特許第6961879号(P6961879)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6961879変異体イソクエン酸デヒドロゲナーゼを包含する腫瘍の処置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961879
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】変異体イソクエン酸デヒドロゲナーゼを包含する腫瘍の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20211025BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211025BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20211025BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20211025BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20211025BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   A61K31/47
   A61P35/00
   A61P35/02
   C12Q1/68
   G01N33/50 P
   G01N33/574 A
【請求項の数】9
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-534683(P2018-534683)
(86)(22)【出願日】2016年12月29日
(65)【公表番号】特表2019-506380(P2019-506380A)
(43)【公表日】2019年3月7日
(86)【国際出願番号】US2016069161
(87)【国際公開番号】WO2017117372
(87)【国際公開日】20170706
【審査請求日】2019年12月17日
(31)【優先権主張番号】62/273,135
(32)【優先日】2015年12月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521268613
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ ソシエテ・パール・アクシオンス・サンプリフィエ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】シ,ヤガン
(72)【発明者】
【氏名】キーナン,マリー・シー
【審査官】 吉田 知美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/169944(WO,A1)
【文献】 特表2013−513613(JP,A)
【文献】 特表2004−536122(JP,A)
【文献】 J. Clin. Exp. Hematop. (2014), 54 (1), p.67-73
【文献】 Leukemia (2008), 22, p.635-638
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 45/00
A61P 35/00
A61K 31/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異体IDHがんの処置に使用するための医薬組成物であって、ブレキナルを含変異体IDHは:
(a)IDH1タンパク質若しくはIDH1遺伝子;又は
(b)IDH2タンパク質若しくはIDH2遺伝子、
の変異である、前記医薬組成物。
【請求項2】
がんにおいて変異体IDH遺伝子又は変異体タンパク質の存在検出される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
腫瘍細胞の生存又は増殖を、前記腫瘍細胞をブレキナルと接触させることにより阻害することができるか否かを決定するための方法であって、前記腫瘍細胞において変異体IDH1若しくはIDH2遺伝子又は変異体IDH1若しくはIDH2タンパク質の存在を決定することを含み、前記変異体IDH1若しくはIDH2遺伝子又は変異体IDH1若しくはIDH2タンパク質の存在は、前記腫瘍細胞の生存又は増殖をブレキナルにより阻害できることを示す、前記方法。
【請求項4】
腫瘍細胞の特性決定方法であって、前記腫瘍細胞において変異体IDH1若しくはIDH2遺伝子又は変異体IDH1若しくはIDH2タンパク質の存在を決定することを含み、変異体IDH1若しくはIDH2遺伝子又は変異体IDH1若しくはIDH2タンパク質の存在は、前記腫瘍細胞の生存又は増殖をブレキナルにより阻害できることを示す、前記方法。
【請求項5】
変異体IDHが、IDH1タンパク質又はIDH1遺伝子の変異である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
該変異が、G97D、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gから成る群より選択されるアミノ酸置換である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
変異体IDHが、IDH2タンパク質又はIDH2遺伝子の変異である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項8】
該変異が、R140Q、R140W、R140L、R172K、及びR172Gから成る群より選択されるアミノ酸置換である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
変異体IDHがんが、神経膠腫、骨髄異形成症候群、骨髄増殖性腫瘍、急性骨髄性白血病、黒色腫、軟骨肉腫、及び血管免疫芽球性非ホジキンリンパ腫から選択される請求項1、2及び5〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年12月30日提出の米国特許出願第62/273135号の優先権を主張するものであり、本明細書にその全体を援用する。
本発明は、がん患者の処置方法及び診断方法を対象とする。より詳細には、本発明は、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬での処置が有効である患者の決定方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH)は、イソシトレートから2−オキソグルタレート(すなわちα−ケトグルタレート)への酸化的脱炭酸を触媒する。これらの酵素は2つの異なるサブクラスに属し、その一方は電子受容体としてNAD(+)を利用し、他方はNADP(+)を利用する。5つのイソクエン酸デヒドロゲナーゼが報告されている:3つはNAD(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼで、これはミトコンドリア基質に集中しており、2つはNADP(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼで、その一方はミトコンドリア性、他方は主に細胞質性である。各NADP(+)依存性アイソザイムはホモ2量体である。
【0003】
IDH1(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ1(NADP+)、細胞質性)は、IDH;IDP;IDCD;IDPC又はPICDとしても知られる。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、細胞質及びペルオキシソームに見いだされるNADP(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼである。それは、PTS−1ペルオキシソーム標的シグナル配列を含有する。ペルオキシソーム中のこの酵素の存在は、2,4−ジエノイル−CoAから3−エノイル−CoAへの変換のようなペルオキシソーム内還元のためのNADPHの再生における役割のほか、2−オキソグルタレートを消費するペルオキシソーム反応、すなわち、フィタン酸のα−ヒドロキシル化における役割を示唆している。細胞質酵素は、細胞質NADPH産生において重要な役割を果たす。ヒトIDH1遺伝子は、414アミノ酸のタンパク質をコードする。ヒトIDH1に関するヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれ遺伝子バンク登録NM_005896.2及びNP_005887.2として見いだすことができる。IDH1に関するヌクレオチド及びアミノ酸配列はまた、例えば、Nekrutenkoら、Mol.Biol.Evol.15:1674−1684(1998);Geisbrechtら、J.Biol.Chem.274:30527−30533(1999);Wiemannら、Genome Res.11:422−435(2001);The MGC Project Team、Genome Res.14:2121−2127(2004);Lubecら、UniProtKBに提出(2008年12月);Kullmannら、EMBL/GenBank/DDBJデータベースに提出(1996年1月);及びSjoeblomら、Science 314:268−274(2006)に記載されている。
【0004】
IDH2(イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(NADP+)、ミトコンドリア性)は、IDH;IDP;IDHM;IDPM;ICD−M;又はmNADP−IDHとしても知られる。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、ミトコンドリアに見いだされるNADP(+)依存性イソクエン酸デヒドロゲナーゼである。それは、中間代謝及びエネルギー産生において役割を果たす。このタンパク質は、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体と密接に関連又は相互作用することができる。ヒトIDH2遺伝子は、452アミノ酸のタンパク質をコードする。IDH2に関するヌクレオチド及びアミノ酸配列は、それぞれ遺伝子バンク登録NM_002168.2及びNP_002159.2として見いだすことができる。ヒトIDH2に関するヌクレオチド及びアミノ酸配列はまた、Huhら、EMBL/GenBank/DDBJデータベースに提出(1992年11月);及びThe MGC Project Team,Genome Res.14:2121−2127(2004)に記載されている。
【0005】
非変異型、例えば野生型のIDH1及びIDH2は、例えば正反応において、イソシトレートからα−ケトグルタレートへの酸化的脱炭酸と、これによるNAD(NADP)からNADH(NADPH)への還元を触媒する:
イソシトレート + NAD+ (NADP+) → α-KG + CO2 + NADH (NADPH) + H+
特定のがん細胞中に存在するIDH1及びIDH2の変異により、α−ケトグルタレートからR(−)−2−ヒドロキシグルタレート(2HG)へのNAPH依存性還元を触媒する、酵素の新規能力がもたらされることが発見されている。2HGの産生は、がんの形成及び進行に寄与すると考えられている(Dang,Lら、Nature 2009,462:739−44)。
【0006】
ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)は、ヒトにおいて16番染色体上のDHODH遺伝子によってコードされる酵素である。この遺伝子によってコードされるタンパク質は、de novoピリミジン生合成の4番目の酵素段階、すなわちユビキノンが介在するジヒドロオロテートからオロテートへの酸化を触媒する。このタンパク質は、ミトコンドリア内膜(IMM)の外表面上に位置するミトコンドリアタンパク質である。DHODHは、補因子の含量、オリゴマー状態、細胞内局在性、及び膜の関連性において多様であり得る。これらDHODH変異体の全体的な配列アラインメントは、2つのクラスのDHODH、すなわち細胞質クラス1及び膜結合クラス2を提供する。クラス1のDHODHでは塩基性システイン残基が酸化反応を触媒するが、クラス2ではセリンがこの触媒機能を果たす。構造的に、クラス1のDHODHは2つのサブクラスに分けることもでき、その一方はホモ2量体を形成し、フマル酸を電子受容体として用い、他方はヘテロ4量体を形成し、NAD+を電子受容体として用いる。この第2のサブクラスは、鉄−硫黄クラスター及びフラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)を含有する追加サブユニット(PyrK)を含有する。一方、クラス2のDHODHは、酸化に酵素Q/ユビキノンを利用する。高等真核生物では、このクラスのDHODHは、約30残基のカチオン性両親媒性ミトコンドリア標的配列及び疎水性膜貫通配列を含むN末端両方向性シグナルを含有する。標的配列は、おそらく、移入装置を採用することから、ミトコンドリアの内膜及び外膜を通過するΔΨによって推進される輸送に介在することまで、IMMへのこのタンパク質の局在性に関与するが、膜貫通配列は、IMMへのタンパク質の挿入に必須である。この配列は、短いループによって接続されている1対のα−ヘリックス、α1及びα2に隣接している。同時に、この対形態は、C末端におけるFMN結合キャビティとともに、ユビキノンの挿入部位として働くと示唆される疎水性ファネルを形成する。それら2つの末端ドメインは、伸長ループによって直接的に接続している。C末端ドメインは、2つのうち大きい方であり、8つのαヘリックスに囲まれた8つの平行なβストランドのコアを有する保存されたα/β−バレル構造に折り畳まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Mol.Biol.Evol.15:1674−1684(1998)
【非特許文献2】J.Biol.Chem.274:30527−30533(1999)
【非特許文献3】Genome Res.11:422−435(2001)
【非特許文献4】Genome Res.14:2121−2127(2004)
【非特許文献5】Science 314:268−274(2006)
【非特許文献6】Genome Res.14:2121−2127(2004)
【非特許文献7】Nature 2009,462:739−44
【発明の概要】
【0008】
本発明は、被験者におけるIDH変異の存在を特徴とするがんの処置方法であって、被験者に治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0009】
本発明は、腫瘍細胞の生存又は増殖を、前記腫瘍細胞を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬と接触させることにより阻害することができるか否かを決定するための方法であって、前記腫瘍細胞においてIDHの状態を決定することを含み、IDH変異の存在は、前記腫瘍細胞の生存又は増殖を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬により阻害できることを示す、前記方法を提供する。
【0010】
他の観点では、本発明は、変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在を決定することを含む腫瘍細胞の特性決定方法であって、変異IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、前記腫瘍細胞の生存又は増殖を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬により阻害できることを示す、前記方法を提供する。
【0011】
