特許第6961860号(P6961860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961860補体C5の発現を抑制する二本鎖リボ核酸を含む医薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6961860
(24)【登録日】2021年10月15日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】補体C5の発現を抑制する二本鎖リボ核酸を含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/713 20060101AFI20211025BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20211025BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20211025BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20211025BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61K31/713
   A61K9/107
   A61K47/14
   A61K47/22
   A61K47/28
   A61K47/69
   A61K48/00
   A61P13/02
【請求項の数】20
【全頁数】60
(21)【出願番号】特願2021-534788(P2021-534788)
(86)(22)【出願日】2020年12月24日
(86)【国際出願番号】JP2020048441
【審査請求日】2021年6月16日
(31)【優先権主張番号】特願2019-236918(P2019-236918)
(32)【優先日】2019年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「医療研究開発革新基盤創成事業」「新規の核酸合成とデリバリー技術を用いた核酸創薬研究」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506137147
【氏名又は名称】エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(74)【代理人】
【識別番号】100211199
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 さやか
(72)【発明者】
【氏名】竹本 誠二
(72)【発明者】
【氏名】新瀬 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕太
【審査官】 吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−518331(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/105131(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/222016(WO,A1)
【文献】 BALL, R. L. et al.,Achieving long-term stability of lipid nanoparticles: examining the effect of pH, temperature, and l,International Journal of Nanomedicine,2017年,12,p.305-315
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/713
A61K 9/107
A61K 47/14
A61K 47/22
A61K 47/28
A61K 47/69
A61K 48/00
A61P 13/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質複合体を含む医薬組成物であって、
脂質複合体が、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸を含み、
脂質複合体の溶液のpHが5.0以下又は7.5以上である、医薬組成物。
【請求項2】
脂質複合体の溶液のpHが2.0以上5.0以下又は7.5以上11.0以下である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
脂質複合体の溶液のpHが7.5以上10.0以下である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
脂質複合体の平均粒子径が100nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
脂質複合体の平均粒子径が65nm以上100nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
脂質複合体の平均粒子径が80nm以上100nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
2週間保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して10%以内である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
脂質複合体の平均粒子径の変動が、脂質複合体の平均粒子径の増大である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
脂質複合体が、
カチオン性脂質と、
中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選択される少なくとも一種の脂質と
を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
カチオン性脂質が、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレートである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
脂質複合体が、脂質ナノ粒子(LNP)である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
脂質複合体が、センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせを有する二本鎖リボ核酸を封入している、請求項1〜11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療用である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
非典型溶血性尿毒症症候群の治療用である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物の製造方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを5.0以下又は7.5以上に調整する工程を含む、製造方法。
【請求項16】
脂質複合体の溶液のpHを2.0以上5.0以下又は7.5以上11.0以下に調整する工程を含む、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物の安定化方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを5.0以下又は7.5以上に調整する工程を含む、安定化方法。
【請求項18】
脂質複合体の溶液のpHを2.0以上5.0以下又は7.5以上11.0以下に調整する工程を含む、請求項17に記載の安定化方法。
【請求項19】
医薬組成物の安定化方法が、医薬組成物中の脂質複合体の平均粒子径の変動を抑制する方法である、請求項17又は請求項18に記載の安定化方法。
【請求項20】
平均粒子径の変動を抑制する方法が、平均粒子径の増大を抑制する方法である、請求項19に記載の安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補体C5の発現を抑制する二本鎖リボ核酸(dsRNA)を含む医薬組成物に関する。より具体的には、本発明は、補体C5の発現を抑制する二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体を含む医薬組成物、該医薬組成物の製造方法及び該医薬組成物の安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
補体と呼ばれるタンパク群にはC1〜C9で表されるタンパク質があり、これらのタンパク質が3つの異なる経路(古典的経路、レクチン経路、第二経路)により連鎖的に活性化されることにより、免疫反応が引き起こされる。補体の第5成分であるC5は、C5転換酵素によりC5aとC5bに分解される。生じたC5aはアナフィラトキシンと呼ばれ、C5aR(CD88)及びC5L2(GPR77)を介して様々な細胞に炎症反応を惹起する。生じたC5bは、C6−C9と順次反応することで最終産物である膜侵襲複合体(MAC)となり、病原体の溶菌・細胞融解を引き起こす。補体系は、適切な制御を受けられない場合や過剰な活性化が起きている場合には、宿主細胞に対して強力な傷害作用を与える可能性がある。
【0003】
従来の研究から、補体C5は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、重症筋無力症(MG)、視神経脊髄炎(NMO)、抗体関連型腎移植拒絶反応、ギラン・バレー症候群、抗好中球細胞質抗体関連血管炎(ANCA関連血管炎)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病(PD)、自己免疫性脳炎、IgG4関連疾患、喘息、抗リン脂質抗体症候群、虚血−再かん流傷害、典型溶血性尿毒症症候群(tHUS)、多巣性運動ニューロパチー(MMN)、多発性硬化症(MS)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自然流産、習慣性流産、外傷性脳損傷、寒冷凝集素症、皮膚筋炎、志賀毒素産生性大腸菌(E.coli)に関連する溶血性尿毒症症候群、移植片機能不全、心筋梗塞、敗血症、アテローム性動脈硬化症、敗血症性ショック、脊髄損傷、乾癬、自己免疫溶血性貧血(AIHA)、抗リン脂質症候群(APS)、心筋炎、免疫複合体性血管炎、高安病、川崎病(動脈炎)等の様々な疾患への関与が知られている。したがって、補体C5の阻害又は発現抑制は、これら疾患の治療につながることが期待される。特に、発作性夜間ヘモグロビン尿症(非特許文献1)、非典型溶血性尿毒症症候群(非特許文献2)、重症筋無力症(非特許文献3)、視神経脊髄炎(非特許文献4)、抗体関連型腎移植拒絶反応(非特許文献5)については、補体C5の阻害がこれら疾患の治療又は予防に対して有用であることが示唆されている。
【0004】
抗C5モノクローナル抗体であるエクリズマブ(ソリリス(登録商標))は、補体C5に高親和性を示し、C5からC5a/C5bへの開裂とそれに伴う膜侵襲複合体の形成を阻害することにより、補体の過剰な活性化を抑制する。これにより、エクリズマブは、その溶血に対する抑制効果が示され、発作性夜間ヘモグロビン尿症や非典型溶血性尿毒症症候群の治療剤として知られている。また、エクリズマブは、全身型重症筋無力症(gMG)の治療剤としても知られている。しかしながら、エクリズマブは非常に高価であることから、補体C5関連疾患の治療及び予防に用いうる代替手段の開発が望まれている。
【0005】
補体C5の発現を抑制する方法としては、例えば、RNA干渉(RNA interference、以下「RNAi」ともいう)を利用した方法が挙げられる。例えば、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)を介したC5遺伝子のRNA転写物の切断をもたらす二本鎖リボ核酸(dsRNA)剤が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/160129号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Peter Hillmen et al., The New England Journal of Medicine 2004 Feb 5;350(6):552−559
【非特許文献2】Legendre CM et al., The New England Journal of Medicine 2013 Jun 6;368(23):2169−2181
【非特許文献3】Howard JF Jr et al., Muscle Nerve 2013 Jul;48(1):76−84
【非特許文献4】Pittock SJ et al., The Lancet Neurology 2013 Jun;12(6):554−562
【非特許文献5】Stegall MD et al., American Journal of Transplantation 2011 Nov;11(11):2405−2413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、補体C5の発現を抑制するための新規な二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体含む医薬組成物、該医薬組成物の製造方法及び該医薬組成物の安定化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、例えば、以下の[1]〜[81]を提供する。
[1] 脂質複合体を含む医薬組成物であって、
脂質複合体が、センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせを有する二本鎖リボ核酸を含み、
センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせが、
配列番号159に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号160に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号141に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号142に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号143に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号144に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号147に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号148に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、並びに配列番号153に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号154に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖からなる群から選択され、
脂質複合体の溶液のpHが5.0以下又は7.5以上である、医薬組成物。
[2] 脂質複合体を含む医薬組成物であって、
脂質複合体が、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸を含み、
脂質複合体の溶液のpHが5.0以下又は7.5以上である、医薬組成物。
