(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオールの水酸基のモル数[A]に対する前記ポリイソシアネート化合物の反応性基のモル数[B]の比([B]/[A])が2〜10であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電デバイスのさらなる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材としては、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる多層フィルムが用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池では、内部への水分の浸入を防止するため、アルミニウム箔層を含む外装材により電池内容物(正極、セパレータ、負極、電解液等)を覆う構成が採用されている。このような構成を採用したリチウムイオン電池は、アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池と呼ばれている。
【0004】
アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池は、例えば、外装材の一部に深絞り成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止したエンボスタイプのリチウムイオン電池が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
このようなリチウムイオン電池では、深絞り成型によって形成される凹部を深くするほど、より多くの電池内容物を収容できるため、エネルギー密度をより高くすることができる。
【0005】
しかしながら、従来のリチウムイオン電池用外装材に深い凹部を形成する深絞り成型を行うと、接着層及び金属箔層の破断を生じることがある。そのため、外装材には、良好な深絞り成型性が求められている。
【0006】
このような成型性を向上させるべく、外装材の最外層に基材層としてポリアミドフィルムが用いられる場合がある。しかしながら、ポリアミドフィルムは塩基性であることから、リチウムイオン電池用電解液(酸性)に接触すると、ポリアミドフィルムが溶けてしまい、外装材としての特性を発現できなくなるという問題がある。また、ポリアミドフィルムは、アルコールに対しても耐性が低い。
【0007】
これに対し、特許文献2には、最外層の基材層にポリエステルフィルムを使用したリチウムイオン電池用外装材が記載されている。ポリエステルフィルムはリチウムイオン電池用電解液(酸性)やアルコールに対する耐性が高く、この点でポリアミドフィルムを使用した外装材より優れている。
【0008】
しかしながら、ポリエステルフィルムはポリアミドフィルムより深絞り成型性が劣っており、このため、この外装材を深絞り成型すると、基材層のポリエステルフィルムと金属箔層との間でその一部が剥離してポリエステルフィルムの浮きが生じることがある。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
[蓄電デバイス用外装材]
図1は、本発明の蓄電デバイス用外装材の一実施形態を模式的に表す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の外装材(蓄電デバイス用外装材)10は、基材層11と、該該基材層11の一方に設けられた接着層12と、該接着層12の基材層111とは反対側に設けられた、両面に腐食防止処理層14a,14bを有する金属箔層13と、該金属箔層13の接着層12とは反対側に設けられたシーラント接着層15と、該シーラント接着層15の金属箔層13とは反対側に設けられたシーラント層16と、が積層された積層体である。ここで、腐食防止処理層14aは金属箔層13の接着層12側の面に、腐食防止処理層14bは金属箔層13のシーラント接着層15側の面に、それぞれ設けられている。外装材10は、基材層11が最外層、シーラント層16が最内層である。すなわち、外装材10は、基材層11を蓄電デバイスの外部側、シーラント層16を蓄電デバイスの内部側に向けて使用される。以下、各層について説明する。
【0022】
(基材層11)
基材層11は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性を付与し、成型加工や流通の際に起こりうるピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
【0023】
また、この基材層11は外装材10の最外層を構成し、酸性の電解液やアルコール等の薬品から蓄電デバイスを保護するものである。このような理由から、基材層11はポリエステル系樹脂を含有する樹脂層から成る必要がある。ポリエステル系樹脂はこれらの薬品に対する耐性に優れており、これを含む基材層11を最外層に配置することにより、蓄電デバイスを保護することができるのである。基材層11はポリエステル系樹脂とその他の樹脂との混合物で構成されていてもよいが、十分な耐薬品性を得るため、ポリエステル系樹脂を50質量%以上含有することが望ましい。なお、この基材層11に混合できるその他の樹脂としては、ポリアミド系樹脂等が例示できる。
