(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0012】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る振動デバイスの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る振動デバイス1の平面図である。
図2は、振動デバイス1の長辺に平行な平面で振動デバイス1を切断した断面図である。
【0013】
振動デバイス1は、
図1に示されるように、圧電素子10と、樹脂部材20と、振動部材30と、圧電素子10と樹脂部材20とを接合している接着層40と、樹脂部材20と振動部材30とを接合している接着層50とを備えている。圧電素子10は、圧電素体11と、一対の電極12,13と、電極14と、ビア導体19とを有している。
【0014】
圧電素体11は、板形状を有している。本実施形態において圧電素体11は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜部が丸められている直方体の形状も含まれる。圧電素体11は、互いに対向している主面11a及び主面11bを有している。圧電素体11の主面11a,11bの寸法、すなわち、主面11a,主面11bに直交する方向から見た場合の圧電素子10の寸法は、たとえば、30mm×30mmである。圧電素体11の形状は、直方体形状に限らず、たとえば、円盤形状であってもよい。主面11aに直交する方向において、たとえば、圧電素子10の厚みは100μmであり、圧電素体11の厚みは70μmであり、電極12,13,14の各々の厚みは15μmである。
【0015】
圧電素体11は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料としては、PZT[Pb(Zr、Ti)O
3]、PT(PbTiO
3)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O
3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO
3)などが挙げられる。圧電素体11は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。
【0016】
図2に示されるように、圧電素体11の主面11a上には、一対の電極12,13が配置されている。圧電素体11の主面11b上には、電極14が配置されている。電極12,13,14は、導電性材料(たとえば、Ag、Pd、又はCuなど)を含む導体である。これらの導体は、導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0017】
電極12及び電極13は、主面11a上において互いに離間している。電極13が主面11aに接している面積は、電極12が主面11aに接している面積よりも大きい。電極14が主面11bに接している面積は、電極12が主面11aに接している面積又は電極13が主面11aに接している面積よりも大きい。電極13及び電極14は、主面11aに直交する方向から見て、互いに重なっている領域を有している。
【0018】
ビア導体19は、電極12と電極14とを物理的かつ電気的に接続している。ビア導体19は、主面11aに直交する方向から見て圧電素子10の側面近傍に配置されており、主面11aから主面11bに貫通している。ビア導体19は、電極12,13,14と同様に、導電性材料(たとえば、Ag、Pd、又はCuなど)からなる導体である。
【0019】
樹脂部材20は、圧電素体11の主面11a,11bに平行な互いに対向する主面20a及び主面20bを有している。樹脂部材20は、膜状又は板状であり、主面20aに直交する方向から見て、矩形形状を呈している。矩形形状には、たとえば、角部が丸められている形状も含まれる。樹脂部材20の形状は、矩形形状に限定されず、たとえば、円形状等でもよい。
【0020】
樹脂部材20は、ポリイミド樹脂、PET樹脂、又はポリパラキシリレン樹脂などからなり、絶縁性を有している。主面20aに直交する方向から見て、樹脂部材20の面積は、圧電素子10の面積より大きい。たとえば、樹脂部材20の主面20a,20bの寸法は、40mm×40mmである。主面20aに直交する方向において、樹脂部材20の厚みは、圧電素子10の厚みよりも小さい。たとえば、主面20aに直交する方向における樹脂部材20の厚みは、25μmである。樹脂部材20の熱膨張率は、圧電素子10の熱膨張率よりも大きい。
【0021】
樹脂部材20の端部には、延出部21が接続されている。本実施形態では、延出部21は、樹脂部材20の外縁の一辺から、主面20aと平行な方向に直線的に、振動部材30の縁を越えて延在している。
【0022】
延出部21の幅は、延出部21が接続されている樹脂部材20の辺の長さよりも短く、たとえば12mmである。本実施形態では、延出部21は、樹脂部材20と同一の材料からなる。本実施形態では、延出部21の厚みは、樹脂部材20と同一であり、圧電素子10の厚みよりも小さい。延出部21の熱膨張率も、圧電素子10の熱膨張率よりも大きい。
【0023】
