(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、立体形状成形装置への新たな機能の追加が模索されている。また、立体形状成形装置によって成形される立体形状(以下では「成形物」ともいう。)についても更なる機能の追加が模索されている。
【0005】
本発明は、立体形状成形装置で成形される成形物に香りを付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、三次元データに基づいて立体形状を成形する成形手段と、前記三次元データに香りに関する情報が含まれる場合、当該情報に応じ
、前記立体形状
を規定するボクセル単位で、使用する香料を決定する制御部とを有する立体形状成形装置である。
請求項2に記載の発明は、前記制御部は、前記
香料を
使用する場合、当該
香料を
使用する部位および当該部位の周囲の両方又は一方の強度を高める構造を追加する、請求項1に記載の立体形状成形装置である。
請求項3に記載の発明は、前記制御部は、構造体を追加する、請求項2に記載の立体形状成形装置である。
請求項4に記載の発明は、前記制御部は、前記
香料を
使用する前記部位の表面に保護層を追加する、請求項2に記載の立体形状成形装置である。
請求項5に記載の発明は、前記制御部は、
前記情報に香料の発生条件が含まれる場合、当該発生条件に応じた香り材料を選択する、請求項1に記載の立体形状成形装置である。
請求項6に記載の発明は、前記発生条件として水分が指定されている場合、前記制御部は、前記
香料を前記立体形状の表層部位に付与する、請求項5に記載の立体形状成形装置である。
請求項7に記載の発明は、前記発生条件として加熱が指定されている場合、熱源からの熱が伝搬する部位に前記
香料を付与する、請求項5に記載の立体形状成形装置である。
請求項8に記載の発明は、複数の前記熱源に対して異なる前記
香料を
決定する、請求項7に記載の立体形状成形装置である。
請求項9に記載の発明は、前記香りに関する情報に応じた前記
香料を
使用できない場合、前記立体形状の成形を開始する前に通知する、請求項1に記載の立体形状成形装置である。
請求項10に記載の発明は、成形対象とする立体形状
を表示
する画面上で、
香料を
使用する部位
と各部位に使用する香料の種類を受け付ける受付部と、
受け付けた部位に対応するボクセル毎に、前記香料の種類を含む三次元データを生成するデータ生成部とを有する情報処理装置である。
請求項11に記載の発明は、前記データ生成部は、前記受付部を通じて受け付けた
香料の発生条件を前記三次元データに含める、請求項10に記載の情報処理装置である。
請求項12に記載の発明は、コンピュータに、
立体形状
の成形に使用する三次元データに香りに関する情報が含まれる場合、当該情報に応じ、前記立体形状を規定するボクセル単位で、使用する香料を決定する機能を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、立体形状成形装置で成形される成形物に香りを付与することができる。
請求項2記載の発明によれば、香り付きの成形物の強度を維持又は高めることができる。
請求項3記載の発明によれば、香り付きの成形物の強度を維持又は高めることができる。
請求項4記載の発明によれば、香り付きの成形物の強度を維持又は高めることができる。
請求項5記載の発明によれば、発生条件に応じて香りを発生する成形物を成形できる。
請求項6記載の発明によれば、水分に接した場合に香りを発生する成形物を成形できる。
請求項7記載の発明によれば、電子的に定める条件を満たす場合に香りを発生する成形物を成形できる。
請求項8記載の発明によれば、条件別に異なる香りを発生する成形物を成形できる。
請求項9記載の発明によれば、意図せぬ成形物の成形を回避して材料の無駄を低減できる。
請求項10記載の発明によれば、香り付きの成形物を成形するための三次元データを生成できる。
請求項11記載の発明によれば、香りの発生条件を含む三次元データを生成できる。
請求項12記載の発明によれば、香り付きの成形物を成形するための三次元データを生成できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る情報処理装置100と立体形状成形装置200の接続形態例を説明する図である。情報処理装置100と立体形状成形装置200は通信手段を通じて接続されていればよい。なお、
