(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。また、本明細書において「〜」を用いて特定される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0022】
本明細書において、「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量、「Mn」はGPC測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。これらは、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0023】
また、本明細書では、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、と表記した場合には、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリルまたはメタクリル」、「アクリロイルまたはメタクリロイル」、「アクリル酸またはメタクリル酸」、「アクリレートまたはメタクリレート」を表すものとする。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
なお、本明細書では、官能基数が6以上であるウレタン(メタ)アクリレート(A)、および抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物を、それぞれウレタン(メタ)アクリレート(A)、およびコーティング組成物と略記することがある。
【0024】
《抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物》
本発明におけるコーティング組成物は、物品に抗菌性を付与するコーティング層を形成するために用いられ、活性エネルギー線硬化型であって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分、および銀系化合物(B)を含む。
また、100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物から形成してなる厚さ3μmの硬化物は、マルテンス硬さが40〜80N/mm
2、かつJISZ2801における抗菌活性値が2以上である。
これにより、充分な抗菌性とそれを安定して発現させるための優れた分散安定性、および傷付き防止性能に優れるコーティング層を形成可能な抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物とすることができる。
【0025】
<成膜性成分>
成膜性成分は、活性エネルギー線硬化性を有する成分であり、(メタ)アクリロイル基を6個以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)を含み、必要に応じ、その他ウレタン(メタ)アクリレート、または(メタ)アクリル系化合物等をさらに含んでいてもよい。
成膜性成分100質量%中、ウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有率は、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上100質量%以下がさらに好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート(A)を10質量%以上含むことにより耐傷性と分散安定性を両立しやすくなる。
【0026】
また、成膜性成分中の(メタ)アクリロイル基の平均個数は3〜10個であることが好ましく、4〜8個有することがより好ましい。このとき、(メタ)アクリロイル基の平均個数は、成膜性成分の全成分中の(メタ)アクリロイル基の個数をもとに求められる。
(メタ)アクリロイル基の平均個数が3個以上であれば耐傷性により優れ、10個以下
とすることで基材との密着性の低下または硬化塗膜中のクラック発生を抑制しやすくなる。
【0027】
(ウレタン(メタ)アクリレート(A))
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、(メタ)アクリロイル基を6個以上有するウレタン(メタ)アクリレートであり、すなわち少なくとも1つのウレタン結合と、少なくとも6つの(メタ)アクリロイル基を同一分子中に有する化合物である。ウレタン結合が多く存在するほど後述する銀系化合物(B)の分散安定性に優れ、(メタ)アクリロイル基数が多くなるほど、分子量にも因るが、耐傷性に優れたものとすることができる。
【0028】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、耐傷性の観点から、6個以上の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートを用いるが、9個以上の(メタ)アクリロイル基を有することがさらに好ましい。硬化性の点からアクリロイル基を有することが好ましい。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、水酸基を有する(メタ)アクリレート(a1)とポリイソシアネート(a2)の反応生成物であることが好ましく、例えば、以下のような方法で得ることができる。
方法1;水酸基を有する(メタ)アクリレート(a1)とポリイソシアネート(a2)とを反応させる方法。
方法2;ポリオールとポリイソシアネート(a2)とをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類(a1)と反応させる方法。
方法3;ポリオールとポリイソシアネート(a2)とを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基を有するウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させる方法。
方法4;カルボキシル基を有するポリオールとポリイソシアネート(a2)とを水酸基過剰の条件下に反応させてなるカルボキシル基を有するウレタンプレポリマーを、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート類と反応させる方法。
合成ステップの数から簡易な合成法である方法1が好ましい。
【0030】
[水酸基を有する(メタ)アクリレート(a1)]
前記方法1、2で用いられる水酸基を有する(メタ)アクリレート(a1)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性ジアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート類が挙げられる。
【0031】
[ポリイソシアネート(a2)]
前記方法1〜4で用いられるポリイソシアネート(a2)としては、芳香族系ポリイソシアネート、脂肪族系ポリイソシアネート、および脂環族系ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0032】
芳香族系ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、および4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベ
ンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、および1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
脂肪族系ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
脂環族系ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0035】