[3] 脂質複合体の溶液のpHが2.0以上5.0以下又は7.5以上11.0以下である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[4] 脂質複合体の溶液のpHが5.0以下である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[5] 脂質複合体の溶液のpHが2.0以上5.0以下である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[6] 脂質複合体の溶液のpHが7.5以上である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[7] 脂質複合体の溶液のpHが7.5以上11.0以下である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[8] 脂質複合体の溶液のpHが7.5以上10.0以下である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[9] 脂質複合体の溶液のpHが7.5以上9.5以下である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[10] 脂質複合体の溶液のpHが7.5以上9.0以下である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[11] 脂質複合体の溶液のpHが7.5以上8.5以下である、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[12] 脂質複合体の平均粒子径が100nm以下である、[1]〜[11]のいずれかに記載の医薬組成物。
[13] 脂質複合体の平均粒子径が65nm以上100nm以下である、[1]〜[12]のいずれかに記載の医薬組成物。
[14] 脂質複合体の平均粒子径が80nm以上100nm以下である、[1]〜[12]のいずれかに記載の医薬組成物。
[15] 脂質複合体の平均粒子径が85nm以上100nm以下である、[1]〜[12]のいずれかに記載の医薬組成物。
[16] 2週間保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して10%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[17] 2週間保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して8%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[18] 2週間保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して5%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[19] 1ヶ月保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して10%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[20] 1ヶ月保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して8%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[21] 1ヶ月保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して5%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[22] 3ヶ月保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して10%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[23] 3ヶ月保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して8%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[24] 3ヶ月保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動が、保存前の脂質複合体の平均粒子径に対して5%以内である、[1]〜[15]のいずれかに記載の医薬組成物。
[25] 平均粒子径の変動が、平均粒子径の増大である、[16]〜[24]のいずれかに記載の医薬組成物。
[26] 医薬組成物の保存条件が2〜8℃である、[16]〜[25]のいずれかに記載の医薬組成物。
[27] 医薬組成物の保存条件が25℃である、[16]〜[25]のいずれかに記載の医薬組成物。
[28] 脂質複合体が、
カチオン性脂質と、
中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選択される少なくとも一種の脂質と
を含む、[1]〜[27]のいずれかに記載の医薬組成物。
[29] 脂質複合体が、
カチオン性脂質、中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールを含む、[1]〜[28]のいずれかに記載の医薬組成物。
[30] カチオン性脂質が、
1−オキソ−1−(ウンデカン−5−イルオキシ)ノナデカン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((2−ブチルオクチル)オキシ)−1−オキソノナデカン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−オキソ−1−(ウンデカン−5−イルオキシ)ヘプタデカン−8−イル−1−メチルピペリジン4−カルボキシレート、21−オキソ−21−(ウンデカン−5−イルオキシ)ヘンイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン4−カルボキシレート、21−(オクタン−3−イルオキシ)−21−オキソヘンイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((2−ブチルオクチル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、(Z)−1−((2−ブチルノン−3−エン−1−イル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−オキソ−1−((3−ペンチルオクチル)オキシ)イコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((3,4−ジプロピルヘプチル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((6−(ブチルジスルファニル)−3−(3−(ブチルジスルファニル)プロピル)ヘキシル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、2−ブチルオクチル−10−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)イコサノエート、2−{9−[(2−ブチルオクチル)オキシ]−9−オキソノニル}ドデシル1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、2−ノニル−11−オキソ−11−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ウンデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、ビス(3−ペンチルオクチル) 9―{[(1−メチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ]メチル}ヘプタデカンジオエート、ジ[(Z)−2−ノネン−1−イル] 9―{[(1−メチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ]メチル}ヘプタデカンジオエート、1−(2−オクチルシクロプロピル)ヘプタデカン−8−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、(3S)−2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピロリジン−3−カルボキシレート及び(3R)−2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピロリジン−3−カルボキシレートからなる群から選択される、
[28]又は[29]に記載の医薬組成物。
[31] カチオン性脂質が、
1−((2−ブチルオクチル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((2−ブチルオクチル)オキシ)−1−オキソノナデカン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−(2−オクチルシクロプロピル)ヘプタデカン−8−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、(3S)−2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピロリジン−3−カルボキシレート及び(3R)−2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピロリジン−3−カルボキシレートからなる群から選択される、
[28]〜[30]のいずれかに記載の医薬組成物。
[32] カチオン性脂質が、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレートである、[28]〜[31]のいずれかに記載の医薬組成物。
[33] 中性脂質が、リン脂質又はセラミドである、[28]〜[32]のいずれかに記載の医薬組成物。
[34] リン脂質が、
DOPE、POPE、HSPC、SOPC、POPC、EPC、DMPC、DPPC、DSPC、DAPC、DBPC、DLPC、DOPC、DOPG、DPPG、DSPG、DOPS、DOPE−MAL及びスフィンゴミエリンからなる群から選択される、
[33]に記載の医薬組成物。
[35] リン脂質が、
DOPE、HSPC、DPPC、DSPC及びDAPCからなる群から選択される、
[33]又は[34]に記載の医薬組成物。
[36] リン脂質が、DSPCである、[33]〜[35]のいずれかに記載の医薬組成物。
[37] ポリエチレングリコール修飾脂質が、
PEG2000−DMG、PEG2000−DPG、PEG2000−DSG、PEG5000−DMG、PEG5000−DPG、PEG5000−DSG、PEG−cDMA、PEG−C−DOMG、PEG−DAG、PEG−DAA、PEG−リン脂質、PEG−コレステロール及びPEG−セラミド(Cer)からなる群から選択される、
[28]〜[36]のいずれかに記載の医薬組成物。
[38] ポリエチレングリコール修飾脂質が、
PEG2000−DMG、PEG2000−DPG、PEG2000−DSG、PEG−cDMA及びPEG−C−DOMGからなる群から選択される、
[28]〜[37]のいずれかに記載の医薬組成物。
[39] ポリエチレングリコール修飾脂質が、PEG2000−DMGである、[28]〜[38]のいずれかに記載の医薬組成物。
[40] ステロールが、
コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、フコステロール及び3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)からなる群から選択される、
[28]〜[39]のいずれかに記載の医薬組成物。
[41] ステロールが、
コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール及びβ−シトステロールからなる群から選択される、
[28]〜[40]のいずれかに記載の医薬組成物。
[42] ステロールが、コレステロールである、[28]〜[41]のいずれかに記載の医薬組成物。
[43] 脂質複合体が、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、DSPC、PEG2000−DMG及びコレステロールを含む、
[1]〜[42]のいずれかに記載の医薬組成物。
[44] 脂質複合体におけるカチオン性脂質/中性脂質/ポリエチレングリコール修飾脂質/ステロールのモル比割が、30〜90/0.1〜20/0.01〜10/0.1〜70である、[1]〜[43]のいずれかに記載の医薬組成物。
[45] 脂質複合体におけるカチオン性脂質/中性脂質/ポリエチレングリコール修飾脂質/ステロールのモル比割が、40〜70/3〜15/0.1〜3/15〜60である、[1]〜[43]のいずれかに記載の医薬組成物。
[46] 脂質複合体におけるカチオン性脂質/中性脂質/ポリエチレングリコール修飾脂質/ステロールのモル比割が、60/10.5/1.5/28である、[1]〜[43]のいずれかに記載の医薬組成物。
[47] 脂質複合体が、脂質ナノ粒子(LNP)である、[1]〜[46]のいずれかに記載の医薬組成物。
[48] 脂質複合体が、センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせを有する二本鎖リボ核酸を封入している、[1]〜[47]のいずれかに記載の医薬組成物。
[49] [1]〜[48]のいずれかに記載の医薬組成物であって、薬学的に許容される担体をさらに含む、医薬組成物。
[50] 発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療用である、[1]〜[49]のいずれかに記載の医薬組成物。
[51] 非典型溶血性尿毒症症候群の治療用である、[1]〜[49]のいずれかに記載の医薬組成物。
[52] [1]〜[49]のいずれかに記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療方法。
[53] [1]〜[49]のいずれかに記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、非典型溶血性尿毒症症候群の治療方法。
[54] 発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療における使用のための[1]〜[49]のいずれかに記載の医薬組成物。
[55] 非典型溶血性尿毒症症候群の治療における使用のための[1]〜[49]のいずれかに記載の医薬組成物。
[56] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを5.0以下又は7.5以上に調整する工程を含む、製造方法。
[57] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、脂質複合体の溶液のpHを2.0以上5.0以下又は7.5以上11.0以下に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[58] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、脂質複合体の溶液のpHを5.0以下に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[59] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、脂質複合体の溶液のpHを2.0以上5.0以下に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[60] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、脂質複合体の溶液のpHを7.5以上に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[61] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、脂質複合体の溶液のpHを7.5以上11.0以下に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[62] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを7.5以上10.0以下に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[63] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを7.5以上9.5以下に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[64] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを7.5以上9.0以下に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[65] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを7.5以上8.5以下に調整する工程を含む、[56]に記載の製造方法。
