(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るインクジェットプリンタ1の概略構成について説明する。
図1に示すように、プリンタ1は、プラテン2、キャリッジ3、インクジェットヘッド5(以下、単にヘッド5とも称す)、ホルダ6、給紙ローラ7、排紙ローラ8、メンテナンスユニット9、ユーザインターフェース90(
図2参照)、温度取得部91(
図2参照)、及び制御装置100(
図2参照)などを備えている。尚、以下では、
図1の紙面手前側をプリンタ1の「上方」、紙面向こう側をプリンタ1の「下方」と定義する。また、
図1に示す前後方向及び左右方向を、プリンタ1の「前後方向」及び「左右方向」と定義する。以下、前後、左右、上下の各方向語を適宜使用して説明する。
【0013】
プラテン2の上面には、記録媒体である用紙Pが載置される。また、プラテン2の上方には、左右方向(走査方向)に平行に延びる2本のガイドレール15,16が設けられる。
【0014】
キャリッジ3は、2本のガイドレール15,16に取り付けられ、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール15,16に沿って走査方向に移動可能である。また、キャリッジ3には、駆動ベルト17が取り付けられている。駆動ベルト17は、2つのプーリ18,19に巻き掛けられた無端状のベルトである。一方のプーリ18はキャリッジ駆動モータ20(
図2参照)に連結されている。キャリッジ駆動モータ20によってプーリ18が回転駆動されることで駆動ベルト17が走行し、これにより、キャリッジ3が走査方向に往復移動する。また、このとき、キャリッジ3上に搭載されたヘッド5は、このキャリッジ3とともに走査方向に往復移動することになる。
【0015】
ホルダ6は、左右方向に並ぶ4つのカートリッジ装着部41を備えている。各カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42が着脱可能に装着される。4つのカートリッジ装着部41に装着される4つのインクカートリッジ42には、それぞれ、ブラック、イエロー、シアン、マゼンタの4色のいずれかの色の顔料インクであって、互いに異なる色の顔料インクが貯溜されている。
【0016】
また、各カートリッジ装着部41は、互いに容量の異なる複数種類のインクカートリッジ42を選択的に装着可能である。本実施形態では、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、各カートリッジ装着部41は、小容量のインクカートリッジ42a、及び、大容量のインクカートリッジ42bを選択的に装着可能である。
【0017】
図3(a)に示すように、小容量のインクカートリッジ42aは、略直方体状の筐体43a、筐体43a内に配置され、インクを貯溜する略直方体状の貯溜室44a、及び、貯溜室44aの下部に接続された排出管45、貯溜室44aに接続された大気連通部39を備えている。
【0018】
排出管45は、貯溜室44aに貯溜されたインクを、インクカートリッジ42a外に供給するための流路を画定している。カートリッジ装着部41は、インクカートリッジ42aが装着されたときに、この排出管45と接続してインクを流通するニードル41aを備えている。
【0019】
大気連通部39は、貯溜室44aとインクカートリッジ42a外とを連通させる流路、及び、当該流路上に設けられたバルブなどを備えている。インクカートリッジ42aがカートリッジ装着部41に装着されたときに、このバルブが開くことにより、貯溜室44aが、カートリッジ装着部41に形成された大気連通流路41bを介して大気に連通する。
【0020】
また、インクカートリッジ42aは、筐体43aの外側面に配置された接点141と、筐体43a内に配置され、接点141に電気的に接続されたメモリ142とを有している。メモリ142には、自身が出荷時に貯溜しているインクの初期貯溜量(最大貯溜量)を示す容量情報などが予め記憶されている。
【0021】
カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42aが装着されたときに、接点141と電気的に接続する接点151が設けられている。インクカートリッジ42aの接点141と、カートリッジ装着部41の接点151とが電気的に接続されることで、制御装置100は、インクカートリッジ42aのメモリ142の記憶内容を参照することができる。また、カートリッジ装着部41には、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着されているか否かを検知するための装着検知センサ152、及びインクカートリッジ42のインク残量が所定量未満(例えば、ニアエンプティ)になったか否かを検出するための光センサ153が設けられている。
【0022】
次に、大容量のインクカートリッジ42bについて説明する。なお、上述の小容量のインクカートリッジ42aと、大容量のインクカートリッジ42bとは、筐体及び貯溜室の構成が相違するのみで、その他の構成は同じ構成である。具体的には、
図3(b)に示すように、インクカートリッジ42bの貯溜室44bは、下側貯溜部44b1と、この下側貯溜部44b1の上側に配される上側貯溜部44b2とを有する。貯溜室44bの上下方向の幅寸法及び左右方向の幅寸法は、小容量のインクカートリッジ42aの貯溜室44aと同一である。また、下側貯溜部44b1の前後方向の幅寸法はインクカートリッジ42aの貯溜室44aと同一である。一方で、上側貯溜部44b2の前後方向の幅寸法はインクカートリッジ42aの貯溜室44aよりも長い。このため、貯溜室44bは、貯溜室44aよりも大量のインクを貯溜可能となっている。また、貯溜室44a及び貯溜室44b(下側貯溜部44b1)の底面積は、互いに同じである。インクカートリッジ42bの筐体43bは、貯溜室44bの形状に沿った形状をしている。
【0023】
また、インクカートリッジ42bは、インクカートリッジ42aと同様に、大気連通部39、排出管45、接点141及びメモリ142を有している。インクカートリッジ42bのメモリ142には、上記容量情報が予め記憶されている。また、インクカートリッジ42bにおける排出管45と貯溜室44bとの接続位置の上下方向の高さ位置は、インクカートリッジ42aにおける排出管45と貯溜室44aとの接続位置の上下方向の高さ位置と同じである。
【0024】
図1に戻って、ヘッド5は、先に触れたように、キャリッジ3に対して、着脱可能に装着されている。このヘッド5は、ヘッド本体13とサブタンク14とを含む。サブタンク14の上面には、チューブジョイント21が設けられており、当該チューブジョイント21には4本のインク供給チューブ22それぞれの一端が着脱可能に接続されている。4本のインク供給チューブ22それぞれの他端は、ホルダ6の4つのカートリッジ装着部41のニードル41aそれぞれに接続されている。カートリッジ装着部41に装着された4つのインクカートリッジ42内のインクは、この4本のインク供給チューブ22を介して、サブタンク14にそれぞれ供給される。
