特許第6961852号(P6961852)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ DMG森精機株式会社の特許一覧

特許6961852工作機械システム、情報処理装置および工作機械
<>
  • 特許6961852-工作機械システム、情報処理装置および工作機械 図000002
  • 特許6961852-工作機械システム、情報処理装置および工作機械 図000003
  • 特許6961852-工作機械システム、情報処理装置および工作機械 図000004
  • 特許6961852-工作機械システム、情報処理装置および工作機械 図000005
  • 特許6961852-工作機械システム、情報処理装置および工作機械 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6961852
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】工作機械システム、情報処理装置および工作機械
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4067 20060101AFI20211025BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20211025BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G05B19/4067
   B23Q15/00 D
   G05B19/4093 H
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2021-64425(P2021-64425)
(22)【出願日】2021年4月5日
【審査請求日】2021年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩也
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4341118(JP,B2)
【文献】 特開2006−227894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 15/00 − 15/28
G05B 19/18 − 19/416
G05B 19/42 − 19/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を取り付け可能な工具取付部と、
工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述がある加工プログラムを実行し、前記工具取付部を移動させる数値制御部と、
加工が中断したか否か、または、加工中に前記工具取付部に取り付けられた工具が工具寿命に到達するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、加工が中断したと判定した場合、または、加工中に前記工具寿命に到達すると判定した場合に、前記中断または前記到達の直前に通過した前記加工再開位置から、加工を再開すべきことを報知する報知部と、
を備え
前記加工再開位置に工具が到達すると、前記工具の残寿命と、次の前記加工再開位置まで加工するための必要寿命とを比較し、前記残寿命の方が短い場合には、工具の交換処理を行う工作機械。
【請求項2】
前記加工プログラムは、加工中の加工負荷の変化に基づいて、前記加工再開位置が追加されたプログラムである、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
情報処理装置と工作機械とを備えた工作機械システムであって、
前記情報処理装置は、
加工開始直前の工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述を追加した加工プログラムを生成する加工プログラム更新部を有し、
前記工作機械は、
前記加工プログラム更新部で更新された加工ブログラムを解釈する解釈部と、
前記加工再開位置において、加工が中断したか否か、または、加工中に加工に用いられた工具が工具寿命に到達するか否かを判定する判定部と、
前記中断または前記到達の直前に通過した前記加工再開位置から、加工を再開すべきことを報知する報知部と、
を有し、
前記加工プログラム更新部は、工具交換位置から前記加工再開位置への工具の移動に干渉が生じないかチェックし、干渉が生じる前記加工再開位置を前記加工プログラムへの追加記述から排除する工作機械システム。
【請求項4】
工作機械において加工が中断した場合、または、加工中に工具寿命が満了する場合に、前記中断または前記満了の直前に通過した加工再開位置から、加工を再開すべきことを工作機械の使用者に報知するため、工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述を追加した加工プログラムを生成する加工プログラム更新部を備え
前記加工再開位置に対して、工具交換位置から前記加工再開位置への工具の移動に干渉が生じないかチェックし、干渉が生じる前記加工再開位置を排除する情報処理装置。
【請求項5】
前記加工プログラム更新部は、
工具交換すべきか否かを判定するチェックルーチンを、前記加工再開位置において呼び出し、
