特許第6961862号(P6961862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961862
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】体内磁性体検出装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/00 20160101AFI20211025BHJP
   A61B 5/05 20210101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61B90/00
   A61B5/05 A
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-164871(P2016-164871)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2018-29824(P2018-29824A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2019年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105279
【氏名又は名称】ケイセイ医科工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593137417
【氏名又は名称】株式会社電興社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】植竹 強
(72)【発明者】
【氏名】松田 純平
(72)【発明者】
【氏名】清水 哲雄
(72)【発明者】
【氏名】大垣 雄路
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−188122(JP,A)
【文献】 特開2005−168675(JP,A)
【文献】 特開2003−128590(JP,A)
【文献】 特開2017−125719(JP,A)
【文献】 特開平01−145501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/00 − 90/98
5/05
5/06
G01R 33/00 − 33/26
G01V 3/08 − 3/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状に形成されて体内に挿入される検出棒体と、
前記検出棒体内の先端部に設けられて周囲の磁気エネルギの変化に応じた電気信号からなる第1検出信号を出力する第1磁気センサと、
前記検出棒体内における前記第1磁気センサに対して同第1磁気センサの磁気エネルギの影響を受けない程度に離隔した位置に配置されて磁気エネルギの変化に応じた電気信号からなる第2検出信号を出力する第2磁気センサと、
前記第1検出信号と前記第2検出信号との差からこの差を解消して前記第1検出信号と前記第2検出信号とを実質的に同一値に補正するための検出補正値を算出して記憶する検出補正値算出手段と、
前記第1検出信号、前記第2検出信号および前記検出補正値を用いて総合検出値を算出するとともにこの総合検出値に基づいて前記検出棒体の先端部周辺の磁性体の有無を検出する磁性体検出手段と、
前記磁性体検出手段による前記磁性体の検出を報知する報知手段と、
使用者による手動操作により前記磁性体検出手段および前記報知手段をそれぞれ作動状態とするための操作子とを備えることを特徴とする体内磁性体検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載した体内磁性体検出装置において、
前記磁性体検出手段は、
前記操作子が操作された際における前記総合検出値を基準総合検出値として記憶してその後に取得する前記総合検出値と前記基準総合検出値とを用いて前記検出棒体の先端部周辺の前記磁性体の有無を検出することを特徴とする体内磁性体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として人間の体内における磁性体の有無を探索する体内磁性体検出装置および体内磁性体検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、手術中に体内の磁性体の有無を検出することができる体内磁性体検出装置がある。例えば、下記特許文献1には、2つの磁気センサの差分を利用してリンパ節内の磁性流体を検出する磁性流体検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−121667号公報
【0004】
しかしながら、上記した磁性流体検出装置においては、極めて小さい磁界(磁束密度)の変化を検出するために磁性流体を検出する部分にプローブを配置する以前からプローブの周囲の磁界の変化を検出して報知してしまい磁性流体の検出の信頼性が低いという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、磁性体の検出精度の信頼性を向上させることができる体内磁性体検出装置および体内磁性体検出方法を提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、棒状に形成されて体内に挿入される検出棒体と、検出棒体内の先端部に設けられて周囲の磁気エネルギの変化に応じた電気信号からなる第1検出信号を出力する第1磁気センサと、検出棒体内における第1磁気センサに対して同第1磁気センサの磁気エネルギの影響を受けない程度に離隔した位置に配置されて磁気エネルギの変化に応じた電気信号からなる第2検出信号を出力する第2磁気センサと、第1検出信号と第2検出信号との差からこの差を解消して第1検出信号と第2検出信号とを実質的に同一値に補正するための検出補正値を算出して記憶する検出補正値算出手段と、第1検出信号、第2検出信号および検出補正値を用いて総合検出値を算出するとともにこの総合検出値に基づいて検出棒体の先端部周辺の磁性体の有無を検出する磁性体検出手段と、磁性体検出手段による磁性体の検出を報知する報知手段と、使用者による手動操作により磁性体検出手段および報知手段をそれぞれ作動状態とするための操作子とを備えることにある。
【0007】
この場合、操作子が磁性体検出手段および報知手段をそれぞれ作動状態とするとは、磁性体検出手段および報知手段のうちの一方が作動状態でありかつ他方が停止状態である場合における他方を作動状態とする、または磁性体検出手段および報知手段の両者が停止状態である場合における両者を作動状態とするものである。
【0008】
