(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961832
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】建設機械の車両後部を車両前部と関節接続するための関節継手/振り子式継手
(51)【国際特許分類】
E01C 19/26 20060101AFI20211025BHJP
E01C 19/28 20060101ALI20211025BHJP
B62D 53/00 20060101ALI20211025BHJP
B62D 53/02 20060101ALI20211025BHJP
B62D 12/02 20060101ALI20211025BHJP
B62D 7/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
E01C19/26
E01C19/28
B62D53/00 A
B62D53/02 Z
B62D12/02
B62D7/02
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2020-542226(P2020-542226)
(86)(22)【出願日】2019年6月24日
(65)【公表番号】特表2021-513015(P2021-513015A)
(43)【公表日】2021年5月20日
(86)【国際出願番号】EP2019066644
(87)【国際公開番号】WO2020007632
(87)【国際公開日】20200109
【審査請求日】2020年8月4日
(31)【優先権主張番号】102018116194.8
(32)【優先日】2018年7月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508123375
【氏名又は名称】ハム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】Hamm AG
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ゲルト・ケストラー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・レーバー
【審査官】
松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】
欧州特許出願公開第01111134(EP,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0210316(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第102010014811(DE,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0127828(US,A1)
【文献】
特開昭61−024674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/26
E01C 19/28
B62D 53/00
B62D 53/02
B62D 12/02
B62D 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械(10)、特にソイルコンパクタの車両後部(12)を車両前部(20)と関節接続するための関節継手/振り子式継手であって、前記関節継手/振り子式継手は、前記建設機械(10)の前記車両後部(12)に取り付けられるべき後側継手部(26)と、前記建設機械(10)の前記車両前部(20)に取り付けられるべき前側継手部(28)と、前記後側継手部(26)と前記前側継手部(28)とを関節式に連結する関節機構(25)と、を含んでおり、前記関節機構(25)は、前記車両後部(12)と前記車両前部(20)との間における操舵運動に対応する屈曲運動と、前記車両後部(12)と前記車両前部(20)との間におけるねじれ運動に対応する振り子運動とを実施するために、前記後側継手部(26)と前記前側継手部(28)とを連結し、前記関節機構(25)には、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する振り子運動を制限するために、振れ止め装置(48)が配設されており、前記振れ止め装置(48)は、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する第1の振り子運動方向における変位の際の、第1の最大振り子変位を設定するための第1の振れ止め(88)と、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する、前記第1の振り子運動方向とは反対の第2の振り子運動方向における変位の際の、第2の最大振り子変位を設定するための第2の振れ止め(86)とを含んでおり、前記第1の最大振り子変位と前記第2の最大振り子変位とは、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する振り子運動に関して、最大振り子変位領域を決定する関節継手/振り子式継手において、
前記前側継手部(28)の屈曲中立位置を始点とした、前記後側継手部(26)に対する屈曲振幅を増大させた屈曲運動を実施する際に、前記最大振り子変位領域が減少することを特徴とする関節継手/振り子式継手。
【請求項2】
前記屈曲中立位置を始点とした、屈曲振幅を増大させた屈曲運動を実施する際に、前記最大振り子変位領域が常に減少することを特徴とする、請求項1に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項3】
互いに対して前記屈曲中立位置に位置決めされた前記前側継手部(28)及び前記後側継手部(26)において、前記第1の最大振り子変位若しくは/及び前記第2の最大振り子変位が、振り子中立位置を始点として、8°から15°の範囲にあり、好ましくは約11.7°であること、又は/並びに、互いに対して前記屈曲中立位置に位置決めされた前記前側継手部(28)及び前記後側継手部(26)において、前記最大振り子変位領域が、20°から27°の範囲にあり、好ましくは約23.4°であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項4】
30°の操舵角に対応する、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する屈曲振幅において、前記第1の最大振り子変位若しくは/及び前記第2の最大振り子変位は、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する振り子中立位置を始点として、4°から11°の範囲にあり、好ましくは約7.6°であること、又は/並びに、30°の操舵角に対応する、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する屈曲振幅において位置決めされた前記前側継手部(28)及び前記後側継手部(26)の場合、前記最大振り子変位領域は、12°から19°の範囲にあり、好ましくは約15.2°であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項5】
