特許第6961962号(P6961962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブラザー工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000002
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000003
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000004
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000005
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000006
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000007
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000008
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000009
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000010
  • 特許6961962-液体吐出装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961962
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20211025BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B41J2/01 301
   B41J2/175 119
   B41J2/175 133
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-51052(P2017-51052)
(22)【出願日】2017年3月16日
(65)【公開番号】特開2018-153961(P2018-153961A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南波 護
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−042995(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/158911(WO,A1)
【文献】 特開2002−187290(JP,A)
【文献】 特開2016−068473(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0157003(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部に供給される液体を収容するタンクが格納されるタンク格納部を有する筐体であって、前記タンク格納部と前記筐体の外部とを連通させる開口が形成された筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開く開位置とを選択的に取り得る蓋と、
前記筐体の前面及び上面の少なくともいずれか一方に設けられた操作パネルであって、外部から操作される操作部を有し、前記筐体の前方から観察されたときに前記操作部が正規の方向を向くように配置された操作パネルとを備え、
前記タンク格納部は、前記筐体における前記タンク格納部以外の部分よりも前記筐体の前方に突出した突出部を構成し、前記突出部の前面に前記開口が形成されており、
前記蓋は、前記筐体に対して上下方向にスライド可能に取り付けられており、前記閉位置から上方にスライドして前記開位置を取り得
前記蓋が前記閉位置にあるときに前記開口を密閉するように前記筐体と前記蓋とを嵌合させる嵌合部をさらに備え、
前記嵌合部は、
前記筐体及び前記蓋の一方に設けられた凹部と、
前記筐体及び前記蓋の他方に設けられ、前記凹部に挿入される凸部とを含み、
前記凹部及び前記凸部がそれぞれ前記開口の全周に亘って形成されていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部に供給される液体を収容するタンクが格納されるタンク格納部を有する筐体であって、前記タンク格納部と前記筐体の外部とを連通させる開口が形成された筐体と、
