(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961913
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】洗浄装置及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/08 20060101AFI20211025BHJP
B08B 3/04 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
B08B3/08 Z
B08B3/04 B
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-160764(P2016-160764)
(22)【出願日】2016年8月18日
(65)【公開番号】特開2018-27526(P2018-27526A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品川 喜昭
(72)【発明者】
【氏名】白根 然朗
(72)【発明者】
【氏名】新田 栄治
(72)【発明者】
【氏名】中川 正
【審査官】
芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−288497(JP,A)
【文献】
特開2015−113480(JP,A)
【文献】
特開昭59−195652(JP,A)
【文献】
特開昭62−286583(JP,A)
【文献】
特開昭61−220777(JP,A)
【文献】
特開平6−306663(JP,A)
【文献】
特開平6−15239(JP,A)
【文献】
実開平5−26174(JP,U)
【文献】
実開平7−37387(JP,U)
【文献】
中国特許出願公開第103619497(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/00 − 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の洗浄槽を備え、上流側の洗浄槽から下流側の洗浄槽に被洗浄物を移送しながら洗浄を行う洗浄装置であって、
前記被洗浄物は、金属容器であり、
複数の前記金属容器の開口部を外側に向けるように収容するラックと、
下流側の前記洗浄槽から上流側の前記洗浄槽に順次洗浄液を送り、最上流側の前記洗浄槽の洗浄液を再生して最下流側の前記洗浄槽に送る洗浄液再生循環部と、
最上流側の前記洗浄槽から順次下流側の前記洗浄槽に移送されて最下流側の前記洗浄槽にて洗浄された被洗浄物に対して、蒸気洗浄と真空乾燥を行う洗浄・乾燥槽と、
前記洗浄液再生循環部にて循環している洗浄液の一部を取り出し蒸発させ前記洗浄・乾燥槽に蒸気を送る蒸気発生部とを備え、
最下流側の前記洗浄槽には、洗浄液を放出する洗浄液シャワーが設けられ、前記洗浄液シャワーから放出される洗浄液に当たるように、被洗浄物を上下動させる上下動部が設けられ、
前記洗浄液シャワーは、前記金属容器の前記開口部に向けて放出するものであることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄液再生循環部は、最上流側の前記洗浄槽の洗浄液を再生窯で再生して最下流側の前記洗浄槽に送るものであり、
前記蒸気発生部は、前記洗浄液再生循環部にて循環している前記再生釜へ送られる前の洗浄液の一部を取り出し蒸発させ前記洗浄・乾燥槽に蒸気を送るものである、請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記蒸気発生部に供給される洗浄液は、最上流側の前記洗浄槽から送られた再生されていない前記洗浄液であることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄液シャワーは、前記蒸気を液化した洗浄液、又は最下流の前記洗浄槽内の洗浄液の少なくとも一方を放出することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄液シャワーの洗浄液及び前記蒸気発生部に供給される洗浄液は、異物除去フィルタにて濾過された洗浄液であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記上流側の前記洗浄槽には、洗浄液を取り出して放出する洗浄液シャワーが設けられ当該洗浄液シャワーから放出される洗浄液に当たるように、被洗浄物を上下動させる上下動部が設けられ、該洗浄液シャワーの洗浄液は異物除去フィルタにて濾過された洗浄液であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄・乾燥槽と前記蒸気発生部がそれぞれ複数配備されていることを特徴とする請 求項1〜6のいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項8】