前記関節機構(25)が、
−第1の継手ユニット(32)の領域において前記後側継手部(26)に関節接続され、第2の継手ユニット(34)の領域において前記前側継手部(28)に関節接続された連結部(30)と、
−前記後側継手部(26)から前記前側継手部(28)上に延在すべき後側継手支持部(35)と、前記前側継手部(28)から前記後側継手部(36)上に延在すべき前側継手支持部(36)と、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する間隔方向(A)において、前記第1の継手ユニット(32)と前記第2の継手ユニット(34)との間で、かつ、前記間隔方向(A)に直交して、前記第1の継手ユニット(32)及び前記第2の継手ユニット(34)に対して間隔を置いて、前記後側継手支持部(35)を前記前側継手支持部(28)と関節式に連結する第3の継手ユニット(38)と、
を含んでいることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項6】
前記第1の継手ユニット(32)又は/及び前記第2の継手ユニット(34)又は/及び前記第3の継手ユニット(38)が、玉継手として構成されていることを特徴とする、請求項5に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項7】
前記振れ止め装置(48)が、
−前記前側継手部(28)及び前記後側継手部(26)のうち一方の継手部に、2つの互いに背向するように方向付けられた振れ止め面(52、54)を有する、前記前側継手部(28)及び前記後側継手部(26)のうち他方の継手部上に延在すべき第1の振れ止め形体(50)と、
−前記他方の継手部に、前記一方の継手部上に延在すべき、前記第1の振れ止め形体(50)を2つの振れ止めフィンガー(72、74)でフォーク状に包囲する第2の振れ止め形体(68)と、
を含んでおり、前記振れ止めフィンガー(72、74)それぞれは、前記振れ止め面(52、54)のうち1つと向かい合い、前記振れ止め面と、振れ止め(86、88)を供給することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項8】
前記第1の振れ止め形体(50)が、前記一方の継手部から離れる方向に延在する棒状領域(56)と、前記棒状領域(56)の、前記一方の継手部から離れた端部領域において、前記棒状領域(56)に対して拡大されたヘッド領域(58)とを有しており、互いに背向するように方向付けられた前記振れ止め面(52、54)の互いに対する間隔は、前記ヘッド領域(58)において、前記棒状領域(56)におけるよりも、少なくとも部分的に大きいことを特徴とする、請求項7に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項9】
前記棒状領域(56)の少なくとも一部において、互いに背向するように方向付けられた前記振れ止め面(52、54)の互いに対する間隔が、略一定であるか、又は、棒状領域長手方向において、略一定の割合で変化することを特徴とする、請求項8に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項10】
前記ヘッド領域(58)では、互いに背向するように方向付けられた前記振れ止め面(52、54)の互いに対する間隔が、前記棒状領域(56)を始点として、最大間隔まで増大することを特徴とする、請求項8又は9に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項11】
前記他方の継手部から離れる方向における前記振れ止めフィンガー(72、74)の相互の間隔が、前記振れ止めフィンガー(72、74)の第1の延在領域(78、80)において増大し、前記振れ止めフィンガー(72、74)の前記第1の延在領域(78、80)に接続された第2の延在領域(82、84)において減少することを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項12】
前記屈曲中立位置を始点として、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する屈曲振幅の増大を伴って、前記第2の振れ止め形体(68)の前記振れ止めフィンガー(72、74)それぞれが、配設された前記振れ止め面(52、54)の、前記一方の継手部に近い領域において、前記第1の振れ止め形体(50)の前記振れ止め面(52、54)と、前記振れ止め(86、88)それぞれを供給するために協働すること、又は/及び、前記屈曲中立位置を始点として、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する屈曲振幅の増大を伴って、前記第2の振れ止め形体(68)の前記振れ止めフィンガー(72、74)それぞれが、前記振れ止めフィンガー(72、74)それぞれの前記他方の継手部に近い領域で、前記第1の振れ止め形体(50)の配設された前記振れ止め面(52、54)と、前記振れ止め(86、88)それぞれを供給するために協働していることを特徴とする、請求項7及び請求項11に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項13】
前記屈曲中立位置において、前記第2の振れ止め形体(68)の前記振れ止めフィンガー(72、74)それぞれが、前記振れ止めフィンガーの第1の延在領域(78、80)の範囲において、前記第1の振れ止め形体(50)の前記ヘッド領域(58)の範囲における配設された前記振れ止め面(52、54)と、前記振れ止め(86、88)それぞれを供給するために協働すること、又は/及び、30°の操舵角に対応する、前記前側継手部(28)の前記後側継手部(26)に対する屈曲振幅において、前記第2の振れ止め形体(68)の前記振れ止めフィンガー(72、74)それぞれが、前記振れ止めフィンガーの第2の延在領域(82、84)の範囲において、前記第1の振れ止め形体(50)の棒状領域(56)の範囲における配設された前記振れ止め面(52、54)と、前記振れ止め(86、88)それぞれを供給するために協働することを特徴とする、請求項11及び請求項12に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項14】
前記一方の継手部が前記前側継手部(28)であり、前記他方の継手部が前記後側継手部(26)であることを特徴とする、請求項7〜12のいずれか一項に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項15】