また、ポリイソシアネートは、上記ポリイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ビウレット体、アロファネート体、およびヌレート体等であってもよい。
【0036】
ポリイソシアネート(a2)としては、耐傷性の観点では芳香族系ポリイソシアネート、脂環族系ポリイソシアネート有するものが好ましい。これらのポリイソシアネートは、誘導体を含み、ヌレート体のような環構造有する場合であってもよい。
耐候性の観点では、非芳香族系ポリイソシアネートが好ましく、脂肪族系ポリイソシアネート、または脂環族系ポリイソシアネート、が好ましい。また、これらのポリイソシアネートには、誘導体も含む。
【0037】
前記方法2、3で用いられるポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリテトラメチレングリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の他、前記ポリオールと多塩基酸や多塩基酸無水物との縮重合物が挙げられる。多塩基酸や多塩基酸無水物としては、フタル酸や無水フタル酸のような芳香族系多塩基酸、アジピン酸やセバシン酸のような脂肪族系多塩基酸が挙げられる。
【0038】
前記方法3で用いられるイソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
前記方法4で用いられるカルボキシル基を有するポリオールとしては、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸等が挙げられる。さらに、エチレングリコール、プロピレングリコールのようなポリオールとジメチロールブタン酸等と多塩基酸や多塩基酸無水物との縮重合物も挙げることができる。
【0040】
前記方法4で用いられるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート類としては、グリシジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0041】
水酸基を有する(メタ)アクリレート類、ポリイソシアネート、ポリオール、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類は、それぞれ一種類でもいいし、二種以上を併
せて用いることができる。
【0042】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)は、耐傷性の観点から分子内に環構造を有することが好ましい。例えば、芳香環、脂環構造、またはヌレート環構造を有することによりコーティング層に適度な硬度を付与することができる。
【0043】
脂環構造を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートの水素添加体、キシリレンジイソシアネートの水素添加体、メチレンジフェニルジイソシアネートの水素添加体およびこれらの誘導体を用いることにより得ることができる。あるいは、水酸基を有する(メタ)アクリレート類としてシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートを用いることにより得ることができる。あるいは、ポリオールとしてシクロヘキサンジオールを用いることにより得ることができる。あるいは、多塩基酸や多塩基酸無水物としてシクロヘキサンジカルボン酸やその無水物を用いることにより得ることができる。
【0044】
ヌレート環を有するウレタン(メタ)アクリレート(A)は、前記方法1〜4においてポリイソシアネートとして種々のジイソシアネート成分から形成される三量体(ヌレート体)を用いることにより得ることができる。
【0045】
前記方法1〜4によってウレタン(メタ)アクリレート(A)を得る際には、理想的なウレタン(メタ)アクリレート(A)以外に、以下のような種々の成分も含まれる。
方法1を例に説明する。
例えば、原料である水酸基を1個有する(メタ)アクリレート類には水酸基を有しない(メタ)アクリレート類との混合状態で提供されているものもあるので、そのような混合物を用いた場合、前記方法1による生成物には、理想的なウレタン(メタ)アクリレート(A)の他に水酸基を有しない(メタ)アクリレート類も含まれることとなる。また、一般的に水酸基を有する(メタ)アクリレート類は、ポリイソシアネートに比して過剰に用いるので、未反応の水酸基1個を有する(メタ)アクリレート類も方法1による生成物に含まれることとなる。
さらに、水酸基を1個有する(メタ)アクリレート類として製造・販売されているものには、水酸基を2個以上有する(メタ)アクリレート類や(メタ)アクリレート類の原料である(メタ)アクリル酸が少量含まれることもある。
そのため、理想的なウレタン(メタ)アクリレート(A)中の(メタ)アクリロイル基の一部に、未反応の水酸基1個を有する(メタ)アクリレート類中の(メタ)アクリロイル基や水酸基を有しない(メタ)アクリレート類中の(メタ)アクリロイル基が次々に反応したものや、水酸基を2個以上有する(メタ)アクリレート類と水酸基を1個有する(メタ)アクリレート類とポリイソシアネートとが反応したものも、方法1による生成物に含まれることとなり、方法1による生成物は様々な構造・分子量の分子の集合体となり、比較的広い分子量分布を呈する。方法2〜4による場合も同様である。
【0046】
そこで、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の(メタ)アクリロイル基の平均個数の求め方を、水酸基を有し、(メタ)アクリロイル基を5個有する(メタ)アクリレートであるジペンタエリスリトールペンタアクリレート(以下、DPPAという。分子量:524)と、水酸基を有さず、(メタ)アクリロイル基を6個有する(メタ)アクリレートであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、DPHAという。分子量:578)とを1:1(モル比)で含む組成物:1052gを、イソシアネート基を21.8wt%含むヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(以下、HDI-ヌレートという。):37g(NCO基として約0.19モル=(37×0.218/
42)×100))と反応させる場合を例にして説明する。
DPPAは1分子当たり水酸基を1個、HDIヌレートは1分子当たりNCO基を3個
有するので、DPPA3分子がHDIヌレート1分子と反応すると考えられる。従って、上記組成物1052g中に含まれるDPPAは500g(約0.95モル)であり、そのうち約0.19モルに相当する約95gのDPPAが上記HDIヌレート(分子量:504)と反応すると考えられ、その結果、生成物は、
理論分子量:2076(=504+524×3)、(メタ)アクリロイル基を15個有するウレタン(メタ)アクリレート(A):約132gと、
(メタ)アクリロイル基を5個有する未反応のDPPA:約405gと、
(メタ)アクリロイル基を6個有するDPHA:約552gとを含む、と仮定する。
よって、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の(メタ)アクリロイル基の平均個数は、(132×15+405×5+552×6)/(1052+37)=6.8 となる。
つまり、ここでいう成膜性成分の有する(メタ)アクリロイル基の平均個数は理論値である。
【0047】
一方、生成物全体は、上述したように様々な構造・分子量の分子種の集合体となると考えられるが、1つ1つの分子種とそれぞれの含有率を全て特定することは事実上不可能である。
そこで、生成物全体としての性質は、上記の理論的な(メタ)アクリロイル基の平均個数と、質量平均分子量(Mw)とによって特定することとする。
質量平均分子量は後述する方法に従い求めることができる。
