特許第6961878号(P6961878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961878
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】紙幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/20 20190101AFI20211025BHJP
   G07D 11/14 20190101ALI20211025BHJP
   B65H 5/36 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G07D11/20
   G07D11/14
   B65H5/36
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2017-174675(P2017-174675)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-49924(P2019-49924A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2020年9月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】307003777
【氏名又は名称】株式会社日本コンラックス
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳元 八大
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【弁理士】
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100189186
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】立見 裕子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和弘
(72)【発明者】
【氏名】高橋 嶺登
(72)【発明者】
【氏名】板垣 公次
【審査官】 小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−016265(JP,U)
【文献】 特開2015−087923(JP,A)
【文献】 特開2019−049924(JP,A)
【文献】 特開平10−198839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 1/00−13/00
B65H 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣処理装置であって、
昇降運動する可動カムを有する駆動部と、
上流に紙幣挿入部を有し、下流に紙幣を積み重ねて収納する紙幣収納部を有する紙幣搬送通路部と、
紙幣を前記紙幣搬送通路部に沿って搬送する紙幣搬送手段と、を備え、
前記紙幣挿入部は、前記可動カムの昇降運動に応じて鉛直方向に往復運動自在な高さガイドを有し、
前記高さガイドは、前記紙幣の搬送時、挿入口が所定高さ寸法となる第1位置と、前記紙幣の返却時、前記第1位置より鉛直方向における上部に移動させて前記挿入口の高さ方向の寸法を通常の状態より大きい状態となる第2位置とに移動する、
ことを特徴とする紙幣処理装置。
【請求項2】
前記紙幣搬送通路部は、前記紙幣搬送通路部の両側部に設けられた向かい合う一対の幅ガイドを備え、
前記一対の幅ガイド同士の間隔は、前記駆動部の運動に応じて無段階で可変である
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣処理装置。
【請求項3】
前記一対の幅ガイドと前記高さガイドは、前記駆動部により昇降運動する共通の前記可動カムによって移動する
ことを特徴とする請求項2に記載の紙幣処理装置。
【請求項4】
前記可動カムは、少なくとも斜溝と縦溝とが連続して設けられたカム溝と、可動カム係合部と、を有し、
前記幅ガイドは、前記カム溝に係合される幅ガイド係合部を有し、
前記高さガイドは、前記可動カム係合部に係合される高さガイド係合部を有する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の紙幣処理装置。
【請求項5】
前記カム溝は、左右対称形状である
ことを特徴とする請求項4に記載の紙幣処理装置。
【請求項6】
前記駆動部は、出力軸を有する電動モータと、前記出力軸の回転に連動するウォーム軸と、前記ウォーム軸の回転に連動するウォームホイールと、前記ウォームホイールの回転に連動する前記可動カムと、を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の紙幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣搬送通路の上流端にある紙幣挿入口から挿入された紙幣を紙幣搬送通路に沿って搬送させる紙幣搬送手段を備え、搬送された紙幣を紙幣搬送通路の下流端から排出する紙幣処理装置がある(特許文献1参照)。