前記間隔方向(A)に直交する方向において、前記第1の振れ止め形体(50)と前記第2の振れ止め形体(68)とが、一方での第1の継手ユニット(32)及び第2の継手ユニット(34)と、他方での第3の継手ユニット(38)との間に配置されていること、又は/及び、前記間隔方向(A)に直交する方向(H)に関して、前記第1の振れ止め形体(50)の前記振れ止め面(52、54)が、側方において、互いから離れる方向に方向付けられていること、又は/及び、前記第2の振れ止め形体(68)の前記振れ止めフィンガー(72、74)が、前記第1の振れ止め形体(50)を、側方において、外側から包囲していることを特徴とする、請求項5、及び、請求項5を引用する限りにおいて請求項7〜14のいずれか一項に記載の関節継手/振り子式継手。
【請求項16】
車両後部(12)と、請求項1〜15のいずれか一項に記載の関節継手/振り子式継手(24)を用いて前記車両後部(12)に接続された車両前部(20)とを含む建設機械、特にソイルコンパクタ。
【請求項17】
前記車両後部(12)に、運転台(14)が設けられており、建設機械長手方向(B)において、前記運転台(14)が、前記関節継手/振り子式継手(24)に、少なくとも部分的に重なっていることを特徴とする、請求項16に記載の建設機械。
【請求項18】
前記車両前部(20)には、少なくとも1つの作業機器、好ましくは締固めローラ(22)が設けられていること、又は/及び、前記車両後部(12)には、駆動ユニット(16)が設けられていることを特徴とする、請求項16又は17に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械、特にソイルコンパクタの車両後部を車両前部と関節接続するための関節継手/振り子式継手に関するものであり、当該関節継手/振り子式継手は、建設機械の車両後部に取り付けられるべき後側継手部と、建設機械の車両前部に取り付けられるべき前側継手部と、後側継手部と前側継手部とを関節式に連結する関節機構と、を含んでおり、関節機構は、車両後部と車両前部との間における操舵運動に対応する屈曲運動と、車両後部と車両前部との間におけるねじれ運動に対応する振り子運動とを実施するために、後側継手部と前側継手部とを連結し、関節機構には、前側継手部の後側継手部に対する振り子運動を制限するために、振れ止め装置が配設されており、振れ止め装置は、前側継手部の後側継手部に対する第1の振り子運動方向における変位の際の、第1の最大振り子変位を設定するための第1の振れ止めと、前側継手部の後側継手部に対する第1の振り子運動方向とは反対の第2の振り子運動方向における変位の際の、第2の最大振り子変位を設定するための第2の振れ止めとを含んでおり、第1の最大振り子変位と第2の最大振り子変位とは、前側継手部の後側継手部に対する振り子運動に関して、最大振り子変位領域を決定する。
【背景技術】
【0002】
ソイルコンパクタとして構成された建設機械の車両後部を、締固めローラを有する車両前部と関節接続するための関節継手/振り子式継手は、特許文献1から知られている。当該関節継手/振り子式継手は、略プレート状に形成され、ソイルコンパクタの車両後部に取り付けられるべき後側継手部と、同様に略プレート状に形成され、ソイルコンパクタの車両前部に取り付けられるべき前側継手部とを有している。両方の継手部は、間隔方向において間隔を置いて、互いに向かい合っており、当該間隔方向に直交して、すなわちソイルコンパクタの略高さ方向において、当該継手部の上側領域で、連結部によって、互いに関節接続されている。当該連結部は、玉継手として構成された第1の継手ユニットの領域において、後側継手部と関節接続されており、同様に玉継手として構成された第2の継手ユニットの領域において、前側継手部と接続されており、従って、略水平方向に、ソイルコンパクタの略長手方向において延在している。間隔方向に直交して、すなわち高さ方向において、連結部の下側で、後側継手部に、後側継手支持部が設けられており、後側継手支持部は、前側継手部上に延在している。対応して、前側継手部には、後側継手部上に延在すべき前側継手支持部が設けられている。両方の継手支持部は、玉継手として構成された第3の継手ユニットを介して、互いに関節接続されている。
【0003】
この種類の関節継手/振り子式継手を用いて、運動学的に有利な方法で、車両後部と車両前部との間に、ソイルコンパクタの操舵のために、両方の継手部が、互いに対する屈曲運動を実施することが可能であるような接続が形成され、この屈曲運動は、車両前部と車両後部との間、又は、前側継手部と後側継手部との間での、屈曲運動を実施する際に空間内で、又は、車両後部に対して固定されていないが、基本的に略垂直に延在する操舵軸の周りにおける旋回に概ね対応する。地面の起伏の平坦化を可能にし、これによって、車両前部に設けられた締固めローラが、ソイルコンパクタの長手方向に対して横に、異なる負荷で、締固めされるべき地面に載置されることを回避するために、この既知の関節継手/振り子式継手は、さらに、車両前部と車両後部との間における振り子運動を可能にし、当該振り子運動は、車両前部の車両後部に対する、ソイルコンパクタの長手方向に延在する長手軸の周りにおける旋回に概ね対応しており、当該長手軸は、振り子運動の実施の際に、同様に、空間内で、又は、車両後部に対して固定されていない。この振り子運動は、ソイルコンパクタ自体のねじれにつながり、これによって、車両前部と車両後部とは、概ね互いから独立して、それぞれ地面の形状に適応できる。
【0004】
別の構造と、対応して別の運動学とを有する関節継手/振り子式継手は、特許文献2から知られている。この既知の関節継手/振り子式継手の場合、ソイルコンパクタの車両後部に設けられた後側継手部と、ソイルコンパクタの車両前部に設けられた前側継手部とは、垂直方向に対して傾斜し、車両後部に対して固定された屈曲軸の周りに旋回可能である。前側継手部は、屈曲軸の周りに旋回可能に、後側継手部に接続された第1の継手部部分と、車両前部に固定された第2の継手部部分とを含んでおり、第2の継手部部分は、略水平に延在し、従って、屈曲軸に対して90°とは異なる角度で配置された振り子軸の周りに、第1の継手部部分に対して旋回可能である。屈曲軸の周りに旋回可能に後側継手部と連結されている第1の継手部部分には、2つの旋回止めが設けられており、当該旋回止めは、前側継手部の第2の継手部部分に、それぞれ振れ止めを供給するために設けられた2つのストッパ対応部と協働する。前側継手部の両方の継手部部分が、互いに対して、ソイルコンパクタの車両前部と車両後部とが互いに対してねじられていない振り子中立位置にある場合、それぞれ互いに配設されたストッパ及びストッパ対応部とは、互いに対して同じ間隔で配置されており、これによって、振り子中立位置を始点として、前側継手部の両方の継手部部分は、各最大振り子変位に達する場合に、各ストッパが、配設されたストッパ対応部に接触し、さらなる振り子運動が許容されなくなるまで、あらゆる振り子運動方向において、同じ規模で、互いに対して旋回することができる。
【0005】