【0025】
ヘッド本体13は、サブタンク14の下部に取り付けられている。ヘッド本体13は、その下面に形成された複数のノズル46と、このノズル46と連通するヘッド流路48(
図5参照)を有する。ヘッド本体13は、サブタンク14からインクが供給され、複数のノズル46からインクを吐出する。複数のノズル46は、左右方向に並ぶ、4列のノズル列47を構成している。この4列のノズル列47は、イエローのインクを吐出するノズル列47Yと、マゼンタのインクを吐出するノズル列47Mと、シアンのインクを吐出するノズル列47Cと、ブラックのインクを吐出するノズル列47Kとからなる。このように、4列のノズル列47は、互いに異なる色のインクを吐出する。
【0026】
サブタンク14は、合成樹脂で成形された部材であり、
図4及び
図5に示すように水平面に沿って延在する板状の本体部分60と、この本体部分60の一端部から鉛直下方に延びてヘッド本体13に接続される連結部分61とを有する。サブタンク14には、ヘッド本体13に4色のインクをそれぞれ供給する4つの供給流路62が形成されている。なお、
図4では、図面の簡単のため、4つの供給流路62のうち1つの供給流路62についてのみ全体を図示し、残りの3つの供給流路62については、一部の図示を省略している。
【0027】
本体部分60の上面には、4本のインク供給チューブ22が接続可能なチューブジョイント21が取り付けられている。このチューブジョイント21にインク供給チューブ22が接続されることで、インクカートリッジ42に貯溜されたインクを供給流路62に供給することが可能となる。
【0028】
各供給流路62は、本体部分60に形成されたダンパー室71と、連結部分61に形成された連結流路75とを有する。ダンパー室71は、本体部分60の表面に形成された凹部であり、4色のインクにそれぞれ対応した4つのダンパー室71が、本体部分60の上面側と下面側に2つずつ設けられている。
図5に示すように、上面側のダンパー室71と下面側のダンパー室71とが背中合わせとなるように配置されている。また、本体部分60の上面に形成されたダンパー室71は、同じく本体部分60の上面に形成された溝状の流路72によってチューブジョイント21に接続されている。さらに、このダンパー室71は、本体部分60の上面に形成された流路73によって、連結流路75に接続されている。尚、図面の簡単のため、
図4では図示を省略しているが、本体部分60の下面に形成されたダンパー室71についても、本体部分60の下面に形成された流路によって、チューブジョイント21及び連結流路75に接続されている。
【0029】
本体部分60の上下両面にはそれぞれ可撓性のフィルム78,79が貼り付けられ、本体部分60に形成されたダンパー室71を含む流路が、フィルム78,79によって覆われている。また、ダンパー室71とその前後の流路72,73は、深さはほぼ同じであるが、ダンパー室71の流路幅は溝状の流路72,73よりもかなり大きくなっている。これにより、供給流路62は、ダンパー室71において局部的に容積が大きくなった流路形状を有する。ヘッド本体13でインクが消費されると、ヘッド本体13内のインクの圧力が減少するため、それに応じて、インクカートリッジ42からサブタンク14内の供給流路62にインクが供給される。その際に、供給流路62内のインクに大きな圧力変動が生じると、それがヘッド本体13まで伝わってインクの吐出に悪影響を及ぼす。しかし、供給流路62に、容積が大きく、且つ、可撓性のフィルム78,79で覆われたダンパー室71が設けられることによって、供給流路62内のインクに生じる圧力変動がダンパー室71で吸収される。
【0030】
また、
図4に示すように、本体部分60には、4つの連結流路75にそれぞれ接続された溝状の4つの排気流路74も形成されている。各排気流路74は、サブタンク14の右側面に設けられた排気部23まで延びている。4つの排気部23のそれぞれの内部には、外部との連通/閉止を切り換える弁(図示省略)が設置されている。尚、排気流路74についても、図面の簡単のため、本体部分60の上面に形成された1つの排気流路74についてのみ全体を図示しており、残りの3つの排気流路74については、一部の図示を省略している。
【0031】
なお、以下では、説明の便宜上、
図1に示すように、インク供給チューブ22のインクカートリッジ42との接続位置から複数のノズル46に至る流路全体を全インク流路85と称する。
【0032】
図1に戻って、給紙ローラ7と排紙ローラ8は、搬送モータ29(
図2参照)によってそれぞれ同期して回転駆動される。給紙ローラ7と排紙ローラ8は協働して、プラテン2に載置された用紙Pを
図1に示す搬送方向に搬送する。
【0033】
そして、プリンタ1は、給紙ローラ7と排紙ローラ8によって用紙Pを搬送方向に搬送しつつ、キャリッジ3とともにヘッド5を走査方向に移動させながらインクを吐出させることにより、用紙Pに所望の画像等を印刷する。即ち、本実施形態のプリンタ1は、シリアル式のインクジェットプリンタである。
【0034】
メンテナンスユニット9は、ヘッド5の吐出機能の維持、回復のためのメンテナンス動作を行うためのものであり、キャップユニット50、吸引ポンプ51、切換装置52、及び廃液タンク53等を備えている。
【0035】
キャップユニット50は、プラテン2よりも走査方向一方側(
図1の右側)の位置に配置されており、キャリッジ3がプラテン2よりも右側に移動したときにはこのキャップユニット50と上下に対向する。また、キャップユニット50は、キャップ駆動モータ24(
図2参照)により駆動されて、上下方向に昇降可能である。このキャップユニット50は、共にヘッド5に接触して装着可能な、ノズルキャップ55、及び排気キャップ56を備えている。ノズルキャップ55は、例えばゴム材料によって構成されており、ブラックキャップ部55a及びカラーキャップ部55bを有する。
【0036】
キャリッジ3がキャップユニット50と対向した状態では、ノズルキャップ55がヘッド本体13の下面と対向し、排気キャップ56がサブタンク14の4つの排気部23の下面と対向する。そして、キャリッジ3とキャップユニット50とが対向した状態でキャップユニット50が上昇すると、キャップユニット50がヘッド本体13及びサブタンク14に装着される。このとき、ブラックキャップ部55aによりノズル列47Kに属する全てのノズル46が覆われ、カラーキャップ部55bにより、3列のノズル列47Y,47M,47Cに属する全てのノズル46が共通に覆われる。また、このとき、排気キャップ56が4つの排気部23に接続される。排気キャップ56には、4つの排気部23内の弁をそれぞれ開閉する4本の棒状の開閉部材27が取り付けられている。詳細な説明は省略するが、排気キャップ56が4つの排気部23に接続された状態で、4本の棒状の開閉部材27は、排気モータ28(
図2参照)によって上下に駆動され、下方から排気部23内に挿入されることによって内部の弁を駆動する。
【0037】