被洗浄物は、金属容器であり、
複数の前記金属容器の開口部を外側に向けてラックに収容し、最上流側の洗浄槽から順次下流側の洗浄槽に被洗浄物を移送させ、
下流側の洗浄槽から上流側の洗浄槽に順次洗浄液を送り、最上流側の洗浄槽の洗浄液を再生して最下流側の洗浄槽に送る洗浄液の再生循環を行いながら、各洗浄槽にて浸漬洗浄を行う洗浄工程と、
洗浄・乾燥槽にて、前記洗浄工程を経た被洗浄物に対して蒸気洗浄と真空乾燥を行う蒸気洗浄・真空乾燥工程とを有し、
前記洗浄工程では、最下流側の洗浄槽にて、被洗浄物を上下動させながら、当該被洗浄物に、洗浄液を洗浄液シャワーとして当てるシャワー洗浄を行い、
前記洗浄液シャワーは、前記金属容器の前記開口部に向けて放出することを特徴とする洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄工程で行われる洗浄液の再生循環は、最上流側の前記洗浄槽の洗浄液を再生窯で再生して最下流側の前記洗浄槽に送るものであり、
前記洗浄・乾燥槽にて行う前記蒸気洗浄は、前記再生循環している前記再生窯へ送られる前の洗浄液の一部を取り出し蒸発させておこなうものである、請求項8記載の洗浄方法。
【請求項10】
前記シャワー洗浄は洗浄・乾燥槽内に供給された蒸気を液化した洗浄液、または最下流の前記洗浄槽内の洗浄液の少なくとも一方を洗浄液シャワーとして放出することを特徴とする請求項8又は9記載の洗浄方法。
【請求項11】
前記上流側の前記洗浄槽にて、被洗浄物を上下動させながら当該被洗浄物のシャワー洗浄を行うことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形などの成形品や加工品を洗浄する洗浄装置及び洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プレス成形などで成形された金属容器(成形品)には、プレス機などで使われる潤滑油や成形時に発生する微細な金属異物が付着しており、成形加工後の工程で、これらを洗浄して除去することが行われている。
【0003】
このような成形品を洗浄する洗浄装置としては、複数の浸漬洗浄槽を備えて、多段に超音波洗浄を行い、仕上げ洗浄として、蒸気洗浄槽にて洗浄液を蒸発させた蒸気洗浄を行い、その蒸気洗浄槽を減圧することで、真空乾燥を行うものが知られている(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−288497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術では、複数の洗浄槽において、上流側の洗浄槽から下流側の洗浄槽に被洗浄物を移送しながら洗浄を行い、下流側の槽の洗浄液を順次上流側の槽に送り、最上流側の槽における汚れた洗浄液を一旦タンクに溜めて、蒸発・液化による再生を行った後、最下流側の槽に送る洗浄液の再生・循環を行っている。そして、被洗浄物は、最上流側の浸漬洗浄槽から順次下流側の浸漬洗浄槽に移送され、各槽で洗浄液に被洗浄物を浸漬した超音波洗浄が行われている。
【0006】
このような従来技術は、複数の浸漬洗浄槽で洗浄液を再生・循環しながら、各槽で多段に浸漬洗浄を行っており、被洗浄物に付着した油成分の除去には高い洗浄効果を発揮することができる。しかしながら、成形品に付着する微細な金属異物の除去に関しては、十分な洗浄効果が得られない問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものである。すなわち、複数の洗浄槽間で洗浄液を再生・循環させる洗浄装置において、プレス成形に使用される潤滑油成分のみならず微細な金属異物の除去に関しても十分な洗浄効果が得られるようにすること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明による洗浄装置及び洗浄方法は、以下の構成を具備するものである。