[66] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の製造方法であって、
(I)カチオン性脂質と(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質を含む有機溶媒と、
センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせを有する二本鎖リボ核酸を含有する水溶液を混合して混合液を得る工程を含む、
[56]〜[65]のいずれかに記載の製造方法。
[67] [1]〜[55]に記載の医薬組成物の製造方法であって、
混合液から有機溶媒を除去する工程をさらに含む、[66]に記載の製造方法。
[68] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを5.0以下又は7.5以上に調整する工程を含む、安定化方法。
[69] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、脂質複合体の溶液のpHを2.0以上5.0以下又は7.5以上11.0以下に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[70] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、脂質複合体の溶液のpHを5.0以下に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[71] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、脂質複合体の溶液のpHを2.0以上5.0以下に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[72] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、脂質複合体の溶液のpHを7.5以上に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[73] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、脂質複合体の溶液のpHを7.5以上11.0以下に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[74] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを7.5以上10.0以下に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[75] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを7.5以上9.5以下に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[76] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを7.5以上9.0以下に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[77] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、
脂質複合体の溶液のpHを7.5以上8.5以下に調整する工程を含む、[68]に記載の安定化方法。
[78] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、
(I)カチオン性脂質と(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質を含む有機溶媒と、
センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせを有する二本鎖リボ核酸を含有する水溶液を混合して混合液を得る工程を含む、
[68]〜[77]のいずれかに記載の安定化方法。
[79] [1]〜[55]のいずれかに記載の医薬組成物の安定化方法であって、
混合液から有機溶媒を除去する工程をさらに含む、[78]に記載の安定化方法。
[80] 医薬組成物の安定化方法が、医薬組成物中の脂質複合体の平均粒子径の変動を抑制する方法である、[68]〜[79]のいずれかに記載の安定化方法。
[81] 平均粒子径の変動を抑制する方法が、平均粒子径の増大を抑制する方法である、[80]に記載の安定化方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補体C5の発現を抑制する新規な二本鎖リボ核酸を含む医薬組成物、該医薬組成物の製造方法及び該医薬組成物の安定化方法を提供することができる。
【0011】
本発明に係る医薬組成物は、補体C5の発現を抑制し、溶血を抑制する作用を有するため、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)や非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の治療剤としての利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例5における、siRNA−008投与後の肝臓中C5 mRNA残存率及びsiRNA−008−34投与後の肝臓中C5 mRNA残存率の結果を示す図である。
図2】実施例5における、siRNA−008投与後の血漿中C5残存率及びsiRNA−008−34投与後の血漿中C5残存率の結果を示す図である。
図3】実施例8における、siRNA−008−34投与後の補体活性の結果を示す図である。
図4】実施例9における、siRNA−008−34投与後の補体活性の結果を示す図である。
図5】実施例10における、siRNA−008−34投与後の補体活性の結果を示す図である。
図6】実施例11における、siRNA−008−34投与後の補体活性の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る二本鎖リボ核酸が標的とする補体C5をコードする遺伝子としては、例えば、ヒト、マウス及びサル由来のC5が挙げられるが、これらに限られない。C5遺伝子の配列情報は、米国の国立生物工学情報センター(NCBI)が提供するGenBank等、配列情報が登録された公共のデータベースから入手できるほか、近縁関係にある動物種のC5の塩基配列情報を元にプライマーを設計し、所望の動物種から抽出したRNAからクローニングすることで、入手することが可能である。標的遺伝子human C5に対応するmRNA転写物の配列としては、例えば、GenBank Accession No.NM_001735.2(GI:38016946)のヒトC5 mRNA転写物の配列が挙げられる。本明細書においてC5遺伝子とは、特定の配列を有する遺伝子を意味するものではなく、例えば、天然に存在する一塩基多型を有するC5遺伝子も含まれる。
【0014】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせが、配列番号13に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号14に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号159に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号160に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号115に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号116に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号117に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号118に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号119に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号120に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号121に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号122に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号123に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号124に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号125に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号126に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号127に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号128に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号129に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号130に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号131に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号132に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号133に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号134に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号137に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号138に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号139に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号140に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号141に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号142に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号143に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号144に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号147に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号148に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号149に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号150に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号151に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号152に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、並びに配列番号153に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号154に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖からなる群から選択される。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008、siRNA−008−01、siRNA−008−02、siRNA−008−08、siRNA−008−09、siRNA−008−10、siRNA−008−11、siRNA−008−12、siRNA−008−13、siRNA−008−14、siRNA−008−22、siRNA−008−23、siRNA−008−30、siRNA−008−31、siRNA−008−32、siRNA−008−33、siRNA−008−34、siRNA−008−35、siRNA−008−36、siRNA−008−37、及びsiRNA−008−38の配列にそれぞれ該当する。
【0015】
上記実施形態において、二本鎖リボ核酸は、下記の(1)〜(21)のいずれかの組み合わせのセンス鎖及びアンチセンス鎖が対形成している。
(1)配列番号13に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号14に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(2)配列番号159に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号160に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(3)配列番号115に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号116に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(4)配列番号117に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号118に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(5)配列番号119に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号120に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(6)配列番号121に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号122に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(7)配列番号123に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号124に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(8)配列番号125に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号126に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(9)配列番号127に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号128に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(10)配列番号129に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号130に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(11)配列番号131に