このように構成した本発明の特徴によれば、体内磁性体検出装置は、第1磁気センサから出力される第1検出信号と第2磁気センサから出力される第2検出信号との差を補正する検出補正値を取得するとともに、この検出補正値を取得した状態において磁性体検出手段および報知手段をそれぞれ作動状態とするための操作子を備えている。このため、体内磁性体検出装置は、操作子が操作されたときのみ磁性体の検出を行うため、磁性体の検出が不要な場合において磁性体の検出が行なわれず磁性体の検出精度の信頼性を向上させることができる。また、この体内磁性体検出装置においては、第1磁気センサから出力される第1検出信号と第2磁気センサから出力される第2検出信号との差を補正する検出補正値を取得しているため、第1磁気センサと第2磁気センサとの検出精度のバラツキおよび誤差を補正することができ、磁性体の検出精度の信頼性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の他の特徴は、前記体内磁性体検出装置において、磁性体検出手段は、操作子が操作された際における総合検出値を基準総合検出値として記憶してその後に取得する総合検出値と基準総合検出値とを用いて検出棒体の先端部周辺の磁性体の有無を検出することにある。
【0010】
このように構成した本発明の他の特徴によれば、体内磁性体検出装置は、操作子が操作された際における総合検出値を基準総合検出値として記憶してこの基準総合検出値とその後に取得する総合検出値とを用いて磁性体の有無を検出するため、補正値算出手段が検出補正値を算出した時点の磁界状態と現在の磁界状態との間に差が生じた場合、すなわち、検出補正値が経時的に現状の磁界状態と合わなくなって適正な補正が行なえなくなった場合であっても基準総合検出値を基準として磁性体の検出精度を維持することができる。
【0011】
また、本発明は体内磁性体検出装置として実施できるばかりでなく、体内磁性体の検出方法としても実施できるものである。
【0012】
具体的には、体内磁性体検出方法は、棒状に形成されて体内に挿入される検出棒体と、検出棒体内の先端部に設けられて周囲の磁気エネルギの変化に応じた電気信号からなる第1検出信号を出力する第1磁気センサと、検出棒体内における第1磁気センサと離隔した位置に配置されて磁気エネルギの変化に応じた電気信号からなる第2検出信号を出力する第2磁気センサと、第1検出信号および第2検出信号を用いて検出棒体の先端部周辺の磁性体の有無を検出する制御手段と、検出棒体の先端部周辺の磁性体の有無を検出したことを報知する報知手段と、使用者による手動操作によって制御手段に対して検出棒体の先端部周辺の磁性体の有無の検出処理の実行を指示するための操作子とを備え、制御手段は、第1検出信号と第2検出信号との差からこの差を補正するための検出補正値を算出して記憶する検出補正値算出ステップと、第1検出信号、第2検出信号および検出補正値を用いて総合検出値を算出するとともにこの総合検出値に基づいて検出棒体の先端部周辺の磁性体の有無を検出する磁性体検出ステップと、磁性体検出ステップによる磁性体の検出を報知する報知ステップとを含み、磁性体検出ステップおよび前記報知ステップは、操作子が使用者により操作されることによってそれぞれ実行されるようにすればよい。
【0013】
この場合、体内磁性体検出方法において、磁性体検出ステップは、操作子が操作された際における総合検出値を基準総合検出値として記憶してその後に取得する総合検出値と基準総合検出値とを用いて検出棒体の先端部周辺の磁性体の有無を検出することができる。これらの体内磁性体検出方法においては、前記体内磁性体検出装置と同様の作用効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る体内磁性体検出装置の外観構成の概略を示す斜視図である。
図2図1に示した体内磁性体検出装置の内部構成およびシステム構成を模式的に示した内部構成断面図である。
図3図2に示した体内磁性体検出装置のシステム構成をより詳細に示すブロック図である。
図4図1に示した体内磁性体検出装置における検出棒体の先端部に縫合針からなる磁性体Mが磁気的に吸着されている状態を拡大して示す部分斜視図である。
図5図1に示した体内磁性体検出装置における検出棒体の内部構成を説明するための一部切欠き正面図である。
図6図1に示す体内磁性体検出装置を用いて患者の体内から磁性体を検出する作業工程を示したフローチャートである。
図7図3に示した制御装置によって実行される検出補正値算出プログラムの処理過程を示すフローチャートである。
図8図7に示す検出補正値算出プログラムにおける第1検出信号値の最大値と最小値およびこれらに対応する第2検出信号値である2つの対応検出値を用いて検出補正値の算出原理を説明するために両者の関係を示した説明図である。
図9図3に示した制御装置によって実行される磁性体検出プログラムの処理過程を示すフローチャートである。
図10】本発明の変形例に係る体内磁性体検出装置の外観構成の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る体内磁性体検出装置および体内磁性体検出方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る体内磁性体検出装置100の外観構成の概略を示した斜視図である。また、図2は、図1に示した体内磁性体検出装置100の内部構成およびシステム構成を模式的に示した内部構成断面図である。また、図3は、図2に示した体内磁性体検出装置100のシステム構成をより詳細に示したブロック図である。なお、本明細書において参照する各図は、本発明の理解を容易にするために一部の構成要素を誇張して表わすなど模式的に表している。このため、各構成要素間の寸法や比率などは異なっていることがある。この体内磁性体検出装置100は、人間の手術中において体内に縫合針などの金属片が留置されていないかを調べるための機具である。
【0016】
(体内磁性体検出装置100の構成)
この体内磁性体検出装置100は、本体ケース101を備えている。本体ケース101は、体内磁性体検出装置100の各種構成部品を収納して体内磁性体検出装置100の筐体を構成する中空状の部品である。この本体ケース101は、樹脂材料を体内磁性体検出装置100の使用者が手に持って操作することができる大きさおよび形状に成形して構成されている。より具体的には、本体ケース101は、図示水平方向に延びる収納部101aと、この収納部101aにおける図示下部から図示斜め下方向に延びるグリップ部101bとが一体的に形成されて構成されている。また、本体ケース101は、厚さ方向に二分割された2つの半体同士が合わさって1つの本体ケース101を構成している。
【0017】