図1では、信号線によって情報処理装置100と立体形状成形装置200が直接接続されているが、ネットワーク経由で接続されてもよい。
本実施の形態における情報処理装置100は、三次元データの生成装置として用いられる。情報処理装置100は、いわゆるコンピュータである。
【0011】
<情報処理装置>
まず、情報処理装置100について説明する。
図2は、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
情報処理装置100は、装置全体を制御する制御部101と、三次元データやプログラムの記憶に用いられる記憶部105と、画像の表示に使用される表示部106と、ユーザの入力操作を受け付ける操作受付部107と、外部装置(例えば立体形状成形装置200)との通信に用いられる通信部108とを有している。
これらの各部はバス109を通じて互いに接続されており、バス109を介してデータを受け渡しする。
【0012】
制御部101は、制御手段の一例であり、CPU(Central Processing Unit)102、ROM(Read Only Memory)103、RAM(Random Access Memory)104により構成されている。
ROM103には、CPU102により実行されるプログラムが記憶されている。CPU102は、RAM104を作業エリアに使用し、ROM103から読み出したプログラムを実行する。プログラムの実行を通じ、情報処理装置100の各部が制御される。
本実施の形態における制御部101は受付部の一例であると共にデータJ生成部の一例でもある。
【0013】
記憶部105は、ハードディスク装置や半導体メモリなどの記憶装置により構成される。
表示部106は、プログラム(オペレーションシステムやファームウェアを含む)の実行を通じて各種の画像を表示するディスプレイ装置である。表示部106は、例えば液晶ディスプレイパネルや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネルで構成される。
操作受付部107は、ユーザからの操作を受け付ける入力装置であり、例えばキーボード、ボタン、スイッチ、タッチパッド、タッチパネルなどで構成される。
通信部108は、例えばLAN(Local Area Network)インターフェースで構成される。
【0014】
図3は、情報処理装置100に搭載される制御部101の機能構成例を説明する図である。制御部101の機能はプログラムの実行を通じて実現される。
本実施の形態における制御部101は、香り成分を付与する部位の指示入力に使用される香り受付部110と、香り成分に関する情報を含む三次元データを生成するデータ生成部111として機能する。
香り成分に関する情報には、後述するように香りの名称、系統、地域、主成分などが含まれる。香り成分に関する情報は、香りに関する情報の一例である。
データ生成部111は、香り受付部110を通じて香りの発生条件を受け付けた場合、その発生条件を香り成分に関する情報の一部として三次元データに含める機能も有している。
【0015】
三次元データのフォーマットには、ポリゴンデータで構造を表現するSLT(Stereo LiThography)フォーマット、ボクセルデータで構造を表現するFAV(FAbricatable Voxel)フォーマット、ポリゴンデータで構造を表現するAMF(Additive Manufacturing File)フォーマットなどを使用する。勿論、これらのフォーマットは一例である。
既存のフォーマットには、香り成分に関する情報(以下、「香りデータ」という。)を記述するための専用の領域は用意されていない。このため、本実施の形態では、これらのフォーマットを拡張して使用する。
【0016】
図4は、表示画面に表示される香り受付画面120の表示例を示す図である。
香り受付画面120には、成形対象とする立体形状が表示される表示欄120Aと、立体形状に付着する香りを指定するための入力欄120Bとが配置されている。
図4の場合、表示欄120Aには、円柱が表示されている。この立体形状には色が付されていてもよいし、色が付されていなくてもよい。
図4では、表示欄120Aに立体形状を斜め上方から観察した外観像が表示されているが、表示形態はユーザの選択により自由に変更できる。例えば立体形状の縦断面図や横断面図を表示してもよい。
【0017】
図4の場合、入力欄120Bは、選択状態を示すチェックボックス欄121と、香りの種類の指定に用いられる種類欄122と、香りの発生条件の指定に用いられる条件欄123とで構成されている。
