(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
付加製造プロセスをモニタリングする方法であって、指向性エネルギー源(24)を用いて、粉末材料塊の露出ビルド表面(54)に溶融池(56)を形成し、粉末材料を選択的に融合させてワークピース(W)を形成し、前記指向性エネルギー源(24)による前記溶融池(56)の形成は、前記溶融池(56)から伝播する音響波を発生する、する方法であって、
溶融池(56)の形成によって発生した前記音響波の音響エネルギーを測定して、測定音響プロファイルを生成し、
測定音響プロファイルに応じて、付加製造プロセスの少なくとも一態様を制御し、
制御することが、基準音響プロファイルから逸脱している音響信号プロファイルに応じて、個別の動作をすることを含む、
方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照すると、様々な図において同一の参照符号は同じ要素を表し、
図1は、付加製造方法を実施するための装置10を概略的に示す。基本的な構成要素は、テーブル12、粉末供給部14、スクレーパ又はリコータ16、オーバーフロー容器18、構築チャンバ22に囲まれた構築台20、指向性エネルギー源24及びビームステアリング装置26であり、これらはすべて筐体28に囲まれている。これらの構成要素の各々について、以下により詳細に説明する。
【0011】
テーブル12は、平面の作業面30を画成している剛性の構造である。作業面30は、仮想作業面と同一平面上にあり、仮想作業面を画成する。図示の例には、構築チャンバ22と連通し、構築台20を露出している構築開口部32と、粉末供給部14と連通している供給開口部34と、オーバーフロー容器18と連通しているオーバーフロー開口部36とが含まれている。
【0012】
リコータ16は、作業面30上にある、剛性の横方向に細長い構造である。リコータ16は、リコータ16を作業面30に沿って選択的に移動させるように動作可能なアクチュエータ38に接続されている。アクチュエータ38は、空気圧シリンダ又は液圧シリンダ、ボールねじ又は電動リニアアクチュエータ等の装置をこの目的のために使用してもよいという理解のもと、
図1に概略的に示されている。
【0013】
粉末供給部14は、供給開口部34の下にあって供給開口部34と連通する供給容器40と、エレベータ42とを含む。エレベータ42は、供給容器40内で上下方向にスライド可能な板状構造である。エレベータ42は、エレベータ42を上下に選択的に移動させるように動作可能なアクチュエータ44に接続されている。アクチュエータ44は、空気圧シリンダ又は液圧シリンダ、ボールねじ又は電動リニアアクチュエータ等の装置をこの目的のために使用してもよいという理解のもと、
図1に概略的に示されている。エレベータ42を下降させると、所望の組成物の粉末「P」(たとえば、金属粉末、セラミック粉末及び/又は有機粉末)の供給が、供給容器40に装填されてもよい。エレベータ42を上昇させると、作業面30の上に粉末Pが露出する。他の適する形状及び/又はタイプの粉末供給部14を用いてもよいことを理解されたい。たとえば、粉末供給部14は、作業面30の上に配置され、所定の流量で作業面30上に粉末を落下させる粉末容器を含んでもよい。
【0014】
構築台20は、構築開口部32の下方で上下方向にスライド可能な板状構造である。構築台20は、構築台20を上下に選択的に移動させるように動作可能なアクチュエータ46に接続されている。アクチュエータ46は、空気圧シリンダ又は液圧シリンダ、ボールねじ又は電動リニアアクチュエータ等の装置をこの目的のために使用してもよいという理解のもと、
図1に概略的に示されている。構築プロセス中に構築台20を構築チャンバ22の中に下降させると、構築チャンバ22及び構築台20は、構築されている任意の構成要素と共に、粉末Pの塊を取り囲み、支持する。粉末の塊は、一般に「粉末床」と呼ばれ、付加製造プロセスのこの特定のカテゴリーは、「粉末床プロセス」と呼ぶことができる。
【0015】
オーバーフロー容器18は、オーバーフロー開口部36の下にあってオーバーフロー開口部36と連通し、過剰な粉末のための収納場所として働く。
【0016】
指向性エネルギー源24は、以下により詳細に説明する構築プロセス中に、金属粉末を溶融し、融合させるのに適するパワー及び他の動作特性のビームを生成するように動作可能な任意の既知の装置を含んでもよい。たとえば、指向性エネルギー源24は、レーザであってもよい。電子ビームガンのような他の指向性エネルギー源は、レーザの好適な代替物である。
【0017】
