特許第6961858号(P6961858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961858高周波誘電加熱接着シート、高周波誘電加熱接着シートの使用方法及び高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6961858
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】高周波誘電加熱接着シート、高周波誘電加熱接着シートの使用方法及び高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/30 20180101AFI20211025BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20211025BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20211025BHJP
   C09J 5/02 20060101ALI20211025BHJP
   C09J 5/06 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C09J7/30
   C09J123/08
   C09J11/04
   C09J5/02
   C09J5/06
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2021-520453(P2021-520453)
(86)(22)【出願日】2020年12月7日
(86)【国際出願番号】JP2020045463
【審査請求日】2021年4月13日
(31)【優先権主張番号】特願2019-222791(P2019-222791)
(32)【優先日】2019年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 拓斗
(72)【発明者】
【氏名】田矢 直紀
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/147351(WO,A1)
【文献】 特開2010−222541(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0021955(KR,A)
【文献】 特開昭60−232949(JP,A)
【文献】 特開平05−038787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波誘電加熱接着シートであって、
エチレン−酢酸ビニル共重合体と、高周波で発熱する誘電フィラーと、を含有し、
第一の表面と、前記第一の表面とは反対側の第二の表面と、を有し、
前記第一の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であり、
前記第一の表面にアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を接着し、前記第二の表面に極性基を有するポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体を接着することに用いられる、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル共重合比率は、3質量%以上、40質量%以下である、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記誘電フィラーは、3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加した時に発熱する、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記誘電フィラーは、前記高周波誘電加熱接着シート中に3体積%以上、50体積%以下、含まれる、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記誘電フィラーの平均粒子径は、1μm以上、30μm以下である、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記誘電フィラーは、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウム及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記高周波誘電加熱接着シートの厚さは、10μm以上である、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記誘電フィラーの平均粒子径Dと前記高周波誘電加熱接着シートの厚さTとが、
1≦T/D≦2500の関係を満たす、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度が、1%以上である、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の高周波誘電加熱接着シートにおいて、
前記第二の被着体における前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体である、
高周波誘電加熱接着シート。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の高周波誘電加熱接着シートの使用方法であって、
前記第一の被着体と前記第二の被着体との間に前記高周波誘電加熱接着シートを挟持して、3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加して、前記第一の被着体と前記第二の被着体とが接着された接合体を作製して、前記接合体を引張せん断試験に供した場合に、前記第一の被着体及び前記第二の被着体の少なくとも一方が破壊されるか、引張せん断力が、0.2MPa以上である、
高周波誘電加熱接着シートの使用方法。
【請求項12】
高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法であって、
前記高周波誘電加熱接着シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、高周波で反応する誘電フィラーと、を含有し、
前記高周波誘電加熱接着シートは、第一の表面と、前記第一の表面とは反対側の第二の表面と、を有し、
前記第一の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であり、
アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を前記第一の表面に接触させ、極性基を有するポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体を前記第二の表面に接触させて、前記第一の被着体と前記第二の被着体との間で前記高周波誘電加熱接着シートを挟持する工程と、
前記高周波誘電加熱接着シートに3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加して、前記第一の被着体と前記第二の被着体とを前記高周波誘電加熱接着シートにより接着する工程と、を含む、
高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法。
【請求項13】
請求項12に記載の高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法であって、
前記第一の表面に改質処理を施して、当該第一の表面の表面自由エネルギーを40mJ/m以上に調整する工程をさらに含む、
高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法。
【請求項14】
請求項13に記載の高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法であって、
前記改質処理は、コロナ処理及びプラズマ処理の少なくともいずれかである、
高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘電加熱接着シート、高周波誘電加熱接着シートの使用方法及び高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一般的に接着することが困難な被着体同士を接着する方法として、例えば、所定の樹脂中に発熱材料を配合してなる接着剤を被着体の間に介在させ、誘電加熱処理、誘導加熱処理、超音波溶着処理、又はレーザー溶着処理等を行う方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1及び特許文献2には、誘電加熱処理に用いられる誘電加熱接着フィルムが記載されている。特許文献1及び特許文献2に記載の誘電加熱接着フィルムは、オレフィン−酢酸ビニル共重合体及び誘電フィラーを含有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/147351号
【特許文献2】国際公開第2018/147352号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び特許文献2に記載の誘電加熱接着フィルムを用いて互いに材質の異なる被着体(第一の被着体及び第二の被着体)を接着させようとすると、充分な接着強度が得られない場合がある。特に、被着体の誘電加熱接着フィルムと接する面の材質がアクリル樹脂等である場合に充分な接着強度が得られ難い。
