(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961873
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】調理器具用蓋
(51)【国際特許分類】
A47J 27/21 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
A47J27/21 102C
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-52246(P2020-52246)
(22)【出願日】2020年3月24日
(65)【公開番号】特開2021-151309(P2021-151309A)
(43)【公開日】2021年9月30日
【審査請求日】2020年4月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】517025132
【氏名又は名称】株式会社サニーナレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】土方 智晴
(72)【発明者】
【氏名】松本 和也
【審査官】
木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−022834(JP,U)
【文献】
実開平04−021323(JP,U)
【文献】
特開2004−340186(JP,A)
【文献】
特開2005−000632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具用蓋であって、
加熱調理器具の開口部の上端外周に沿うように配置され前記開口部を塞ぐ蓋本体と、
前記蓋本体に設けられている取付穴に前記加熱調理器具に対向する側から挿入される雄ネジ部及び前記雄ネジ部に繋がるネジ頭部が設けられている取付ネジと、
前記雄ネジ部が螺合される雌ネジ部が設けられた金属製の締結部及び前記締結部に繋がる把持部が設けられている取手と、
前記雄ネジ部が貫通し、前記ネジ頭部と前記蓋本体との間に配置され、圧縮変形する弾性を有する内側パッキンと、
前記雄ネジ部が貫通し、前記取手と前記蓋本体との間に配置され、圧縮変形する弾性を有する外側パッキンと、を備え、
前記取付ネジは、前記雄ネジ部よりも前記ネジ頭部側に非ネジ部を備えており、
前記非ネジ部は、前記取付ネジが前記取付穴に挿入された場合に前記取付穴に対応する位置から前記ネジ頭部に至る位置まで設けられ、
前記非ネジ部の外径は前記雄ネジ部の外径以上となるように構成されている。
【請求項2】
調理器具用蓋であって、
加熱調理器具の開口部の上端外周に沿うように配置され前記開口部を塞ぐ蓋本体と、
前記蓋本体に設けられている取付穴に前記加熱調理器具に対向する側から挿入される雄ネジ部及び前記雄ネジ部に繋がるネジ頭部が設けられている取付ネジと、
前記雄ネジ部が螺合される雌ネジ部が設けられた金属製の締結部及び前記締結部に繋がる把持部が設けられている取手と、
前記雄ネジ部が貫通し、前記ネジ頭部と前記蓋本体との間に配置され、圧縮変形する弾性を有する内側パッキンと、
前記雄ネジ部が貫通し、前記取手と前記蓋本体との間に配置され、圧縮変形する弾性を有する外側パッキンと、を備え、
前記締結部に凹部が設けられると共に、前記凹部の底面に繋がるように前記雌ネジ部が設けられ、
前記外側パッキンが前記凹部内に収められ、前記蓋本体と前記底面との間において保持され、
前記凹部の外周壁が前記蓋本体に当接している。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の調理器具用蓋であって、
前記雄ネジ部が貫通し、前記ネジ頭部と前記内側パッキンとの間に配置されるワッシャーを備えている。
【請求項4】
請求項1に記載の調理器具用蓋であって、
前記締結部に凹部が設けられると共に、前記凹部の底面に繋がるように前記雌ネジ部が設けられ、
前記外側パッキンが前記凹部内に収められ、前記蓋本体と前記底面との間において保持され、
前記凹部の外周壁が前記蓋本体に当接している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調理器具用蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
