(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エネルギー変換効率を向上させることが可能となるように、従来よりもさらに大きい振幅のギャロッピングを発生させることができる運動体が望まれている。大きな振幅のギャロッピングを発生させるには、流体よりも運動体の比重を小さくすることが望ましいが、比重の小さい運動体は流体抵抗に対する耐性が低く振動が止まりやすい。流体抵抗は運動体の断面形状に依存するため、なるべく流体抵抗の小さい断面形状が理想的である。ギャロッピングを生じる断面形状として一般的によく知られた四角柱及び三角柱などは、運動体の進行(運動)方向に大きな流体抵抗を受けやすい断面形状であり、効率が悪い。
【0007】
そこで、本発明は、流体の流れを利用したエネルギー変換装置において使用でき、ギャロッピングを発生しやすい断面形状の特徴を有しながら、同時に、運動体の進行(運動)方向の流体抵抗が小さい断面形状を用いることで、従来よりもエネルギー変換性能に優れた運動体、及び、該運動体を複数備えた運動体複合体、並びに、該運動体又は該運動体複合体を有したエネルギー変換装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、流体の流れ場において、ギャロッピングの原理で振動又は回転を発生可能な運動体であって、断面アスペクト比(長径/短半径)が4〜8の半楕円形状の断面を有した半楕円柱であ
り、前記半楕円形状の断面の直線部分が前記流体の流れの上流側に向くように配置されることを特徴とする。
【0009】
(2)別の観点として、本発明は、流体の流れ場において、ギャロッピングの原理で振動又は回転を発生可能な運動体であって、下記条件(i)〜(v)の関係を満たす基本線1及び基本線2に囲まれてなる形状の断面を有していることを特徴とするものであってもよい
(i)前記基本線1は、直交座標系のy≧0において定義される線y
1=f(x
1)である。前記基本線2は、直交座標系のy≦0において定義される線y
2=f(x
2)である。また、y軸の正方向は、前記流体の流れ方向と一致している。なお,前記基本線1及び前記基本線2は角形状を持たない滑らかな線である。
(ii)前記基本線1及び前記基本線2は、x軸上の2点x
min、x
maxで交わる。
x
min、x
maxは、x
1及びx
2の最小値と最大値である。
x
1とx
2とは、極小値及び極大値を持たない。
y
maxはy
1の最大値であり、y
1は極小値を持たない。
y
minはy
2の最小値であり、y
2は極大値を持たない。
y
max+y
min≧0、且つ、y
max>0である。また、y
min=0のとき、前記基本線2はx軸上の線分となる。
(iii)前記基本線1及び前記基本線2に囲まれてなる形状の断面について、e=(x
max−x
min)/(y
max−y
min)とするとき、1.5≦e≦15(2≦e≦12が好ましい)である。
(iv)前記基本線1のうちy
maxの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
前記基本線2のうちy
minの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
(v)前記基本線1及び前記基本線2のx軸線との交点における接線とx軸とはいずれも垂直に交わっており、前記基本線1及び前記基本線2のx軸線との交点を含む前記運動体の両端部(例えば、交点付近のみの幅の狭い範囲)は曲線又は直線形状となっている。
なお、第2の運動体を振動させる場合、該第2の運動体の断面形状は、y軸を対称軸として左右が線対称となっていることが好ましい。
【0010】
(3)他の観点として、本発明は、流体の流れ場において、ギャロッピングの原理で振動又は回転を発生可能な運動体であって、下記条件(i)〜(v)の関係を満たす基本線1及び基本線2に囲まれてなる形状を基にして前記基本線2側から内部をくり抜いてなる凹状の断面を有し
、前記運動体の両端部の先端に突起が設けられていることを特徴とするものであってもよい。
(i)前記基本線1は、直交座標系のy≧0において定義される線y
1=f(x
1)である。前記基本線2は、直交座標系のy≦0において定義される線y
2=f(x
2)である。また、y軸の正方向は、前記流体の流れ方向と一致している。なお、前記基本線1及び前記基本線2はx軸との交点以外に角形状を持たない滑らかな線である
(ii)前記基本線1及び前記基本線2は、x軸上の2点x
min、x
maxで交わる。
x
min、x
maxは、x
1及びx
2の最小値と最大値である。
x
1とx
2とは、極小値及び極大値を持たない。
y
maxはy
1の最大値であり、y
1は極小値を持たない。
y
minはy
2の最小値であり、y
2は極大値を持たない。
y
max+y
min≧0、且つ、y
max>0である。また、y
min=0のとき、前記基本線2はx軸上の線分となる
(iii)前記基本線1及び前記基本線2に囲まれてなる形状の断面について、e=(x
max−x
min)/(y
max−y
min)とするとき、1.5≦e≦15(2≦e≦12が好ましい)である。
(iv)前記基本線1のうちy
maxの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
前記基本線2のうちy
minの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている
(v)x軸上の前記基本線1と前記基本線2との交点を含む前記運動体の両端部の形状は、角形状又は曲線形状である
なお、第3の運動体を振動させる場合、該第3の運動体の断面形状は、y軸を対称軸として左右が線対称となっていることが好ましい。
【0011】