ノズルキャップ55のブラックキャップ部55a及びカラーキャップ部55b、並びに、排気キャップ56は、それぞれ、切換装置52を介して吸引ポンプ51に接続されている。切換装置52は、吸引ポンプ51の連通先を、ブラックキャップ部55a、カラーキャップ部55b、及び排気キャップ56の間で選択的に切り換える。廃液タンク53は、吸引ポンプ51の切換装置52とは反対側に接続されている。
【0038】
そして、プリンタ1では、制御装置100の制御により、メンテナンス動作として、吸引パージ及び排気パージをメンテナンスユニット9に行わせることができる。
【0039】
吸引パージは、ノズル46からインクを強制的に排出させるパージである。ノズル列47Kに属するノズル46からブラックのインクを強制的に排出させる吸引パージを行う際には、ノズルキャップ55でノズル46を覆った状態で、ブラックキャップ部55aを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を駆動させる。これにより、ブラックキャップ部55a内が負圧となることで、インクカートリッジ42からノズル46に向かう方向の移送圧力が、全インク流路85内及びインクカートリッジ42内のインクに付与され、その結果として、ノズル46からブラックのインクが強制的に排出される。
【0040】
同様に、ノズル列47Y,47M,47Cに属するノズル46からカラーのインクを強制的に排出させる吸引パージを行う際には、ノズルキャップ55でノズル46を覆った状態で、カラーキャップ部55bを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を駆動させる。
【0041】
なお、本実施形態では、吸引パージの種類として、ノズルメンテナンスパージ、及び沈降インク排出パージの2種類がある。ノズルメンテナンスパージは、ヘッド5内の異物や気泡、高粘度化したインク等をノズル46から排出させて、ノズル46の吐出特性を回復させることを目的としたパージである。このノズルメンテナンスパージには、前回の印刷処理から所定期間経過したときに自動的に実行する定期パージや、ユーザインターフェース90を介したユーザ入力に基づいて実行するマニュアルパージなどが含まれる。沈降インク排出パージは、詳細は後述するが、インクカートリッジ42内において局所的に粘度が高くなった顔料インクをノズル46から排出させることを目的としたパージである。
【0042】
排気パージは、サブタンク14の供給流路62内等で成長した気泡等のエアを、ヘッド本体13に移動してしまう前に排気部23から排気するパージである。この排気パージは、例えば、ノズルメンテナンスパージの前に実行される。また、この排気パージを行う際には、排気キャップ56が排気部23に接続され、且つ、開閉部材27により排気部23内の弁が開放された状態で、切換装置52により吸引ポンプ51を排気キャップ56に連通させてから吸引ポンプ51を駆動させる。これにより、排気部23に負圧を生じて、4つの供給流路62のエアを、排気部23から同時に排気することができる。
【0043】
吸引パージや排気パージによって、ヘッド5から排出されたインクは、吸引ポンプ51に接続された廃液タンク53に送られる。
【0044】
ユーザインターフェース90は、ユーザに対する情報の出力、及び、ユーザから情報を取得ためのインターフェースであり、本実施形態では、
図2に示すように、操作キー90a及びディスプレイ90bを備えている。操作キー90aは、ユーザからの入力を受け付けて、制御装置100に出力する。ディスプレイ90bは、制御装置100からの指示に従い、種々の情報を表示する。
【0045】
温度取得部91は、カートリッジ装着部41近傍に配置された温度センサを有しており、インクカートリッジ42の温度に関する温度情報を取得する。なお、上記温度情報は、温度センサがインクカートリッジ42の温度を直接計測できるのであれば、温度センサにより計測された温度そのものを示す情報であってもよい。また、温度センサがインクカートリッジ42の周囲温度やインクジェットプリンタ1内の内部温度しか計測できない場合には、計測した周囲温度や内部温度から推測したインクカートリッジ42の温度を上記温度情報としてもよい。また、温度取得部91は、インクカートリッジ42の温度に連動して変動する所定のパラメータを温度情報として取得してもよい。温度取得部91は、以上のようにして取得した温度情報を、制御装置100に出力する。
【0046】
制御装置100は、
図2に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103、不揮発性メモリ104、制御回路105、バス106等を含む。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。不揮発性メモリ104には、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。不揮発性メモリ104は、各インクカートリッジ42内に残留するインク残量を記憶するための残量カウンタ104aや、インク色ごとの、ノズル46から吐出されたインクの総吐出量を記憶するための吐出量カウンタ104bなどを備える。制御回路105には、ヘッド5、キャリッジ駆動モータ20、キャップユニット50を昇降させるキャップ駆動モータ24等、プリンタ1の様々な装置あるいは駆動部と接続されている。また、制御回路105は、PC等の外部装置31と接続されている。
【0047】
CPU101は、外部装置31から送信された印刷指令に基づき、画像データからノズル46から吐出されるべきインクの量を示す吐出データを生成し、この後、ヘッド5やキャリッジ駆動モータ20等を制御して、当該吐出データに基づきノズル46からインクを吐出させて、用紙Pに画像を印刷する。また、CPU101は、吸引ポンプ51及び切換装置52等を制御して、吸引パージや排気パージを実行させる。
【0048】
なお、本実施形態では、制御装置100は、単一のCPUにより各処理を実行するように構成されているが、複数のCPU、単一のASIC(application specific integrated circuit)、複数のASIC、あるいは、CPUと特定のASICの組み合わせにより各処理を実行するように構成されていてもよい。
【0049】
ところで、インクカートリッジ42が貯溜する顔料インクは、顔料が溶媒中に分散された状態で存在しており、長時間静置状態にあると比重の大きい顔料がインクカートリッジ42の底部に沈降する。このように、顔料がタンクの底部に沈降すると、インクカートリッジ42の底部において顔料インクの顔料濃度が局所的に高くなり、その粘度も高くなる。
【0050】
特に、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42では、カラーの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42と比較して、顔料の沈降量が多く、顔料インクの粘度がより高くなる。これは、ブラックの顔料インクは、カラーの顔料インクよりも、顔料粒子の粒子径が大きくて重く、且つその顔料粒子の量が多いことに起因する。このように、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42において、底部付近にある顔料インクの粘度が高くなると、この粘度が高い顔料インクが供給されるヘッド5において、ノズル46の目詰まり等が生じ得る。