延出部21及び樹脂部材20の主面20a上には、圧電素子10と電気的に接続されている一対の電極25,26が設けられている。電極25,26は、樹脂部材20の縁近傍に端部を有し、主面20aに直交する方向から見て圧電素子10から離間している。電極25,26は、樹脂部材20の縁近傍から主面20aに平行な方向に延在している。電極25,26は、延出部21上に設けられている不図示の端部によって、不図示の電源に接続されている。電極25,26は、導電性材料(たとえば、Ag、Pd、又はCuなど)を含む導電性ペーストの焼結体として構成される。
【0024】
電極25は、樹脂部材20において、圧電素子10の主面11a上に位置する電極12に、導電性樹脂層27によって電気的に接続されている。電極26は、樹脂部材20において、圧電素子10の主面11a上に配置されている電極13に、導電性樹脂層28によって電気的に接続されている。導電性樹脂層27,28は、合成樹脂(たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、又はイミド樹脂など)と導電性フィラー(Ag、Cu、又はAgめっき処理が施された物質など)とからなる。
【0025】
振動部材30は、主面20a,20bに平行な互いに対向する主面30a及び主面30bを有している。振動部材30は、板状である。上述した延出部21は、振動部材30の短辺側から引き出されている。本実施形態では、主面30aに直交する方向から見て、圧電素子10は、振動部材30の外縁の各辺と圧電素子10の外縁の各辺とが平行となるように、振動部材30の中央近傍に配置されている。
【0026】
振動部材30の主面30aの全体は、接着層50によって直接的に覆われていると共に、接着層50を介して、樹脂部材20によって間接的に覆われている。すなわち、主面30aに直交する方向から見た場合、主面30aは樹脂部材20から露出しておらず、目視できない。
【0027】
主面30aに直交する方向から見て、振動部材30の形状は、樹脂部材20の形状及び接着層50の形状と同一である。したがって、主面20aに直交する方向から見て、振動部材30の面積は、樹脂部材20の面積及び接着層50の面積と同じであり、圧電素子10の面積より大きい。主面20aに直交する方向において、樹脂部材20の厚みは、振動部材30の厚みよりも小さい。主面20aに直交する方向において、振動部材30の厚みは、圧電素子10の厚み以上の大きさである。たとえば、主面20aに直交する方向における振動部材30の厚みは、250μmである。振動部材30の熱膨張率は、圧電素子10及び樹脂部材20の熱膨張率よりも大きい。振動部材30は、Ni、ステンレス鋼、黄銅、又はインバーなどを材料とする金属からなる。
【0028】
接着層40は、絶縁性を有しており、圧電素子10と樹脂部材20の主面20aとを接合している。本実施形態では、接着層40は、圧電素子10の主面11b側だけでなく、側面にも付着されている。接着層40は、圧電素子10の主面11b上に配置されている電極14を覆っている。すなわち、電極14は、接着層40と圧電素体11とに囲まれており、露出していない。接着層40の厚みは、たとえば7μm以下である。
【0029】
接着層50は、絶縁性を有しており、樹脂部材20の主面20bと振動部材30の主面30aとを接合している。延出部21は、接着層50によって、主面20aに直交する方向から見て振動部材30と重なる領域で振動部材30と接合されている。接着層50の厚みは、たとえば7μm以下である。
【0030】
接着層50が振動部材30に接着している接着面積は、接着層40が樹脂部材20に接着している接着面積より大きい。本実施形態では、接着層40は、圧電素子10の主面11b側の全体に接着されており、接着層50は、樹脂部材20の主面20bの全体に接着されている。
【0031】
接着層40,50には、樹脂又は両面テープ等が用いられる。たとえば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアノアクリエート樹脂、又は嫌気硬化型のアクリル樹脂などが用いられる。特に、嫌気硬化型のアクリル樹脂が用いられることで、樹脂部材20の熱による変形が防止される。エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シアノアクリエート樹脂が用いられる場合には、接着層40,50が低温で硬化されることで、樹脂部材20の熱による変形が抑制される。接着層40,50は、導電性フィラーを含まない。
【0032】
次に、振動デバイス1の動作及び作用効果について説明する。
【0033】
電極12及び電極13に極性が異なる電圧が印加されると、電極12に電気的に接続されている電極14と電極13との間で電界が発生する。したがって、圧電素体11において、電極13と電極14とで挟まれた領域が活性領域となり、当該活性領域に変位が発生する。すなわち、圧電素子10は、一対の電極12,13に交流電圧が印加されると、印加された交流電圧の周波数に応じて伸縮を繰り返す。
【0034】
圧電素子10と樹脂部材20とは、接着層40によって接合されている。樹脂部材20と振動部材30とは、接着層50によって接合されている。このため、振動部材30は、圧電素子10における伸縮の繰り返しに応じて、圧電素子10と一体に撓み振動を行う。このとき、振動部材30のQ値及び強度が高いほど、振動部材30の変位量が向上する。
【0035】