他の観点では、本発明は、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬に対する腫瘍の反応性の決定方法であって、前記腫瘍の試料において変異IDH遺伝子又はタンパク質の存在を決定することを含む方法を提供するものであり、ここで、変異IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、前記腫瘍が代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬に対し反応性であることを示す。
【0012】
他の観点では、本発明は、腫瘍試料において変異IDH遺伝子又はタンパク質の存在を測定するための試薬を含むキットを提供するものであり、前記キットは、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与するための使用説明書をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1A及び図1Bは、DHODH阻害薬ブレキナルで3日間(図1A)及び7日間(図1B)処理した後のIHD野生型(丸)、変異体IDH1 R132H(四角)、及び変異体IDH2 R140Q(三角)TF1細胞の増殖の線グラフを示す。ブレキナルは、変異体IDH1(R132H)及び変異体IDH2(R140Q)細胞株を、それぞれ1.3μM及び1.6μMのIC50で阻害した。
図2A図2Aは、ブレキナルで処理したTF1細胞において、ATP倍率変化(0日目に対する3日目)として表される代謝活性の低下が、変異体IDH1及び変異体IDH2細胞にウリジンを8μMの濃度で3日間添加することにより改善したことを例示する。
図2B図2Bは、mIDH1及びmIDH2細胞において、1000μMの濃度のウリジンにより代謝活性の低下が改善したことを例示する。
図3図3は、メトトレキサートで処理したTF1細胞において、ATP倍率変化(0日目に対する3日目)として表される代謝活性の低下を例示する。代謝活性は、mIDH1及びmIDH2 TF1細胞にフォリン酸を3日間添加することにより改善した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
変異体IDH1又は変異体IDH2を組み込んだ赤白血病TF1細胞株の代謝プロファイリングは、プリン及びピリミジン中間体のレベルが約5分の1に低下したことを示し、変異体IDH1又は変異体IDH2が、代謝拮抗薬化合物及びDHODH阻害薬による阻害に対し予想外の感受性を示すという発見につながった。この観察結果は、腫瘍増殖に対する代謝拮抗薬化合物及びDHODH阻害薬の効果を予測するための有益な新規診断方法の基礎となっており、患者に最も適した処置の選択を助ける追加的ツールを腫瘍学者にもたらしている。
【0015】
したがって、本発明は、被験者における変異体IDHがんの処置方法であって、被験者に治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与することを含む方法を提供する。他の観点では、本発明は、被験者における変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在を特徴とするがんの処置方法であって、被験者に治療的有効量の代謝拮抗薬化合物又はDHODH阻害薬を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0016】
本発明の他の観点では、がん細胞の生存又は増殖を、前記がん細胞を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬と接触させることにより阻害することができるか否かを決定するための方法であって、前記腫瘍細胞において変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在を決定することを含み、変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、前記がん細胞の生存又は増殖を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬により阻害できることを示す、前記方法を提供する。本発明の他の観点では、がん細胞の特性決定方法であって、前記がん細胞中の変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在を決定することを含み、変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、前記がん細胞の生存又は増殖を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬により阻害できることを示す、前記方法を提供する。
【0017】
本発明の他の観点では、変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在を特徴とするがん細胞の増殖又は生存を阻害する方法であって、前記がん細胞を有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬と接触させることを含む、前記方法を提供する。他の観点では、本発明は、患者における腫瘍の診断方法であって、前記腫瘍試料において変異IDH遺伝子又はタンパク質の存在を決定し、前記患者に治療的に許容しうる量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与することを含む、前記方法を提供する。
【0018】
特定の態様では、がんは、変異体IDH1遺伝子又はタンパク質の存在を特徴とする。1つの態様では、変異体IDH1タンパク質は、アミノ酸残基G97における置換を含む。1つの態様では、変異体IDH1遺伝子は、アミノ酸残基G97における置換を含むタンパク質をコードする。1つの態様では、アミノ酸置換はG97Dである。1つの態様では、変異体IDH1タンパク質は、アミノ酸残基R132における置換を含む。1つの態様では、変異体IDH1遺伝子は、アミノ酸残基R132における置換を含むタンパク質をコードする。1つの態様では、アミノ酸置換は、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gから成る群より選択される。1つの態様では、アミノ酸置換はR132Hである。1つの態様では、アミノ酸置換はR132Cである。1つの態様では、アミノ酸置換はR132Lである。1つの態様では、アミノ酸置換はR132Vである。1つの態様では、アミノ酸置換はR132Sである。1つの態様では、アミノ酸置換はR132Gである。
【0019】
特定の態様では、がんは、変異体IDH2遺伝子又はタンパク質の存在を特徴とする。1つの態様では、変異体IDH2タンパク質は、アミノ酸残基R140における置換を含む。1つの態様では、変異体IDH2遺伝子は、アミノ酸残基R140における置換を含むタンパク質をコードする。1つの態様では、アミノ酸置換は、R140Q、R140W又はR140Lである。1つの態様では、アミノ酸置換はR140Qである。1つの態様では、アミノ酸置換はR140Wである。1つの態様では、アミノ酸置換はR140Lである。1つの態様では、変異体IDH2タンパク質は、アミノ酸残基R172における置換を含む。1つの態様では、変異体IDH1遺伝子は、アミノ酸残基R172における置換を含むタンパク質をコードする。1つの態様では、アミノ酸置換は、R172K又はR172Gから成る群より選択される。1つの態様では、アミノ酸置換はR172Kである。1つの態様では、アミノ酸置換はR172Gである。
【0020】
「代謝拮抗薬」は、正常な細胞代謝の一部である化学物質である代謝産物の使用を阻害する化学物質を意味する。そのような物質は、葉酸の使用を妨げる抗葉酸剤など、それらが妨げる代謝産物と構造が似ていることが多い。本発明では、代謝拮抗薬は、細胞増殖及び細胞分裂を停止させるなど、細胞に対し毒性作用を有し、したがって、がんの化学療法として有用である。特定の代謝拮抗薬としては、プリン類似体(アザチオプリン、6−メルカプトプリン、チオプリン、例えば、チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン、及びクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−アザウラシル)、ヌクレオシド類似体、改変核酸塩基を有するヌクレオシド、改変糖成分を有するヌクレオシド、ヌクレオチド類似体、及び抗葉酸剤(メトトレキサート及びペメトレキセドなど)が挙げられる。特定の態様では、代謝拮抗薬はジヒドロ葉酸レダクターゼ阻害薬である。特定の態様では、代謝拮抗薬はメトトレキサートである。本発明の方法の特定の態様では、代謝拮抗薬とDHODH阻害薬を同時に又は連続的に投与する。
【0021】
哺乳類の「がん」は、無制限増殖、不死性、転移能、急速な増殖、及び増殖速度、並びに特定の特徴的な形態学的状態など、がんに特有の特徴を有する細胞の存在を表す。本明細書中では、がん及び腫瘍という用語を互換的に用いる。がん細胞は充実性腫瘍の形態にあることが多いが、そのような細胞は動物内に単独で存在することができ、又は白血病細胞などの独立細胞として血流中を循環することができる。1つの態様では、がんはさらに、ジヒドロオロテートのレベル低下によって特徴付けられる。本発明の方法では、がん細胞は任意の組織タイプ、例えば、胆管がん、膵臓、肺、膀胱、乳房、食道、結腸、卵巣であり得る。他の態様では、がんは、膠芽腫(神経膠腫)、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、急性骨髄性白血病(AML)、肉腫、黒色腫、非小細胞性肺がん、軟骨肉腫、胆管がん、及び血管免疫芽球性リンパ腫から成る群より選択される。他の態様では、がんは、神経膠腫、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄増殖性腫瘍(MPN)、急性骨髄性白血病(AML)、黒色腫、軟骨肉腫、又は血管免疫芽球性非ホジキンリンパ腫(NHL)である。がんは、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬の投与により部分的又は完全に処置することができる任意のがんであることが好ましい。がんは、例えば、肺がん、非小細胞性肺(NSCL)がん、細気管支肺胞細胞肺がん、骨肉腫、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頚部のがん、皮膚又は眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部の癌、胃がん(stomach cancer)、胃がん(gastric cancer)、結腸がん、乳がん、子宮がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頚がん、膣がん、外陰がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌系のがん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、膀胱がん、腎臓又は尿管のがん、腎細胞がん、腎盂がん、中皮腫、肝細胞がん、胆管がん、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、中枢神経系(CNS)の腫瘍、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、多形性膠芽種、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣腫、髄芽腫、髄膜腫、扁平上皮がん、下垂体腺腫、及び上記がんのいずれかの不応性バージョン、又は上記がんの1以上の組み合わせであり得る。前がん性の病態又は病変としては、例えば、口腔白板症、光線性角化症(日光性角化症)、結腸又は直腸の前がん性ポリープ、胃上皮異形成、腺腫様異形成、遺伝性非ポリポーシス結腸がん症候群(HNPCC)、バレット食道、膀胱異形成、及び子宮頚部の前がん病態が挙げられる。
【0022】
本明細書において「処置する」という用語は、特記しない限り、患者において腫瘍増殖、腫瘍転移、又は他の発がん性細胞若しくは新生物細胞を、部分的又は完全に、克服するか、軽減するか、その進行を阻害するか、防止することを意味する。本明細書において「処置」という用語は、特記しない限り、処置の行為を表す。「がんの処置方法」は、動物においてがん細胞の数を低減若しくは削減させるか、がんの症状を緩和するように設計されている行為の手順又は経過を表す。
【0023】
「有効量」という用語は、組織、系、又は動物、例えばヒトの求められている生物学的又は医学的応答を生じさせる、代謝拮抗薬若しくはDHODH阻害薬化合物又は他の薬物との組み合わせの量を意味する。1つの態様では、該応答は、腫瘍容積又は経時的な腫瘍容積の増加率の抑制、例えば、ほとんど変化しない容積又は容積の減少である。他の態様では、有効量は、がん細胞数を減少させるか、がん細胞数の増加率を低下させる、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬の量である。他の態様では、有効量は、がん細胞の少なくとも一部の分化、例えば血液学的腫瘍の場合、未分化芽球細胞から機能的好中球への変換を引き起こすのに足る代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬の量である。治療的有効量は、がん細胞が完全に排除されるか、又は細胞数がゼロ若しくは検出不能になるまで減少するか、又はがんの症状が十分に緩和されることを必ずしも意味するわけではない。
【0024】
腫瘍又は腫瘍細胞中の変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、標準的技術を用いて、例えば、免疫ブロット分析において、オリゴヌクレオチドプローブを用い、抗体、例えば、腫瘍細胞株又は原発腫瘍検体から単離した変異体IDHタンパク質(野生型IDHタンパク質に対し)に特異的なポリクローナル抗血清を用いて、決定することができる。あるいは、変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、がん代謝物2−ヒドロキシグルタレート(2HG)のレベルを測定することにより決定することができる。2HGは、組織から直接的に、又は、例えば磁気共鳴分光法(MRS)により分光学的に、測定することができる。1つの態様では、被験者をMRSに付し、評価は、磁気共鳴によって決定される、2HG、例えばR−2HGに相関するか対応するピークの存在又は増加した量の評価を包含する。例えば、腫瘍細胞、腫瘍試料、又は腫瘍を有する疑いがある患者を、約2.5ppmのシグナルの存在及び/又は強度について分析して、2HGの存在及び/又は量を決定することができる。2HGのレベルの上昇は、腫瘍細胞又は腫瘍が変異体IDH遺伝子又はタンパク質を包含することを示している。
【0025】
「DHODH阻害薬」は、ジヒドロオロト酸からオロト酸への変換におけるDHODHの正常な酵素機能を阻害する化合物を意味する。あるいは、DHODH阻害薬は、DHODH遺伝子の転写又は翻訳を阻害する。特定の態様では、DHODH阻害薬は、例えばDHODH核酸(すなわちDNA又はmRNA)に結合して阻害することにより、DHODH遺伝子の発現又は産生活性を抑制するオリゴヌクレオチドである。特定の態様では、DHODH阻害薬は、オリゴヌクレオチド、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、shRNA、siRNA、microRNA、又はアプタマーである。1つの態様では、DHODH阻害薬は、DHODH酵素機能に結合して調整する小分子である。DHODH阻害薬の例としては、ブレキナル、ビドフルジムス(vidofludimus)、レフルノミド、及びテリフルノミドが挙げられる。特定の態様では、DHODH阻害薬はブレキナルである。1つの態様では、DHODH阻害薬はビドフルジムスである。1つの態様では、DHODH阻害薬はレフルノミドである。他の態様では、DHODH阻害薬はテリフルノミドである。他の態様では、DHODH阻害薬は、式:
【0026】
【化1】
【0027】
[Aは、芳香族又は非芳香族の5又は6員炭化水素環であって、1個以上の炭素原子は、S、O、N、NR、SO、及びSOから成る群より独立して選択されるX基によって置換されていてもよく;
Lは、単結合又はNHであり;
Dは、O、S、SO、NR、又はCHであり;