垂直方向に対して屈曲軸が傾斜していることによって、地面が完全に平坦であり、基本的に、車両前部と車両後部との間における振り子運動が不要である場合でも、締固めローラが、その全幅にわたって、一様に地面についていることを確実化するために、車両前部の車両後部に対する屈曲、すなわち、屈曲中立位置を始点とする、ソイルコンパクタの直進に対応する操舵運動の実施は、前側継手部と後側継手部との間の屈曲運動を、必然的に、前側継手部の第1の継手部部分と第2の継手部部分との間における旋回へと導く。この際、ストッパとストッパ対応部との一方の対は、互いに接近するが、ストッパとストッパ対応部との他方の対は、互いから離れる。この、屈曲運動又は操舵運動の実施の際に必然的に引き起こされる、前側継手部の第1の継手部部分と第2の継手部部分との間のねじれによって、すでに、当該振り子運動方向における最大振り子変位に到達するまで利用可能である旋回経路の一部がもらされているので、さらなる、例えば地面を通じて引き起こされる当該振り子運動方向における振り子運動に関しては、減少した残りの振り子変位のみが依然として利用可能であるが、逆の振り子運動方向における振り子運動に関しては、同程度に高められた残りの振り子変位が利用可能である。しかしながら、両方の最大振り子変位の間に供給され、両方の最大振り子変位によって決定される振り子変位領域は、不変のままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1111134号明細書
【特許文献2】欧州特許第2872379号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、建設機械、特にソイルコンパクタの車両後部を車両前部と関節接続するための関節継手/振り子式継手を設けることにあり、当該関節継手/振り子式継手によって、両方の継手部の、互いに対する過度の振り子運動に対する安全性が高められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、本課題は、建設機械、特にソイルコンパクタの車両後部を車両前部と関節接続するための関節継手/振り子式継手によって解決され、当該関節継手/振り子式継手は、建設機械の車両後部に取り付けられるべき後側継手部と、建設機械の車両前部に取り付けられるべき前側継手部と、後側継手部と前側継手部とを関節式に連結する関節機構と、を含んでおり、関節機構は、車両後部と車両前部との間における操舵運動に対応する屈曲運動と、車両後部と車両前部との間におけるねじれ運動に対応する振り子運動とを実施するために、後側継手部と前側継手部とを連結し、関節機構には、前側継手部の後側継手部に対する振り子運動を制限するために、振れ止め装置が配設されており、振れ止め装置は、前側継手部の後側継手部に対する第1の振り子運動方向における変位の際の、第1の最大振り子変位を設定するための第1の振れ止めと、前側継手部の後側継手部に対する第1の振り子運動方向とは反対の第2の振り子運動方向における変位の際の、第2の最大振り子変位を設定するための第2の振れ止めとを含んでおり、第1の最大振り子変位と第2の最大振り子変位とは、前側継手部の後側継手部に対する振り子運動に関して、最大振り子変位領域を決定する。
【0009】
この際、さらに、前側継手部の屈曲中立位置を始点とした、後側継手部に対する屈曲振幅を増大させた屈曲運動を実施する際、最大振り子変位領域が減少することが規定されている。
【0010】
特許文献2から知られた関節継手/振り子式継手の構造とは異なり、本発明に係る構造では、屈曲運動の実施の際、すなわち例えば建設機械の操舵運動の実施の際に、最大振り子変位に到達するまで依然として利用可能である残りの振り子変位が、屈曲運動によって必然的に誘発される振り子運動ゆえに減少しないか、又は、減少するだけではなく、最大振り子変位領域、すなわち両方の最大振り子変位の間における振り子経路も減少する。これによって、両方の継手部に連結されたシステム領域、すなわち、例えば建設機械の車両後部及び車両前部が、屈曲運動又は操舵運動と、この際に付加的に生じる振り子運動とを実施する際に、互いに接触せず、これによって起こり得る損傷が引き起こされないという安全性が増大する。
【0011】
一定の運動シーケンスにとって特に有利な態様では、屈曲中立位置を始点とした、屈曲振幅を増大させた屈曲運動を実施する際、最大振り子変位領域が常に減少することが提案される。これは、屈曲中立位置を始点として、すなわち、両方の継手部の互いに対する位置であって、両方の継手部が例えば本発明に係る関節継手/振り子式継手を備えた建設機械の直進の際に互いに対してとる位置を始点として、最大振り子変位領域が、屈曲振幅が増大する方向における運動の際に減少しない屈曲運動の領域は存在しないことを意味している。
【0012】
屈曲中立位置での位置決めの際、すなわち、例えば直進している建設機械において、過度に強く、損傷につながり得る振り子運動の危険は比較的少ないので、互いに対して屈曲中立位置に位置決めされた前側継手部及び後側継手部において、第1の最大振り子変位若しくは/及び第2の最大振り子変位が、振り子中立位置を始点として、8°から15°の範囲にあり、好ましくは約11.7°であること、又は/並びに、互いに対して屈曲中立位置に位置決めされた前側継手部及び後側継手部において、最大振り子変位領域が、20°から27°の範囲にあり、好ましくは約23.4°であることが提案される。
【0013】
建設機械の比較的大きい操舵角に対応する、比較的大きい屈曲振幅が存在する場合、本発明によると、過度に大きい振り子変位を回避するために、30°の操舵角に対応する、前側継手部の後側継手部に対する屈曲振幅において、第1の最大振り子変位若しくは/及び第2の最大振り子変位は、前側継手部の後側継手部に対する振り子中立位置を始点として、4°から11°の範囲にあり、好ましくは約7.6°であること、又は/並びに、30°の操舵角に対応する、前側継手部の後側継手部に対する屈曲振幅において位置決めされた前側継手部及び後側継手部の場合、最大振り子変位領域は、12°から19°の範囲にあり、好ましくは約15.2°であることが提案される。
【0014】
操舵運動学又は振り子運動学にとって特に有利な構成では、関節機構は、
−第1の継手ユニットの領域において後側継手部に関節接続され、第2の継手ユニットの領域において前側継手部に関節接続された連結部と、
−後側継手部から前側継手部上に延在すべき後側継手支持部と、前側継手部から後ろ側継手部上に延在すべき前側継手支持部と、前側継手部の後側継手部に対する間隔方向において、第1の継手ユニットと第2の継手ユニットとの間で、かつ、間隔方向に直交して、第1の継手ユニット及び第2の継手ユニットに対して間隔を置いて、後側継手支持部を前側継手支持部と関節式に連結する第3の継手ユニットと、
を含み得る。
【0015】