鍋やフライパンといった調理器具に用いられる調理器具用蓋には、取手が取り付けられている。取手は樹脂製の場合が多く、蓋本体に対してネジ止めされている場合が多い(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平1−175650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、意匠上の理由により、取手を金属と非金属とを組み合わせたものとし、金属側で蓋本体に取り付けたいとのニーズがある。しかしながら、従来のように取手をネジ止めすると、蓋本体に設けられた取付穴から蒸気が取手の内部に入り込んでしまい、金属製の部分に錆が生じる可能性が高まる。
【0005】
本開示は、金属製の取手であっても錆が生じる可能性を減じることができる調理器具用蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、調理器具用蓋であって、加熱調理器具の開口部の上端外周に沿うように配置され開口部を塞ぐ蓋本体と、蓋本体に設けられている取付穴に加熱調理器具に対向する側から挿入される雄ネジ部及び雄ネジ部に繋がるネジ頭部が設けられている取付ネジと、雄ネジ部が螺合される雌ネジ部が設けられた金属製の締結部及び締結部に繋がる把持部が設けられている取手と、雄ネジ部が貫通し、ネジ頭部と蓋本体との間に配置され、圧縮変形する弾性を有する内側パッキンと、雄ネジ部が貫通し、取手と蓋本体との間に配置され、圧縮変形する弾性を有する外側パッキンと、を備えている。
【0007】
取付穴が設けられている部分において、雄ネジ部が貫通した状態で内側パッキン及び外側パッキンを、蓋本体を挟むように配置するので、加熱調理器具で発生した蒸気が取付穴を通って取手側に向かうのを抑制できる。蒸気が取付穴を通って取手側に向かうことを抑制できるので、金属製の締結部に蒸気が浸入し難くなり、締結部における錆の発生を抑制することができる。
【0008】
また本開示において、取付ネジは、雄ネジ部よりもネジ頭部側に非ネジ部を備えており、非ネジ部は、取付ネジが取付穴に挿入された場合に取付穴に対応する位置からネジ頭部に至る位置まで設けられ、非ネジ部の外径は雄ネジ部の外径以上となるように構成されていることも好ましい。より好ましくは、非ネジ部の外径は雄ネジ部の外径よりも大きく構成するものである。
【0009】
この好ましい態様では、非ネジ部が、取付穴に対応する位置からネジ頭部に至る位置まで設けられているので、ネジ頭部と蓋本体との間に配置される内側パッキンは非ネジ部において取付ネジと当接するように構成することができ、密着性を確保することができる。非ネジ部の外径は雄ネジ部の外径以上であるので、取付穴の内径は非ネジ部の外径に対応したものとすることができ、取付穴と非ネジ部との間の隙間を小さなものとすることができる。この観点からは、非ネジ部の外径を雄ネジ部の外径よりも大きく構成することが好ましく、取付穴と非ネジ部との間の隙間をほとんど無いように構成しても、取付穴への取付ネジの挿入時に雄ネジ部が引っ掛かってしまうことを回避できる。従って、加熱調理器具で発生した蒸気の通過をより効果的に抑制することができる。
【0010】
本開示においては、雄ネジ部が貫通し、ネジ頭部と内側パッキンとの間に配置されるワッシャーを備えることも好ましい。ワッシャーも非ネジ部に嵌る構成とすることで、内側パッキンとの位置ずれを抑制することができ、内側パッキンの潰れに偏りが生じにくい。
【0011】
本開示において、締結部に凹部が設けられると共に、凹部の底面に繋がるように雌ネジ部が設けられ、外側パッキンが凹部内に収められ、蓋本体と底面との間において保持され、凹部の外周壁が蓋本体に当接することも好ましい。
【0012】
凹部の外周壁が蓋本体に当接することで、蓋本体に対して凹部が傾いて取り付けられることが抑制される。外側パッキンは、蓋本体と凹部の底面との間において保持されているので、蓋本体と凹部とが傾かずに組付けられることとなり、潰れに偏りが生じにくい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、金属製の取手であっても錆が生じる可能性を減じることができる調理器具用蓋を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態における調理器具用蓋が用いられる加熱調理器具の平面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における調理器具用蓋が用いられる加熱調理器具の側面図である。
