(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一方の駆動素子列から引き出された前記第1共通接点は、前記第1方向において、前記一方の駆動素子列から引き出された2本の前記第1個別配線の間の領域に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のアクチュエータ装置。
前記一方の駆動素子列から引き出された複数の前記第1個別接点と接続される前記第2個別接点が、前記他方の駆動素子列から引き出された前記第1共通接点と接続される前記第2共通接点よりも、前記第4方向において前記基材の縁に近い位置に配置され、
前記一方の駆動素子列から引き出された前記第1個別接点と接続される前記第2個別配線は、前記配線部材の前記アクチュエータ側の面に配置され、前記第2個別接点から、前記他方の駆動素子列から引き出された前記第1共通接点と接続される前記第2共通接点を迂回して、前記基材の縁から離れる方向に延びていることを特徴とする請求項5に記載のアクチュエータ装置。
前記第1個別配線の配線長さ方向における前記第1個別接点と前記第1共通接点との離間距離が、前記複数の第1個別接点の前記第1方向における配列間隔よりも大きいことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のアクチュエータ装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0009】
<プリンタの概略構成>
図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、プラテン2と、キャリッジ3と、インクジェットヘッド4と、搬送機構5とを備えている。なお、以下では、
図1において記録用紙100が搬送される方向を、プリンタ1の前後方向(本発明の「第1方向」、「第3方向」)と定義する。また、記録用紙100の幅方向をプリンタ1の左右方向(本発明の「第2方向」、「第4方向」)と定義する。さらに、前後方向及び左右方向と直交する、
図1の紙面垂直方向をプリンタ1の上下方向と定義する。
【0010】
プラテン2の上面には、被記録媒体である記録用紙100が載置される。キャリッジ3は、プラテン2と対向する領域において2本のガイドレール10、11に沿って左右方向(以下、走査方向ということもある)に往復移動可能に構成されている。キャリッジ3には無端状のベルト14が連結され、キャリッジ駆動モータ15によってベルト14が駆動されることで、キャリッジ3が走査方向に移動する。
【0011】
インクジェットヘッド4は、キャリッジ3に取り付けられており、キャリッジ3とともに走査方向に移動する。インクジェットヘッド4は、走査方向に並ぶ4つのヘッドユニット16を備えている。4つのヘッドユニット16は、4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクカートリッジ17が装着されるカートリッジホルダ7と、図示しないチューブによってそれぞれ接続されている。
【0012】
各ヘッドユニット16は、その下面(
図1の紙面奥側の面)に形成された複数のノズル36(
図4、
図5参照)を有する。各ヘッドユニット16は、インクカートリッジ17から供給されたインクを、ノズル36からプラテン2に載置された記録用紙100に向けて吐出する。なお、ヘッドユニット16の詳細については、後ほど説明する。
【0013】
搬送機構5は、前後方向にプラテン2を挟むように配置された2つの搬送ローラ18、19を有する。搬送機構5は、2つの搬送ローラ18、19によって、プラテン2に載置された記録用紙100を前方(以下、搬送方向ということもある)に搬送する。
【0014】
<ヘッドユニットの詳細>
次に、インクジェットヘッド4のヘッドユニット16の構成について詳細に説明する。なお、4つのヘッドユニット16はそれぞれ同じ構成を有するものであるため、以下では、4つのヘッドユニット16のうちの1つについて説明する。
【0015】
図2〜
図5に示すように、ヘッドユニット16は、第1流路部材21、第2流路部材22、ノズルプレート23、圧電アクチュエータ24、COF(Chip On Film)25、保護部材26、インク供給部材27等を備えている。なお、
図2〜
図4においては、COF25の図示を省略している。また、本実施の形態では、圧電アクチュエータ24とCOF25とを合わせたものが、本発明の「アクチュエータ装置」に相当する。
【0016】
<第1流路部材、第2流路部材、ノズルプレート>