【0009】
複数の洗浄槽を備え、上流側の洗浄槽から下流側の洗浄槽に被洗浄物を移送しながら洗浄を行う洗浄装置であって、前記被洗浄物は、金属容器であり、複数の前記金属容器の開口部を外側に向けるように収容するラックと、下流側の前記洗浄槽から上流側の前記洗浄槽に順次洗浄液を送り、最上流側の前記洗浄槽の洗浄液を再生して最下流側の前記洗浄槽に送る洗浄液再生循環部と、最上流側の前記洗浄槽から順次下流側の前記洗浄槽に移送されて最下流側の前記洗浄槽にて洗浄された被洗浄物に対して、蒸気洗浄と真空乾燥を行う洗浄・乾燥槽と、
前記洗浄液再生循環部にて循環している洗浄液の一部を取り出し蒸発させ前記洗浄・乾燥槽に蒸気を送る蒸気発生部とを備え、最下流側の前記洗浄槽には、洗浄液を放出する洗浄液シャワーが設けられ、前記洗浄液シャワーから放出される洗浄液に当たるように、被洗浄物を上下動させる上下動部が設けられ
、前記洗浄液シャワーは、前記金属容器の前記開口部に向けて放出するものであることを特徴とする洗浄装置。
【0010】
被洗浄物は、金属容器であり、複数の前記金属容器の開口部を外側に向けてラックに収容し、最上流側の洗浄槽から順次下流側の洗浄槽に被洗浄物を移送させ、下流側の洗浄槽から上流側の洗浄槽に順次洗浄液を送り、最上流側の洗浄槽の洗浄液を再生して最下流側の洗浄槽に送る洗浄液の再生循環を行いながら、各洗浄槽にて浸漬洗浄を行う洗浄工程と、洗浄・乾燥槽にて、前記洗浄工程を経た被洗浄物に対して蒸気洗浄と真空乾燥を行う蒸気洗浄・真空乾燥工程とを有し、前記洗浄工程では、最下流側の洗浄槽にて、被洗浄物を上下動させながら、当該被洗浄物に、洗浄液を洗浄液シャワーとして当てるシャワー洗浄を行
い、前記洗浄液シャワーは、前記金属容器の前記開口部に向けて放出することを特徴とする洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、このような構成を備えることで、複数の洗浄槽間で洗浄液を再生・循環させる洗浄装置において、油成分及び微細な金属異物の除去に関して十分な洗浄効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る洗浄装置を示している。洗浄装置1は、複数の洗浄槽10,11,12を備えている。図示の例では、洗浄槽10,11,12は3槽構成にしているが、これに限らず、2槽以上であれば何槽であってもよい。洗浄槽10,11,12には、洗浄液が貯留されていて、図示省略した超音波洗浄装置などを必要に応じて配備することができる。被洗浄物Wは最上流側の洗浄槽10から最下流側の洗浄槽12に順次移送され、各洗浄槽10,11,12では、被洗浄物Wに対して多段階の浸漬洗浄が行われる。
【0014】
被洗浄物Wは、プレス成形された金属容器などであり、図示の例では、複数の金属容器が開口部W1を外側に向けるように、一つのラック20に収容されて一体的に移送できるようになっている。被洗浄物Wの移送はラック移送装置21によってなされ、ラック20に収容された被洗浄物Wは、先ず第1の洗浄槽10にて浸漬洗浄がなされ、その次に第2の洗浄槽11にて浸漬洗浄がなされ、その次に第3の洗浄槽12にて浸漬洗浄がなされる。ラック移送装置21としては、ラック20を上下動させる上下動部21Fを備えると共に、ラック20を平行移動させる移動部を備えている。
【0015】
洗浄槽10,11,12に貯留される洗浄液は、油成分を分解でき、蒸発・液化の再生過程で洗浄能力を維持することができる液体であればどのようなものであってもよく、例えば、炭化水素溶剤などを用いることができる。
【0016】
複数の洗浄槽10,11,12に対しては、下流側の洗浄槽から上流側の洗浄槽に順次洗浄液を送り、最上流側の洗浄槽10の洗浄液を再生して最下流側の洗浄槽12に送る洗浄液再生循環部2を備えている。図示の例では、洗浄液再生循環部2は、洗浄液タンク14、再生釜30、液化器31を備えている。
【0017】
また、洗浄液再生循環部2は、洗浄槽12から排出された洗浄液を洗浄槽12に戻す洗浄液流路54,55,56、洗浄槽12から排出された洗浄液を洗浄槽11に送る洗浄液流路52,44、洗浄槽11から排出された洗浄液を洗浄槽11に戻す洗浄液流路51,52,44、洗浄槽11から排出された洗浄液を洗浄液タンク14に送る洗浄液流路45、洗浄液タンク14に溜められた洗浄液を最上流の洗浄槽10に戻す洗浄液流路41,46、洗浄槽10の排液口10Aから排出された洗浄液を洗浄液タンク14に送る洗浄液流路40を備えている。