従来の紙幣処理装置は、挿入された紙幣が規定のものでない場合、その紙幣を紙幣搬送手段によって送り出す機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平3−13820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の紙幣処理装置では、紙幣が、しわ、折り目、水濡れ、劣化等によって変形している場合、紙幣搬送通路から紙幣収納部へ送り出される際に紙幣搬送通路内で詰まってしまうことがあった。そして、この場合、紙幣を紙幣搬送手段によって上流側に送り出そうとしても、紙幣が更に大きく変形してしまって紙幣搬送通路内で詰まった状態が解除されず、紙幣を返却できない場合があった。特に、劣化した紙幣等、紙幣の質が悪い場合、このような状況が起こり易かった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、変形した紙幣を返却し易い紙幣処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の紙幣処理装置は、昇降運動する可動カムを有する駆動部と、上流に紙幣挿入部を有し、下流に紙幣を積み重ねて収納する紙幣収納部を有する紙幣搬送通路部と、紙幣を前記紙幣搬送通路部に沿って搬送する紙幣搬送手段と、を備え、前記紙幣挿入部は、前記可動カムの昇降運動に応じて鉛直方向に往復運動自在な高さガイドを有する。
(2)上記(1)の構成において、前記紙幣搬送通路部は、前記紙幣搬送通路部の両側部に設けられた向かい合う一対の幅ガイドを備え、前記一対の幅ガイド同士の間隔は、前記駆動部の運動に応じて無段階で可変である。
(3)上記(2)の構成において、前記一対の幅ガイドと前記高さガイドは、前記駆動部により昇降運動する共通の前記可動カムによって移動する。
(4)上記(2)又は(3)の構成において、前記可動カムは、少なくとも斜溝と縦溝とが連続して設けられたカム溝と、可動カム係合部と、を有し、前記幅ガイドは、前記カム溝に係合される幅ガイド係合部を有し、前記高さガイドは、前記可動カム係合部に係合される高さガイド係合部を有する。
(5)上記(4)の構成において、前記カム溝は、左右対称形状である。
(6)上記(1)から(5)のいずれかの構成において、前記駆動部は、出力軸を有する電動モータと、前記出力軸の回転に連動するウォーム軸と、前記ウォーム軸の回転に連動するウォームホイールと、前記ウォームホイールの回転に連動する前記可動カムと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、変形した紙幣を返却し易い紙幣処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】紙幣処理装置の正面図である。
図2図1におけるA矢視断面図である。
図3図1におけるB矢視断面図である。
図4図3における各機能部を説明する模式図である。
図5】紙幣処理装置の右側面図である。
図6図5におけるC矢視断面図である。
図7図5におけるD矢視断面図である。
図8】駆動部を含む主要部の斜視図である。
図9】駆動部を含む主要部の正面図である。
図10】駆動部を含む主要部の背面図である。
図11図9におけるE矢視断面図であり、(a)は可動カムが通常位置にある通常状態の高さガイドの位置を示す図であり、(b)は可動カムが挿入口拡大位置にある挿入口拡大状態の高さガイドの位置を示す図であり、(c)は可動カムが通路幅71mm位置にある通路幅71mm状態の高さガイドの位置を示す図であり、(d)は可動カムが通路幅64mm位置にある通路幅64mm状態の高さガイドの位置を示す図である。
図12】可動カムと幅ガイドとの関係を示す図であり、(a)は可動カムが通常位置にある通常状態の幅ガイドの位置を示す図であり、(b)は可動カムが挿入口拡大位置にある挿入口拡大状態の幅ガイドの位置を示す図であり、(c)は可動カムが通路幅71mm位置にある通路幅71mm状態の幅ガイドの位置を示す図であり、(d)は可動カムが通路幅64mm位置にある通路幅64mm状態の幅ガイドの位置を示す図である。
図13】紙幣処理装置における主要部の組立図である。
図14】可動カムの斜視図であり、(a)は背面から見下ろした図であり、(b)は正面から見下ろした図である。
図15】ウォームホイールの斜視図であり、(a)は背面から見下ろした図であり、(b)は正面から見下ろした図である。
図16】左幅ガイドの斜視図であり、(a)は正面の右から見下ろした図であり、(b)は正面の左から見下ろした図である。
図17】右幅ガイドの斜視図であり、(a)は正面の右から見下ろした図であり、(b)は正面の左から見下ろした図である。
図18】高さガイドの斜視図であり、(a)は正面の右から見下ろした図であり、(b)は正面の右から見上げた図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施形態)
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0009】
図1は、紙幣処理装置100の正面図である。図2は、図1におけるA矢視断面図である。図3は、図1におけるB矢視断面図である。図4は、図3における各機能部を説明する模式図である。図5は、紙幣処理装置100の右側面図である。図6は、図5におけるC矢視断面図である。図7は、図5におけるD矢視断面図である。
図8は、駆動部60を含む主要部の斜視図である。図9は、駆動部60を含む主要部の正面図である。図10は、駆動部60を含む主要部の背面図である。