は、O、S又はNRであり;
は、O、S、又はNRであり;
は、独立して、H、ハロゲン、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、−COR”、−SOH、−OH、−CONRR”、−CR”O、−SO−NRR”、−NO、−SO−R”、−SO−R、−CN、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルカニルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリール、−NR”−CO−R’、−NR”−CO−R、−NR”−SO−R’、−O−CO−R、−O−CO−R、−O−CO−NRR”、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルカニルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ヒドロキシアルカニルアミノ、ヒドロキシアルケニルアミノ、ヒドロキシアルキニルアミノ、−SH、ヘテロアリール、アルカニル、アルケニル、又はアルキニルを表し;
は、独立して、H、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノアルカニル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、−OH、−SH、アルカニルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、ヒドロキシアルカニル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、アリール、又はヘテロアリールを表し;
R’は、独立して、H、−COR”、−CONR”R”’、−CR”O、−SONR”、−NR”−CO−ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、−NO、−NR”−SO−ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、−NR”−SO−アルカニル、−NR”−SO−アルケニル、−NR”−SO−アルキニル、−SO−アルカニル、−SO−アルケニル、−SO−アルキニル、−NR”−CO−アルカニル、−NR”−CO−アルケニル、−NR”−CO−アルキニル、−CN、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノアルカニル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アルカニルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、−OH、−SH、アルカニルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、ヒドロキシアルカニル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアルカニルアミノ、ヒドロキシアルケニルアミノ、ヒドロキシアルキニルアミノ、ハロゲン、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、アリール、アラルキル、又はヘテロアリールを表し;
R”は、独立して、水素、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシアルカニル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノアルカニル、アミノアルケニル、又はアミノアルキニルを表し;
R”’は、独立して、H又はアルカニルを表し;
は、H、又はOR、NHR、NRORであるか;あるいは、
は、Rに結合している窒素原子と一緒になって、5〜7員、好ましくは5又は6員ヘテロ環式環を形成し、ここで、Rは−[CHであり、Rは存在せず;
は、H、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、−O−アリール;−O−シクロアルキル、−O−ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アミノアルカニル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アルカニルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシルアルカニル、ヒドロキシルアルケニル、ヒドロキシルアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、ヘテロアリール、アルカニルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、−S−アリール;−S−シクロアルキル、−S−ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ハロアルカニル、ハロアルケニル、又はハロアルキニルであり;
は、H、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり;
は、H、OH、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、O−アリール、アルカニル、アルケニル、アルキニル、又はアリールであり;
は、H、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルカニルオキシアルカニル、アルカニルオキシアルケニル、アルカニルオキシアルキニル、アルケニルオキシアルカニル、アルケニルオキシアルケニル、アルケニルオキシアルキニル、アルキニルオキシアルカニル、アルキニルオキシアルケニル、アルキニルオキシアルキニル、アシルアルカニル、(アシルオキシ)アルカニル、(アシルオキシ)アルケニル、(アシルオキシ)アルキニルアシル、非対称(アシルオキシ)アルカニルジエステル、非対称(アシルオキシ)アルケニルジエステル、非対称(アシルオキシ)アルキニルジエステル、又はジアルカニルホスフェート、ジアルケニルホスフェート、若しくはジアルキニルホスフェートであり;
は、H、OH、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、−O−アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、−O−シクロアルキル、又は−O−ヘテロシクロアルキルであり;
は、H、アルカニル、アルケニル、又はアルキニルであり;
Eは、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、又はシクロアルキル基であるか、あるいは、
縮合2環式又は3環式環系であって、1つのフェニル環が、1つ若しくは2つの単環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環又は1つの2環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環に縮合しているか、2つのフェニル環が、単環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環に縮合しているものであり、ここで、単環式及び2環式シクロアルキル及びヘテロシクロアルキル環は本明細書中で定義したとおりであり、上記基はすべて、1以上の置換基R’によって置換されていてもよく;
Yは、H、ハロゲン、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、又はシクロアルキル基であるか、あるいは、
縮合2環式又は3環式環系であって、1つのフェニル環が、1つ若しくは2つの単環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環又は1つの2環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環に縮合しているか、2つのフェニル環が、単環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環に縮合しているものであり、ここで、上記基はすべて、1以上の置換基R’によって置換されていてもよく;あるいは、
Yは、
【0028】
【化2】
【0029】
であり、
mは0又は1であり;
nは0又は1であり;
pは0又は1であり;
qは0又は1であり;
rは0又は1であり;
sは0〜2であり;そして
tは0〜3である]
の化合物である。
【0030】
特定の態様では、DHODH阻害薬は:
【0031】
【化3-1】
【0032】
【化3-2】
【0033】
から成る群より選択される化合物である。
他の態様では、DHODH阻害薬は、式:
【0034】
【化4】
【0035】
の化合物又は医薬的に許容し得るその塩である
[式中、
は、ヒドロキシ又はアミノであり;
は、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロシクリル、又は−O−(CH1−2アリールであり;ここで、各場合の置換基は、1〜4個のRであり;
は、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アミノ、アミド、シアノ、カルボキシ、又はヒドロキシルであり;
は、ハロゲン又は−NHC(O)シクロアルキルであり;
nは、1〜4の整数である]。
【0036】
1つの態様では、化合物は:
2−(4’−(シクロプロパンカルボキサミド)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−(4’−(シクロプロパンカルボキサミド)−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボキサミド;
2−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−([1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボキサミド;
2−(3−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−(3−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボキサミド;
2−(4’−(シクロプロパンカルボキサミド)−3−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−(2’,3−ジフルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−(4’−(シクロプロパンカルボキサミド)−2’,3−ジフルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−(4’−(シクロプロパンカルボキサミド)−2’,3−ジフルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボキサミド;
2−(2’−(シクロプロパンカルボキサミド)−3−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−(2’−(シクロプロパンカルボキサミド)−3−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボキサミド;
2−(3’−(シクロプロパンカルボキサミド)−3−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−(3’−(シクロプロパンカルボキサミド)−3−フルオロ−[1,1’−ビフェニル]−4−イル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボキサミド;
2−(2−フルオロ−4−(2−オキソ−1,2,3,4−テトラヒドロキノリン−7−イル)フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸);
2−(4−(ベンジルオキシ)フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボキサミド;及び
2−(4−(6−オキソ−3,4,5,6−テトラヒドロ−1H−アゼピノ[5,4,3−cd]インドール−2−イル)フェニル)−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−7−カルボン酸;
から成る群より選択される。
【0037】
本発明の方法では、腫瘍細胞中の変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、当分野で公知の標準的バイオアッセイ手順、例えば、以下でより詳細に記載する、ELISA、RIA、免疫沈降法、免疫ブロット法、免疫蛍光顕微鏡検査法、RT−PCR、in situハイブリッド形成法、cDNAマイクロアレイなどを用いて評価することができる。
【0038】
生体試料中の変異体IDHタンパク質又は核酸の存在を検出するための代表的方法は、被験者から生体試料(例えば、腫瘍関連体液)を得て、該生体試料をポリペプチド又は核酸(例えば、mRNA、ゲノムDNA、又はcDNA)を検出することができる化合物又は作用物質と接触させることを包含する。したがって、本発明の検出方法は、例えばin vitro及びin vivoの生体試料では、mRNAタンパク質、cDNA、又はゲノムDNAの検出に用いることができる。例えば、mRNAを検出するためのin vitro技術としては、ノーザンハイブリッド形成法及びin situハイブリッド形成法が挙げられる。バイオマーカータンパク質を検出するためのin vitro技術としては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、及び免疫蛍光が挙げられる。ゲノムDNAを検出するためのin vitro技術としては、サザンハイブリッド形成法が挙げられる。mRNAを検出するためのin vivo技術としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ノーザンハイブリッド形成法、及びin situハイブリッド形成法が挙げられる。さらに、バイオマーカータンパク質を検出するためのin vivo技術としては、タンパク質又はそのフラグメントを対象とする標識抗体を被験者に導入することが挙げられる。例えば、抗体は、被験者内での存在及び位置を標準的画像化技術によって検出することができる放射性マーカーで標識することができる。
【0039】
そのような診断及び予測アッセイの一般的原理は、変異体IDH遺伝子及びプローブを含有し得る試料又は反応混合物を、適切な条件下、変異体IDH遺伝子及びプローブが相互作用して結合し、これにより、反応混合物中で除去及び/又は検出することができる複合体を形成することが可能になるのに十分な時間にわたり、調製することを包含する。これらのアッセイは、さまざまな方法で実施することができる。例えば、そのようなアッセイの実施方法の1つは、変異体IDH遺伝子若しくはそのフラグメント又はプローブを、基材ともよばれる固相支持体上に定着させ、固相上に定着した標的IDH遺伝子/プローブ複合体を反応終了時に検出することを包含する。そのような方法の1つの態様では、変異体IDH遺伝子の存在についてアッセイすることになっている被験者からの試料を、キャリヤー又は固相支持体上に定着させることができる。他の態様では、逆の状態が可能であり、プローブを固相に定着させることができ、被験者からの試料を、アッセイの非定着成分として反応させることができる。
【0040】