【0018】
さらに、洗浄液再生循環部2は、洗浄液タンク14から排出された洗浄液を再生釜30に送る洗浄液流路42、再生釜30にて洗浄液を蒸発した蒸気を液化器31に送る蒸気流路60、液化器31にて液化された洗浄液を最下流側の洗浄槽12に送る洗浄液流路43を備えている。
【0019】
また、各洗浄槽10,11,12は、自身の槽に溜められた洗浄液を取り出して洗浄液シャワー10S,11S,12Sによりラック20の側方から被洗浄物Wの開口部W1に向けて放出するシャワー洗浄を行う洗浄液流路を備えている。具体的には、洗浄槽10においては、洗浄液流路40を介して取り出した自身の洗浄槽10内の洗浄液及び洗浄液流路45を介して洗浄槽11から送られてきた洗浄液を洗浄液タンク14に溜め、その洗浄液を、洗浄液流路41,46を介して洗浄槽10に戻すと共に、洗浄液流路50を介して洗浄液シャワー10Sによって放出している。
【0020】
洗浄槽11においては、洗浄液流路51を介して取り出した自身の洗浄槽11内の洗浄液及び洗浄液流路52を介して洗浄槽12から送られてきた洗浄液を、洗浄液流路44を介して洗浄槽11に戻すと共に、洗浄液流路52,53を介して洗浄液シャワー11Sによって放出している。洗浄槽12においては、洗浄液流路54を介して取り出した自身の洗浄槽12内の洗浄液及び後述する洗浄・乾燥槽13より蒸気を取り出す蒸気流路62を介して取り出された蒸気を液化器32によって液化した洗浄液を、洗浄液流路56を介して洗浄槽12に戻すと共に、洗浄液流路55,57を介して洗浄液シャワー12Sによって放出している。
【0021】
洗浄液シャワー10S,11S,12Sは、各洗浄槽10,11,12の上端と各洗浄槽に貯留された洗浄液面との間に設けられており、シャワー洗浄を行う際には、洗浄液シャワー10S,11S,12Sから放出された洗浄液がラック20に収容された被洗浄物W全体に当たるように、被洗浄物Wを上下動部21Fで上下動させながら各洗浄槽内の貯留された洗浄液に対して出し入れして行うため、高い洗浄効果を得ることができる。なお、洗浄槽10,11の洗浄液シャワーは必要に応じて適宜行うこともできる。
【0022】
ここで、各洗浄槽10,11,12から取り出した洗浄液を自身の洗浄槽10,11,12に戻す洗浄液流路、或いは洗浄液シャワー10S,11S,12Sの洗浄液流路41,52,55には、異物除去フィルタ10F,11F,12Fが配備されており、異物除去フィルタ10F,11F,12Fを通過した洗浄液が洗浄液シャワー10S,11S,12Sに送られている。これによって、各洗浄槽10,11,12で行われる洗浄工程で被洗浄物から除去された微細な異物が槽内に溜まらないようにすると共に、洗浄液シャワー10S,11S,12Sによるシャワー洗浄時に、異物が再付着しないようにしている。
【0023】
また、洗浄装置1は、蒸気洗浄と真空乾燥を行う洗浄・乾燥槽13を備えている。洗浄・乾燥槽13では、最上流側の洗浄槽10から順次下流側の洗浄槽に移送されて最下流側の洗浄槽12にて洗浄された被洗浄物Wに対して、蒸気洗浄と真空乾燥が行われる。
【0024】
蒸気洗浄と真空乾燥のタクトタイムは各洗浄槽の洗浄工程のタクトタイムよりも長いため、ここでは、多段階の洗浄を行う洗浄槽10,11,12に対して複数(2槽)の洗浄・乾燥槽13を設けており、最下流の洗浄槽12の洗浄工程が終了した被洗浄物Wを洗浄・乾燥槽13に交互に移送し、これにより、タクトタイムが長い蒸気洗浄と真空乾燥を滞ること無く連続的に行い、複数バッチの被洗浄物を高い作業効率で洗浄・乾燥処理できるようにしている。
【0025】
洗浄・乾燥槽13に対しては、洗浄液再生循環部2にて循環している洗浄液の一部を取り出し蒸発させ洗浄・乾燥槽13に蒸気を送る蒸気発生部3(蒸気釜33)が設けられている。図示の例では、洗浄液タンク14に溜められた洗浄液を再生釜30に送る洗浄液流路42を分岐し、分岐した洗浄液流路58を介して、洗浄液が蒸気釜33に送られている。また、蒸気釜33で蒸発した洗浄液の蒸気が蒸気流路61を介して洗浄・乾燥槽13に送られている。図示の例では、洗浄液流路58は二つの流路58A,58Bに分岐されており、それぞれの流路58A,58Bが2つの洗浄・乾燥槽13に対応する2つの蒸気釜33に接続されている。流路58A,58Bには、必要に応じて異物除去フィルタ34がそれぞれ配備されている。蒸気釜33に送られて蒸発しなかった洗浄液は、洗浄液流路59を介して再生釜30に送られている。