上記(1)〜(3)の構成によれば、容易に、端部の流体の流れ場下流側に、ギャロッピングに関与する剥離せん断層を形成することができる。さらに、運動体の進行(運動)方向に流線形状に近いため、四角柱又は三角柱などの断面に比べて流体抵抗が小さく、これにより、運動体により大きな振幅のギャロッピングを発生させることができる。したがって、流体の流れを利用したエネルギー変換装置において使用でき、簡単な構成でありながら、従来よりもエネルギー変換性能に優れた運動体とすることができる。なお、基本線1及び基本線2を、x軸との交点以外に角形状を持たない滑らかな線としているのは、各基本線の中間に角形状を有したものとすると、運動体の進行方向の流れが角部で剥離し、流体抵抗が大きくなってしまうためである。したがって、運動体は、流体の流れ場方向に剥離を伴う形状であっても、運動体の進行(運動)方向に滑らかな形状(基本線1及び基本線2それぞれを微分した関数dy
1/dx
1、dy
2/dx
2がいずれも連続な関数で表される形状。例えば流線形状又は曲線形状)であることが好ましい。ここで、例えば、上記(1)〜(3)の構成のうち、特に強い流体力を誘起する断面形状の運動体を、流体の流れ方向に平行な回転軸を軸として回動するようなギャロッピングを発生させる場合、プロペラのように片方向のみに連続的に回転させることが可能である。また、上記(1)〜(3)の構成の本発明は、水車又は風車のプロペラブレードとして従来から多用されている翼型ブレードとは原理が全く異なるものの、回転機能は同じであり,翼型ブレードに代わるプロペラブレードとして使用可能である。また、上記(1)〜(3)の構成の本発明は、3次元的に複雑な形状の翼型ブレードに比べてシンプルな柱状体であるため、従来に比べて製造しやすく低コストである。さらに、上記(1)〜(3)の構成の本発明は、シンプルな形状に形成することが可能な運動体ゆえ、内部空間に補強構造を組み込みやすく、比較的高い強度を得やすいなどの長所がある。
【0012】
(4)上記(1)〜(3)の運動体においては、流体の流れ方向と垂直な面に対してピッチ角を有していることが好ましい。
【0013】
上記(4)の構成によれば、より回転運動しやすい運動体とすることができる。
【0014】
(5)上記(1)
又は(2)の運動体においては、前記運動体の両端部の先端に突起が設けられていることが好ましい。
【0015】
(6)上記(1)〜(5)の運動体においては、比重が周囲の前記流体の比重よりも小さいことが好ましい。
【0016】
上記(5)又は(6)の構成によれば、より振動又は回転運動しやすい運動体とすることができる。
【0017】
(7)本発明の運動体複合体は、上記(1)〜(6)の運動体のいずれか1つと、回転軸に、前記流体の流れ方向に直交する方向に柱状に形成され、一方の端部が前記回転軸に固定されて自励振動又は自励回転により前記回転軸を中心として運動可能な1以上の別の運動体と、が設けられていることを特徴とする。
【0018】
上記(7)の構成によれば、各運動体の自励振動運動、又は、各運動体の自励回転運動が合わさることにより、さらに運動エネルギーを増加させることができる。
【0019】
(8)本発明は、流体の運動エネルギーを別のエネルギー(例えば、機械的な運動エネルギー、位置エネルギー、電気エネルギー又は圧力エネルギーなど)に変換するエネルギー変換装置であって、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の運動体、又は上記(7)に記載の運動体複合体と、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の運動体、又は上記(7)に記載の運動体複合体に、間接的に復元力を付加し前記運動体の運動を制御するバネ機構と、が設けられていることを特徴とする。
【0020】
上記(8)の構成によれば、例えば取り付けた軸を中心として回転する運動体の回転運動をバネの復元力で制御し、往復振動運動にすることが可能となるので、運動体が回転できるほどのスペースが無くても、該スペース内で運動体を振動運動させることが可能である。したがって、上記(8)の構成によれば、比較的狭いスペースでも運動エネルギーを別のエネルギーに変換することができる装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、
図1〜
図4に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態における発電装置の概略構成図、
図2(A)は
図1の運動体を流体の流れ方向から見た図、
図2(B)は
図2(A)のA−A矢視断面図、
図3(A)、(B)は
図1の運動体の変形例を示す図であって、流体の流れ方向から見た図、
図4は、
図1の運動体の変形例の断面形状を示す図である。
【0023】
図1において、本発明の実施の形態における発電装置100は、運動体10と回転軸2と発電部3とを有し、流れ場Fを有する流体内に設けられている。運動体10は、流体の流れ方向(
図1の流れ場Fの矢印方向)に直交する長方形の面1を有し、流体の流れ方向に直交する方向に延びる柱状に形成されている。運動体10は、流れ場F内で流体の流れ方向に直交する面1を有することによって発生する流体励起振動のギャロッピングの原理により回転軸2周りに振動又は回転する。
【0024】
回転軸2は、流体の流れ方向に平行に延設されているとともに、運動体10の軸受け部4の孔4aを介して軸受け部4に固定されている。また、回転軸2は、支持フレーム5の板部材5a、5bにより一端部付近と途中部分とが回転可能に支持されている。また、回転軸2は、他端部の先端にベルト6を架けることができるようになっており、ベルト6を介して発電部3の発電用モータに接続されている。なお、支持フレーム5は、板部材5aなどの板部材を直方体状に組み上げて固定してなるものである。
【0025】