アッセイ成分を固相に定着させるための方法は数多く確立されている。これらとしては、限定されるものではないが、ビオチン及びストレプトアビジンの結合を介して固定される変異体IDH遺伝子若しくはそのフラグメント又はプローブ分子が挙げられる。そのようなビオチン化アッセイ成分は、当分野で公知の技術(例えば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、イリノイ州ロックフォード)を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製し、ストレプトアビジンをコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定することができる。特定の態様では、固定化アッセイ成分を有する表面は、あらかじめ調製して保管することができる。周知の支持体又はキャリヤーとしては、限定されるものではないが、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、及び磁鉄鉱が挙げられる。
【0041】
上記アプローチでアッセイを実施するために、非固定化成分を固相に加え、その上に第2の成分を定着させる。反応終了後、形成したあらゆる複合体が固相上に固定されたままになるような条件下で、複合体を形成していない成分を除去してもよい(例えば洗浄により)。固相に定着している変異体IDH遺伝子/プローブ複合体の検出は、本明細書中で概説するいくつかの方法で遂行することができる。1つの態様では、プローブが非定着アッセイ成分である場合、アッセイで検出し読み出すために、本明細書中で検討し、当業者に周知の検出可能な標識で、プローブを直接的又は間接的に標識することができる。変異体IDH遺伝子/プローブ複合体形成を、さらなる操作又はいずれかの成分(遺伝子又はプローブ)の標識を行うことなく、例えば、蛍光共鳴エネルギー移動(すなわちFRET、例えば、Lakowiczら、米国特許第5631169号;Stavrianopoulos,ら、米国特許第4868103号を参照)の技術を利用することにより、直接的に検出することも可能である。第1の「供与体」分子上のフルオロフォア標識は、適切な波長の入射光での励起によりその放出蛍光エネルギーが第2の「受容体」分子上の蛍光標識によって吸収され、この第2の分子が吸収エネルギーにより蛍光を発することができるように選択する。あるいは、「供与体」タンパク質分子は、単純にトリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを利用することができる。「受容体」分子の標識を「供与体」の標識と区別することができるように、異なる波長の光を発する標識を選択する。標識間のエネルギー移動の効率は、分子を隔てる距離に関連するので、分子間の空間的関係を評価することができる。分子間で結合が生じる状態では、アッセイにおける「受容体」分子標識の蛍光発光は最大になるはずである。FRET結合事象は、当分野で周知の標準的蛍光検出手段により(例えば蛍光光度計を用いて)好都合に測定することができる。
【0042】
他の態様では、プローブがバイオマーカーを認識する能力の決定は、リアルタイム生体分子間相互作用解析(BIA)(例えば、Sjolander,S.及びUrbaniczky,C.、1991、Anal.Chem.63:2338−2345、並びにSzaboら、1995、Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705を参照)のような技術を利用することにより、いずれかのアッセイ成分(プローブ又はIDH遺伝子)を標識することなく遂行することができる。本明細書において、「BIA」又は「表面プラズモン共鳴」は、いずれの反応体(例えばBIAコア)も標識することなく、生体特異的相互作用をリアルタイムで試験するための技術である。結合表面(結合事象を示す)での質量変化は、表面付近における光の屈折率の変化をもたらして(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)、生体分子間のリアルタイムの反応の指標として用いることができる検出可能なシグナルを生じさせる。
【0043】
あるいは、他の態様では、類似の診断及び予測アッセイを、変異体IDH遺伝子及びプローブを液相の溶質として用いて実施することができる。そのようなアッセイでは、複合体化したバイオマーカー及びプローブを、いくつかの標準的技術のいずれか、例えば、限定されるものではないが、分画遠心分離、クロマトグラフィー、電気泳動、及び免疫沈降により、非複合体化成分から分離する。分画遠心分離では、変異体IDH遺伝子/プローブ複合体を、それらの異なるサイズ及び密度に基づく複合体の異なる沈降平衡によって、一連の遠心分離段階を介して非複合体化アッセイ成分から分離することができる(例えば、Rivas,G.及びMinton,A.P.、1993、Trends Biochem Sci.18(8):284−7を参照)。標準的クロマトグラフィー技術も、非複合体化分子から複合体化分子を分離するのに利用することができる。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーでは、サイズに基づき、カラム形態中の適切なゲル濾過樹脂を利用することによって分子が分離され、例えば、比較的大きな複合体を、比較的小さな非複合体化成分から分離することができる。同様に、非複合体化成分と比べて相対的に異なる変異体IDH遺伝子/プローブ複合体の電荷特性を利用して、例えばイオン交換クロマトグラフィー樹脂を用いることにより、複合体と非複合体化成分を識別することができる。そのような樹脂及びクロマトグラフィー技術は当業者に周知である(例えば、Heegaard,N.H.、1998、J.Mol.Recognit.Winter 11(1−6):141−8;Hage,D.S.及びTweed,S.A.、J.Chromatogr B Biomed Sci Appl、1997、Oct 10;699(1−2):499−525を参照)。ゲル電気泳動も、複合体化アッセイ成分を非結合成分から分離するために採用することができる(例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、ニューヨーク、1987−1999を参照)。この技術では、タンパク質又は核酸複合体が、例えばサイズ又は電荷に基づいて分離される。電気泳動プロセス中に結合相互作用を維持するために、非変性ゲルマトリックス材料のほか、還元剤が存在しない条件が典型的には好ましい。特定のアッセイ及びその成分に適切な条件は、当業者に周知であろう。
【0044】
特定の態様では、変異体IDH mRNAのレベルを、当分野で公知の方法を用いて、生体試料のin situ及びin vitro形態の両方により決定することができる。「生体試料」という用語は、被験者から単離した組織、細胞、生体液、及びその単離物のほか、被験者内に存在する組織、細胞、及び体液を包含することを意図している。多くの発現検出法では単離RNAが用いられる。in vitro法の場合、mRNAの単離に不利な選択を行わない任意のRNA単離技術を利用して、腫瘍細胞からRNAを精製することができる(例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley&Sons、ニューヨーク、1987−1999を参照)。加えて、多数の組織試料を、当業者に周知の技術、例えばChomczynskiの1段階RNA単離プロセス(1989、米国特許第4843155号)などを用いて、容易に処理することができる。単離したmRNAは、ハイブリッド形成又は増幅アッセイ、例えば、限定されるものではないが、サザン若しくはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応分析、及びプローブアレイに用いることができる。mRNAを検出するための特定の診断方法の1つは、単離したmRNAを、検出される遺伝子によってコードされているmRNAとハイブリッド形成することができる核酸分子(プローブ)と接触させることを包含する。核酸プローブは、例えば、完全長cDNA又はその一部、例えば、長さが少なくとも7、15、30、50、100、250、又は500ヌクレオチドで、ストリンジェントな条件下で、IDHをコードするmRNA又はゲノムDNAと特異的にハイブリッド形成するのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。本発明の診断アッセイでの使用に適した他のプローブは、本明細書中に記載されている。mRNAとプローブとのハイブリッド形成は、変異体IDH遺伝子が発現していることを示す。1つの形態では、例えば、単離mRNAをアガロースゲルに泳動し、mRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜に転写することにより、mRNAを固体表面上に固定してプローブと接触させる。他の形態では、プローブを固体表面上に固定し、例えばAffymetrix gene chipアレイにおいて、mRNAをプローブと接触させる。当業者であれば、公知のmRNA検出方法を容易に適合させて、IDH遺伝子にコードされるmRNAのレベルの検出に使用することができる。
【0045】
試料中の変異体IDH mRNAを検出するための他の方法は、例えば、RT−PCR(実験の態様はMullis、1987、米国特許第4683202号に記載されている)、リガーゼ連鎖反応(Barany、1991、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:189−193)、自律配列複製(Guatelliら、1990、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878)、転写増幅システム(Kwohら、1989、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177)、Qβレプリカーゼ(Lizardiら、1988、Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardiら、米国特許第5854033号)、又は任意の他の核酸増幅法による核酸増幅プロセスと、これに続く、当業者に周知の技術を用いた増幅分子の検出を包含する。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に少数しか存在しない場合の核酸分子の検出に特に有用である。本明細書において、増幅プライマーは、遺伝子の5’又は3’領域にアニールすることができ(それぞれプラス及びマイナス鎖、又はその逆)、その間に短い領域を含有する、1対の核酸分子であると定義される。一般に、増幅プライマーは長さが約10〜30ヌクレオチドであり、長さが約50〜200ヌクレオチドの領域をフランキングする。適した条件下で適した試薬を用いると、そのようなプライマーにより、プライマーによってフランキングされたヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅が可能になる。
【0046】
in situ法の場合、検出前に腫瘍細胞からmRNAを単離する必要はない。そのような方法では、細胞又は組織試料を、公知の組織学的方法を用いて調製/処理する。その後、試料を支持体、典型的にはガラススライド上に固定した後、バイオマーカーをコードするmRNAとハイブリッド形成することができるプローブと接触させる。
【0047】
本発明の他の態様では、変異体IDHタンパク質を検出する。変異体IDHタンパク質の検出に好ましい作用物質は、IDHタンパク質又はそのフラグメントに結合することができる抗体、好ましくは、検出可能な標識を有する抗体である。抗体はポリクローナルであり得、より好ましくはモノクローナルである。無傷抗体又はそのフラグメント若しくは誘導体(例えばFab又はF(ab’))を用いることができる。プローブ又は抗体に関して、「標識した」という用語は、検出可能な物質をプローブ又は抗体にカップリング(すなわち物理的に連結)させることによるプローブ又は抗体の直接的標識のほか、直接標識されている他の試薬との反応性によるプローブ又は抗体の間接的標識を包含することを意図する。間接的標識の例としては、蛍光標識2次抗体を用いた1次抗体の検出、及び、蛍光標識ストレプトアビジンでの検出を可能にするためのビオチンによるDNAプローブの末端標識が挙げられる。
【0048】
変異体IDHタンパク質は、当業者に周知の技術を用いて腫瘍細胞から単離することができる。採用されるタンパク質単離方法は、例えば、Harlow及びLane(Harlow及びLane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー)に記載されているような方法であり得る。所定の抗体と結合するタンパク質が試料に含有されているか否かを決定するために、さまざまな形態を採用することができる。そのような形態の例としては、限定されるものではないが、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ウェスタンブロット分析、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)が挙げられる。当業者であれば、公知のタンパク質/抗体の検出法を容易に適合させて、腫瘍細胞が本発明のバイオマーカーを発現するか否かの決定に使用することができる。1つの形態では、抗体又は抗体のフラグメント若しくは誘導体をウェスタンブロット又は免疫蛍光検査などの方法に用いて、発現した変異体IDHタンパク質を検出することができる。そのような使用では、一般に、抗体又は変異体IDHタンパク質のいずれかを固体支持体上に固定することが好ましい。適した固相支持体又はキャリヤーとしては、抗原又は抗体を結合することができる任意の支持体が挙げられる。周知の支持体又はキャリヤーとしては、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然及び変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑れい岩、及び磁鉄鉱が挙げられる。当業者でれば、抗体又は抗原を結合するのに適したキャリヤーが他にも多く存在することを理解し、そのような支持体を本発明で使用するために適合させることができるであろう。例えば、腫瘍細胞から単離した変異体IDHタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動に付し、ニトロセルロースなどの固相支持体上に固定することができる。その後、支持体を適した緩衝液で洗浄した後、検出可能に標識した抗体で処理することができる。その後、緩衝液で固相支持体の2回目の洗浄を行って、結合していない抗体を除去することができる。その後、固体支持体上の結合標識の量を、従来の手段により検出することができる。
【0049】
ELISAアッセイの場合、特異的結合対は免疫性又は非免疫性タイプであり得る。免疫性の特異的結合対の例は、抗原−抗体系又はハプテン/抗ハプテン系である。フルオレセイン/抗フルオレセイン、ジニトロフェニル/抗ジニトロフェニル、ビオチン/抗ビオチン、ペプチド/抗ペプチドなどを挙げることができる。特異的結合対の抗体メンバーは、当業者に周知の慣例的方法により生産することができる。そのような方法は、特異的結合対の抗原メンバーで動物を免疫することを包含する。特異的結合対の抗原メンバーが免疫原性でない、例えばハプテンである場合、それをキャリヤータンパク質に共有結合的にカップリングさせて免疫原性にすることができる。非免疫性結合対としては、2つの成分が互いに天然の親和性を共有するが、抗体ではない系が挙げられる。代表的な非免疫対は、ビオチン−ストレプトアビジン、内因子−ビタミンB12、葉酸−葉酸結合タンパク質などである。
【0050】
抗体を特異的結合対のメンバーで共有結合的に標識するために、さまざまな方法が利用可能である。方法は、特異的結合対のメンバーの性質、望ましい連結のタイプ、及びさまざまなコンジュゲーション化学に対する抗体の耐容性に基づき選択する。ビオチンは、市販の活性誘導体を利用することにより、抗体に共有結合的にカップリングさせることができる。これらのいくつかは、タンパク質上のアミン基に結合するビオチン−N−ヒドロキシ−スクシンイミド;カルボジイミドカップリングにより炭水化物部分、アルデヒド及びカルボキシル基に結合するビオチンヒドラジド;並びに、スルフヒドリル基に結合するビオチンマレイミド及びヨードアセチルビオチンである。フルオレセインは、フルオレセインイソチオシアネートを用いてタンパク質アミン基とカップリングさせることができる。ジニトロフェニル基は、2,4−ジニトロベンゼンスルフェート又は2,4−ジニトロフルオロベンゼンを用いてタンパク質アミン基とカップリングさせることができる。他の標準的コンジュゲーション法、例えば、ジアルデヒド、カルボジイミドカップリング、ホモ官能性架橋、及びヘテロ2官能性架橋を採用して、モノクローナル抗体を特異的結合対のメンバーとカップリングさせることができる。カルボジイミドカップリングは、1つの物質上のカルボキシル基を他の物質上のアミン基とカップリングさせるのに有効な方法である。カルボジイミドカップリングは、市販の試薬1−エチル−3−(ジメチル−アミノプロピル)−カルボジイミド(EDAC)を用いることにより促進することができる。