図4の場合、入力欄120Bは3種類の香りの設定が可能である。勿論、この表示は一例であり、入力欄120Bの個数は1つでも、2つでも、4つ以上でも構わない。
香り受付画面120に対する操作入力には、ポインタ124が使用される。ポインタ124は、表示欄120Aに表示された立体形状に対して香りを付加する部位の指定に用いられる他、入力欄120Bを構成する各欄に対する指示操作にも使用される。
【0018】
図4は、立体形状に対して香りを付与する部位の指定に枠125が用いられる例を示している。
また、
図4は、立体形状のうち枠125で囲まれた部位に適用される香りが「香り1」である場合を表している。1行目のチェックボックス欄121には選択状態を示すチェック記号が表示されている。
本実施の形態の場合、香りの種類と発生条件の欄はそれぞれプルダウン形式で項目を選択できる。
【0019】
香りの種類は、名称、系統、地域、主成分などの観点から選択できるようになっている。
名称の例には、ラベンダー、イランイラン、ローズ、カモミール、オレンジスイート、グレープフルーツ、ローズウッド、セダーウッド、ベルガモット、ジュニパー、サイプレス、ゼラニウム、ジャスミン、レモン、ペパーミント、マンダリン、マージョラム、フランキンセンス、ローズマリー、レモングラス、パチュリ、サンダルウッド、タイム、バジルなどがある。
系統の例には、フローラル、オリエンタル、柑橘、樹木、ハーブ、スパイス、樹脂などがある。
地域の例には、東南アジア、欧米、中東などがある。
主成分の例には、ラベンダーの場合のリナロール、酢酸リナリル、β−オシメン、テルピネン−4−オール、イランイランの場合のゲルマクレンD、ファルネセン、β−カリオフィレン、酢酸ベンジル、安息香酸ベンジルなどがある。
【0020】
発生条件は、香り成分の揮発性能が発揮される条件を指定するために設けられており、例えば「温度(気温)」、「湿度(水分)」、「加熱」などの中から選択できるようになっている。
一般に、香り成分は温度が高い場合や湿度が高い場合に揮発し易いことが知られている。もっとも、温度や湿度に応じた揮発量は、香り成分の種類や溶媒の組み合わせなどによっても異なる。
なお、一般的に香り成分は立体形状の表層部位に付与することが望ましい。香り成分の空気中への放出が容易なためである。しかし、特定の条件下でのみ香り成分を空気中に放出させたい場合等では、表層部ではなく深層部位に付与してもよい。深層部位とは厚み方向について深層の意味であり、表面から予め定めた距離以上深い内部領域をいう。例えば1mm以上の内部領域をいう。
揮発性能の温度や湿度による発揮条件の指定ができない場合には、発生条件を画面上で指定できないようにしてもよい。
【0021】
発生条件の1つである「加熱」は、香り成分の発生を立体形状に組み込む熱源による加熱により制御したい場合に選択される。例えばセンサ、スイッチ、電子データの保存などを前提として、特定の温度、湿度、時間帯、使用場所、使用地域、使用者の性別、使用者の年齢、種類の違い(例えば色違い)によって立体形状から発生される香りを変更したい場合に用いられる。
【0022】
「加熱」が選択された場合、香り成分は、熱源が組み込まれる部位の周辺に付与することが望ましい。熱の伝搬が効率的に行える部位に付与することで、香り成分の空気中への放出の制御が容易になるためである。
香りの発生に熱源を使用する場合には、三次元データのメタデータの一部に熱源の配置位置に関する情報を含めてもよい。熱源の配置位置に関する情報が三次元データに含まれていれば、香り受付画面120の画面上で、ユーザに対して香り成分の付与に適した領域を示唆することができる。
なお、熱源、導電パターン、電子部品、集積回路、アンテナ、電子タグなどを立体形状成形装置200が成形できる場合には、これらの部品に対応する材料の情報や設計図なども三次元データに含まれる。
【0023】
実施の形態1で使用する三次元データは、FAVフォーマットを前提としている。FAVフォーマットは、大きく分けて4つのパートで構成される。4つのパートとは、メタデータ(metadata)、パレット(palette)、ボクセル(voxel)、オブジェクト(object)である。ここで、パレットはボクセルから参照され、ボクセルはオブジェクトから参照される。
【0024】
メタデータには、FAVフォーマットで定義される各種データに関するメタデータが記載される。