図11は、図9におけるE矢視断面図であり、(a)は可動カム70が通常位置にある通常状態の高さガイド11の位置を示す図であり、(b)は可動カム70が挿入口拡大位置にある挿入口拡大状態の高さガイド11の位置を示す図であり、(c)は可動カム70が通路幅71mm位置にある通路幅71mm状態の高さガイド11の位置を示す図であり、(d)は可動カム70が通路幅64mm位置にある通路幅64mm状態の高さガイド11の位置を示す図である。
図12は、可動カム70と幅ガイド50との関係を示す図であり、(a)は可動カム70が通常位置にある通常状態の幅ガイド50の位置を示す図であり、(b)は可動カム70が挿入口拡大位置にある挿入口拡大状態の幅ガイド50の位置を示す図であり、(c)は可動カム70が通路幅71mm位置にある通路幅71mm状態の幅ガイド50の位置を示す図であり、(d)は可動カム70が通路幅64mm位置にある通路幅64mm状態の幅ガイド50の位置を示す図である。
図13は、紙幣処理装置100における主要部の組立図である。
図14は、可動カム70の斜視図であり、(a)は背面から見下ろした図であり、(b)は正面から見下ろした図である。図15は、ウォームホイール63の斜視図であり、(a)は背面から見下ろした図であり、(b)は正面から見下ろした図である。図16は、左幅ガイド51の斜視図であり、(a)は正面の右から見下ろした図であり、(b)は正面の左から見下ろした図である。図17は、右幅ガイド52の斜視図であり、(a)は正面の右から見下ろした図であり、(b)は正面の左から見下ろした図である。図18は、高さガイド11の斜視図であり、(a)は正面の右から見下ろした図であり、(b)は正面の右から見上げた図である。
なお、図8から図13は、紙幣処理装置100における主要部となる、高さガイド11、幅ガイド50、駆動部60及び可動カム70の関係を示しており、ケース1の外殻部及び紙幣収納部40の図示は省略されている。
【0010】
図1から図7に示すように、紙幣処理装置100は、上流Uに紙幣B(不図示)を挿入する紙幣挿入部10を有し、下流Dに紙幣Bを積み重ねて収納する紙幣収納部40を有する紙幣搬送通路部20と、紙幣Bを紙幣搬送通路部20に沿って搬送する紙幣搬送手段30と、を備える。紙幣挿入部10に挿入された紙幣Bは、特定の条件において、紙幣搬送手段30により、紙幣搬送通路部20に沿って上流Uから下流Dに向けて搬送され、特定の条件において、紙幣搬送手段30により、紙幣搬送通路部20に沿って下流Dから上流Uに向けて搬送される。
【0011】
紙幣処理装置100は、紙幣幅の異なる複数種類の紙幣Bが流通している地域において、紙幣挿入部10から挿入された紙幣Bの紙幣幅があらかじめ設定された範囲内である場合、挿入された紙幣Bを紙幣収納部40に積み重ねて収納する。
例えば、中国で人民元として流通している紙幣の種類と紙幣幅の組み合わせは、100元札(77mm)、50元札(70mm)、20元札(70mm)、10元札(70mm)、5元札(63mm)、1元札(63mm)であり、これらのほか、5角札(59mm)、1角札(52mm)があるが、紙幣処理装置100により、紙幣幅が77mm、70mm又は63mmの元札を受け入れて収納する。すなわち、紙幣幅が63mmに満たない角札を受け入れずに収納しないようにできる。
【0012】
紙幣処理装置100の構造について説明すると、具体的には、図1に示すように、紙幣処理装置100の紙幣挿入部10、紙幣搬送通路部20、紙幣搬送手段30及び紙幣収納部40は、それぞれケース1によって支持されて一体的に組み立てられている。
【0013】
(紙幣挿入部)
紙幣挿入部10は、鉛直方向に往復運動自在な高さガイド11と、受けガイド12とを有する。紙幣挿入部10は、高さガイド11と受けガイド12との間に、紙幣Bが挿入される挿入口10aを規定している。
【0014】
図4に示すように、紙幣挿入部10が規定する挿入口10aの高さ方向の寸法βは、紙幣Bを挿入口10aの下流Dに位置する紙幣搬送通路部20に向けて姿勢を安定させたまま導くために、通常状態では、紙幣Bの厚みよりも若干大きく、紙幣搬送通路部20の高さ方向の寸法αよりも小さくなっている。
【0015】
そして、紙幣挿入部10は、鉛直方向に往復運動自在な高さガイド11を有することにより、高さガイド11が通常位置と挿入口拡大位置との間で往復運動できるので、紙幣挿入部10によって規定される挿入口10aの高さ方向の寸法βが、通常状態と通常状態より大きい挿入口拡大状態との間で可変となる。よって、例えば、蛇腹状に変形して高さ寸法が大きくなった紙幣Bを送り出す際に、挿入口10aの高さ方向の寸法βを通常状態より挿入口拡大状態とすることで、紙幣Bが高さガイド11に接触して搬出の抵抗となったり、その結果、紙幣搬送通路部20の内部で詰まったりすることを抑制でき、変形した紙幣Bを返却できる。
【0016】
受けガイド12は、図13に示すように、ケース1の一部であってよく、ケース1に対して固定された別体であってもよい。受けガイド12は、受け入れる紙幣Bの紙幣幅よりやや大きめの幅を有する。受けガイド12の上面には、紙幣Bとの抵抗を減らすため、紙幣Bを挿入する方向に沿って延び、挿入口10aに向けて湾曲したリブ12rが複数設けられている。
【0017】