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号132に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(12)配列番号133に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号134に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(13)配列番号137に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号138に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(14)配列番号139に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号140に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(15)配列番号141に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号142に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(16)配列番号143に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号144に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(17)配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(18)配列番号147に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号148に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(19)配列番号149に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号150に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(20)配列番号151に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号152に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
(21)配列番号153に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号154に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖
【0016】
上記(1)〜(21)のセンス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせは互いに相補的な領域を含む。例えば、配列番号13に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号14に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖の組み合わせである、上記(1)を有する二本鎖リボ核酸は、以下の相補鎖を含む(それぞれ3’末端のdT^dTを除く、詳細は表1参照)。
5’−uGGuAuAuGuGuuGcuGAu−3’(配列番号13)
3’−AcCAuAuAcAcAAcGAcUA−5’(配列番号14)
【0017】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせが、配列番号159に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号160に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号139に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号140に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号141に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号142に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号143に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号144に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号147に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号148に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、並びに配列番号153に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号154に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖からなる群から選択される。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−01、siRNA−008−31、siRNA−008−32、siRNA−008−33、siRNA−008−34、siRNA−008−35、及びsiRNA−008−38の配列にそれぞれ該当する。
【0018】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせが、配列番号159に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号160に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号141に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号142に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号143に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号144に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号147に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号148に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、並びに配列番号153に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号154に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖からなる群から選択される。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−01、siRNA−008−32、siRNA−008−33、siRNA−008−34、siRNA−008−35、及びsiRNA−008−38の配列にそれぞれ該当する。
【0019】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、センス鎖及びアンチセンス鎖の組み合わせが、配列番号141に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号142に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号143に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号144に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、配列番号147に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号148に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖、並びに配列番号153に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号154に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖からなる群から選択される。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−32、siRNA−008−33、siRNA−008−34、siRNA−008−35、siRNA−008−38の配列にそれぞれ該当する。
【0020】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、配列番号159に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号160に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−01の配列に該当する。
【0021】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、配列番号141に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号142に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−32の配列に該当する。
【0022】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、配列番号143に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号144に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−33の配列に該当する。
【0023】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−34の配列に該当する。
【0024】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、配列番号147に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号148に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−35の配列に該当する。
【0025】
一実施形態において、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸は、配列番号153に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖、及び配列番号154に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する。上記組み合わせは、本明細書中のsiRNA−008−38の配列に該当する。
【0026】
本実施形態において、アンチセンス鎖は、C5遺伝子のmRNA転写物の少なくとも一部に実質的に相補的である。ここで、実質的に相補的とは、C5遺伝子のmRNA転写物と完全に相補的な場合のみではなく、許容される1〜数個のミスマッチを含む場合も包含することを意味する。
【0027】
本実施形態において、センス鎖は、アンチセンス鎖の塩基配列の少なくとも一部に実質的に相補的である。実質的に相補的とは、アンチセンス鎖の塩基配列と完全に相補的な場合のみではなく、許容される1〜数個のミスマッチを含む場合も包含することを意味する。センス鎖及びアンチセンス鎖のいずれか長い方のオリゴヌクレオチドが、短い方のオリゴヌクレオチドに対して完全に相補的な塩基配列を含む場合、「完全に相補的」と表すこともできる。
【0028】
本実施形態において、二本鎖リボ核酸は、後述するように、修飾されたヌクレオチドも含む(表1も参照)。そのため、本明細書においてヌクレオチドとは、グアノシン−3’−リン酸、シチジン−3’−リン酸、アデノシン−3’−リン酸及びウリジン−3’−リン酸だけでなく、各種修飾ヌクレオチドをも包含する意味で用いる。
【0029】
本明細書において、「二本鎖リボ核酸」又は「dsRNA」とは、2本の逆平行で且つ実質的に相補的なオリゴヌクレオチドを含む二本鎖構造を有するリボ核酸(RNA)分子又はその複合体をいう。また、本明細書において、二本鎖リボ核酸としては、例えばsiRNA(small interfering RNA)が挙げられるが、特にこれに限定されない。本実施形態に係る二本鎖リボ核酸は、センス鎖及びアンチセンス鎖を有する。本実施形態に係る二本鎖リボ核酸を使用したRNAiにより、RISC複合体内で標的mRNA分子としてC5遺伝子のmRNAが分解され、その結果としてC5の発現が抑制される。例えば、対象の細胞内におけるC5の発現を抑制する。
【0030】
本実施形態に係る二本鎖リボ核酸は、当該技術分野における公知の化学合成を用いる方法(例えば、Nucleic Acid Research、35(10)、3287−96(2007)に記載)及び酵素的転写法等により合成できる。
【0031】
本実施形態に係る二本鎖リボ核酸は各種修飾を含む。修飾は、当該技術分野における公知の方法により行うことができる。修飾としては、例えば、糖修飾が挙げられる。
【0032】
糖修飾としては、例えば、リボヌクレオシドを構成するリボース部の修飾であって、2’位のヒドロキシ基における置換若しくは付加が挙げられ、具体的には、例えば、ヒドロキシ基をメトキシ基に置換した2’−O−メチル修飾ヌクレオチドが挙げられる。表1において、小文字のa、u、g及びcで表されたヌクレオチドは、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを表し、本実施形態に係る二本鎖リボ核酸のセンス鎖及びアンチセンス鎖は、2’−O−メチル修飾ヌクレオチドを含む。
【0033】
また、センス鎖及びアンチセンス鎖が二重鎖を形成する領域の3’側又は5’側に、オーバーハングと呼ばれる追加のヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体を挿入することで、二本鎖リボ核酸を修飾することもできる。本実施形態に係る二本鎖リボ核酸は、配列番号13及び配列番号14のように、センス鎖及びアンチセンス鎖の3’末端にデオキシ−チミジン(dT)を有するもの、配列番号129のように、逆向きに結合したデオキシ−チミジン(idT)を有するものを含む。また本実施形態に係る二本鎖リボ核酸は、オーバーハング配列としてU及びA等が付加されたもの、例えば、配列番号140及び142のように、アンチセンス鎖の3’末端に、UUUUが付加されたものも含む。
【0034】
また、ホスホジエステル結合の修飾又は置換により、二本鎖リボ核酸を骨格修飾することもできる。ホスホジエステル結合の修飾又は置換としては、例えば、ホスホロチオエート結合が挙げられる。本実施形態に係る二本鎖リボ核酸は、例えば、配列番号13、配列番号14、及び配列番号121のように、ホスホロチオエート結合を介して隣接するヌクレオチドが存在するものも含む。
【0035】
(脂質複合体)
本実施形態に係る医薬組成物は、二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体を含む。一実施形態において脂質複合体は、I)上記二本鎖リボ核酸と、(II)カチオン性脂質と、(III)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質(PEG脂質)及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質と、を含有する。本明細書において、脂質複合体としては、例えばLNP(脂質ナノ粒子)が挙げられるが、特にこれに限定されない。特定の実施形態において、医薬組成物は、二本鎖リボ核酸を封入している脂質複合体を含む。別の実施形態に係る医薬組成物は、二本鎖リボ核酸を含む脂質ナノ粒子を含む。
【0036】