パレットには、三次元データをFAVフォーマットに基づいて構成するための前準備として、ボクセルの形状や材料などの基本情報が登録される。パレットに登録された基本情報で構成されるボクセルを用いてオブジェクトを定義する。
【0025】
パレットは、下位階層の要素としてジオメトリ(geometry)、マテリアル(material)を含んでいる。ジオメトリでは、三次元データを構成する基本要素となるボクセルの形状や倍率の定義が記述される。定義される形状には、立方体、平板、球、円柱などがある。マテリアルには、三次元データを構成する基本要素となるボクセルに設定する材料情報が記述される。
【0026】
ボクセルは、パレットに登録されているジオメトリ、マテリアルなどの情報を保持する。そのため、ボクセルは、三次元データの各位置において、形状以外の情報も定義することができる。
ボクセルは、下位階層の要素としてジオメトリ情報(geometry_info)、マテリアル情報(material_info)、ディスプレイ(display)、アプリケーションノート(application_note)を含んでいる。
ジオメトリ情報は、ボクセルの形状や倍率を指定する。マテリアル情報は、材料情報を設定する。ディスプレイは、色情報を指定する。色情報は、形状や材料などの属性の違いを分かりやすく可視化する目的で使用される。アプリケーションノートは、記載内容に制限のないプロパティ情報の格納に使用される。
【0027】
オブジェクトは、三次元データを格納する空間を与えるグリッド(grid)と、グリッドの中に配置する三次元データの構造を規定するストラクチャ(structure)を含んでいる。
ストラクチャには、ボクセルマップ(voxel_map)、カラーマップ(color_map)、リンクマップ(link_map)、香りマップ(frag_map)が含まれる。
【0028】
ここで、ボクセルマップは、グリッドで定義された三次元的なグリッドを構成するXY平面の1層ごとに層内のボクセルの有無を定義する。カラーマップは、ボクセルマップで列挙された個々のボクセルに対するカラー情報を定義する。リンクマップは、ボクセル間の接合強度などを表現する。香りマップは、個々のボクセルに付与する香り成分を定義する。ここでの香り成分は、香り受付画面120(
図4)の種類欄122で指定された情報が記述される。
本実施の形態の場合、香りマップは下位階層の要素としてコンディション(condition)を含んでいる。コンディションには、例えば香り受付画面120(
図4)の条件欄123で指定された情報が記述される。
【0029】
ユーザは、
図4に示すようなボクセル単位で記述した形状をボクセルレベルの拡大図を通じて材料の配置状態を確認できるようにしてよい。すなわち、ボクセル毎に材料の情報や香りの情報がテキスト、図柄等の情報で記述され、その画面を通じて立体物の再設計が容易にできる。
【0030】
香り成分は、一般には、立体形状の表層部位に配置される。立体形状に付与された香りが鼻腔に到達するには空気中に発散される必要があるためである。
従って、データ生成部111(
図3参照)には、ユーザによって香り成分の付与が指示された場合に、成形対象である立体形状の表層部位に指定された香り成分を配置する機能も含まれている。
なお、香り成分に関する情報は、香りマップやコンディションに限らず、メタデータに記述されてもよい。
【0031】
後述するように、立体形状の成形方式には様々な方式が存在する。従って、情報処理装置100には、三次元データの一部に、成形方式別に香り成分を付与するためのプロセス情報を埋め込むようにしてよい。すなわち、三次元データには、複数の成形方式のそれぞれに対応付けられた複数のプロセス情報を含めることが好ましい。
複数のプロセス情報が含まれていれば、三次元データを使用する立体形状成形装置200の側で、使用可能な成形方式に応じたプロセス情報を選択して香り成分付きの立体形状の成形プロセスを実行できる。
また、立体形状成形装置200との通信により三次元データの送信前に立体形状成形装置200で使用可能な成形方式が分かった場合には、送信先である立体形状成形装置200の成形方式に対応する成形プロセスだけを三次元データに含めてもよい。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態に係る情報処理装置100を用いれば、個々のボクセルに香り成分を対応付けた三次元データを生成することができ、生成された三次元データを立体形状成形装置200に与えることにより、設計通りの立体形状を成形することができる。