【0048】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の質量平均分子量(Mw)は、1000〜6000であることが好ましく、1200〜4000であることがより好ましく、1400〜3500であることがさらに好ましい。質量平均分子量(Mw)を1000〜6000とすることで、耐傷性と分散安定性を両立させやすい。
【0049】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の(メタ)アクリル当量Mw/fは、200〜900が好ましく、300〜800がより好ましく、400〜700がさらに好ましい。(メタ)アクリル当量Mw/fを200〜900とすることで、耐傷性と分散安定性のバランスを取りやすい。
なお、ここでいう「f」は、上述したウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分の(メタ)アクリロイル基の平均個数の意である。
【0050】
本発明では、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物を成膜性成分として用いることもできるし、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物を得た後、当該生成物に、任意でさらに(メタ)アクリル系化合物に代表される重合性不飽和二重結合基を有する化合物を加えて成膜性成分として用いることもできる。
成膜性成分に加え得る(メタ)アクリル系化合物としては、前記DPHAのように(メタ)アクリロイル基以外の官能基を有しないものであっても、水酸基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミド基、シラノール基等の官能基を有するものであってもよい。
(メタ)アクリル系化合物以外の重合性不飽和二重結合基を有する化合物としては、脂肪酸ビニル化合物、アルキルビニルエーテル化合物、α−オレフィン化合物、ビニル化合物、エチニル化合物等を挙げることができる。
【0051】
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物中に含まれるウレタン(メタ)アクリレート(A)の含有率は、水酸基を有する成分とイソシアネート基を有する成分とを反応させる際、イソシアネート基/水酸基の比を変えることによって、変更可能である。
具体的には、イソシアネート基を有する成分としてイソシアネート基を2個有するジイソシアネート成分を用いる場合はイソシアネート基/水酸基の比を0.2〜0.7、さらには0.2〜0.6、特には0.4〜0.6とすることによって、イソシアネート基を有
する成分としてイソシアネート基を3個有するトイソシアネート成分を用いる場合はイソシアネート基/水酸基の比を0.1〜0.4、さらには0.1〜0.3、特には0.2〜0.3とすることによって、分散安定性、抗菌性に優れるウレタン(メタ)アクリレート(A)を得ることができる。
【0052】
((メタ)アクリル系化合物)
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物を得た後、さらに(メタ)アクリル系化合物等を加えて成膜性成分とする場合、当該成膜性成分の(メタ)アクリロイル基の平均個数や平均(メタ)アクリロイル基当量は、前述のウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む生成物の場合と同様にして求めることができる。
【0053】
(メタ)アクリル系化合物としては、アルキル系(メタ)アクリレート、アルキレングリコール系(メタ)アクリレート、カルボキシル基と重合性不飽和二重結合とを有する化合物、水酸基を有する(メタ)アクリル系化合物、窒素含有(メタ)アクリル系化合物、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。コーティング層の耐傷性の観点からは、多官能のものが好ましい。
【0054】
多官能のアクリル系化合物としては、3個以上のアクリロイル基を有するものが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸変性トリアクリレートおよびこれらのエチレンオキシ変性体またはプロピルオキシ変性体等が挙げられる。
【0055】
本発明の実施形態では、2個のアクリロイル基を有するアクリル系化合物も用いることができる。具体的には、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ノナンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレートおよびこれらのエチレンオキシ変性体またはプロピルオキシ変性体等が挙げられる。
【0056】
本発明の実施形態では、さらに単官能の(メタ)アクリル系化合物も用いることができる。単官能の(メタ)アクリル系化合物としては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等の炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
単官能のアルキレングリコール系(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端に水酸基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレート;メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシテト
ラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ブトキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、n−ペンタキシテトラプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリテトラメチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にアルコキシ基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレート;フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラプロピレンエチレングリコール(メタ)アクリレート等の、末端にフェノキシ基またはアリールオキシ基を有するポリオキシアルキレン系(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
カルボキシル基及び重合性不飽和二重結合を有する化合物としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、または、これらのアルキルもしくはアルケニルモノエステル、フタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、イソフタル酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、コハク酸β−(メタ)アクリロキシエチルモノエステル、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、珪皮酸等が挙げられる。
【0059】
水酸基含有(メタ)アクリル系化合物(但し、上述した末端に水酸基を有しポリオキシアルキレン鎖を有するモノ(メタ)アクリレートは除く)としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシビニルベンゼン、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0060】