上述した3つの継手ユニットを有する関節継手/振り子式継手の構造では、特に、屈曲運動と振り子運動とが重なった場合に、継手ユニットのいずれにおいても、専ら、空間内で、又は、例えば車両後部に対して固定された旋回軸の周りでの旋回は生じないような運動学が形成される。このことを考慮するために、第1の継手ユニット又は/及び第2の継手ユニット又は/及び第3の継手ユニットが、玉継手として構成されていることが提案される。これは、このように構成された継手ユニットはいずれも、これによって連結された両方の部材又はアセンブリの、1つ以上の空間軸の周りでの旋回運動を許容し得るということを意味している。例えば、このような継手ユニットは、球関節及び球関節を受容するソケットを有する玉継手として構成されていてよい。このような玉継手の機能は、例えばカルダン継手によっても供給され得る。
【0016】
構造的に単純であるが、確実に作用する方法で、最大振り子変位領域の減少を伴う振り子運動を制限するための、本発明に係る機能を供給可能にするために、振れ止め形体が、
−前側継手部及び後側継手部の内一方の継手部に、2つの互いに背向するように方向付けられた振れ止め面を有する、前側継手部及び後側継手部の内他方の継手部上に延在すべき第1の振れ止め形体と、
−他方の継手部に、一方の継手部上に延在すべき、第1の振れ止め形体を2つの振れ止めフィンガーでフォーク状に包囲する第2の振れ止め形体と、
を含んでおり、各振れ止めフィンガーは、振れ止め面の内の1つと向かい合い、当該振れ止め面と、振れ止めを供給すること、が提案される。
【0017】
変化する屈曲振幅と共に対応して変化する、又は、適応する、両方の振れ止め形体の間の相互作用は、第1の振れ止め形体が、一方の継手部から離れる方向に延在する棒状領域と、棒状領域の、一方の継手部から離れた端部領域に、棒状領域に対して拡大されたヘッド領域とを有することによって得られ、互いに背向するように方向付けられた振れ止め面の互いに対する間隔は、ヘッド領域において、棒状領域におけるよりも、少なくとも部分的に大きく、好ましくは、棒状領域の少なくとも一部において、互いに背向するように方向付けられた振れ止め面の互いに対する間隔は、略一定であるか、又は、棒状領域長手方向において、略一定の割合で変化する。
【0018】
ヘッド領域では、好ましくは、互いに背向するように方向付けられた振れ止め面の互いに対する間隔は、棒状領域を始点として、最大間隔まで増大する。従って、これらの互いに背向するように方向付けられた振れ止め面は、それぞれカム面を形成しており、当該カム面は、当該面に接触する第2の振れ止め形体のカムと協働する。
【0019】
さらに、屈曲振幅に依存して変化する最大振り子運動領域を供給するために、他方の継手部から離れる方向における振れ止めフィンガーの相互の間隔は、振れ止めフィンガーの第1の延在領域において増大し、振れ止めフィンガーの第1の延在領域に接続された第2の延在領域において減少することが提案される。
【0020】
特に有利な態様では、振れ止め面は、そのそれぞれ配設された振れ止めフィンガーと協働しており、これによって、屈曲中立位置を始点として、前側継手部の後側継手部に対する屈曲振幅の増大を伴って、第2の振れ止め形体の各振れ止めフィンガーは、配設された振れ止め面の、一方の継手部に近い領域において、第1の振れ止め形体の当該振れ止め面と、各振れ止めを供給するために協働し、又は/及び、屈曲中立位置を始点として、前側継手部の後側継手部に対する屈曲振幅の増大を伴って、第2の振れ止め形体の各振れ止めフィンガーは、各振れ止めフィンガーの他方の継手部に近い領域で、第1の振れ止め形体の配設された振れ止め面と、各振れ止めを供給するために協働している。
【0021】
特に、屈曲中立位置において、第2の振れ止め形体の各振れ止めフィンガーが、その第1の延在領域の範囲において、第1の振れ止め形体のヘッド領域の範囲における配設された振れ止め面と、各振れ止めを供給するために協働すること、又は/及び、30°の操舵角に対応する、前側継手部の後側継手部に対する屈曲振幅において、第2の振れ止め形体の各振れ止めフィンガーが、その第2の延在領域の範囲において、第1の振れ止め形体の棒状領域の範囲における配設された振れ止め面と、各振れ止めを供給するために協働することが規定され得る。
【0022】
本発明に係る関節継手/振り子式継手の構造において、一方の継手部は前側継手部であり、他方の継手部は後側継手部であり得る。
【0023】
さらに、上述した3つの継手ユニットを有する関節継手/振り子式継手の構造において、両方の振れ止め形体の確実な協働に関して、一方の継手部は前側継手部であり、他方の継手部は後側継手部であることが提案される。
【0024】
本発明は、さらに、建設機械、特にソイルコンパクタに関するものであり、当該建設機械は、車両後部と、本発明に係る関節継手/振り子式継手を用いて車両後部と接続された車両前部と、を含んでいる。
【0025】
この際、車両後部には、運転台が設けられていてよく、運転台は、長手方向においてコンパクトな構造にするために、運転台が建設機械長手方向において関節継手/振り子式継手と少なくとも部分的に重なり、これによって、例えば概ね当該継手の上に位置決めされているように配置されていてよい。
【0026】
建設機械の車両前部には、例えば締固めローラ等の作業機器が少なくとも1つ設けられていてよい。前進のために、例えばディーゼル内燃機関等の駆動ユニットが、車両後部に設けられていてよい。本発明の原理は、例えばホイールローダー等の、ソイルコンパクタとは別の建設機械でも用いられ得ることが指摘される。
【0027】
以下に、添付の図面を用いて、本発明を詳細に説明する。示されているのは、以下の図である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】ソイルコンパクタとして構成された建設機械を示す側面図である。
【
図2】
図1に係る建設機械の関節継手/振り子式継手を示す斜視図である。
【
図3】前側継手部及び後側継手部の互いに対する中立位置における、
図2に係る関節継手/振り子式継手を示す上面図である。
【
図4】30°の操舵角及び0°の振り子角に対応する、前側継手部及び後側継手部の互いに対する位置決めに際する、
図3に対応する図である。
【
図5】0°の操舵角及び11.7°の振り子角に対応する、前側継手部及び後側継手部の互いに対する位置決めに際する、
図3に対応する図である。
【
図6】10°の操舵角及び10.8°の振り子角に対応する、前側継手部及び後側継手部の互いに対する位置決めに際する、
図3に対応する図である。
【
図7】20°の操舵角及び9.3°の振り子角に対応する、前側継手部及び後側継手部の互いに対する位置決めに際する、
図3に対応する図である。
【
図8】30°の操舵角及び7.6°の振り子角に対応する、前側継手部及び後側継手部の互いに対する位置決めに際する、
図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、ソイルコンパクタとして設計された建設機械が、全体として参照符号10で示されている。ソイルコンパクタ又は建設機械10は、車両後部12を含んでおり、車両後部12には、運転台14と駆動ユニット16とが設けられている。例えばディーゼル内燃機関等の駆動ユニット16によって、車両後部12の両側に設けられた動輪18が、回転するように駆動され、これによって、建設機械10は、略建設機械長手方向Bにおいて前進する。