また、塩化ビニル(PVC)を材質とする被着体が用いられていたが、環境問題等の観点からPVCの代替材料として、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂が検討されている。材質がポリオレフィン系樹脂である被着体と、これとは異なる材質の被着体とを接着する場合、従来の接着シートでは、互いに異種材料からなる両被着体を強固に接着できなかった。
【0006】
本発明の目的は、高周波誘電加熱接着シートの第一の面に接着される第一の被着体と、高周波誘電加熱接着シートの第二の面に接着される第二の被着体とが、異なる材質であっても、第一の被着体と第二の被着体とを強固に接着できる高周波誘電加熱接着シートを提供することである。
本発明の別の目的は、当該高周波誘電加熱接着シートの使用方法並びに当該高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、高周波誘電加熱接着シートであって、
エチレン−酢酸ビニル共重合体と、高周波で発熱する誘電フィラーと、を含有し、
第一の表面と、前記第一の表面とは反対側の第二の表面と、を有し、
前記第一の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であり、
前記第一の表面にアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を接着し、前記第二の表面にポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体を接着することに用いられる、
高周波誘電加熱接着シートが提供される。
【0008】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル共重合比率は、3質量%以上、40質量%以下であることが好ましい。
【0009】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記誘電フィラーは、3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加した時に発熱することが好ましい。
【0010】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記誘電フィラーは、前記高周波誘電加熱接着シート中に3体積%以上、50体積%以下、含まれることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記誘電フィラーの平均粒子径は、1μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記誘電フィラーは、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウム及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記高周波誘電加熱接着シートの厚さは、10μm以上であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記誘電フィラーの平均粒子径Dと前記高周波誘電加熱接着シートの厚さTとが、1≦T/D≦2500の関係を満たすことが好ましい。
【0015】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度が、1%以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、前記第二の被着体における前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン又はエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0017】
本発明の一態様によれば、前述の本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートの使用方法であって、
前記第一の被着体と前記第二の被着体との間に前記高周波誘電加熱接着シートを挟持して、3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加して、前記第一の被着体と前記第二の被着体とが接着された接合体を作製して、前記接合体を引張せん断試験に供した場合に、前記第一の被着体及び前記第二の被着体の少なくとも一方が破壊されるか、引張せん断力が、0.2MPa以上である、高周波誘電加熱接着シートの使用方法が提供される。
【0018】
本発明の一態様によれば、高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法であって、前記高周波誘電加熱接着シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、高周波で反応する誘電フィラーと、を含有し、
前記高周波誘電加熱接着シートは、第一の表面と、前記第一の表面とは反対側の第二の表面と、を有し、
前記第一の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であり、
アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を前記第一の表面に接触させ、ポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体を前記第二の表面に接触させて、前記第一の被着体と前記第二の被着体との間で前記高周波誘電加熱接着シートを挟持する工程と、
前記高周波誘電加熱接着シートに3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加して、前記第一の被着体と前記第二の被着体とを前記高周波誘電加熱接着シートにより接着する工程と、を含む、高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法が提供される。
【0019】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法において、前記第一の表面に改質処理を施して、当該第一の表面の表面自由エネルギーを40mJ/m以上に調整する工程をさらに含むことが好ましい。
【0020】
本発明の一態様に係る高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法において、前記改質処理は、コロナ処理及びプラズマ処理の少なくともいずれかであることが好ましい。
【0021】
本発明の一態様によれば、高周波誘電加熱接着シートの第一の面に接着される第一の被着体と、高周波誘電加熱接着シートの第二の面に接着される第二の被着体とが、異なる材質であっても、第一の被着体と第二の被着体とを強固に接着できる高周波誘電加熱接着シートを提供できる。
本発明の一態様によれば、当該高周波誘電加熱接着シートの使用方法並びに当該高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】一実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの概略図である。
図2】一実施形態に係る高周波誘電加熱接着シート及び誘電加熱装置を用いた高周波誘電加熱処理を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[高周波誘電加熱接着シート]
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、高周波で発熱する誘電フィラーと、を含有する。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、第一の表面と、前記第一の表面とは反対側の第二の表面と、を有する。
第一の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上である。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、第一の表面にアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を接着し、第二の表面にポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体を接着することに用いられる。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、互いに異なる種類の材質である第一の被着体及び第二の被着体を接着できる。
以下において、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの詳細が説明される。
【0024】
図1には、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの一例の概略図が示されている。図1に示された高周波誘電加熱接着シート10は、第一の表面11及び第一の表面11とは反対側の第二の表面12を有する。
【0025】
(第一の表面)
第一の表面は、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体が接着される面である。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、第一の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であり、41mJ/m以上であることがより好ましく、43mJ/m以上であることがさらに好ましい。