【0024】
ポリエステル系樹脂としては、エチレングリコール又はブチレングリコールをアルコール成分とし、テレフタル酸を多塩基酸成分として、共重合させたポリエステル樹脂を使用できる。また、これらエチレングリコール又はブチレングリコール、テレフタル酸に加えて、その他のアルコール成分や多塩基酸成分を共重合させた共重合ポリエステル樹脂であってもよい。その他のアルコール成分としては、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAやビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等が例示できる。また、その他の多塩基酸成分としては、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカ二酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトン、乳酸等が例示できる。
【0025】
(接着層12)
接着層12は、基材層11と金属箔層13とを接着する層である。接着層12は、基材層11と金属箔層13とを強固に接着するために必要な密着力を有すると共に、深絞り成型する際において、金属箔層13と基材層11とが変形・伸縮したとしても、これらが互いに剥離することなく両者を確実に接着する追随性も有する必要がある。
【0026】
このため、この接着層12は、ポリオールとイソシアネート化合物とを反応硬化させたウレタン系接着剤で構成する必要があり、イソシアネート化合物として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)又はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)で構成する必要がある。なお、これらIPDI又はHDIの多量体(例えば三量体)を使用することもできる。
【0027】
なお、イソシアネート化合物としてトリレンジイソシアネート(TDI)を使用した場合には、後述する比較例1のように、深絞り成型する際に、そのコーナー部で金属箔層13と基材層11とが剥離し、基材層11が金属箔層13から部分的に浮くことがある。
【0028】
次に、ポリオールとしては、ポリエステルポリオールやアクリルポリオールを使用することができる。
【0029】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、ジカルボン酸の一種以上と水酸基を三つ以上有する化合物の一種以上とを反応させることで得られるポリエステルポリオールが挙げられる。水酸基を三つ以上有する化合物のうち未反応の部位がポリエステルポリオールの側鎖の水酸基となる。
【0030】
ポリエステルポリオールを構成するジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のいずれも用いることができる。具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の脂肪族ジカルボン酸;イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。
【0031】
水酸基を三つ以上有する化合物としては、例えばヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
【0032】
また、アクリルポリオールは、繰り返し単位の末端の水酸基に加えて、側鎖にも水酸基を有するアクリル樹脂である。アクリルポリオールとしては、例えば、少なくとも水酸基含有アクリルモノマーと(メタ)アクリル酸とを共重合して得られる共重合体が挙げられる。この場合、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位を主成分として含んでいることが好ましい。水酸基含有アクリルモノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
水酸基含有アクリルモノマー及び(メタ)アクリル酸と共重合する他の成分としては、アルキル(メタ)アクリレート系モノマー(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。);(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、
i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシラン等のシラン含有モノマー;(メタ)アクリロキシプロピルイソシアネート等のイソシアネート基含有モノマーが挙げられる。