高さガイド11は、図13及び図18に示すように、使用される紙幣Bの中で最も大きな紙幣幅と同等の幅を有する。高さガイド11の幅は、紙幣処理装置100の全体をコンパクトにするため、受けガイド12の幅より小さくなっている。高さガイド11は、ケース1に軸支される軸支部11aと、可動カム70の可動カム係合部74に係合される高さガイド係合部11pと、挿入口拡大状態以外の状態においてケース1によって支持されるストッパ11sと、を有する。軸支部11a及びストッパ11sは、それぞれ、高さガイド11の両端部に設けられている。ストッパ11sは、高さガイド11が軸支部11aに軸支された状態で、高さガイド11が、挿入口10aが拡大する方向(図11(b)において矢印θで示す方向)には揺動できるが、その反対方向には所定の位置までしか揺動できないようにケース1に係合している。よって、高さガイド11は、挿入口拡大状態以外の状態、すなわち、通常状態から通路幅71mm状態を経て通路幅64mm状態までの状態において、ケース1に対して、軸支部11aが軸支され、ストッパ11sが支持された状態となっており、高さガイド11の位置を通常位置に保っている。
【0018】
高さガイド11は、可動カム70の昇降運動に応じて、往復運動する。これについては後述する。
【0019】
また、紙幣挿入部10は、挿入された紙幣Bの幅を検出するための幅検出センサ(不図示)を有する。幅検出センサは、具体的には、例えば、紙幣挿入部10における挿入口10aの両側部に、それぞれ幅方向に沿って複数並べられて配置された光学センサである。なお、幅検出センサは、紙幣搬送通路部20における紙幣挿入部側の端部に配置されてもよい。光学センサは、例えば、発光部と受光部とを有し、発光部が挿入口10aにおける鉛直方向の一方に配置され、受光部が他方に配置され、発光部から発せられた光が挿入口10aを鉛直方向に跨ぎ、受光部に至るようになっている。光学センサは、例えば、1mmピッチで横方向(通路幅方向)に並べられて配置される。このように、幅検出センサは、紙幣挿入部10における挿入口10aの中央部には配置されず、両側部にまとめて配置されるので、光学センサを数多く配置しなくても、紙幣幅の異なる複数種類の紙幣Bを識別できるとともに、あらかじめ設定された範囲内にない幅を有する紙幣等を識別できる。
【0020】
(紙幣搬送通路部)
紙幣搬送通路部20は、紙幣挿入部10から挿入された紙幣Bが紙幣収納部40に至るまでに通る通路(空間)を含む部分である。紙幣挿入部10、紙幣搬送手段30及び紙幣収納部40は、紙幣搬送通路部20に沿って設けられる。紙幣搬送通路部20は、図4において模式的に示すように、紙幣挿入部10から横方向に延びる横部21と、そこから上部に向けて湾曲する湾曲部22と、鉛直方向に延びる鉛直部23と、を有する。ここで、横部21及び湾曲部22における通路の幅方向は、幅ガイド50によって可変に規定される。紙幣搬送通路部20における通路の高さ方向や鉛直部23の幅方向は、ケース1によって規定される。
【0021】
(紙幣搬送手段)
紙幣搬送手段30は、例えば、駆動源(不図示)と、駆動源と繋がるプーリ(不図示)に巻回されて紙幣Bに対する摩擦の大きいゴム製のベルト(不図示)とを備えるものである。なお、紙幣搬送手段30は、駆動部60を駆動源としてもよい。図4に示すように、紙幣搬送手段30は、紙幣搬送通路部20における紙幣収納部40に沿う部分(鉛直部23)を除く部分(横部21又は湾曲部22)に沿って設けられる。これにより、上流Uから下流Dに向けて搬送される紙幣Bは、紙幣搬送手段30によって鉛直上向きの力を受け、鉛直部23に至ると、紙幣Bを紙幣Bの上側から上流Uに向けて引っ張る力は作用せず、紙幣搬送通路部20の通路内において下端部からのみ支持された状態、言い換えると、紙幣Bが立っている状態となる。よって、紙幣Bが鉛直部23に至る際に、紙幣Bが変形していると、紙幣Bの長さが本来の長さより短くなるので、本来の長さの紙幣Bが到達する位置に設けられた通路センサ80の一部(例えば、図2及び図6における左通路センサ83L又は右通路センサ83R)が紙幣Bを検出しないことをもって、鉛直部23に搬送された紙幣Bが規定の紙幣でないことを検知できる。
また、紙幣搬送手段30は、紙幣搬送通路部20における紙幣収納部40に沿う部分にも設けてもよい。これにより、上流Uから下流Dに向けて搬送される紙幣Bは、紙幣搬送手段30によって鉛直上向きの力を受け、鉛直部23に至る。すると、紙幣収納部40に沿う部分に設けられた紙幣搬送手段30から、紙幣Bを紙幣Bの上側から上流Uに向けて引っ張る力が作用し、紙幣Bが圧縮方向に変形し難くなり、紙幣搬送通路部20で詰まるリスクが軽減する。よって、紙幣Bの詰まりを検出するための、通路センサ80の数を削減できる。
【0022】
(駆動部と可動カムとの関係)
紙幣処理装置100は、駆動部60と、駆動部60の運動に応じて昇降運動する可動カム70を備える。
そして、紙幣挿入部10の高さガイド11は、可動カム70の昇降運動に応じて鉛直方向に往復運動する。なお、この往復運動は、昇降運動及び軸支部11aを中心とする揺動運動を含む。このように、高さガイド11は、駆動部60の運動に伴う可動カム70の昇降運動に応じて往復運動するので、紙幣Bを紙幣搬送手段30によって下流Dから上流Uに向けて送り出すタイミングで駆動部60を制御することにより、高さガイド11を、通常位置より鉛直方向における上部位置に移動させて挿入口10aの高さ方向の寸法を通常の状態より大きい状態とすることができる。よって、紙幣Bが紙幣搬送通路部20の内部で詰まることを抑制でき、変形した紙幣Bを返却できる。
【0023】
駆動部60は、出力軸61aを有する電動モータ61と、出力軸61aの回転に連動するウォーム軸62と、ウォーム軸62の回転に連動するウォームホイール63と、を有する。