第1流路部材21、第2流路部材22、及び、ノズルプレート23は、それぞれ矩形の平面形状を有し、上から、第1流路部材21、第2流路部材22、ノズルプレート23の順で、上下に積層されている。第1流路部材21の上に、後述する圧電素子41(本発明の「駆動素子」)を成膜プロセスで形成する関係上、第1流路部材21には、シリコン単結晶基板が用いられている。
【0017】
第1流路部材21には、水平面に沿って平面的に配置された複数の圧力室28が形成されている。各圧力室28は、走査方向に長い矩形の平面形状を有する。複数の圧力室28は、搬送方向に配列され、走査方向に並ぶ2つの圧力室列を構成している。また、2つの圧力室列の間で、圧力室28の搬送方向における位置は互いに異なっている。より具体的には、各圧力室列における圧力室28の配列間隔をPとしたときに、左右2つの圧力室列の間では、圧力室28の搬送方向における位置が、P/2ずつずれている。
【0018】
図5に示すように、第1流路部材21の上面には、後述する圧電アクチュエータ24の振動膜40が形成され、この振動膜40によって複数の圧力室28が覆われている。振動膜40は、例えば、第1流路部材21を構成するシリコン単結晶基板の表面が酸化されることにより形成された、二酸化シリコンの膜である。
【0019】
第2流路部材22は、第1流路部材21の下側に配置されている。
図4、
図5に示すように、第2流路部材22は、第1流路部材21よりも一回り大きな平面形状を有し、全周にわたって、その縁部が第1流路部材21よりも外側に張り出している。別の言い方をすれば、第2流路部材22は、第1流路部材21に対して左右に張り出した2つの第1張出部22aと、前後に張り出した2つの第2張出部22bとを有する。
【0020】
図4、
図5に示すように、第2流路部材22の左右2つの第1張出部22aには、2つの圧力室列にそれぞれ対応して搬送方向に延びる2つのマニホールド流路30がそれぞれ形成されている。すなわち、各マニホールド流路30の開口30aは、第1流路部材21から露出している。2つのマニホールド流路30には、後述するインク供給部材27を介して、1つのインクカートリッジ17からのインクが供給される。すなわち、本実施形態では、2つのマニホールド流路30に同色のインクが供給される。
【0021】
また、第2流路部材22には、マニホールド流路30と、マニホールド流路30と圧力室28とを繋ぐ連通路32とが形成されている。各圧力室28は、連通路32及び絞り流路31を介して、対応するマニホールド流路30と連通している。さらに、第2流路部材22には、各圧力室28と、後述するノズルプレート23のノズル36とを連通させる連通路33も形成されている。
【0022】
ノズルプレート23には、複数の圧力室28にそれぞれ対応する複数のノズル36が形成されている。各ノズル36は、連通路33を介して圧力室28と連通している。複数のノズル36は、2つの圧力室列に対応する2つのノズル列を形成している。上述した圧力室列と同様、2つのノズル列の間においても、ノズル36の搬送方向の位置がP/2ずつずれている。
【0023】
<圧電アクチュエータ>
圧電アクチュエータ24は、第1流路部材21の上方に配置されている。圧電アクチュエータ24は、振動膜40と、振動膜40の上に配置された複数の圧電素子41を有する。
【0024】
上述したように、振動膜40は、第1流路部材21の上面に形成されて、複数の圧力室28を覆っている。振動膜40の厚みは、例えば、1.0〜1.5μmである。振動膜40の上面の、複数の圧力室28と重なる位置には、複数の圧電素子41がそれぞれ配置されている。複数の圧電素子41は、圧力室28と同様、走査方向に並ぶ2つの圧電素子列39a、39bを構成している。圧力室列と同様、2つの圧電素子列39a、39bの間においても、圧電素子41の搬送方向の位置がP/2ずつずれている。
【0025】
個々の圧電素子41の構成について説明する。各圧電素子41は、振動膜40の上に配置された下電極42(本発明の「第1電極」)と、下電極42の上に配置された圧電膜43と、圧電膜43の上に配置された上電極44(本発明の「第2電極」)を有する。
【0026】
下電極42は、振動膜40の上面において、圧力室28と重なるように配置されている。この下電極42は、後述するドライバIC74から個別に電位が付与される、いわゆる個別電極である。下電極42の、走査方向の内側の端部からは、引出部45が引き出されている。下電極42及び引出部45は、例えば、白金(Pt)で形成されている。また、その厚みは、例えば、0.1μmである。
【0027】
圧電膜43は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電材料により形成される。圧電膜43の厚みは、例えば、1.0〜2.0μmである。
図3〜