ビームステアリング装置26は、1以上のミラー、プリズム、レンズ及び/又は電磁石を含んでもよく、適するアクチュエータが備えられ、指向性エネルギー源24からのビーム「B」を、所望のスポットサイズに集光し、作業面30と一致する平面の所望の位置に向けることができるように配置される。説明を容易にするため、この平面をX−Y平面と呼ぶことがあり、X−Y平面に垂直な方向をZ方向とする(X、Y及びZは、互いに直交する3方向である)。ビームBは、本明細書で「ビルド用ビーム」と呼ぶことがある。
【0018】
筐体28は、装置10の他の構成要素を隔て、保護する働きをする。筐体28は、たとえば、窒素、アルゴン又は他のガス又はガス混合物等、適切なシールドガス「G」の流れを備えていてもよい。ガスGは、静的加圧容積として、又は動的な流れとして備えられていてもよい。筐体28は、この目的のために、入口ポート及び出口ポート48、50をそれぞれ備えていてもよい。
【0019】
上記装置を用いたワークピースWの基本的な構築プロセスは、以下の通りである。構築台20を初期の高位置に移動させる。構築台20を、選択された層の増分だけ作業面30の下方に下げる。層の増分は、付加製造プロセスの速度及びワークピースWの分解能に影響する。例として、層の増分は、約10・50μm(0.0003・0.002インチ)であってもよい。次に、粉末「P」が構築台20の上に堆積され、たとえば、供給容器40のエレベータ42が上昇して、供給開口部34を通じて粉末を押し、粉末を作業面30の上方に露出させてもよい。リコータ16は、作業面を横切って移動し、隆起した粉末Pを構築台20上で水平方向に拡げる。リコータ16が左から右へ通過すると、過剰な粉末Pは、オーバーフロー開口部36を通じて、オーバーフロー容器18の中に落下する。その後、リコータ16は開始位置に戻ってもよい。平らになった粉末Pは、「構築層」52と呼ぶことができ、露出した上部表面は、「ビルド表面」54と呼ぶことができる(
図2参照)。
【0020】
指向性エネルギー源24を用いて、構築されているワークピースWの2次元断面又は層を溶融する。指向性エネルギー源24は、ビーム「B」を放射し、ビームステアリング装置26を用いて、ビルド用ビームBの集光スポット「S」を、露出した粉末表面上に適切なパターンで向ける。集光スポットSを取り囲む粉末Pの露出した層の小さな部分は、本明細書で「溶融池」56と呼ばれ(
図2に最もよく示されている)、溶融し、流れ、統合することが可能な温度まで、ビルド用ビームBによって加熱される。例として、溶融池56は、100μm(0.004インチ)幅の大きさであってもよい。この工程は、粉末Pの融合と呼ぶことができる。
【0021】
構築台20を層の増分だけ垂直下方に移動させ、粉末Pの別の層を同様の厚さで適用する。指向性エネルギー源24は、ビルド用ビームBを再度放射し、ビームステアリング装置26を用いて、ビルド用ビームBの集光スポットSを、露出した粉末表面の上に適切なパターンで向ける。粉末Pの露出した層は、溶融し、流れ、最上層内と、より下層の以前に固化した層との両方を統合することが可能な温度までビルド用ビームBによって加熱され、下方の層の結晶配向性を再度維持する。
【0022】
構築台20を移動させ、粉末Pを適用し、次いで指向性エネルギー源が粉末Pを溶融するこのサイクルは、ワークピースW全体が完成するまで繰り返される。
【0023】
図2は、上記タイプの粉末床で構成されているワークピースWをより詳細に示す。例示的なワークピースWは、水平壁62によって相互接続された、一対の離間した垂直壁58及び60を含む。キャビティ64は、垂直壁58及び60の間に存在し、粉末Pが充填されている。付加粉末Pは、垂直壁58及び60と、構築チャンバ22の側壁との間に存在する。
【0024】
音響検査プロセスは、上記構築プロセスに組み込まれてもよい。一般的には、音響モニタリングプロセスは、音響センサ68を用いて構築プロセス中に音響信号を測定し、ワークピースWの欠陥を示す異常に関して音響信号をモニタリングすることを含む。センサ68は、付加構築プロセスによって発生した音響信号を受信することができる、装置10内の任意の位置に装着されてもよい。たとえば、
図2は、構築台20の下側に取り付けられたコンタクトマイクロホン68を示す。
図3は、テーブル12の上方に配置されたフリーエアーマイクロホン70を示す。一般に、このタイプのプロセスは、「音響モニタリング」と呼ぶことができる。本明細書で用いられる場合、「音響」という用語は、概して、気体又は固体等の媒体を介してエネルギーを伝達することを指し、このようなエネルギーの周波数範囲とは無関係である。
【0025】
上記融合工程の間に、溶融池56を生成するビルド用ビームBの動作は、本質的に、溶融池56から放射される音波を発生する。この音波は、筐体28内のテーブル12の構造及びガスGを通って進み、測定音響プロファイルを生成するために上記マイクロホン68及び70によって検出され得る。音響プロファイルは、層の増分の任意の適する所定間隔で記録されてもよいことを理解されたい。
【0026】