カチオン性脂質を含有する脂質と二本鎖リボ核酸とで形成される脂質複合体の形態としては、例えば、二本鎖リボ核酸と脂質一重(一分子)層からなる膜(逆ミセル)との複合体、二本鎖リボ核酸とリポソームとの複合体、二本鎖リボ核酸とミセルとの複合体等が挙げられる。本発明の一実施形態の脂質複合体において、二本鎖リボ核酸はカチオン性脂質を含有する脂質で構成された微粒子内に封入されている。
【0037】
一実施形態において、脂質複合体は、脂質複合体の全重量に対して、上記二本鎖リボ核酸を例えば、0.01〜50重量%、0.1〜30重量%又は1〜10重量%含有する。
【0038】
カチオン性脂質とは、一つ以上の炭化水素基を含む脂質親和性領域と、特定のpHでプロトン化する極性基を含む親水性領域を有する両親媒性分子である。本実施形態に係るカチオン性脂質としては、特に限定されるものではないが、例えば、国際公開第2015/105131号、国際公開第2016/104580号、国際公開第2017/222016号に記載されたカチオン性脂質を用いることができ、また、生分解能を向上させた国際公開第2016/104580号又は国際公開第2017/222016号に記載されたカチオン性脂質を用いることができる。一実施形態に係るカチオン性脂質としては、例えば、1−オキソ−1−(ウンデカン−5−イルオキシ)ノナデカン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((2−ブチルオクチル)オキシ)−1−オキソノナデカン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−オキソ−1−(ウンデカン−5−イルオキシ)ヘプタデカン−8−イル−1−メチルピペリジン4−カルボキシレート、21−オキソ−21−(ウンデカン−5−イルオキシ)ヘンイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン4−カルボキシレート、21−(オクタン−3−イルオキシ)−21−オキソヘンイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((2−ブチルオクチル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、(Z)−1−((2−ブチルノン−3−エン−1−イル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−オキソ−1−((3−ペンチルオクチル)オキシ)イコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((3,4−ジプロピルヘプチル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((6−(ブチルジスルファニル)−3−(3−(ブチルジスルファニル)プロピル)ヘキシル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、2−ブチルオクチル−10−((4−(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)イコサノエート、2−{9−[(2−ブチルオクチル)オキシ]−9−オキソノニル}ドデシル1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、2−ノニル−11−オキソ−11−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ウンデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、ビス(3−ペンチルオクチル) 9―{[(1−メチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ]メチル}ヘプタデカンジオエート、ジ[(Z)−2−ノネン−1−イル] 9―{[(1−メチルピペリジン−4−カルボニル)オキシ]メチル}ヘプタデカンジオエート、1−(2−オクチルシクロプロピル)ヘプタデカン−8−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、(3S)−2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピロリジン−3−カルボキシレート、(3R)−2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピロリジン−3−カルボキシレート等が挙げられる。一実施形態において、カチオン性脂質は、1−((2−ブチルオクチル)オキシ)−1−オキソイコサン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−((2−ブチルオクチル)オキシ)−1−オキソノナデカン−10−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、1−(2−オクチルシクロプロピル)ヘプタデカン−8−イル−1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、(3S)−2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピロリジン−3−カルボキシレート又は(3R)−2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピロリジン−3−カルボキシレートである。特定の実施形態において、カチオン性脂質は、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレートである。
【0039】
一実施形態において、脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、上述したカチオン性脂質を、例えば、10〜100モル%、20〜90モル%、30〜90モル%、又は40〜70モル%含有する。カチオン性脂質は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
一実施形態において、脂質複合体は、脂質成分として、(I)上述したカチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを含有する。本実施形態に係る脂質複合体は、脂質複合体の全重量に対して、脂質成分を例えば、50〜99.99重量%、70〜99.9重量%又は90〜99重量%含有する。
【0041】
中性脂質とは、生理的pHで、非電荷又は中性の両性イオンの形のいずれかで存在する脂質を意味する。本実施形態に係る中性脂質としては、例えば、リン脂質又はセラミド等が挙げられる。本実施形態に係るリン脂質としては、例えば、DOPE(1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine)、POPE(1−Palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphoethanolamine)、HSPC(Hydrogenated soybean phosphatidylcholine)、SOPC(1−Stearoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、POPC(1−Palmitoyl−2−oleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、EPC(Egg phosphatidylcholine)、DMPC(1,2−Dimyristoyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、DPPC(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、DSPC(1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、DAPC(1,2−Diarachidoyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、DBPC(1,2−Dibehenoyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、DLPC(1,2−Dilauroyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、DOPC(1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phosphocholine)、DOPG(1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phosphoglycerol)、DPPG(1,2−Dipalmitoyl−sn−glycero−3−phosphoglycerol)、DSPG(1,2−Distearoyl−sn−glycero−3−phosphoglycerol)、DOPS(1,2−Dioleoyl−sn−glycero−3−phospho−L−serine)、DOPE−MAL(N−(3−Maleimide−1−oxopropyl)−L−α−phosphatidylethanolamine, Dioleoyl)、スフィンゴミエリン等が挙げられる。一実施形態において、中性脂質は、DOPE、HSPC、DPPC、DSPC又はDAPCである。特定の実施形態において、中性脂質はDSPCである。中性脂質は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0042】
一実施形態において、脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、中性脂質を、例えば、0〜50モル%、0〜40モル%、0〜30モル%又は0〜20モル%含有してもよい。別の実施形態において、脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、中性脂質を、例えば、0.1〜20モル%又は3〜15モル%含有してもよい。
【0043】
ポリエチレングリコール修飾脂質(PEG脂質)とは、ポリエチレングリコール基を有する脂質のことである。一実施形態に係るポリエチレングリコール修飾脂質(PEG脂質)としては、例えば、PEG2000−DMG、PEG2000−DPG、PEG2000−DSG、PEG5000−DMG、PEG5000−DPG、PEG5000−DSG、PEG−cDMA、PEG−C−DOMG、PEG−DAG、PEG−DAA、PEG−リン脂質、PEG−コレステロール、PEG−セラミド(Cer)等が挙げられる。一実施形態において、ポリエチレングリコール修飾脂質は、PEG2000−DMG、PEG2000−DPG、PEG2000−DSG、PEG−cDMA又はPEG−C−DOMGである。特定の実施形態において、ポリエチレングリコール修飾脂質はPEG2000−DMGである。本明細書において、上記PEGには、メトキシPEG(MPEG)も含まれる。具体的には、例えば、PEG2000−DMGにはMPEG2000−DMGが含まれ、PEG2000−DPGにはMPEG2000−DPGも含まれる。ポリエチレングリコール修飾脂質は、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0044】
一実施形態において、脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、ポリエチレングリコール修飾脂質を、例えば、0〜30モル%、0〜20モル%、0〜10モル%又は0.5〜2モル%含有してもよい。別の実施形態において、脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、ポリエチレングリコール修飾脂質を、例えば、0.01〜10モル%又は0.1〜3モル%含有してもよい。
【0045】
ステロールはステロイド骨格を有するアルコールである。本実施形態に係るステロールとしては、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール、β−シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、エルゴステロール、フコステロール、3β−[N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)等が挙げられる。一実施形態において、ステロールは、コレステロール、ジヒドロコレステロール、ラノステロール又はβ−シトステロールである。特定の実施形態において、ステロールはコレステロールである。ステロールは、1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
一実施形態において、脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、ステロールを、例えば、0〜90モル%、10〜80モル%又は20〜40モル%含有してもよい。別の実施形態において、脂質複合体は、脂質複合体が含有する全脂質を基準として、ステロールを、例えば、0.1〜70モル%又は15〜60モル%含有してもよい。
【0047】
一実施形態において、脂質複合体における脂質成分の組み合わせは、特に限定されず、例えば、上述したカチオン性脂質、中性脂質及びステロールの組み合わせ、上述したカチオン性脂質、中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールの組み合わせ等が挙げられる。
【0048】
一実施形態において、脂質複合体は、カチオン性脂質、中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールを含む。カチオン性脂質は、核酸の封入や、核酸を目的の細胞内に効率よく送達するために必要であり、ポリエチレングリコール修飾脂質は、粒子の凝集を抑制するために必要であることが報告されている(Molecular Therapy−Nucleic Acids(2012)1, e37)。さらには、それら2種類の脂質に加えて、中性脂質、ステロールを含めた4種類の脂質が同時に存在することが、核酸を内封し、安定な粒子を形成するために極めて重要であることが報告されている(Nanoscale. 2019 Nov 21;11(45):21733−21739.)。
【0049】
一実施形態において、脂質複合体は、例えば、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレートと、DSPC、PEG2000−DMG、及びコレステロールからなる群から選択される少なくとも一種の脂質とを含むものであってよく、2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、DSPC、PEG2000−DMG及びコレステロールを含むものであってもよい。
【0050】
一実施形態において、脂質複合体は、脂質成分として、カチオン性脂質/中性脂質/ポリエチレングリコール修飾脂質/ステロールから構成され、その脂質のモル比割は、例えば、10〜99/0〜50/0〜10/0〜50、10〜99/1〜50/0.5〜10/10〜50、40〜70/1〜20/0.5〜2/20〜40又は40〜70/0〜20/0.5〜2/20〜40であってよい。一実施形態において、脂質複合体におけるカチオン性脂質/中性脂質/ポリエチレングリコール修飾脂質/ステロールのモル比割は、30〜90/0.1〜20/0.01〜10/0.1〜70である。別の実施形態において、脂質複合体におけるカチオン性脂質/中性脂質/ポリエチレングリコール修飾脂質/ステロールのモル比割は、40〜70/3〜15/0.1〜3/15〜60である。特定の実施形態において、脂質複合体におけるカチオン性脂質/中性脂質/ポリエチレングリコール修飾脂質/ステロールのモル比割は、60/10.5/1.5/28である。
【0051】