発電部3は、支持フレーム5の上部に取り付けられた4本の支持フレーム7に支持されている板部材8に固定されており、電気エネルギーを生成するための発電用モータ(図示せず)等を内部に備えている。この発電部3では、該発電用モータの入力回転軸3aに架けられたベルト6が作動することで入力回転軸3aが回転して内部のロータ及びステータを介して発電用モータが回転し、発電される。
【0026】
運動体10は、
図2(A)に示すように、鉛直方向下端側に軸受け部4を備えている。この軸受け部4は、回転軸2に孔4aを介して固定されており、回転軸2を中心に回転自在になっている。また、
図2(B)に示すように、運動体10の断面(
図2(A)のA−A矢視断面)は、半楕円形に形成されている。運動体10は、流れ場F内に位置することによって、上流側の両端部に流体の剥離が生じる剥離点Pを有するようになる。そして、運動体10の下流側に、剥離点Pから剥離した流体の流れである剥離せん断層9を形成することができるようになっている。
【0027】
ここで、運動体10の断面の半楕円形の長径をa、短半径をbとするとき、運動体10の断面アスペクト比はa/bとなる。流体(例えば水)の流速が0.3m/s〜6.0m/sの流れ場F内に運動体10を配置した場合にギャロッピングの原理により振動又は回転を発生させるためには、断面アスペクト比(a/b)が1.5≦(a/b)≦15の運動体10を用いることが好ましい。特に、断面アスペクト比(a/b)が2≦e≦12の運動体10を用いることが好ましい。なお、断面アスペクト比(a/b)が10を超えると、運動体10の厚みが薄くなり、製作するのも困難で構造的な強度が弱すぎるとともに,発生する振動や回転がかなり弱くなると考えられる。また、運動体10の長さLは、3cm〜3000cmとすることが好ましい。また、運動体10の流体の流れ方向に直交する面1のアスペクト比(L/a)の範囲は、運動体10が損壊しない範囲であれば特に限定されない。
【0028】
運動体10の比重は、流体の比重よりも大きくても小さくてもよいが、運動体10が流れ場F内で振動又は回転しやすくするためには、運動体10の比重は流体の比重より小さいことが好ましい。また、運動体10は、流体が水の場合、例えば中空状の塩化ビニル、繊維強化プラスチック、鋼材、木材(竹を含む)等で構成されることが好ましく、流体が空気の場合、例えばポリ塩化ビニル、ハイパロン等で構成されることが好ましい。なお、流体が水の場合であって、運動体10が中空状である場合には、水が浸入しないように、運動体10内部に発泡ウレタンのような素材を詰めておいてもよい。また、流体が空気の場合には、運動体12の比重を空気よりも小さくするために、空気よりも比重が小さい、ヘリウム又は水素のような気体を、中空状の運動体12内に充填することが好ましい
【0029】
(発電装置100の動作)
上記構成の発電装置100は、流体の流れ場F内に位置することによって、運動体10の両端部の剥離点Pで上流側から下流側に剥離せん断層9が形成されるようになり、自然界の小さな乱れによって両端部の剥離点Pで交互に圧力が変動し、運動体10に流体の流れ方向に直交する方向の力が作用し、運動体10が回動し始める。運動体10が回動し始めると、運動体10の進行方向側の剥離せん断層9が運動体10に近づくため、運動体10の進行方向側のアフターボディ(運動体10の一部)の表面圧力が低下し、運動体10の進行方向にさらに大きな回動力が作用するようになる。そのため、運動体10の回動速度は増加し、それによって運動体10の進行方向側の剥離せん断層9がさらに運動体10に近づき、さらに大きな回動力が運動体10に作用するというフィードバック増幅機構が発生する。このとき、重力、浮力、バネ力などの復元力が運動体10に作用している場合、運動体10は少しずつ振幅を増しながら回転軸2周りに往復振動するようになり、時間と共に大振幅の振動に成長する。一方、運動体10に作用する重力や浮力が弱い場合、あるいはバネを用いない場合、運動体10は往復振動せず、水車又は風車のプロペラのように片方向への回転を発生する。
【0030】
このようにして、運動体10が回転軸2周りに振動又は回転することにより、ベルト6を介して発電部3の発電用モータを回転させて、運動体10の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し発電が行われる。
【0031】
(発電装置100の特徴)
上記構成の発電装置100によれば、運動体10に従来よりもさらに大きい振幅の振動(運動体10を回転させる場合を含む)を発生させることができるので、簡単な構成でありながら、従来よりも発電性能に優れた装置とすることができる。
【0032】
(変形例)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。例えば、下記変形例が挙げられる。
【0033】
例えば、運動体の流体の流れ方向に直交する面の形状は、長方形に限定されるものではなく、
図3(A)に示すように、鉛直方向上端側の先端に向かうほど運動体10aの幅a(断面の半楕円形の長径)が徐々に細くなる台形、又は
図3(B)に示すように、鉛直方向上端側の先端に向かうほど運動体10bの幅aが徐々に太くなる台形であってもよい。また、
図3(A)、(B)に示したテーパー部11を曲線状(凹形状又は凸形状の扇形状など)にしてもよい。また、運動体の鉛直方向上端側の先端は、翼端渦を形成しないように先端を丸くしたり、折り曲げたりする変更も可能である。
【0034】
また、上記実施の形態における運動体の断面形状は、半楕円形に限定されるものではなく、
図4(A)に示すように面1cが凹んだ円弧形に形成された運動体10cであってもよい。他に、
図4(B)に示すように、面1dが凸形状となっていて、両端部に剥離点Pとなる角部を有している運動体10dでもよい。また、