窒素含有(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル−(メタ)アクリルアミド、N−ペントキシメチル−(メタ)アクリルアミド等のモノアルキロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、N,N−ジ(メチロール)アクリルアミド、等のジアルキロール(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系不飽和化合物;
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、等のジアルキルアミノ基を有する不飽和化合物等がある。
【0061】
さらに単官能の(メタ)アクリル系化合物としては、パーフルオロメチル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基を有するパーフルオロアルキルオキシアルキル(メタ)アクリレート類を挙げることができる。
【0062】
さらに、重合性不飽和二重結合基を有する化合物としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有ビニル化合物及びその誘導体;
グリシジルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート等のグリシジル基含有アクリレート;
パーフルオロブチルエチレン、パーフルオロヘキシルエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、パーフルオロデシルエチレン等のパーフルオロアルキル、アルキレン類等のパ
ーフルオロアルキル基含有ビニルモノマー等が挙げられる。
【0063】
<銀系化合物(B)>
本発明における銀系化合物(B)成分は、銀を含む化合物である。銀系化合物(B)は、抗菌剤として機能し、さらに抗ウィルス剤、防カビ剤、または消臭剤の有効成分としても機能することができる。
そのため、銀系化合物(B)を用いた抗菌性コーティング層は、抗ウイルス性の効果をも発揮することができる。
【0064】
本発明の抗菌性活性エネルギー線硬化性化合物が、抗菌性に優れるメカニズムとしては、下記が考えられる。銀系化合物(B)は、水分と接触することにより、ウレタン(メタ)アクリレート(A)が持っているわずかな透湿性により、銀系化合物の内部に水分を浸透させる。この水分によって、銀イオンを溶出させる。銀イオンの溶出量は、一定期間中ほぼ一定量であり、その銀イオンは、プラスに帯電しており、この銀イオンが、マイナスに帯電している細菌やウィルスの表面に引き寄せられる。すると、細菌等の表面の電気的バランスが崩れ、細胞膜が破れ、細菌は死滅する。さらに銀イオンは、細胞内に浸透して細胞内の酵素と結合して酵素活性を失わせる。また、細菌等のDNAとも反応し、その機能を失わせて繁殖力を低下させる。このような銀イオンの抗菌作用により、コーティング層表面における細菌等の繁殖を完全に防止することができると推定される。
【0065】
本発明のコーティング組成物は、銀系化合物(B)を含有することで、抗菌性を有し、微生物等の増殖抑制効果や消臭効果を発揮できる。銀系化合物(B)としては、抗菌性に加えて、例えば、抗ウィルス、防カビ、消臭作用を有する、銀単体;酸化銀;炭酸銀、塩化銀、硝酸銀、硫酸銀、スルホン酸銀等の無機銀塩;蟻酸銀、酢酸銀等の有機銀塩等の銀化合物を含むものが挙げられる。また、上記の銀塩をゼオライト、シリカゲル、低分子ガラス、リン酸カルシウム、ケイ酸塩、酸化モリブデン、酸化チタン等に担持させたものであってもよい。
担持体としては、例えば、銀単体、酸化銀、無機銀塩、有機銀塩等の銀化合物を担持したゼオライト系銀担持化合物、シリカゲル系銀担持化合物、ケイ酸塩系銀担持化合物、酸化モリブデン系銀担持化合物、酸化チタン系銀担持化合物等が挙げられる。
【0066】
銀系化合物(B)は、分散安定性の観点から銀単体、酸化銀、および硝酸銀等の無機銀塩を担体に担持させた担持体が好ましく、銀化合物をゼオライトまたは酸化モリブデンに担持させたゼオライト系銀担持化合物若しくは酸化モリブデン系銀担持化合物がより好ましい。
ゼオライト系銀担持化合物または酸化モリブデン系銀担持化合物は、、抗ウイルス性に優れる点で好ましい。
【0067】
本発明において用いられる銀系化合物(B)の平均一次粒子径は、5〜100nmであることが好ましい。平均一次粒子径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて、粒子自身を直接観察することによって測定できる。平均一次粒子径が5nm以上であることにより分散性がより良好となり、平均一次粒子径が100nm以下である場合、より透明性に優れる硬化膜を形成できる。
【0068】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分100質量部に対する、銀系化合物(B)の含有量は、好ましくは0 .1〜20質量部、より好ましくは0.
5〜10質量部、さらに好ましくは1.0〜7質量部である。含有量が0.1質量部以上であることによって、より良好な抗菌性塗膜を得ることができ、20質量部以下とすることにより分散安定性に優れる塗膜を形成しやすい。
【0069】
銀系化合物(B)は、粉末状のものを有機溶剤などの非水系ビヒクル中に予め分散した懸濁体(スラリー)としてから、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分に配合することが好ましい。スラリー化の際は分散剤を用いることもできる。スラリーにおける銀系化合物(B)の分散粒径D
50は300nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。前記分散粒径D
50は、動的光散乱法を利用した日機装(株)製「ナノトラックUPA」で測定することができる。分散粒径D
50が300nm以下である場合、より分散安定性に優れるものとすることができる。
【0070】
銀系化合物(B)の有機溶剤などの非水系ビヒクル中への分散には、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)、微小ビーズミル(寿工業(株)製「スーパーアペックミル」、「ウルトラアペックミル」)等の分散機が使用できる。分散機にメディアを使う場合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることが好ましい。分散に関しては、2種類以上の分散機、または大きさの異なる2種類以上のメディアをそれぞれ用い、段階的に使用しても差し支えない。
【0071】
<光重合開始剤(C)>
本発明の実施形態におけるコーティング組成物は、光重合開始剤(C)を含んでもよい。光重合開始剤としては、光励起によってウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分中の(メタ)アクリロイル基等の活性エネルギー線硬化性官能基の重合を開始できる機能を有するものであれば特に限定はなく、例えばモノカルボニル化合物、ジカルボニル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アシルホスフィンオキシド化合物、およびアミノカルボニル化合物、その他化合物が使用できる。
【0072】
具体的には、モノカルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、4−メチル−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、3,3´,4,4´−テトラ(t−ブチルペルオキシカル
ボニル)ベンゾフェノン、2−イソ−プロピルチオキサントン、4−イソ−プロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン等が挙げられる。
【0073】
ジカルボニル化合物としては、2−エチルアントラキノン、9,10−フェナントレンキノン、メチル−α−オキソベンゼンアセテート等が挙げられる。
【0074】