工具交換動作のサブルーチンを、工具交換すべきと判断した場合に呼び出すように、前記加工プログラムを更新する請求項に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械システム、情報処理装置および工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、加工を中断した場合、中断点よりも少し前の状態から切削を再開させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−227894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、退避後に中断したブロックの数ブロック前から再開するため、切削加工の途中位置からの再開になることがあり、切削精度が低下していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明にかかる工作機械は、
工具を取り付け可能な工具取付部と、
工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述がある加工プログラムを実行し、前記工具取付部を移動させる数値制御部と、
加工が中断したか否か、または、加工中に前記工具取付部に取り付けられた工具が工具寿命に到達するか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、加工が中断したと判定した場合、または、加工中に前記工具寿命に到達すると判定した場合に、前記中断または前記到達の直前に通過した前記加工再開位置から、加工を再開すべきことを報知する報知部と、
を備え
前記加工再開位置に工具が到達すると、前記工具の残寿命と、次の前記加工再開位置まで加工するための必要寿命とを比較し、前記残寿命の方が短い場合には、工具の交換処理を行う
【0006】
上記課題を解決するため、本発明にかかるシステムは、
情報処理装置と工作機械とを備えた工作機械システムであって、
前記情報処理装置は、
加工開始直前の工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述を追加した加工プログラムを生成する加工プログラム更新部を有し、
前記工作機械は、
前記加工プログラム更新部で更新された加工ブログラムを解釈する解釈部と、
前記加工再開位置において、加工が中断したか否か、または、加工中に加工に用いられた工具が工具寿命に到達するか否かを判定する判定部と、
前記中断または前記到達の直前に通過した前記加工再開位置から、加工を再開すべきことを報知する報知部と、
を有し、
前記加工プログラム更新部は、工具交換位置から前記加工再開位置への工具の移動に干渉が生じないかチェックし、干渉が生じる前記加工再開位置を前記加工プログラムへの追加記述から排除する工作機械システムである。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明にかかる装置は、
工作機械において加工が中断した場合、または、加工中に工具寿命が満了する場合に、前記中断または前記満了の直前に通過した加工再開位置から、加工を再開すべきことを工作機械の使用者に報知するため、工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述を追加した加工プログラムを生成する加工プログラム更新部を備え、
前記加工再開位置に対して、工具交換位置から前記加工再開位置への工具の移動に干渉が生じないかチェックし、干渉が生じる前記加工再開位置を排除する情報処理装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加工が中断した場合、効果的に加工を再開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る工作機械システムの構成を示すブロック図である。
図2】第2実施形態に係る工作機械システムの構成を示すブロック図である。
図3】第2実施形態に係る情報処理装置の処理を説明する図である。
図4】第2実施形態に係る情報処理装置の処理を説明する図である。
図5】第2実施形態に係る工作機械での処理の処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての工作機械システム100について、図1を用いて説明する。工作機械システム100は、情報処理装置101と工作機械102とを含む。
【0012】
情報処理装置101は、加工プログラム110を解析し、加工開始直前の工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述を追加する加工プログラム更新部111を有する。
【0013】
工作機械102は、加工プログラム更新部111で更新された加工ブログラム120を解釈し、加工が中断した場合、または、加工中に工具寿命に到達する場合に、加工中断または工具寿命到達の直前に通過した加工再開位置から、加工を再開することを報知する報知部121を有する。
【0014】
このように、上記工作機械では、加工が中断した場合、効率的に加工を再開すべき位置を報知するため、加工中断後に、効果的に加工を再開することができる。また、加工中に工具寿命に到達する場合にも、効率的に加工を再開すべき位置を報知するため、工具を寿命まで効果的に使用することができる。