前記筐体に取り付けられ、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開く開位置とを選択的に取り得る蓋と、
前記筐体の前面及び上面の少なくともいずれか一方に設けられた操作パネルであって、外部から操作される操作部を有し、前記筐体の前方から観察されたときに前記操作部が正規の方向を向くように配置された操作パネルとを備え、
前記タンク格納部は、前記筐体における前記タンク格納部以外の部分よりも前記筐体の前方に突出した突出部を構成し、前記突出部の前面に前記開口が形成されており、
前記蓋は、前記筐体に対して上下方向にスライド可能に取り付けられており、前記閉位置から上方にスライドして前記開位置を取り得、
前記蓋が前記閉位置にあるときに前記開口を密閉するように前記筐体と前記蓋とを嵌合させる嵌合部をさらに備え、
前記嵌合部は、
前記筐体及び前記蓋の一方の、前記開口の両側部に設けられ、前記蓋が前記開位置から前記閉位置に向かうときに前記蓋を後方に導くガイド溝と、
前記筐体及び前記蓋の他方の、前記開口の両側部に設けられ、前記ガイド溝に挿入されるガイドリブと、
前記筐体と前記閉位置にある前記蓋とに挟持された弾性部材とを含むことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記吐出部と対向する対向位置を経由するように記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送部によって搬送されて前記対向位置を経由した記録媒体を受容する受容部とをさらに備え、
前記筐体の上面に、前記受容部が設けられており、
前記受容部を上下方向と直交する仮想平面上に上下方向から射影した射影領域と、前記蓋を前記仮想平面上に上下方向から射影した射影領域とが、互いに重ならないことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部をさらに備え、
前記筐体の上面に、前記画像読取部が設けられており、
前記画像読取部を上下方向と直交する仮想平面上に上下方向から射影した射影領域と、
前記蓋を前記仮想平面上に上下方向から射影した射影領域とが、互いに重ならないことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記画像読取部は、水平方向に沿った軸を中心として回動可能な回動部材を有し、
前記蓋のスライド範囲の上限位置は、前記回動部材の回動範囲の上限位置と同一レベル以下であることを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記タンクは、カートリッジ式であり、前記タンク格納部に格納された格納位置と、前記格納位置よりも前方の未格納位置とを取り得、
前記蓋は、前記開位置から前記閉位置に向けて下方にスライドするときに、前記格納位置にある前記タンクとは接触せず、前記未格納位置にある前記タンクと接触する接触部を有し、前記接触部が前記未格納位置にある前記タンクと接触することで、前記蓋が前記閉位置に至らないように構成されたことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記接触部が前記未格納位置にある前記タンクと接触するとき、前記開口の一部が前記蓋に覆われていないことを特徴とする請求項に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記タンクは、液体補充式であり、前記タンク内に液体を補充するための補充口と、前記補充口を密閉する密閉位置と前記補充口を密閉しない非密閉位置とを取り得る栓とを有し、
前記蓋は、前記開位置から前記閉位置に向けて下方にスライドするときに、前記密閉位置にある前記栓とは接触せず、前記非密閉位置にある前記栓と接触する接触部を有し、前記接触部が前記非密閉位置にある前記栓と接触することで、前記蓋が前記閉位置に至らないように構成されたことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吐出部と、吐出部に供給される液体を収容するタンクが格納されるタンク格納部を有する筐体とを備えた液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(図1図23)には、タンクユニット(タンク格納部)が装置本体(筐体)の右側面に設けられた構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−54825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、液体吐出装置の左右方向のサイズが大きくなり、液体吐出装置の設置スペースに支障が生じ得る。