【0026】
このような、洗浄装置1を用いた被洗浄物Wの洗浄方法を説明する。この洗浄方法は、洗浄槽10,11,12にて多段階に行われる洗浄工程と、その後に洗浄・乾燥槽13にて行われる蒸気洗浄・真空乾燥工程とを有している。洗浄工程では、下流側の洗浄槽から上流側の洗浄槽に順次洗浄液を送り、最上流側の洗浄槽10の洗浄液を再生して最下流側の洗浄槽12に送る洗浄液の再生循環を行いながら、最上流側の洗浄槽10から順次下流側の洗浄槽に被洗浄物Wを移送させ、各洗浄槽10,11,12にて浸漬洗浄及びシャワー洗浄を行う。
【0027】
このように、洗浄(浸漬洗浄及びシャワー洗浄)工程では、洗浄液再生循環部2を備えることで、最下流側の洗浄槽12において最も綺麗な洗浄液での洗浄が行えるようになっており、一つの被洗浄物Wに対しては、最上流側の洗浄槽10での洗浄後に、洗浄槽11での洗浄が行われ、最後に洗浄槽12での洗浄が行われるように、被洗浄物Wの移送が行われる。
【0028】
洗浄工程における各洗浄槽10,11,12での洗浄は、同様に行われる。すなわち、ラック20に収容した被洗浄物Wを槽内の洗浄液に浸漬して、超音波洗浄装置などを配備して浸漬洗浄を行い、更に加えて、ラック20を上下動させながら各洗浄槽内に貯留された洗浄液に対して出し入れして、洗浄液シャワー10S,11S,12Sによるシャワー洗浄を行う。この際、各洗浄槽での洗浄で被洗浄物Wから除去された異物は、各洗浄槽における洗浄液の循環流路に設けられる異物除去フィルタ10F,11F,12Fで回収される。
なお、前述したように、洗浄槽10,11のシャワー洗浄は必要に応じて適宜行うこともできる。
【0029】
蒸気洗浄・真空乾燥工程では、洗浄・乾燥槽13にて、洗浄工程を経た被洗浄物Wに対して蒸気洗浄と真空乾燥を行う。蒸気洗浄と真空乾燥は、一つの洗浄・乾燥槽13内で連続的に行われ、先ず、蒸気釜33で発生した蒸気を洗浄・乾燥槽13内に送って蒸気洗浄を行い、その後、洗浄・乾燥槽13内を減圧して真空乾燥を行う。
【0030】
洗浄装置1を用いた洗浄方法では、洗浄工程、特に、最下流側の洗浄槽12での洗浄工程における浸漬洗浄、シャワー洗浄にて、被洗浄物Wに付着した異物をほぼ完全に除去することができる。洗浄槽12には、洗浄液再生循環部2によって、洗浄槽12内から排出され、洗浄槽12に戻された洗浄液、再生釜30で蒸発され液化器31で液化した洗浄液、洗浄・乾燥槽13より取り出された蒸気を液化器32によって液化した洗浄液が送られて浸漬洗浄を行っている。また、最下流側の洗浄槽12内の洗浄液と、洗浄・乾燥槽13内に供給された蒸気を液化器32で液化した洗浄液を用いて、被洗浄物Wを上下動させながら最下流側の洗浄槽12におけるシャワー洗浄を行っている。なお、シャワー洗浄は、洗浄槽12内の洗浄液或いは洗浄・乾燥槽13内に供給された蒸気を液化器32で液化した洗浄液の少なくとも一方を適宜用いて行うこともできる。更には、洗浄液流路55と蒸気発生部3(蒸気釜33)の洗浄液流路58(58A,58B)には、異物除去フィルタ12F,34が設けられているので、洗浄槽12における異物の滞留をほぼ確実に排除している。また、各洗浄槽10,11,12における浸漬洗浄時間及び上下動回数、洗浄液シャワーの流量は、個別に異なる設定にしても良い。
【0031】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る洗浄装置1及びこれを用いる洗浄方法によると、複数の洗浄槽10,11,12間で洗浄液を再生・循環させる洗浄において、油成分及び微細な金属異物の除去に関して十分な洗浄効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0032】
1:洗浄装置,2:洗浄液再生循環部,3:蒸気発生部,
10,11,12:洗浄槽,10A:排液口,
13:洗浄・乾燥槽,14:洗浄液タンク,
10S,11S,12S:洗浄液シャワー,
10F,11F,12F,34:異物除去フィルタ,
20:ラック,21:ラック移送装置,21F:上下動部,
30:再生釜,31,32:液化器,33:蒸気釜,
W:被洗浄物(金属容器),W1:開口部