【0015】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る工作機械システム200について、図2以降を用いて説明する。図2は、本実施形態に係る工作機械システム200の全体構成について説明するための図である。
【0016】
工作機械システム200は、情報処理装置201とCNC(Computerized Numerical Control)工作機械202とを含む。
【0017】
CNC工作機械202としては、例えば、ワークに付加加工(Additive Manufacturing)を加える機械、ワークに除去加工(Subtractive Manufacturing)を加える機械、レーザなどの光を照射して加工する機械などが挙げられる。具体的には、旋盤、ボール盤、中ぐり盤、フライス盤、歯切り盤、研削盤、多軸加工機、レーザ加工機、積層加工機等のように、NCプログラムに基づいて数値制御され、金属、木材、石材、樹脂等のワークに対して、旋削、切断、穿孔、研削、研磨、圧延、鍛造、折り曲げ、成形、微細加工、積層加工等の各種の加工を施す機械であればよい。さらに、工作機械は計測機能を有するものでもよく、タッチプローブやカメラ等の計測器を用いてワークの寸法等を計測可能に構成されたものでもよい。
【0018】
CNC工作機械202は、例えば3軸加工機であり、機械要素として、主軸モータ221および送り軸モータ222を含む。主軸モータ221は、工具を回転させ、送り軸モータ222は、ボールねじ等を介してテーブルをX,Y軸方向に直線移動させたり、工具またはテーブルをZ軸方向に直線移動させたりする。CNC工作機械202はもちろん5軸加工機でもよい。
【0019】
数値制御装置220は、CNC工作機械202における加工を数値制御する装置であり、NCプログラム250を解釈する解釈部としてのNCインタプリタ221と各種コントローラに制御指令を出力する指令出力部222とを含む。
【0020】
主軸モータサーボコントローラ223は、指令出力部222からの制御指令に基づいて主軸モータ226を制御する。送り軸モータサーボコントローラ224は指令出力部222からの制御指令に基づいて送り軸モータ227を制御する。
【0021】
数値制御装置220は、更新されたNCプログラム250を解釈し、プログラム中に埋め込まれたタグ(コメントやサブルーチン呼び出しのGコード)を認識して、工作機械202に特殊な制御指令を出力する。
【0022】
情報処理装置201は、NCシミュレータであり、CAM240から取得したCLデータ270およびCAM240が生成した加工プログラムとしてのNCプログラム230に応じて加工シミュレーションを行い、数値制御装置220で用いられる加工プログラムとしてのNCプログラム230を更新する。情報処理装置201は、加工シミュレーション部211と、加工再開位置判定部212と、NCプログラム更新部213とを含む。
【0023】
CAM240は、メインプロセッサ部241とポストプロセッサ部242とを有する。メインプロセッサ部241は、CAD(Computer-Aided Design)260から取得した形状データに基づいてCLデータ243を生成する。ポストプロセッサ部242は、CLデータ243からNCプログラム230を生成する。NCプログラム230は、CLデータ270とともに、情報処理装置201に送られる。
【0024】
加工シミュレーション部211は、CAM240から取得したCLデータ270およびCAM240において生成されたNCプログラム230に基づいて加工シミュレーションを行う。加工シミュレーション部211は、図3に示すようにさらに、以下の処理を行う。
【0025】
加工パス(CLデータ)301を切削パス302と非切削パス303に分割する。材料モデル、工具モデル、CLデータより、切削シミュレーション機能で、切削部(太線302)と切削していない部分(細線303)を解析し、非切削から切削に切り替わる点を加工再開位置304、305として認識する。
【0026】
NCプログラム更新部213は、加工開始直前の工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述を追加した加工プログラムを生成する。
【0027】
工作機械202において加工が中断した場合、または、加工中に工具寿命が満了する場合に、中断または満了の直前に通過した加工再開位置から、加工を再開すべきことを工作機械の使用者に報知する。
【0028】
NCプログラム更新部213は、加工シミュレーションにおいて、工具軌跡中に加工箇所と非加工箇所がある場合、非加工箇所から加工箇所に切り替わる直前の位置を加工再開位置とする。NCプログラム更新部213は、加工再開位置に対して、工具交換位置から前記加工再開位置への工具の移動に干渉が生じないかチェックし、干渉が生じる加工再開位置を排除する。
【0029】
NCプログラム更新部213は、工具交換すべきか否かを判定するチェックルーチンを、加工再開位置において呼び出し、工具交換動作のサブルーチンを、工具交換すべきと判断した場合に呼び出すように、加工プログラムを更新する。加工再開位置に対して、工具交換位置から前記加工再開位置への工具の移動に必要な時間に応じた重み付けを行ってもよい。
【0030】