一方、液体吐出装置の前方には、ユーザの作業スペースが予め確保されるのが一般である。そこで、タンク格納部を筐体の側方ではなく筐体の前方に突出させて突出部を構成することで、設置スペースの問題を抑制することが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記のようにタンク格納部を前方に突出させた場合でも、タンク格納部と筐体の外部とを連通させる開口を閉じる蓋が、筐体に対して左右方向にスライド可能に取り付けられており、筐体から左右方向にはみ出してしまうと、液体吐出装置の左右方向のスペースを確保する必要が生じ、設置スペースの問題を抑制することができない。
【0006】
また、上記のようにタンク格納部を前方に突出させた場合において、蓋が筐体に対して回動可能に取り付けられていると、蓋の回動範囲の分、液体吐出装置の前方にさらにスペースを確保する必要が生じる。しかも、開いた状態の蓋にユーザが接触することで、蓋の破損や、筐体の前方への転倒が生じ得る。
【0007】
本発明の目的は、蓋の破損や筐体の転倒が生じ難く、かつ、設置スペースの問題を抑制することができる、液体吐出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る液体吐出装置は、液体を吐出する吐出部と、前記吐出部に供給される液体を収容するタンクが格納されるタンク格納部を有する筐体であって、前記タンク格納部と前記筐体の外部とを連通させる開口が形成された筐体と、前記筐体に取り付けられ、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開く開位置とを選択的に取り得る蓋と、前記筐体の前面及び上面の少なくともいずれか一方に設けられた操作パネルであって、外部から操作される操作部を有し、前記筐体の前方から観察されたときに前記操作部が正規の方向を向くように配置された操作パネルとを備え、前記タンク格納部は、前記筐体における前記タンク格納部以外の部分よりも前記筐体の前方に突出した突出部を構成し、前記突出部の前面に前記開口が形成されており、前記蓋は、前記筐体に対して上下方向にスライド可能に取り付けられており、前記閉位置から上方にスライドして前記開位置を取り得、前記蓋が前記閉位置にあるときに前記開口を密閉するように前記筐体と前記蓋とを嵌合させる嵌合部をさらに備え、前記嵌合部は、前記筐体及び前記蓋の一方に設けられた凹部と、前記筐体及び前記蓋の他方に設けられ、前記凹部に挿入される凸部とを含み、前記凹部及び前記凸部がそれぞれ前記開口の全周に亘って形成されていることを特徴とする。
本発明に係る液体吐出装置は、別の観点では、液体を吐出する吐出部と、前記吐出部に供給される液体を収容するタンクが格納されるタンク格納部を有する筐体であって、前記タンク格納部と前記筐体の外部とを連通させる開口が形成された筐体と、前記筐体に取り付けられ、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開く開位置とを選択的に取り得る蓋と、前記筐体の前面及び上面の少なくともいずれか一方に設けられた操作パネルであって、外部から操作される操作部を有し、前記筐体の前方から観察されたときに前記操作部が正規の方向を向くように配置された操作パネルとを備え、前記タンク格納部は、前記筐体における前記タンク格納部以外の部分よりも前記筐体の前方に突出した突出部を構成し、前記突出部の前面に前記開口が形成されており、前記蓋は、前記筐体に対して上下方向にスライド可能に取り付けられており、前記閉位置から上方にスライドして前記開位置を取り得、前記蓋が前記閉位置にあるときに前記開口を密閉するように前記筐体と前記蓋とを嵌合させる嵌合部をさらに備え、前記嵌合部は、前記筐体及び前記蓋の一方の、前記開口の両側部に設けられ、前記蓋が前記開位置から前記閉位置に向かうときに前記蓋を後方に導くガイド溝と、前記筐体及び前記蓋の他方の、前記開口の両側部に設けられ、前記ガイド溝に挿入されるガイドリブと、前記筐体と前記閉位置にある前記蓋とに挟持された弾性部材とを含む。
【0009】
本発明によれば、タンク格納部を前方に突出させると共に、蓋を筐体に対して上下方向にスライド可能としたことで、蓋の破損や筐体の転倒が生じ難く、かつ、スペースに余裕のあることが多い液体吐出装置の前方空間及び上方空間を有効活用して設置スペースの問題を抑制することができる。また、この場合、開口を介してタンク格納部に粉塵が侵入することをより確実に防止することができる。
【0010】