【0051】
そこで、本実施形態では、CPU101は、インクカートリッジ42の底部付近にある局所的に粘度が高い顔料インクをノズル46から排出させることを目的として、メンテナンスユニット9に沈降インク排出パージを実行させる。なお、上述したように、カラーの顔料インクは、ブラックの顔料インクよりも顔料が沈降し難い。このため、本実施形態では、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42の顔料インクをノズル46から排出させる沈降インク排出パージは行うが、カラーの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42の顔料インクをノズル46が排出させる沈降インク排出パージは行わない。以下、沈降インク排出パージについて詳細に説明する。
【0052】
上述したように、インクカートリッジ42の貯溜室44a,44bに貯溜されたインクは、当該貯溜室44a,44bの下部に接続された排出管45を介してヘッド5に供給される。このため、ヘッド5のノズル46からインクが吐出されると、その吐出量分だけ、インクカートリッジ42の底部付近にあるインクがヘッド5に供給されることになる。
【0053】
従って、或る所定期間において、プリンタ1において画像を印刷した用紙Pの枚数が多く、ノズル46から吐出されるインクの総吐出量が多い場合には、インクカートリッジ42の底部付近にあるインクは、その粘度がノズル46の目詰まりに繋がる粘度値(例えば、5cps)まで上昇する前に、ヘッド5に供給されることになる。従って、この場合には、インクカートリッジ42内の顔料の沈降に起因したノズル46の目詰まりは生じにくい。
【0054】
一方で、上記或る所定期間において、プリンタ1において画像を印刷した用紙Pの枚数が少なく、ノズル46から吐出されるインクの総吐出量が少ない場合には、インクカートリッジ42からヘッド5へのインクの供給量が少ないため、インクカートリッジ42の底部付近にある顔料インクは、顔料の沈降により、その粘度がノズル46の目詰まりに繋がる粘度値まで上昇し得る(
図6の二点鎖線参照)。従って、この場合には、インクカートリッジ42内の顔料の沈降に起因したノズル46の目詰まりは生じ易い。
【0055】
そこで、本実施形態では、所定期間(本実施形態では、90日間)において、ノズル46から吐出されるインクの総吐出量が少なく、インクカートリッジ42の底部付近にある顔料インクの粘度がノズル46の目詰まりに繋がる粘度値まで上昇するような場合に、インクカートリッジ42の底部付近にある顔料インクの粘度を下げるべく、メンテナンスユニット9に沈降インク排出パージを実行させる(
図6参照)。以下、沈降インク排出パージに係るCPU101の制御内容について詳細に説明する。
【0056】
CPU101は、用紙Pへの画像の印刷やノズルメンテナンスパージが行われる毎に、その吐出量を算出し、吐出量カウンタ104bに記憶された総吐出量に累積加算する。具体的には、CPU101は、用紙Pに画像を印刷するときには、この印刷に用いられた吐出データに基づいて、ノズル46から吐出されたインクの吐出量を算出する。また、ノズルメンテナンスパージをするときには、吸引ポンプ51の吸引力(回転速度及び駆動時間)に基づいて、ノズル46から吐出(排出)されたインクの吐出量を算出する。なお、この吐出量カウンタ104bに記憶された吐出量は、以下の吐出量判断処理を実行する毎に零に初期化される。
【0057】
そして、CPU101は、カートリッジ装着部41にインクカートリッジ42が新たに装着された装着日以降、90日経過する毎に、吐出量カウンタ104bを参照して、この90日間内においてノズル46から吐出されたインクの総吐出量が、所定の基準量よりも少ないか否かを判断する吐出量判断処理を実行する。
【0058】
上記基準量は、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着された装着日以降の各90日間内にノズル46から吐出されたインクの総吐出量が、この基準量であった場合に、インクカートリッジ42の底部付近にある顔料インクの粘度がノズル46の目詰まりに繋がる粘度値までは上昇しない、設定量である。例えば、プリンタ1において90日間に300枚の印刷をした場合に、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着された以降、インク切れ(エンプティ)となるまでに、インクカートリッジ42の底部付近にある顔料インクの粘度がノズル46の目詰まりに繋がる粘度値まで上昇しないのであれば、その300枚の印刷の際にノズル46から吐出されるインク量を基準量として設定する。また、本実施形態では、この基準量は、インクカートリッジ42内のインク残量をパラメータとしては利用せずに設定される、固定量である。従って、例えば、インクカートリッジ42の装着日後90日目に実行する吐出量判断処理、及び装着日後180日目に実行する吐出量判断処理それぞれにおいて用いる基準量は同じである。また、この基準量は、不揮発性メモリ104に予め記憶されている。
【0059】
CPU101は、上記吐出量判断処理において、90日間内においてノズル46から吐出されたインクの総吐出量が、上記基準量よりも少ないと判断した場合に、沈降インク排出パージを実行すると判断し、まず、この沈降インク排出パージにおける排出量を決定する排出量決定処理を実行する。この排出量決定処理では、詳細は後述するが、総吐出量及び基準量に加えて、インクカートリッジ42のインク残量、温度情報、及び容量情報をパラメータとして、排出量を決定する。この後、CPU101は、決定した排出量のインクをノズル46から排出させる沈降インク排出パージを、メンテナンスユニット9に実行させる。
【0060】
次に、排出量決定処理について詳細に説明する。上記90日間内においてノズル46から吐出されたインクの総吐出量が少ないほど、インクカートリッジ42内において顔料の沈降量が多くなり、インクカートリッジ42の底部付近に粘度が高い顔料インクが多く存在する。このため、CPU101は、90日間内においてノズル46から吐出されたインクの総吐出量が少ないほど、当該沈降インク排出パージによりノズル46から排出させるインクの排出量が多くなるように、排出量を決定する。これにより、沈降インク排出パージにおいて、インクカートリッジ42内で沈降した顔料の沈降量に応じた適切な量の顔料インクをノズル46から排出させることが可能となる。
【0061】
ここで、排出量決定処理におけるインクの排出量の決定を簡易化するために、上記基準量から総吐出量を減算した減算量を排出量とすることが考えられる。しかしながら、本願発明者は、インクカートリッジ42内での顔料の沈降量は、経過時間が同じであったとしても、インクカートリッジ42内のインク残量が多いほど顔料粒子が多いため、その沈降量が大きくなることを知見した。