【0051】
2官能性イミドエステル及び2官能性N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含むホモ2官能性架橋剤は市販されており、1つの物質上のアミン基を他の物質上のアミン基とカップリングさせるために採用される。ヘテロ2官能性架橋剤は、異なる官能基を持つ試薬である。最も一般的な市販のヘテロ2官能性架橋剤は、官能基の1つとしてアミン反応性N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、及び第2の官能基としてスルフヒドリル反応性基を有する。最も一般的なスルフヒドリル反応性基は、マレイミド、ピリジルジスルフィド、及び活性ハロゲンである。官能基のうち1つは、照射によりさまざまな基と反応する光活性アリールニトレンであることができる。
【0052】
検出可能に標識した抗体、又は検出可能に標識した特異的結合対のメンバーは、放射性同位体、酵素、蛍光発生性、化学発光性、又は電気化学的材料であり得るレポーターとカップリングさせることにより調製される。2つの一般に用いられている放射性同位体は、125I及びHである。標準的な放射性同位体による標識手順としては、125Iの場合はクロラミンT、ラクトペルオキシダーゼ、及びボルトン・ハンター法、並びにHの場合は還元的メチル化が挙げられる。「検出可能に標識した」という用語は、標識固有の酵素活性によるか、容易に検出することができる他の成分の標識への結合によって、容易に検出可能に標識した分子を表す。本発明における使用に適した酵素としては、限定されるものではないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ホタル及びレニラを含むルシフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、ウレアーゼ、グリーン蛍光タンパク質(GFP)、及びリゾチームが挙げられる。酵素標識は、抗体と特異的結合対のメンバーとのカップリングについて上記したようなジアルデヒド、カルボジイミドカップリング、ホモ2官能性架橋剤、及びヘテロ2官能性架橋剤を用いることにより促進される。
【0053】
選択する標識方法は、標識される酵素及び材料上の利用可能な官能基、並びにコンジュゲーション条件に対する両者の耐容性に依存する。本発明で用いられる標識方法は、限定されるものではないが、現在採用されている任意の従来法、例えば、Engvall及びPearlmann、Immunochemistry 8、871(1971);Avrameas及びTernynck、Immunochemistry 8、1175(1975);Ishikawaら、J.Immunoassay 4(3):209−327(1983);並びにJablonski、Anal.Biochem.148:199(1985)に記載されている方法の1つであり得る。標識は、スペーサー又は特異的結合対の他のメンバーを用いるような間接的方法により遂行することができる。これの1例は、非標識化ストレプトアビジン及びビオチン化酵素を有するビオチン化抗体の検出であり、ストレプトアビジン及びビオチン化酵素は逐次的又は同時に加えられる。したがって、本発明によれば、検出に用いられる抗体は、レポーターで直接的に、又は特異的結合対の第1のメンバーで間接的に、検出可能に標識することができる。抗体を特異的結合対の第1のメンバーとカップリングさせる場合、抗体−特異的結合対の第1のメンバー複合体を、上記のように標識したか標識していない結合対の第2のメンバーと反応させることにより、検出を行うことができる。さらに、非標識検出抗体は、非標識抗体を、非標識抗体に特異的な標識抗体と反応させることにより、検出することができる。この場合、先に用いた「検出可能に標識した」は、非標識抗体に特異的な抗体を結合させることができるエピトープを含有することを意味するとみなす。そのような抗−抗体は、上記アプローチのいずれかを用いて直接的又は間接的に標識することができる。例えば、抗−抗体は、上記ストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ系との反応により検出されるビオチンとカップリングさせることができる。本発明の1つの態様では、ビオチンを利用する。同様に、ビオチン化抗体をストレプトアビジン−西洋ワサビペルオキシダーゼ複合体と反応させる。オルトフェニレンジアミン、4−クロロ−ナフトール、テトラメチルベンジジン(TMB)、ABTS、BTS、又はASAを用いると、発色検出を行うことができる。
【0054】
本発明を実施するための免疫学的アッセイの1つの形態では、捕捉試薬が従来技術を用いて支持体の表面上に固定されているフォワードサンドイッチアッセイが用いられる。アッセイに用いられる適した支持体としては、ポリプロピレン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、例えばアミノ化若しくはカルボキシル化ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ガラスビーズ、アガロース、又はニトロセルロースなどの合成ポリマー支持体が挙げられる。
【0055】
他の観点では、本発明は、腫瘍試料において変異IDH遺伝子又はタンパク質の存在を測定するための試薬を含むキットを提供するものであり、前記キットはさらに、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与するための使用説明書を含む。そのようなキットを用いると、被験者が、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬による阻害の影響を受けやすい腫瘍を患っているか又はそのような腫瘍の発症リスクが高いかを決定することができる。例えば、キットは、生体試料中の変異体IDHタンパク質又は核酸を検出することができる標識化合物又は作用物質(例えば、タンパク質若しくはそのフラグメントに結合する抗体、又はタンパク質をコードするDNA若しくはmRNAと結合するオリゴヌクレオチドプローブ)を含むことができる。キットは、該キットを用いて得られる結果を解釈するための使用説明書も包含することができる。抗体に基づくキットの場合、キットは、例えば、(1)変異体IDHタンパク質と結合する第1の抗体(例えば、固体支持体に付着しているもの);及び所望により(2)タンパク質又は第1の抗体のいずれかに結合し、検出可能な標識にコンジュゲートする、第2の異なる抗体;を含むことができる。
【0056】
オリゴヌクレオチドに基づくキットの場合、キットは、例えば、(1)オリゴヌクレオチド、例えば、IDHタンパク質をコードする核酸配列とハイブリダイズする、検出可能に標識したオリゴヌクレオチド、又は(2)IDH核酸の増幅に有用な1対のプライマー、を含むことができる。キットは、例えば、緩衝剤、防腐剤、又はタンパク質安定剤を含むこともできる。キットは、検出可能な標識(例えば酵素又は基材)の検出に必要な成分をさらに含むことができる。キットは、アッセイして試験試料と比較することができる対照試料又は一連の対照試料を含有することもできる。キットの各成分は個々の容器内に入っていることができ、いくつかの容器のすべてが、本キットを用いて実施されるアッセイの結果を解釈するための使用説明書と一緒に、単一パッケージ内にあることができる。
【0057】
本発明はさらに、患者における腫瘍の処置方法であって、IDHの状態、すなわち、IDHタンパク質又は遺伝子が本明細書中に記載するように変異しているか否かを評価することにより、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬に対する患者の推定される反応性を診断する段階と、前記患者に治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与する段階とを含む、前記方法を提供する。この方法では、IDH阻害薬に対する患者の推定される反応性を予想した投与する医師が適切であると判断する場合、個々の患者に適切な任意の追加的状況と組み合わせて、1以上の追加的な抗がん剤又は処置を、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬と同時又は逐次的に一緒に投与することができる。
【0058】
医療従事者であれば、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬に対する患者の推定される反応性の診断後に、前記患者に治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与する正確な方法が、担当医の判断に任されることを理解するであろう。投与量、他の抗がん剤との組み合わせ、投与のタイミング及び頻度などを含む投与方法は、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬に対する患者の推定される反応性の診断のほか、患者の状態及び既往歴の影響を受ける可能性がある。
【0059】
本発明の文脈において、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬は、細胞毒性薬、化学療法薬又は抗がん剤、例えば、アルキル化剤又はアルキル化作用を有する作用物質、例えば、シクロホスファミド(CTX;例えばCYTOXAN(登録商標))、クロラムブシル(CHL;例えばLEUKERAN(登録商標))、シスプラチン(CisP;例えばPLATINOL(登録商標)、ブスルファン(例えばMYLERAN(登録商標))、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンCなど;抗生物質、例えば、アクチノマイシンD、ドキソルビシン(DXR;例えばADRIAMYCIN(登録商標))、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンなど;アルカロイド、例えば、ビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチンなどのようなビンカアルカロイド;並びに他の抗腫瘍薬、例えば、パクリタキセル(例えばTAXOL(登録商標))及びパクリタキセル誘導体、細胞増殖抑制剤、デキサメタゾン(DEX;例えばDECADRON(登録商標))のようなグルココルチコイド及びプレドニゾンのようなコルチコステロイド、ヒドロキシウレアのようなヌクレオシド酵素阻害薬、アスパラギナーゼのようなアミノ酸除去酵素、ロイコボリン及び他の葉酸誘導体、並びに同様の多種多様な抗腫瘍薬などと組み合わせて投与することができる。以下の作用物質も、追加的作用物質として用いることができる:アミフォスチン(例えばETHYOL(登録商標))、ダクチノマイシン、メクロレタミン(ナイトロジェンマスタード)、ストレプトゾシン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、ドキソルビシンリポ(例えばDOXIL(登録商標))、ゲムシタビン(例えばGEMZAR(登録商標))、ダウノルビシンリポ(例えばDAUNOXOME(登録商標))、プロカルバジン、マイトマイシン、ドセタキセル(例えばTAXOTERE(登録商標))、アルデスロイキン、カルボプラチン、オキサリプラチン、クラドリビン、カンプトテシン、CPT11(イリノテカン)、10−ヒドロキシ7−エチル−カンプトテシン(SN38)、フロクスウリジン、フルダラビン、イホスファミド、イダルビシン、メスナ、インターフェロンβ、インターフェロンα、ミトキサントロン、トポテカン、ロイプロリド、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、プリカマイシン、ミトタン、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、タモキシフェン、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、ウラシルマスタード、ビノレルビン、クロラムブシル。
【0060】
本発明はさらに、患者において腫瘍を処置するための前記方法であって、患者に、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬に加え、1以上の抗ホルモン剤を同時又は逐次的に投与することを含む、前記方法を提供する。本明細書において「抗ホルモン剤」という用語は、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように働く天然又は合成の有機化合物又はペプチド化合物を包含する。抗ホルモン剤としては、例えば、以下が挙げられる:ステロイド受容体アンタゴニスト、抗エストロゲン薬、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害性4(5)−イミダゾール、他のアロマターゼ阻害薬、42−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(例えばFARESTON(登録商標));抗アンドロゲン薬、例えば、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド、及びゴセレリン;及び上記のいずれかの医薬的に許容しうる塩、酸、又は誘導体;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、及び黄体形成ホルモン(LH)、及びLHRH(黄体形成ホルモン放出ホルモン)など糖タンパク質ホルモンのアゴニスト及び/又はアンタゴニスト;ZOLADEX(登録商標)(アストラゼネカ)として市販されているLHRHアゴニストのゴセレリン酢酸塩;LHRHアンタゴニストのD−アラニンアミドN−アセチル−3−(2−ナフタレニル)−D−アラニル−4−クロロ−D−フェニルアラニル−3−(3−ピリジニル)−D−アラニル−L−セリル−N6−(3−ピリジニルカルボニル)−L−リシル−N6−(3−ピリジニルカルボニル)−D−リシル−L−ロイシル−N6−(1−メチルエチル)−L−リシル−L−プロリン(例えばANTIDE(登録商標)、アレス・セローノ);LHRHアンタゴニストのガニレリクス酢酸塩;ステロイド性抗アンドロゲン薬の酢酸シプロテロン(CPA)及びMEGACE(登録商標)(ブリストル・マイヤーズ オンコロジー)として市販されている酢酸メゲストロール;EULEXIN(登録商標)(シェーリング社)として市販されている非ステロイド性抗アンドロゲン薬のフルタミド(2−メチル−N−[4,20−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパンアミド);非ステロイド性抗アンドロゲン薬のニルタミド、(5,5−ジメチル−3−[4−ニトロ−3−(トリフルオロメチル)−4’−ニトロフェニル]−4,4−ジメチル−イミダゾリジン−ジオン);並びに、他の非許容受容体に対するアンタゴニスト、例えば、RAR、RXR、TR、VDRなどに対するアンタゴニスト。
【0061】
化学療法レジメンにおける上記細胞毒性薬及び他の抗がん剤の使用は、一般にがん治療技術分野で十分に特徴付けられており、本明細書中でのそれらの使用は、耐容性及び有効性のモニタリング、並びに若干の調整を伴う投与経路及び投与量の制御に関し、同様に検討される。例えば、細胞毒性薬の実際の投与量は、組織培養法を用いて決定される患者の培養細胞の応答に応じて変動させることができる。一般に、投与量は、追加的な他の作用物質の非存在下で用いられる量と比較して減少させる。有効な細胞毒性薬の典型的な投与量は、製造業者によって推奨される範囲にあることができ、in vitroでの応答又は動物モデルでの応答によって示されている場合、濃度又は量を最大約1桁低減することができる。したがって、実際の投与量は、医師の判断、患者の状態、及び、初代培養悪性細胞若しくは組織培養された組織試料のin vitroでの反応性、又は適した動物モデルで観察される応答に基づく治療法の有効性に依存する。