収納部101aの中央部には、後述する制御基板120が設けられている。また、収納部101aには、一方(図示左側)の端部に検出棒体連結部102が設けられているとともに、他方(図示右側)の端部に電源スイッチ103が設けられている。検出棒体連結部102は、後述する検出棒体110を着脱自在に連結する部品であり、樹脂材を検出棒体110が挿し込み可能な筒状に形成されている。この場合、検出棒体連結部102は、検出棒体110と制御基板120とを電気的にも接続する。この検出棒体連結部102は、一方(図示左側)の端部が収納部101aの外側に露出するとともに、他方(図示右側)が収納部101aに位置して制御基板120に電気的に接続されている。
【0018】
電源スイッチ103は、使用者の手動操作に応じて制御基板120に対して電力の供給または遮断を行って体内磁性体検出装置100の起動または起動の停止を制御するための電気部品である。本実施形態においては、電源スイッチ103は、ロッカースイッチによって構成されている。この電源スイッチ103は、使用者によって操作される部分が収納部101aの外表面におけるグリップ部101bを握る使用者の親指で操作可能な位置に露出した状態で設けられている。
【0019】
グリップ部101bは、体内磁性体検出装置100の使用者が握って体内磁性体検出装置100全体を保持する部分であり、使用者が片手で握ることができる太さに形成されている。このグリップ部101bは、外表面の一部が着脱自在に取り外せるように構成されており、この取り外せる部分の内側にバッテリケース104が設けられている。バッテリケース104は、制御装置122に供給する電力の電力源となる電池105を着脱自在に保持する部分であり、電源スイッチ103を介して制御基板120に電気的に繋がっている。
【0020】
また、グリップ部101bには、収納部101a側の端部側に操作子106を備えている。操作子106は、体内磁性体検出装置100によって体内の磁性体を検出する際に操作して後述する制御装置122に指示を与えるための押しボタン式の入力装置である。この操作子106は、制御装置122に電気的に接続された状態でグリップ部101bを握る使用者の人差し指または中指で操作できる位置に設けられている。
【0021】
検出棒体110は、図4および図5にそれぞれ示すように、手術を受ける患者(図示せず)の体内に挿し込まれて磁性体Mの検出を行う部品であり、主として、ケーシング111、連結部112、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115をそれぞれ備えている。ケーシング111は、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115をそれぞれ収容して前記患者の体内に挿し込まれる部分であり、磁気的に中立(透磁率が「1」)な非磁性(例えば、樹脂材、アルミニウム材、ステンレス材、セラミック材など)細長い中空の棒状に形成して構成されている。
【0022】
より具体的には、ケーシング111は、筒体における一方(図示左側)の端部が閉塞するとともに、他方(図示右側)の端部が開口する有底筒状に形成されている。この場合、ケーシング111は、筒状に形成された側面部111aの前記一方の端部を閉塞する先端部111bが平面状に形成されるとともに、この先端部111bの厚さが側面部111aの厚さより薄く形成されている。本実施形態においては、ケーシング111は、外径が10mm、長さが130mmに形成されている。
【0023】
連結部112は、ケーシング111を前記本体ケース101における検出棒体連結部102に着脱自在に連結するための部品であり、検出棒体連結部102内に挿し込み可能な太さの軸状に形成されている。この場合、連結部112には、外周面上に検出棒体連結部102の内周面に弾性的に引っ掛けられる引掛け部112aが形成されており、使用者が手で強く引っ張らない限り検出棒体連結部102内から抜けないように構成されている。また、連結部112は、検出棒体連結部102に対して電気的にも接続される。
【0024】
第1磁気センサ113は、前記患者の体内に留置された磁性体Mを検出するための部品であり、ケーシング111内における先端部111bに隣接した位置に設けられている。この第1磁気センサ113は、主として、検出素子113a、基板113bおよび永久磁石113cをそれぞれ備えて構成されている。
【0025】
検出素子113aは、磁気エネルギを電気エネルギに変換して出力する素子で構成されている。本実施形態においては、検出素子113aは、磁界の強さによって抵抗値が変化する磁気抵抗素子で構成されている。この場合、検出素子113aは、2つの磁気抵抗素子を直列に接続して構成してもよいが、4つの磁気抵抗素子をブリッジ状に接続して構成するとよい。本実施形態においては、検出素子113aは、縦横が0.7mm×0.7mmの大きさのチップ状に形成されて15.0kA/mの感度を持って構成されている。この検出素子113aは、信号線114aを介して制御装置122に電気的に接続されている。
【0026】
基板113bは、検出素子113aおよび永久磁石113cをそれぞれ支持する部品であり、エポキシ樹脂材を板状体に形成して構成されている。この基板113bは、一方の面(図示上面)に検出素子113aを接着材(図示せず)を介して固定的に支持するとともに、他方の面(図示下面)に永久磁石113cを接着材(図示せず)を介して固定的に支持した状態でケーシング111の内周面に接着剤(図示せず)で固定されている。
【0027】
永久磁石113cは、検出素子113aに磁気バイアスを掛けて検出素子113aの動作点を抵抗変化のリニアな領域にシフトさせるとともに、検出棒体110の先端部111bの周辺に存在する磁性体Mを磁気的に吸着させるための磁石である。本実施形態においては、永久磁石113cは、縦横が6mm×6mm、厚さが4mmの板状に形成されて、表面磁束密度が350mT、吸引力(吸着力)が0.9kgfのネオジム磁石によって構成されている。この永久磁石113cは、基板113bを介して検出素子113aに対向配置されている。この場合、永久磁石113cは、磁界の強度変化に対して抵抗値がリニアに変化して出力信号が飽和することがない位置に位置決めされる。
【0028】
第2磁気センサ115は、地磁気の影響をキャンセルするための部品であり、前記検出素子113a、基板113bおよび永久磁石113cと同様の検出素子115a、基板115bおよび永久磁石115cを備えて構成されている。検出素子115aは、前記検出素子113aと同様に、磁気エネルギを電気エネルギに変換して出力する素子で構成されている。本実施形態においては、検出素子115aは、磁界の強さによって抵抗値が変化する磁気抵抗素子で構成されている。この場合、検出素子115aは、2つの磁気抵抗素子を直列に接続して構成してもよいが、4つの磁気抵抗素子をブリッジ状に接続して構成するとよい。本実施形態においては、検出素子115aは、縦横が0.7mm×0.7mmの大きさのチップ状に形成されて15.0kA/mの感度を持って構成されている。この検出素子115aは、信号線114bを介して制御装置122に電気的に接続されている。