図5に示すように、本実施形態では、左側の圧電素子列39aを構成する複数の圧電素子41の圧電膜43が繋がり、右側の圧電素子列39bを構成する複数の圧電素子41の圧電膜43が繋がっている。これにより、振動膜40の上には、左側の圧力室列を覆う圧電体46と、右側の圧力室列を覆う圧電体46の、2つの圧電体46が配置されている。
【0028】
図4、
図5に示すように、下電極42から引き出された引出部45は、下電極42から走査方向の内側に延び、その先端部が圧電体46から露出している。各引出部45の、圧電体46から露出した先端部には、後述する個別配線52が接続される。
【0029】
上電極44は、圧電膜43の上面に配置されている。上電極44は、例えば、イリジウムで形成されている。また、上電極44の厚みは、例えば、0.1μmである。圧電体46の上面において、複数の圧電素子41の上電極44が互いに繋がることにより、圧電体46の上面のほぼ全域を覆う共通電極49が構成されている。
【0030】
共通電極49の上には補助導体50が設けられている。
図4に示すように、補助導体50は、圧電体46の左右方向外側の縁部、及び、前後方向両側の2つの縁部の上において共通電極49に積層されている。補助導体50は、例えば、金(Au)で形成されている。また、補助導体50の厚みは、共通電極49の厚みよりも大きい。また、補助導体50の、前後方向の両端部のうち、圧電素子列39aと圧電素子列39bとの間の領域に位置する部分は、COF25との接続を行うための共通接点54となっている。
【0031】
また、引出部45の、圧電体46から露出した端部には個別配線52(本発明の「第1個別配線」)が接続されている。各個別配線52は、対応する引出部45の先端部から、走査方向における内側に延びている。個別配線52は、例えば、金(Au)で形成され、補助導体50と同じ成膜プロセスで形成可能である。また、個別配線52は、振動膜40の上面の、圧電素子列39aと圧電素子列39bとの間の領域まで延びており、その先端部がCOF25との接続を行うための個別接点53(本発明の「第1個別接点」)となっている。そして、圧電素子列39aから引き出された複数の個別接点53と、圧電素子列39bから引き出された複数の個別接点53とが、搬送方向に交互に並んでいる。
【0032】
また、共通電極49の左右方向の内側の端部には、複数の共通配線55(本発明の「第1共通配線」)が接続されている。共通配線55は、例えば、金(Au)で形成され、補助導体50と同じ成膜プロセスで形成可能である。また、共通配線55は、共通電極49との接続部分から、振動膜40の圧電素子列39aと圧電素子列39bとの間の領域まで走査方向に延びており、その先端部がCOF25との接続を行うための共通接点56(本発明の「第1共通接点」)となっている。
【0033】
これにより、圧電素子列39aから引き出された複数の共通接点56(以下、共通接点56aとすることがある)は、圧電素子列39bから引き出された複数の個別配線52の長さ方向における、複数の個別接点53の延長線上に位置し、複数の個別接点53よりも左側の位置で搬送方向に配列されている。また、圧電素子列39bから引き出された複数の共通接点56(以下、共通接点56bとすることがある)は、圧電素子列39aから引き出された複数の個別配線52の長さ方向における、複数の個別接点53の延長線上に位置し、複数の個別接点53よりも右側の位置で搬送方向に配列されている。また、
図4に示すように、個別配線52の長さ方向における、共通接点56と個別接点53との離間距離D1は、搬送方向における2つの圧電素子列39a、39bから引き出された複数の個別接点53の配列間隔D2よりも大きくなっている。例えば、配列間隔D2が40μm程度であるのに対して、離間距離D1が100μm程度である。
【0034】
<保護部材>
図2、
図3、
図5に示すように、保護部材26は、第1流路部材21の上側に複数の圧電素子41を覆うように配置されている。具体的には、保護部材26は、振動膜40や圧電膜43等の様々な膜が積層された構造を有する圧電アクチュエータ24の上に、接着剤で接合されている。
【0035】
保護部材26は、左右2つの凹状のカバー部26aと、2つのカバー部26aの間に形成された穴26bとを有する。保護部材26が第1流路部材21の上に配置された状態では、左側のカバー部26aが、左側の圧電素子列39aを覆い、右側のカバー部26aが、右側の圧電素子列39bを覆う。また、穴26bから複数の個別接点53と、2つの共通接点54と、複数の共通接点56が露出する。なお、保護部材26の材質は特に限定されないが、例えば、シリコンで形成されたものを好適に採用できる。
【0036】
<COF>
図6、