【0024】
紙幣処理装置100は、電動モータ61の回転位置(回転角)の変化に応じてパルスを発するパルスセンサ61s(図10及び図11参照)を備える。そして、パルスセンサ61sによって発せられたパルスにより、制御装置は、電動モータ61の回転位置(回転角)を制御する。
【0025】
電動モータ61が回転すると、出力軸61a、ウォーム軸62、ウォームホイール63が連動して回転する。
【0026】
ウォームホイール63は、図15に示すように、回転中心軸から偏心した位置において、回転中心軸に沿う方向に突出したホイール係合部63pを有する。ホイール係合部63pは、可動カム70に設けられた横長のカム係合溝72に係合する。
これにより、ウォームホイール63が回転すると、ホイール係合部63pがカム係合溝72に作用し、可動カム70を鉛直方向に運動させる。そして、可動カム70のガイド溝73は、ケース1内に設けられたガイドレール(不図示)に対して係合しているので、可動カム70は、ウォームホイール63の回転に連動して鉛直方向に平行移動して昇降運動する。
【0027】
可動カム70は、図13及び図14に示すように、左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pが係合するカム溝71と、ホイール係合部63pが係合するカム係合溝72と、ケース1内に設けられたガイドレール(不図示)に係合されてガイドされ、鉛直方向に沿って延びるガイド溝73と、高さガイド11の高さガイド係合部11pと係合する可動カム係合部74と、を有する。可動カム70は、カム溝71を背面に、カム係合溝72を正面に、それぞれ有する。
可動カム70は、ガイド溝73が、ケース1のガイドレールに係合されてガイドされるので、鉛直方向に平行移動する。
【0028】
カム係合溝72は、横長の溝であり、ホイール係合部63pの鉛直方向の寸法よりやや大きい溝幅を有する。ウォームホイール63が回転すると、ホイール係合部63pの位置は正面視において回転し、ホイール係合部63pがカム係合溝72の内壁の上側又は下側を押しながら、平面視において左右に移動し、可動カム70は昇降する。
【0029】
具体的には、ウォームホイール63のホイール係合部63pがウォームホイール63の鉛直方向における略中央に位置する場合、すなわち、ウォームホイール63の回転中心の左又は右に位置する場合では、可動カム70は通常位置(図11(a)参照)となり、ホイール係合部63pがウォームホイール63の鉛直方向における上方に位置する場合では、可動カム70は挿入口拡大位置(図11(b)参照)となり、ホイール係合部63pがウォームホイール63の鉛直方向におけるやや下方に位置する場合では、可動カム70は通路幅71mm位置(図11(c)参照)となり、ホイール係合部63pがウォームホイール63の鉛直方向において更に下方に位置する場合では、可動カム70は通路幅64mm位置(図11(d)参照)となる。
【0030】
このように、駆動部60は、ウォーム軸62及びウォームホイール63を介して可動カム70を昇降運動させるので、例えば、高さガイド11や幅ガイド50からの駆動部60によるもの以外の外力が可動カム70に作用しても、ウォーム軸62とウォームホイール63との摩擦抵抗の一方向性により、可動カム70が移動し難い。したがって、可動カム70と連動する高さガイド11及び幅ガイド50は移動し難い。よって、紙幣Bの引き抜き等の不正行為を抑止できる。
【0031】
可動カム70のカム溝71は、詳細には、図12の(a)から(d)及び図14に示すように、少なくとも斜溝70Sと縦溝70Lとが連続したものである。具体的には、カム溝71は、背面視において左右対称形状であり、左右に一対の縦溝70Lと、一対の斜溝70Sを有する。一対の斜溝70Sは、例えば、鉛直方向に対して略45度で傾斜している。なお、一対の斜溝70Sにおけるそれぞれの斜溝70Sの最上部は、互いに繋がって連続していても、いなくてもよい。
【0032】
そして、カム溝71には、左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pが係合しており、左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pは互いに近づいたり離れたりする方向に平行移動するようになっているので、可動カム70が昇降するに連れて、カム溝71に対する左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pの位置が変わり、それに伴い、左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pが近接したり離れたりする。
【0033】
このように、カム溝71は左右対称形状であるので、可動カム70を鉛直方向に平行移動させて昇降させるだけで、左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pのそれぞれを左右対称に運動させることができる。
【0034】
可動カム係合部74は、可動カム70の両側端部において、可動カム70の正面に設けられる。可動カム係合部74は、詳細には図11の(a)から(d)及び図14に示すように、背面から正面に向けて膨出する膨出部74aと、正面から背面に向けて凹み、膨出部74aの下部に膨出部74aと連続して設けられる凹部74bと、凹部74bの下部に凹部74bと連続して設けられ、背面から正面に向けて膨出部74aより正面側に突出する突出部74cと、を有する。