【0029】
基板115bは、前記基板113bと同様に、検出素子115aおよび永久磁石115cをそれぞれ支持する部品であり、エポキシ樹脂材を板状体に形成して構成されている。この基板115bは、一方の面(図示上面)に検出素子115aを接着材(図示せず)を介して固定的に支持するとともに、他方の面(図示下面)に永久磁石115cを接着材(図示せず)を介して固定的に支持した状態でケーシング111の内周面に接着剤(図示せず)で固定されている。
【0030】
永久磁石115cは、前記永久磁石113cと同様に、検出素子115aに磁気バイアスを掛けて検出素子115aの動作点を抵抗変化のリニアな領域にシフトさせるための磁石である。本実施形態においては、永久磁石115cは、縦横が6mm×6mm、厚さが4mmの板状に形成されて、表面磁束密度が350mT、吸引力(吸着力)が0.9kgfのネオジム磁石によって構成されている。この永久磁石115cは、基板115bを介して検出素子115aに対向配置されている。
【0031】
この場合、永久磁石115cは、磁界の強度変化に対して抵抗値がリニアに変化して出力信号が飽和することがない位置に位置決めされる。なお、永久磁石115cは、検出素子115aの動作点を変更させることができれば、必ずしも、永久磁石113cと同じ磁力を有する磁石で構成する必要はないが、本実施形態においては、永久磁石113cと同じ特性を有する磁石で構成している。
【0032】
この第2磁気センサ115は、地磁気の影響をキャンセルするために第1磁気センサ113から離隔した位置に設けられている。本実施形態においては、第2磁気センサ115は、ケーシング111内において第1磁気センサ113に対して80mm程度離れた位置に設けられている。
【0033】
制御基板120は、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115からそれぞれ出力される検出信号を用いて磁性体Mの検出処理を実行するための増幅器121a,121b、制御装置122、駆動回路124、表示装置125、ブザー126をそれぞれ備えた電子回路基板であり、本体ケース101の収納部101a内に取り付けられている。
【0034】
増幅器121a,121bは、第1磁気センサ113から出力される電気信号からなる第1検出信号および第2磁気センサ115から出力される電気信号からなる第2検出信号をそれぞれ増幅して制御装置122にそれぞれ出力する電気回路である。
【0035】
制御装置122は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、操作子106を介した使用者からの指示に従って、ROMなどの記憶装置に予め記憶された検出補正値算出プログラムおよび磁性体検出プログラムをそれぞれ実行することにより検出棒体110の先端部111b周辺の磁性体Mを検出する。
【0036】
この場合、制御装置122は、駆動回路124を介して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の作動をそれぞれ制御する。また、制御装置122は、A/D変換器123を内蔵しており、増幅器121a,121bを介して入力するアナログ信号からなる第1検出信号および第2検出信号をそれぞれデジタル信号に変換して検出棒体110の先端部111b周辺の磁性体Mを検出に用いる。また、制御装置122は、検出棒体110の先端部111b周辺の磁性体Mの検出状況を表示装置125およびブザー126をそれぞれ介して外部に出力する。
【0037】
ここで、駆動回路124は、制御装置122に作動制御されて第1磁気センサ113および第2磁気センサ115に所定の一定電圧(例えば、5V)を印加するための電気回路である。また、表示装置125は、制御装置122に作動制御されて検出棒体110の先端部111b周辺の磁性体Mの検出状態を光の点灯によって外部に知らせるための発光素子であり、本体ケース101の外表面に露出した状態で設けられている。本実施形態においては、表示装置125は、4つのLED発光素子(Light Emitting Diode:発光ダイオード)によって構成されている。また、ブザー126は、制御装置122に作動制御されて検出棒体110の先端部111b周辺の磁性体Mの検出状態を音の発生によって外部に知らせるための発音装置である。
【0038】
(体内磁性体検出装置100の作動)
次に、上記のように構成した体内磁性体検出装置100の作動について図6を参照しながら説明する。まず、体内磁性体検出装置100の使用者(例えば、医師)は、第1工程として、患者(図示せず)の手術中において体内磁性体検出装置100を用意する。具体的には、使用者は、本体ケース101および検出棒体110をそれぞれ用意する。
【0039】
次に、使用者は、第2工程として、検出棒体110を本体ケース101に取り付ける。具体的には、使用者は、検出棒体110における連結部112を本体ケース101における検出棒体連結部102内に挿入する。これにより、検出棒体110は、引掛け部112aが検出棒体連結部102の内周面に引っ掛けられて本体ケース101と一体化する。また、この場合、検出棒体110における第1磁気センサ113および第2磁気センサ115は、制御基板120に電気的に接続される。
【0040】
次に、使用者は、第3工程として、体内磁性体検出装置100の電源スイッチ103を操作して体内磁性体検出装置100の制御装置122の電源をONにする。これにより、制御装置122は、図示しない制御プログラムを実行することにより使用者からの指示を待つ待機状態となる。
【0041】
次に、使用者は、第4工程として、検出補正値の取得作業を行う。この検出補正値の取得工程は、第1磁気センサ113と第2磁気センサ115との同一磁界での検出特性(出力特性)のバラツキを解消するための検出補正値を取得するものであり、すなわち、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の検出感度の個体差を解消するためのキャリブレーションである。具体的には、使用者は、操作子106に対して所定の操作(例えば、ダブルクリック)を行うことにより制御装置122に対して検出補正値の取得を指示する。
【0042】