アセトフェノン化合物としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ジエトキシアセトフェノン、ジブトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2,2−ジエトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン、1,1’−(メチレン−ジ−1,4−フェニレン)ビス(2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシメチルプロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等が挙げられる。
【0075】
ベンゾインエーテル化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイゾブチルエーテル、ベンゾインノルマルブチルエーテル等が挙げられる。
【0076】
アシルホスフィンオキシド化合物としては、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、4−n−プロピルフェニル−ジ(2,6−ジクロロベンゾイル)ホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0077】
アミノカルボニル化合物としては、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−n−ブトキシエチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、イソアミル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、4,4´−ビス−4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4´−ビス−4−ジエチルアミノベンゾフェノン、2,5´−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン等が挙げられる。
【0078】
その他化合物としては、(ビス(2,4−シクロペンタジエニル)ビス「2,6−ジフルオロ−3−(1−ピリル)フェニル」チタン(IV))が挙げられる。
【0079】
光重合開始剤の市販品としては、IGM−Resins B.V.社製のOmnirad184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン)、651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、500、907(2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン)、127(1,1’−(メチレン−ジ−1,4−フェニレン)ビス(2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン)、369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)ブタン−1−オン)、784(ビス(2,4−シクロペンタジエニル)ビス「2,6−ジフルオロ−3−(1−ピリル)フェニル」チタン(IV))、2959(1−[4−
(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシメチルプロパン−1−オン)、
エサキュアワン(オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン])、BASF社製のルシリンTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)等が挙げられる。特に、活性エネルギー線硬化後の耐黄変の観点で、Omnirad184やエサキュアワンが好ましい。
【0080】
光重合開始剤は、上記化合物に限定されず、活性エネルギー線により重合を開始させる能力があれば、どのようなものでも構わない。光重合開始剤の使用量に関しては、特に制限されないが、成膜性成分100質量部に対して、1〜20質量部の範囲内で使用することが好ましい。増感剤として、公知の有機アミン等を加えることもできる。さらに、上記光重合開始剤はラジカル重合用であるが、そのほかに、カチオン重合用の開始剤を併用することもできる。
【0081】
本発明の実施形態におけるコーティング組成物は、さらに様々な添加剤等の任意成分を、本発明の目的や効果を損なわない範囲において含むことができる。任意成分として、成膜性成分以外の樹脂、添加剤として、例えば、重合禁止剤、光増感剤、レベリング剤、スリップ剤、消泡剤、界面活性剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、酸化防止剤、シランカップリング剤、導電性ポリマー、導電性界面活性剤、無機充填剤、顔料、染料等が挙げられる。
また、例えば埃や花粉等の付着を防ぐための帯電防止機能や、吐息や汗等による曇りを防ぐための防曇機能、口紅等の化粧品による汚れを防ぐための防汚機能を発現するもの等の各種添加剤を併用してもよい。これら添加剤を本発明のコーティング組成物に併用することで、抗菌性能と同時に単層で、複数の機能を発現させることができる。
【0082】
溶剤を加える場合は、溶剤を揮発させた後に活性エネルギー線による硬化処理を行なうことが好ましい。溶剤としては、特に制限されるものでなく、様々な公知の有機溶剤を用いることができる。具体的には例えば、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン、トルエン、キシレン、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、メチルピロリドン等が挙げられる。
【0083】
これらのなかでも、特に水酸基を有する溶剤は、銀系化合物(B)の溶液中における分散性を安定化させる方向に働くため好ましい。またシリコーンやフッ素系等の表面張力を下げるような添加剤を含む場合には、各種材料を配合して攪拌した後、または塗工時に生じてしまう泡に対する消泡性に優れるために好ましい。水酸基を有する溶剤を溶剤組成中に含有することで分散が安定化し、塗膜欠損を抑制して歩留り向上において非常に効果的であることから好ましい。
全溶剤100質量%中の水酸基を有する溶剤の含有率は、25〜100質量%であることが好ましく、50〜100質量%であることがより好ましく、75〜100質量%であることがさらに好ましい。具体的には、水酸基含有溶剤としては、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−2−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。特に、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびエチレングリコールモノメチルエーテルは、消泡性と遅口溶剤(揮発性の低い溶剤)としての揮発性に優れ塗面がより良好となることから好ましい。
【0084】
<抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物の製造方法>
本発明のコーティング組成物は、既知の製造方法で得ることができ、特に制限されない。例えば、初めにウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分および銀系化合物(B)を混合分散し、安定な分散体を得た後、光重合開始剤(C)および他の様々な添加剤を添加及び調製し製造する方法等が挙げられる。
また前述したように、粉末状の銀系化合物(B)を有機溶剤などの非水系ビヒクル中に予め分散した懸濁体(スラリー)としてから、ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分に配合し、コーティング組成物とすることもできる。
【0085】
《抗菌性部材》