【0062】
従って、沈降インク排出パージにおけるインクの排出量を、基準量から総吐出量を減算した減算量として決定すると、インクカートリッジ42内のインク残量によっては、沈降インク排出パージにおいて不必要に多量のインクが排出される場合や、インクカートリッジ42内の粘度が高い顔料インクの排出が不十分であり、ノズル46の目詰まりが生じる場合がある。
【0063】
そこで、本実施形態では、CPU101は、排出量決定処理を実行する前に、残量カウンタ104aを参照して、インクカートリッジ42内のインク残量を判断する残量判断処理を実行する。その後、CPU101は、排出量決定処理において、この残量判断処理により判断したインク残量をパラメータとして、このインク残量が多いほど、沈降インク排出パージによりノズル46から排出させるインクが多くなるように、排出量を決定する。
【0064】
具体的には、CPU101は、まず、基準量から総吐出量を減算した減算量を補正するための補正値を決定する。この補正値は、インクカートリッジ42内のインク残量が多いほど、大きな値をとり、例えば、実験やシミュレーションによって導出される値である。そして、CPU101は、上記減算量に対して、この決定した補正値を乗算して得られる量を、排出量として決定する。これにより、インクカートリッジ42内のインク残量が多いほど、沈降インク排出パージによりノズル46から排出させるインクの排出量が多くなるため、インクカートリッジ42の底部付近にある粘度が高い顔料インクをより確実に排出させることでき、且つ、不要にインクが排出されることを抑制することが可能となる。
【0065】
また、顔料インクは、インクカートリッジ42の温度が高いほど、粘度が低くなるため、顔料の沈降が促進される。そこで、本実施形態では、温度取得部91が90日間において取得した温度に関する温度情報も、補正値を決定する際のパラメータとして利用する。具体的には、CPU101は、温度取得部91が90日間において取得した温度情報に基づいて、この90日間におけるインクカートリッジ42の温度の平均値が高いほど、上記補正値を大きな値に決定する。変形例として、インクカートリッジ42の温度の平均値ではなく、インクカートリッジ42の直近の温度が高いほど補正値を大きな値に決定してもよく、90日間におけるインクカートリッジ42の温度のピーク値が高いほど補正値を大きな値に決定してもよい。
【0066】
また、上述したように、カートリッジ装着部41には、容量の異なる2種類のインクカートリッジ42を選択的に装着可能である。大容量のインクカートリッジ42bは、小容量のインクカートリッジ42aと比べて、顔料インクの量が多いため、その分だけ顔料の量も多い。また、小容量のインクカートリッジ42aと大容量のインクカートリッジ42bとは、底面積が同じである。従って、大容量のインクカートリッジ42bの方が、小容量のインクカートリッジ42aと比べて、顔料が多量に沈降し易く、顔料の沈降に起因して顔料濃度が高くなった顔料インクが底面から高い位置まで存在することになる。加えて、顔料の沈降により粘度が高くなった顔料インクは、流動性が悪いため、インクカートリッジ42の底部に留まり易い。このため、インク残量が同じ場合でも、大容量のインクカートリッジ42bの方が小容量のインクカートリッジ42aと比べて、底部における顔料の沈降量が多く、その顔料インクの粘度が高くなり易い。そこで、本実施形態では、CPU101は、インクカートリッジ42のメモリ142から取得した容量情報も、補正値を決定する際のパラメータとして利用する。具体的には、CPU101は、取得した容量情報に基づいて、インクカートリッジ42の容量が大きいほど、上記補正値を大きな値に決定する。つまり、CPU101は、カートリッジ装着部41に装着されたインクカートリッジ42が大容量のインクカートリッジ42bの場合には、小容量のインクカートリッジ42aである場合と比べて、上記補正値を大きな値に決定する。
【0067】
以上のように、CPU101は、インクカートリッジ42aの、インク残量、容量情報、及び温度情報をパラメータとして、上記補正値を決定する。なお、本実施形態では、補正値を決定する処理を簡便化するために、ROM102に、小容量のインクカートリッジ42a用の補正値テーブル(
図7(a)参照)、及び、大容量のインクカートリッジ42b用の補正値テーブル(
図7(b)参照)が、ROM102に予め記憶されており、この補正値テーブルを参照して補正値を決定する。
【0068】
本実施形態では、インクカートリッジ42のインク残量を2つの閾値を用いて多量、中量、小量の3つの残量範囲に分け、インクカートリッジ42の温度を1つの閾値を用いて高温及び低温の2つの温度範囲に分けている。各補正テーブルでは、高温時及び低温時それぞれにおける、3つの残量範囲の補正値が規定されている。
図7(a)及び
図7(b)の補正値テーブルに示すように、インクカートリッジ42の温度が同じ温度範囲にある場合には、インク残量が多い残量範囲ほど、大きな値の補正値が規定されている。例えば、
図7(a)の小容量のインクカートリッジ42a用の補正値テーブルでは、インクカートリッジ42の温度が高温の温度範囲にある場合には、インク残量の残量範囲が多量のときの補正値a、中量のときの補正値b、小量のときの補正値cの順で、値が大きい。また、インク残量が同じ残量範囲にある場合には、インクカートリッジ42の温度が高い温度範囲ほど、大きな値の補正値が規定されている。例えば、
図7(a)の小容量のインクカートリッジ42a用の補正値テーブルでは、インク残量の残量範囲が多量の場合において、インクカートリッジ42の温度の温度範囲が高温のときの補正値aの方が、温度範囲が低温のときの補正値dと比べて大きい。
【0069】
また、インクカートリッジ42の温度が同じ温度範囲にあり、且つ、インク残量が同じ残量範囲にある場合には、インクカートリッジ42が大容量のインクカートリッジ42bであるときの方が、インクカートリッジ42が小容量のインクカートリッジ42aであるときよりも、補正値が大きい。例えば、インク残量の残量範囲が多量であり、且つインクカートリッジ42の温度の温度範囲が高温の場合には、インクカートリッジ42が大容量のインクカートリッジ42bであるときの補正値Aの方が、インクカートリッジ42が小容量のインクカートリッジ42aであるときの補正値aよりも大きい。
【0070】
以上のように、CPU101は、ROM102に記憶された補正値テーブルを参照し、インクカートリッジ42aの、インク残量、容量情報、及び温度情報に基づき補正値を決定する。これにより、沈降インク排出パージにおけるインクの排出量をより適切な量にすることができる。変形例として、インク残量、容量情報、及び温度情報をパラメータとした、補正値を決定するための算出式がROM102に記憶されており、CPU101は、この算出式を用いて補正値を決定してもよい。
【0071】
(インクジェットプリンタの動作)
次に、沈降インク排出パージに係るプリンタ1の処理動作の一例について、
図8を参照しつつ説明する。
【0072】