この指示に応答して、制御装置122は、図7に示す検出補正値算出プログラムを実行することによって検出補正値を取得する。具体的には、制御装置122は、検出補正値算出プログラムの実行をステップS100にて開始して、ステップS102にて、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の作動を開始させる。具体的には、制御装置122は、駆動回路124の作動を制御して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115にそれぞれ同一の電圧を印加して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の作動をそれぞれ開始せる。これにより、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115は、それぞれ第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の各周囲の磁界の強さに応じた第1検出信号および第2検出信号をそれぞれ出力する。
【0043】
次に、制御装置122は、ステップS104にて、第1検出信号および第2検出信号をそれぞれ所定量ずつ記憶する。具体的には、制御装置122は、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115からそれぞれ出力された第1検出信号および第2検出信号の各値を所定の時間中所定の時間間隔で取得して第1検出信号値および第2検出信号値としてそれぞれ記憶する。例えば、制御装置122は、数秒間から数十秒間の間、0.01秒ごとに第1検出信号および第2検出信号の各値を一対として記憶し続ける。
【0044】
この場合、制御装置122は、自身が内蔵する一時記憶装置内に第1検出信号および第2検出信号の各値をそれぞれ記憶する。なお、この第1検出信号および第2検出信号の各記憶処理において、使用者は、把持した体内磁性体検出装置100の位置や向きを大きく変化させることによって使用者の周囲の磁気環境に対応した第1検出信号値および第2検出信号値をそれぞれ取得することができる。
【0045】
次に、制御装置122は、ステップS106にて、検出補正値を算出する。具体的には、制御装置122は、前記ステップS104にて記憶した第1検出信号値の各値うちの最大値および最小値をそれぞれ抽出するとともに、これらの最大値および最小値と同じタイミングで取得した第2検出信号値の各値を対応検出値としてそれぞれ抽出する。
【0046】
次いで、制御装置122は、第1検出信号の最大値、最小値およびこれらと対をなす各対応検出値を用いて、下記数1に示すように、第2検出信号値を第1検出信号値と同じ値に合せるための補正計数αおよびオフセット値βをそれぞれ特定する。この場合、補正計数αは、図8に示すように、第1検出信号の最大値と最小値とを結んだ直線L1の傾きと、第2検出信号の2つの対応検出値を結んだ直線L2の傾きを補正するための計数である。また、オフセット値βは、前記直線L1と前記直線L2との検出信号の大きさの差の補正値である。
<数1>
第1検出信号値=第2検出信号値×補正計数α+オフセット値β
【0047】
なお、図8の横軸上における第1検出信号の最大値と最小値の間隔は、予め適当な値を決めておいてもよいし、最大値を取得したタイミングと最小値を取得したタイミングとの時間としてもよい。また、第2検出信号値を第1検出信号値に合せるとは、第2検出信号値を厳密な意味で第1検出信号値に完全同一としてもよいが、第2検出信号値を第1検出信号値に対して所定の範囲内の値に収めて実質的に同一値にすることもできる。すなわち、これらの補正計数αおよびオフセット値βが検出補正値に相当する。
【0048】
また、検出補正値は、第1検出信号値と第2検出信号値とを実質的に同一値にすることができるものであればよく、必ずしも補正計数αおよびオフセット値βで構成する必要はない。したがって、検出補正値は、例えば、オフセット値βのみで構成することもできる。具体的には、制御装置122は、第1検出信号値の各値とこの第1検出信号値の各値に対応する第2検出信号値の各値との差の平均値をオフセット値βとして検出補正値とすることもできる。また、検出補正値は、例えば、補正計数αのみでも構成することもできる。
【0049】
次に、制御装置122は、ステップS108にて、前記ステップS106にて算出した検出補正値を自身が内蔵する一時記憶装置内に記億する。そして、制御装置122は、ステップS110にて、駆動回路124の作動を制御して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115への電圧の印加を停止して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の各作動を停止させた後、ステップS112にて、この検出補正値算出プログラムの実行を終了する。これにより、制御装置122は、検出補正値を取得することになる。
【0050】
この検出補正値算出プログラムの実行が本発明に係る検出補正値算出ステップに相当するとともに、この検出補正値算出プログラムを実行する制御装置122が本発明に係る検出補正値算出手段に相当する。また、この検出補正値の取得のための検出補正値算出プログラムの実行は、体内磁性体検出装置100の電源スイッチ103を操作して電源をONにした際に自動的に実行するように構成することもできる。
【0051】
次に、使用者は、第5工程として、患者の体内での磁性体Mの検出作業を行う。具体的には、使用者は、操作子106に対して所定の操作(例えば、押下し続ける)を行うことにより制御装置122に対して磁性体Mの検出を指示する。この指示に応答して、制御装置122は、図9に示す磁性体検出プログラムを実行する。
【0052】
具体的には、制御装置122は、磁性体検出プログラムの実行をステップS200にて開始して、ステップS202にて、検出補正値が取得されている否かを判定する。この場合、制御装置122は、前記検出補正値が取得(記憶)されている場合には、この判定処理にて「Yes」と判定してステップS204に進む。一方、制御装置122は、前記検出補正値が取得(記憶)されていない場合には、この判定処理にて「No」と判定してステップS212に進み、この磁性体検出プログラムの実行を終了する。すなわち、制御装置122は、検出補正値が取得されていなければ、磁性体Mの検出処理は行なわない。
【0053】
次に、制御装置122は、ステップS204にて、基準総合検出値を取得する。ここで、基準総合検出値は、磁性体Mの有無を判定する際に基準(閾値)として用いる値である。この基準総合検出値の取得処理は、次のサブステップ1〜サブステップ3の各処理によって構成されている。
【0054】
サブステップ1:まず、制御装置122は、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115からそれぞれ出力された第1検出信号および第2検出信号の各値をそれぞれ1つずつ取得する。
【0055】