本発明に係る液体吐出装置は、前記吐出部と対向する対向位置を経由するように記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送部によって搬送されて前記対向位置を経由した記録媒体を受容する受容部とをさらに備え、前記筐体の上面に、前記受容部が設けられており、前記受容部を上下方向と直交する仮想平面上に上下方向から射影した射影領域と、前記蓋を前記仮想平面上に上下方向から射影した射影領域とが、互いに重ならなくてよい。この場合、蓋が筐体に対して上下方向にスライドするときに、蓋が受容部に接触することがない。したがって、蓋が受容部と接触することで破損する問題を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る液体吐出装置は、記録媒体に形成された画像を読み取る画像読取部をさらに備え、前記筐体の上面に、前記画像読取部が設けられており、前記画像読取部を上下方向と直交する仮想平面上に上下方向から射影した射影領域と、前記蓋を前記仮想平面上に上下方向から射影した射影領域とが、互いに重ならなくてよい。この場合、蓋が筐体に対して上下方向にスライドするときに、蓋が画像読取部に接触することがない。したがって、蓋が画像読取部と接触することで破損する問題を抑制することができる。
【0012】
前記画像読取部は、水平方向に沿った軸を中心として回動可能な回動部材を有し、前記蓋のスライド範囲の上限位置は、前記回動部材の回動範囲の上限位置と同一レベル以下であってよい。この場合、蓋のスライドのために上方のスペースを確保する必要がない。
【0013】
前記タンクは、カートリッジ式であり、前記タンク格納部に格納された格納位置と、前記格納位置よりも前方の未格納位置とを取り得、前記蓋は、前記開位置から前記閉位置に向けて下方にスライドするときに、前記格納位置にある前記タンクとは接触せず、前記未格納位置にある前記タンクと接触する接触部を有し、前記接触部が前記未格納位置にある前記タンクと接触することで、前記蓋が前記閉位置に至らないように構成されてよい。この場合、ユーザは、蓋が閉位置に至らないことで、タンクが適正に格納されていないことを確認することができる。
【0014】
前記接触部が前記未格納位置にある前記タンクと接触するとき、前記開口の一部が前記蓋に覆われていなくてよい。この場合、ユーザは、開口の一部を視認することで、タンクがタンク格納部に適正に格納されていないことを確認することができる。
【0015】
前記タンクは、液体補充式であり、前記タンク内に液体を補充するための補充口と、前記補充口を密閉する密閉位置と前記補充口を密閉しない非密閉位置とを取り得る栓とを有し、前記蓋は、前記開位置から前記閉位置に向けて下方にスライドするときに、前記密閉位置にある前記栓とは接触せず、前記非密閉位置にある前記栓と接触する接触部を有し、前記接触部が前記非密閉位置にある前記栓と接触することで、前記蓋が前記閉位置に至らないように構成されてよい。この場合、ユーザは、蓋が閉位置に至らないことで、補充口が密閉されていないことを確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タンク格納部を前方に突出させると共に、蓋を筐体に対して上下方向にスライド可能としたことで、蓋の破損や筐体の転倒が生じ難く、かつ、スペースに余裕のあることが多い液体吐出装置の前方空間及び上方空間を有効活用して設置スペースの問題を抑制することができる。また、この場合、開口を介してタンク格納部に粉塵が侵入することをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るプリンタの側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るプリンタの内部を示す正面図である。
図4図1のIV−IV線に沿った断面図である。
図5図1のV−V線に沿った断面図である。
図6】蓋が下方にスライドするときに未格納位置にあるタンクと接触した状態を示す、図5に対応する断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るプリンタにおける、図5に対応する断面図である。
図8】蓋が下方にスライドするときに非密閉位置にある栓と接触した状態を示す、図7に対応する断面図である。
図9】本発明の第3実施形態に係るプリンタの筐体におけるタンク格納部近傍を示す斜視図である。
図10】本発明の第3実施形態に係るプリンタの蓋を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係るプリンタ10は、図1図3に示すように、直方体形状の筐体1を有する。