抗菌性部材は、物品に接合し、抗菌性部材を備える物品とするために用いられるものである。例えば、基材上に、本発明の抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物をコーティングし、硬化することにより、コーティング層を形成して得られる。
抗菌性部材は、コーティング層以外に、他の機能層を有していてもよく、例えば埃や花粉等の付着を防ぐための帯電防止層や、吐息や汗等による曇りを防ぐための防曇層、口紅等の化粧品による汚れを防ぐための防汚機能を発現するもの等が挙げられる。
【0086】
<コーティング層>
コーティング層は、本発明の抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物の硬化物である。
例えば、コーティング組成物を種々の基材に塗布し、有機溶剤を含む場合には乾燥した後、活性エネルギー線を照射することにより、硬化した塗膜であるコーティング層を形成できる。
硬化物の厚みは、基材との密着性の低下または硬化塗膜中のクラック発生を回避する観点から、0.5〜20μmであることが好ましく、1.0〜15μmであることがより好ましく、2〜10μmであることがさらに好ましい。
【0087】
<基材>
基材は、プラスチック、金属、木材および紙からなる群から適宜選択することができる。さらに、複数の基材から構成される複合基材も選択することができる。これらの基材は、フィルム、紙のように平坦な形状のものでもよいし、立体的な形状のものでもよい。コーティング層は基材の両面に備えても構わない。
【0088】
プラスチックの素材としては、例えば、ポリエステル系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、アクリル系ポリマー等の透明ポリマーが挙げられる。ポリエステル系ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(PE)、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。セルロース系ポリマーとしては、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等が挙げられる。アクリル系ポリマーとしては、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0089】
プラスチックの素材として、スチレン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、およびアミド系ポリマー等の透明ポリマーも挙げられる。スチレン系ポリマーとしては、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体等が挙げられる。オレフィン系ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状若しくはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体等が挙げられる。アミド系ポリマーとしては、ナイロンや芳香族ポリアミド等が挙げられる。
【0090】
さらに、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、およびエポキシ系ポリマー、ならびに前記ポリマーのブレンド物等の透明ポリマー等も挙げられる。
【0091】
プラスチックフィルムを基材として使用する場合、硬化塗膜を形成する面に、アクリル系樹脂、共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、スチレン− マレイン酸グラ
フトポリエステル樹脂およびアクリルグラフトポリエステル樹脂等の群から選ばれる樹脂層を設けた、いわゆる易接着タイプのフィルムも用いることができる。
【0092】
基材のうち、平坦な形状の基材の厚さは、適宜に決定しうるが、プラスチックフィルムの場合は、一般には強度や取り扱い等の作業性の点より10〜20,000μm程度であることが好ましい。基材が立体的な形状の場合は、厚さは限定されない。
【0093】
コーティング組成物の塗布は、常法によって行えばよく、たとえば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法、スプレー法によって行えばよい。溶剤を含む場合には、コーティング組成物を塗布後、塗膜を50〜150 ℃程度で乾燥させるのが好ましい。
【0094】
塗布後のコーティング組成物の硬化は、上述したように、活性エネルギー線を照射することによって行うことができる。活性エネルギー線としては、紫外線、電子線等が挙げられる。紫外線を用いる場合には、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、キセノンランプなどの
光源を用い、紫外線照射量は、例えば100〜2000mJ/cm
2程度が好ましい。電子線を用いる場合には、酸素濃度100ppm以下の条件で、電子線照射量は、例えば60〜150kV、1〜10Mradが好ましい。
【0095】
《コーティング層を備える物品》
本発明の抗菌性部材を備える物品は、抗菌性部材と同様にして、基材上に、本発明の抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物をコーティングして形成し、物品として用いてもよい。
また、抗菌性部材を用いて、他の基材等の物品に接合することで、抗菌性のコーティング層を備える物品として用いることもできる。
コーティング層を備える物品は、コーティング層側(コーティング層と基材の間を含む)および/またはコーティング層のない基材側に、他のコーティング層や接合材を介した他の基材を備えてもよい。
本発明のコーティング層を有することで、物品の保護、または補強が可能なだけでなく、抗菌性の機能も有することが可能となる。また、コーティング層以外に、他の機能層を有していてもよい。
【0096】
他の機能層としては、例えば埃や花粉等の付着を防ぐための帯電防止機能や、吐息や汗等による曇りを防ぐための防曇機能、口紅等の化粧品による汚れを防ぐための防汚機能を発現するもの等が挙げられる。これら機能は、機能を発現する機能材料を本発明のコーティング組成物に併用することで、抗菌性能と同時に単層で発現させることもできる。
接合材を介した他の基材としては、接着剤や粘着剤等の接合材を介して、保護や補強等の目的で上記基材を貼り合わせることができる。
【0097】
<物品>
本発明における物品とは、抗菌性が要求されるものであれば制限されず、上記コーティング層を備える有体物として用いられる。例えば、透明樹脂パーテーションや、フェイスガード、除菌用アルコールやシートを内包する軟包装材、ボトルやそのキャップ部材、スマートフォン、タブレット、PC、テレビ、カーナビや、商業施設等の案内板や交通券売機などに搭載されるタッチパネル部材、ドアノブ、吊り革、PC用マウスやキーボード等、日々の生活で人々が直接触れるものが挙げられる。
【実施例】
【0098】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、合成例および実施例において材料の配合部数は、溶剤を除き、不揮発分換算である。また、下記実施例および比較例中、「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
【0099】
ウレタン(メタ)アクリレートの分子量、銀系化合物の平均一次粒子径、および銀系化合物の分散粒子径は、次の方法で測定した。
[ウレタン(メタ)アクリレートの分子量]
質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定した。測定条件は以下の通りである。なお、MwおよびMnはいずれも、ポリスチレン換算値である。
装置:SHIMADZU Prominence(株式会社島津製作所製)、
カラム:SHODEX LF−804(昭和電工株式会社製)を3本直列に接続、