第一の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m未満であると、第一の被着体と強固に接着し難い。
第一の表面の表面自由エネルギーの上限は、より高いほど好ましい。例えば、第一の表面の表面自由エネルギーは、70mJ/m未満であることも好ましい。
第一の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であることにより、当該第一の表面にアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を強固に接着できる。
【0026】
高周波誘電加熱接着シートの表面の表面自由エネルギーを40mJ/m以上に調整する方法としては、高周波誘電加熱接着シートの表面に改質処理を施す方法又はプライマー塗布法が挙げられ、改質処理を施す方法がより好ましい。改質処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線処理(エキシマ処理)、電子線処理及び放射線処理が挙げられる。改質処理は、コロナ処理及びプラズマ処理の少なくともいずれかの処理であることが好ましい。
【0027】
また、高周波誘電加熱接着シートは、複数の層が積層された多層シートであってもよい。多層シートである場合、第一の被着体と接する面が、第一の表面である。例えば、多層シートが第一のシート層と第二のシート層とで構成される場合、第一のシート層及び第二のシート層の少なくともいずれかのシート層を構成する材料として、表面自由エネルギーが40mJ/m以上となる材料を選択することによっても、表面自由エネルギーが40mJ/m以上である第一の表面を有する積層型の高周波誘電加熱接着シートを得ることができる。なお、より簡略で製造し易いシート構成とする観点並びに層間剥離を防止するという観点から、高周波誘電加熱接着シートは、単層のシートであることが好ましい。
【0028】
・表面自由エネルギーの測定
本明細書において表面自由エネルギーは、次の方法により測定される。
各種液滴の接触角(測定温度:25℃)を測定し、その接触角の値に基づいて北崎・畑法により求める。ジヨードメタン、1−ブロモナフタレン、蒸留水を液滴として使用し、協和界面科学(株)製、DM−701を用いて、静滴法により、JIS R 3257:1999に準拠して接触角(測定温度:25℃)を測定し、その接触角の値に基づいて北崎・畑法により、表面自由エネルギーを求める。表面自由エネルギーの単位は、mJ/mである。
【0029】
(第二の表面)
第二の表面は、第一の表面とは反対側の面である。
第二の表面は、ポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体が接着される面である。
【0030】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、第一の表面の表面自由エネルギーが、前述の範囲を満たせば、第二の表面の表面自由エネルギーは、特に限定されない。
なお、一実施形態においては、第二の表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であってもよい。第二の表面の表面自由エネルギーは、例えば、第一の表面と同様の方法で40mJ/m以上に調整できる。
【0031】
(高周波誘電加熱接着シートの厚さ)
高周波誘電加熱接着シートの厚さは、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの厚さが10μm以上であれば、第一の被着体と第二の被着体とを接着する際に、高周波誘電加熱接着シートは、被着体の凹凸に追従しやすく、接着強度が発現しやすくなる。
高周波誘電加熱接着シートの厚さの上限は、特に限定されない。高周波誘電加熱接着シートの厚さが増すほど、第一の被着体と第二の被着体とを接着して得られる接合体全体の重量も増加するため、高周波誘電加熱接着シートは、実使用上問題ない範囲の厚さであることが好ましい。高周波誘電加熱接着シートの実用性及び成形性も考慮すると、高周波誘電加熱接着シートの厚さは、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
(高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度)
高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度は、1%以上であることが好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度は、2000%以下であることが好ましい。
高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度が1%以上であれば、シートが脆くなり難く、安定した接合強度を得やすい。
高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度は、高ければ高いほど良いが、2000%以下であれば、靱性が高くなり過ぎることが抑制され、スリット等の加工を行う際に支障が生じ難い。
高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度は、10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、100%以上であることがさらに好ましく、300%以上であることがよりさらに好ましい。高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度が300%以上であれば、シート強度の安定性が得られやすい。
高周波誘電加熱接着シートの引張破断伸度は、2000%以下であることが好ましく、1500%以下であることがより好ましく、1000%以下であることがよりさらに好ましい。
引張破断伸度は、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
【0033】
(高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’))
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性としての誘電正接(tanδ)、及び誘電率(ε’)は、JIS C 2138:2007に準拠して測定することもできるが、インピーダンスマテリアル法に準じて、簡便かつ正確に測定することができる。
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’)は、0.005以上であることが好ましく、0.008以上であることがより好ましく、0.01以上であることがさらに好ましい。また、高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’)は、0.08以下であることが好ましく、0.05以下であることがより好ましい。誘電特性(tanδ/ε’)は、インピーダンスマテリアル装置等を用いて測定される誘電正接(tanδ)を、インピーダンスマテリアル装置等を用いて測定される誘電率(ε’)で除した値である。
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性が、0.005以上であれば、誘電加熱処理をした際に、所定の発熱をせず、被着体同士を強固に接着することが困難となるという不具合を防止できる。
高周波誘電加熱接着シートの誘電特性が、0.08以下であれば、被着体の損傷が起きにくい。
なお、高周波誘電加熱接着シートの誘電特性の測定方法の詳細は、次の通りである。所定大きさに切断した高周波誘電加熱接着シートについて、RFインピーダンスマテリアルアナライザE4991A(Agilent社製)を用いて、23℃における周波数40.68MHzの条件下、誘電率(ε’)、及び誘電正接(tanδ)をそれぞれ測定し、誘電特性(tanδ/ε’)の値を算出する。
【0034】
(エチレン−酢酸ビニル共重合体)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、熱可塑性樹脂を含有する。本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、熱可塑性樹脂として、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有する。第一の被着体と第二の被着体とを強固に接着するという観点から、熱可塑性樹脂は、エチレン酢酸ビニル共重合体を主成分とすることが好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体が主成分であると、エチレン又はエチレン共重合体を材質とする被着体との接着強度を得やすい。
高周波誘電加熱接着シートに含有される熱可塑性樹脂は、主としてエチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましく、当該熱可塑性樹脂中のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがよりさらに好ましく、95質量%以上であることがさらになお好ましい。また、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの一態様としては、例えば、熱可塑性樹脂が、実質的に、エチレン−酢酸ビニル共重合体のみからなることも好ましい。なお、実質的にとは、不可避的にエチレン−酢酸ビニル共重合体としての熱可塑性樹脂に混入してしまうような微量な不純物を除いて、熱可塑性樹脂がエチレン−酢酸ビニル共重合体だけからなることを意味する。