【0062】
本発明はさらに、患者において腫瘍又は腫瘍転移を処置するための前記方法であって、患者に、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬、及び1以上の血管新生阻害薬を同時又は逐次的に投与することを含む、前記方法を提供する。血管新生阻害薬としては、例えば以下が挙げられる:SU−5416及びSU−6668(Sugen Inc.、米国カリフォルニア州サウス・サンフランシスコ)、又は、例えば、WO99/24440、WO99/62890、WO95/21613、WO99/61422、WO98/50356、WO99/10349、WO97/32856、WO97/22596、WO98/54093、WO98/02438、WO99/16755、及びWO98/02437、並びに米国特許第5883113号、第5886020号、第5792783号、第5834504号、及び第6235764号に記載されているような、VEGFR阻害薬;IM862(Cytran Inc.、米国ワシントン州カークランド)などのVEGF阻害薬;アンギオザイム、Ribozyme(コロラド州ボルダー)及びChiron(カリフォルニア州エメリービル)からの合成リボザイム;及びVEGFに対する抗体、例えばVEGFに対する組換え型ヒト化抗体であるベバシズマブ(例えば、AVASTINTM、ジーンテック、カリフォルニア州サウス・サンフランシスコ);αβ、αβ、及びαβインテグリン並びにそれらのサブタイプなどに対するインテグリン受容体アンタゴニスト及びインテグリンアンタゴニスト、例えばシレンギチド(EMD121974)、又は抗インテグリン抗体、例えばαβ特異的ヒト化抗体(例えばVITAXIN(登録商標))など;IFN−αのような因子(米国特許第第41530901号、第4503035号、及び第5231176号);アンジオスタチン及びプラスミノゲンのフラグメント(例えば、クリングル1〜4、クリングル5、クリングル1〜3(O’Reilly,M.S.ら(1994)Cell 79:315−328;Caoら(1996)J.Biol.Chem.271:29461−29467;Caoら(1997)J.Biol.Chem.272:22924−22928);エンドスタチン(O’Reilly,M.S.ら(1997)Cell 88:277;及びWO97/15666);トロンボスポンジン(TSP−1;Frazier(1991)Curr.Opin.Cell Biol.3:792);血小板第4因子(PF4);プラスミノゲン活性因子/ウロキナーゼ阻害薬;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;ヘパリナーゼ;TNP−4701のようなフマギリン類似体;スラミン及びスラミン類似体;血管新生抑制ステロイド;bFGFアンタゴニスト;flk−1及びflt−1のアンタゴニスト;MMP−2(マトリックス−メタロプロテイナーゼ2)阻害薬及びMMP−9(マトリックス−メタロプロテイナーゼ9)阻害薬などの抗血管新生薬。有用なマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬の例は、WO96/33172、WO96/27583、WO98/07697、WO98/03516、WO98/34918、WO98/34915、WO98/33768、WO98/30566、WO90/05719、WO99/52910、WO99/52889、WO99/29667及びWO99/07675、欧州特許第818442号、第780386号、第1004578号、第606046号、及び第931788号;英国特許第9912961号、並びに米国特許第5863949号及び第5861510号に記載されている。好ましいMMP−2阻害薬及びMMP−9阻害薬は、MMP−1の阻害活性をほとんど又はまったく有さないものである。より好ましくは、他のマトリックス−メタロプロテイナーゼ(すなわち、MMP−1、MMP−3、MMP−4、MMP−5、MMP−6、MMP−7、MMP−8、MMP−10、MMP−11、MMP−12、及びMMP−13)と比較して、選択的にMMP−2及び/又はMMP−9を阻害するものである。
【0063】
本発明はさらに、患者において腫瘍を処置するための前記方法であって、患者に、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬、及び1以上の腫瘍細胞プロアポトーシス又はアポトーシス促進剤を同時又は逐次的に投与することを含む、前記方法を提供する。本発明はさらに、患者において腫瘍を処置するための前記方法であって、患者に、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬、及び1以上のシグナル伝達阻害薬を同時又は逐次的に投与することを含む、前記方法を提供する。シグナル伝達阻害薬としては、例えば以下が挙げられる:erbB2受容体に結合する有機分子又は抗体のようなerbB2受容体阻害薬、例えばトラスツズマブ(例えばHERCEPTIN(登録商標));他のタンパク質チロシンキナーゼの阻害薬、例えばイミチニブ(imitinib)(例えばGLEEVEC(登録商標));ras阻害薬;raf阻害薬(例えば、BAY 43−9006、オニキス・ファーマシューティカルズ/バイエル・ファーマシューティカルズ);MEK阻害薬;mTOR阻害薬;サイクリン依存性キナーゼ阻害薬;タンパク質キナーゼC阻害薬;並びにPDK−1阻害薬(そのような阻害薬のいくつかの例、及びがんを処置するための臨床試験におけるそれらの使用の説明については、Dancey,J.及びSausville,E.A.(2003)Nature Rev.Drug Discovery 2:92−313を参照)。ErbB2受容体阻害薬としては、例えば以下が挙げられる:GW−282974(グラクソ・ウェルカムplc)のようなErbB2受容体阻害薬、AR−209(米国、テキサス州ザ・ウッドランス、Aronex Pharmaceuticals Inc.)及び2B−1(カイロン)のようなモノクローナル抗体、並びにWO98/02434、WO99/35146、WO99/35132、WO98/02437、WO97/13760、及びWO95/19970、並びに米国特許第5587458号、第5877305号、第6465449号、及び第6541481号に記載されているようなerbB2阻害薬。
【0064】
本発明はさらに、患者において腫瘍を処置するための前記方法であって、患者に、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬、及び1以上の追加的な抗増殖剤を同時又は逐次的に投与することを含む、前記方法を提供する。追加的な抗増殖剤としては、例えば以下が挙げられる:タンパク質ファルネシルトランスフェラーゼの阻害薬及び受容体チロシンキナーゼPDGFRの阻害薬、例えば、米国特許第6080769号、第6194438号、第6258824号、第6586447号、第6071935号、第6495564号、第6150377号、第6596735号、及び第6479513号、及びWO01/40217に開示され特許請求されている化合物。
【0065】
本発明はさらに、患者において腫瘍を処置するための前記方法であって、患者に、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与すること、及び放射線又は放射性医薬品での処置を同時又は逐次的に行うことを含む、前記方法を提供する。放射線源は、処置される患者の外部又は内部のいずれかであることができる。放射線源が患者の外部にある場合、治療は外照射療法(EBRT)として知られる。放射線源が患者の内部にある場合、処置は小線源治療(BT)とよばれる。本発明の文脈で用いる放射性原子は、限定されるものではないが、ラジウム、セシウム−137、イリジウム−192、アメリシウム−241、金−198、コバルト−57、銅−67、テクネチウム−99、ヨウ素−123、ヨウ素−131、及びインジウム−111を包含する群より選択することができる。本発明に従ったDHODH阻害薬が抗体である場合、該抗体をそのような放射性同位体で標識することも可能である。放射線療法は、切除不能又は手術不能な腫瘍及び/又は腫瘍転移を制御するための標準的処置である。放射線療法を化学療法と組み合わせたときに、改善された結果が得られている。放射線療法は、標的領域に送達される高線量照射線は、腫瘍組織及び正常組織の両方で生殖細胞を死滅させるという原理に基づいている。放射線量レジメンは、一般に放射線吸収線量(Gy)、時間、及び分割という用語で規定され、がん専門医によって慎重に規定される必要がある。患者が受ける放射線の量は、さまざまな検討事項に依存するが、最も重要な2つの点は、体の他の危険な構造又は臓器に対する腫瘍の位置と、腫瘍が広がっている範囲である。放射線療法を受けている患者の典型的な処置過程は、1〜6週間にわたり、週5日、1日1回、約1.8〜2.0Gyの分割量で総量10〜80Gyを患者に投与する処置スケジュールである。本発明の好ましい態様では、ヒト患者における腫瘍を本発明と放射線の併用療法で処置すると、相乗作用が認められる。換言すれば、本発明の組み合わせを含む作用物質による腫瘍増殖の阻害は、放射線、及び所望により追加的な化学療法薬若しくは抗がん剤と組み合わせたときに増強される。補助放射線療法のパラメータは、例えば、WO99/60023に記載されている。
【0066】
本発明はさらに、患者において腫瘍又は腫瘍移転を処置するための前記方法であって、患者に、治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与すること、及び抗腫瘍免疫反応を増強することができる1以上の作用物質での処置を同時又は逐次的に行うことを含む、前記方法を提供する。抗腫瘍免疫反応を増強することができる作用物質としては、例えば以下が挙げられる:CTLA4(細胞傷害性リンパ球抗原4)抗体(例えばMDX−CTLA4)及びCTLA4を遮断することができる他の作用物質。本発明に用いることができる特異的CTLA4抗体としては、米国特許第6682736号に記載されているものが挙げられる。
【0067】
本明細書において「患者」という用語は、好ましくは、何らかの目的で代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬による処置を必要とするヒト、より好ましくは、がん、又は前がん病態若しくは前がん病変を処置するためにそのような処置を必要とするヒトを表す。しかしながら、「患者」という用語は、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬による処置を必要とする非ヒト動物、好ましくは、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、及び特に非ヒト霊長類などの哺乳類を表すこともできる。
【0068】
代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬は、当分野で公知のように、典型的には、患者が処置を受けているがんの(有効性及び安全性の観点から)最も有効な処置を提供する用量レジメンで患者に投与される。本発明の処置方法の実施では、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬は、処置するがんのタイプ、用いるDHODH阻害薬のタイプ(例えば、小分子、抗体、RNAi、リボザイム、又はアンチセンス構築体)、及び、例えば公開されている臨床試験の結果に基づいた処方医師の医学的判断に応じて、当分野で公知の任意の有効な方法、例えば、経口、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、皮下、鼻腔内、眼内、経膣、直腸内又は皮内経路によって、投与することができる。
【0069】
投与される代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬の量及び投与のタイミングは、処置する患者のタイプ(種、性別、年齢、体重など)及び病態、処置する疾患又は病態の重症度、並びに投与経路に依存する。例えば、代謝拮抗薬又は小分子DHODH阻害薬は、患者に、1日又は1週間につき0.001〜100mg/体重1kgの用量を単回若しくは分割投与で、又は持続注入により、投与することができる。抗体に基づくDHODH阻害薬、又はアンチセンス、RNAi、若しくはリボザイム構築体は、患者に、1日又は1週間につき0.1〜100mg/体重1kgの用量を単回若しくは分割投与で、又は持続注入により、投与することができる。場合により、前記範囲の下限未満の投与量レベルで十分すぎる可能性があるが、他の場合では、さらに多い用量を1日を通して投与するために最初にいくつかの小用量に分割するという条件で、そのような多い用量を有害な副作用を引き起こすことなく採用することができる。
【0070】
代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬は、さまざまな医薬的に許容しうる不活性キャリヤーと一緒に、錠剤、カプセル、ロゼンジ、トローチ、ハードキャンディー、粉末、スプレー、クリーム、軟膏(salve)、坐剤、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション、軟膏剤(ointment)、エリキシル剤、シロップなどの形態で、投与することができる。そのような剤形の投与は、単回又は複数回投与で実施することができる。キャリヤーとしては、固体希釈剤又は増量剤、滅菌水性媒体、及びさまざまな非毒性有機溶媒などが挙げられる。経口医薬組成物は、適切に甘味及び/又は香味を加えることができる。活性作用物質は、さまざまな医薬的に許容しうる不活性キャリヤーと一緒に、スプレー、クリーム、軟膏、坐剤、ゼリー、ゲル、ペースト、ローション、軟膏剤などの形態で組み合わせることができる。そのような剤形の投与は、単回又は複数回投与で実施することができる。キャリヤーとしては、固体希釈剤又は増量剤、滅菌水性媒体、及びさまざまな非毒性有機溶媒などが挙げられる。タンパク質活性作用物質を含むすべての製剤は、活性作用物質の生物学的活性の変性及び/又は分解、及び損失が回避されるように選択すべきである。
【0071】
医薬組成物の調製方法は当分野で公知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン、第18版(1990)に記載されている。経口投与の場合、活性作用物質の一方又は両方を含有する錠剤を、微結晶質セルロース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウム、及びグリシンなどの賦形剤、デンプン(好ましくはトウモロコシ、ジャガイモ、又はタピオカデンプン)、アルギン酸、及び特定の複合シリケートなどのさまざまな崩壊剤、ポリビニルピロリドン、スクロース、ゼラチン、及びアカシアのような造粒促進剤とともに組み合わせる。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルクなどの潤滑剤は、錠剤化の目的に非常に有用であることが多い。同様のタイプの固体組成物は、ゼラチンカプセルの増量剤として採用することもできる;これに関連して好ましい材料としては、ラクトース又は乳糖、及び高分子量ポリエチレングリコールが挙げられる。水性懸濁液及び/又はエリキシル剤が経口投与に望ましい場合、阻害薬を、水、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン、及びそれらのさまざまな組み合わせなどの希釈剤と一緒に、さまざまな甘味剤又は香味剤、着色物質又は染料、並びに必要に応じて乳化剤及び/又は懸濁化剤と組み合わせてもよい。活性作用物質のいずれか又は両方を非経口投与する場合、ゴマ油若しくは落花生油のいずれか又は水性プロピレングリコール中の溶液のほか、活性作用物質又はその対応する水溶性塩を含む滅菌水溶液を、採用することができる。そのような滅菌水溶液は適切に緩衝されていることが好ましく、例えば十分な生理食塩水又はグルコースで等張性にすることも好ましい。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内注射の目的に特に適している。油性溶液は、関節内、筋肉内、及び皮下注射の目的に適している。滅菌条件下でのこれらの溶液すべての調製は、当業者に周知の標準的医薬技術により容易に達成される。タンパク質性阻害薬の投与に選択される非経口製剤はいずれも、阻害薬の生物学的活性の変性及び損失が避けられるように選択すべきである。