本明細書において、脂質複合体の「平均粒子径」はZ−平均粒子径のことをいい、平均粒子径は動的光散乱法によって測定される。二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体の平均粒子径(Z−平均)は、特に限定されるものではないが、例えば、10〜1000nm、30〜500nm又は30〜200nmであってよい。一実施形態において、二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体の平均粒子径は100nm以下である。特定の実施形態において、二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体の平均粒子径は65nm以上100nm以下である。別の実施形態において、二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体の平均粒子径は80nm以上100nm以下であり、さらに別の実施形態において、二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体の平均粒子径は85nm以上100nm以下である。
【0052】
一実施形態において、脂質複合体の溶液のpHは5.0以下又は7.5以上である。別の実施形態において、脂質複合体の溶液のpHは、2.0以上5.0以下又は7.5以上11.0以下である。また、別の実施形態において、脂質複合体の溶液のpHは、2.0以上5.0以下、2.5以上5.0以下、3.0以上5.0以下、3.5以上5.0以下、4.0以上5.0以下、4.5以上5.0以下、7.5以上11.0以下、7.5以上10.5以下、7.5以上10.0以下、7.5以上9.5以下、7.5以上9.0以下、又は7.5以上8.5以下である。特定の実施形態において、脂質複合体の溶液のpHは7.5以上8.5以下である。脂質複合体の溶液のpHを上記の範囲にすることで、医薬組成物の保存安定性が向上される。
【0053】
本実施形態に係る医薬組成物の保存安定性は、例えば、保存前の脂質複合体の平均粒子径と、一定の期間経過した保存後の脂質複合体の平均粒子径を比較し、平均粒子径の変動の大小により判断することができる。本明細書において、「保存前」とは、例えば、医薬組成物の製造直後、又はpHを調整した場合には、pH調整直後であってもよい。本実施形態に係る医薬組成物の保存条件としては、例えば、冷所若しくは冷蔵庫で保管できる条件(冷蔵保存条件)、常温又は室温が挙げられる。一実施形態において、医薬組成物の保存条件は2〜8℃である。別の実施形態において、医薬組成物の保存条件は5℃である。さらに別の実施形態において、医薬組成物の保存条件は25℃である。
【0054】
医薬組成物の保存安定性は、例えば、保存開始から2週間後(2週間保存後)の脂質複合体の平均粒子径に基づいて判断してもよく、保存開始から1ヶ月後(1ヶ月保存後)の脂質複合体の平均粒子径に基づいて判断してもよく、保存開始から2ヶ月後(2ヶ月保存後)の脂質複合体の平均粒子径に基づいて判断してもよく、保存開始から3ヶ月後(3ヶ月保存後)の脂質複合体の平均粒子径に基づいて判断してもよい。一実施形態において、保存後の脂質複合体の平均粒子径の変動は、例えば、保存前の脂質複合体の平均粒子径と比較して±10%以内である場合には保存安定性がよいと判断してよく、保存前の脂質複合体の平均粒子径と比較して±8%以内である場合には保存安定性がよいと判断してよく、保存前の脂質複合体の平均粒子径と比較して±5%以内である場合には保存安定性がよいと判断してよい。具体的には、例えば、保存開始から2週間後の脂質複合体の平均粒子径が、保存前の脂質複合体の平均粒子径と比較して±10%以内である場合には、保存安定性がよいと判断してもよい。別の実施形態において、医薬組成物の保存安定性は平均粒子径の増大により判断することができ、例えば、一定の期間経過した保存後の脂質複合体の平均粒子径が、保存前の脂質複合体の平均粒子径と比較して+10%以内である場合には保存安定性がよいと判断してよく、保存前の脂質複合体の平均粒子径と比較して+8%以内である場合には保存安定性がよいと判断してよく、保存前の脂質複合体の平均粒子径と比較して+5%以内である場合には保存安定性がよいと判断してよい。具体的には、例えば、保存開始から2週間後の脂質複合体の平均粒子径が、保存前の脂質複合体の平均粒子径と比較して+10%以内である場合には、保存安定性がよいと判断してもよい。
【0055】
一実施形態において、脂質複合体におけるsiRNAの封入率は、例えば、Quant−iT RiboGreen RNA Reagent(Invitrogen,Cat#R11491)を用いて、RNase Free Waterで希釈し測定したsiRNA濃度をLNP外液に存在するsiRNAとし、1%Triton X−100で希釈し測定したsiRNA濃度を製剤中の全siRNA濃度として封入率を算出することができる(Kewal K.Jain,Drug Delivery System,Methods in Molecular Biology,Vol.1141:109−120も参照)。上記方法にて算出した封入率は、例えば、80%、85%又は90%より高い。一実施形態において、脂質複合体におけるsiRNAの封入率は、90%より高い。
【0056】
<脂質複合体の製造方法>
脂質複合体へ有効な分子を封入する方法としては、例えば、逆相蒸発法、Zwitterion(NaCl)水和法、カチオン性コア水和法及びエタノールとカルシウムを用いた方法(Biomembr.,1468、239−252(2000)も参照)等が挙げられる。上述のような該技術分野において公知の方法により、一実施形態に係る医薬組成物における二本鎖リボ核酸を封入した脂質複合体を調製することができる。
【0057】
一実施形態において、二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体は、例えば、カチオン性脂質と、中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質、及びステロールからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂質とを含む脂質溶液と、二本鎖リボ核酸を含む酸性バッファーとを混合することで調製できる。このような方法により、二本鎖リボ核酸と脂質のコアで内部が充填された脂質複合体が得られる。一実施形態に係る二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体は、カチオン性脂質と、中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群から選ばれる少なくとも一種の脂質とを含むものであってよい。
【0058】
一実施形態に係る二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体は、例えば、(I)カチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを含有する極性有機溶媒含有水溶液と、(III)二本鎖リボ核酸を含有する水溶液とを混合して混合液を得る工程(a)と、混合液中の極性有機溶媒の含有率を減少させる工程(b)とを備える、方法により製造することができる。
【0059】
水溶性の二本鎖リボ核酸とカチオン性脂質との静電的相互作用、及び脂質間の疎水的相互作用により、脂質で構成された微粒子内に二本鎖リボ核酸が封入された脂質複合体を形成することができる。例えば、混合液中の極性有機溶媒の含有率を減少させることによって、(I)カチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを含む脂質成分の、極性有機溶媒含有水溶液に対する溶解度を変化させることにより、脂質複合体を形成させることができる。極性有機溶媒としては、エタノール等のアルコールが挙げられる。
【0060】
まず、工程(a)において、(I)カチオン性脂質と、(II)中性脂質、ポリエチレングリコール修飾脂質及びステロールからなる群より選択される少なくとも一種の脂質とを溶解させた、極性有機溶媒含有水溶液と、(III)二本鎖リボ核酸を含有する水溶液とを混合して混合液を得る。極性有機溶媒含有水溶液中の極性有機溶媒の濃度は、二本鎖リボ核酸を含有する水溶液と混合後も、脂質分子が溶解する条件を満たしていれば特に限定されない。工程(a)により得られた混合液における極性有機溶媒の濃度は0.1〜60重量%でありうる。(III)二本鎖リボ核酸を含有する水溶液は、例えば、酸性バッファーに二本鎖リボ核酸を溶解させることで得られる。
【0061】
続いて、工程(b)において、上記の混合液に水等を添加することにより、極性有機溶媒の含有率を減少させる。これにより、脂質複合体を形成させることができる。脂質複合体を効率よく形成させるためには、極性有機溶媒の含有率を急激に低下させることが好ましい。一例をあげると、工程(b)における最終の極性有機溶媒含有水溶液における極性有機溶媒の濃度は0〜5重量%でありうる。
【0062】
また、工程(a)で得られた上記混合液を、透析によって、極性有機溶媒を除去し、溶媒を薬学的に許容される媒体に置換してもよい。透析過程で溶液中の極性有機溶媒の含有率が減少するため、これにより、脂質複合体を形成させることができる。
【0063】
本実施形態の組成物の製造方法によれば、二本鎖リボ核酸が効率よく微粒子内部に封入された脂質複合体を得ることができる。
【0064】
二本鎖リボ核酸を溶解させる酸性バッファーとしては、例えば、硫酸バッファー、リン酸バッファー、フタル酸バッファー、酒石酸バッファー、クエン酸バッファー、ギ酸バッファー、シュウ酸バッファー及び酢酸バッファー等が挙げられる。
【0065】
脂質を溶解させる溶媒としては、アルコール等の極性有機溶媒が挙げられ、例えば、エタノール、イソプロパノール、クロロホルム又はt−ブタノールであってもよい。
【0066】
本実施形態の医薬組成物の製造方法は、脂質複合体の溶液のpHを調整する工程をさらに含むことができる。溶液のpHの調整は通常脂質複合体に二本鎖リボ核酸を含有させた後に行われる。当該工程は、例えば、脂質複合体の溶液をpHは5.0以下又は7.5以上に調整する工程であってよく、2.0以上5.0以下又は7.5以上11.0以下に調整する工程であってよく、2.0以上5.0以下に調整する工程、7.5以上11.0以下に調整する工程、7.5以上10.0に調整する工程、7.5以上9.5以下に調整する工程、7.5以上9.0以下に調整する工程、又は7.5以上8.5以下に調整する工程であってよい。特定の実施形態において、当該工程は、脂質複合体の溶液をpHは7.5以上8.5以下に調整する工程である。
【0067】
pHの調整は公知の方法により行うことができ、例えば、塩酸等の酸性水溶液や水酸化ナトリウム等の塩基性水溶液を用いて行ってもよく、また、リン酸、クエン酸、酢酸、酒石酸、ほう酸等の緩衝液(バッファー)を用いて行ってもよい。
【0068】
上述したように、本実施形態に係る医薬組成物に含まれる二本鎖リボ核酸により、RNAiにより、補体C5の発現を阻害することができる。一実施形態において、医薬組成物は、二本鎖リボ核酸を含む脂質複合体の他に、薬学的に許容される担体を含むことができる。
【0069】
薬学的に許容される担体としては、例えば、液体又は固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤及び溶媒封入材料等が挙げられる。
【0070】
一実施形態において、医薬組成物は、例えば、凍結乾燥等により溶媒を除去した粉末状態であってもよく、液体状態であってもよい。本発明の一実施形態の医薬組成物は、上述した実施形態の脂質複合体を含む粉末組成物である。粉末組成物は、液体状態の組成物(分散液)から例えば濾過、遠心分離等によって溶媒を除去して調製してもよいし、該分散液を凍結乾燥して調製してもよい。医薬組成物が粉末状態である場合には、使用前に薬学的に許容される媒体に懸濁又は溶解させて注射剤として用いることができる。本発明の一実施形態の医薬組成物は、上述した実施形態の脂質複合体及び薬学的に許容される媒体を含む液体組成物である。医薬組成物が液体状態である場合には、そのままで又は薬学的に許容される媒体に懸濁又は溶解させて注射剤として用いることができる。
【0071】
本実施形態に係る医薬組成物は、必要とする対象に投与することにより、RNAiにより、対象における補体C5の発現を阻害することができる。必要とする対象とは、C5遺伝子の発現又は活性に関連する疾病又は障害を発症している対象、及びその発症リスクが高いと判断される対象である。
【0072】
一実施形態によれば、本実施形態に係る医薬組成物が含む二本鎖リボ核酸は、補体C5の発現を抑制することができるため、本実施形態に係る医薬組成物は、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)及び非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)の治療に有用であり得る。すなわち、本発明は、他の実施形態において、治療上有効量の、一実施形態に係る医薬組成物を対象に投与する工程を含む、発作性夜間ヘモグロビン尿症又は非典型溶血性尿毒症症候群の治療方法を包含する。
【0073】
本実施形態に係る医薬組成物を投与する対象は限定されず、例えば、ヒト又は非ヒト哺乳動物(サル、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、ヤギ等)に対して本発明を用いることができる。
【0074】
本実施形態に係る医薬組成物の対象への投与方法(投与経路、投与量、1日の投与回数、投与のタイミング、等)は限定されず、対象の健康状態、疾患の程度、併用する薬剤の種類等に応じて、当業者(例えば、医師)が適宜決定することができる。
【0075】
(投与方法)
一実施形態に係る医薬組成物の投与の形態は特に限定されないが、非経口投与であってよく、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与及び髄腔内投与等が挙げられる。
【0076】
一実施形態に係る医薬組成物は、投与の形態により、補体C5を阻害ために十分な量で投与され得る。一実施形態に係る医薬組成物の投与量は、例えば、対象の体重1kg当たり0.01mg〜100mgであってよく、0.1mg〜50mgであってよく、0.3mg〜10mgであってよい。
【0077】
技術的に矛盾しない限り、本明細書に記載の、あらゆる実施形態の任意の一または複数を、適宜組み合わせて、本発明を実施してよいことを当業者は理解する。さらに、技術的に矛盾しない限り、本明細書に記載の、好ましい又は有利なあらゆる実施形態を、適宜組み合わせて、本発明を実施することが好ましいであろうことを当業者は理解する。
【0078】
本明細書中に引用される文献は、参照により、それらのすべての開示が、明確に本明細書に援用されているとみなされるべきであって、当業者は、本明細書の文脈に従って、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、それらの文献における関連する開示内容を、本明細書の一部として援用して理解できる。
【0079】
本明細書中に引用される文献は、本出願の出願日前の関連技術の開示のみを目的として提供され、本発明者らが、先行発明又は任意の他の理由によって、かかる開示に先行する権利を持たないことを自認するものとして解釈されてはならない。これらの文献のすべての記述は、本出願人が入手可能であった情報に基づいており、これらの記述内容が正確であるという自認を何ら構成しない。
【0080】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられるのであり、発明を限定する意図ではない。
【0081】
本明細書において用いられる「を含む(comprise)」という用語は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記載された事項(部材、ステップ、要素又は数字等)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、ステップ、要素又は数字等)が存在することを排除しない。「からなる(consist of)」という用語は、「からなる(consist of)」及び/又は「実質的に〜からなる(consist essentially of)」という用語で記載される実施形態を包含する。
【0082】
異なる定義が無い限り、ここに用いられるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術の当業者によって広く理解されるのと同じ意味を有する。ここに用いられる用語は、異なる定義が明示されていない限り、本明細書及び関連技術分野における意味と整合的な意味を有するものとして解釈されるべきであり、理想化され、又は過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0083】