図7に示すように、COF25は、基材71と、複数の個別接点72(本発明の「第2個別接点」)と、複数の個別配線73(本発明の「第2個別配線」)と、ドライバIC74と、2つの共通接点75と、複数の共通接点76a、76b(本発明の「第2共通接点」)と、共通配線77、78(本発明の「第2共通配線」)とを有する。
【0037】
基材71はポリイミドなどの合成樹脂材料からなる、フィルム状の部材である。基材71は、保護部材26の穴26bから露出した、圧電アクチュエータ24の圧電素子列39aと圧電素子列39bの間の部分の上面に接合されている。また、基材71は、圧電アクチュエータ24との接合部分から右側に引き出され、途中で上方に曲がって延びている。また、基材71は、圧電アクチュエータ24との接合部分の左側に、その縁71cが位置している。なお、本実施の形態では、このように、基材71が途中で上方に曲がって延びているが、以下では、便宜上、基材71の圧電アクチュエータ24と接合される側の面(圧電アクチュエータ24側の面)を基材71の下面71aとし、これと反対側の面(圧電アクチュエータ24と反対側の面)を基材71の上面71bとして説明を行う。
【0038】
複数の個別接点72は、基材71の下面71aの、複数の個別接点53と対向する部分に配置され、対応する個別接点53と接続されている。これにより、圧電素子列39aから引き出された複数の個別接点53と接続される複数の個別接点72と、圧電素子列39bから引き出された複数の個別接点53接続される複数の個別接点72とが、搬送方向に交互に並んでいる。また、複数の個別接点72は、基材71に形成されたスルーホール81(
図8参照)を介して、基材71の上面71bに引き出されている。
【0039】
複数の個別配線73は、基材71の上面71bに配置されている。複数の個別配線73は、複数の個別接点72に対応しており、基材71の上面71bに引き出された個別接点72と接続され、個別接点72との接続部分から右側に直線的に延びている。ドライバIC74は、基材71の上方に延びた部分の上面71bに実装されている。各個別配線73の個別接点72と反対側の端は、ドライバIC74と接続されている。そして、個別配線73、個別接点72及び個別配線52を介して、ドライバIC74から複数の下電極42に個別に、グランド電位、及び、20V程度の駆動電位のうちいずれかの電位が選択的に付与される。また、ドライバIC74は、基材71の上面71bに配置された配線79等を介して図示しない制御装置に接続されており、制御装置によってその動作が制御される。
【0040】
2つの共通接点75は、基材71の下面71aの、2つの共通接点54と対向する部分に配置され、対応する共通接点54と接続されている。また、共通接点54は基材71に形成された図示しないスルーホールを介して基材71の上面71bに引き出されている。複数の共通接点76aは、基材71の下面71aの、複数の共通接点56aと対向する部分に配置され、対応する共通接点56aと接続されている。これにより、複数の共通接点76aは、複数の個別接点72よりも左側の位置において搬送方向に配列される。また、複数の共通接点76aは、図示しないスルーホールを介して、基材71の上面71bに引き出されている。
【0041】
複数の共通接点76bは、基材71の下面71aの、複数の共通接点56bと対向する部分に配置され、対応する共通接点56bと接続されている。これにより、複数の共通接点76bは、複数の個別接点72よりも右側の位置において搬送方向に配列される。
【0042】
共通配線77は、基材71の下面71aに配置されている。共通配線77は、複数の部分77aと1つの部分77bとを有する。複数の部分77aは、複数の共通接点76bに対して個別に設けられている。部分77aは共通接点76bと接続され、共通接点76bとの接続部分から走査方向の右側に延びている。また、基材71は、
図6に示す折れ曲がり線L1において上方に折り曲げられており、部分77aは、折れ曲がり線L1に対して共通接点76bと反対側まで延びている。部分77bは、搬送方向に延びて、複数の部分77aの走査方向の右端部同士を接続させている。また、部分77bの搬送方向の両端部は、図示しないスルーホールを介して、基材71の上面71bに引き出されている。
【0043】
共通配線78は、基材71の上面71bに配置されている。共通配線78は、搬送方向に延びて、基材71の上面71bに引き出された複数の共通接点56aと接続される部分78aと、部分78aの搬送方向の両端部からそれぞれ走査方向の右側に延びた2つの部分78bとを有する。また、2つの部分78bは、基材71の上面71bに引き出された、共通接点75、及び、共通配線77の部分77bの搬送方向の両端部と接続されている。共通配線78は、図示しない電源に接続され、グランド電位に保持されている。これにより、共通電極49(上電極44)が、共通配線77、78、共通接点75、76a、76b、共通配線55及び補助導体50を介してグランド電位に保持される。