【0072】
加えて、活性作用物質のいずれか又は両方を、標準的な薬学業務に従って、例えば、クリーム、ローション、ゼリー、ゲル、ペースト、軟膏剤、軟膏などにより局所投与することが可能である。例えば、約0.1%(重量/体積)〜約5%(重量/体積)濃度でDHODH阻害薬を含む局所製剤を調製することができる。
【0073】
獣医学的目的の場合、活性作用物質は、上記形態のいずれかを用い、上記経路のいずれかにより、別個又は一緒に動物に投与することができる。好ましい態様では、阻害薬を、カプセル、ボーラス、錠剤、液体飲薬(liquid drench)の形態か、注射によるか、又は埋込物として投与する。あるいは、阻害薬は動物飼料と一緒に投与することができ、この目的の場合、標準的な動物飼料の代わりに濃縮飼料添加物又はプレミックスを調製することができる。そのような製剤は、標準的な獣医学的業務に従った従来法で調製される。
【0074】
モノクローナル抗体及び抗体フラグメントの生産及び単離技術は当分野で周知であり、Harlow及びLane、1988、Antibodies:A Laboratory Manual、コールド・スプリング・ハーバー研究所;及びJ.W.Goding、1986、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice、Academic Press、ロンドンに記載されている。ヒト化抗DHODH抗体及び抗体フラグメントも、Vaughn,T.J.ら、1998、Nature Biotech.16:535−539及びその引用文献に記載されているような公知の技術に従って調製することができ、そのような抗体又はそのフラグメントも、本発明を実施するのに有用である。
【0075】
あるいは、本発明に用いるためのDHODH阻害薬は、アンチセンスオリゴヌクレオチド構築体に基づいていることができる。アンチセンスRNA分子及びアンチセンスDNA分子を含むアンチセンスオリゴヌクレオチドは、DHODH mRNAに結合することによってその翻訳を直接遮断し、このようにしてタンパク質の翻訳を妨げるかmRNAの分解を増大させ、こうして、細胞中のDHODHタンパク質レベル、したがって活性を低下させするように働く。例えば、少なくとも約15塩基で、DHODHをコードするmRNA転写産物配列のユニーク領域に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、例えば従来のホスホジエステル技術により合成し、例えば静脈内への注射又は注入により投与することができる。配列が公知の遺伝子の遺伝子発現を特異的に阻害するためのアンチセンス技術の使用方法は、当分野で周知である(例えば、米国特許第6566135号;第6566131号;第6365354号;第6410323号;第6107091号;第6046321号;及び第5981732号を参照)。
【0076】
低分子阻害RNA(siRNA)も、本発明で使用するための阻害薬として機能することができる。DHODH遺伝子発現は、腫瘍、被験者、又は細胞を、低分子2本鎖RNA(dsRNA)か、低分子2本鎖RNAを産生するベクター又は構築体と接触させ、DHODHの発現を特異的に阻害する(すなわち、RNA干渉又はRNAi)ことにより、減少させることができる。配列が公知の遺伝子に関する適したdsRNA又はdsRNAをコードするベクターの選択方法は、当分野で周知である(例えば、Tuschi,T.ら(1999)Genes Dev.13(24):3191−3197;Elbashir,S.M.ら(2001)Nature 411:494−498;Hannon,G.J.(2002)Nature 418:244−251;McManus,M.T.及びSharp,P.A.(2002)Nature Reviews Genetics 3:737−747;Bremmelkamp,T.R.ら(2002)Science 296:550−553;米国特許第6573099号及び第6506559号;並びにWO01/36646、WO99/32619、及びWO01/68836を参照)。
【0077】
リボザイムも、本発明で使用するためのDHODH阻害薬として機能することができる。リボザイムは、RNAの特異的切断を触媒することができる酵素的RNA分子である。リボザイムの作用メカニズムは、リボザイム分子と相補的標的RNAとの配列特異的ハイブリダイゼーションと、これに続くエンドヌクレアーゼ的切断を包含する。したがって、mRNA配列のエンドヌクレアーゼ的切断を特異的かつ効率的に触媒する工学的ヘアピン又はハンマーヘッドモチーフリボザイム分子は、本発明の範囲内で有用である。任意の潜在的RNA標的内の特異的リボザイム切断部位は、最初に、典型的には以下の配列、GUA、GUU、及びGUCを包含するリボザイム切断部位について、標的分子を走査することにより同定する。同定後、切断部位を含有する標的遺伝子領域に対応する約15〜20リボヌクレオチドの短いRNA配列を、オリゴヌクレオチド配列を不適切にし得る予想される構造的特徴、例えば2次構造について、評価することができる。標的候補の適合性は、例えばリボヌクレアーゼ保護アッセイを用いて、相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの可能性を試験することにより評価することもできる。
【0078】
阻害薬として有用なアンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムは、ともに公知の方法によって調製することができる。これらとしては、例えば固相ホスホロアマダイト(phosphoramadite)化学合成などによる化学合成技術が挙げられる。あるいは、アンチセンスRNA分子は、RNA分子をコードするDNA配列のin vitro又はin vivo転写によって生じさせることができる。そのようなDNA配列は、T7又はSP6ポリメラーゼプロモーターなどの適したRNAポリメラーゼプロモーターを包含する多種多様なベクターに組み込むことができる。細胞内での安定性及び半減期を増大させる手段として、本発明のオリゴヌクレオチドにさまざまな修飾を導入することができる。考えうる修飾としては、限定されるものではないが、分子の5’及び/又は3’末端にリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのフランキング配列を加えること、又はオリゴヌクレオチド主鎖内でホスホジエステラーゼ結合ではなくホスホロチオエート結合又は2’−O−メチル結合を使用することが挙げられる。
【0079】
「医薬的に許容しうる塩」という用語は、医薬的に許容しうる非毒性塩基又は酸から調製される塩を表す。活性作用物質が酸性である場合、その対応する塩は、医薬的に許容しうる非毒性塩基、例えば無機塩基及び有機塩基から、好都合に調製することができる。そのような無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅(第2銅及び第1銅)、第2鉄、第1鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン(第2マンガン及び第1マンガン)、カリウム、ナトリウム、亜鉛などの塩が挙げられる。とりわけ好ましいのは、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、及びナトリウム塩である。医薬的に許容しうる有機非毒性塩基から誘導される塩としては、第1級、第2級、及び第3級アミン、並びに環状アミン、及び置換アミン、例えば、天然に存在する置換アミン及び合成置換アミンの塩が挙げられる。塩を形成することができる他の医薬的に許容しうる有機非毒性塩基としては、イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N’,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミンなどが挙げられる。
【0080】
本発明で用いる活性作用物質が塩基性である場合、その対応する塩は、医薬的に許容しうる非毒性酸、例えば無機及び有機酸から、好都合に調製することができる。そのような酸としては、例えば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸などが挙げられる。とりわけ好ましいのは、クエン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リン酸、硫酸、及び酒石酸である。
【0081】
活性成分を含む本発明で用いられる医薬組成物は、医薬的に許容しうるキャリヤー及び所望により他の治療的成分又はアジュバントを包含することができる。他の治療薬としては、先に挙げたような細胞毒性薬、化学療法薬若しくは抗がん剤、又はそのような作用物質の効果を増強する作用物質を挙げることができる。該組成物は、経口投与、直腸内投与、局所投与、及び非経口投与(皮下、筋肉内、及び静脈内投与を含む)に適した組成物を包含するが、ある任意の場合に最も適した経路は、特定の宿主、並びに活性成分が投与される病態の性質及び重症度に依存する。医薬組成物は単位剤形で好都合に提供することができ、薬学技術分野で周知の任意の方法により調製することができる。
【0082】
実際、本発明の作用物質は、従来の医薬調合技術に従って、密な混合物における活性成分として医薬キャリヤーと組み合わせることができる。キャリヤーは、投与、例えば経口又は非経口(静脈内を含む)投与に望ましい調合剤の形態に応じて、多種多様な形態を取ることができる。したがって、本発明の医薬組成物は、所定量の活性成分をそれぞれ含有するカプセル、カシェ剤、又は錠剤のように、経口投与に適した別個の単位として提供することができる。さらに、該組成物は、粉末、顆粒、溶液、水性液体中の懸濁液、非水性液体、水中油型エマルション、又は油中水型液体エマルションとして提供することができる。上記の一般的剤形に加えて、活性作用物質(その各成分の医薬的に許容しうる塩を含む)は、制御放出手段及び/又は送達装置により投与することもできる。組成物の組み合わせは、任意の薬学的方法により調製することができる。一般に、そのような方法は、活性成分を、1以上の必要な成分を構成するキャリヤーと関連させる段階を包含する。一般に、組成物は、活性成分を、液体キャリヤー又は微粉化した固体キャリヤー又はその両方と、均一かつ密接に混ぜ合わせることにより調製する。その後、生産物を望ましい体裁に好都合に付形することができる。
【0083】
本発明に用いられる活性作用物質(医薬的に許容しうるその塩を含む)は、1以上の他の治療的活性化合物との組み合わせで医薬組成物に包含させることもできる。他の治療的活性化合物としては、上記のような、細胞毒性薬、化学療法薬若しくは抗がん剤、又はそのような作用物質の効果を増強する作用物質を挙げることができる。したがって、本発明の1つの態様では、医薬組成物は、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を抗がん剤との組み合わせで含むことができ、ここで、前記抗がん剤は、アルキル化剤、微小管阻害薬、ポドフィロトキシン、抗生物質、ニトロソウレア、ホルモン療法薬、キナーゼ阻害薬、腫瘍細胞アポトーシス活性化薬、及び血管新生阻害薬から成る群より選択されるメンバーである。採用される医薬キャリヤーは、例えば、固体、液体又は気体であることができる。固体キャリヤーの例としては、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、及びステアリン酸が挙げられる。液体キャリヤーの例は、糖シロップ、落花生油、オリーブ油、及び水である。気体キャリヤーの例としては、二酸化炭素及び窒素が挙げられる。経口剤形のための組成物の調製では、任意の医薬媒体を採用することができる。例えば、水、グリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤などを用いて、懸濁液、エリキシル剤、及び溶液などの経口液体調合剤を形成することができる;一方、デンプン、糖、微結晶質セルロース、希釈剤、顆粒化剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などのキャリヤーを用いて、粉末、カプセル、及び錠剤などの経口固体調合剤を形成することができる。投与が容易なため錠剤及びカプセルが好ましい経口投薬単位であり、このため固体医薬キャリヤーが採用される。所望により、錠剤を標準的な水性又は非水性技術によりコーティングしてもよい。本発明に用いられる組成物を含有する錠剤は、所望により1以上の補助的成分又はアジュバントと一緒に、圧縮又は成形により調製することができる。圧縮錠剤は、適した機械で、粉末又は顆粒などのさらさらした形態の活性成分を、所望により結合剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤、又は分散剤と混合して、圧縮することにより調製することができる。成形錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を、適した機械で成形することにより、作製することができる。各錠剤は約0.05mg〜約5gの活性成分を含有することが好ましく、各カシェ剤又はカプセルは、約0.05mg〜約5gの活性成分を含有することが好ましい。例えば、ヒトへの経口投与を意図した製剤は、約0.5mg〜約5gの活性作用物質を含有することができ、全組成物の約5〜約95%で変えることができる適切で好都合な量のキャリヤー材料と調号される。単位剤形は、一般に、約1mg〜約2g、典型的には、25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mg、又は1000mgの活性成分を含有する。
【0084】
非経口投与に適した本発明で用いられる医薬組成物は、活性化合物の水性溶液又は懸濁液として調製することができる。適した界面活性剤、例えばヒドロキシプロピルセルロースなどを包含させることができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及び油性のそれらの混合物中で調製することもできる。さらに、微生物の有害な増殖を妨げるために、防腐剤を包含させることもできる。注射可能な用途に適した本発明で用いられる医薬組成物は、滅菌水溶液又は分散液を包含する。さらに、組成物は、そのような滅菌された注射可能な溶液又は分散液を即時調製するために、滅菌粉末の形態であることができる。すべての場合において、最終的な注射可能な形態は滅菌されていなければならず、注射針の通過を容易にするのに効果的な流体でなければならない。医薬組成物は、製造及び保存条件下で安定でなければならない;したがって、好ましくは、細菌及び真菌などの微生物の汚染作用に対して保護される必要がある。キャリヤーは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、植物油、及びそれらの適した混合物を含有する、溶媒又は分散媒であることができる。本発明の医薬組成物は、局所使用に適した形態、例えば、エアゾール、クリーム、軟膏剤、ローション、散粉剤などの形態であることができる。さらに、組成物は、経皮的機器での使用に適した形態であることができる。これらの製剤は、代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬(医薬的に許容しうるその塩を含む)を使用して、従来の処理法により調製することができる。1例として、クリーム又は軟膏剤は、親水性材料及び水を約5重量%〜約10重量%の化合物と一緒に混ぜ合わせて、望ましい粘稠度を有するクリーム又は軟膏剤を生産することにより調製する。
【0085】