ワークピースWが適切に形成された場合、融合プロセスが円滑に行われ、融合プロセスによって誘起される音響エネルギー量には、ばらつきがほとんど発生しない。しかし、ワークピースWに割れや空隙等の欠陥が生じた場合、装置10を通して伝播する音響信号の性質に変化が生じる。
【0027】
音響モニタリングプロセスは、「既知の良好な」ワークピースの音響プロファイルを比較として用いて、音響信号解析を提供する。比較は、構築プロセスが完了した後に、検査及び品質管理の手段として行ってもよい。或いは、リアルタイムで比較を行ってもよい。各々の特定の構築(異なるサイズ及び形状のワークピース)のために、比較用に新たな信号プロファイルを作成することができる。したがって、基準信号プロファイルは、構築の各々の層の増分用に作成されてもよい。この作成は、欠陥とは対照的に、ワークピースの特定のプロファイルに起因する音響特性のばらつきを考慮して行う。音響振幅対時間を示す、既知の良好な信号プロファイルの非限定的な例を
図4に示す。
【0028】
振幅対時間を示す、測定音響プロファイルの非限定的な例を
図5に示す。図示のように、
図4に示す基準音響プロファイルには存在しない、測定音響プロファイルに存在する小さな下降又はドロップアウト72は、欠陥が存在することを示す。
【0029】
構築プロセスの間及び音響プロファイルを測定している間、溶融池56の空間における位置を追跡してもよい。たとえば、溶融池56のX−Yの位置は、ビームステアリング装置26に供給されるステアリングコマンドに基づいて常に知られている。溶融池56のZの位置は、構築台20の位置に基づいて知られている。溶融池の位置は、音響プロファイルに同期して追跡されてもよく、その結果いかなる時点においても、追跡されている音響信号の位置原点は知られている。
【0030】
上記のように溶融池56の位置を追跡することに加えて、又はその代わりに、マイクロホン68及び70を用いて、音響エネルギー源の位置を特定してもよい。たとえば、複数のマイクロホン68及び70を既知の離間した位置に配置する場合、三角測量又は三辺化のプロセスを用いて、音響エネルギー源の位置を計算してもよい。この位置情報を、音響プロファイルに同期して追跡してもよい。
【0031】
同期化した位置情報の利用は、ワークピースW内における欠陥の位置の特定を可能にする。完成したワークピースWの欠陥を見つけようとする場合、及び/又は、構築プロセス中に生じる欠陥を再加工しようとする場合、この情報が非常に貴重であることが分かる。
【0032】
上述の音響モニタリング方法は、様々な目的で付加製造プロセスに実施してもよい。たとえば、検査は、各々の構築層52を溶着する間に、又は各々の構築層52が完成した直後に、又はいくつかの構築層52が完成した後に行うことができる。これにより、各層又は各層のグループが正確に構築されていて、欠陥がないという確認が可能になる。
【0033】
ワークピースに欠陥があることが見出された場合には、構築プロセスを中止することができる。或いは、欠陥が見出された場合、ビルド用ビームBを欠陥の上のワークピースWに向け、溶融池を形成して材料を再溶融し、材料が欠陥に流れ込み、欠陥を充填することを可能にすることによって、装置10を用いて欠陥を修復することができる。
【0034】
上記モニタリングプロセスを用いて、付加構築プロセスを変更するために使用可能なリアルタイムフィードバックを提供してもよい。たとえば、検査プロセスが、構築によって欠陥が作り出されていると判定する場合、レーザパワー、走査速度、ガス流れ等の1以上のプロセスパラメータを変更して、動作を公称値に回復させるか、又は欠陥の原因を排除してもよい。
【0035】
上記モニタリングプロセスは、統計的なプロセス制御の計画の一部として用いることもできる。特に、検査プロセスを用いて、プロセスにおけるばらつきの原因を特定することができる。その後、後続の構築でプロセスパラメータを変更して、ばらつきの原因を軽減するか、又は排除することができる。
【0036】
上記モニタリングプロセスは、品質管理文書の計画の一部として用いることもできる。特に、構築中に生成された音響プロファイルを、後で参照するために保存することができる。さらに、保存した音響プロファイルを用いて、個々のワークピースWの構築手順が、所定の規格に準拠していることを検証することができる。本明細書に記載されたプロセスによって、付加構造の張り出した層の厚さをマッピングし、公称値からのばらつきを高精度に検出することが可能となる。これは、従来技術で現在使用されているCTスキャン等の、構築後の品質管理プロセスを省く可能性を有する。
【0037】
上記に付加製造プロセスの音響モニタリング方法を説明した。本明細書(添付した特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)で開示した特徴のすべて、及び/又は開示した任意の方法もしくは処理の工程のすべては、そのような特徴及び/又は工程の少なくともいくつかが相互に排他的である組合せを除いて、任意の組合せで組合せることができる。