【0034】
ポリオールとポリイソシアネート化合物とは、ポリオールの水酸基のモル数[A]に対する前記ポリイソシアネート化合物の反応性基のモル数[B]の比([B]/[A])が2〜10となるように配合することが望ましい。この比[B]/[A]が2未満の場合、あるいは10を越える場合には、後述する実施例2〜3のように、深絞り成型の際に、基材層と金属箔層との間で剥離が生じることはないものの、その外面にシワが生じることがある。
【0035】
(金属箔層13)
金属箔層13としては、アルミニウム及びステンレス鋼等の各種金属箔が挙げられ、防湿性及び延展性等の加工性、並びにコストの面から、金属箔層14はアルミニウム箔であることが好ましい。アルミニウム箔は一般の軟質アルミニウム箔であってもよいが、耐ピンホール性及び成形時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔であることが好ましい。
【0036】
金属箔層13の厚さは、バリア性、耐ピンホール性及び加工性の点から、9〜200μmであることが好ましく、15〜150μmであることがより好ましく、15〜100μmであることが更に好ましい。金属箔層13の厚さが9μm以上であることにより、成型加工により応力がかかっても破断しにくくなる。金属箔層13の厚さが200μm以下であることにより、外装材の質量増加を低減でき、蓄電デバイスの重量エネルギー密度低下を抑制することができる。
【0037】
(腐食防止処理層14a,14b)
腐食防止処理層14a,14bは、電解液、又は、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層13の腐食を抑制する役割を果たす。また、腐食防止処理層14aは、金属箔層13と接着層12との密着力を高める役割を果たす。また、腐食防止処理層14bは、金属箔層13とシーラント接着層15との密着力を高める役割を果たす。腐食防止処理層14a及び腐食防止処理層14は、同一の構成の層であってもよく、異なる構成の層であってもよい。
【0038】
腐食防止処理層14a,14bは、例えば、腐食防止処理層14a,14bの母材となる層に対して、脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理、腐食防止能を有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理あるいはこれらの処理を組み合わせた腐食防止処理を実施することで形成することができる。
【0039】
上述した処理のうち脱脂処理、熱水変成処理、陽極酸化処理、特に熱水変性処理及び陽極酸化処理は、処理剤によって金属箔(アルミニウム箔)表面を溶解させ、耐腐食性に優れる金属化合物(アルミニウム化合物(ベーマイト、アルマイト))を形成させる処理である。このため、このような処理は、金属箔層13から腐食防止処理層14a,14bまで共連続構造を形成している構造を得るために、化成処理の定義に包含されるケースもある。
【0040】
脱脂処理としては、酸脱脂、アルカリ脱脂が挙げられる。酸脱脂としては上述した硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸を単独あるいはこれらを混合して得られた酸脱脂を用いる方法などが挙げられる。また酸脱脂として、一ナトリウム二フッ化アンモニウムなどのフッ素含有化合物を上記無機酸で溶解させた酸脱脂剤を用いることで、金属箔層14の脱脂効果だけでなく不動態である金属のフッ化物を形成させることが可能であり、耐フッ酸性という点で有効である。アルカリ脱脂としては、水酸化ナトリウムなどを用いる方法が挙げられる。
【0041】
上記熱水変成処理としては、例えば、トリエタノールアミンを添加した沸騰水中に金属箔層13を浸漬処理することで得られるベーマイト処理を用いることができる。上記陽極酸化処理としては、例えば、アルマイト処理を用いることができる。また、上記化成処理としては、例えば、クロメート処理、ジルコニウム処理、チタニウム処理、バナジウム処理、モリブデン処理、リン酸カルシウム処理、水酸化ストロンチウム処理、セリウム処理、ルテニウム処理、或いはこれらを2種以上組み合わせた処理を用いることができる。これらの熱水変成処理、陽極酸化処理、化成処理は、上述した脱脂処理を事前に施すことが好ましい。
【0042】
腐食防止性能を有するコーティング剤を塗工するコーティングタイプの腐食防止処理に用いられるコーティング剤としては、希土類元素酸化物ゾル、アニオン性ポリマー、カチオン性ポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有するコーティング剤が挙げられる。特に、希土類元素酸化物ゾルを含有するコーティング剤を用いる方法が好ましい。
【0043】
(シーラント接着層15)
