【実施例】
【0052】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
なお、実施例1、2、5、6、9および10はそれぞれ参考例1、2、3、4、5および6と読み替えるものとする。
【0053】
本実施例で用いる構成要素は以下の通りである。
【0054】
<使用した材料>
・構成要素[A]:芳香環を含む2官能以上のエポキシ樹脂
[A]−1 “jER(登録商標)”828(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
[A]−2 “jER(登録商標)”825(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
[A]−3 “jER(登録商標)”830(液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂、三菱化学(株)製)
[A]−4 “エポトート(登録商標)”YDF2001(固形ビスフェノールF型エポキシ樹脂、新日鉄住金化学(株)製)
[A]−5 GAN(N,N’−ジグリシジルアニリン、日本化薬(株)製)
[A]−6 “スミエポキシ(登録商標)”ELM−434(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、住友化学(株)製)
[A]−7 “ARALDITE(登録商標)”MY721(N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ハンツマン・ジャパン(株)製)
[A]−8 “ARALDITE(登録商標)”MY0510(アミノフェノール型エポキシ樹脂、ハンツマン・ジャパン(株)製)
[A]−9 “ARALDITE(登録商標)”PY307−1(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ハンツマン・ジャパン(株)製)
[A]−10 “jER(登録商標)”YX4000H(ビフェニル型エポキシ、三菱化学(株)製)。
【0055】
(芳香環を含む2官能以上のエポキシ樹脂であり、かつフルオレン構造を有するエポキシ樹脂)
[a1]−1 “オグソール(登録商標)”PG−100(フルオレン型エポキシ樹脂、大阪ガスケミカル(株)製)
[a1]−2 “オグソール(登録商標)”EG−200(フルオレン型エポキシ樹脂、大阪ガスケミカル(株)製)。
【0056】
・構成要素[A]以外のエポキシ樹脂
[A’]−1 “セロキサイド(登録商標)”2021P(脂環式エポキシ樹脂、(株)ダイセル製)
[A’]−2 “エポトート(登録商標)”YH−300(脂肪族ポリグリシジルエーテル、新日鉄住金化学(株)製)。
【0057】
・構成要素[B]:
[B]−1 “リカシッド(登録商標)”DDSA(3−ドデセニル無水コハク酸、新日本理化(株)製)。
【0058】
・構成要素[C]:
[C]−1 HN2200(メチルテトラヒドロ無水フタル酸、日立化成(株)製)
[C]−2 “KAYAHARD(登録商標)”MCD(無水メチルナジック酸、日本化薬(株)製)。
【0059】
・構成要素[B]・[C]以外のエポキシ硬化剤[D]
[D]−1 3,3’−ジアミノジフェニルスルホン(和歌山精化工業(株)製)。
【0060】
・硬化促進剤[E]:
[E]−1 DY070(イミダゾール、ハンツマン・ジャパン(株)製)
[E]−2 “キュアゾール(登録商標)”1B2MZ(イミダゾール、四国化成工業(株)製)
[E]−4 “カオーライザー(登録商標)”No.20(N,N−ジメチルベンジルアミン、花王(株)製)
[E]−5 “U−CAT(登録商標)”SA102(DBU−オクチル酸塩、サンアプロ(株)製)。
【0061】
・その他の成分[F]:
[F]−1 ビスフェノールS(小西化学(株)製)
[F]−2 Victrex100P(ポリエーテルスルホン、住友化学(株)製)
[F]−3 “テクポリマ(登録商標)”MBX−20(架橋PMMA微粒子、積水化成品工業(株)製)
[F]−4 “カネエース(登録商標)”MX−113(コアシェルポリマー33wt%配合マスターバッチ(液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含む)、(株)カネカ製)。
【0062】
・強化繊維
“トレカ(登録商標)”T700SC−12K−50C(引張強度:4.9GPa、東レ(株)製)。
【0063】
<エポキシ樹脂組成物の調製方法>
ビーカー中に、構成要素[A]のエポキシ樹脂を投入し、80℃の温度まで昇温させ30分加熱混練を行った。その後、混練を続けたまま30℃以下の温度まで降温させ、構成要素[B]および[C]の酸無水物や硬化促進剤を加えて10分間撹拌させ、エポキシ樹脂組成物を得た。
【0064】
各実施例および比較例の成分配合比について表1および2に示した。
【0065】
<エポキシ樹脂組成物の粘度測定>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従い調製したエポキシ樹脂組成物の粘度を、JIS Z8803(2011)における「円すい−平板形回転粘度計による粘度測定方法」に従い、標準コーンローター(1°34’×R24)を装着したE型粘度計(東機産業(株)製、TVE−30H)を使用して、回転速度10回転/分で測定した。なお、エポキシ樹脂組成物を調製後、25℃に設定した装置に投入し、1分後の粘度を測定した。
【0066】
<繊維強化複合材料の作製方法>
上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従い調製したエポキシ樹脂組成物を、一方向に引き揃えたシート状にした炭素繊維“トレカ(登録商標)”T700S−12K−50C(東レ(株)製、目付150g/m
2)に含浸させ、エポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを得た。得られたシートを繊維方向が同じになるよう8枚重ねた後、金属製スペーサーにより厚み1mmになるよう設定した金型に挟み、その金型を100℃に加熱したプレス機で2時間加熱硬化を実施した。その後、プレス機から金型を取り出し、さらに150℃に加熱したオーブンで4時間加熱硬化し、繊維強化複合材料を得た。
【0067】
<樹脂硬化物の特性評価方法>