検出器:示差屈折率検出器、
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)、
流速:1.0mL/分、
溶媒温度:40℃、
試料濃度:0.2%、
試料注入量:100μL。
【0100】
[銀系化合物の平均一次粒子径]
平均一次粒子径は、日本電子(株)製透過型電子顕微鏡JEM−2010を用いて透過型電子顕微鏡(TEM)観察し、一次粒子の短軸径と長軸径を10個計測し、その平均値を平均一次粒子径とした。
【0101】
[銀系化合物の分散粒子径]
分散粒径D
50は、動的光散乱法を利用した日機装(株)製「ナノトラックUPA」にて測定した。
【0102】
<ウレタン(メタ)アクリレート(A)の合成>
(成膜性成分(X1))
(A1):攪拌機、還流冷却器、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた4口フラスコに、アニックスM403:1052g(分子量:524のジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)500g(約0.95モル)と、分子量:578のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)552g(約0.95モル)とを含む組成物。東亞合成(株)社製)、ネオスタンU−810(錫触媒、日東化成(株)社製)0.1g、酢酸ブチル467gを入れ、液温を50℃にした後、イソシアネート基を約21.8質量%有するヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体(HDI−ヌレート体):37g(イソシアネート基を約0.19モル有する)を滴下漏斗から30分間かけて滴下した。昇温が収まった後、80℃に昇温し3時間反応させ、FT−IR上でイソシアネート基のピークが無くなったことを確認後、冷却しながら酢酸ブチルを加え、希釈し、DPPAとHDI−ヌレート体とのウレタン(メタ)アクリレート(A1)を含む成膜性成分(X1)の溶液を得た。固形分70質量%であった。
DPPAとHDI−ヌレート体とのウレタン(メタ)アクリレート(A1)を含む成膜性成分(X1)の質量平均分子量は1930、前述の方法で求めた平均官能基数(f
C=C
)は6.8、生成物のアクリル当量Mw/fは285であった。なお、成膜性成分(X1)は理論的には約50.7質量%のDPHAを含む。
【0103】
(成膜性成分(X2〜12))
表1の組成、および配合比に従って、成膜性成分(X1)の製造と同様の方法でウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分(X2〜12)を得た。
【0104】
【表1】
【0105】
表1中のf
OHは水酸基数を、f
NCOはイソシアネート基数を、f
C=Cは(メタ)アクリロイル基数を表す。
【0106】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
「水酸基を有する(メタ)アクリレート(a1)」
(a1−1)アロニックスM403(分子量:524のジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)と、分子量:578のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)とを含む組成物。ペンタ/ヘキサ=1/1(モル比)、東亞合成(株)社製)。
(a1−2)A−TMPT(分子量:298のペンタエリスリトールトリアクリレート、新中村化学(株)社製)。
【0107】
「ポリイソシアネート(a2)」
(a2−1)スミジュールN3300(ヘキサメチレンジイソシアネート−ヌレート体、NCO%=21.8(固形分100%)、住化コベストロウレタン(株)社製、脂肪族ポリイソシアネート−ヌレート体)、
(a2−2)デスモジュールH(ヘキサメチレンジイソシアネート、NCO%=50.0(固形分100%)、住化コベストロウレタン(株)社製、脂肪族系ポリイソシアネート)、
(a2−3)デスモジュールZ4470BA(イソホロンジイソシアネート−ヌレート体の酢酸ブチル溶液、NCO%=16.9(固形分100%換算)、住化コベストロウレタン(株)社製、脂環族系ポリイソシアネート)、
(a2−4)デスモジュールT−80(トリレンジイソシアネート、NCO%=48.0(固形分100%)、住化コベストロウレタン(株)社製、芳香族系ポリイソシアネート)。
【0108】
<銀系化合物の分散体の製造>
(銀系化合物分散体1)
銀イオン担持ゼオライトの分散体を下記の方法で製造した。
銀イオン担持ゼオライト(ノバロンAGT330、東亞合成(株)製)200部、分散剤としてDisperBYK−111(ビックケミージャパン(株)製)10部、メチル
エチルケトン800部を混合し、以下の条件にて分散を行ない、平均一次粒子径が30nm、分散粒径D
50が80nm、固形分が21%(銀系化合物としての有効成分は、分散体中20%)の銀系化合物(B1)を含む分散体1を作製した。
前分散:ジルコニアビーズ(1.25mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで1時間分散。
本分散:ジルコニアビーズ(0.1mm)をメディアとして用い、寿工業(株)製分散機UAM−015で1時間分散。
【0109】
(銀系化合物分散体2)
銀イオン担持酸化モリブデンの分散体を下記の方法で製造した。
モリブデン酸ナトリウム二水和物(関東化学(株))195部をイオン交換水3000部に溶解し、これに硝酸銀(関東化学(株))273部をイオン交換水3000部に溶解した溶液を撹拌しながら30分かけて滴下し沈殿物を得た。これを濾過しイオン交換水で洗浄し、100℃で十分に乾燥した200部を、銀系化合物分散体1のノバロンAGT330の代わりに用いた以外は銀系化合物分散体1と同様にして、平均一次粒子径が25nm、分散粒径D
50が70nm、固形分が21%の銀系化合物(B2)を含む分散体2を作製した。
【0110】
(銀系化合物分散体3)
銀イオン担持ゼオライトの分散体を下記の方法で製造した。
ノバロンAGT330に代えて、銀イオン担持ゼオライトとしてゼオミックAJ10N((株)シナネンゼオミック製)を用いた以外は銀系化合物分散体1と同様にして、平均一次粒子径が30nm、分散粒径D
50が90nm、固形分が21%の銀系化合物(B3)を含む分散体3を作製した。
【0111】
(銀系化合物分散体4)
銀イオン担持ケイ酸塩の分散体を下記の方法で製造した。
ノバロンAGT330に代えて、銀イオン担持ケイ酸塩としてAIS−NAZ320(日揮触媒化成(株)製)を用いた以外は銀系化合物分散体1と同様にして、平均一次粒子径が40nm、分散粒径D
50が110nm、固形分が21%の銀系化合物(B4)を含む分散体4を作製した。
【0112】
(実施例1)
ウレタン(メタ)アクリレート(A)を含む成膜性成分(X1)を100質量部(不揮発分)、銀系化合物(B2)を3質量部(不揮発分)含む分散体2、光重合開始剤(C)としてエサキュアワン(IGM−Resins B.V.社製)を5質量部、レベリング剤としてBYK349(シリコーン系添加剤、ビックケミー・ジャパン(株)社製)を0.1質量部、希釈溶剤として不足分のポリエチレングリコールモノエチルエーテル(PGME)を60部、および酢酸ブチルを20部、混合・分散して、コーティング組成物1を得た。
【0113】
(実施例2〜12)
成膜性成分(X1)を、成膜性成分(X2〜12)に変更した以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物1〜12を得た。
【0114】
(実施例13〜18)
銀系化合物(B2)の量を、0.2部、0.5部、1部、5部、7部、12部(不揮発分)となるように、分散体2を用いた以外は、実施例3と同様にしてコーティング組成物13〜18を得た。表3には実施例3も合わせて記載する。
【0115】
(実施例19〜21)