【0022】
筐体1の前面1aには、図1に示すように、収容部2を装着するための開口1axが形成されている。収容部2は、筐体1に対して着脱可能であり、開口1axから筐体1内に挿入される。収容部2は、図3に示すように、複数の用紙Pを積載して収容可能である。
【0023】
筐体1の内部には、図3に示すように、インクを吐出する吐出部3と、用紙Pを搬送する搬送部4と、タンク格納部1tとが設けられている。タンク格納部1tには、インクを収容するタンクTが格納される。筐体1の上面1cには、用紙Pを受容する受容部5が設けられている。
【0024】
吐出部3は、タンクTと連通しており、タンクTから供給されたインクを複数の吐出口(図示略)から吐出させる。吐出部3は、複数の吐出口が開口した吐出面3xを有する。
【0025】
搬送部4は、収容部2に収容された複数の用紙Pのうち最上層の用紙Pと接触するように配置されたローラ4aと、搬送経路に沿って互いに離隔して配置された複数のローラ対4b〜4fと、吐出面3xと対向するプラテン4pと、搬送経路を画定するガイド板4gとを含む。搬送部4は、収容部2に収容された複数の用紙Pのうち最上層の用紙Pを、吐出面3xと対向する対向位置Oを経由するように搬送する。
【0026】
受容部5は、搬送部4によって搬送されて対向位置Oを経由した用紙P(即ち、表面にインクが吐出され、記録が行われた用紙P)を受容する。
【0027】
筐体1の前面1aには、さらに、図1に示すように、操作パネル8が設けられている。操作パネル8は、タッチパネル式ディスプレイ8aと、キーボード8bとを有する。プリンタ10のユーザは、筐体1の前方から、タッチパネル式ディスプレイ8a及びキーボード8bを操作することが可能である。タッチパネル式ディスプレイ8a及びキーボード8bは、外部から操作される操作部に該当し、筐体1の前方から観察されたときに正規の方向を向くように(つまり、タッチパネル式ディスプレイ8a及びキーボード8bに表示される文字等の記号が正しい方向を向いているとユーザが認識できるように)配置されている。
【0028】
筐体1は、図2に示すように、タンク格納部1tが設けられた部分が、タンク格納部1t以外の部分よりも前方に突出している。換言すると、タンク格納部1tは、筐体1におけるタンク格納部1t以外の部分よりも筐体1の前方に突出した突出部1sを構成している。
【0029】
突出部1sの前面には、タンク格納部1tと筐体1の外部とを連通させる開口1xが形成されている。筐体1には、開口1xを閉じる閉位置(図2に実線で示す位置)と開口1xを開く開位置(図2に破線で示す位置)とを選択的に取り得る蓋9が取り付けられている。蓋9は、筐体1に対して上下方向にスライド可能であり、閉位置から上方にスライドして開位置を取り得る。
【0030】
筐体1の上面1cには、さらに、図1に示すように、スキャナ6が設けられている。スキャナ6は、用紙Pに形成された画像を読み取る画像読取部に該当する。スキャナ6のカバー6aは、図2に示すように、水平方向(左右方向)に沿った軸6axを中心として回動可能である。即ち、カバー6aは、筐体1に対して回動可能に取り付けられている。
【0031】
図2に破線で示すように、蓋9のスライド範囲の上限位置は、カバー6aの回動範囲の上限位置よりも下方にある。また、蓋9を上下方向と直交する仮想平面上に上下方向から射影した射影領域A9は、受容部5を仮想平面上に上下方向から射影した射影領域A5、及び、スキャナ6を仮想平面上に上下方向から射影した射影領域A6の、いずれとも重ならない。
【0032】
図4及び図5に示すように、筐体1は凸部1p及び凹部1qを有し、蓋9は凸部9p及び凹部9qを有する。
【0033】
凸部1pは、突出部1sの両側面において上下方向に延在する部分と、突出部1sの上面1cにおいて左右方向に延在する部分とを含み、これら部分が繋がって一体となっている。凹部9qは、蓋9の両側部の内面において上下方向に延在する部分と、蓋9の上部の内面において左右方向に延在する部分とを含み、これら部分が繋がって一体となっている。蓋9が閉位置を取るとき、凸部1pが凹部9qに挿入される。
【0034】
凸部9pは、蓋9の下辺に沿って延在している。凹部1qは、突出部1sの下端における、蓋9の下辺と対向する部分に設けられている。蓋9が閉位置を取るとき、凸部9pが凹部1qに挿入される。
【0035】
凸部1p及び凹部1qは、開口1xの全周に亘って形成されている。凸部9p及び凹部9qも、同様に、開口1xの全周に亘って形成されている。したがって、蓋9が閉位置を取るとき、凸部1pと凹部9qとが嵌合しかつ凸部9pと凹部1qとが嵌合することで、開口1xが密閉される。