なお、本実施の形態における情報処理装置100には、詳細については後述するが、香り成分の追加によって成形される立体形状の強度が低下する場合には、強度が向上するように立体形状の構造や成形材料を修正する機能が搭載されてもよい。この機能が搭載されている場合には、立体形状成形装置200における三次元データの修正動作を省略することができる。
【0033】
<立体形状成形装置>
続いて、立体形状成形装置200について説明する。
図5は、立体形状成形装置200のハードウェア構成の一例を示す図である。
立体形状成形装置200は、装置全体を制御する制御部211と、三次元データやプログラムの記憶に用いられる記憶部215と、成形する立体形状に対応する画像の表示に使用される表示部216と、ユーザの入力操作を受け付ける操作受付部217と、三次元データに基づいて立体形状を成形する立体形状成形部218と、外部装置(例えば情報処理装置100)との通信に用いられる通信部219とを有している。
これらの各部はバス220を通じて互いに接続されており、バス220を介してデータを受け渡しする。
【0034】
制御部211は、制御手段の一例であり、CPU(Central Processing Unit)212、ROM(Read Only Memory)213、RAM(Random Access Memory)214により構成されている。
ROM213には、CPU212により実行されるプログラムが記憶されている。CPU212は、RAM214を作業エリアに使用し、ROM213から読み出したプログラムを実行する。プログラムの実行を通じ、立体形状成形装置200の各部が制御される。
【0035】
記憶部215は、ハードディスク装置や半導体メモリなどの記憶装置により構成され、情報処理装置100から受信した三次元データの記憶に使用される。
表示部216は、プログラム(オペレーションシステムやファームウェアを含む)の実行を通じて各種の画像を表示するディスプレイ装置である。表示部216は、例えば液晶ディスプレイパネルや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイパネルで構成される。
操作受付部217は、ユーザからの操作を受け付ける入力装置であり、例えばキーボード、ボタン、スイッチ、タッチパッド、タッチパネルなどで構成される。
【0036】
立体形状成形部218には、三次元データが指定する材料や成形する立体形状の形状などに適した成形方式の装置が用いられる。立体形状成形部218は成形手段の一例である。
成形方式には、例えば熱溶解方式、光造形方式、粉末固着方式、粉末焼結方式、インクジェット方式などがある。
熱溶解方式(又は材料押出堆積方式)が採用される場合、立体形状成形部218は、熱で溶かした樹脂をノズルから押し出しながら積層することで立体形状を成形する。この方式では、熱可塑性の樹脂が使用される。
光造形方式が採用される場合、立体形状成形部218は、液体状の光硬化性樹脂を紫外線レーザで一層ずつ硬化させながら積層することで立体形状を成形する。
粉末固着方式が採用される場合、立体形状成形部218は、敷き詰められた粉末(例えば石膏)に水溶性の接着剤を噴射して固化することで立体形状を成形する。
粉末焼結方式が採用される場合、立体形状成形部218は、立体形状の断面データに基づいてレーザで粉末素材の表面を走査して硬化することで立体形状を成形する。
インクジェット方式が採用される場合、立体形状成形部218は、インクジェットノズルから吐出した紫外線硬化樹脂を硬化させることで立体形状を成形する。
複数の材料を用いて立体形状を成形する場合、材料別にヘッドを用意して成形するボクセル別に各ヘッドを切り替える。
【0037】
三次元データに香り成分が含まれる場合、立体形状成形部218は、立体形状の成形過程で又は成形後に、予め定めた位置に香りを付与する処理を実行する。香り成分を付与する方法は、立体形状成形装置200側の装置構成や使用可能な材料にも依存する。
例えば三次元データで指定された香り成分に対応する香料(例えば数ミクロンから数百ミクロンの大きさを有するマイクロカプセル内に保存されている。以下同じ。)を混合した成形材料を使用できる場合、香料を混合した成形材料を使用して立体形状を成形する。
【0038】