成膜性成分(X4)を用い、銀系化合物(B1)、(B3)、(B4)を含む分散体を用いた以外は実施例4と同様にしてコーティング組成物19〜21を得た。
表には、銀系化合物の含有量(不揮発分)を示した。
【0116】
(実施例22)
光重合開始剤としてOmnirad184(IGM Resins B.V.社製)を用いた以外は実施例4と同様にしてコーティング組成物22を得た。
【0117】
(実施例23)
希釈溶剤としてポリエチレングリコールモノエチルエーテル(PGME)を用いず、酢酸ブチルを80部とした実施例4と同様にしてコーティング組成物23を得た。
【0118】
(比較例1)
銀系化合物の代わりに、ネオフィックスRP−70(ポリエチレンポリアミン系樹脂、日華化学(株)製)とした以外は実施例3と同様にしてコーティング組成物を得た。
【0119】
(比較例2)
成膜性成分として、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を100部用いた以外は実施例1と同様にしてコーティング組成物を得た。
【0120】
[材料]
使用した材料は、以下の通りである。
「成膜性成分」
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ダイセル・オルネクス(株)社製、分子量:578、Mw/f
C=C=96.3)
【0121】
「その他」
PR−70;ネオフィックスRP−70(ポリエチレンポリアミン系樹脂、日華化学(株)製)
「光重合開始剤(C)」
エサキュアワン(オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、IGM Resins B.V.社製)、
Omnirad184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、IGM Resins B.V.社製)
【0122】
得られた抗菌性活性エネルギー線硬化性組成物を用いて、下記の物性値測定および評価を行った。結果を表2〜4に示す。
【0123】
(マルテンス硬さ)
100μm厚の易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET;東洋紡(株)製「コスモシャインA4100」)上に、バーコーターを用いて、得られた各コーティング組成物を塗工し、乾燥して溶剤を除去した後、高圧水銀ランプを用いて200mJ/cm
2の紫外線を照射し、3μmの硬化物を形成した。
100μmPET上の硬化物について、微小硬度計フィッシャースコープHM2000((株)フィッシャーインスツルメンツ製、圧子;ビッカース圧子、印加速度;0.5mN/秒、最大荷重;10mN、保持時間;5秒)を用いて、ISO14577の規格に基づいて算出されるマルテンス硬さ(N/mm
2)を測定した。
A:50〜70N/mm
2
B:40〜50未満、または70超〜80N/mm
2
C:40未満、または80超N/mm
2
【0124】
(抗菌性)
JISZ2801の試験方法に則り、マルテンス硬さ測定の際に得られた硬化物の抗菌性を試験した。
A:抗菌活性値3以上
B:抗菌活性値2以上、3未満
C:抗菌活性値2未満
【0125】
(抗ウィルス性)
JISL1922の試験方法に則り、マルテンス硬さ測定の際に得られた前記硬化物の抗ウィルス性を試験した。
A:抗ウィルス活性値3以上
B:抗ウィルス活性値2以上、3未満
C:抗ウィルス活性値2未満
【0126】
<抗菌性活性エネルギー線硬化性組成物の評価>
(分散安定性)
コーティング組成物50質量部を70mLの蓋付き容器に入れて封をした後、容器ごと40℃のオーブン内で1週間静置させた。その後容器をオーブンから取り出し1時間空冷し目視観察および容器を振る再分散試験を行った。
[評価基準]
〇:沈降なし、良好。
△:沈降あるも容器を振れば再分散可、使用可。
×:容器を振っても再分散しない、不良。
【0127】
<コーティング層の評価>
(抗菌性部材の形成)
100μm厚の易接着処理ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET;東洋紡(株)製「コスモシャインA4100」)上に、バーコーターを用いて、得られた各コーティング組成物を塗工し、乾燥して溶剤を除去した後、高圧水銀ランプを用いて200mJ/cm
2の紫外線を照射し、3μmの硬化物を形成し、抗菌性部材を形成した。
【0128】
(耐傷性)
#0000のスチールウールを装着した1平方センチメートルの角形パッドを、前記抗菌性部材の硬化物の塗膜面上に置き、荷重500gで10回往復させた後、外観を目視で評価し、傷の本数を測定した。
[評価基準]
〇:傷0本、良好。
△:傷1〜2本、使用可。
×:傷3本以上、不良。
【0129】
(耐候性)
サンシャインカーボンウエザーメーター(スガ試験機(株)製、型式:S80)を用い、温度63℃、湿度45%の雰囲気中に前記抗菌性部材を置き、500時間の耐候性試験を行い、試験前後のコーティング層の黄色味の変化について、色差計を用いて測定した。[評価基準]
〇:Δb
*値1以下、良好。
△:Δb
*値1超3以下、使用可。
×:Δb
*値3超、不良。
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
表2〜4より、本発明のコーティング組成物は、(メタ)アクリロイル基を6個以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)を含み、100μmのポリエチレンテレフタレ
ートフィルム上に、抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物から形成してなる厚さ3μmの硬化物が、マルテンス硬さが40〜80N/mm
2、かつJISZ2801における抗菌活性値が2以上であることにより、充分な抗菌性とそれを安定して発現させるための優れた分散安定性、および傷付き防止性能に優れたコーティング層を形成できることが確認できた。
【0134】
表4に示すように、成膜性成分がウレタン(メタ)メタアクリレート(A)を含まない比較例2は、硬度が出すぎることで脆い塗膜となり、分散安定性にも劣る結果であった。
【0135】
<コーティング層を備える物品の評価>
コーティング組成物の硬化物とは反対の面に、アクリル系粘着剤(トーヨーケム(株)製;オリバインBPS6421、不揮発分41%)100質量部、イソシアネート硬化剤(トーヨーケム(株)製;オリバインBHS8515、不揮発分37.5%)1.2質量部の混合物を塗工し、乾燥して溶剤を除去した後、セパレータフィルム(リンテック(株)製スーパーステックSP−PET38)を貼り合わせて23℃50%Rh環境下で1週間養生した。養生後、セパレータフィルムを剥がしてからアクリルパーテーション(友澤木工(株)製;飛沫ガードアクリルパネル)に空気が入り込まないように貼り合わせた。
【0136】
実施例で得られたコーティング組成物により形成されたコーティング層を備える物品(アクリルパーテーション)は、いずれも抗菌性と耐傷性が両立できていることが確認できた。
十分な抗菌性を具備し、抗菌性の安定した発現、および歩留まり向上に寄与する優れた分散安定性を有し、かつ傷付き防止性能に優れるコーティング層を形成可能な抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物、それから形成してなるコーティング層を有する抗菌性部材、および物品を提供すること。
成膜性成分と、銀系化合物(B)を含む抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物であって、前記成膜性成分は、(メタ)アクリロイル基を6個以上有するウレタン(メタ)アクリレート(A)を含み、100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、抗菌性活性エネルギー線硬化型コーティング組成物から形成してなる厚さ3μmの硬化物は、マルテンス硬さが40〜80N/mm