【0035】
(可動カムと高さガイドとの関係)
高さガイド11の高さガイド係合部11pは、可動カム70が通常位置(図11(a)参照)から挿入口拡大位置(図11(b)参照)の間にある場合は、可動カム係合部74における膨出部74a、凹部74b又は突出部74cのいずれかに接しながら、昇降する可動カム70に対して相対移動する。
【0036】
具体的には、可動カム70が通常位置にある場合(図11(a)参照)、高さガイド11は、高さガイド係合部11pが可動カム70の膨出部74aに接し、挿入口10aが通常の高さ寸法となる通常位置になる。可動カム70が挿入口拡大位置にある場合(図11(b)参照)、すなわち、可動カム70が通常位置から鉛直上向きに移動すると、高さガイド11は、高さガイド係合部11pが可動カム70の突出部74cに接し、ストッパ11sが支持されなくなり、可動カム70が鉛直上向きに更に移動すると、高さガイド11が軸支部11aを中心に揺動するのに連れて高さガイド係合部11pが背面方向に揺動して可動カム70の凹部74bに接し、高さガイド11の全体が所定角度θだけ揺動し、挿入口10aが通常の高さ寸法より大きくなる挿入口拡大位置になる。
【0037】
一方、可動カム70が通常位置(図11(a)参照)から通路幅64mm位置(図11(d)参照)の間にある場合、すなわち、可動カム70が通常位置から鉛直下向きに移動しても、高さガイド11は、軸支部11aとストッパ11sとで支持されているので、通常位置と同じ位置を維持する。つまり、高さガイド11は、通常位置(図11(a)参照)と、通路幅71mm位置(図11(c)参照)と、通路幅64mm位置(図11(d)参照)とにおいて、同じ姿勢となる。
【0038】
(可動カムと幅ガイドとの関係)
ところで、紙幣搬送通路部20は、紙幣搬送通路部20の両側部に設けられた向かい合う一対の幅ガイド50を備える。そして、一対の幅ガイド50同士の間隔及び紙幣搬送通路部20の通路幅Wは、駆動部60の駆動に応じて無段階で可変である。
【0039】
具体的には、幅ガイド50は、図13図16及び図17に示すように、左幅ガイド51と右幅ガイド52とを備える。左幅ガイド51と右幅ガイド52とは一部を除いて略対称形状であり、互いに横方向に平行移動できるようにするため、例えば、左幅ガイド51にはラック51gが横方向に沿って設けられ、右幅ガイド52にはラック52gがラック51gと向かい合うようにして横方向に沿って設けられている。なお、ラック51gとラック52gとの間には、例えば、ラック51gとラック52gとの間隔を維持したまま、摩擦抵抗の低い滑らかな相対移動を可能にするため、二つのピニオン(不図示)が配置されている。
【0040】
また、図12の(a)から(d)に示すように、左幅ガイド51には左幅規制部51wが設けられ、右幅ガイド52には右幅規制部52wが設けられている。そして、左幅規制部51w及び右幅規制部52wは、紙幣搬送通路部20の通路幅W(図12参照)を規定する。
左幅規制部51w及び右幅規制部52wの断面は、搬送方向と直交する形状が一律となっている。また、左幅規制部51w及び右幅規制部52wの断面は、図12の(a)から(d)で代表して示されるように、それぞれ、アルファベットのUの字を90度回転させて横に倒したような、一端が開口し他端が閉塞した形状となっている。そして、左幅規制部51w及び右幅規制部52wのそれぞれにおける一端の開口した部分は、内面が上下方向に向き合ってに略平行になっており、他端の閉塞した部分は、内面が上下方向に真っ直ぐになっている。左幅規制部51w及び右幅規制部52wは、それぞれの断面における一端の開口した部分が、幅方向(横方向)で向かい合うように配置されている。左幅規制部51w及び右幅規制部52wは、紙幣搬送通路部20の一部となっており、左幅規制部51wの内面と右幅規制部52wの内面とで紙幣Bをガイドして姿勢を維持するものである。左幅規制部51wの内面における左端から右幅規制部52wの内面における右端までの寸法が通路幅Wである。
【0041】
一対の幅ガイド50は、それぞれ、可動カム70のカム溝71に係合される左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pを有する。具体的には、左幅ガイド51及び右幅ガイド52は、それぞれ、可動カム70のカム溝71に係合される左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pを有する。左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pは、例えば、図13図16及び図17に示すような円柱状の突出体である。
【0042】
そして、可動カム70に対して、左幅ガイド51及び右幅ガイド52が係合している。よって、可動カム70が鉛直方向に平行移動すると、左幅ガイド51及び右幅ガイド52が近づいたり離れたりする方向に平行移動する。
以上の説明のように、一対の幅ガイド50と高さガイド11は、駆動部60により昇降運動する共通の可動カム70によって移動する。このように、単一の駆動部60の運動に応じた単一の部品である可動カム70による一方向の運動によって、運動方向の異なる二つの機能部である一対の幅ガイド50と高さガイド11の双方を移動させることができるので、駆動部60から各機能部までの運動の伝達機構を単純にでき、装置全体をコンパクトにできる。