【0030】
建設機械10は、さらに、車両前部20に設けられた締固めローラ22を包囲するフレーム23を有する車両前部20を含んでいる。締固めローラ22には、締固めローラ22内に配置された振動機構が配設されており、当該振動機構は、締固めローラ22に、締固めローラの回転軸周りの周方向において、周期的な振動トルクを与え、これによって、締固めローラ22の転動運動に、振動トルクによって引き起こされる交互の振動運動が重ねられる。代替的又は付加的に、締固めローラ22に、振動装置が配設されていてもよく、当該振動装置によって、締固めローラ22は、周期的に、建設機械10の高さ方向Hにおいて加速され、これによって、締固めローラ22の転動運動に、略高さ方向Hにおいて重ねられた周期的な往復加速が重ねられる。
【0031】
以下において詳細に記載される関節継手/振り子式継手24によって、車両後部12は、車両前部20と接続されている。関節継手/振り子式継手24は、車両前部20の車両後部12に対する、略高さ方向Hに延在する屈曲軸Kの周りでの屈曲を許容し、これによって、建設機械10が操舵される。さらに、関節継手/振り子式継手24は、略建設機械長手方向Bに延在し、従って、略水平に方向付けられた振り子軸Pの周りでの、車両前部20の車両後部12に対する移動を許容する。ここでは、すでに、関節継手/振り子式継手24の特別な構成ゆえに、屈曲軸K及び振り子軸Pは、いずれの軸の周りで、一方では操舵のために、他方では車両前部20と車両後部12との間におけるねじれの許容のために、運動が行われるのかを近似的にのみ示しているということが指摘される。実際には、この軸K及びPの位置は、車両後部12と車両前部20とが、互いに対して屈曲中立位置にあり、すなわち、建設機械10が一直線に、操舵角無しに走行すべきであり、車両後部12及び車両前部20が、一方では駆動される車輪18で、他方では締固めローラ22で、厳密に平坦な地面についており、従って、車両後部12と車両前部20とが、互いに対して、車両後部12と車両前部20との間に歪み、つまりねじれが存在しない振り子中立位置にもある状態にのみ当てはまる。屈曲中立位置又は振り子中立位置からの変位が生じると同時に、各軸が、空間内で、特に、車両後部12及び車両前部20に対しても変位する。
【0032】
図2は、関節継手/振り子式継手24を斜視図で示している。関節継手/振り子式継手24は、プレート状に設計された後側継手部26を含んでおり、関節継手/振り子式継手24は、後側継手部26と、車両後部12の前側かつ運転台14の下側に位置する領域において、例えばネジ接続によって固定される。関節継手/振り子式継手24は、さらに、例えばプレート状に形成された前側継手部28を含んでおり、前側継手部28は、間隔方向Aにおいて、後側継手部26に向かい合っている。車両後部12及び車両前部20が屈曲中立位置及び振り子中立位置に配置されている場合、この間隔方向Aは、例えば建設機械長手方向Bに相当する。
【0033】
間隔方向Aに直交するように方向付けられた高さ方向Hにおいて上側の領域には、後側プレート部分26と前側プレート部分28とが、全体として参照符号25で示された関節機構のロッド状又は棒状の連結部30によって、互いに関節接続されている。このために、連結部30は、第1の継手ユニット32の領域において、後側継手部26に関節式に連結されており、第2の継手ユニット34の領域において、前側継手部28に関節式に連結されている。両方の継手ユニット32、34のいずれも、連結部30の、後側継手部26又は前側継手部28に対する、屈曲中立位置及び振り子中立位置において略高さ方向に方向付けられて延在している各継手軸G
1又はG
2の周りでの旋回を可能にする。しかしながら、継手ユニット32、34は、連結部30の、さらなる継手軸の周りでの各継手部26、28に対する旋回も許容し、これによって、連結部30は、玉継手のように、少なくとも限られた旋回角領域において、任意の方向に、各継手部26又は28に対して旋回可能である。例えば、継手ユニット32、34は、玉継手として、各継手部26又は28に設けられた球関節と、連結部30に設けられたソケットとを有するように構成されていてよい。
【0034】
後側継手部26には、間隔方向Aにおいて、前側継手部28上に延在すべき後側継手支持部35が設けられている。対応して、前側継手部28には、間隔方向Aにおいて、後側継手支持部35を通じて、後側継手部26上に延在すべき前側継手支持部36が設けられている。第3の継手ユニット38を用いて、両方の継手支持部35、36と、従って、両方の継手部26、28とが、第3の継手軸G
3の周りに、互いに対して旋回可能であり、第3の継手軸G
3は、やはり、継手部26、28が屈曲中立位置及び振り子中立位置にある場合に、略高さ方向Hにおいて延在するように方向付けられていてよい。しかしながら、第3の継手ユニット38もまた、両方の継手支持部35、36の、略あらゆる任意の空間方向における、互いに対する旋回を許容しており、好ましくは同様に玉継手として構成されている。
【0035】
関節継手/振り子式継手24の屈曲運動と、従って、建設機械10の操舵運動とを引き起こすために、関節継手/振り子式継手24には、2つのピストン/シリンダユニット40、42が配設されている。ピストン/シリンダユニット40によって示されているように、例えばピストンロッド44が、前側継手部28に連結されていてよい一方で、シリンダ46は、車両後部12に連結されていてよい。両方のピストン/シリンダユニット40、42のピストンロッド44を外へ出す、又は、引っ込める際に、互いに調整することによって、関節継手/振り子式継手24の屈曲運動を引き起こすことが可能であり、その過程で、前側継手部28は、第3の継手ユニット38の領域において、後側継手部26に対して旋回し、この旋回運動は、両方の継手部26、28の高さ方向Hにおいて上側の領域において、連結部30によって誘導されており、連結部30は、この屈曲運動の過程で、各継手部26、28に対して旋回する。この運動の過程で、それぞれ操舵角を設定するために、車両前部20が車両後部12に対して屈曲するだけではなく、車両前部20と車両後部12との間での、関節継手/振り子式継手24の領域において、高さ方向における屈曲運動も行われ、この中央の領域において、建設機械10は、それぞれ規定された操舵角に対応する規模で持ち上げられる。これは、位置エネルギーが増大した状態であるので、建設機械10は、自力で、つねに、両方の継手部26、28が、建設機械10の直進に対応する屈曲中立位置に、互いに対して位置決めされている状態であろうと試みる。
【0036】