シーラント接着層15は、腐食防止処理層14bが形成された金属箔層13とシーラント層16を接着する層である。外装材10は、シーラント接着層15を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成に大きく分けられる。
【0044】
熱ラミネート構成におけるシーラント接着層15を形成する接着成分は、ポリオレフィン系樹脂を酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0045】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されていることから、無極性のポリオレフィン系樹脂フィルム等で構成された場合のシーラント層16と、極性を有することが多い腐食防止処理層14bの両方に強固に密着することができる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、外装材10の電解液等の内容物に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生してもシーラント接着層15の劣化による密着力の低下を防止し易い。
【0046】
酸変性ポリオレフィン系樹脂のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。また、ポリオレフィン樹脂としては、上記したものにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸、エポキシ化合物及び酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸であることが好ましい。シーラント接着層15に使用する酸変性ポリオレフィン系樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0047】
ドライラミネート構成のシーラント接着層15を形成する接着成分としては、例えば、
ポリオールとイソシアネート化合物とで構成されるウレタン系接着剤が使用できる。ポリオールとしてはポリエステルポリオール、あるいはアクリルポリオールが使用できる。また、イソシアネート化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。ドライラミネート構成のシーラント接着層15を形成する接着成分として、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂にイソシアネート化合物を配合した組成物を使用することも可能である。
【0048】
(シーラント層16)
シーラント層16は、外装材10に対し、ヒートシールによる封止性を付与する層であり、蓄電デバイスの組み立て時に内側に配置されて熱融着される層である。シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂に無水マレイン酸等の酸をグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。中でも、水蒸気のバリア性を向上させ、ヒートシールによって過度に潰れることなく蓄電デバイスの形態を構成可能なポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度及び高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ポリプロピレン;並びに、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0050】
シーラント層17は、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン−環状オレフィン共重合体及びポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。
【0051】
[外装材の製造方法]
次に、外装材10の製造方法について説明する。なお、外装材10の製造方法は以下の方法に限定されない。
【0052】
外装材10の製造方法として、例えば、下記の工程S11〜S13を有する方法が挙げられる。
工程S11:金属箔層13の一方の面上に腐食防止処理層14aを形成し、金属箔層13の他方の面上に腐食防止処理層14bを形成する工程。
工程S12:腐食防止処理層14aの金属箔層13とは反対側の面と、基材層11とを、接着層12を介して貼り合わせる工程。
工程S13:腐食防止処理層14bの金属箔層13とは反対側の面上に、シーラント接着層15を介してシーラント層16を形成する工程。
【0053】
(工程S11)
工程S11では、金属箔層13の一方の面上に腐食防止処理層14aを形成し、金属箔層13の他方の面上に腐食防止処理層14bを形成する。腐食防止処理層14a及び14bは、それぞれ別々に形成されてもよく、両方が一度に形成されてもよい。具体的には、例えば、金属箔層13の両方の面に腐食防止処理剤(腐食防止処理層の母材)を塗布し、その後、乾燥、硬化、焼付けを順次行うことで、腐食防止処理層14a及び14bを一度に形成する。また、金属箔層13の一方の面に腐食防止処理剤を塗布し、乾燥、硬化、焼き付けを順次行って腐食防止処理層14aを形成した後、金属箔層13の他方の面に同様