まず、CPU101は、装着検知センサ152からの検知結果に基づいて、カートリッジ装着部41にインクカートリッジ42が新たに装着された(インクカートリッジ42が交換された)と判断すると(S1:YES)、インクカートリッジ42のメモリ142に記憶された容量情報を取得して、当該容量情報に基づいて、インクカートリッジ42のインクの初期貯溜量を、インク残量として、不揮発性メモリ104の残量カウンタ104aに記憶する(S2)。また、このとき、CPU101は、不揮発性メモリ104の吐出量カウンタ104bを零に初期化する。
【0073】
次に、CPU101は、用紙Pへの画像の印刷、又はノズルメンテナンスパージにより、ノズル46からインクが吐出されたか否かを判断する(S3)。ノズル46からインクが吐出されたと判断した場合(S3:YES)には、CPU101は、吐出されたインクの吐出量を算出して、不揮発性メモリ104の吐出量カウンタ104bに記憶された総吐出量に累積加算する(S4)。また、このとき、CPU101は、不揮発性メモリ104の残量カウンタ104aに記憶されたインク残量を、算出した吐出量だけ減算した量に更新する。このS4の処理が終了すると、S3の処理に戻る。
【0074】
一方で、ノズル46からインクが吐出されていないと判断した場合(S3:NO)には、CPU101は、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着された装着日、又は、吐出量判断処理を前回実行した実行日から90日が経過したか否かを判断する(S5)。装着日又は実行日から90日が経過していないと判断した場合(S5:NO)には、S3の処理に戻る。
【0075】
一方で、装着日又は実行日から90日が経過したと判断した場合(S5:YES)には、CPU101は、残量カウンタ104aを参照して、インクカートリッジ42内のインク残量を判断する残量判断処理を実行する(S6)。次に、CPU101は、S6の処理で判断したインク残量が所定量未満か否かを判断する(S7)。ここで、所定量とは、インクカートリッジ42内のインク残量が少なく、インクカートリッジ42が長時間静置状態にあったとしても、インクカートリッジ42の底部付近にある顔料インクの粘度がノズル46の目詰まりに繋がる粘度値まで上昇しない、量である。
【0076】
S6の処理で判断したインク残量が所定量未満であると判断した場合(S7:YES)には、CPU101は沈降インク排出パージを実行しないと判断して、本処理動作を終了する。一方で、S6の処理で判断したインク残量が所定量以上であると判断した場合(S7:NO)には、CPU101は、吐出量カウンタ104bを参照して、90日間にノズル46から排出されたインクの総吐出量を取得し(S8)、当該取得した総吐出量が、不揮発性メモリ104に記憶された基準量よりも少ないか否かを判断する吐出量判断処理を実行する(S9)。総吐出量が基準量以上であると判断した場合(S9:NO)には、CPU101は、沈降インク排出パージを実行しないと判断して、吐出量カウンタ104bを零に初期化した後に、S3の処理に戻る。
【0077】
一方で、S9の処理で、総吐出量が基準量未満であると判断した場合(S9:YES)には、CPU101は沈降インク排出パージを実行すると判断し、インクカートリッジ42のメモリ142から取得した容量情報、温度取得部91から取得した温度情報、及びS6の処理で判断したインク残量に基づいて、補正値を決定する(S10)。この後、CPU101は、不揮発性メモリ104に記憶された基準量から、S8の処理で取得した総吐出量を減算した減算量に対して、S10の処理で決定した補正値を乗算した量を、沈降インク排出パージのインクの排出量として決定する(S11)。
【0078】
次に、CPU101は、S11の処理で決定した排出量のインクをノズル46から排出させる沈降インク排出パージを、メンテナンスユニット9に実行させる(S12)。具体的には、CPU101は、ノズルキャップ55でノズル46を覆った状態で、ブラックキャップ部55aを吸引ポンプ51と連通させたうえで、吸引ポンプ51を駆動させる。そして、CPU101は、吸引ポンプ51の回転速度及び駆動時間を制御することで、S11の処理で決定した排出量のインクをノズル46から排出させる。このS12の処理が終了すると、S3の処理に戻る。以上、プリンタ1の処理動作について説明した。
【0079】
以上、本実施形態によると、沈降インク排出パージにおいて、インクカートリッジ42内のインク残量が多いほど、多くの量の顔料インクがノズル46から排出されるため、沈降インク排出パージにより顔料濃度が高い(粘度が高い)顔料インクがインクカートリッジ42内に残留する可能性を低減でき、且つ、沈降インク排出パージにおいて不必要にインクが排出されることを抑制することができる。
【0080】
また、沈降インク排出パージは、インクカートリッジ42がカートリッジ装着部41に装着された装着日からの90日間、又は、吐出量判断処理を前回実行した実行日からの90日間における、インクの総吐出量が少ない場合に実行されるため、粘度が高い顔料インクがインクカートリッジ42内に残量する可能性を低減することができる。
【0081】
また、本実施形態では、残量判断処理によりインク残量が所定量未満になったと判断した以降においては、顔料の量が少ないため、沈降インク排出パージを行わない。このため、インクカートリッジ42がインク切れとなるまでの期間を長くすることができる。
【0082】
また、本実施形態では、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42に対して、当該インクカートリッジ42のインクをノズル46から排出させる沈降インク排出パージを行うが、顔料が沈降し難いカラーの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42に対しては、沈降インク排出パージを行わない。これにより、カラーの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42から不必要にインクが排出されることを抑制することができる。
【0083】
加えて、インクカートリッジ42における、インクカートリッジ42bのニードル41aが接続される排出管45は、貯溜室44a,44bの下部に接続されているため、沈降インク排出パージのときに、貯溜室44a,44bの下部付近にある粘度が高い顔料インクを効率良くノズル46から排出させることができる。
【0084】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態において第1実施形態と異なる点は、第1実施形態では、吐出量判断処理において用いる基準量が、インクカートリッジ42内のインク残量をパラメータとして利用せずに設定される量であったが、第2実施形態では、上記基準量が、インクカートリッジ42内のインク残量をパラメータとして設定される量である点である。以下においては、上述した第1実施形態と同一の箇所については同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0085】