ここでの香料を保存するマイクロカプセルは内部に1つ又は複数の空洞を有し、科学的手法、物理化学的手法、機械的・物理的手法などにより形成される。なお、粒子径は一例であり、相当径と有効径のいずれでもよく、各測定方法による平均値や分布が前述の範囲に含まれていればよい。
マイクロカプセルは、揮発し易い香料の長期保存に適しており、加熱や摩擦によってカプセルが破壊されると、内部に保存されている香料が空気中に放出される。
なお、特定の温度や湿度で破壊が促進されるマイクロカプセルを用いれば、ユーザの希望する温度や湿度で特定の香り成分を放出する立体形状を成形することができる。
【0039】
なお、香り成分を付与する方法には、香料を立体形状に用意される空間に充填又は装填する方法、立体形状の成形後に塗布する方法、成形された立体形状を燻製用の空間に移動させて燻製する方法などがある。香り成分の付着には、必要に応じて立体形状成形部218とは別の装置部を使用する。
前述したように、情報処理装置100が生成する三次元データには、複数の成形方式のそれぞれについて香り成分を立体形状に付与するためのプロセス情報が含まれている場合がある。この場合、立体形状成形装置200は、自装置の成形方式に対応するプロセス情報を三次元データから読み出して立体形状の成形プロセスを実行する。
【0040】
図6は、立体形状成形装置200に搭載される制御部211の機能構成例を説明する図である。制御部211の機能はプログラムの実行を通じて実現される。
本実施の形態における制御部211は、受信した三次元データによって成形される立体形状の強度を評価する強度評価部221と、設計上の強度が得られない場合に三次元データで指定された材料や構造に修正を加えるデータ修正部222として機能する。
【0041】
強度評価部221は、構造シミュレーションを実行して三次元データに基づいて成形される立体形状が予め定めた強度を発揮するか評価する機能部である。例えば香料の充填用又は装填用に立体形状の内部に隙間などの空間が配置されることで強度の低下が認められる場合や香料を混合したボクセルを表層部位に配置することで構造体の肉厚が減少して強度の低下が認められる場合が考えられる。
強度評価部221は、構造シミュレーションの結果、強度の不足が認められた部位に関する情報をデータ修正部222に与える。
【0042】
データ修正部222は、強度の不足が検出された場合に、材料の変更や内部構造の修正を実行する機能部である。データ修正部222は、例えば強度の不足が検出された部位又はその周囲の部位を成形する材料の変更(材料の置換、補強材料の追加を含む。)、立体形状の内部空間への構造体の追加配置などを実行する。ここでの修正には、香り成分の通過が可能な保護層を、香り成分を付与した部位の表面に追加することも含まれる。
【0043】
また、本実施の形態における制御部211は、三次元データに含まれる香り成分の発生条件を解析する条件解析部223と、発生条件に応じた具体的な材料を選択する材料選択部224と、立体形状の成形を開始する前に三次元データで指示された通りの立体形状を成形できない旨をユーザに通知する未対応通知部225としても機能する。
【0044】
条件解析部223は、三次元データに香り成分の付与位置(香り成分が付与されるボクセルの位置)が特定されていない場合、香り成分の付与に適した位置をデータ修正部222に与える機能を提供する。例えば立体形状の表層部位への香り成分の配置、熱源からの熱伝搬距離が短い部位への配置などがデータ修正部222に与えられる。この場合、データ修正部222は、香り成分を付与する部位を三次元データに追加するなどの処理を実行する。例えば発生条件として水分が指定されている場合、データ修正部222は、香り成分を立体形状の表層部位に配置するように三次元データを修正する。
【0045】
材料選択部224は、三次元データで指定された名称の香りを発生できる香料の選択や発生条件に適したマイクロカプセルに保存された香料を選択する処理を実行する。材料選択部224は、立体形状成形部218が使用可能な香料や材料についての情報を記憶部215から読み出して具体的な材料を決定する。なお、材料選択部224は、通信部219を通じて外部のサーバなどと通信し、代替材料についての情報を取得してもよい。
【0046】
未対応通知部225は、最終的に確定された香料その他の材料による立体形状の成形が困難である場合(材料の不足も含む。)にその旨をユーザに通知する機能を提供する。ユーザへの通知は、表示部216や不図示の警告ランプの点灯などにより実行してもよいし、通信部219を介して三次元データの送信元である情報処理装置100に通知してもよい。この通知機能により無駄な成形動作を未然に回避でき、材料の無駄を低減できる。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態に係る立体形状成形装置200を用いれば、香り付きの立体形状を成形することができる。