【0043】
(通路センサ)
通路センサ80は、図2及び図6に示すように、紙幣搬送通路部20に沿って設けられる。通路センサ80は、同じ水平位置(横位置)にある一対の左通路センサ80L及び右通路センサ80Rを上流Uから下流Dに向けて並べて複数有する。
【0044】
具体的には、通路センサ80は、上流Uから順に、左通路センサ81L又は右通路センサ81R、左通路センサ82L又は右通路センサ82R、左通路センサ83L又は右通路センサ83R、を有する。最も下流Dにある左通路センサ83L又は右通路センサ83Rは、紙幣搬送通路部20の鉛直部23における紙幣搬送手段30から紙幣Bの規定長さの寸法分離れた位置に設けられる。なお、本実施形態において、通路センサ80は鉛直部23に設けられているが、横部21や湾曲部22に設けてもよい。
【0045】
これにより、制御装置は、同じ水平位置にある一対の左通路センサ80L及び右通路センサ80Rを同時に通過しない場合や、紙幣搬送手段30を一定時間駆動しても、最も下流Dにある左通路センサ83L又は右通路センサ83Rのいずれかが紙幣Bを検出しない場合等であれば、紙幣Bが正しい姿勢で搬送されなかったか紙幣Bが変形していて規定の紙幣ではないと判定できる。特に、制御装置は、紙幣搬送通路部20に沿って複数の一対の左通路センサ80L及び右通路センサ80Rを設けた場合において、全ての複数の一対の左通路センサ80L及び右通路センサ80Rによる検出結果を用いて判定できる。この場合、制御装置は、紙幣Bが上流U側にある早い段階で紙幣Bの詰まりを検出でき、規定外の紙幣Bを排出するタイミングを早められる。
【0046】
(作用)
次に、紙幣挿入部10に紙幣Bが挿入された際の紙幣処理装置100の作用について説明する。なお、ここでは、中国の人民元が流通している地域で使用することを想定して、紙幣幅を63mmから77mmの範囲で設定する場合について説明する。
(1)まず、紙幣処理装置100の初期状態は通常状態となっており、通路幅Wは、最も大きい状態(図12(a)参照)であり、挿入口10aは狭い状態(図11(a)参照)となっている。
紙幣Bが挿入口10aに挿入されると、紙幣Bが並べられた複数の光学センサによる複数の光路のうちの一部が遮られ、一部の光学センサは、光路が遮られたことを検知する。
(2)制御装置(不図示)は、検知した光学センサの数や配置に基づいて、紙幣Bの紙幣幅又は紙幣幅に対応するパラメータを演算する。
(3)制御装置は、演算された紙幣Bの紙幣幅に基づき、駆動部60の電動モータ61の回転位置(回転角)を制御することにより、可動カム70を昇降させて、一対の幅ガイド50同士の間隔、すなわち、紙幣搬送通路部20の通路幅Wを調節する。
(4)この際、制御装置は、紙幣Bの紙幣幅又は紙幣幅に対応するパラメータの演算の結果、紙幣Bの紙幣幅があらかじめ設定された範囲内のものであれば、紙幣搬送手段30を駆動して紙幣Bを紙幣搬送通路部20に沿って搬送し、演算の結果、紙幣Bの紙幣幅があらかじめ設定された範囲内のものでなければ、紙幣搬送手段30を駆動しない。
そして、紙幣Bの紙幣幅をあらかじめ63mmから77mmの範囲で設定しているので、制御装置は、紙幣Bが77mmの紙幣幅を有する100元札であれば、紙幣搬送手段30を駆動し、通路幅Wが紙幣幅に約1mm程度の余裕を加えた78mmとなるように、幅ガイド50の位置を初期状態(通常状態)に維持する(図12(a)参照))。紙幣Bが70mmの紙幣幅を有する50元札、20元札又は10元札であれば、紙幣搬送手段30を駆動し、通路幅Wが紙幣幅に約1mm程度の余裕を加えた71mmとなるように、幅ガイド50の位置を制御する(図12(c)参照))。同様に、紙幣Bが63mmの紙幣幅を有する5元札又は1元札であれば、紙幣搬送手段30を駆動し、通路幅Wが紙幣幅に約1mm程度の余裕を加えた64mmとなるように、幅ガイド50の位置を制御する(図12(d)参照))。挿入された紙幣Bが63mm未満の紙幣幅を有する5角札や1角札である場合や、挿入された紙片がカード類であれば、紙幣搬送手段30を駆動せず、幅ガイド50を制御しない。
このように、挿入した紙幣Bの紙幣幅に応じて通路幅Wを調節するので、紙幣処理装置100は、紙幣Bを紙幣搬送通路部20に沿って搬送する際に、紙幣Bを紙幣搬送通路部20内で搬送方向に対して斜めに傾いたりすることなく、正しい姿勢に維持したままで、紙幣搬送通路部20の下流Dに搬送し、紙幣収納部40に収納できる。
(5)ここで、挿入した紙幣Bが、しわ、折り目、水濡れ、劣化等によって変形している場合、制御装置は、紙幣搬送通路部20に沿って設けられた通路センサ80(図2及び図6参照)による検出結果に基づいて、その紙幣Bが規定の紙幣ではないと判定する。例えば、制御装置は、挿入した紙幣Bが、同じ水平位置にある一対の左通路センサ80L及び右通路センサ80Rを同時に通過しない場合や、紙幣搬送手段30を一定時間駆動しても、最も下流Dにある左通路センサ83L又は右通路センサ83Rのいずれかが紙幣Bを検出しない場合等であれば、紙幣Bが正しい姿勢で搬送されなかったか、通常の位置まで搬送されなかったものとして、挿入された紙幣Bが規定の紙幣ではないと判定する。
(6)制御装置は、挿入された紙幣Bが規定の紙幣ではないと判定すると、挿入された紙幣Bを、下流Dから上流U方向へ搬出するように紙幣搬送手段30を駆動する。
