潔表面の電界放出パターンを
図6aに示し、測定を維持し、電界の作用により、ガス分子が突起位置へ移動する。例えば
図6a〜6fに示すように、ガス吸着により、電界放出パターンが暗くなり続いて最後に完全に消えた。負のバイアスを維持し続けて、一定の電界作用により、ガス分子が突起表面の金属原子と反応し、表面に根を下ろした放出点を形成する。
【0112】
もう1つの具体的な実施形態において、正のバイアスの作用により放出点を形成する例で説明する。まず、予め処理された針先を真空環境内に放置し、好ましくは、真空度が1E
−7Paである。針先は清潔表面を有し、針先の温度を調節し、針先温度を1000K未満とすべきであり、針先温度が1000Kを超えた場合、形成された放出点が除去されてしまう。
【0113】
その後、針先に正のバイアス(例えば+8KV)を印加し、所定時間(例えば2分間)維持する。正のバイアスの値を電界蒸発電圧よりも小さくすべきである。電界の作用により、ガス分子が針先の特定領域へ移動し続き、反応して反応生成物を放出点として形成し、正のバイアスと負のバイアスとは果たす作用が同じであり、いずれも一定の電界強度を形成するためである。ただし、正のバイアスの値を調節したり維持時間を調節したりすることで形成する放出点の数を調節することができる。
【0114】
図7は、本公開の実施形態に係る正のバイアスを印加して放出点を形成する過程の概略図を模式的に示す。
【0115】
図6を参照して、正のバイアスを印加する場合、
図6aに示す清潔表面の放出パターンと
図6a〜6fに示す清潔表面の放出パターンが暗くなる過程は観察できない可能性があり、
図6g〜6lに示す放出点の形成過程しか観察できない。
図7に示すように、例えば
図3Aに示す突起構造の表面に放出点を形成する実施形態において、正のバイアスを印加した後、放出点を直接に形成する。使用時に、針先に負のバイアスを印加し、一定の値(例えば−1.2KV)まで印加すると、形成された電界放出点が電流を放出することとなる。
【0116】
なお、電界放出点の形成過程において、電流がずっと非常に小さく制御され、かつ、蛍光体スクリーンが針先から非常に遠く離れて、真空度が非常に良いため、イオン衝撃による影響を排除することができる。また、正の高圧を印加することで同様に電界放出特性が同じ物質を形成することができ、この場合、放出電流が全くないので、これは、イオン衝撃による遊離状の原子レベル粒状物質が放出点の形成に参与しなかったことを説明している。放出点の形成過程において、ガス分子(例えばH
2)は吸着、電界下での解離を経て、さらに表面の金属原子(例えば、タングステン原子)と結合し、あるH‐W反応生成物(compound)を生成する。該反応生成物(compound)は、針先の表面と直接結合して、移動しないようであり、例えば、その他の針先のその他の位置にも類似する物質を形成することができるが、それが移動することなく、ずっと位置が安定した放出点である。一般的に、高真空の場合、電流が大きく、低真空の場合、最大放出電流が迅速に減衰する。
【0117】
図8は、本公開の実施形態に係る放出点の数と放出パターンの均一性との関係の概略図を模式的に示す。
【0118】
この図からわかるように、放出点の数と放出パターンの均一性とは対応関係があり、放出点が多ければ多いほど、放出パターンが均一となる。放出点の数を増加することで放出パターンの均一性を増加することができる。具体的には、突起のサイズを増加することで突起がより多くの放出点を収容可能となることができ、例えば、突起が同一表面積を有する場合、放出点の数が少ないと、放出電流が小さく、パターンが不均一である(
図8の左の図)が、放出点の数が多いと、放出電流が大きく、パターンが均一である(
図8の右の図)。
【0119】
本公開が提供する電子源の製造方法により製造される電子源は、形成した放出点は高い放出能を有し、放出点が小さく、エネルギー幅が小さく、安定的である利点を有し、ただし、単独の放出点がnm又はサブナノオーダーであり、形成した放出点の針先(The tip terminated by emission site)は電界放出電子源であり、電圧を調節することで電流の引出及び制御を行うことができる。例えば、単独の放出点の放出電流は30μA以上に到達可能であり、1つの集中する放出領域を形成すれば、放出パターンが一様に連続し、総電流が100μAオーダーに到達することができる。放出面積を増大すれば、mAオーダーの放出電流を実現することができる。異なる真空度下、異なる放出能を有する。
【0120】
さらに、大電流下、単独の放出点が同一位置で明滅する(繰り返して消えたり現れたりする)ので、放出点の数を増加することで電流の安定性を増加することができる。反応直後に形成された放出点の表面が清潔であり、ガスが吸着されておらず、最大放出能を有するが、動作を維持すると、ガスが放出点に吸着し続くので、放出能が低下し、ひいてはほとんど消える。このような特性は、不要な放出点(例えば、周囲の幾つかの放出点)の除去に用いることができるので、前記方法は、少なくとも1つの針先に1つ又は2つ以上の固定された放出点を形成した後、前記電子源に電界を印加することによってガス分子を放出点に吸着させ、少なくとも1つの放出点を除去する操作をさらに含んでもよい。例えば、前記電子源に電圧を印加することで電界を形成し、電界の作用によりガス分子を放出点に吸着させ、少なくとも1つの放出点に電流を放出させない(