【0035】
・酢酸ビニル共重合比率
高周波誘電加熱接着シート中のエチレン−酢酸ビニル共重合体において、酢酸ビニルの共重合比率(酢酸ビニル共重合比率)は、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シート中のエチレン−酢酸ビニル共重合体において、酢酸ビニルの共重合比率は、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、27質量%以下であることがさらに好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの共重合比率が3質量%以上であれば、高周波誘電加熱接着シートの表面を改質した後も、表面自由エネルギーが減衰し難い。表面自由エネルギーの減衰が少なければ、時間の経過とともに第一の被着体と強固な接着強度が得られなくなるという不具合を防止できる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの共重合比率が40質量%以下であれば、高周波誘電加熱接着シートの製膜時にタックが生じ難く、高周波誘電加熱接着シートの厚さ精度が向上する。製膜時にタックが生じると、高周波誘電加熱接着シートが、シート製造装置におけるシート搬送部材(例えば、ロール)に貼り着いてしまうので、シートに横縞又は皺が生じやすい。
【0036】
・平均分子量
エチレン−酢酸ビニル共重合体の平均分子量(重量平均分子量)は、通常、5000以上であることが好ましく、1万以上であることがより好ましく、2万以上であることがさらに好ましい。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体の平均分子量(重量平均分子量)は、30万以下であることが好ましく、20万以下であることがより好ましく、10万以下であることがさらに好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量が、5000以上であれば、高周波誘電加熱接着シートの耐熱性及び接着力が著しく低下することを防止できる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量が、30万以下であれば、誘電加熱処理を実施した際の溶着性等が著しく低下することを防止できる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量は、例えば、JIS K 7367−3(1999)に準拠して、極限粘度法により測定できる。
【0037】
(誘電フィラー)
誘電フィラーは、高周波で発熱するフィラーである。
誘電フィラーは、周波数域が3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加した時に発熱するフィラーであることが好ましい。誘電フィラーは、周波数域3MHz以上、300MHz以下のうち、例えば、周波数13.56MHz、27.12MHz又は40.68MHz等の高周波の印加により発熱するフィラーであることが好ましい。
【0038】
・種類
誘電フィラーは、酸化亜鉛、炭化ケイ素(SiC)、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ルチル型酸化チタン、水和ケイ酸アルミニウム、アルカリ金属の水和アルミノケイ酸塩等の結晶水を有する無機材料又はアルカリ土類金属の水和アルミノケイ酸塩等の結晶水を有する無機材料等の一種単独又は二種以上の組み合わせが好適である。
誘電フィラーは、酸化亜鉛、アナターゼ型酸化チタン、チタン酸バリウム及び炭化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
例示した誘電フィラーの中でも、種類が豊富であり、様々な形状及びサイズから選択でき、高周波誘電加熱接着シートの接着特性及び機械特性を用途に合わせて改良できるため、誘電フィラーは、酸化亜鉛であることがさらに好ましい。誘電フィラーとして酸化亜鉛を用いることで、無色の高周波誘電加熱接着シートを得ることができる。酸化亜鉛は、誘電フィラーの中でも密度が小さいため、誘電フィラーとして酸化亜鉛を含有する高周波誘電加熱接着シートを用いて被着体を接合した場合、他の誘電フィラーを含有するシートを用いた場合と比べて、接合体の総重量が増大し難い。酸化亜鉛は、セラミックの中でも硬度が高過ぎないため、高周波誘電加熱接着シートの製造装置を傷つけ難い。酸化亜鉛は、不活性な酸化物であるため、熱可塑性樹脂と配合しても、熱可塑性樹脂に与えるダメージが少ない。
【0039】
・体積含有率
誘電フィラーは、高周波誘電加熱接着シート中に3体積%以上含まれることが好ましく、5体積%以上含まれることがより好ましく、8体積%以上含まれることがさらに好ましい。
誘電フィラーは、高周波誘電加熱接着シート中に50体積%以下含まれることが好ましく、40体積%以下含まれることがより好ましく、35体積%以下含まれることがさらに好ましく、25体積%以下含まれることがよりさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シート中に誘電フィラーが3体積%以上含まれることで、互いに異種材料である第一の被着体と第二の被着体とを強固に接着しやすい。
高周波誘電加熱接着シート中に誘電フィラーが50体積%以下含まれることで、シートとしてのフレキシブル性を得やすく、靱性の低下も防止しやすくなるので、後工程で高周波誘電加熱接着シートを所望の形状に加工しやすい。
【0040】
なお、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シート中に、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び誘電フィラーが含まれているため、エチレン−酢酸ビニル共重合体及び誘電フィラーの合計体積に対して、誘電フィラーの体積含有率は、3体積%以上であることが好ましく、5体積%以上であることがより好ましく、8体積%以上であることがさらに好ましい。エチレン−酢酸ビニル共重合体及び誘電フィラーの合計体積に対して、誘電フィラーの体積含有率は、50体積%以下であることが好ましく、40体積%以下であることがより好ましく、35体積%以下であることがさらに好ましく、25体積%以下であることがよりさらに好ましい。
【0041】
・平均粒子径
誘電フィラーの平均粒子径は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましく、3μm以上であることがさらに好ましい。
誘電フィラーの平均粒子径は、30μm以下であることが好ましく、25μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることがさらに好ましい。
誘電フィラーの平均粒子径が1μm以上、30μm以下であることで、高周波誘電加熱接着シートは、高周波印加時に高い発熱性能を発現し、第一の被着体と第二の被着体とをより短時間で強固に接着できる。また、誘電フィラーの平均粒子径が30μm以下であることで、高周波誘電加熱接着シートの強度低下を防止できる。
【0042】
誘電フィラーの平均粒子径は、次のような方法によって測定される。レーザー回折・散乱法により、誘電フィラーの粒度分布測定を行い、粒度分布測定の結果からJIS Z 8819−2:2001に準じて体積平均粒子径を算出する。
【0043】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートにおいて、誘電フィラーの平均粒子径Dと高周波誘電加熱接着シートの厚さTとが、1≦T/D≦2500の関係を満たすことが好ましい。
T/Dは、1以上であることが好ましく、2以上であることが好ましく、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましい。T/Dが1以上であれば、接着時に誘電フィラーと被着体とが接触することに起因する接着強度の低下を防止できる。
T/Dは、2500以下であることが好ましく、2000以下であることが好ましく、1750以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましく、500以下であることがさらに好ましく、100以下であることがよりさらに好ましく、50以下であることがさらになお好ましい。T/Dが2500以下であれば、高周波誘電加熱接着シートの作製時に、シート製造装置への負荷を抑制できる。
【0044】
(添加剤)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、添加剤を含んでいてもよいし、添加剤を含んでいなくてもよい。
【0045】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートが添加剤を含む場合、添加剤としては、例えば、粘着付与剤、可塑剤、ワックス、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、カップリング剤、粘度調整剤、有機充填剤、及び無機充填剤等が挙げられる。添加剤としての有機充填剤、及び無機充填剤は、誘電フィラーとは異なる。