第2実施形態では、CPU101は、上記吐出量判断処理を実行する前に、当該吐出量判断処理で用いる基準量を設定する基準量設定処理を実行する。この基準量設定処理では、CPU101は、残量判断処理により判断したインク残量、温度取得部91から取得した温度情報、インクカートリッジ42の容量情報を設定パラメータとして基準量を設定する。
【0086】
具体的には、CPU101は、残量判断処理により判断したインク残量が多いほど、大きい値の基準量を設定する。これにより、残量判断処理により判断したインク残量が多いほど、沈降インク排出パージの実行条件を緩和することができる。
【0087】
また、上述したように顔料インクは、インクカートリッジ42の温度が高いほど、顔料の沈降が促進されるため、CPU101は、基準量設定処理において、温度取得部91が90日間において取得した温度情報に基づいて、この90日間におけるインクカートリッジ42の温度の平均値が高いほど、上記基準量を大きな値に設定する。変形例として、インクカートリッジ42の温度の平均値ではなく、インクカートリッジ42の直近の温度が高いほど基準量を大きな値に設定してもよく、90日間におけるインクカートリッジ42の温度のピーク値が高いほど基準量を大きな値に設定してもよい。
【0088】
また、上述したように、大容量のインクカートリッジ42bの方が、小容量のインクカートリッジ42aと比べて、底部付近にある顔料インクの粘度が高くなり易いため、CPU101は、メモリ142から取得した容量情報に基づいて、インクカートリッジ42の容量が大きいほど、上記基準量を大きな値に設定する。なお、メモリ142から取得した容量情報に基づくインクカートリッジ42の容量が少なく、インクカートリッジ42aが長時間静置状態にあったとしても、インクカートリッジ42の底部付近にある顔料インクの粘度がノズル46の目詰まりに繋がる粘度値まで上昇しないような場合には、基準量を零に設定して、沈降インク排出パージが実行されないようにしてもよい。
【0089】
以上のように、CPU101は、インクカートリッジ42aの、インク残量、容量情報、及び温度情報をパラメータとして、上記基準量を設定する。なお、本実施形態では、基準量を設定する処理を簡便化するために、ROM102に、小容量のインクカートリッジ42a用の基準量テーブル(
図9(a)参照)、及び、大容量のインクカートリッジ42b用の基準量テーブル(
図9(b)参照)がROM102に予め記憶されており、この基準量テーブルを参照して基準量を設定している。
【0090】
各基準量テーブルでは、高温時及び低温時それぞれにおける、3つの残量範囲の基準量が規定されている。
図9(a)及び
図9(b)の基準量テーブルに示すように、インクカートリッジ42の温度が同じ温度範囲にある場合には、インク残量が多い残量範囲ほど、大きな値の基準量が規定されている。例えば、
図9(a)の小容量のインクカートリッジ42a用の基準量テーブルでは、インクカートリッジ42の温度が高温の温度範囲にある場合には、インク残量の残量範囲が多量のときの基準量g、中量のときの基準量h、小量のときの基準量iの順で、値が大きい。また、インク残量が同じ残量範囲にある場合には、インクカートリッジ42の温度が高い温度範囲ほど、大きな値の基準量が規定されている。例えば、
図9(a)の小容量のインクカートリッジ42a用の基準量テーブルでは、インク残量の残量範囲が多量の場合において、インクカートリッジ42の温度の温度範囲が高温のときの基準量gの方が、温度範囲が低温のときの基準量jと比べて大きい。
【0091】
また、インクカートリッジ42の温度が同じ温度範囲にあり、且つ、インク残量が同じ残量範囲にある場合には、インクカートリッジ42が大容量のインクカートリッジ42bであるときの方が、小容量のインクカートリッジ42aであるときよりも、基準量が大きい。例えば、インク残量の残量範囲が多量であり、且つインクカートリッジ42の温度の温度範囲が高温の場合には、インクカートリッジ42が大容量のインクカートリッジ42bであるときの基準量Gの方が、インクカートリッジ42が小容量のインクカートリッジ42aであるときの基準量gよりも大きい。
【0092】
以上のように、CPU101は、ROM102に記憶された基準量テーブルを参照し、インクカートリッジ42aの、インク残量、容量情報、及び温度情報に基づき基準量を設定する。これにより、インクカートリッジ42の底部付近にある顔料インクの粘度が高いほど、沈降インク排出パージの実行条件を緩和することができる。変形例として、ROM102に、インク残量、容量情報、及び温度情報をパラメータとした、基準量を設定するための算出式が記憶されており、CPU101は、この算出式によって基準量を設定してもよい。
【0093】
また、第1実施形態と同様に、CPU101は、排出量決定処理において、90日間内においてノズル46から吐出されたインクの総吐出量が少ないほど、沈降インク排出パージによりノズル46から排出させるインクが多くなるように、その排出量を決定する。具体的には、第2実施形態では、CPU101は、排出量決定処理において、基準量設定処理により決定した基準量から、吐出量カウンタ104bに記憶された総吐出量を減算した減算量を排出量として決定する。これにより、沈降インク排出パージにおいて、インクカートリッジ42内で沈降した顔料の沈降量に応じた適切な量の顔料インクをノズル46から排出させることが可能となる。
【0094】
(インクジェットプリンタの動作)
次に、第2実施形態の沈降インク排出パージに係るプリンタ1の処理動作の一例について、
図10を参照しつつ説明する。
【0095】
まず、CPU101は、上述したS1〜S8の処理と同様な、A1〜A8の処理を実行する。A8の処理の後、CPU101は、インク残量、容量情報、及び温度情報に基づいて、基準量を設定する基準量設定処理を実行する(A9)。次に、CPU101は、A8の処理で取得した総吐出量が、A9の処理で設定した基準量よりも少ないか否かを判断する吐出量判断処理を実行する(A10)。総吐出量が基準量以上であると判断した場合(A10:NO)には、CPU101は沈降インク排出パージを実行しないと判断して、吐出量カウンタ104bを零に初期化した後に、A3の処理に戻る。
【0096】
一方で、A10の処理で、総吐出量が基準量よりも少ないと判断した場合(A10:YES)には、CPU101は沈降インク排出パージを実行すると判断し、CPU101は、A9の処理で設定した基準量から、A8の処理で取得した総吐出量を減算した減算量を、沈降インク排出パージのインクの排出量として決定する排出量決定処理を実行する(A11)。次に、CPU101は、メンテナンスユニット9を制御して、A11の処理で決定した排出量のインクをノズル46から排出させる沈降インク排出パージを実行する(A12)。以上、第2実施形態に係るプリンタ1の処理動作について説明した。
【0097】
以上、第2実施形態によると、インクカートリッジ42内のインク残量が多いほど、沈降インク排出パージの実行条件が緩和される。このため、顔料濃度が高い(粘度が高い)顔料インクがインクカートリッジ42内に残留する可能性をより確実に低減することができる。