ソイルコンパクタ10が、平らではない地面の上を移動する場合、両方のピストン/シリンダユニット40、42の関節接続によっても、前側継手部28だけではなく車両後部12においても、前側継手部28は、やはり、概ね第3の継手ユニット38の領域において、後側継手部26に対して旋回し、この旋回は、振り子軸Pの周りでの旋回に概ね相応し、この際に生じる前側継手部28の移動は、その上側領域において、やはり連結部30によって誘導されている。このような振り子運動の場合、建設機械10は、それ自体がねじられ、これによって、一方では、駆動される車輪18が、他方では、締固めローラ22が、均等な負荷で、対応して、平らではない地面につくことができる。
【0037】
このような運動の過程で、車両前部20のフレーム23は、車両前部20に建設機械長手方向Bにおいて、部分的にも重なっている運転台14に接近する。このとき、特に操舵運動を実施する際にも、さらに強く運転台14の下側で移動するフレーム23が、運転台14又は車両後部12の別の領域に接触することを排除するために、関節継手/振り子式継手24内には、全体として参照符号48で示された振れ止め装置が設けられている。その機能については、以下において、両方の継手部26、28の互いに対する様々な相対位置を可視化した
図3から
図8も用いて説明する。この際、
図3から
図8は、関節継手/振り子式継手を、それぞれ上からの図で、連結部30が取り外された状態で示していることが指摘される。
【0038】
振れ止め装置48は、前側継手部28において、前側継手部28から後側継手部26上に延在すべき第1の振れ止め形体50を含んでいる。この第1の振れ止め形体50は、棒状又はプレート状に形成されており、高さ方向Hに関して、側方に、互いから離れるように方向付けられた2つの振れ止め面52、54を有している。この際、第1の振れ止め形体50は、第2の継手ユニット34も設けられている領域を始点として、棒状領域56を有するように構成されており、当該棒状領域56において、両方の振れ止め面52、54は、互いに対して概ね均等な間隔を有しており、これは、最終的には、棒状領域56が、その長手延在方向に対して横に、第2の継手ユニット34から離れる方向において、略一定の幅を有しているということを意味している。この際、図からは、高さ方向Hにおいて、すなわち概ね棒状領域長手方向に直交して、振れ止め面52、54は、上から下へ向かう方向において離れて延在するように配置され得ることが認識される。さらに、本発明では、例えば、約45mmから約65mm、好ましくは約55mmである、棒状領域長手方向における、すなわち継手ユニット34から離れる方向における棒状領域56の長さに関して、振れ止め面52、54の相互の間隔が、5mm以上、すなわち約10%以上は変化しない場合、棒状領域56は、一定の幅、又は、略一定の幅を有すると見なされ得ることが強調される。これは、相互の間隔が均等に増大していくとして、略一定の相互の間隔を有すると見なされる両方の振れ止め面52、54が、約3°までの開口角を互いに対して形成することが可能であるが、しかしまた、例えば、互いに対して正確に同じ間隔を保持するようにも調整され得ることを意味している。基本的に、両方の振れ止め面52、54もまた、上述の描写とは異なり、例えば継手ユニット34から離れる方向において、好ましくは略一定の割合で増加する相互の間隔を有し得るかもしれないので、この棒状領域56又は少なくとも棒状領域56の一部では、両方の振れ止め面52、54は、概ね湾曲せずに延在しており、棒状領域56又は棒状領域56の当該部分は、やはり、約45mmから約65mmの範囲、好ましくは約55mmの長さを有し得る。
【0039】
この棒状領域56には、棒状領域56に対して拡大されたヘッド領域58が接続されており、ヘッド領域58で、第1の振れ止め形体は、前側継手部28又は第2の継手ユニット34に対しても間隔を有して終端している。棒状領域56からヘッド領域58への移行部において、振れ止め面52、54の相互の間隔は、ヘッド領域の最大幅の領域、従って、振れ止め面52、54の最大間隔の領域まで、徐々に増大し、振れ止め面52、54は、ヘッド領域58の棒状領域56に背向する端部において、互いの内に移行するか、又は、互いに接続される。第1の振れ止め形体の十分な安定性を保証するために、棒状領域56又はヘッド領域58は、プレート状の支持領域60によって格納されているか、又は、支持領域60と好ましくは一体的に構成されているので、ヘッド領域58と、第1の振れ止め形体50が第2の継手部28に接続されている接続領域62との間には、棒状領域56の両側において、かつ、プレート状の支持領域60の上方に、係合空洞64、66が形成されている。
【0040】
振れ止め装置48は、さらに、後側継手部26において、第2の振れ止め形体68を含んでいる。第2の振れ止め形体68もまた、概ねプレート状に形成されており、第2の振れ止め形体68が第1の継手部26に接続されている接続領域70を始点として、第1の振れ止め形体50を高さ方向Hに関して側方で、又は、両側において外側から包囲する2つの振れ止めフィンガー72、74を有している。振れ止めフィンガー72、74の間には、受容空間76が形成されており、受容空間76内には、第1の振れ止め形体50が、その棒状領域56又はそのヘッド領域58で係合するように位置決めされている。
【0041】
振れ止めフィンガー72、74は、その相互の間隔が、各第1の延在領域78、80において増大し、当該領域に接続された第2の延在領域82、84において減少するように形成されている。これは、接続領域70を始点として、振れ止めフィンガー72、74の相互の間隔によって決定される空間領域76の幅が、まず第1の延在領域78、80の領域において増大した後、第2の延在領域82、84の領域において減少し、これによって、その後、両方の振れ止めフィンガー72、74の丸くされた端部の領域において再び増大するということも意味している。
【0042】
振れ止め装置48、又は、その両方の振れ止め形体50、68によって、前側継手部28は、限られた程度でのみ、後側継手部26に対する振り子運動を実施し得ることが保証される。この限られた程度、すなわちあらゆる振り子運動方向において、最大の振り子変位は、さらに、屈曲振幅の増大、すなわち車両前部20の車両後部12に対する操舵角の増大と共に、好ましくはつねに減少する。これについては、以下に、
図3から
図8を用いて説明する。
【0043】
図3は、両方の継手部26、28と、従って車両後部12と車両前部20とが、互いに対して屈曲中立位置にあり、かつ、振り子中立位置にもある状態を示しており、これは、建設機械10が、厳密に平らな地面を直進すべきであることを意味している。
図3からは、第1の振れ止め形体50は、概ね中心で、受容空間76に係合しており、従って、両方の振れ止め面52、54が、振れ止め面52、54にそれぞれ向かい合い、これによってそれぞれ振れ止め86又は88を供給している振れ止めフィンガー72、74に対して、同じ間隔を有することが認識される。
【0044】
図4は、30°の操舵角をもたらすために、前側継手部28が後側継手部26に対して屈曲した状態を示している。この状態においては、振り子変位は存在しないので、ヘッド領域58は、依然として、両方の振れ止めフィンガー72、74の間の略中央に位置している。振れ止め86、88は、振り子変位が生じないので、有効にはならない。