図11に示す)。
【0121】
以上の例示は、高電界強度構造を有する電子源を例として説明したが、上記放出点の形成過程は、反応活性の高い領域を有する電子源にも適用可能であり、ここではその説明を省略する。
【0122】
図9は、本公開の実施形態に係る放出点の数を調節する概略図を模式的に示す。
【0123】
図9に示すように、突起のサイズを調節することで放出点の数を調節することができ、これは、突起がナノオーダーであり、放出点もナノオーダーであってもよく、それぞれの突起に収容可能な放出点の数が限られているので、小さい突起に形成可能な放出点の数が少なくなる(
図9の左の図)。針先の突起のサイズを増大すると、電圧を調節することでより多くの放出点を形成することにより、放出電流を増大することができる(
図9の右の図)。
【0124】
図10は、本公開の実施形態に係るビーム角を調節する概略図を模式的に示す。
【0125】
図10に示すように、その中、α及びβ、並びに、α1及びβ1はそれぞれビーム角を表し、h1及びh2はそれぞれ突起の高さを表す。基板のサイズ及び/又は突起のサイズを調整することでビーム角の大きさを調節することができる。例えば、突起のサイズが同じである場合、基板のサイズが小さければ小さいほど、ビーム角αが大きくなり、逆に、突起のサイズが同じである場合、基板のサイズが大きければ大きいほど、ビーム角βが小さくなる(
図10における上の2図)。さらに、基板のサイズが同じである場合、突起の高さh1が高ければ高いほど、ビーム角α1が大きくなり、逆に、突起のサイズが同じである場合、突起の高さh2が低ければ低いほど、ビーム角β1が小さくなる(
図10における下の2図)。
【0126】
以上より、基板のサイズを増大すること及び/又は突起の高さを低くすることにより、ビーム角を小さくすることができる。
【0127】
さらに、突起の形状を調節することで、放出電流の方向を変化させることができ、例えば、針先軸線と重ならない突起の放出電流の方向と、針先軸線と重なる突起の放出電流の方向とが異なるようにする。また、針先の突起及び基板の構造を(例えば、電界蒸発又は電界エッチングによって)制御することで、放出電流の電圧に一致性を有させることができる(例えば電界エッチングにより形成された突起は、エッチング電圧がV1±0.5KVであると、電流を安定的に放出する電圧がV2±0.1KVである)。
【0128】
図11は、本公開の実施形態に係る電子源の使用過程の概略図を模式的に示す。
【0129】
図11に示すように、電子源に負のバイアスを印加して電流を放出すると、針先の表面及び環境におけるガス分子が徐々に針先の表面に吸着して電子源の放出能を低下ひいてはほぼ消失させ(
図11の右の図)、このような特性は必要ではない放出点を除去するのに用いられることができる。放出点が針先の表面に固定され、かつ、放出点の消失温度が上記ガス分子の脱着温度よりも高いので、加熱により上記遊離状物質又はガス分子を針先の表面から脱離させ、さらに電子源の放出能を回復することができる。
【0130】
本公開のもう1つの態様は、上記の方法により製造された電子源と、冷却装置と、加熱装置と、ガス導入装置とを含む電子銃を提供する。ただし、前記電子源は電子を放出するためであり、前記冷却装置は前記電子源を冷却するためであり、前記電子源は電気絶縁性熱伝導体を介して前記冷却装置上に固定され、前記加熱装置は前記電子源の温度を調節するためであり、前記ガス導入装置は水素元素を含むガスを導入するためである。該電子銃の電子源の表面の放出点形成温度及び動作温度が低いため、動作時に電子源構造が変わらず、印加する電圧値が変わらず、電圧値もより安定的であるので、電子銃のデザインがよりコンパクトとなる。
【0131】
当業者であれば、たとえ本公開に明確に記載されていなくても、本公開の各実施形態および/または特許請求の範囲に記載の特徴に対してさまざまな組み合わせ及び/又は結合がなされ得ることを理解するであろう。特に、本公開の精神および教示から逸脱しない限り、本公開の各実施形態および/または特許請求の範囲に記載の特徴に対してさまざまな組み合わせおよび/または結合を行うことができる。これら組み合わせおよび/または結合は、全て本公開の範囲内に含まれる。
【0132】
以上、本公開の実施形態について説明したが、これら実施形態は目的を説明するためだけであり、本公開の範囲を限定することを意図しない。以上、様々な実施形態をそれぞれ説明したが、これは様々な実施形態における手段が有利に組み合わせて使用されないことを意味するのではない。本公開の範囲は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって限定される。本公開の範囲から逸脱しない限り、当業者は様々な変更及び変形を行うことができ、これら変更及び変形は、いずれも本公開の範囲内に含まれる。