サブステップ2:次に、制御装置122は、前記検出補正値および前記サブステップ1にて取得した第2検出信号値を下記数2にそれぞれ代入して補正第2検出信号値を得る。
<数2>
補正第2検出信号値=第2検出信号値×補正計数α+オフセット値β
【0056】
サブステップ3:次に、制御装置122は、前記サブステップ1にて取得した第1検出信号値および前記算出した補正第2検出信号値を下記数3にそれぞれ代入して基準総合検出値を算出して一時記憶装置内に記億する。これにより、制御装置122は、1つの基準総合検出値を取得することができる。このステップS204による基準総合検出値の取得処理は、使用者が検出棒体110を患者の体内に挿入する直前に実行されるとよい。すなわち、使用者は、検出棒体110を患者の体内に挿入する直前に操作子106を操作することにより制御装置122に対して磁性体検出プログラムの実行を指示するとよい。
<数3>
基準総合検出値=第1検出信号値−補正第2検出信号値
【0057】
次に、制御装置122は、ステップS206にて、磁性体Mの検出処理を実行する。ここで、磁性体Mの検出処理は、検出棒体110の先端部111bの周辺における磁性体Mの有無を検出する処理である。したがって、使用者は、把持した体内磁性体検出装置100を操作して検出棒体110の先端部111bを患者の体内に挿入して移動させ磁性体Mを探す。この磁性体Mの検出処理は、次のサブステップ1〜サブステップ5の各処理によって構成されている。
【0058】
サブステップ1:まず、制御装置122は、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の作動を開始させる。具体的には、制御装置122は、駆動回路124の作動を制御して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115にそれぞれ同一の電圧を印加して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の作動をそれぞれ開始せる。これにより、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115は、それぞれ第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の各周囲の磁界の強さに応じた第1検出信号および第2検出信号をそれぞれ出力する。
【0059】
サブステップ2:次に、制御装置122は、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115からそれぞれ出力された第1検出信号および第2検出信号の各値をそれぞれ1つずつ取得する。
【0060】
サブステップ3:次に、制御装置122は、前記検出補正値および前記サブステップ1にて取得した第2検出信号値を上記数2にそれぞれ代入して補正第2検出信号値を得る。これにより、制御装置122は、第1磁気センサ113と第2磁気センサ115との検出精度のバラツキをキャンセルした補正第2検出信号値を得ることができる。
【0061】
サブステップ4:次に、制御装置122は、前記サブステップ1にて取得した第1検出信号値および前記算出した補正第2検出信号値を下記数3にそれぞれ代入して総合検出値を得る。これにより、制御装置122は、検出棒体110の周囲の地磁気の影響をキャンセルした総合検出値を得ることができる。
<数4>
総合検出値=第1検出信号値−補正第2検出信号値
【0062】
サブステップ5:次に、制御装置122は、磁性体Mの検出を判定する。具体的には、制御装置122は、前記基準総合検出値と前記サブステップ3にて算出した総合検出値との差を検出差値として計算して、この検出差値が制御装置122に予め設定されている所定の範囲内を超えた値か否かを判定する。
【0063】
この場合、制御装置122は、前記検出差値が所定の範囲外の値である場合には、この判定処理にて「Yes」と判定してステップS208に進む。一方、制御装置122は、前記検出差値が所定の範囲内の値である場合には、この判定処理にて「No」と判定してステップS210に進む。すなわち、検出棒体110の先端部111bの近傍に縫合針などの磁性体Mが存在する場合には、第1磁気センサ113の周囲の磁界状態が変化するため、第1検出信号値と第2検出信号値(補正第2検出信号値)とに差が生じる。
【0064】
したがって、制御装置122は、第1検出信号値と第2検出信号値(補正第2検出信号値)との差である検出差値が所定の範囲外となった場合に検出棒体110の先端部111bの近傍に縫合針などの何等かの磁性体Mが存在するとして「Yes」と判定してステップS210に進む。
【0065】
このように、制御装置122は、基準総合検出値を用いることにより、検出補正値を算出した時点の磁界状態と現在の磁界状態との間に差が生じた場合であっても基準総合検出値を基準として磁性体Mの検出精度を維持することができる。このステップS206による磁性体Mの検出処理が本発明に係る磁性体検出ステップに相当するとともに、このステップS206を実行する制御装置122が本発明に係る磁性体検出手段に相当する。
【0066】
次に、制御装置122は、ステップS208にて、表示装置125およびブザー126を作動させる。この場合、制御装置122は、表示装置125を構成する4つのLEDの全てを同時に点灯させてもよいが、前記検出差値の大きさに応じて点灯させるLEDの数を段階的に増加させるようにしてもよい。また、制御装置122は、ブザー126を一定の音量の連続音で発音させてもよいが、前記検出差値の大きさに応じて徐々に音量を増加または断続音を連続音に変化させるように発音させてもよい。これにより、使用者は、検出棒体110の先端部111bの近傍に縫合針などの何等かの磁性体Mが存在することを視聴覚的に把握することができる。
【0067】
また、この場合、体内磁性体検出装置100は、第1磁気センサ113を構成する永久磁石113cが検出棒体110の先端部111bの周辺(例えば、10mm以内の範囲)に存在する磁性体Mを磁気的に吸着させることができる磁力を有しているため、縫合針などの磁性体Mを先端部111bに磁気的に吸着させることができる。したがって、制御装置122は、検出棒体110の先端部111bに磁性体Mが吸着した場合の検出差値の大きさを予め記憶しておくことで、検出差値が予め記憶した検出値差値以上となったとき表示装置125およびブザー126を作動または作動変化させることで先端部111bへの磁性体Mの吸着を使用者に報知することができる。
【0068】
これにより、使用者は、体内磁性体検出装置100を操作して体内から検出棒体110を離脱させることにより体内に留置された縫合針などの磁性体Mを回収することができる(図4参照)。このステップS206による表示装置125およびブザー126を作動処理が、本発明に係る報知ステップに相当し、表示装置125およびブザー126が本発明に係る報知手段に相当する。なお、図4においては、ケーシング111の先端部111bに磁性体Mが吸着された状態を示しているが、磁性体Mは永久磁石113cの周囲のケーシング111の表面であれば先端部111b以外の側面部111aにも吸着することがある。