【0046】
粘着付与剤及び可塑剤は、高周波誘電加熱接着シートの溶融特性、及び接着特性を改良できる。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂の水素化物、テルペンフェノール樹脂、クマロン・インデン樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、及び芳香族石油樹脂の水素化物が挙げられる。
可塑剤としては、例えば、石油系プロセスオイル、天然油、二塩基酸ジアルキル、及び低分子量液状ポリマーが挙げられる。石油系プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、及び芳香族系プロセルスオイル等が挙げられる。天然油としては、例えば、ひまし油、及びトール油等が挙げられる。二塩基酸ジアルキルとしては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、及びアジピン酸ジブチル等が挙げられる。低分子量液状ポリマーとしては、例えば、液状ポリブテン、及び液状ポリイソプレン等が挙げられる。
【0047】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートが添加剤を含む場合、高周波誘電加熱接着シート中の添加剤の含有率は、通常、高周波誘電加熱接着シートの全体量基準で、0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.1質量%以上であることがさらに好ましい。また、高周波誘電加熱接着シート中の添加剤の含有率は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0048】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、炭素又は炭素を主成分とする炭素化合物(例えば、カーボンブラック等)及び金属等の導電性物質を含有しないことが好ましい。導電性物質の含有率は、それぞれ独立に、高周波誘電加熱接着シートの全体量基準で、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましく、0質量%であることがよりさらに好ましい。
高周波誘電加熱接着シート中の導電性物質の含有率が5質量%以下であれば、誘電加熱処理した際に電気絶縁破壊して接着部及び被着体の炭化という不具合を防止し易くなる。
【0049】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、上述の各成分を予備混合し、押出機、及び熱ロール等の公知の混練装置を用いて混錬し、押出成形、カレンダー成形、インジェクション成形、及びキャスティング成形等の公知の成形方法により製造できる。
【0050】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの全体質量に対して、熱可塑性樹脂及び誘電フィラーの合計質量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがさらに好ましい。
【0051】
(被着体)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、第一の表面にアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を接着し、前記第二の表面にポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体を接着することに用いられる。
【0052】
・第一の被着体
第一の被着体の表面は、高周波誘電加熱接着シートの第一の表面に対して、直接、接する。第一の被着体の表面がアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂で構成されている。第一の被着体の全体がアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂で構成されていることも好ましい。第一の被着体の表面の一部分がアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂で構成されていることも好ましい。第一の被着体の表面全体の面積に占めるアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂で構成されている部分の面積は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。また、第一の被着体が多層構造である場合、第一の被着体の最表面に位置する層が、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂で構成されていることも好ましい。
【0053】
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルの重合体が挙げられ、例えば(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を有する重合体又は共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、活性水素を有する官能基を含む単量体と、任意で用いられる他の単量体との共重合体が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を含む概念である。
【0054】
アルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0055】
活性水素を有する官能基を含む単量体としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等のヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピル等の(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノアルキル;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和結合を有するカルボン酸等が挙げられる。活性水素を有する官能基を含む単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0056】
ポリウレタン系樹脂は、主鎖にウレタン結合を有する高分子を指す。ポリウレタン系樹脂としては、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られる樹脂が挙げられる。
【0057】
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジメタンイソシアネート及びポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート等に代表される芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等に代表される脂肪族ポリイソシアネートなどの多官能イソシアネートが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートは、特に制限されないが、耐候性の観点から、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。ポリイソシアネートは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
多価アルコールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられる。多価アルコールは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
ポリエステル系樹脂は、主鎖にエステル結合を有する高分子を指す。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ジカルボン酸とグリコール化合物とを共重合して得られるポリエステル共重合体樹脂が好ましく挙げられる。
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、スルホテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、セバシン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸が好ましく用いられる。
グリコール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシレングリコール、トリエチレングリコール等が好ましく用いられる。
【0060】
・第二の被着体
高周波誘電加熱接着シートの第二の表面に対して直接接する第二の被着体の表面が、ポリオレフィン系樹脂で構成されている。第二の被着体におけるポリオレフィン系樹脂は、特に限定されない。第二の被着体におけるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、
(PO1)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン又はポリメチルペンテン等のホモポリマーからなる樹脂、
(PO2)エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン、オクテン及び4−メチルペンテン等からなる群から選択される単量体を共重合させた共重合体からなるα−オレフィン樹脂、