【
図3】
図3は、調理器具用蓋を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本実施形態における調理器具用蓋が用いられる加熱調理器具2の平面図である。
図2は、本実施形態における調理器具用蓋5及び加熱調理器具2の側面図である。加熱調理器具2は、フライパンと称されるものである。
図1及び
図2を参照しながら、加熱調理器具2について説明する。
【0017】
加熱調理器具2は、本体部21と取手部22とを備えている。本体部21には、底部211と底部211の外周から立ち上がる胴部212とが設けられている。本体部21は、伝熱性材料によって形成されている。伝熱性材料として用いられる材料は特に限定されないが、本実施形態では鉄が用いられている。本体部21の製造方法は特に限定されないが、鋳造であることが好ましい。
【0018】
取手部22は、本体部21に繋がるように設けられている。取手部22は、伝熱性材料よりも熱伝達性が低い断熱材料によって形成されている。断熱材料として用いられる材料は特に限定されないが、本実施形態では木が用いられている。
【0019】
胴部212から接続部213が伸びている。接続部213は、取手部22に繋がる部分である。接続部213には、継手部214が設けられている。継手部214は、接続部213から伸びており、取手部22に設けられた継手凹部221内に入り込んでいる。本実施形態では、本体部21の一部である接続部213から突出する継手部214が、取手部22に設けられた継手凹部221に入り込むことで取手部22の内部に入り込んでいる。
【0020】
継手凹部221に継手部214が入り込むことで、本体部21に対して取手部22の回転を抑制する回転阻害機構を構成している。回転阻害機構としては、本体部21に対して取手部22の回転を抑制することができれば足りるので、継手凹部221を接続部213に設け、継手部214を取手部22に設けてもよい。
【0021】
調理器具用蓋5は、蓋本体51と、取手52とを備えている。蓋本体51の外周は、胴部212の上端に沿うように形成されている。続いて、
図3を参照しながら調理器具用蓋5について説明する。
【0022】
図3に示されるように、蓋本体51と取手52とは、取付ネジ53によって固定されている。取手52は、締結部52aと、把持部52bとを備えている。締結部52aは、金属製である。本実施形態では鉄が用いられている。締結部52aの製造方法は特に限定されないが、鋳造であることが好ましい。把持部52bは、締結部52aと同様に金属製であって締結部52aと一体的に形成されていてもよく、金属よりも熱伝達性が低い断熱材料によって形成されていてもよい。
【0023】
締結部52aには、取付ネジ53を螺合するための雌ネジ部521aが形成されている。雌ネジ部521aは、下穴521にタップ加工することで形成されている。締結部52aには、凹部522が形成されている。凹部522は、締結部52aが蓋本体51と接する面に形成されている。凹部522の中心部分に雌ネジ部521aが繋がるように設けられている。
【0024】
凹部522は、底面522aと、外周壁522bとを備えている。底面522aに当接するように外側パッキン56が配置されている。外側パッキン56の中央部分には、取付ネジ53が貫通している。取付ネジ53を締め付けることで締結部52aが蓋本体51側に引き寄せられ、底面522aと蓋本体51との間で外側パッキン56が圧縮される。取付ネジ53は、外周壁522bが蓋本体51に当接するまで締め付けられる。
【0025】
取付ネジ53は、雄ネジ部531と、非ネジ部532と、ネジ頭部533とを備えている。雄ネジ部531は、雌ネジ部521aと螺合する部分である。非ネジ部532は、雄ネジ部531とネジ頭部533との間に設けられている。非ネジ部532の外径は、少なくとも雄ネジ部531の外径以上となるように構成されている。非ネジ部532は、蓋本体51に形成されている取付穴511の内周との間に極力隙間ができないように形成されている。
【0026】
取付ネジ53は、蓋本体51の内面側から取付穴511に挿入される。取付ネジ53を取付穴511に挿入するにあたっては、取付ネジ53がワッシャー54と内側パッキン55とを貫通し、ネジ頭部533と蓋本体51との間にワッシャー54及び内側パッキン55が挟持される。