図4(C)に示すように、面1eが凸形状となっていて、両端部が曲面を有しており、両曲面の先端部が剥離点Pとなるものであってもよい。なお、
図4(A)〜(C)の運動体は中空状のものであってもよい。
【0035】
また、運動体の形状に関わるパラメータとして、質量、長さ、断面アスペクト比(a/b)、流体の流れ方向に直交する面1のアスペクト比(L/a)があるが、これらは、実施態様に応じて適切な値を決定すればよい。また、上記実施形態の発電装置100では、発電部3が発電用モータを用いたロータ方式であるが、運動体10の運動エネルギーを電気エネルギーに変換するための形態としては、公知の形態を用いることが可能である。例えば、永久磁石等の磁場発生器を振動体の先端に取り付け、該磁場発生器の移動位置に対応する位置にコイル等の導電体を並列配置(例えば円周状配置)してなる電磁誘導方式の発電装置等が挙げられる。また、運動体を回転軸に軸支して回転振動させるだけでなく、運動体の両端をバネで吊るなどして上下方向に並進振動させることでエネルギーを取り出すことも可能である。
【0036】
(運動体の断面形状の一般化)
ここまで本発明の実施の形態に係る運動体を説明してきたが、ここで、本発明に係る運動体の断面形状について一般化したものを示す。この一般化した運動体の断面形状としては、大きく3種類の形状に分別することができる。以下、それぞれについて説明する。
【0037】
第1の一般化した運動体は、流体の流れ場において、ギャロッピングの原理で振動又は回転を発生可能なものであって、下記条件(i)〜(vi)の関係を満たす基本線1及び基本線2に囲まれてなる形状の断面を有している。
【0038】
(i)該基本線1は、直交座標系のy≧0において定義される線y
1=f(x
1)である。該基本線2は、直交座標系のy≦0において定義される線y
2=f(x
2)である。また、y軸の正方向は、該流体の流れ方向と一致している。なお、該基本線1及び該基本線2はx軸との交点以外に角形状を持たない滑らかな線である。
(ii)該基本線1及び該基本線2は、x軸上の2点x
min、x
maxで交わる。
x
min、x
maxは、x
1及びx
2の最小値と最大値である。
x
1とx
2とは、極小値及び極大値を持たない。
y
maxはy
1の最大値であり、y
1は極小値を持たない。
y
minはy
2の最小値であり、y
2は極大値を持たない。
y
max+y
min≧0、且つ、y
max>0である。また、y
min=0のとき、該基本線2はx軸上の線分となる。
(iii)該基本線1及び該基本線2に囲まれてなる形状の断面について、e=(x
max−x
min)/(y
max−y
min)とするとき、1.5≦e≦15(2≦e≦12が好ましい)である。なお、上記実施の形態及び変形例において、aは(x
max−x
min)に対応し、bは(y
max−y
min)に対応している。すなわち、(a/b)はeと対応している。
(iv)該基本線1のうちy
maxの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
該基本線2のうちy
minの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
(v)該基本線2のx軸線との交点における接線とx軸との交角が90°よりも小さく、該基本線1及び該基本線2のx軸線との交点を含む該運動体の両端部は角形状となっている。
この第1の一般化した運動体の断面形状を例示すると、
図5(A)に示した薄墨色の部分(線y
1=f(x
1)と線y
2=f(x
2)とに囲まれた部分)となる。
(vi)この第1の一般化した運動体を振動させる場合、該運動体の断面形状は、y軸を対称軸として左右が線対称となっていることが好ましい。
【0039】
次に、第2の一般化した運動体は、流体の流れ場において、ギャロッピングの原理で振動又は回転を発生可能なものであって、下記条件(i)〜(vi)の関係を満たす基本線1及び基本線2に囲まれてなる形状の断面を有している。
(i)該基本線1は、直交座標系のy≧0において定義される線y
1=f(x
1)である。該基本線2は、直交座標系のy≦0において定義される線y
2=f(x
2)である。また、y軸の正方向は、該流体の流れ方向と一致している。なお、該基本線1及び該基本線2は角形状を持たない滑らかな線である。
(ii)該基本線1及び該基本線2は、x軸上の2点x
min、x
maxで交わる。
x
min、x
maxは、x
1及びx
2の最小値と最大値である。
x
1とx
2とは、極小値及び極大値を持たない。
y
maxはy
1の最大値であり、y
1は極小値を持たない。
y
minはy
2の最小値であり、y
2は極大値を持たない。
y
max+y
min≧0、且つ、y
max>0である。また、y
min=0のとき、該基本線2はx軸上の線分となる。
(iii)該基本線1及び該基本線2に囲まれてなる形状の断面について、e=(x
max−x
min)/(y
max−y
min)とするとき、1.5≦e≦15(2≦e≦12が好ましい)である。なお、上記実施の形態及び変形例において、aは(x
max−x
min)に対応し、bは(y
max−y
min)に対応している。すなわち、(a/b)はeと対応している。
(iv)該基本線1のうちy
maxの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
該基本線2のうちy
minの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
(v)該基本線1及び該基本線2のx軸線との交点における接線とx軸とはいずれも垂直に交わっており、該基本線1及び該基本線2のx軸線との交点を含む該運動体の両端部は曲線あるいは直線形状となっている。
この第2の一般化した運動体の断面形状を例示すると、
図5(B)に示した薄墨色の部分(線y
1=f(x
1)と線y