(PO3)オレフィン−酢酸ビニル共重合体及び無水マレイン酸変性ポリオレフィン等の極性基を有するポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
第二の被着体におけるポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン又はエチレン系共重合体であることが好ましく、当該エチレン系共重合体は、エチレン−酢酸ビニル共重合体であることが好ましい。
【0061】
第一の被着体の形状及び第二の被着体の形状は、特に限定されないが、シート状であることが好ましい。第一の被着体の形状及び第二の被着体は、前述の通りの材質であればよく、第一の被着体の形状及び第二の被着体の形状及び寸法は、互いに同じでも異なっていてもよい。
【0062】
[高周波誘電加熱接着シートの使用方法]
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いることにより、第一の被着体と第二の被着体とを接着できる。
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートの使用方法として、第一の被着体と第二の被着体との間に、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを挟持して、3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加して、前記第一の被着体と前記第二の被着体とが接着された接合体を作製して、前記接合体を引張せん断試験に供した場合に、第一の被着体及び第二の被着体の少なくとも一方が破壊されるか、引張せん断力が、0.2MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることがさらに好ましい。
引張せん断試験は、後述する実施例に記載の方法によって実施できる。引張せん断力は、後述する実施例に記載の方法 によって測定できる。
【0063】
[接着方法]
本実施形態に係る接着方法は、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いる接着方法である。
本実施形態に係る接着方法は、第一の被着体と第二の被着体とを接着する。
本実施形態に係る接着方法は、以下の工程P1と、工程P2と、を含む。また、本実施形態に係る接着方法は、以下の工程P3をさらに含むことも好ましい。
【0064】
・工程P1
工程P1は、第一の被着体と第二の被着体との間で本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを挟持する工程である。工程P1では、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を高周波誘電加熱接着シートの第一の表面に接触させる。また、工程P1では、ポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体を高周波誘電加熱接着シートの第二の表面に接触させる。
【0065】
高周波誘電加熱接着シートは、第一の被着体と第二の被着体とを接着できるように、第一の被着体と第二の被着体の間に挟持すればよい。高周波誘電加熱接着シートは、第一の被着体と第二の被着体との間の一部において、複数箇所において又は全面において挟持すればよい。第一の被着体と第二の被着体との接着強度を向上させる観点から、第一の被着体と第二の被着体との接着面全体に亘って高周波誘電加熱接着シートを挟持することが好ましい。また、第一の被着体と第二の被着体との間の一部において高周波誘電加熱接着シートを挟持する一態様としては、第一の被着体と第二の被着体との接着面の外周に沿って高周波誘電加熱接着シートを枠状に配置して、第一の被着体と第二の被着体との間で挟持する態様が挙げられる。このように高周波誘電加熱接着シートを枠状に配置することで、第一の被着体と第二の被着体との接着強度を得るとともに、接着面全体に亘って高周波誘電加熱接着シートを配置した場合に比べて接合体を軽量化できる。また、第一の被着体と第二の被着体との間の一部に高周波誘電加熱接着シートを挟持する一態様によれば、用いる高周波誘電加熱接着シートのサイズを小さくできるため、接着面全体に亘って高周波誘電加熱接着シートを配置した場合に比べて高周波誘電加熱処理時間を短縮できる。
【0066】
・工程P2
工程P2は、工程P1において第一の被着体と第二の被着体との間で挟持した高周波誘電加熱接着シートに対して、3MHz以上、300MHz以下の高周波電圧を印加して、第一の被着体と第二の被着体とを高周波誘電加熱接着シートにより接着する工程である。
例えば、誘電加熱接着装置を用いることにより、高周波誘電加熱接着シートに対して高周波電圧を印加できる。
【0067】
・工程P3
工程P3は、工程P1よりも前に実施される工程である。
工程P3は、高周波誘電加熱接着シートの第一の表面に改質処理を施して、当該第一の表面の表面自由エネルギーを40mJ/m以上に調整する工程である。
本実施形態に係る接着方法において、工程P3における改質処理は、コロナ処理及びプラズマ処理の少なくともいずれかの改質処理であることが好ましい。改質処理は、公知の改質処理装置を用いて実施できる。
【0068】
図2には、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シート及び誘電加熱装置を用いた高周波誘電加熱処理を説明する概略図が示されている。
【0069】
(誘電加熱接着装置)
図2には、誘電加熱接着装置30の概略図が示されている。
誘電加熱接着装置30は、第一高周波印加電極31と、第二高周波印加電極32と、高周波電源33と、を備えている。
第一高周波印加電極31と、第二高周波印加電極32とは、互いに対向配置されている。第一高周波印加電極31及び第二高周波印加電極32は、プレス機構を有している。このプレス機構により、第一の被着体110、高周波誘電加熱接着シート10及び第二の被着体120を、第一高周波印加電極31と第二高周波印加電極32との間で加圧処理できる。
【0070】
第一高周波印加電極31と第二高周波印加電極32とが互いに平行な1対の平板電極を構成している場合、このような電極配置の形式を平行平板タイプと称する場合がある。
高周波の印加には平行平板タイプの高周波誘電加熱装置を用いることも好ましい。平行平板タイプの高周波誘電加熱装置であれば、高周波が電極間に位置する高周波誘電加熱接着シートを貫通するので、高周波誘電加熱接着シート全体を暖めることができ、被着体と高周波誘電加熱接着シートとを短時間で接着できる。
【0071】
第一高周波印加電極31及び第二高周波印加電極32のそれぞれに、例えば、周波数13.56MHz程度、27.12MHz程度又は周波数40.68MHz程度の高周波電圧を印加するための高周波電源33が接続されている。
誘電加熱接着装置30は、図2に示すように、第一の被着体110及び第二の被着体120との間に挟持した高周波誘電加熱接着シート10を介して、誘電加熱処理する。さらに、誘電加熱接着装置30は、誘電加熱処理に加えて、第一高周波印加電極31及び第二高周波印加電極32による加圧処理によって、第一の被着体110と第二の被着体120とを接着する。なお、加圧処理を行わずに、例えば接着シートや被着体の自重のみによる押圧により第一の被着体110と第二の被着体120とを接着してもよい。
【0072】
第一高周波印加電極31及び第二高周波印加電極32の間に、高周波電界を印加すると、高周波誘電加熱接着シート10における接着剤成分中に分散された誘電フィラー(図示せず)が、高周波エネルギーを吸収する。
そして、誘電フィラーは、発熱源として機能し、誘電フィラーの発熱によって、熱可塑性樹脂成分を溶融させ、短時間処理であっても、最終的には、第一の被着体110と第二の被着体120とを強固に接着できる。
【0073】
第一高周波印加電極31及び第二高周波印加電極32は、プレス機構を有することから、プレス装置としても機能する。そのため、第一高周波印加電極31及び第二高周波印加電極32による圧縮方向への加圧及び高周波誘電加熱接着シート10の加熱溶融によって、第一の被着体110と第二の被着体120とをより強固に接着できる。
【0074】
(高周波誘電加熱接着条件)
高周波誘電加熱接着条件は、適宜変更できるが、以下の条件であることが好ましい。
【0075】
高周波出力は、10W以上であることが好ましく、50W以上であることがより好ましく、80W以上であることがさらに好ましい。
高周波出力は、50,000W以下であることが好ましく、20,000W以下であることがより好ましく、15,000W以下であることがさらに好ましく、10,000W以下であることがよりさらに好ましく、1,000W以下であることがさらになお好ましい。
高周波出力が10W以上であれば、誘電加熱処理時に温度が上昇し難いという不具合を防止できるので、良好な接着力を得やすい。
高周波出力が50,000W以下であれば、誘電加熱処理による温度制御が困難となる不具合を防ぎ易い。
【0076】
高周波の印加時間は、1秒以上であることが好ましい。
高周波の印加時間は、60秒以下が好ましく、45秒以下がより好ましく、35秒以下であることがさらに好ましく、25秒以下であることがよりさらに好ましく、10秒以下であることがさらになお好ましい。
高周波の印加時間が1秒以上であれば、誘電加熱処理時に温度が上昇し難いという不具合を防止できるので、良好な接着力を得やすい。