【0027】
このように、ワッシャー54は、雄ネジ部531が貫通し、ネジ頭部533と内側パッキン55との間に配置される。ワッシャー54も内側パッキン55と共に非ネジ部532に嵌るように構成されるので、内側パッキン55との位置ずれを抑制することができ、内側パッキン55が偏って潰れることがなく、蒸気が締結部52a側へ浸入することを抑制する。
【0028】
取付ネジ53は、雄ネジ部531よりもネジ頭部533側に非ネジ部532を備えている。非ネジ部532は、取付ネジ53が取付穴511に挿入された場合に、取付穴511に対応する位置からネジ頭部533に至る位置まで設けられている。非ネジ部532の外径は、雄ネジ部531の外径以上となるように設定されている。より好ましくは、非ネジ部532の外径を雄ネジ部531の外径よりも大きく構成するものである。
【0029】
非ネジ部532が、取付穴511に対応する位置からネジ頭部533に至る位置まで設けられているので、ネジ頭部533と蓋本体51との間に配置される内側パッキン55は非ネジ部532において取付ネジ53と当接するように構成することができ、密着性を確保することができる。非ネジ部532の外径は雄ネジ部531の外径以上であるので、取付穴511の内径は非ネジ部532の外径に対応したものとしても取付ネジ53の挿入には支障がなく、取付穴511と非ネジ部532との間の隙間を小さなものとすることができる。この観点からは、非ネジ部532の外径を雄ネジ部531の外径よりも大きく構成することが好ましく、取付穴511と非ネジ部532との間の隙間をほとんど無いように構成しても、取付穴511への取付ネジ53の挿入時に雄ネジ部531が引っ掛かってしまうことを回避できる。従って、加熱調理器具2で発生した蒸気の通過をより効果的に抑制することができる。
【0030】
また、締結部52aには凹部522が設けられ、凹部522に繋がるように雌ネジ部521aが設けられている。外側パッキン56は凹部522内に収められ、蓋本体51と底面522aとの間において保持されている。凹部522の外周壁522bは、蓋本体51に当接している。
【0031】
外周壁522bが蓋本体51に当接することで、蓋本体51に対する凹部522の傾きが抑制される。外側パッキン56は、蓋本体51と底面522aとの間において保持されているので、蓋本体51と凹部522とが傾かずに略平行な状態で組付けられることで、潰れに偏りが生じにくい。
【0032】
本実施形態における調理器具用蓋5は、蓋本体51と、取手52と、取付ネジ53と、内側パッキン55と、外側パッキン56と、を備えている。
【0033】
蓋本体51は、加熱調理器具2の開口部の上端外周に沿うように配置され開口部を塞ぐものである。取付ネジ53は、蓋本体51に設けられている取付穴511に加熱調理器具2に対向する側から挿入される雄ネジ部531及び雄ネジ部531に繋がるネジ頭部533が設けられているものである。取手52は、雄ネジ部531が螺合される雌ネジ部521aが設けられた金属製の締結部52a及び締結部52aに繋がる把持部52bが設けられているものである。内側パッキン55は、雄ネジ部531が貫通し、ネジ頭部533と蓋本体51との間に配置され、圧縮変形する弾性を有するものである。外側パッキン56は、雄ネジ部531が貫通し、取手52と蓋本体51との間に配置され、圧縮変形する弾性を有するものである。
【0034】
取付穴511が設けられている部分において、雄ネジ部531が貫通した状態で内側パッキン55及び外側パッキン56を、蓋本体51を挟むように配置するので、加熱調理器具2で発生した蒸気が取付穴511を通って取手52側に向かうのを抑制できる。蒸気が取付穴511を通って取手52側に向かうことを抑制できるので、金属製の締結部52aに蒸気が浸入し難くなり、締結部52aにおける錆の発生を抑制することができる。
【0035】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0036】
5:調理器具用蓋
51:蓋本体
511:取付穴
52:取手
52a:締結部
52b:把持部
521a:雌ネジ部
522:凹部
522a:底面
522b:外周壁
53:取付ネジ
531:雄ネジ部
532:非ネジ部
533:ネジ頭部
54:ワッシャー
55:内側パッキン
56:外側パッキン