【0045】
図5は、屈曲中立位置において、つまり操舵角が0°の場合に、前側継手部28が、後側継手部26に対して、第1の最大振り子変位を有する状態にある関節継手/振り子式継手24を示している。この際、第1の最大振り子変位は、第1の振り子運動方向における最大振り子変位に相当し、この場合、第1の振れ止め形体50は、その振れ止め面54で、振れ止めフィンガー74と接触しており、従って、振れ止め88は有効である。対応して、反対方向、すなわち第2の振り子運動方向における変位の場合、振れ止め面52は、第2の最大振り子変位に到達した際に、振れ止めフィンガー72と接触し、これによって、振れ止め86が有効になる。
【0046】
図5から認識されることには、操舵角が0°の状態、すなわち、両方の継手部26、28が、互いに対して、その屈曲中立位置にある状態において、第1の振れ止め形体50は、略最大の程度で、受容空間76に係合しており、従って、第1の最大振り子変位に達した場合に、ヘッド領域58は、振れ止め面54のそこに延在する部分で、振れ止めフィンガー74の第1の延在領域80に接している。
【0047】
図6は、やはり、第1の振り子変位が最大の場合に、10°の操舵角につながる、両方の継手部26又は28の、互いに対する屈曲振幅が存在する状態を示している。認識されることには、この状態において、ヘッド領域58は、振れ止め面54のヘッド領域58上に設けられた部分では、もはや、振れ止めフィンガー74に接しておらず、ヘッド領域58は、その第2の延在部分84、特にその丸められた端部領域で、振れ止め面54の棒状領域56内に延在する部分に接している。これによって、一方では、振れ止めフィンガー74と第1の振れ止め形体50との間における相互作用の領域が、第1の延在領域80から、振れ止めフィンガー74の第2の延在領域84に移動しており、他方では、第1の振れ止め形体50においては、振れ止め88が有効である領域が、屈曲振幅がより少ないか、又は、屈曲振幅が存在しない(例えば操舵角が0°)状態に関して、第2の継手部28又は第1の振れ止め形体50の接続領域62に近づくように動かされている。これによって、互いに相互作用の関係にある振れ止め面54及び配設された振れ止めフィンガー74の形状ゆえに、
図5に示された状態に関する第1の最大振り子変位は減少する。例えば
図5の状態において、第1の最大振り子変位は、
図3の振り子中立位置を始点として、例えば11.7°の振り子角に相当し得る一方で、
図6に示された状態では、操舵角が10°の場合、第1の最大振り子変位は、すでに約10.8°の値まで減少し得る。構造が左右対称なので、すでに示したように、反対方向への変位の場合、第2の最大振り子変位も設けられており、それぞれ設けられた屈曲振幅に関して、第1の最大振り子変位と第2の最大振り子変位とが、共に、最大振り子変位領域を決定しており、当該最大振り子変位領域は、やはり、左右対称の構造を考慮して、それぞれ第1の最大振り子変位又は第2の最大振り子変位の二倍に相当し得る。従って、
図5に示された状態では、例えば約23.4°であり得る最大振り子変位領域が存在する。この最大振り子変位領域は、操舵角が10°の場合、又は、両方の継手部26、28の互いに対する対応する屈曲振幅の場合、すでに、例えば約21.6°の値に減少している。
【0048】
図7に示した、20°の操舵角に相当する、後側継手部26と前側継手部28との間の屈曲振幅の状態に移行する際、各振れ止めフィンガー72、74が、再び振れ止めフィンガー74の、
図7に示された変位状態において、配設された振れ止め面52又は54と相互作用にある領域は、前側継手部28又は第1の振れ止め形体50の接続領域62のより近くに変位する。これは、第1の最大振り子変位、又は、左右対称の構造ゆえに、第2の最大振り子変位の、例えばそれぞれ9.3°までのさらなる減少につながり、従って、18.6°の最大振り子変位領域につながる。
【0049】
最後に、
図8は、前側継手部28と後側継手部26との間における屈曲振幅が、30°の操舵角に対応する状態を示している。この状態においては、振り子運動を制限するために、各振れ止めフィンガー72又は74が、接続領域62又は前側継手部28により近い領域において、配設された振れ止め面、ここでは振れ止め面54に接触する。この相互作用によって、振れ止め88は、今や、約7.6°の第1の最大振り子変位又は第2の最大振り子変位において有効となり、これによって、30°の操舵角に関して、約15.2°の最大振り子変位領域が生じる。
【0050】
上述の記載が示すように、
図2に示された関節継手/振り子式継手の態様では、振れ止め装置48の両方の振れ止め形体50、68の特別な態様ゆえに、操舵運動と、そのために引き起こされる両方の継手部26、28の互いに対する屈曲とを実施する際に、車両後部12に対する車両前部20の振り子運動のために全体として利用可能である振り子変位領域は、両方の最大振り子変位の間を限定しており、漸次的に減少する。これは、車両前部20、特に車両前部のフレーム23と、車両後部12、特に車両後部の運転台14との間における接触の発生に対する安全性の明らかな増大につながる。この機能は、第1の振れ止め形体の振れ止め面52、54が、カム面として、有効になることによって得られ、振れ止め面52、54は、第2の振れ止め形体68の振れ止めフィンガー72、74によって接触され、振れ止めフィンガー72、74と共に、それぞれ、振れ止め86、88を形成する。一方での振れ止め面52、54と、他方での振れ止めフィンガー72、74とが、互いに相互作用の関係にあり、従って、各操舵角に関して、振れ止めとして有効になる領域は、操舵角、又は、両方の継手部26、28の互いに対する屈曲振幅に依存して変化し、両方の振れ止め形体50、68の
図3から
図8に示されている形状によって、最大振り子変位領域の減少につながる相互作用がもたらされる。
【符号の説明】
【0051】
10 建設機械
12 車両後部
14 運転台
16 駆動ユニット
18 動輪、車輪
20 車両前部
22 締固めローラ
23 フレーム
24 関節継手/振り子式継手
25 関節機構
26 後側継手部、後側プレート部分、第1の継手部
28 前側継手部、前側プレート部分、第2の継手部
30 連結部
32 第1の継手ユニット
34 第2の継手ユニット
35 後側継手支持部
36 前側継手支持部
38 第3の継手ユニット
40、42 ピストン/シリンダユニット
44 ピストンロッド
46 シリンダ
48 振れ止め装置
50 第1の振れ止め形体
52、54 振れ止め面
56 棒状領域
58 ヘッド領域
60 支持領域
62 接続領域
64、66 係合空洞
68 第2の振れ止め形体
70 接続領域
72、74 振れ止めフィンガー
76 受容空間
78、80 第1の延在領域
82、84 第2の延在領域
86 第2の振れ止め
88 第1の振れ止め
A 間隔方向
B 建設機械長手方向
G
1、G
2、G
3 継手軸
H 高さ方向
K 屈曲軸
P 振り子軸