また、本実施の形態に係る立体形状成形装置200を用いれば、香りの付与によって強度の不足が発生する場合には三次元データを修正して強度を高めることができる。
また、本実施の形態に係る立体形状成形装置200を用いれば、発生条件に応じた香り材料が指定されていない場合でも発生条件を満たす香り材料を選択することができる。
また、本実施の形態に係る立体形状成形装置200を用いれば、香り成分の付与位置が三次元データで具体的に指定されていない場合でも、香りの発生条件に応じた部位に香り成分を付与することができる。
また、本実施の形態に係る立体形状成形装置200を用いれば、意図する香り成分を付与した立体形状を成形できない場合には事前にその旨を通知でき、材料の無駄を低減することができる。
【0048】
<立体形状の構造例>
図7は、立体形状成形装置200によって成形される立体形状250の構造例を説明する図である。
図7には立体形状250を縦方向に切断した断面構造が示されている。立体形状250は、円柱に相当する。
図7に示す立体形状250の場合、底面側には電池やスイッチSW等を収容する空洞251が形成されている。また、空洞251の側面には、立体形状250の外側面に達する貫通孔252が形成されている。この貫通孔252は、使用形態に応じた各種のセンサの装着と配線に使用される。
もっとも、金属材料によってセンサや配線の作成が可能な場合には、貫通孔252の部分にセンサや配線が成形される。
【0049】
また、空洞251と立体形状250の外側面との間には発熱体を底面側から装着するための隙間253が形成されている。隙間253は、立体形状250の強度を保ちつつ発熱体と香料との距離を近づける目的で設けられている。なお、空洞251と隙間253は配線用の連結路254によって接続されている。
金属材料によって発熱体や配線の作成が可能な場合には、隙間253や連結路254の部分が金属材料で成形される。
【0050】
図8は、加熱によって香りを発生する場合に採用する電子回路の一例を説明する図である。
図8の場合、電子回路は、電池260からの給電を受けて動作するセンサ261の出力によって発熱体262に対して直列に接続されたスイッチSWをオンまたはオフ制御し、発熱体262への通電(すなわち発熱)を制御する。
勿論、香りの発生に加熱方式を採用しない場合(すなわち、立体形状250に対する摩擦、使用環境の温度(気温)や湿度(水分)を利用する場合)には、
図7や
図8に示す仕組みは不要である。
本実施の形態では、電力の供給源として電池260を用いているが、電力は外部から無線で供給してもよい。この場合、受電手段としてのアンテナを金属材料によって形成してもよい。
【0051】
<使用例>
続いて、成形された立体形状の使用例について説明する。
・使用例1
図9は、立体形状250の使用例1を説明する図である。使用例1は、立体形状250に1種類の香り成分が付与されている場合である。この場合、温度や湿度が特定の条件を満たす場合に特定の香り(香り1)が発生される。
なお、香りの発生は、加熱方式によっても使用環境に依存する手法でもよい。
加熱方式を採用する場合には、例えばタイマーや時刻データに基づいてスイッチSWをオン又はオフ制御することにより特定の時間帯(例えば朝7時)に香りを発生させることができる。
また、使用環境に応じて(換言すると受動的に又はマイクロカプセルの特性に依存して)香りを発生させる場合には、立体形状250が使用される場所の外気温の上昇、立体形状250を人が握ること又は摩擦することによる温度上昇などにより香りを発生させることができる。また、雨水との接触によるマイクロカプセルの破壊により香りを発生させることができる。
【0052】
・使用例2
図10は、立体形状250の使用例2を説明する図である。使用例2は、立体形状250に2種類の香り成分が付与されている場合である。
図10は、温度の違いによって異なる香りが発生される。
使用環境に応じて香りを発生させる場合には、香り1に対応する香料が保存されているマイクロカプセルが破壊される温度と香り2に対応する香料が保存されているマイクロカプセルが破壊される温度が重複しないように材料を選択する。この場合、温度1では香り1が発生し、温度2では香り2が発生する。