【0098】
以上説明した実施形態において、インクカートリッジ42が「タンク」に相当し、メンテナンスユニット9が「パージ機構」に相当する。ノズル列47Kに属するノズル46が「第1ノズル」に相当し、ノズル列47Y,47M,47Cに属するノズル46が「第2ノズル」に相当する。ブラックの顔料インクが「第1顔料インク」に相当し、ブラックの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42が「第1タンク」に相当する。また、カラーの顔料インクが「第2顔料インク」に相当し、カラーの顔料インクを貯溜するインクカートリッジ42が「第2タンク」に相当する。排出管45が「液体排出口」に相当する。
【0099】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。従って、本発明の技術思想の範囲内において、上述の実施形態を組み合わせたり、一部の構成を変更したりしてもよく、上述の第1実施形態及び第2実施形態を組み合わせてもよい。例えば、第1実施形態において、基準量が、温度取得部91から取得した温度情報や、インクカートリッジ42のメモリ142から取得した容量情報をパラメータとして設定されてもよい。つまり、温度取得部91が90日間において取得した温度情報に基づいて、この90日間におけるインクカートリッジ42の温度が高いほど、上記基準量を大きな値に設定してもよく、メモリ142から取得した容量情報に基づいて、インクカートリッジ42の容量が大きいほど、上記基準量を大きな値に設定してもよい。
【0100】
また、第2実施形態において、CPU101は、第1実施形態と同様に、排出量決定処理において、基準量から総吐出量を減算した減算量に対して、インクカートリッジ42内のインク残量が多いほど、大きな値をとる補正値を乗算した量を、排出量として決定してもよい。この補正値は、温度取得部91が90日間において取得した温度情報に基づいて、この90日間におけるインクカートリッジ42の温度が高いほど大きな値にしてもよく、また、インクカートリッジ42の容量が大きいほど、大きな値にしてもよい。
【0101】
上述の実施形態では、CPU101は、排出量決定処理において、基準量から総吐出量を減算した値が大きいほど、インクの排出量が多くなるように、沈降インク排出パージのインクの排出量を決定していたが、基準量や総吐出量をパラメータとせずに排出量を決定してもよい。
【0102】
また、CPU101は、メンテナンスパージのときについても、沈降インク排出パージのときと同様に、インクカートリッジ42内のインク残量が多いほど、ノズル46から排出させるインクの排出量が多くなるように、メンテナンスユニット9を制御してもよい。また、沈降インク排出パージのときに、ノズル46の吐出特性を回復させることも目的として、当該沈降インク排出パージのときの排出量や、吸引ポンプ51の吸引力を設定してもよい。
【0103】
上述の実施形態では、残量判断処理によりインク残量が所定量未満になったと判断した以降においては、沈降インク排出パージが実行されないように構成されていたが、沈降インク排出パージが実行されるように構成されていてもよい。また、残量判断処理により判断したインク残量が、排出量決定処理により決定した排出量以下の場合には、沈降インク排出パージを実行するとインクカートリッジ42がエンプティとなるため、沈降インク排出パージを実行しないように構成されていてもよい。この場合、ユーザインターフェース90にインクカートリッジ42の交換を促す画面を表示することが好ましい。
【0104】
また、インクカートリッジ42のインクの現在の貯溜量を検知可能なセンサを設け、CPU101は、残量判断処理において、このセンサからの検知結果に基づいて、インクカートリッジ42のインク残量を判断してもよい。この場合、インクカートリッジ42のメモリ142に記憶される容量情報は、自身が小容量のインクカートリッジ42aであるのか、大容量のインクカートリッジ42bであるのかを示す情報であってもよい。また、CPU101は、残量判断処理において、インクカートリッジ42のカートリッジ装着部41への装着日からの経過日数に基づいて、インクカートリッジ42のインク残量を推定してもよい。また、CPU101は、上記吐出量判断処理を任意のタイミングで実行してもよい。
【0105】
また、キャップユニット50が有するノズルキャップは、ノズル列47K,47Y,47M,47Cに属する全てのノズル46を共通に覆うキャップであってもよい。この場合、吸引パージにおいて、ノズル列47K,47Y,47M,47Cに属する全てのノズル46から同時にインクを排出させることができる。
【0106】
加えて、カートリッジ装着部41は、互いに容量が異なる3種類以上のインクカートリッジ42を選択的に装着可能にされていてもよい。また、カートリッジ装着部41に選択的に装着される、小容量のインクカートリッジ42aと大容量のインクカートリッジ42bとは、底面積は同じであったが、底面積は互いに異なっていてもよい。この場合でも、インクカートリッジ42bの方が、インクカートリッジ42aよりも底部に沈降する顔料の沈降量が多いことには変わりがない。なお、インクカートリッジ42の容量が同じ場合には、底面積が小さくなるほど、顔料の沈降に起因して顔料濃度が高くなった顔料インクが底面から高い位置まで存在することになる。
【0107】
また、インクカートリッジが装着されるカートリッジ装着部がキャリッジに搭載された、いわゆるオンキャリッジタイプのプリンタにも適用することができる。インクカートリッジ42の排出管45は、貯溜室44a,44bの下部に接続されていなくてもよく、例えば、貯溜室44a,44bの中部に接続されていてもよい。
【0108】
また、上述の実施形態では、ノズル46から顔料インクを排出させるパージは、吸引パージであったが、プリンタ1が、インクカートリッジ42内の顔料インクに正圧を付与する正圧付与部を備え、この正圧付与部によってインクカートリッジ42内の顔料インクに正圧を付与することによって、ノズル46から顔料インクを排出させる正圧パージであってもよい。
【0109】
加えて、上述の実施形態では、インクの供給源であるタンクは、インクカートリッジであったが、これに限定されるものではなく、例えば、可撓性を有する樹脂からなるパウチ式のインク収容袋であってもよい。このインク収容袋には、インク供給チューブ22を接続可能なキャップが設けられており、インク供給チューブ22をこのキャップに接続したときにインク収容袋内のインクがインク供給チューブ22に流通可能となる。
【0110】
また、全インク流路85に対してプリンタ1に備え付けのタンクが接続されており、このタンクからインクの供給を行うように構成されていてもよい。タンク内のインクが切れた場合には、ユーザは、インクの入ったボトルをタンクに形成された補充孔に挿し込んで、ボトルからタンクにインクを補充することになる。
【0111】
また、本発明は、インクジェットヘッドを固定した状態で、搬送機構により搬送される用紙に画像を印刷する、所謂ライン式のインクジェットプリンタにも適用されうる。