図4は、加工再開位置についてより詳しく説明するための図である。ワーク(材料)は、例えば鋳物であり、白い四角410、420は、穴が空いていることを示す。つまり工具が位置403に位置する部分では、削っていないことになる。一方で、位置405と406の間では、穴があるものの、幅が小さいため、切削は行われる。
【0031】
加工再開位置判定部212は、オリジナルのCLデータ400に対して、加工再開位置判定処理を施し、工具位置401〜407に対して、加工再開位置402〜406を設定する。
【0032】
加工再開位置判定部212は、加工再開位置402、404〜406については、NCプログラム230を解析して、位置決め(G00)と切削(G01/G02/G03)の区切れを見つけることにより設定することもできる。
【0033】
しかし加工再開位置403については、オリジナルのNCプログラム230を見ても設定することができない。そこで、加工再開位置判定部212は、加工シミュレーション部211を利用して切削シミュレーションを行い、削り取りがあるかどうかを判定し、削り取りがない箇所410があれば、切削が始まる直前に加工再開位置403を設定する。あるいは、切削負荷シミュレーションの負荷有無より、加工再開位置403を設定してもよい。さらには、工作機械202において、実際の加工中の加工負荷の変化に基づいて加工再開位置403を設定してもよい。
【0034】
NCプログラムの中に、ワークの形状やワークの設置座標の情報が含まれていれば、工作機械の中に記憶させた工具情報(工具種、工具径、工具長など)とともにNCプログラムを解析し、加工再開位置403を設定し、加工再開位置403の情報が記述された新たなNCプログラムを生成する形態でもよい。
つまり、NCプログラム、ワーク情報(ワーク形状、ワーク設置位置など)、工具情報の3つを用いて、加工再開位置を設定することができる。ワーク情報や工具情報とは、NCプログラムと別でも、NCプログラムの中に記述されている形態でもよい。
【0035】
図2に戻ると、加工再開位置判定部212は、切削シミュレーション機能を利用して、加工再開位置同士の間の切削距離および切削時間を計算する。これらの切削距離および切削時間は、工具寿命との比較判定に使用する。一方、加工再開位置判定部212は、干渉チェックシミュレーション機能により、全ての加工再開位置での工具交換動作で干渉が発生しないことをあらかじめ担保する。干渉が発生しないことが確認できれば加工再開位置251としてNCプログラム250に挿入する。
【0036】
NCプログラム更新部213は、工具交換動作のためのサブルーチンをNCプログラムに組み込む。具体的には、CLデータに含まれる情報(ワーク座標情報、工具補正使用有無、傾斜面加工使用有無、工具先端点制御機能使用有無など)を用いて、工具交換動作(退避/工具交換/アプローチ)をサブルーチン253として作成し、NCプログラム250に追加する。
【0037】
NCプログラム更新部213は、さらに、工具交換が必要か否かを判定するチェックルーチン252をNCプログラムに追加する。チェックルーチン252は、各加工再開位置で呼び出されるプログラムであり、使用工具の残寿命情報(切削距離または切削時間)と次の加工再開位置までに必要な寿命(切削距離または切削時間)を比較し、使用工具の残寿命が不足すれば工具交換動作のサブルーチン(工具交換ルーチン)を呼び出す。
【0038】
図2では、CLデータをCAM240から取得する場合について説明したが、NCプログラム230をリバースエンジニアリングして必要情報を抽出しても同様に更新されたNCプログラム250を生成することができる。
【0039】
図5は、シミュレーション画面501、更新されたNCプログラム502および、工作機械202で実行される処理の流れを説明するフローチャート503の具体例を示す図である。
【0040】
更新されたNCプログラム502に示すようにN100、N104、N108、N112には、それぞれ位置決め指令G00が記述され、N103、N107、N111、N115およびN118には、それぞれ加工指令G01が記述されている。
【0041】
位置決め指令G00と加工指令G01との間には、加工再開位置(Restart Point)511〜514を示すコメントが挿入されている。さらに、途中で削り取りがなくなる位置での切削指令(N115に記述されたG01)と、再度削り取りが開始する位置での切削指令(N118に記述されたG01)との間にも加工再開位置(Restart Point)515を示すコメントが挿入される。
【0042】
加工再開位置(Restart Point)を示すコメントの直後のN102、N106、N110、N114およびN117には、次の加工再開位置までの必要寿命(A:切削距離またはB:切削時間)を引数にして、サブプログラムを呼び出すための指令(G65)が記述されている。
【0043】
サブプログラムが呼び出されると、まず、ステップS501においてチェックルーチンを実行し、工具交換が必要か否か判定する。チェックルーチンS501では、加工負荷(主軸の電流値)の変化で工具の折損を検出してもよい。また、工具破損時において、機械操作盤に用意する特定ボタンを押すことで工具交換モードを認識させてもよい。工具の破損等で工具交換が必要は判定した場合には、ステップS503に進み、工具交換ルーチンを実行する。工具交換ルーチンでは、手動で工具交換位置へ復帰済みか否かを判定し、工具交換位置へ復帰されるまで、所定時間待機する。所定時間経過しても工具交換位置へ復帰がされていなければ、ディスプレイ225にエラーメッセージを表示させる。工具交換位置へ復帰がされていれば、ステップS511に進み、工具交換処理を行った上で、ステップS513において、加工再開位置の報知を行う。そして、ステップ514において、加工再開位置までのアプローチ処理を自動または半自動(一部手動)で行う。