【0069】
次に、制御装置122は、ステップS210にて、磁性体Mの検出処理の実行を終了するか否かを判定する。具体的には、制御装置122は、操作子106が操作(例えば、押下状態の解除)されたか否かを判定する。この場合、制御装置122は、操作子106が操作(例えば、押下状態の解除)されるまでの間、この判定処理にて「No」と判定し続けてステップS206に戻る。そして、制御装置122は、再び、ステップS206にて、磁性体Mの有無を検出する処理を実行する。すなわち、制御装置122は、本実施形態においては、操作子106が押下されている間、磁性体Mの検出処理を実行する。
【0070】
一方、制御装置122は、操作子106が操作(例えば、押下状態の解除)された場合には、この判定処理にて「Yes」と判定してステップS212にて、この磁性体検出プログラムの実行を終了する。この場合、制御装置122は、駆動回路124の作動を制御して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115への電圧の印加を停止して第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の各作動を停止させるとともに、表示装置125およびブザー126がそれぞれ作動している場合には、これらの機器の各作動をそれぞれ停止させる。
【0071】
次に、使用者は、第6工程として、終了作業を行う。具体的には、使用者は、体内磁性体検出装置100の電源スイッチ103を操作して体内磁性体検出装置100の制御装置122の電源をOFFにした後、検出棒体110を本体ケース101から取り外す。この場合、使用者は、本体ケース101に対して検出棒体110を軸方向に引っ張ることにより検出棒体110を本体ケース101から取り外すことができる。この場合、使用者は、検出棒体110を洗浄および消毒することにより再度使用することができるが、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の検出精度およびケーシング111の衛生面を考慮して再使用することなく廃棄することもできる。
【0072】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、体内磁性体検出装置100は、第1磁気センサ113から出力される第1検出信号と第2磁気センサ115から出力される第2検出信号との差を補正する検出補正値を取得するとともに、この検出補正値を取得した状態において制御装置122、表示装置125およびブザー126をそれぞれ作動状態とするための操作子106を備えている。このため、体内磁性体検出装置100は、操作子106が操作されたときのみ磁性体Mの検出を行うため、磁性体Mの検出が不要な場合において磁性体Mの検出が行なわれず磁性体Mの検出精度の信頼性を向上させることができる。また、この体内磁性体検出装置100においては、第1磁気センサ113から出力される第1検出信号と第2磁気センサ115から出力される第2検出信号との差を補正する検出補正値を取得しているため、第1磁気センサ113と第2磁気センサ115との検出精度のバラツキおよび誤差を補正することができ、磁性体Mの検出精度の信頼性を向上させることができる。
【0073】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0074】
例えば、上記実施形態においては、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115は、磁気抵抗素子で構成した。しかし、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115は、検出棒体110の周囲の磁気的エネルギの変化を電気的エネルギに変換して出力することができる素子であれば必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。したがって、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115は、例えば、ホール素子、GMRセンサまたはMIセンサで構成することができる。
【0075】
また、上記実施形態においては、第1磁気センサ113を構成する永久磁石113cを検出棒体110の周辺に存在する磁性体Mを吸着することができる程度の磁力を有するネオジム磁石で構成した。しかし、永久磁石113cは、検出棒体110の周辺に存在する磁性体Mを吸着することができればよく、ネオジム磁石以外の磁石、例えば、フェライト、サマリウムコバルトまたはアルニコなどの各種磁石を用いることができる。この場合、検出棒体110の周辺とは、検出棒体110の先端部111bに対して10mm以内の範囲、好ましくは20mm以内の範囲、より好ましくは30mm以内の範囲である。また、永久磁石113cは、検出棒体110の周辺に存在する磁性体Mを吸着する必要がない場合には、少なくとも検出素子113aに磁気バイアスを掛けて検出素子113aの動作点を抵抗変化のリニアな領域にシフトさせることができる程度の磁力を有する磁石で構成されていればよい。この場合、永久磁石115cについても同様に、少なくとも検出素子115aに磁気バイアスを掛けて検出素子115aの動作点を抵抗変化のリニアな領域にシフトさせることができる程度の磁力を有する磁石で構成されていればよい。すなわち、体内磁性体検出装置100は、必ずしも、検出した磁性体Mを検出棒体110の先端部111bに吸着させる必要はなく、検出した磁性体Mを吸着させない構成、すなわち、検出するのみで構成することもできる。したがって、永久磁石113c,115cとしては、ネオジム磁石のほか、フェライト、サマリウムコバルトまたはアルニコなどの各種磁石を用いることができる。
【0076】
また、上記実施形態においては、制御装置122は、操作子106をダブルクリック(間を開けずに素早く2回連続で押下する操作)することにより検出補正値算出プログラムを実行するとともに、操作子106を押下し続けることにより磁性体検出プログラムを実行するように構成した。しかし、検出補正値算出プログラムおよび磁性体検出プログラムの各実行の制御装置122への指示は、操作子106の他の操作方法(例えば、所定時間押下状態を維持する所謂長押し)であってもよいことは当然である。また、制御装置122は、電源がONされた後、自動的に1回または所定の時間経過ごとに複数回に亘って検出補正値算出プログラムを実行するように構成することもできる。また、体内磁性体検出装置100は、検出補正値算出プログラムの実行を指示するための操作子106と、磁性体検出プログラムの実行を指示するための操作子106とをそれぞれ別々に設けることもできる。