2=f(x
2)とに囲まれた部分)となる。
(vi)この第2の一般化した運動体を振動させる場合、該運動体の断面形状は、y軸を対称軸として左右が線対称となっていることが好ましい。
【0040】
第3の一般化した運動体の断面形状は、流体の流れ場において、ギャロッピングの原理で振動又は回転を発生可能なものであって、下記条件(i)〜(vi)の関係を満たす基本線1及び基本線2に囲まれてなる形状を基にして該基本線2側から内部をくり抜いてなる凹状の断面を有している。
(i)該基本線1は、直交座標系のy≧0において定義される線y
1=f(x
1)である。該基本線2は、直交座標系のy≦0において定義される線y
2=f(x
2)である。また、y軸の正方向は、該流体の流れ方向と一致している。なお、該基本線1及び該基本線2はx軸との交点以外に角形状を持たない滑らかな線である。
(ii)該基本線1及び該基本線2は、x軸上の2点x
min、x
maxで交わる。
x
min、x
maxは、x
1及びx
2の最小値と最大値である。
x
1とx
2とは、極小値及び極大値を持たない。
y
maxはy
1の最大値であり、y
1は極小値を持たない。
y
minはy
2の最小値であり、y
2は極大値を持たない。
y
max+y
min≧0、且つ、y
max>0である。また、y
min=0のとき、該基本線2はx軸上の線分となる。
(iii)該基本線1及び該基本線2に囲まれてなる形状の断面について、e=(x
max−x
min)/(y
max−y
min)とするとき、1.5≦e≦15(2≦e≦12が好ましい)である。なお、上記実施の形態及び変形例において、aは(x
max−x
min)に対応し、bは(y
max−y
min)に対応している。すなわち、(a/b)はeと対応している。
(iv)該基本線1のうちy
maxの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
該基本線2のうちy
minの点を含む部分が、直線形状、又は、中心から外側に向けて凸の曲率を持つ曲線形状となっている。
(v)x軸上の該基本線1と該基本線2との交点を含む該運動体の両端部の形状は、角形状又は曲線形状である。
(vi)この第3の一般化した運動体を振動させる場合、該運動体の断面形状は、y軸を対称軸として左右が線対称となっていることが好ましい。
この第3の一般化した運動体の断面形状を例示すると、
図5(C)に示した薄墨色の部分となる。なお、ここでの運動体は、
図5(C)に示したように薄肉状のものでもいいし、単に凹んだ部分を中央に有しているものでもよい。
【0041】
なお、上述の一般化した
図5(A)〜(C)の各運動体の断面形状の両端部の先端には、例えば、
図5(D)に示したような突起が設けられていてもよい。この2箇所の突起によっても剥離せん断層が形成され、ギャロッピングを発生させることができるため、運動体を自励振動又は自励回転させることが可能である。また、上述の一般化した
図5(A)〜(C)の各運動体の表面に、ドーム状、円錐、四角錐、三角錐、横に倒した半円柱、直方体、又は、横に倒した三角柱などの凹凸を設けてもよい。この場合、該凹凸の深さ又は高さは断面アスペクト比の短軸長の1/10程度以下であって、該凹凸が均された平均の曲線は上述の一般化した
図5(A)〜(C)の各基本線1及び各基本線2の各条件を満たす。
【0042】
(運動体複合体)
次に本発明に係る運動体複合体について説明する。例えば、上述の運動体を複数組み合わせてなる
図6(A)、(B)に示したような運動体複合体が挙げられる。本運動体複合体は、上記実施の形態における運動体10の代わりに、プロペラとして2枚翼の運動体複合体20又は3枚翼の運動体複合体30を用いたものである。以下、運動体複合体20、運動体複合体30のそれぞれについて詳述する。
【0043】
運動体複合体20は、上記実施の形態における断面形状が半楕円形の運動体10と同様の翼部材20a、20bを有したものである。具体的には、
図6(A)に示すように、運動体複合体20は中央に軸受け部24を備え、翼部材20a、20bが軸受け部24から流体の流れ方向に直交する方向に延びる柱状に形成されている。また、翼部材20a、20bは、軸受け部24の周方向に180度間隔をあけて対称的に形成され、流体の流れ方向の上流側において流体の流れ方向に直交する長方形の面21a、21bをそれぞれ有している。軸受け部24は、回転軸22により軸支されており、回転軸22を中心として時計回り方向又は反時計回り方向に回転自在になっている。他の点は上記実施の形態と同様であるので、説明を省略するが、これらの構成により、上記実施の形態よりも効率よく発電できる。
【0044】
運動体複合体30は、上記実施の形態における断面形状が半楕円形の運動体10と同様の翼部材30a、30b、30cを有したものである。具体的には、
図6(B)に示すように、運動体複合体30は中央に軸受け部34を備え、この軸受け部34の周方向に等間隔をあけて、翼部材30a、30b、30cが軸受け部34から流体の流れ方向に直交する方向に放射状に形成されている。また、翼部材30a、30b、30cは、流体の流れ方向の上流側において、流体の流れ方向に直交する長方形の面31a、31b、31cをそれぞれ有している。軸受け部34は、回転軸32により軸支されており、回転軸32を中心として時計回り方向又は反時計回り方向に回転自在になっている。他の点は上記実施の形態と同様であるので、説明を省略するが、これらの構成により、上記実施の形態及び
図6(A)のものよりも効率よく発電できる。
【0045】
また、上記実施の形態の他の変形例としては、運動体10の代わりに、
図7(A)、(B)に示した運動体40、50を用いることが挙げられる。具体的には、
図7(A)に示したように、流体の流れ場Fの方向と垂直な面に対してピッチ角θ(例えば0°を超えた値〜15°程度)を与えた面41を有した運動体40とすることにより、上記実施の形態の運動体10を用いるよりもパワー係数を大きくすることができる。また、