高周波の印加時間が60秒以下であれば、第一の被着体と第二の被着体とを接着させた接合体の製造効率が低下したり、製造コストが高くなったり、さらには、被着体が熱劣化するといった不具合を防ぎ易い。
【0077】
印加する高周波の周波数は、1kHz以上であることが好ましく、1MHz以上であることがより好ましく、5MHz以上であることがさらに好ましく、10MHz以上であることがよりさらに好ましい。
印加する高周波の周波数は、300MHz以下であることが好ましく、100MHz以下であることがより好ましく、80MHz以下であることがさらに好ましく、50MHz以下であることがよりさらに好ましい。具体的には、国際電気通信連合により割り当てられた工業用周波数帯13.56MHz、27.12MHz又は40.68MHzが、本実施形態の高周波誘電加熱接着方法(接着方法)にも利用される。
【0078】
(本実施形態の効果)
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートによれば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体と、ポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体とを強固に接着できる。
【0079】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、塗布が必要な接着剤を用いる場合と比べて、取り扱い易く、第一の被着体と第二の被着体との接着時の作業性も向上する。本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートによれば、短時間の高周波印加により被着体と接着できる。
【0080】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、一般的な粘着剤に比べて、耐水性及び耐湿性が優れる。
【0081】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、溶剤を含有しないため、被着体との接着に用いる接着剤に起因するVOC(Volatile Organic Compounds)の問題が発生し難い。
【0082】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、高周波電圧の印加により加熱されるため、高周波誘電加熱接着シートが局所的に加熱される。それゆえ、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートによれば、被着体との接着時に被着体全体が溶融するという不具合を防ぎやすい。
【0083】
本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法によれば、誘電加熱接着装置によって、外部から、所定箇所のみを局所的に加熱することができる。そのため、被着体が、大型で且つ複雑な立体構造体又は厚さが大きく且つ複雑な立体構造等であり、さらに高い寸法精度を求められる場合でも、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートを用いた接着方法は、有効である。
【0084】
また、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートによれば、高周波誘電加熱接着シートの厚さなどを適宜制御できる。そのため、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートをロール・ツー・ロール方式に適用することもでき、かつ、抜き加工等により、被着体との接着面積、並びに被着体の形状に合わせて、高周波誘電加熱接着シートを任意の面積及び形状に加工できる。そのため、本実施形態に係る高周波誘電加熱接着シートは、製造工程の観点からも、利点が大きい。
【0085】
〔実施形態の変形〕
本発明は、前記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の目的を達成できる範囲での変形及び改良等を含むことができる。
【0086】
高周波誘電加熱接着シートは、粘着部を有していてもよい。粘着部を有することで、被着体と被着体との間に高周波誘電加熱接着シートを挟持する際に、位置ずれを防止して、正確な位置に配置できる。粘着部は、高周波誘電加熱接着シートの一方の面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。また、粘着部は、高周波誘電加熱接着シートの面に対して、部分的に設けられていてもよい。高周波誘電加熱接着シートは、粘着部を有していない場合でも、第一の被着体と第二の被着体とを強固に接着できる。
【0087】
高周波誘電加熱処理は、前記実施形態で説明した電極を対向配置させた誘電加熱接着装置に限定されず、格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いてもよい。格子電極タイプの高周波誘電加熱装置は、一定間隔ごとに第一極性の電極と、第一極性の電極とは反対極性の第二極性の電極とを同一平面上に交互に配列した格子電極を有する。
例えば、第一の被着体の端部と第二の被着体の端部とを重ね合わせて接着した接合体を製造する場合は、第一の被着体側又は第二の被着体側に格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を配置して高周波を印加する。
【0088】
格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いて第一の被着体と第二の被着体とを接着させる場合に、第一の被着体側に第一の格子電極を配置し、第二の被着体側に第二の格子電極を配置して、第一の被着体、高周波誘電加熱接着シート及び第二の被着体を、第一の格子電極と第二の格子電極との間に挟んで同時に高周波を印加してもよい。
【0089】
格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いて第一の被着体と第二の被着体とを接着させる場合に、第一の被着体及び第二の被着体の一方の面側に格子電極を配置し、高周波を印加し、その後、第一の被着体及び第二の被着体の他方の面側に格子電極を配置し、高周波を印加してもよい。
【0090】
高周波の印加には格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いることも好ましい。格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いることで、第一の被着体及び第二の被着体の厚さの影響を受けず、第一の被着体及び第二の被着体の表層側、例えば、高周波誘電加熱接着シートまでの距離が近い被着体側から誘電加熱することにより、被着体同士を接着できる。また、格子電極タイプの高周波誘電加熱装置を用いることで、接合体の製造の省エネルギー化を実現できる。
【0091】
なお、図においては、簡略化のために電極を対向配置させた誘電加熱接着装置を用いた態様を例示した。
【実施例】
【0092】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に何ら限定されない。
【0093】
[高周波誘電加熱接着シート作製方法]
実施例1〜16並びに比較例1〜6に係る接着シートは、次のようにして作製した。
表1に示す熱可塑性樹脂及び誘電フィラーを容器内で予備混合した。予備混合した材料を30mmφ二軸押出機のホッパーに供給し、シリンダー設定温度を180℃以上、200℃以下に設定し、ダイス温度を200℃に設定し、予備混合した材料を溶融混練することにより、粒状のペレットを得た。次いで、得られた粒状のペレットを、Tダイを設置した単軸押出機のホッパーに投入し、シリンダー温度を200℃、ダイス温度を200℃の条件として、Tダイから、フィルム状溶融混練物を押出し、冷却ロールにて冷却させることにより厚さ400μmの高周波誘電加熱接着シートを作製した。
【0094】
[改質処理]
作製した高周波誘電加熱接着シートの一方の表面(第一の表面)に対して表1に示す通り改質処理を施した。
【0095】
(コロナ処理)
作製した高周波誘電加熱接着シートの第一の表面にコロナ処理を施した。コロナ処理には、コロナ処理装置(春日電気株式会社製“AGF−B10”)を用いた。コロナ処理装置のライン速度と出力を調整し、放電量400W・min/mでコロナ処理した。
【0096】
(プラズマ処理)
また、作製した高周波誘電加熱接着シートの第一の表面にプラズマ処理を施した。プラズマ処理には、プラズマ処理装置(泉工業株式会社製“MODEL KI−110”)を用いた。プラズマ処理の条件は、大気下で、出力100Wとした。
【0097】
[高周波接着性]
作製した高周波誘電加熱接着シートを25mm×12.5mmの大きさに切断した。表1に示す第一の被着体及び第二の被着体を準備した。第一の被着体及び第二の被着体の大きさは、いずれも25mm×100mmとした。第一の被着体と第二の被着体との間に、前述の大きさに切断した高周波誘電加熱接着シートを挟んだ。このとき、高周波誘電加熱接着シートの第一の表面と第一の被着体とを接触させ、第二の表面と第二の被着体とを接触させた。第一の被着体、高周波誘電加熱接着シート及び第二の被着体を、高周波誘電加熱装置(山本ビニター株式会社製“YRP−400T−A”)の電極間に固定した。固定した状態で、下記高周波印加条件で高周波を印加して、高周波誘電加熱接着シートと被着体を接着させて、初期試験片を作製した。