エポキシ樹脂組成物を真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中で、100℃の温度で2時間硬化させた後、さらに150℃の温度で4時間硬化させ、厚さ2mmの板状の樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物から、幅12.7mm、長さ45mmの試験片を切り出し、粘弾性測定装置(ARES、ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、ねじり振動周波数1.0Hz、昇温速度5.0℃/分の条件下で、30〜250℃の温度範囲でDMA測定を行い、ガラス転移温度およびゴム状態弾性率を読み取った。ガラス転移温度は、貯蔵弾性率G’曲線において、ガラス状態での接線と転移状態での接線との交点における温度とした。また、ゴム状態弾性率は、ガラス転移温度を上回る温度領域で、貯蔵弾性率が平坦になった領域での貯蔵弾性率であり、ここではガラス転移温度から40℃上の温度での貯蔵弾性率とした。
【0068】
<繊維強化複合材料の引張強度測定>
上記<繊維強化複合材料の作製方法>に従い作製した繊維強化複合材料から、幅12.7mm、長さ229mmになるように切り出し、両端に1.2mm、長さ50mmのガラス繊維強化プラスチック製タブを接着した試験片を用い、ASTM D 3039に準拠して、インストロン万能試験機(インストロン社製)を用いてクロスヘッドスピード1.27mm/分で引張強度を測定した。サンプル数n=6で測定した値の平均値を引張強度とした。
【0069】
引張強度利用率は、繊維強化複合材料の引張強度/(強化繊維のストランド強度×繊維体積含有率)×100により算出した。
【0070】
なお、繊維体積含有率は、ASTM D 3171に準拠し、測定した値を用いた。
【0071】
<繊維強化複合材料のガラス転移温度測定>
上記<繊維強化複合材料の作製方法>に従い作製した繊維強化複合材料から、小片(5〜10mg)を採取し、JIS K7121(1987)に従い、中間点ガラス転移温度(Tmg)を測定した。測定には示差走査熱量計DSC Q2000(ティー・エイ・インスツルメント社製)を用い、窒素ガス雰囲気下においてModulatedモード、昇温速度5℃/分で測定した。
【0072】
(実施例1)
構成要素[A]として“jER(登録商標)”828を100質量部、構成要素[B]として“リカシッド(登録商標)”DDSAを18質量部、構成要素[C]としてHN2200を72質量部、硬化促進剤として“U−CAT(登録商標)”SA102を2質量部用い、上記<エポキシ樹脂組成物の調製方法>に従ってエポキシ樹脂組成物を調製した。
【0073】
このエポキシ樹脂組成物を上記方法で硬化して硬化物を作製し、動的粘弾性評価を行ったところ、ガラス転移温度は129℃、ゴム状態弾性率は10.0MPaであり、耐熱性とゴム状態弾性率は良好であった。
【0074】
得られたエポキシ樹脂組成物から、<繊維強化複合材料の作製方法>に従って繊維強化複合材料を作製し、繊維体積含有率が65%の繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度を上記方法で測定し、引張強度利用率を算出したところ、75%であった。また、得られた繊維強化複合材料のガラス転移温度は、130℃であった。
【0075】
(実施例2〜10)
樹脂組成をそれぞれ表1に示したように変更した以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物、エポキシ樹脂硬化物、および繊維強化複合材料を作製した。評価結果は表1に示した。得られたエポキシ樹脂硬化物は、いずれも良好な耐熱性、ゴム状態弾性率を示した。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率および耐熱性も良好であった。
【0076】
(比較例1)
構成要素[B]を添加しなかった以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表2に示した。ガラス転移温度は134℃と良好であったが、ゴム状態弾性率が12.1MPaと高い値を示した。その結果、繊維強化複合材料の引張強度利用率は71%と、不十分であった。
【0077】
(比較例2)
構成要素[C]を添加しなかった以外は、実施例1と同じ方法でエポキシ樹脂組成物および樹脂硬化物を作製した。樹脂組成および評価結果は表2に示した。ゴム状態弾性率は4.0MPaと良好であったが、ガラス転移温度が73℃であった。その結果、繊維強化複合材料のガラス転移温度が75℃と、耐熱性が不十分であった。
【0078】
(比較例3)
特許文献1(特開2012−56980号公報)の実施例4に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は128℃と良好であったが、ゴム状態弾性率が13.2MPaと高い値を示した。(表2)その結果、繊維強化複合材料の引張強度利用率は70%と、不十分であった。
【0079】
(比較例4)
特許文献2(特開2015−3938号公報)の実施例7に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は184℃と高かったが、ゴム状態弾性率が18.8MPaと非常に高い値を示した。(表2)その結果、繊維強化複合材料の引張強度利用率は65%と、不十分であった。
【0080】
(比較例5)
特許文献3(特開2013−1711号公報)の実施例2に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は121℃と良好であったが、ゴム状態弾性率が13.0MPaと高い値を示した。(表2)その結果、繊維強化複合材料の引張強度利用率は70%と、不十分であった。
【0081】
(比較例6)
特許文献4(特開2001−323046号公報)の実施例6に記載の方法に従い、エポキシ樹脂組成物を作製した。これを硬化させて得られた樹脂硬化物のガラス転移温度は173℃と高かったが、ゴム状態弾性率は18.0MPaと非常に高い値を示した(表2)。上記<繊維強化複合材料の作製方法>では樹脂が繊維に含浸せず、エポキシ樹脂含浸炭素繊維シートが作製できなかった。そこで、エポキシ樹脂組成物をアセトンに溶解し、液状とせしめた後に炭素繊維に含浸させ、その後減圧乾燥してアセトンを留去することで、エポキシ樹脂含浸炭素繊維シートを作製した。以降は上記<繊維強化複合材料の作製方法>と同様にして、繊維強化複合材料を得た。得られた繊維強化複合材料の引張強度利用率は63%と、不十分であった。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】