第1の、第2の等の用語が種々の要素を表現するために用いられるが、これらの要素はこれらの用語自身によって限定されるべきではないことが理解される。これらの用語は一つの要素を他の要素と区別するためのみに用いられているのであり、例えば、第1の要素を第2の要素と記し、同様に、第2の要素は第1の要素と記すことは、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
【0084】
本明細書において、成分含有量や数値範囲等を示すのに用いられる数値は、特に明示がない限り、用語「約」で修飾されているものと理解されるべきである。例えば、「4℃」とは、特に明示がない限り、「約4℃」を意味するものと理解され、その程度を、当業者は技術常識と本明細書の文意に従って、合理的に理解できることは当然である。この場合、「約」とは、各数値の有効数字の桁数を考慮して、通常の四捨五入法を適用することによって解釈される。具体的には、「約」には、小数点第1位を四捨五入して該当する数値も含まれ、例えば、「約4」という場合、3.5乃至4.4が該当する範囲となり、また、小数点第2位を四捨五入して該当する数値も含まれ、例えば、「約4.5」という場合、4.45乃至4.54が該当する範囲となる。また、小数点第3位以下の場合も同様に解釈される。
【0085】
文脈上明白に他の意味を示す場合を除き、本明細書及び請求の範囲で使用される場合、単数形で表される各実施形態は、技術的に矛盾しない限り、複数形であってもよいことが理解され、逆もまた真である。
【0086】
以下において、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する。しかしながら、本発明はいろいろな実施形態により具現化することができ、ここに記載される実施例に限定されるものとして解釈されてはならない。関連技術分野の当業者は、本発明の精神又は範囲を変更させることなく、様々な改変、付加、欠失、置換等を伴って本発明を実施できる。
【実施例】
【0087】
[実施例1:単回投与インビトロスクリーニング(1)]
(二本鎖核酸の調製)
表2に示すセンス鎖及びアンチセンス鎖をホスホロアミダイト法により合成し、その後、それらをアニーリングさせた二本鎖核酸を合成した(GeneDesign社)。各配列における略語は、以下の表1に示すとおりである。なお、合成した二本鎖核酸は3’末端にリン酸基ではなくヒドロキシ基を有している。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
(インビトロスクリーニング)
表2に記載の二本鎖核酸とトランスフェクション試薬Lipofectamine RNAiMax(Invitrogen社製、カタログ番号:13778150)を、Opti−MEM培地(Gibco社製、カタログ番号:31985062)で希釈し、最終濃度3nMの二本鎖核酸及び0.3%RNAiMaxとなるように、siRNA/RNAiMax混合液を調製した。20μLのsiRNA/RNAiMax混合液を各々96ウェルの培養プレートに分注し、各ウェルにヒト肝臓癌由来の細胞株であるHep3B細胞(ATCCより入手)を、20,000細胞数/80μL/ウェルとなるように播種し、37℃、5%CO条件下で一晩培養した。CellAmp(登録商標)Direct RNA Prep Kit for PT−PCR(Real Time)(タカラバイオ株式会社製、カタログ番号:3732)及びProteinase K(タカラバイオ株式会社製、カタログ番号:9034)を用い、タカラバイオ株式会社提供のプロトコルに従って、培養細胞からリアルタイムPCR用鋳型ライセートを調製した。その後、PrimeScript(登録商標)RT Master Mix(Perfect Real Time)(タカラバイオ株式会社製、カタログ番号:RR036A)を用い、タカラバイオ株式会社提供のプロトコルに従って、cDNAを調製した。さらに、イーグルタック ユニバーサルマスターミックス(ROX)(Roche Diagnostics社製、カタログ番号:07260296190)及びTaqManプローブ(Applied Biosystems社製、C5:Hs00156197_m1;GAPDH:Hs02758991_g1)を用い、Applied Biosystems社提供のプロトコルに従って、ABI7900HTリアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems社製)にて、標的遺伝子human C5及び内在性コントロール遺伝子human GAPDH(glyceraldehyde−3−phosphate dehydrogenase)のCt値を測定した。siRNAを添加せずにトランスフェクション試薬だけでHep3B細胞を処理した場合(Lipofection only)のC5 mRNA発現量を100%とし、各siRNAを導入した場合のC5 mRNA残存率(相対値)を検量線法により算出した。また陰性コントロールとしてヒトのいずれの遺伝子とも交差しないMockを用いた。
【0091】
結果を表3に示す。
【0092】
【表3】
【0093】
[実施例2:単回投与インビトロスクリーニング(2)]
(二本鎖核酸の調製)
表4に示すセンス鎖及びアンチセンス鎖をホスホロアミダイト法により合成し、その後、それらをアニーリングさせた二本鎖核酸を合成した(GeneDesign社)。
【0094】
【表4】
【0095】
(インビトロスクリーニング)
最終濃度1nMの二本鎖核酸及び0.3%RNAiMaxとなるように、siRNA/RNAiMax混合液を調製した以外は、実施例1と同様に試験を行い、Hep3B培養細胞における標的遺伝子human C5及び内在性コントロール遺伝子human GAPDHのCt値を測定した。実施例1と同様に、Lipofection onlyのC5 mRNA発現量を100%とし、各siRNAを導入した場合のC5 mRNA残存率(相対値)を算出した。
【0096】
結果を表5に示す。siRNA−008−29以外のすべての二本鎖核酸を用いた場合に、C5 mRNA残存率の低下が確認でき、C5の発現が抑制されたことが示された。
【0097】
【表5】
【0098】
[実施例3:インビボスクリーニング(シーケンスファインディング)]
(siRNA−LNPの調製)
表6に示すsiRNAを10mMクエン酸ナトリウム(pH4.0)に溶解し、siRNA希釈液とした。2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、DSPC(日本精化)、Cholesterol(日本精化)、MPEG2000−DMG(日油)を、モル比60/10.5/28/1.5の割合でエタノールに溶解し、脂質溶液とした。siRNAと脂質の比を重量比0.1とし、siRNA希釈液と脂質溶液をそれぞれ3mL/min、1mL/minの流速で混合することで、Lipid Nanoparticles(LNP)を得た。得られたLNP水溶液をFloat−A−Lyzer G2(SPECTRUM,100K MWCO)を用いて透析により外液をPBS(pH7.4)に置換した。透析後、濃縮及び濾過滅菌を行い、各種実験に用いた。siRNA濃度及び封入率は、Quant−iT RiboGreen RNA Reagent(Invitrogen, Cat#R11491)を用いて測定した(RNase Free Waterで希釈し測定したsiRNA濃度をLNP外液に存在するsiRNAとし、1%Triton X−100で希釈し測定したsiRNA濃度を製剤中の全siRNA濃度として封入率を算出した)。平均粒子径(Z−平均)は、粒子径測定装置(Malvern,Zetasizer Nano ZS)にて測定した。調製したLNPの製剤品質を評価した結果を表7に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
【表7】
【0101】
(インビボスクリーニング)
PBS又は表6に記載のsiRNAを封入したLNPをBALB/cマウス(オス,6週齢,n=3 per group)に0.1mg/kg siRNAとなるよう尾静脈内投与し、投与から5日後及び14日後に麻酔下で採血及び肝臓の採取を実施した。液体窒素にて凍結した肝臓から、RNeasy Plus Mini Kit(Quiagen,Cat#74106)を用い、製造業者のプロトコルに従って、Total RNAを精製した。その後、PrimeScript RT Master Mix(Perfect Real Time)(Takara, Cat#RR036A)を用い、製造業者のプロトコルに従って、cDNAを調製した。さらに、TaqMan(登録商標)Gene Expression Master Mix(Applied Biosystem,Cat#4369510)及びTaqManプローブ(Applied Biosystems,C5:Mm01336776_g1;GAPDH:Mm99999915_g1)を用い、製造業者のプロトコルに従って、ABI7500 Fast(Applied Biosystems)にて、標的遺伝子mouse C5、及び内在性コントロール遺伝子mouse GAPDHのCt値を測定した。PBS投与群における投与5日後の肝臓C5 mRNA残存率を100%とし、各siRNA投与群の肝臓C5 mRNA残存率(相対値)を比較Ct法により算出した。結果を表8に示す。
【0102】
【表8】
【0103】
各採材日に採取した血液を3000rpm,15分間遠心した後、上清のヘパリン血漿を採取し、−80℃に保存した。その後、血漿中のMouse C5をELISA法で定量した。具体的には、アッセイプレート(Nunc,Cat#442404)に固相化抗体としてマウス抗C5抗体BB5.1(Hycult,Cat#HM1073−FS)を終濃度2μg/mLとなるようにPBS(−)(Wako,#045−29795)で希釈して加え、4℃で一晩インキュベートした。その後、ブロッキング液(1% BSA(R&D systems,Cat#DY995)を含むPBS(−)(Wako))を加え、室温で1時間インキュベートした。ブロッキング液を廃棄し、洗浄液(0.02% Tween20を含むPBS(−)(Wako))で3回洗浄を行った。洗浄液を廃棄後、ブロッキング液で希釈した上記ヘパリン血漿サンプルを添加し、室温で5時間インキュベートした。標準サンプルはPBS投与群の血漿とした。サンプルを廃棄後、洗浄液で5回洗浄し、ヤギ抗ヒトC5抗体(Quidel,Cat#A306)をブロッキング液で4000倍希釈して加え、室温で1時間インキュベートした。上記抗体を廃棄後、洗浄液で5回洗浄を行い、HRP標識ロバ抗ヤギIgG(H+L)(Jackson Immunoresearch,Cat#805−035−180)をブロッキング液で40000倍希釈して加え、室温で1時間インキュベートした。上記抗体を廃棄後、洗浄液で5回洗浄を行った。その後、検出試薬としてTMB(3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine)Peroxidase Substrate(KPL,Cat#50−76−01)及びPeroxidase Substrate Solution B(KPL,Cat#50−65−00)を等量混合後添加し、発色させた。停止液としてHSO(Wako,Cat#198−09595)を加えた後、450nm及び650nmの吸光度を測定した。PBS投与群における投与5日後の血漿中に含まれるC5濃度を100%としたときの各サンプルの相対値を表9に示す。
【表9】
【0104】
[実施例4:インビトロスクリーニング]
表10に示すセンス鎖及びアンチセンス鎖をホスホロアミダイト法により合成し、その後、それらをアニーリングさせた二本鎖核酸を合成した(GeneDesign社)。最終濃度0.003〜10nMの二本鎖核酸及び0.3%RNAiMaxとなるように、siRNA/RNAiMax混合液を調製した以外は、実施例1と同様に試験を行い、Hep3B培養細胞における標的遺伝子human C5及び内在性コントロール遺伝子human GAPDHのCt値を測定した。実施例1と同様に、Lipofection onlyのC5 mRNA発現量を100%とし、各siRNAを導入した場合のC5 mRNA残存率(相対値)を算出した。結果を表11に示す。
【0105】
【表10】
【0106】
【表11】
【0107】
[実施例5:インビボスクリーニング(オーバーハング修飾)]
(siRNA−LNPの調製)
表12に記載のsiRNAを使用した以外は実施例3と同様に、siRNAを封入した脂質ナノ粒子(LNP)を調製した。調製したLNPの製剤品質を評価した結果を表13に示す。
【0108】
【表12】
【0109】
【表13】
【0110】
(インビボスクリーニング)
PBS又は表12に記載のsiRNAを封入したLNPをBALB/cマウス(オス,6週齢,n=3 per group)に0.3mg/kg siRNAとなるよう尾静脈内投与し、投与から5日後、14日後及び21日後に麻酔下で採血及び肝臓の採取を実施した。液体窒素にて凍結した肝臓から、RNeasy Plus Mini Kit (Quiagen,Cat#74106)を用い、製造業者のプロトコルに従って、Total RNAを精製した。その後、PrimeScript RT Master Mix(Perfect Real Time)(Takara,Cat#RR036A)を用い、製造業者のプロトコルに従って、cDNAを調製した。さらに、TaqMan(登録商標)Gene Expression Master Mix(Applied Biosystem,Cat# 4369510)及びTaqManプローブ(Applied Biosystems,C5:Mm01336776_g1;GAPDH:Mm99999915_g1)を用い、製造業者のプロトコルに従って、ABI7500 Fast(Applied Biosystems)にて、標的遺伝子mouse C5、及び内在性コントロール遺伝子mouse GAPDHのCt値を測定した。PBS投与群における各測定日の肝臓C5 mRNA残存率を100%とし、siRNA投与群の肝臓C5 mRNA残存率(相対値)を比較Ct法により算出した。結果を表14に示す。
【0111】
【表14】
【0112】
各採材日に採取した血液を3000rpm,15分間遠心した後、上清のヘパリン血漿を採取し、−80℃に保存した。その後、血漿中のMouse C5をELISA法で定量した。具体的には、アッセイプレート(Nunc,Cat#442404)に固相化抗体としてマウス抗C5抗体BB5.1(Hycult,Cat#HM1073−FS)を終濃度2μg/mLとなるようにPBS(−)(Wako,#045−29795)で希釈して加え、4℃で一晩インキュベートした。その後、ブロッキング液(1%BSA(R&D systems,Cat#DY995)を含むPBS(−)(Wako))を加え、室温で1時間インキュベートした。ブロッキング液を廃棄し、洗浄液(0.02%Tween20を含むPBS(−)(Wako))で3回洗浄を行った。洗浄液を廃棄後、ブロッキング液で希釈した上記ヘパリン血漿サンプルを添加し、室温で5時間インキュベートした。標準サンプルはPBS投与群の血漿とした。サンプルを廃棄後、洗浄液で5回洗浄し、ヤギ抗ヒトC5抗体(Quidel,Cat#A306)をブロッキング液で4000倍希釈して加え、室温で1時間インキュベートした。上記抗体を廃棄後、洗浄液で5回洗浄を行い、HRP標識ロバ抗ヤギIgG(H+L)(Jackson Immunoresearch,Cat#805−035−180)をブロッキング液で40000倍希釈して加え、室温で1時間インキュベートした。上記抗体を廃棄後、洗浄液で5回洗浄を行った。その後、検出試薬としてTMB(3,3’,5,5’−tetramethylbenzidine)Peroxidase Substrate(KPL,Cat#50−76−01)及びPeroxidase Substrate Solution B(KPL,Cat#50−65−00)を等量混合後添加し、発色させた。停止液としてHSO(Wako,Cat#198−09595)を加えた後、450nm及び650nmの吸光度を測定した。PBS投与群の投与前日の血漿中に含まれるC5濃度を100%としたときの各サンプルの相対値を表15に示す。
【0113】
【表15】
【0114】
投与5日後、14日後、21日後の肝臓中C5 mRNA残存量と血漿中C5濃度を定量し、それぞれについてsiRNA−008投与群に対するsiRNA−008−34投与群の統計解析(unpaired T−test)を行った。それぞれの結果を図1及び図2に示す。P値が0.05以下であった群に*(アスタリスク)を、P値が0.01以下であった群には**を付けた。
【0115】
[実施例6:インビトロ解析(シーケンスウォーク)]