【0036】
タンクTは、カートリッジ式であり、タンク格納部1tに格納された格納位置(図5に示す位置)と、格納位置よりも前方の未格納位置(図6に示す位置)とを取り得る。
【0037】
蓋9の下端部分の内面には、突起9rが設けられている。蓋9が開位置から閉位置に向けて下方にスライドするとき、突起9rは、格納位置にあるタンクTとは接触しない(図5参照)が、未格納位置にあるタンクTとは接触する(図6参照)。即ち、図6に示すように、タンクTが、タンク格納部1tに適正に格納されておらず、未格納位置にあるときに、蓋9を開位置から閉位置に向けて下方にスライドさせると、突起9rがタンクTと接触し、蓋9を閉位置に至らせることができない。このとき、開口1xの上端部分は蓋9の下端部分に覆われているが、開口1xの上端部分を除く大部分は蓋9に覆われていない。
【0038】
以上に述べたように、本実施形態によれば、タンク格納部1tを前方に突出させると共に、蓋9を筐体1に対して上下方向にスライド可能としたことで、蓋9の破損や筐体1の転倒が生じ難く、かつ、スペースに余裕のあることが多いプリンタ10の前方空間及び上方空間を有効活用して設置スペースの問題を抑制することができる。
【0039】
筐体1の上面1cに受容部5が設けられており、射影領域A5,A9が互いに重ならない(図2参照)。この場合、蓋9が筐体1に対して上下方向にスライドするときに、蓋9が受容部5に接触することがない。したがって、蓋9が受容部5と接触することで破損する問題を抑制することができる。
【0040】
筐体1の上面1cにスキャナ6が設けられており、射影領域A6,A9が互いに重ならない(図2参照)。この場合、蓋9が筐体1に対して上下方向にスライドするときに、蓋9がスキャナ6に接触することがない。したがって、蓋9がスキャナ6と接触することで破損する問題を抑制することができる。
【0041】
蓋9のスライド範囲の上限位置は、カバー6aの回動範囲の上限位置と同一レベル以下である(図2参照)。この場合、蓋9のスライドのために上方のスペースを確保する必要がない。
【0042】
突起9rが未格納位置にあるタンクTと接触することで、蓋9が閉位置に至らないように構成されている(図6参照)。この場合、ユーザは、蓋9が閉位置に至らないことで、タンクTが適正に格納されていないことを確認することができる。
【0043】
突起9rが未格納位置にあるタンクTと接触するとき、開口1xの一部が蓋9に覆われていない(図6参照)。この場合、ユーザは、開口1xの一部を視認することで、タンクTがタンク格納部1tに適正に格納されていないことを確認することができる。
【0044】
プリンタ10は、蓋9が閉位置にあるときに開口1xを密閉するように筐体1と蓋9とを嵌合させる嵌合部(筐体1の凸部1p及び凹部1q、並びに、蓋9の凸部9p及び凹部9q)をさらに備えている。この場合、開口1xを介してタンク格納部1tに粉塵が侵入することを防止することができる。
【0045】
嵌合部は、筐体1の凸部1p及び凹部1qと、蓋9の凸部9p及び凹部9qとを含む。凸部1p及び凹部1qは、開口1xの全周に亘って形成されている。凸部9p及び凹部9qも、同様に、開口1xの全周に亘って形成されている。この場合、開口1xを介してタンク格納部1tに粉塵が侵入することをより確実に防止することができる。
【0046】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係るプリンタ210は、タンクTの構成が第1実施形態に係るプリンタ10と異なり、それ以外は第1実施形態に係るプリンタ10と同じである。
【0047】
本実施形態のタンクTは、図7及び図8に示すように、カートリッジ式ではなく、インク補充式であり、タンク格納部1tの定位置に配置されている。タンクTは、タンクT内にインクを補充するための補充口Tbと、補充口Tbを密閉する密閉位置(図7に示す位置)と補充口Tbを密閉しない非密閉位置(図8に示す位置)とを取り得る栓Tcとを有する。補充口Tb及び栓Tcは、タンクTの前端部に設けられている。
【0048】
蓋9が開位置から閉位置に向けて下方にスライドするとき、突起9rは、密閉位置にある栓Tcとは接触しない(図7参照)が、非密閉位置にある栓Tcと接触する(図8参照)。即ち、図8に示すように、栓Tcが補充口Tbに適正に取り付けられていないときに、蓋9を開位置から閉位置に向けて下方にスライドさせると、突起9rが栓Tcと接触し、蓋9を閉位置に至らせることができない。このとき、開口1xの上端部分は蓋9の下端部分に覆われているが、開口1xの上端部分を除く大部分は蓋9に覆われていない。