図7(B)に示したように、運動体50を、流体の流れ場Fの方向に対して下流側に傾けて回転軸52に軸支したものとしてもよい。なお、ピッチ角θを設けない場合には、静止しやすい状態(例えば、流体の流速変動が激しい場合)において、左右どちらの方向にも回転することが可能である。
【0046】
また、上記実施の形態の他の変形例として、
図8に示したものが挙げられる。なお、特に示さないかぎり、本変形例の各部分を示す符号の下一桁の数字が上記実施の形態の各部分を示す符号と一致するものは、同様の部位であるので、説明を省略する。
図8に示した発電装置200は、一端が回転軸102の端部に固定され、回転軸102に倣って回動する棒状部材120と、一端が棒状部材の他端において支持され、他端が支持フレーム105に支持されている引張バネ121、122と、を備えている点で上記実施の形態の発電装置100と異なっている。このような構成であれば、引張バネ121、122の復元力を利用して、運動体110の復元力(ギャロッピングにより傾倒してから初期状態の立っている状態に戻ってくるための力)が小さい場合でも、振動させることができる。また、運動体110が自励回転をするほど運動する場合でも、引張バネ121、122の復元力を所定の力に設定して回転運動を制御し、振動運動のみにすることも可能である。なお、引張バネ121、122はどちらか1つでもよい。また、特に、以下の場合にバネを用いると効果的である。
(1)倒立状態の運動体に作用する浮力−重力(=復元力)<0
(2)吊り下げ状態の運動体(重力方向を初期状態とするもの)を用いた場合、該運動体に作用する重力−浮力(=復元力)<0
(3)運動体に作用する浮力と重力との差(=復元力)が小さすぎて振動が生じにくいとき。
また、
図8の引張バネの代わりに、回転軸が回転した際、該回転軸の回転を復元する方向に付勢する巻きバネを設けてもよい。これにより、
図8に示した引張バネの場合と同様の効果を奏することができる。
【0047】
また、
図8の引張バネの代わりに、
図9に示した回転バネ221を用いてもよい。具体的には、運動体201と、回転軸202、204、205と、運動体201の下端に他端が固定されている回転軸202の一端に回転軸202に倣って回転するように設けられた第1プーリ230と、回転軸204の一端に設けられ、回転軸204の回転を復元する方向に付勢する回転バネ221と、回転軸204の他端に設けられ、回転軸204に倣って回転するように設けられた第2プーリ231と、回転軸204の途中に回転軸204に倣って回転するように設けられた第3プーリ232と、回転軸205の他端に設けられ、回転軸205に倣って回転するように設けられた第4プーリ233と、第1プーリ230と第2プーリ231とに架設されているベルト241と、第3プーリ232と第4プーリ233とに架設されているベルト242と、回転軸205の一端に接続された発電部203と、を備えた構成の発電装置としてもよい。これにより、
図8に示した引張バネの場合と同様の効果を奏することができる。
【0048】
また、回転する上記実施形態の運動体10の回転を所定位置までで制御して往復振動させることとしてもよい。具体的には、例えば、運動体10の回転位置の途中に第1の邪魔部材を設けて、それ以上回転しないようにすれば、逆方向に運動するような剥離せん断層が剥離点で上流側から下流側にかけて発生した際、運動体10は逆方向に運動する。このとき、運動体10の回転位置の途中に第2の邪魔部材を設けておけば、同様の作用により、最初の方向に運動することとなり、結果的に往復振動させることができるようになる。このような制御を行えば、運動体10の回転するスペースがなくても、往復振動するスペースを確保するだけでよく、例えば、
図1の発電装置の支持フレーム5内だけで十分運動させることも可能となる。結果として、小型の発電装置を提供できる。
【0049】
また、各運動体の用途として発電装置を示したが、これに限られない。例えば、各運動体は、加圧器に用いてもよい。具体的には、上述の各運動体の回転運動又は振動運動を、各運動体の軸となる回転軸とは異なる他の回転軸にベルトなどで伝えて、該回転軸に取り付けたピニオンギアなどからラックを使って並進運動に変え、ラックでピストンなどを押してシリンダ内で圧力を発生させて、発生した圧力で圧力モータ(油圧モータ、水圧モータなど)を作動させ、圧力エネルギーを回転エネルギーなどに変換して他の運動に変えて、他の機械を動かし、加圧器として作動させるようにしてもよい。
【実施例】
【0050】
(実施例1)
次に、
図8と同構成の発電装置を製作し、該装置を水中で使用して、半円柱の運動体の発電量の測定を行った。また、比較例として、円柱の運動体を用いた装置も製作し、同様の測定を行った。なお、円柱の運動体、半円柱の運動体ともに、材料はステンレスで中空状(見かけ上の密度は、円柱の運動体が0.29g/cm
3、半円柱の運動体が0.46g/cm
3)であり、長さ50cm、直径11.5cmである。また、ここで、円柱の運動体の場合に試したバネの回転バネ定数は、下記表1の実施例1の欄に示したものとなっている。まず、水の流速が0.9m/sの流れ場F内に運動体として円柱又は半円柱を配置し、該運動体が往復振動してから、それぞれの発電量を測定すると、円柱の運動体と、上記1.6Nm/rad〜2.7Nm/radの範囲の回転バネ定数のバネそれぞれとを使用した場合、5Wであった。同様の条件で、半円柱の運動体と、上記7.5Nm/rad〜13.7Nm/radの範囲の回転バネ定数のバネそれぞれとを使用した場合、発電量は30Wであった。よって、上記所定範囲の回転バネ定数のいずれかのバネで各運動体を間接的に制御した上記発電装置において、ギャロッピングによる半円柱の運動体の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する形態は、従来のカルマン渦による円柱の運動体の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する形態よりも6倍の発電量を得ることが確認された。