にして腐食防止処理層14bを形成してもよい。腐食防止処理層15a及び15bの形成順序は特に制限されない。また、腐食防止処理剤は、腐食防止処理層14aと腐食防止処理層14bとで異なるものを用いてもよく、同じものを用いてもよい。上記腐食防止処理剤としては、例えば、塗布型クロメート処理用の腐食防止処理剤等を用いることができる。腐食防止処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、例えば、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、ダイコート法、バーコート法、キスコート法、コンマコート法等の方法を用いることができる。なお、金属箔層13として、未処理の金属箔層を用いてもよいし、ウェットタイプの脱脂処理又はドライタイプの脱脂処理により、脱脂処理を施した金属箔層を用いてもよい。
【0054】
(工程S12)
工程S12では、腐食防止処理層14aの金属箔層13とは反対側の面と、基材層11とが、接着層12を形成する接着剤を用いてドライラミネーション等の手法で貼り合わせられる。このとき、外装材10に意匠性を付与するために、接着剤に上記顔料を配合してもよい。工程S12では、接着性の促進のため、室温〜100℃の範囲でエージング(養生)処理を行ってもよい。エージング時間は、例えば、1〜10日である。
【0055】
(工程S13)
工程S12後、基材層11、接着層12、腐食防止処理層14a、金属箔層13及び腐食防止処理層14bがこの順に積層された積層体の腐食防止処理層14bの金属箔層13とは反対側の面上に、シーラント接着層15を介してシーラント層16が形成される。シーラント層16は、ドライラミネーション及びサンドイッチラミネーション等によって積層されてもよく、シーラント接着層15とともに共押出し法によって積層されてもよい。シーラント層16は、接着性向上の点から、例えばサンドイッチラミネーションによって積層される、又は、シーラント接着層15とともに共押出し法によって積層されることが好ましく、サンドイッチラミネーションによって積層されることがより好ましい。
【0056】
以上説明した工程S11〜S13により、外装材10が得られる。なお、外装材10の製造方法の工程順序は、上記工程S11〜S13を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程S12を行ってから工程S11を行う等、実施する工程の順序を適宜変更してもよい。
【0057】
[蓄電デバイス]
次に、外装材10を容器として備える蓄電デバイスについて説明する。蓄電デバイスは、電極を含む電池要素30と、上記電極から延在するリード40と、電池要素1を収容する容器とを備え、上記容器は蓄電デバイス用外装材10から、シーラント層16が内側となるように形成される。上記容器は、シーラント層16同士が対向するように2つの外装材を重ね合わせ、重ねられた外装材10の周縁部を熱融着して得られてもよく、また、1つの外装材を折り返して重ね合わせ、同様に外装材10の周縁部を熱融着して得られてもよい。また、蓄電デバイスは、外装材10を容器として備えていてもよい。本実施形態の外装材は、様々な蓄電デバイスにおいて使用可能である。そのような蓄電デバイスとしては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが挙げられる。
【0058】
リード40は、シーラント層16を内側として容器を形成する外装材10によって挟持され、密封されている。リード40は、タブシーラントを介して、外装材10によって挟持されていてもよい。
【0059】
[蓄電デバイスの製造方法]
次に、上述した外装材10を用いて蓄電デバイスを製造する方法について説明する。な
お、ここでは、エンボスタイプ外装材20を用いて二次電池40を製造する場合を例に挙げて説明する。
図2は上記エンボスタイプ外装材20を示す図である。
図3の(a)〜(d)は、外装材10を用いた片側成型加工電池の製造工程を示す斜視図である。二次電池50としては、エンボスタイプ外装材20のような外装材を2つ設け、このような外装材同士を、アライメントを調整しつつ、貼り合わせて製造される、両側成型加工電池であってもよい。また、エンボスタイプ外装材20は、外装材10を用いて形成されてもよい。
【0060】
片側成型加工電池である二次電池50は、例えば、以下の工程S21〜S25により製造することができる。
工程S21:外装材10、電極を含む電池要素30、並びに上記電極から延在するリード40を準備する工程。
工程S22:外装材10の片面に電池要素1を配置するための凹部22を形成して、エンボスタイプ外装材20を形成する工程(
図3(a)及び
図3(b)参照)。