【0038】
本明細書(添付した特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示した各特徴は、特に明記しない限り、同一、等価、又は類似の目的を提供する代替的特徴に置き換えることができる。したがって、特に明記しない限り、開示した各特徴は、等価又は類似の特徴の一般的な系列の内の1例にすぎない。
【0039】
本発明は、上述した実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(添付した新規性の可能性のある点、要約、及び図面を含む)に開示された特徴の内の任意の新規なもの、又は任意の新規な組合せ、或いは開示した任意の方法もしくは処理の工程の内の任意の新規なもの、又は任意の新規な組合せを拡張する。
[実施態様1]
付加製造プロセスをモニタリングする方法であって、指向性エネルギー源(24)を用いて、粉末材料塊の露出ビルド表面(54)に溶融池(56)を形成し、粉末材料を選択的に融合させてワークピース(W)を形成する方法であって、溶融池(56)によって発生した音響エネルギーを測定して、測定音響プロファイルを生成することを含む方法。
[実施態様2]
基準音響プロファイルと、測定音響プロファイルとを比較する工程をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様3]
基準音響プロファイルが、既知の良好なワークピースを表す、実施態様2に記載の方法。
[実施態様4]
測定音響プロファイルと基準音響プロファイルとの差が、ワークピース(W)の欠陥の存在を示す、実施態様2に記載の方法。
[実施態様5]
音響信号を測定しつつ、溶融池(56)の位置をモニタリングする工程をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様6]
粉末材料塊に対して既知の位置に配置された2以上の離間した音響センサ(68)によって、溶融池(56)の位置をモニタリングする、実施態様5に記載の方法。
[実施態様7]
測定音響プロファイルの記録を保存する工程をさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様8]
測定音響プロファイルに応じて、付加製造プロセスの少なくとも一態様を制御することをさらに含む、実施態様1に記載の方法。
[実施態様9]
制御する工程は、基準音響プロファイルから逸脱している音響信号プロファイルに応じて、個別の動作をすることを含む、実施態様8に記載の方法。
[実施態様10]
個別の動作は、付加製造プロセスを停止させることである、実施態様9に記載の方法。
[実施態様11]
ワークピース(W)を製作する方法であって、
粉末材料を堆積させてビルド表面(54)を画成する工程と、
指向性エネルギー源(24)からビルド用ビーム(B)を向けて、ビルド表面(54)に溶融池(56)を形成し、ワークピース(W)の断面層に対応するパターンで粉末材料を選択的に融合させる工程と、
溶融池(56)によって発生した音響エネルギーを測定して、測定音響プロファイルを生成する工程とを含む方法。
[実施態様12]
基準音響プロファイルと、測定音響プロファイルとを比較する工程をさらに含む、実施態様11に記載の方法。
[実施態様13]
基準音響プロファイルが、既知の良好なワークピースを表す、実施態様12に記載の方法。
[実施態様14]
測定音響プロファイルと基準音響プロファイルとの差が、ワークピース(W)の欠陥の存在を示す、実施態様12に記載の方法。
[実施態様15]
音響信号を測定しつつ、溶融池(56)の位置をモニタリングする工程をさらに含む、実施態様11に記載の方法。
[実施態様16]
粉末材料塊に対して既知の位置に配置された2以上の離間した音響センサ(68)によって、溶融池(56)の位置をモニタリングする、実施態様15に記載の方法。
[実施態様17]
測定音響プロファイルの記録を保存する工程をさらに含む、実施態様11に記載の方法。
[実施態様18]
測定音響プロファイルに応じて、ワークピース(W)の製作方法の少なくとも一態様を制御する工程をさらに含む、実施態様11に記載の方法。
[実施態様19]
制御する工程は、基準音響プロファイルから逸脱している音響信号プロファイルに応じて、個別の動作をすることを含む、実施態様18に記載の方法。
[実施態様20]
個別の動作は、付加製造プロセスを停止させることである、実施態様19に記載の方法。
[実施態様21]
指向エネルギー源(24)を用いて欠陥の上に溶融池(56)を形成し、以前に融合した材料が欠陥に流れ込み、欠陥を充填することを可能にすることによって、欠陥を修復する工程をさらに含む、実施態様14に記載の方法。