【表1】
【0051】
(実施例2)
次に、実施例1と同様の装置構成であって、長さ30cmの運動体(半楕円柱)の断面アスペクト比(a/b)を変化させた場合において、発電量を測定した。なお、実施例1と同様、流れ場の水の流速は0.9m/sである。結果を上記表1の実施例2の欄に示す。
【0052】
表1の結果から、運動体10の断面アスペクト比(a/b)が6のものが最大の発電量を得ることが分かった。よって、この場合の発電装置100では、発電性能が高い運動体10の断面アスペクト比(a/b)は6付近であることが確認された。また、運動体10の断面アスペクト比(a/b)を変化させると、剥離せん断層9が変化し、剥離せん断層9と運動体10の相互作用が変化することによって、運動体10で発生するギャロッピングの特性が変化した結果として、生成される電気エネルギーが変化したものと考える。
【0053】
上述したように、本実施の形態における発電装置100は、流体の流れ場F内に位置することによって、運動体10の両端部の剥離点Pから下流側に剥離せん断層9が形成されるとともに発生するギャロッピングのメカニズムにより、運動体10が回転軸2周りに振動又は回転し、その運動エネルギーを電気エネルギーに変換し発電することができるので、従来よりも簡単な構成で発電性能を向上させることができる。
【0054】
(実施例3)
次に、本発明に係る実施の形態及びその変形例と同構成の発電装置を製作し、水槽内において該装置を使用して、流速を変えてパワー係数をそれぞれ計測した。以下、具体的に説明する。まず、各装置のプロペラ(半楕円柱の運動体)として、1枚翼からなる運動体(上記実施の形態で示した運動体10と同構成のもの:表1の実施例3の上段参照)、2枚翼からなる運動体(
図6(A)に示した2枚翼の運動体複合体20と同構成のもの:表1の実施例3の中段参照)、3枚翼からなる運動体(
図6(B)に示した3枚翼の運動体複合体30と同構成のもの:表1の実施例3の下段参照)を用いた。上記2枚翼及び上記3枚翼の各翼には、上記1枚翼と同じ設計のものを使用した。また、パワー係数は、下記のように定義される。
パワー係数(%)=(プロペラで取得した仕事率)/(1/2・ρ・A・U
3)
ρは流体の密度、Uは流体の流速、Aはプロペラ回転面積で、プロペラ直径Dとすると、A=π・(D/2)
2 である。
【0055】
このようにして製作した各プロペラを備えた発電装置を実際に水中で使用し、水の流速を変化させた場合のパワー係数を測定した。結果を
図10に示す。
【0056】
図10に示す結果から、3枚翼のプロペラを用いた場合(自励回転)に、他よりも高いパワー係数となり、最大で約34.2%であった。これは、プロペラ回転面積に流入してきた水流エネルギーのうち約34.2%をプロペラの回転によって取り出すことができることを示す。また、2枚翼のプロペラを用いた場合(自励回転)、パワー係数は最大で約29.0%で、1枚翼のプロペラを用いた場合(自励回転)、パワー係数は最大で約19.6%であった。よって、3枚翼のプロペラを用いた場合は、1枚翼のプロペラを用いた場合よりも約1.75倍のパワー係数であることが分かった。
【0057】
また、流速0.3m/sにおいて、3枚翼のプロペラを用いた場合、パワー係数は約22.2%で、他よりも特に高い値となり、これは1枚翼のプロペラを用いた場合の最大のパワー係数よりも高い値であることが分かった。つまり、1枚翼又は2枚翼のプロペラを用いた場合には、パワー係数が3%に達しない流速0.3m/sにおいても、3枚翼のプロペラを用いた場合は、十分にエネルギーを取り出すことができることが分かった。よって、3枚翼のプロペラを用いることにより、幅広い流速に対してパワー係数を高め、効率よく発電できることが確認された。
【0058】
したがって、本変形例の発電装置は、流体の流れ場内に位置することによって、プロペラに発生するギャロッピングにより、プロペラが回転軸周りに回転し、その運動エネルギーを電気エネルギーに変換し発電することができる。さらに、プロペラを1枚翼から3枚翼に変更することで、幅広い流速に対して容易に発電効率を高めることができる。
【0059】
(実施例4)
なお、実施例3における1枚翼のプロペラを用いた場合においては0.8m/s以上の流速中で、2枚翼及び3枚翼のプロペラを用いた場合においては0.6m/s以上の流速中で、パワー係数が低下している。これは、水深の浅い水槽で実験したため、各プロペラの先端が水面近くに移動した際、各プロペラの回転が高速流域の水面のうねりの影響を受けて減衰してしまったのが原因と考えられる。この点を検証するために、1枚翼のプロペラ(上記実施の形態で示した運動体10と同構成のもの)を用いた発電装置を、プロペラの回転が高速流域の水面のうねりの影響を受けないと予想される深さ(最も水面に近接した場合のプロペラの先端と、水面との距離が70cm〜80cmとなる水中位置)に配置して、発電実験を行った。なお、1枚翼のプロペラについては、長さ40cm、断面アスペクト比6のもの(表1の実施例4の上段参照)、長さ50cm、断面アスペクト比6のもの(表1の実施例4の下段参照)、2種類を用いて実験を行った。
【0060】
上記実験の結果をまとめたグラフを
図11に示す。
図11の結果から、十分水深の深い位置に発電装置を設置し、高速流域の水面のうねりの影響を受けないようにした場合には、予想通りパワー係数が低下せず、高流速域においてほぼ一定以上のパワー係数を維持できることがわかった。
【0061】
(実施例5)