工程S23:エンボスタイプ外装材20の成型加工エリア(凹部22)に電池要素30を配置し、凹部22を蓋部24が覆うようにエンボスタイプ外装材20を折り返し重ねて、電池要素1から延在するリード40を挟持するようにエンボスタイプ外装材20の一辺を加圧熱融着する工程(
図3(b)及び
図3(c)参照)。
工程S24:リード40を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺を加圧熱融着し、その後、残った一辺から電解液を注入し、真空状態で残った一辺を加圧熱融着する工程(
図3(c)参照)。
工程S25:リード40を挟持する辺以外の加圧熱融着辺端部をカットし、成型加工エリア(凹部22)側に折り曲げる工程(
図3(d)参照)。
【0061】
(工程S21)
工程S21では、外装材10、電極を含む電池要素30、並びに上記電極から延在するリード40を準備する。外装材10は、上述した実施形態に基づき準備する。電池要素30及びリード40としては特に制限はなく、公知の電池要素1及びリード2を用いることができる。
【0062】
(工程S22)
工程S22では、外装材10のシーラント層17側に電池要素1を配置するための凹部22が形成される。凹部22の平面形状は、電池要素1の形状に合致する形状、例えば平面視矩形状とされる。凹部22は、例えば矩形状の圧力面を有する押圧部材を、外装材10の一部に対してその厚み方向に押圧することで形成される。また、押圧する位置、すなわち凹部22は、長方形に切り出した外装材10の中央より、外装材10の長手方向の一方の端部に偏った位置に形成する。これにより、成型加工後に凹部22を形成していないもう片方の端部側を折り返し、蓋(蓋部24)とすることができる。
【0063】
凹部22を形成する方法としてより具体的には、金型を用いた成型加工(深絞り成型)が挙げられる。成型方法としては、外装材10の厚さ以上のギャップを有するように配置された雌型と雄型の金型を用い、雄型の金型を外装材10とともに雌型の金型に押し込む方法が挙げられる。雄型の金型の押込み量を調整することで、凹部22の深さ(深絞り量)を所望の量に調整できる。外装材10に凹部22が形成されることにより、エンボスタイプ外装材20が得られる。このエンボスタイプ外装材20は、例えば
図2に示すような形状を有している。ここで、
図2(a)は、エンボスタイプ外装材20の斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すエンボスタイプ外装材20のb−b線に沿った縦断面図である。
【0064】
(工程S23)
工程S23では、エンボスタイプ外装材20の成型加工エリア(凹部32)内に、正極
、セパレータ及び負極等から構成される電池要素30が配置される。また、電池要素30から延在し、正極と負極にそれぞれ接合されたリード40が成型加工エリア(凹部22)から外に引き出される。その後、エンボスタイプ外装材20は、長手方向の略中央で折り返され、シーラント層16同士が内側となるように重ねられ、エンボスタイプ外装材20のリード2を挟持する一辺が加圧熱融着される。加圧熱融着は、温度、圧力及び時間の3条件で制御され、適宜設定される。加圧熱融着の温度は、シーラント層16を融解する温度以上であることが好ましい。
【0065】
なお、シーラント層16の熱融着前の厚さは、リード40の厚さに対し40%以上80%以下であることが好ましい。シーラント層16の厚さが上記下限値以上であることにより、熱融着樹脂がリード2端部を十分充填できる傾向があり、上記上限値以下であることにより、二次電池50の外装材10端部の厚さを適度に抑えることができ、外装材10端部からの水分の浸入量を低減することができる。
【0066】
(工程S24)
工程S24では、リード40を挟持する辺以外の一辺を残し、他の辺の加圧熱融着が行われる。その後、残った一辺から電解液を注入し、残った一辺が真空状態で加圧熱融着される。加圧熱融着の条件は工程S23と同様である。
【0067】
(工程S25)
リード40を挟持する辺以外の周縁加圧熱融着辺端部がカットされ、端部からははみだしたシーラント層17が除去される。その後、周縁加圧熱融着部を成型加工エリア32側に折り返し、折り返し部52を形成することで、二次電池50が得られる。
【0068】
以上、本発明の蓄電デバイス用外装材の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例】
【0069】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明する。これらの実施例及び比較例は、最外層の基材層としてポリエステルフィルムを使用し、この基材層と金属箔層とを接着する接着層を、ポリオールと各種のイソシアネートとを反応硬化させた接着剤で構成して、これらイソシアネートの種類及び配合比と、外装材を深絞り成型したときの剥離の有無との関係を検討したものである。また、併せて、深絞り成型したときの外観(シワの有無)についても検討した。