本発明の医薬組成物は、直腸内投与に適した形態であることができ、この場合、キャリヤーは固体である。混合物は、単位用量の坐剤を形成することが好ましい。適したキャリヤーとしては、ココアバター及び当分野で一般に用いられている他の材料が挙げられる。坐剤は、最初に、軟化又は溶融させたキャリヤーと組成物を混ぜ合わせ、その後、型の中で冷却して付形することにより、好都合に形成することができる。上記キャリヤー成分に加え、上記医薬組成物は、必要に応じて、1以上の追加的キャリヤー成分、例えば、希釈剤、緩衝剤、香味剤、結合剤、界面活性剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(酸化防止剤を含む)などを包含することができる。さらに、製剤を所定の受容者の血液と等張にするために、他のアジュバントを包含させることができる。代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬(医薬的に許容しうるその塩を含む)を含有する組成物は、粉末又は液体濃縮物の形態で調製することもできる。
【実施例】
【0086】
本発明は、以下の実施例により、さらに理解されるであろう。しかしながら、当業者であれば、後術の特許請求の範囲にさらに詳細に記載するように、検討した特定の方法及び結果は本発明の例示に過ぎず、決してこれらに限定されると考えるべきではないことを、容易に理解するであろう。
【0087】
野生型及び変異体IDH細胞株の増殖アッセイ
RPMI、10%FBS、G418、及びGM−CSF中に、TF1−pLVX(野生型)細胞は、20k/mL、90μL/ウェルでpLVXプレーティングし、TF1/R132H27(mIDH1)及びTF1/R140Q11(mIDH2)細胞は、80k/mL、90μL/ウェルでプレーティングした。試験化合物を0日目に加え、CellTiter−Glo(登録商標)アッセイ(プロメガ)を3/4日目及び7日目に実施した。培地は7日間の培養中に交換しなかった。ブレキナルは、R132H IDH1及びR140Q IDH2変異体細胞株をそれぞれ1.3μM及び1.6μMのIC50で阻害した。
【0088】
ブレキナルの作用が標的上にあることを実証するために、5つの濃度:0、8、40、200、及び1000μMのウリジン及びオロテート±単回用量のブレキナル(2μM、7日目のおよそのIC90)を細胞培地に別個に加えた。データを、0日目に対する3日目のATP倍率変化として表した。図2Aは、mIDH1(73%)及びmIDH2(52%)の代謝活性の低下が、濃度8μMのウリジンにより回復したことを示している。図2Bは、mIDH1(77%)及びmIDH2(47%)の代謝活性の低下が、濃度1000μMのウリジンにより回復したことを示している。
【0089】
援用
本明細書に開示するすべての特許、公開されている特許出願、及び他の参考文献を、本明細書で明示的に援用する。
【0090】
等価物
当業者であれば、単なる日常的実験を用いて、本明細書に具体的に記載した本発明の特定の態様の多くの等価物を認識し、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] 被験者における変異体IDHがんの処置方法であって、被験者に治療的有効量の代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬を投与することを含む、前記方法。
[項目2] がんにおける変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在を検出することをさらに含む、項目1に記載の方法。
[項目3] 腫瘍細胞の生存又は増殖を、前記腫瘍細胞を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬と接触させることにより阻害することができるか否かを決定するための方法であって、前記腫瘍細胞において変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在を決定することを含み、変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、前記腫瘍細胞の生存又は増殖を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬により阻害できることを示す、前記方法。
[項目4] 腫瘍細胞の特性決定方法であって、前記腫瘍細胞において変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在を決定することを含み、変異体IDH遺伝子又はタンパク質の存在は、前記腫瘍細胞の生存又は増殖を代謝拮抗薬又はDHODH阻害薬により阻害できることを示す、前記方法。
[項目5] 変異体IDHが、IDH1タンパク質又は遺伝子の変異である、項目1に記
載の方法。
[項目6] 変異が、G97D、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gから成る群より選択されるアミノ酸置換である、項目5に記載の方法。
[項目7] 変異体IDHが、IDH2タンパク質又は遺伝子の変異である、項目1に記載の方法。
[項目8] 変異が、R140Q、R140W、R140L、R172K、及びR172Gから成る群より選択されるアミノ酸置換である、項目1に記載の方法。
[項目9] 代謝拮抗薬が、アザチオプリン、6−メルカプトプリン、チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン、及びクラドリビン、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6−アザウラシル、メトトレキサート、又はペメトレキセドである、項目1に記載の方法。
[項目10] 代謝拮抗薬がメトトレキサートである、項目9に記載の方法。
[項目11] DHODH阻害薬が、ブレキナル、ビドフルジムス、レフルノミド、又はテリフルノミドである、項目1に記載の方法。
[項目12] DHODH阻害薬が、式:
【化5】
[Aは、芳香族又は非芳香族の5又は6員炭化水素環であって、1個以上の炭素原子は、S、O、N、NR、SO、及びSOから成る群より独立して選択されるX基によって置換されていてもよく;
Lは、単結合又はNHであり;
Dは、O、S、SO、NR、又はCHであり;
は、O、S、又はNRであり;
は、O、S、又はNRであり;
は、独立して、H、ハロゲン、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、−COR”、−SOH、−OH、−CONRR”、−CR”O、−SO−NRR”、−NO、−SO−R”、−SO−R、−CN、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アルカニルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリール、−NR”−CO−R’、−NR”−CO−R、−NR”−SO−R’、−O−CO−R、−O−CO−R、−O−CO−NRR”、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルカニルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ヒドロキシアルカニルアミノ、ヒドロキシアルケニルアミノ、ヒドロキシアルキニルアミノ、−SH、ヘテロアリール、アルカニル、アルケニル、又はアルキニルを表し;
は、独立して、H、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノアルカニル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、−OH、−SH、アルカニルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、ヒドロキシアルカニル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、アリール、又はヘテロアリールを表し;
R’は、独立して、H、−COR”、−CONR”R”’、−CR”O、−SONR”、−NR”−CO−ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、−NO、−NR”−SO−ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、−NR”−SO−アルカニル、−NR”−SO−アルケニル、−NR”−SO−アルキニル、−SO−アルカニル、−SO−アルケニル、−SO−アルキニル、−NR”−CO−アルカニル、−NR”−CO−アルケニル、−NR”−CO−アルキニル、−CN、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノアルカニル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アルカニルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、シクロアルキルオキシ、−OH、−SH、アルカニルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、ヒドロキシアルカニル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシアルカニルアミノ、ヒドロキシアルケニルアミノ、ヒドロキシアルキニルアミノ、ハロゲン、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、アリール、アラルキル、又はヘテロアリールを表し;
R”は、独立して、水素、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ヒドロキシアルカニル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アミノアルカニル、アミノアルケニル、又はアミノアルキニルを表し;
R”’は、独立して、H又はアルカニルを表し;
は、H、又はOR、NHR、NRORであるか;あるいは、
は、Rに結合している窒素原子と一緒になって、5〜7員、好ましくは5又は6員ヘテロ環式環を形成し、ここで、Rは−[CHであり、Rは存在せず;
は、H、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、−O−アリール、−O−シクロアルキル、−O−ヘテロシクロアルキル、ハロゲン、アミノアルカニル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アルカニルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ヒドロキシルアミノ、ヒドロキシルアルカニル、ヒドロキシルアルケニル、ヒドロキシルアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、ヘテロアリール、アルカニルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、−S−アリール、−S−シクロアルキル、−S−ヘテロシクロアルキル、アラルキル、ハロアルカニル、ハロアルケニル、又はハロアルキニルであり;
は、H、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり;
は、H、OH、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、O−アリール、アルカニル、アルケニル、アルキニル、又はアリールであり;
は、H、アルカニル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルカニルオキシアルカニル、アルカニルオキシアルケニル、アルカニルオキシアルキニル、アルケニルオキシアルカニル、アルケニルオキシアルケニル、アルケニルオキシアルキニル、アルキニルオキシアルカニル、アルキニルオキシアルケニル、アルキニルオキシアルキニル、アシルアルカニル、(アシルオキシ)アルカニル、(アシルオキシ)アルケニル、(アシルオキシ)アルキニルアシル、非対称(アシルオキシ)アルカニルジエステル、非対称(アシルオキシ)アルケニルジエステル、非対称(アシルオキシ)アルキニルジエステル、又はジアルカニルホスフェート、ジアルケニルホスフェート、若しくはジアルキニルホスフェートであり;
は、H、OH、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルカニルオキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、−O−アリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、−O−シクロアルキル、又は−O−ヘテロシクロアルキルであり;
は、H、アルカニル、アルケニル、又はアルキニルであり;
Eは、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、又はシクロアルキル基であるか、あるいは、
縮合2環式又は3環式環系であって、1つのフェニル環が、1つ若しくは2つの単環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環又は1つの2環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環に縮合しているか、2つのフェニル環が、単環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環に縮合しているものであり、ここで、単環式及び2環式シクロアルキル及びヘテロシクロアルキル環は本明細書中で定義したとおりであり、上記基はすべて、1以上の置換基R’によって置換されていてもよく;
Yは、H、ハロゲン、ハロアルカニル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアルカニルオキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、アルカニル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、又はシクロアルキル基であるか、あるいは、
縮合2環式又は3環式環系であって、1つのフェニル環が、1つ若しくは2つの単環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環又は1つの2環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環に縮合しているか、2つのフェニル環が、単環式シクロアルキル若しくはヘテロシクロアルキル環に縮合しているものであり、ここで、上記基はすべて、1以上の置換基R’によって置換されていてもよく、あるいは、
Yは、
【化6】
であり、
mは0又は1であり;
nは0又は1であり;
pは0又は1であり;
qは0又は1であり;
rは0又は1であり;
sは0〜2であり;そして
tは0〜3である]
の化合物である、項目11に記載の方法。
[項目13] 化合物が:
【化7】
から成る群より選択される、項目12に記載の方法。
[項目14] 変異体IDH遺伝子又はタンパク質を検出するための試薬と、治療的有効量の代謝拮抗薬化合物又はDHODH阻害薬を投与するための使用説明書とを含むキット。
[項目15] 変異体IDHが、IDH1タンパク質又は遺伝子の変異である、項目14に記載のキット。
[項目16] 変異が、G97D、R132H、R132C、R132L、R132V、R132S、及びR132Gから成る群より選択されるアミノ酸置換である、項目15に記載のキット。
[項目17] 変異体IDHが、IDH2タンパク質又は遺伝子の変異である、項目14に記載のキット。
[項目18] 変異が、R140Q、R140W、R140L、R172K、及びR172Gから成る群より選択されるアミノ酸置換である、項目17に記載のキット。
[項目19] 試薬が、変異体IDHタンパク質に特異的な抗体を含む、項目14に記載のキット。
[項目20] 変異体IDH遺伝子の配列決定又は増幅のための試薬を含む、項目14に記載のキット。
[項目21] 試薬が、PCRによって変異体IDH遺伝子を検出する、項目14に記載のキット。
図1
図2A
図2B
図3