表16に示すセンス鎖及びアンチセンス鎖をホスホロアミダイト法により合成し、その後、それらをアニーリングさせた二本鎖核酸を合成した(GeneDesign社)。実施例1と同様に、Lipofection onlyのC5 mRNA発現量を100%とし、各siRNAを導入した場合のC5 mRNA残存率(相対値)を算出した。結果を表17に示す。
【0116】
【表16】
【0117】
【表17】
【0118】
[実施例7:薬理試験(溶血抑制効果)]
(siRNA−LNPの調製)
表18に示すsiRNAを用いた以外は実施例3と同様にsiRNAを封入したLNPを調製した。調製したLNPの製剤品質を評価した結果を表19に示す。
【0119】
【表18】
【0120】
【表19】
【0121】
(インビボ評価)
PBS又は表18に記載のsiRNAを封入したLNPをBALB/cマウス(オス,6週齢,n=3 per group)に1−3mg/kg siRNAとなるよう尾静脈内投与し、投与から5日後及び9日後に麻酔下で採血を実施した。各採材日に採取した血液を凝固促進剤入り血液分離剤入りチューブ(IBL、Cat#31203)に入れ、3000rpm,15分間遠心した後、上清の血清を採取し、−80℃に保存した。その後、血清中の補体活性を以下の方法で定量した。具体的には、血清補体価CH50キット(デンカ生研株式会社、Cat#400017)を用い、製造業者のプロトコルに従いヒツジ赤血球を1.5x10 cells/mLとなるように調製した。以後、血清補体価CH50キットに付属の希釈液を用いて、zymosan(Wako,Cat#263−01491)を20μg/mLとなるように調製した。同様の希釈液を用いて、サンプル血清を40倍に希釈した。上記のヒツジ赤血球、zymosan、及び希釈した血清サンプルをそれぞれ50μLずつ混合し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、アッセイプレートを2000rpm,10分間室温で遠心した後、上清の405nmの吸光度を測定した。各個体の投与前日の血清中に含まれる補体活性を100%としたときの各サンプルの値を表20に示す。
【0122】
【表20】
【0123】
[実施例8:薬理試験(単回投与による溶血抑制効果)]
(siRNA−LNPの調製)
表21に示すsiRNAを用いた以外は実施例3と同様にsiRNAを封入したLNPを調製した。調製したLNPの製剤品質を評価した結果を表22に示す。
【0124】
【表21】
【0125】
【表22】
【0126】
(インビボ評価)
PBS又は表21に記載のsiRNAを封入したLNPをBALB/cマウス(オス,7週齢,n=4 per group)に0.3、1及び3mg/kg siRNAとなるよう尾静脈内投与した。投与前日(表23における「投与1日前」)、投与から7日後、13日後、20日後及び27日後に麻酔下で採血を実施した。各採材日に採取した血液を凝固促進剤入り血液分離剤入りチューブ(IBL、Cat#31203)に入れ、3000rpm,15分間遠心した後、上清の血清を採取し、−80℃に保存した。その後、血清中の補体活性を以下の方法で定量した。具体的には、血清補体価CH50キット(デンカ生研株式会社、Cat#400017)を用い、製造業者のプロトコルに従いヒツジ赤血球を1.5x10 cells/mLとなるように調製した。以後、血清補体価CH50キットに付属の希釈液を用いて、zymosan(Wako,Cat#263−01491)を20μg/mLとなるように調製した。同様の希釈液を用いて、サンプル血清を40倍に希釈した。上記のヒツジ赤血球、zymosan、及び希釈した血清サンプルをそれぞれ50μLずつ混合し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、アッセイプレートを2000rpm,10分間室温で遠心した後、上清の405nmの吸光度を測定した。各個体の投与前日の血清中に含まれる補体活性を100%としたときの各サンプルの値を表23に示す。1mg/kg投与群のマウス1個体の補体活性は異常値と考えられることから除外した。したがって、表23における1mg/kg投与群の値はマウス3個体の平均値である。表23におけるPBS投与群、0.3mg/kg投与群及び3mg/kg投与群はマウス4個体の平均値である。結果を図3にも示す。
【0127】
【表23】
【0128】
[実施例9:薬理試験(隔週投与による溶血抑制効果)]
(siRNA−LNPの調製)
実施例8と同様にsiRNAを封入したLNPを調製した。
【0129】
(インビボ評価)
実施例8におけるPBS又は表21に記載のsiRNAを封入したLNPをBALB/cマウス(オス,7週齢,n=4 per group)に0.3、1及び3mg/kg siRNAとなるよう隔週で尾静脈内投与した。投与前日(表24における「投与1日前」)、投与から7日後、13日後、20日後及び27日後に麻酔下で採血を実施した。各採材日に採取した血液を凝固促進剤入り血液分離剤入りチューブ(IBL、Cat#31203)に入れ、3000rpm,15分間遠心した後、上清の血清を採取し、−80℃に保存した。その後、血清中の補体活性を以下の方法で定量した。具体的には、血清補体価CH50キット(デンカ生研株式会社、Cat#400017)を用い、製造業者のプロトコルに従いヒツジ赤血球を1.5x10 cells/mLとなるように調製した。以後、血清補体価CH50キットに付属の希釈液を用いて、zymosan(Wako,Cat#263−01491)を20μg/mLとなるように調製した。同様の希釈液を用いて、サンプル血清を40倍に希釈した。上記のヒツジ赤血球、zymosan、及び希釈した血清サンプルをそれぞれ50μLずつ混合し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、アッセイプレートを2000rpm,10分間室温で遠心した後、上清の405nmの吸光度を測定した。各個体の投与前日の血清中に含まれる補体活性を100%としたときの各サンプルの値を表24に示す。結果を図4にも示す。
【0130】
【表24】
【0131】
[実施例10:薬理試験(隔週投与による溶血抑制効果)]
(siRNA−LNPの調製)
実施例8と同様にsiRNAを封入したLNPを調製した。
【0132】
(インビボ評価)
実施例8におけるPBS又は表21に記載のsiRNAを封入したLNPをBALB/cマウス(オス,7週齢,n=4 per group)に0.3、1及び3mg/kg siRNAとなるよう隔週で尾静脈内投与した。投与前日(表25における「投与1日前」)、投与から7日後、13日後、20日後、27日後、34日後、41日後、48日後及び55日後に麻酔下で採血を実施した。各採材日に採取した血液を凝固促進剤入り血液分離剤入りチューブ(IBL、Cat#31203)に入れ、3000rpm,15分間遠心した後、上清の血清を採取し、−80℃に保存した。その後、血清中の補体活性を以下の方法で定量した。具体的には、血清補体価CH50キット(デンカ生研株式会社、Cat#400017)を用い、製造業者のプロトコルに従いヒツジ赤血球を1.5x10 cells/mLとなるように調製した。以後、血清補体価CH50キットに付属の希釈液を用いて、zymosan(Wako,Cat#263−01491)を20μg/mLとなるように調製した。同様の希釈液を用いて、サンプル血清を40倍に希釈した。上記のヒツジ赤血球、zymosan、及び希釈した血清サンプルをそれぞれ50μLずつ混合し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、アッセイプレートを2000rpm,10分間室温で遠心した後、上清の405nmの吸光度を測定した。各個体の投与前日の血清中に含まれる補体活性を100%としたときの各サンプルの値を表25に示す。結果を図5にも示す。
【0133】
【表25】
【0134】
[実施例11:薬理試験(3週間毎の投与による溶血抑制効果)]
(siRNA−LNPの調製)
実施例8と同様にsiRNAを封入したLNPを調製した。
【0135】
(インビボ評価)
実施例8におけるPBS又は表21に記載のsiRNAを封入したLNPをBALB/cマウス(オス,7週齢,n=4 per group)に0.3、1及び3mg/kg siRNAとなるよう3週間毎に尾静脈内投与した。投与前日(表26における「投与1日前」)、投与から7日後、13日後、20日後、27日後、34日後、41日後、48日後及び55日後に麻酔下で採血を実施した。各採材日に採取した血液を凝固促進剤入り血液分離剤入りチューブ(IBL、Cat#31203)に入れ、3000rpm,15分間遠心した後、上清の血清を採取し、−80℃に保存した。その後、血清中の補体活性を以下の方法で定量した。具体的には、血清補体価CH50キット(デンカ生研株式会社、Cat#400017)を用い、製造業者のプロトコルに従いヒツジ赤血球を1.5x10 cells/mLとなるように調製した。以後、血清補体価CH50キットに付属の希釈液を用いて、zymosan(Wako,Cat#263−01491)を20μg/mLとなるように調製した。同様の希釈液を用いて、サンプル血清を40倍に希釈した。上記のヒツジ赤血球、zymosan、及び希釈した血清サンプルをそれぞれ50μLずつ混合し、37℃で一晩インキュベートした。翌日、アッセイプレートを2000rpm,10分間室温で遠心した後、上清の405nmの吸光度を測定した。各個体の投与前日の血清中に含まれる補体活性を100%としたときの各サンプルの値を表26に示す。結果を図6にも示す。
【0136】
【表26】
【0137】
[実施例12:物性試験]
(LNP溶液のpHを変動させた際のsiRNA−LNPの粒子径)
表4に示すsiRNA−008−34を10mMクエン酸ナトリウム(pH4.0)に溶解し、siRNA希釈液とした。2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、DSPC(日本精化)、Cholesterol(Dishman)、MPEG2000−DMG(日油)を、モル比60/10.5/28/1.5の割合でエタノールに溶解し、脂質溶液とした。siRNA希釈液と脂質溶液を3:1の流速で混合することで、LNPを得た。得られたLNPの溶液を、常法に従いPBS(pH7.5)に置換し、その後、このLNPを濃縮した。LNPの濃縮液に塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.0〜8.5に調整した。pH調整後、LNPは冷所で保存した。
【0138】
これらLNPの粒子径を粒子径測定装置(Malvern,Zetasizer Nano ZS)で測定した結果を表27に示す。
【0139】
【表27】
【0140】
[実施例13:物性試験]
(LNP溶液のpHを変動させた際のsiRNA−LNPの粒子径)
表4に示すsiRNA−008−34を10mMクエン酸ナトリウム(pH4.0)に溶解し、siRNA希釈液とした。2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、DSPC(日本精化)、Cholesterol(Dishman)、MPEG2000−DMG(日油)を、モル比60/10.5/28/1.5の割合でエタノールに溶解し、脂質溶液とした。siRNA希釈液と脂質溶液を3:1の流速で混合することで、LNPを得た。得られたLNPの溶液を、常法に従いPBS(pH7.5)に置換し、その後、このLNPを濃縮した。LNPの濃縮液に塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.5〜8.5に調整した。pH調整後、LNPは冷所(5℃)で保存した。
【0141】
これらLNPの粒子径を粒子径測定装置(NICOMP380)で測定した結果を表28に示す。各pHのLNPの性状は、白色〜帯黄白色の乳白光を呈する均質な液であり、pH調整直後から1ヶ月保存後まで変化はなかった。
【0142】
【表28】
※pH8.5となるようにLNP溶液のpHを調整したが、調整直後の実測値としてはpH8.3であった。また、保存1ヶ月後のpHはpH8.2であった。
【0143】
[実施例14:物性試験]
(LNP溶液のpHを変動させた際のsiRNA−LNPの粒子径)
表4に示すsiRNA−008−34を10mMクエン酸ナトリウム(pH4.0)に溶解し、siRNA希釈液とした。2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、DSPC(日本精化)、Cholesterol(Dishman)、MPEG2000−DMG(日油)を、モル比60/10.5/28/1.5の割合でエタノールに溶解し、脂質溶液とした。siRNA希釈液と脂質溶液を3:1の流速で混合することで、LNPを得た。得られたLNPの溶液を、常法に従いPBS(pH7.5)に置換し、その後、このLNPを濃縮した。LNPの濃縮液に塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.5〜8.5に調整した。pH調整後、LNPは冷所(5℃)で保存した。
【0144】
これらLNPの粒子径を粒子径測定装置(NICOMP380)で測定した結果を表29に示す。
【0145】
【表29】
※1:保存3カ月後のpHはpH7.7であった。
※2:保存3カ月後のpHはpH7.9であった。
【0146】
[実施例15:物性試験]
(LNP溶液のpHを変動させた際のsiRNA−LNPの粒子径)
表4に示すsiRNA−008−34を10mMクエン酸ナトリウム(pH4.0)に溶解し、siRNA希釈液とした。2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、DSPC(日本精化)、Cholesterol(Dishman)、MPEG2000−DMG(日油)を、モル比60/10.5/28/1.5の割合でエタノールに溶解し、脂質溶液とした。siRNA希釈液と脂質溶液を3:1の流速で混合することで、LNPを得た。得られたLNPの溶液を、常法に従いPBS(pH7.5)に置換し、その後、このLNPを濃縮した。LNPの濃縮液に塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.5〜8.5に調整した。pH調整後、LNPは室温(25℃)で保存した。
【0147】
これらLNPの粒子径を粒子径測定装置(NICOMP380)で測定した結果を表30に示す。
【0148】
【表30】
※pH8.5となるようにLNP溶液のpHを調整したが、調整直後の実測値としてはpH8.3であった。
【0149】
[実施例16:物性試験]
(LNP溶液のpHを変動させた際のsiRNA−LNPの粒子径)
表4に示すsiRNA−008−34を10mMクエン酸ナトリウム(pH4.0)に溶解し、siRNA希釈液とした。2−{9−オキソ−9−[(3−ペンチルオクチル)オキシ]ノニル}ドデシル 1−メチルピペリジン−4−カルボキシレート、DSPC(Lipoid)、Cholesterol(Dishman)、MPEG2000−DMG(日油)を、モル比60/10.5/28/1.5の割合でエタノールに溶解し、脂質溶液とした。siRNA希釈液と脂質溶液を3:1の流速で混合することで、LNPを得た。得られたLNPの溶液を、常法に従いPBS(pH7.7)に置換し、その後、このLNPを濃縮した。そして、LNPの濃縮液を清澄ろ過及び濃度調整した後に、ろ過滅菌した。このLNP溶液を透析膜に入れ、pH2.0/5.0/9.0/10.0/11.0の各ブリトンロビンソン(BR)緩衝液を用いて室温にて透析し、各pHのLNP溶液を得た。透析終了後、各LNP溶液のpHを確認し、このLNP溶液を「pH調整直後」とした。pH調整後、LNP溶液は冷所(5℃)で保存した。
【0150】
これらLNPの粒子径を粒子径測定装置(NICOMP380)で測定した結果を表31に示す。
【0151】
【表31】
※1:保存1ヶ月後のpHは、pH9.7であった。
※2:pH11.0となるようにLNP溶液のpHを調整したが、調整直後の実測値としてはpH10.7であった。また、保存2週間後のpHはpH10.5であり、保存1ヶ月後のpHはpH10.3であった。
【要約】
脂質複合体を含む医薬組成物であって、脂質複合体が、配列番号145に示すヌクレオチド配列からなるセンス鎖及び配列番号146に示すヌクレオチド配列からなるアンチセンス鎖を有する二本鎖リボ核酸を含み、脂質複合体の溶液のpHが5.0以下又は7.5以上である、医薬組成物を開示する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]