【0070】
(実施例1)
始めに、金属箔層13として厚さ40μmの軟質アルミニウム箔8079材を準備し、その両側に腐食防止処理層14a,14bを形成した。
【0071】
基材層11としてはポリエステルフィルム(東洋紡社製,厚さ25μm)を用いた。そして、金属箔層13の腐食防止処理層14aの金属箔層13とは反対側の面に、接着層12として、ウレタン系接着剤を塗布した。ウレタン系接着剤はポリエステルポリオール(ロックペイント社製SD−7)とHDI(旭化成社製デュラネート24A−100)との混合物で、ポリエステルポリオールの水酸基のモル数[A]に対するHDIの反応性基のモル数[B]の比[B]/[A]は2.0である。なお、塗布量は5.0〜6.0g/mm
2である。
【0072】
次いで、ドライラミネート法により、接着層12を介して、金属箔層13と基材層11とを接着させた。その後、基材層11、接着層12、腐食防止処理層14a、金属箔層1
3、及び腐食防止処理層14bからなる構造体をエージング処理した。
【0073】
次に、腐食防止処理層14bの金属箔層13とは反対側の面に、シーラント接着層15として、トルエンに溶解させた無水マレイン酸変性ポリプロピレンに対してポリイソシアネート化合物を配合した接着剤を塗布した。配合比は、無水マレイン酸変性ポリプロピレンの固形分100重量部に対して、ポリイソシアネート化合物の固形分が10重量部となる量である。また、塗布量は4.0〜5.0g/mm
2である。
【0074】
そして、このシーラント接着層15上に、ポリプロピレンを押出しコーティングしてシーラント層16を形成した。シーラント層16の厚みは80μmである。そして、これにより、リチウムイオン電池用外装材10を作製した。
【0075】
こうして得られた外装材10を、シーラント層17が上方を向くように成型装置内に配置し、深絞り成型した。成型深さは6mmである。そして、成型されたエンボスタイプ外装材20において、基材層11と金属箔層13との間に剥離があるか否か(基材層11が金属箔層13から浮いている部分があるか)を観察した。なお、実施例1〜3、比較例1の各外装材10について、それぞれ5個ずつ実験し、剥離(浮き)のある外装材の数を数えた。
【0076】
また、併せて、成型されたエンボスタイプ外装材20の外観を観察して、シワの有無を確認した。
【0077】
(比較例1)
接着層12のウレタン系接着剤として、ポリエステルポリオール(ロックペイント社製SD−7)とトリレンジイソシアネート(TDI,東洋モートン社製CAT−10L)との混合物を使用した外は、実施例1と同様に外装材を製造し、かつ、成型されたエンボスタイプ外装材20の剥離の有無及び外観を観察した。なお、ポリエステルポリオールの水酸基のモル数[A]に対するTDIの反応性基のモル数[B]の比[B]/[A]は2.0である。
【0078】
(実施例2)
接着層12のポリエステルポリオールの水酸基のモル数[A]に対するHDIの反応性基のモル数[B]の比[B]/[A]を1.5とした外は、実施例1と同様に外装材を製造し、かつ、成型されたエンボスタイプ外装材20の剥離の有無及び外観を観察した。
【0079】
(実施例3)
接着層12のポリエステルポリオールの水酸基のモル数[A]に対するHDIの反応性基のモル数[B]の比[B]/[A]を11.0とした外は、実施例1と同様に外装材を製造し、かつ、成型されたエンボスタイプ外装材20の剥離の有無及び外観を観察した。
【0080】
(実施例4)
接着剤層12のイソシアネート化合物として、HDIに代えて、IPDI(三井化学社製タケネートD140N)を使用した外は、実施例1と同様に外装材を製造し、かつ、成型されたエンボスタイプ外装材20の剥離の有無及び外観を観察した。
【0081】
(結果及び考察)
この結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
以上の結果から理解できるように、接着層12のイソシアネートとしてTDIを使用し
た場合(比較例1)には、外装材を深絞り成型したとき、そのコーナー部で基材層のポリエステルフィルムと金属箔層とが剥離し、基材層が金属箔層から浮き上がるのに対して、HDIを使用した場合(実施例1〜3)には、配合比[B]/[A]の大小に拘わらず、コーナー部を含めて全面で基材層と金属箔層とが密着して、両者の間に剥離や浮きが生じないことが理解できる。
【0084】
もっとも、HDIを使用した場合でも、配合比[B]/[A]が2未満の場合(実施例2)、あるいは10以上の場合(実施例3)のいずれの場合でも、深絞り成型された外装材の外面にはシワが生じている。これに対し、配合比[B]/[A]が2〜10の場合実施例1)には、基材層と金属箔層との密着性に優れることに加えて、その外観も良好であることが理解できる。
【0085】
また、実施例4と実施例1とを比較することにより、HDIに代えてIPDI(三井化学社製タケネートD140N)を使用した場合にも、同様であることが理解できる。