振動デバイス1では、振動部材30は金属からなる。金属からなる振動部材30は、ガラスからなる振動部材に比して、高いQ値及び強度を有する。このため、振動デバイス1では、変位量が向上されている。
【0036】
振動部材30と圧電素子10とで挟まれた領域には、絶縁性の樹脂部材20が配置されている。このため、振動部材30にガラスでなく金属が用いられている場合にも、振動部材30と圧電素子10との間において短絡が防止されている。電極25,26が絶縁性の樹脂部材20上に配置されているため、電極25,26と振動部材30との間において短絡が防止されている。
【0037】
圧電素子10の電極12,13と電極25,26とは、導電性樹脂層27,28によって接続されている。このため、電極同士が接する場合よりも、振動デバイス1の変位量が向上する。
【0038】
電極25,26は、主面20aに直交する方向から見て、圧電素子10と離間している。圧電素子10と樹脂部材20とで挟まれた領域に電極25,26が配置されていると、圧電素子10は、電極25,26と当接して振動部材30の主面30a,30bに対して傾くおそれがある。圧電素子10が樹脂部材20に対して圧着される際には、電極25,26から圧電素子10に対して力が加わることで、圧電素体11に割れが生じるおそれもある。電極25,26が、主面20aに直交する方向から見て、圧電素子10と離間していれば、圧電素子10の傾き及び圧電素体11の割れが抑制され得る。
【0039】
接着層40は、絶縁性であり、電極14を覆っている。このため、電極26及び導電性樹脂層28と、電極14との短絡が防止されている。
【0040】
振動デバイス1では、上述したように、主面20aと直交する方向から見て、絶縁性を有する樹脂部材20の面積は、圧電素子10の面積より大きい。このため、樹脂部材20によって圧電素子10と振動部材30との短絡の発生が抑制されている。接着層50が振動部材30に接着している接着面積は、接着層40が樹脂部材20に接着している接着面積より大きい。このため、樹脂部材20と圧電素子10との接着面積と、樹脂部材20と振動部材30との接着面積とが同じである振動デバイス1よりも、振動部材30の端部における変位が向上されている。すなわち、圧電素子10が振動部材30よりも小さくとも、振動部材30の端部における変位が確保されている。したがって、振動デバイス1では、圧電素子10と振動部材30との間における短絡の発生が抑制されていると共に、振動部材30の端部で十分な変位が得られる。
【0041】
振動部材30の変位は、圧電素子10が接合されている部分が最も大きく、圧電素子10から離れるほど減少する。このため、振動部材30の変位は、振動部材30の短辺近傍において最小である。振動デバイス1では、延出部21は、振動部材30の変位が最小となる短辺側から引き出されているため、振動部材30から剥がれ難い。
【0042】
振動部材30の主面30aの全体が、絶縁性の樹脂部材20によって覆われている。したがって、振動部材30の主面30aは外部部材と電気的に接続され得ないため、振動部材30は外部部材と短絡し難い。
【0043】
金属からなる振動部材30は圧電素子10に比べて熱膨張率が大きいため、温度変化によって振動部材30が変形するおそれがある。厚みが小さいほど剛性は低くため、振動部材30は厚みが小さいほど変形しやすい。したがって、振動部材30の厚みが小さいと、温度変化に起因する振動部材30の変形によって圧電素子10に外力が加わることで、圧電素子10に割れが生じやすい。振動部材30が変形しやすいと、振動部材30が他部材に接合された態様では、振動デバイス1が駆動される場合に接合の剥がれも生じやすい。
【0044】
この点、主面20aに直交する方向において、振動部材30の厚みは、圧電素子10の厚み以上の大きさである。したがって、振動部材30の厚みが確保されているため、破損し難い。絶縁性の樹脂部材20の厚みが、圧電素子10及び振動部材30の厚みよりも小さいため、振動デバイス1の振動が人間の触覚によって認知されやすい。
【0045】
樹脂部材20の主面20a上には、圧電素子10と電気的に接続されている一対の電極25,26が設けられている。このため、圧電素子10に電圧を印加する電極25,26が、省スペースで簡易に設けられる。上記構成によれば、電極25,26を配置するスペースが確保されると共に、圧電素子10と振動部材30との短絡の抑制、及び振動部材30の端部における変位の確保が実現される。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0047】
たとえば、圧電素子10は、圧電素体11内に一つ又は複数の内部電極を有する積層構造であってもよい。この場合、圧電素体11は複数の圧電体層を含み、内部電極と圧電体層とが交互に配置される。
【0048】
振動デバイス1では、電極12,13が圧電素体11の主面11a上に配置され、電極14が主面11b上に配置されているが、電極12,13が主面11b上に配置され、電極14が主面11a上に配置されてもよい。
【0049】
電極12を設けずに、主面11a上に電極13のみが配置されてもよい。この場合、電極25は、電極14に直接又は導電性フィラーを通して、電気的に接続される。
【0050】
振動部材30は装置等の筐体であってもよいし、振動部材30が装置等の筐体に面接着によって実装されてもよい。