【0098】
・高周波印加条件
周波数 :40.68MHz
出力 :100W
印加時間:10秒
【0099】
また、改質処理を施した高周波誘電加熱接着シートに関しては、改質処理から30日経過後の高周波誘電加熱接着シートを用いて、前述の初期試験片と同様にして、経時試験片を作成した。
【0100】
[接着力(引張せん断力)]
高周波接着性評価で得られた初期試験片及び経時試験片につき、接着力としての引張せん断力を測定した。引張せん断力の測定には、万能引張試験機(インストロン社製、インストロン5581)を用いた。引張せん断力の測定における引張速度は、100mm/分の条件とした。引張せん断力は、JIS K 6850:1999に準拠して測定した。引張せん断力の測定時の試験片の破壊モードを観察して、下記評価基準に沿って、接着力を評価した。接着力の評価結果を表1に示す。表1中、評価A2、評価F1又は評価F2の場合についは、引張せん断力の値が記載されている。比較例3の引張せん断力の値は、経時試験片(30日経過後)の測定値であり、比較例3以外の引張せん断力の値は、初期試験片の測定値である。
【0101】
・評価基準
評価A1:第一の被着体及び第二の被着体の少なくとも一方が破壊した。
評価A2:高周波誘電加熱接着シートが凝集破壊した。
評価F1:高周波誘電加熱接着シートと第一の被着体との間で層間剥離した。
評価F2:高周波誘電加熱接着シートと第二の被着体との間で層間剥離した。
【0102】
[平均粒子径]
レーザー回折・散乱法により、誘電フィラーの粒度分布を測定した。粒度分布測定の結果からJIS Z 8819−2:2001に準じて体積平均粒子径を算出した。算出した誘電フィラーの平均粒子径(体積平均粒子径)を表1に示す。
【0103】
[表面自由エネルギー]
各種液滴の接触角(測定温度:25℃)を測定し、その接触角の値に基づいて北崎・畑法により求める。ジヨードメタン、1−ブロモナフタレン、蒸留水を液滴として使用し、協和界面科学(株)製、DM−701を用いて、静滴法により、JIS R 3257:1999に準拠して接触角(測定温度:25℃)を測定し、その接触角の値に基づいて北崎・畑法により、表面自由エネルギーを求めた。表面自由エネルギーの単位は、mJ/mである。
表面自由エネルギーについては、高周波誘電加熱接着シートの表面を改質した直後、並びに30日経過後に測定した。表面自由エネルギーの測定結果を表1に示す。
【0104】
[引張破断伸度]
上記実施例および比較例で作製した高周波誘電加熱接着シートを15mm(TD方向)×150mm(MD方向)の試験片に裁断し、JIS K 7161−1:2014及びJIS K 7127:1999に準拠して、23℃における引張破断伸度(%)を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(島津製作所製,オートグラフAG−IS 500N)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/分の速度で引張試験を行い、引張破断伸度(%)を測定した。
【0105】
[誘電特性]
作製した高周波誘電加熱接着シートを、30mm×30mmの大きさに切断した。切断した高周波誘電加熱接着シートについて、RFインピーダンスマテリアルアナライザE4991A(Agilent社製)を用いて、23℃における周波数40.68MHzの条件下、誘電率(ε’)及び誘電正接(tanδ)をそれぞれ測定した。測定結果に基づき、誘電特性(tanδ/ε’)の値を算出した。例えば、実施例1、実施例11及び実施例12に係る高周波誘電加熱接着シートの誘電特性(tanδ/ε’)は、次の通りであった。
実施例1 :0.016
実施例11 :0.008
実施例12 :0.038
【0106】
【表1】
【0107】
表1中に示された記号等の説明は、次の通りである。
【0108】
・熱可塑性樹脂
EVA1:エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの共重合比率:6質量%)
【0109】
EVA2:エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの共重合比率:16質量%)
【0110】
EVA3:エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの共重合比率:25質量%)
【0111】
EVA4:エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニルの共重合比率:28質量%)
【0112】
VA比率 :酢酸ビニルの共重合比率
PE :ポリエチレン
MAH−PE:無水マレイン酸変性ポリエチレン
【0113】
・誘電フィラー
ZnO:酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製“LPZINC11”、平均粒子径:11μm、及び堺化学工業株式会社製“LPZINC5”、平均粒子径:5μm)
【0114】
・第一の被着体
ACR1:アクリルフィルム(株式会社クラレ製“パラピュアJSグレード”、25mm×100mm×0.2mm)
PU:ポリウレタンフィルム(クラレプラスチックス株式会社製“PUK-350”、25mm×100mm×0.35mm)
PES:ポリエステルフィルム(東レ株式会社製“S10 ルミラー”、25mm×100mm×0.188mm)
ACR2:アクリル(平岡織染株式会社製“ウルトラマックス U−21シルバー”、25mm×100mm×0.47mm)
なお、ACR2を用いて試験片を作成する際は、ACR2のアクリルコート面に高周波誘電加熱接着シートを接着させた。
【0115】
・第二の被着体
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体(石塚株式会社製“オレフィンターポリン EVA25”、25mm×100mm×0.32mm)
PE:ポリエチレン(住友化学株式会社製“スミカセンL705”を成形したシート、25mm×100mm×0.40mm)
【0116】
実施例1〜16に係る高周波誘電加熱接着シートは、改質処理の直後、並びに改質から30日経過後における表面自由エネルギーが、40mJ/m以上のシート表面を有していたため、改質処理の直後における接着力、並びに改質から30日経過後における接着力の評価において、第一の被着体(ACR1、ACR2、PU又はPES)及び第二の被着体(EVA又はPE)の少なくとも一方が破壊したか、又は高周波誘電加熱接着シートが凝集破壊し、A1評価またはA2評価であった。
なお、実施例6に係る高周波誘電加熱接着シートは、VA比率が28質量%のEVAを80体積%含有しており、当該シートに横縞及び皺が発生したため、外観不良であった。
比較例1、2及び4に係る高周波誘電加熱接着シートは、シート表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m未満であったため、改質処理の直後における接着力評価において、高周波誘電加熱接着シートと第一の被着体(ACR1)との間で層間剥離し、F1評価であった。
比較例3に係る高周波誘電加熱接着シートは、改質から30日経過後にシート表面の表面自由エネルギーが、40mJ/m未満に低下した。その結果、比較例3に係る高周波誘電加熱接着シートは、改質から30日経過後における接着力の評価において、高周波誘電加熱接着シートと第一の被着体(ACR1)との間で層間剥離し、F1評価であった。
比較例5及び6に係る高周波誘電加熱接着シートは、改質処理の直後、並びに改質から30日経過後における表面自由エネルギーが、40mJ/m以上のシート表面を有していたが、熱可塑性樹脂としてアクリル樹脂又はポリエステル樹脂を含有しており、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含有していなかったため、高周波誘電加熱接着シートと第二の被着体(EVA)との間で層間剥離し、F2評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明に係る高周波誘電加熱接着シートは、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体と、ポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体と、を接着するシート状の接着剤として利用できる。例えば、本発明に係る高周波誘電加熱接着シートは、布帛、不織布、樹脂シート、又は繊維強化樹脂シート(ターポリン)の接着に利用できる。
【符号の説明】
【0118】
10…高周波誘電加熱接着シート、11…第一の表面、110…第一の被着体、12…第二の表面、120…第二の被着体、30…誘電加熱接着装置、31…第一高周波印加電極、32…第二高周波印加電極、33…高周波電源。
【要約】
高周波誘電加熱接着シート(10)であって、エチレン−酢酸ビニル共重合体と、高周波で発熱する誘電フィラーと、を含有し、第一の表面(11)と、第一の表面(11)とは反対側の第二の表面(12)と、を有し、第一の表面(11)の表面自由エネルギーが、40mJ/m以上であり、第一の表面(11)にアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリエステル系樹脂からなる群から選択されるいずれかの樹脂を含む第一の被着体を接着し、第二の表面(12)にポリオレフィン系樹脂からなる第二の被着体を接着することに用いられる、高周波誘電加熱接着シート(10)。
図1
図2