【0077】
また、上記実施形態においては、磁性体検出プログラムは、ステップS204にて基準総合検出値を取得した後、ステップS206にて基準総合検出値を用いて磁性体Mの検出処理を実行した。しかし、磁性体検出プログラムは、基準総合検出値を用いなくても磁性体Mの有無を判定することもできる。例えば、磁性体検出プログラムは、ステップS206におけるサブステップ4にて取得した総合検出値で磁性体Mの有無を判定することができる。
【0078】
具体的には、磁性体検出プログラムは、ステップS206におけるサブステップ5にて、総合検出値自体が制御装置122に予め設定されている所定の範囲内を超えた値か否かを判定するようにする。この場合、制御装置122は、前記総合検出値が所定の範囲外の値である場合には、この判定処理にて「Yes」と判定してステップS208に進む。一方、制御装置122は、前記総合検出値が所定の範囲内の値である場合には、この判定処理にて「No」と判定してステップS210に進む。これによれば、ステップS204による基準総合検出値の取得処理は不要となる。
【0079】
また、上記実施形態においては、制御装置122は、検出補正値算出プログラムおよび磁性体検出プログラムの各実行の都度、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115の作動の開始または停止を実行するように構成した。しかし、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115は、体内磁性体検出装置100の電源のONとともに作動を開始、電源のOFFとともに作動を停止するように構成することできる。この場合、制御装置122は、第1磁気センサ113および第2磁気センサ115から継続的に出力される第1検出信号および第2検出信号の入力を必要時以外は無視するように構成するとよい。
【0080】
また、上記実施形態においては、制御装置122は、操作子106の操作に基づく検出補正値算出プログラムおよび磁性体検出プログラムの各実行によって磁性体Mの検出処理(ステップS206)および磁性体Mを検出した際の報知処理(ステップS208)をそれぞれ実行するように構成した。しかし、制御装置122は、操作子106の操作に基づいて結果として磁性体Mの検出処理(ステップS206)および報知処理(ステップS208)がそれぞれ実行されればよい。
【0081】
したがって、制御装置122は、例えば、磁性体Mの検出処理(ステップS206)を体内磁性体検出装置100の電源のONの後、自動的に実行を開始するように構成するとともに、報知処理(ステップS208)については操作子106の操作に基づいて実行が開始されるように構成することができる。この場合、制御装置122は、操作子106の操作に基づいて報知処理(ステップS208)が実行されるまでの間、磁性体Mの検出処理(ステップS206)を実行するが、その検出結果については無視するように構成すればよい。
【0082】
また、制御装置122は、例えば、報知処理(ステップS208)を体内磁性体検出装置100の電源のONの後、自動的に実行を開始するように構成するとともに、磁性体Mの検出処理(ステップS206)については操作子106の操作に基づいて実行が開始されるように構成することもできる。
【0083】
また、上記実施形態においては、体内磁性体検出装置100は、検出棒体110が本体ケース101に対して着脱自在に取り付けられるように構成した。しかし、体内磁性体検出装置100は、検出棒体110と本体ケース101とを一体的に形成して互いに分離不要に構成することもできる。
【0084】
また、上記実施形態においては、検出棒体110は、側面部111aの肉厚よりも先端部111bの肉厚を薄く形成した。これにより、検出棒体110は、長尺に延びる検出棒体110の剛性を保ちつつ先端部111bに検出した磁性体Mを磁気吸着させ易くすることができる。しかし、検出棒体110は、側面部111aの肉厚と先端部111bの肉厚とを同一の厚さに形成してもよいし、側面部111aの肉厚よりも先端部111bの肉厚を厚く形成することもできる。
【0085】
また、上記実施形態においては、本体ケース101は、収納部101aとグリップ部101bとで構成した。しかし、本体ケース101は、使用者が把持できる大きさおよび形状に形成されていればよく、必ずしも上記実施形態に限定されるものではない。したがって、本体ケース101は、例えば、図10に示すように、検出棒体110の軸方向に延びる薄型箱状の収納部101aのみで構成することもできる。この場合、収納部101aは、上記実施形態におけるグリップ部101bを兼ねているものである。このような形状に形成した体内磁性体検出装置100においては、本体ケース101をナイフや鉛筆のように把持することで人間の頭部など狭い場所へ挿入および操作を行い易くすることができる。
【0086】
また、上記実施形態においては、本発明に係る報知手段を表示装置125およびブザー126で構成した。しかし、報知手段は、使用者に対して磁性体Mの検出状態を認識させることができるように構成されていればよい。したがって、報知手段は、例えば、バイブレータで構成することにより振動によって使用者に対して磁性体Mの検出状態を認識させるように構成することもできる。
【0087】
また、上記実施形態においては、体内磁性体検出装置100は、人間の体内に挿入して縫合針などの磁性体製の異物の検出に用いることを想定した。しかし、体内磁性体検出装置100は、人間以外の動物の体内、機械器具、各種装置または容器などの内部に挿入して磁性体製の異物の検出に用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
M…磁性体、
100…体内磁性体検出装置、101…本体ケース、101a…収納部、101b…グリップ部、102…検出棒体連結部、103…電源スイッチ、104…バッテリケース、105…電池、106…操作子、
110…検出棒体、111…ケーシング、111a…側面部、111b…先端部、112…連結部、112a…引掛け部、113…第1磁気センサ、113a…検出素子、113b…基板、113c…永久磁石、114a,114b…信号線、115…第2磁気センサ、115a…検出素子、115b…基板、115c…永久磁石、
120…制御基板、121a,121b…増幅器、122…制御装置、123…A/D変換機、124…駆動回路、125…表示装置、126…ブザー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10