【0049】
本実施形態によれば、突起9rが非密閉位置にある栓Tcと接触することで、蓋9が閉位置に至らないように構成されている。この場合、ユーザは、蓋9が閉位置に至らないことで、補充口Tbが密閉されていないことを確認することができる。
【0050】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係るプリンタ310は、嵌合部の構成が第1実施形態に係るプリンタ10と異なり、それ以外は第1実施形態に係るプリンタ10と同じである。
【0051】
本実施形態では、凹部1q及び凸部9pは第1実施形態と同様に設けられているが、凸部1p及び凹部9qは設けられていない。
【0052】
突出部1sの両側面に、ガイド溝301gが設けられている。ガイド溝301gは、湾曲溝301g1と、鉛直溝301g2とを含む。湾曲溝301g1は、突出部1sの上端から、下方かつ後方に向かって、湾曲して延在している。鉛直溝301g2は、湾曲溝301g1の下端から、突出部1sの下端に向かって、鉛直方向に延在している。
【0053】
蓋309の両側部の内面に、ガイドリブ309rが設けられている。各ガイドリブ309rは、当該内面から内側に向かって突出しており、ガイド溝301gに挿入される。ガイド溝301g及びガイドリブ309rは、共に、開口1xの両側部に設けられている。
【0054】
蓋309の両側部及び上部の端面には、スポンジ等からなる弾性部材309sが設けられている。
【0055】
湾曲溝301g1の上端にガイドリブ309rを挿入して、蓋309を下方に移動させると、湾曲溝301g1の形状に沿って、蓋309が下方かつ後方に導かれる。つまり、蓋309が開位置から閉位置に向かうとき、ガイド溝301gとガイドリブ309rとの協働により、蓋309が後方に導かれる。そして、蓋309が閉位置に至ると同時に、弾性部材309sの端面309saが筐体1の圧接面301aに圧接される。このとき、弾性部材309sは、筐体1と蓋309とに挟持される。
【0056】
本実施形態によれば、嵌合部は、蓋309が開位置から閉位置に向かうときに蓋309を後方に導くガイド溝301gと、ガイド溝309gに挿入されるガイドリブ309rと、筐体1と閉位置にある蓋309とに挟持された弾性部材309sとを含む。この場合、開口1xを介してタンク格納部1tに粉塵が侵入することをより確実に防止することができる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0058】
<変形例>
・操作パネルは、筐体の上面に設けられてもよく、筐体の前面及び上面の両方に設けられてもよい。なお、操作パネルが筐体の上面に設けられている場合においても、操作部は、筐体の前方から観察されたときに正規の方向を向くように(つまり、操作部(タッチパネル式ディスプレイやキーボード)に表示される文字等の記号が正しい方向を向いているとユーザが認識できるように)配置されている。
・操作部は、タッチパネル式ディスプレイやキーボードに限定されず、ボタン等であってもよい。
・嵌合部を省略してもよい。
・接触部は、蓋の下端部分の内面に設けられることに限定されず、蓋の任意の部分(例えば、蓋の上端部分の内面等)に設けられてよい。
・接触部が未格納位置にあるタンクと接触するとき、開口の全体が蓋に覆われてもよい。
・吐出部は、ライン式及びシリアル式のいずれであってもよい。
・吐出部が吐出する液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
・記録媒体は、用紙に限定されず、記録可能な任意の媒体(例えば、布等)であってよい。
・本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 筐体
1a 前面
1c 上面
1p 凸部(嵌合部)
1q 凹部(嵌合部)
1s 突出部
1t タンク格納部
1x 開口
3 吐出部
4 搬送部
5 受容部
6 スキャナ(画像読取部)
6a カバー(回動部材)
6ax 軸
8 操作パネル
8a タッチパネル式ディスプレイ(操作部)
8b キーボード(操作部)
9;309 蓋
9p 凸部(嵌合部)
9q 凹部(嵌合部)
9r 突起(接触部)
10;210;310 プリンタ(液体吐出装置)
301g ガイド溝(嵌合部)
309r ガイドリブ(嵌合部)
309s 弾性部材(嵌合部)
O 対向位置
P 用紙(記録媒体)
T タンク
Tb 補充口
Tc 栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10