【0044】
工具破損位置の直前の加工再開位置から加工を再開させることで、安全に加工を再開させることが可能となる。
【0045】
ステップS501において、工具交換が不要と判定した場合には、ステップS505に進み、使用中の工具の残寿命情報を取得する。その後、ステップS507に進み、残寿命と必要寿命とを比較する。個々での必要寿命は、指令G65に引数として設定された、次の加工再開位置までの必要寿命(A:切削距離、B:切削時間)である。残寿命が必要寿命よりも長ければ、サプブログラムを終了する。
【0046】
残寿命よりも必要寿命が長ければ、次の加工再開位置まで加工できないと判断し、ステップS509において、退避処理を行う。さらに、ステップS511に進み、工具交換処理を行った上で、ステップS513において、加工再開位置の報知を行う。そして、ステップ514において、加工再開位置までのアプローチ処理を自動または半自動(一部手動)で行う。
【0047】
なお、本実施形態では、情報処理装置201がCAM240と別体の装置であるように説明したが、情報処理装置201の内部にCAM240が組み込まれてもよい。
【0048】
以上、本実施形態によれば、加工途中で工具が折れた場合などでも、加工プログラムの最初から加工を再開するのではなく、加工効率のよい位置から再開できる。
【0049】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0050】
上述の本実施形態では、加工プログラムの中に加工再開位置を設定しているが、同じワークを加工するための加工プログラムであっても、荒加工のための加工プログラムでは加工再開位置を含む加工プログラムを生成するが、仕上げ加工のための加工プログラムでは加工再開位置を含まない加工プログラムを生成する形態でもよい。
例えば、情報処理装置は、ワーク情報(ワーク形状、ワーク位置など)や工具情報(工具種、工具径、工具長など)などと加工プログラムとを解析し、荒加工であるか、仕上げ加工かを判定する。荒加工であれば、上述の実施形態で説明した方法を用いて、加工再開位置を含む加工プログラムの生成を行う。また、仕上げ加工の加工プログラムだと判定した場合には、加工再開位置に関する情報を追加しない加工プログラムの生成を行うことができる。
【0051】
また、加工プログラムの中の加工工程で、荒加工の加工工程のプログラムと仕上げ加工工程のプログラムとが含まれている場合がある。このような場合、情報処理装置は、荒加工の加工工程のプログラムに加工再開位置の情報を付加し、仕上げ加工工程のプログラムに加工再掲位置の情報を付加しない処理ができる形態でもよい。つまり、情報処理装置は、加工プログラムの所定の部分に加工再開位置の情報を付加し、他の部分には加工再開位置の情報を付加しない加工プログラムを生成する処理も行うことができる。さらに、荒加工か仕上げ加工かの情報を付帯させていてもよい。荒加工の情報があれば、加工再開位置の情報を含む加工プログラムを生成する形態でもよい。
【0052】
仕上げ加工において、加工経路を一部戻って加工を再開することは少ないため、仕上げ加工の加工プログラムに加工再開位置を付与する必要性がない場合がある。そのような場合に、解析などの情報処理時間を考えると、必要なプログラム部分の解析だけにすることにより、加工プログラムの生成時間が短くすることができる。
【0053】
また、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用されてもよいし、単体の装置に適用されてもよい。さらに、本発明は、実施形態の機能を実現する情報処理プログラムが、システムあるいは装置に供給され、内蔵されたプロセッサによって実行される場合にも適用可能である。本発明の機能をコンピュータで実現するために、コンピュータにインストールされるプログラム、あるいはそのプログラムを格納した媒体、そのプログラムをダウンロードさせるサーバも、プログラムを実行するプロセッサも本発明の技術的範囲に含まれる。特に、少なくとも、上述した実施形態に含まれる処理ステップをコンピュータに実行させるプログラムを格納した非一時的コンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)は本発明の技術的範囲に含まれる。
【要約】      (修正有)
【課題】加工が中断した場合、効果的に加工を再開すること。
【解決手段】情報処理装置と工作機械とを備えた工作機械システムであって、情報処理装置は、加工開始直前の工具位置決め指令と加工指令との間に、加工再開位置を示す記述を追加した加工プログラムを生成する加工プログラム更新部を有し、工作機械は、加工プログラム更新部で更新された加工ブログラムを解釈する解釈部と、加工再開位置において、加工が中断したか否か、または、加工中に工具寿命に到達するか否かを判定する判定部と、中断または到達の直前に通過した加工再開位置から、加工を再開することを報知する報知部と、を有する工作機械システム。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5