一方、加熱方式を採用する場合には、少なくとも2つの発熱体262を立体形状250の内部に離して配置し、温度センサの出力に応じて2つの発熱体262による発熱を選択的に実行する。この場合、2つの発熱体262は互いに発熱の影響が及ばないように配置したり、熱伝導を遮断する構造(例えばスリット)を採用したりすることが望ましい。
【0053】
・使用例3
図11は、立体形状250の使用例3を説明する図である。使用例3は、立体形状250に2種類の香り成分が付与されている場合である。
図11は、湿度の違いによって異なる香りが発生される。
使用環境に応じて香りを発生させる場合には、香り1に対応する香料が保存されているマイクロカプセルが破壊される湿度と香り2に対応する香料が保存されているマイクロカプセルが破壊される湿度が重複しないように材料を選択する。この場合、湿度1で香り1が発生し、湿度2で香り2が発生する。
一方、加熱方式を採用する場合には、少なくとも2つの発熱体262を立体形状250の内部に離して配置し、湿度センサの出力に応じて2つの発熱体262による発熱を選択的に実行する。この場合、2つの発熱体262は互いに発熱の影響が及ばないように配置したり、熱伝導を遮断する構造(例えばスリット)を採用したりすることが望ましい。
【0054】
・使用例4
図12は、立体形状250の使用例4を説明する図である。使用例4は、立体形状250に2種類の香り成分が付与されている場合である。
図12は、時間帯によって異なる香りが発生される。
使用例4の場合には、加熱方式が採用される。この使用例では、立体形状250の内部にタイマーや時計を配置し、その出力を用いて2つの発熱体262による発熱を選択的に実行する。例えば朝はさわやかなミントの香り(香り1)を発生させ、夜にはリラックス効果が期待されるラベンダーの香り(香り2)を発生させてもよい。この場合も、2つの発熱体262は互いに発熱の影響が及ばないように配置したり、熱伝導を遮断する構造(例えばスリット)を採用したりすることが望ましい。
【0055】
・使用例5
図13は、立体形状250の使用例5を説明する図である。使用例5は、立体形状250に2種類の香り成分が付与されている場合である。
図13は、ユーザの年齢によって異なる香りが発生される。
使用例5の場合には、加熱方式が採用される。この使用例では、立体形状250の内部にスイッチを配置し、スイッチの切り替えによって2つの発熱体262による発熱を選択的に実行する。例えば大人にはローズの香り(香り1)を発生させ、子供にはオレンジの香り(香り2)を発生させてもよい。この場合も、2つの発熱体262は互いに発熱の影響が及ばないように配置したり、熱伝導を遮断する構造(例えばスリット)を採用したりすることが望ましい。
また、この使用例5は、ユーザの性別によって香りを変えたい場合にも使用できる。
【0056】
・使用例6
図14は、立体形状250の使用例6を説明する図である。使用例6は、立体形状250に2種類の香り成分が付与されている場合である。
図14は、使用地域によって異なる香りが発生される。
使用例6の場合には、加熱方式が採用される。この使用例では、立体形状250の内部にスイッチを配置し、スイッチの切り替えによって2つの発熱体262による発熱を選択的に実行する。例えば東南アジア(地域1)ではレモングラスの香り(香り1)を発生させ、ヨーロッパ(地域2)ではローズマリーの香り(香り2)を発生させてもよい。この場合も、2つの発熱体262は互いに発熱の影響が及ばないように配置したり、熱伝導を遮断する構造(例えばスリット)を採用したりすることが望ましい。
【0057】
<他の実施の形態>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、種々の変更又は改良を加えたものも、本発明の技術的範囲に含まれることは、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば前述の実施の形態では、三次元データのフォーマット例としてFAVフォーマットを使用したが、面と頂点から構成されるポリゴンメッシュ構造を採用するSLTフォーマットやAMFフォーマットに香りに関するデータを付与して使用してもよい。ポリゴンメッシュ構造を構成する1つ又は複数のオブジェクトは、互いに空間が重複しない1つ又は複数のボリュームによって記述される。ボリュームは、頂点リストと頂点同士を結びつける要素である。