次に、中空円柱の運動体(表1の実施例5の1段目参照)と、断面アスペクト比を2とした場合の本発明の実施例に係る各運動体(中空楕円柱(表1の実施例5の2段目参照)、中空半円柱(
図1の運動体10に類似する形状で中空にしたもの:表1の実施例5の3段目参照)、薄肉半円柱(
図4(A)の運動体10cに類似する形状で薄肉にしたもの:表1の実施例5の4段目参照)を
図8に示した装置において使用して、流速を変えて
図8に示した装置の仕事率(W)を計測した。その結果を
図12に示す。なお、各運動体はABS樹脂製であって、各運動体の回転軸中心から先端までの長さは15cmであり、各運動体の断面の寸法は、中空円柱:直径18mm,肉厚1mm、中空楕円柱:長径18mm,肉厚1mm、中空半円柱:直径18mm,肉厚1mm、薄肉半円柱:直径18mm,肉厚1mm、である。
【0062】
図12からわかるように、0.3m/sの流速の流体中(ここでは水中)においては、各運動体について差異はほとんど見られず、中空半円柱の運動体及び薄肉半円柱の運動体のみ、やや仕事率が高くなっただけであった。しかしながら、0.4m/sの流速の流体中において、中空半円柱の運動体及び薄肉半円柱の運動体は、中空円柱の運動体及び中空楕円柱の運動体に比べて、2倍以上の仕事率であった。次に、0.5m/s以上の流速の流体中においては、中空円柱の運動体と比べて、中空楕円柱の運動体、中空半円柱の運動体及び薄肉半円柱の運動体は、明らかに2倍以上の仕事率を達成していることがわかった。特に、0.6m/s以上の流速の流体中において、中空円柱の運動体と比べて、中空楕円柱の運動体、中空半円柱の運動体及び薄肉半円柱の運動体を用いた場合の仕事率の向上が顕著に見られた。これにより、断面アスペクト比を2とした場合の本発明の実施例に係る各運動体を
図1に示した装置に用いた場合、従来技術の中空円柱の運動体を用いた場合に比べて、大幅に仕事率を向上できることがわかった。
【0063】
(実施例6)
表1の実施例6の欄に記載した断面アスペクト比の各半楕円柱の運動体を、
図1の流体内に設けられた装置において使用して、流速を変えてパワー係数をそれぞれ計測した。その結果を
図13に示す。なお、表1の実施例6の欄に示したように、各半楕円柱の運動体における断面アスペクト比以外の各実験条件は、同じである。
【0064】
図13に示す結果から、長さ8.6cmの半楕円柱の運動体において、断面アスペクト比が6、かつ、流速が0.6m/sの場合に、パワー係数は最大値となり、約21.3%であった。また、半楕円柱の運動体の断面アスペクト比が3以上であれば、本運動体の回転面積に流入してきた水流エネルギーを本運動体の回転によって取り出すことができ、パワー係数を得ることができる、ということがわかった。なお、断面アスペクト比が6〜8の範囲において、他の断面アスペクト比の運動体よりも高いパワー係数を得ることができる、ということがわかった。
【0065】
(実施例7)
表1の実施例7の欄に記載した断面アスペクト比の各楕円柱の運動体を、
図1の流体内に設けられた装置において使用して、流速を変えてパワー係数をそれぞれ計測した。その結果を
図14に示す。なお、表1の実施例7の欄に示したように、各楕円柱の運動体における断面アスペクト比以外の各実験条件は、同じである。
【0066】
図14に示す結果から、長さ8.6cmの楕円柱の運動体において、断面アスペクト比が3、かつ、流速が0.6m/sの場合に、パワー係数は最大値となり、約12.8%であった。また、楕円柱の運動体の断面アスペクト比が2.5以上であれば、本運動体の回転面積に流入してきた水流エネルギーを本運動体の回転によって取り出すことができ、パワー係数を得ることができる、ということがわかった。なお、断面アスペクト比が3〜8の範囲において、他の断面アスペクト比の運動体よりも高いパワー係数を得ることができる、ということがわかった。
【0067】
(実施例8)
表1の実施例8の欄に記載した断面アスペクト比の各薄肉半楕円柱の運動体を、
図1の流体内に設けられた装置において使用して、流速を変えてパワー係数をそれぞれ計測した。その結果を
図15に示す。なお、表1の実施例8の欄に示したように、各薄肉半楕円柱の運動体における断面アスペクト比以外の各実験条件は、同じである。
【0068】
図15に示す結果から、長さ8.6cmの薄肉半楕円柱の運動体において、断面アスペクト比が8、かつ、流速が0.5m/sの場合に、パワー係数は最大値となり、約16.9%であった。また、薄肉半楕円柱の運動体の断面アスペクト比が2以上であれば、本運動体の回転面積に流入してきた水流エネルギーを本運動体の回転によって取り出すことができ、パワー係数を得ることができる、ということがわかった。なお、断面アスペクト比が6〜12の範囲において、他の断面アスペクト比の運動体よりも高いパワー係数を得ることができる、ということがわかった。
【0069】
(実施例9)
表1の実施例9の欄に記載した断面アスペクト比の各円弧柱の運動体を、
図1の流体内に設けられた装置において使用して、流速を変えてパワー係数をそれぞれ計測した。その結果を
図16(A)に示す。なお、ここでの運動体の断面形状を例示すると、
図16(B)に示すように円弧形に形成されたものである。また、表1の実施例9の欄に示したように、各円弧柱の運動体における断面アスペクト比以外の各実験条件は、同じである。
【0070】
図16(A)に示す結果から、長さ8.6cmの円弧柱の運動体において、断面アスペクト比が6、かつ、流速が0.6m/sの場合に、パワー係数は最大値となり、約18.1%であった。また、円弧柱の運動体の断面アスペクト比が3以上であれば、本運動体の回転面積に流入してきた水流エネルギーを本運動体の回転によって取り出すことができ、パワー係数を得ることができる、ということがわかった。なお、断面アスペクト比が6〜10の範囲において、他の断面アスペクト比の運動体よりも高いパワー係数を得ることができる、ということがわかった。