(7)この際、制御装置は、電動モータ61を駆動して、可動カム70を通常位置から挿入口拡大位置まで上昇させる。すると、可動カム70は、高さガイド11を通常位置から挿入口拡大位置まで吊り上げる。すなわち、挿入口10aが通常状態から挿入口拡大状態になる(図11(b)参照)。これにより、通常状態では狭くなっている挿入口10aが拡大するので、変形した紙幣Bの搬出がし易くなる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る紙幣処理装置100は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変化が可能である。
【0048】
本発明の紙幣処理装置100によれば、昇降運動する可動カム70を有する駆動部60と、上流Uに紙幣挿入部10を有し、下流Dに紙幣Bを積み重ねて収納する紙幣収納部40を有する紙幣搬送通路部20と、紙幣Bを紙幣搬送通路部20に沿って搬送する紙幣搬送手段30と、を備え、紙幣挿入部10は、可動カム70の昇降運動に応じて鉛直方向に往復運動自在な高さガイド11を有するので、変形した紙幣Bを返却し易い。
【0049】
本発明の紙幣処理装置100によれば、紙幣搬送通路部20は、紙幣搬送通路部20の両側部に設けられた向かい合う一対の幅ガイド50を備え、一対の幅ガイド50同士の間隔は、駆動部60の運動に応じて無段階で可変であるので、使用される紙幣Bの紙幣幅が所定の範囲内であれは、紙幣Bの種類によって異なる紙幣幅に応じて、きめ細かく一対の幅ガイド50同士の間隔を調節でき、挿入された紙幣Bを正しい姿勢で搬送できる。
【0050】
本発明の紙幣処理装置100によれば、駆動部60の運動に応じて昇降運動する可動カム70を備え、高さガイド11は、可動カム70の昇降運動に応じて鉛直方向に往復運動するので、駆動部60の運動から変換された可動カム70の運動と同様の運動を、高さガイド11にさせることができ、駆動部60の運動、すなわち、電動モータ61の回転位置(回転角)を制御するだけで、高さガイド11の運動を簡単に制御できる。
【0051】
本発明の紙幣処理装置100によれば、可動カム70は、少なくとも斜溝70Sと縦溝70Lとが連続して設けられたカム溝71と、可動カム係合部74と、を有し、一対の幅ガイド50は、それぞれ、カム溝71に係合される左幅ガイド係合部51p及び右幅ガイド係合部52pを有し、高さガイド11は、可動カム係合部74に係合される高さガイド係合部11pを有するので、可動カム70を平行移動させて昇降させるだけで、高さガイド11を鉛直方向に往復運動させたり、幅ガイド50を横方向に運動させたりできる。すなわち、高さガイド11と幅ガイド50とが可動カム70を共用し、高さガイド11の運動と幅ガイド50の運動を、単一の可動カム70の運動で兼ねることができる。
【0052】
本発明の紙幣処理装置100によれば、カム溝71は、左右対称形状であるので、可動カム70を昇降させるだけで、左幅ガイド51及び右幅ガイド52を左右対称に運動させることができる。
【0053】
本発明の紙幣処理装置100によれば、駆動部60は、出力軸61aを有する電動モータ61と、出力軸61aの回転に連動するウォーム軸62と、ウォーム軸62の回転に連動するウォームホイール63と、を有し、可動カム70は、ウォームホイール63の回転に連動して昇降運動するので、ウォーム軸62とウォームホイール63との摩擦抵抗の一方向性により、駆動部60を平歯車の組み合わせ等によって構成するものに比べて、可動カム70が移動し難い。したがって、高さガイド11及び幅ガイド50は移動し難い。よって、紙幣Bの引き抜き等の不正行為を抑止できる。
【0054】
本発明の紙幣処理装置100によれば、一対の幅ガイド50と高さガイド11は、駆動部60により昇降運動する共通の可動カム70によって移動するので、単一の駆動部60の運動に応じた単一の部品である可動カム70による一方向の運動によって、運動方向の異なる二つの機能部である一対の幅ガイド50と高さガイド11の双方を移動させることができ、駆動部60から各機能部までの運動の伝達機構を単純になり、装置全体をコンパクトにできる。
【符号の説明】
【0055】
1 ケース
10 紙幣挿入部
10a 挿入口
11 高さガイド
11a 軸支部
11p 高さガイド係合部
11s ストッパ
12 ガイド
12r リブ
20 紙幣搬送通路部
21 横部
22 湾曲部
23 鉛直部
30 紙幣搬送手段
40 紙幣収納部
50 幅ガイド
51 左幅ガイド
51g ラック
51p 左幅ガイド係合部
51w 左幅規制部
52 右幅ガイド
52g ラック
52p 右幅ガイド係合部
52w 右幅規制部
60 駆動部
61 電動モータ
61a 出力軸
62 ウォーム軸
63 ウォームホイール
63p ホイール係合部
70 可動カム
70L 縦溝
70S 斜溝
71 カム溝
72 カム係合溝
73 ガイド溝
74 可動カム係合部
74a 膨出部
74b 凹部
74c 突出部
80 通路センサ
80L 左通路センサ
80R 右通路センサ
81L 左通路センサ
81R 右通路センサ
82L 左通路センサ
82R 右通路センサ
83L 左通路センサ
83R 右通路センサ
100 紙幣処理装置
B 紙幣
D 下流
U 上流
W 通路幅
α 寸法
β 寸法
θ 所定角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14
図15
図16
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図18