【0044】
また、本実施の形態では、
図8に示すように、圧電アクチュエータ24とCOF25とが、NCF(Non-conductive Film)80(本発明の「非導電性接着剤」)によって接合されており、圧電アクチュエータ24の個別接点53と、COF25の個別接点72とが直接接触することで導通している。また、図示は省略するが、同様に、圧電アクチュエータ24の共通接点54と、COF25の共通接点75、及び、圧電アクチュエータ24の共通接点56と、COF25の共通接点76a、76bとが、それぞれ直接接触することで導通している。すなわち、本実施の形態では、圧電アクチュエータ24とCOF25とが、いわゆるNCF接合によって接合されている。
【0045】
<圧電素子の動作>
圧電素子41の動作について説明する。圧電素子41は、予め下電極42が上電極44と同じグランド電位に保持されている。圧電素子41を駆動させるときには、下電極42の電位をグランド電位から駆動電位に切り換える。すると、下電極42と上電極44との間の電位差により、圧電膜43に厚み方向の電界が作用する。この電界により、圧電膜43は厚み方向に伸びて面方向に収縮し、その結果、圧力室28を覆う振動膜40が圧力室28側に凸となるように撓む。これにより、圧力室28の容積が減少して圧力室28内のインクの圧力が上昇し、圧力室28に連通するノズル36からインクの液滴が吐出される。
【0046】
<インク供給部材>
図2に示すように、インク供給部材27は、第2流路部材22とほぼ同じ大きさの矩形の平面形状を有し、第2流路部材22及び保護部材26の上方に配置されている。インク供給部材27の材質は特に限定されないが、例えば、合成樹脂で形成される。
図2、
図5に示すように、インク供給部材27の走査方向の中央部には、保護部材26の穴26bと重なり、且つ、この穴26bよりも幅が大きい穴27aが形成されている。
図5に示すように、圧電アクチュエータ24に接続されたCOF25は、保護部材26の穴26bとインク供給部材27の穴27aを通過して上方へ延びている。
【0047】
インク供給部材27は、インクカートリッジ17が装着されたカートリッジホルダ7(
図1参照)と接続されている。インク供給部材27内にはインク供給流路58が形成されており、インク供給流路58の下端は、第2流路部材22の第1張出部22aに形成されたマニホールド流路30と連通する。この構成により、カートリッジホルダ7のインクカートリッジ17内のインクが、インク供給部材27のインク供給流路58を介して、第2流路部材22のマニホールド流路30に供給される。
【0048】
ここで、以上に説明した実施の形態と異なり、共通配線55がなく、共通電極49が、共通接点54を介してのみ、COF25の共通配線78と接続されている場合を考える。この場合には、共通電極49の内部抵抗により、共通電極49の、共通接点54から近い搬送方向の端部と、共通接点54から遠い搬送方向の中央部との間で電位にばらつきが生じる。共通電極49の部分間にこのような電位のばらつきが生じると、圧電素子41間で駆動特性が変わり、その結果、ノズル36間でインクの吐出特性が変わってしまう虞がある。
【0049】
これに対して、本実施の形態では、圧電素子列39a、39bの共通電極49の、搬送方向における複数の箇所から、共通配線55が引き出されている。そして、共通電極49は、補助導体50の搬送方向の両端部に位置する共通接点54に加えて、各共通配線55の先端部に設けられた共通接点56を介して、COF25の共通配線77、78に接続されている。これにより、共通電極49の部分間の電位のばらつきを抑えることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、振動膜40の上面の、左側の圧電素子列39aから引き出された個別配線52の延長線上に位置する領域に、右側の圧電素子列39bから引き出された共通配線55(共通接点56b)を配置している。また、振動膜40の上面の、右側の圧電素子列39bから引き出された個別配線52の延長線上に位置する領域に、左側の圧電素子列39aから引き出された共通配線55(共通接点56a)を配置している。したがって、共通配線55を配置するために、個別配線52同士の間隔を広げることなく、各個別配線52から近い位置に共通配線55を配置することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、2つの圧電素子列39a、39bから引き出された複数の個別接点53、2つの共通接点54、及び、複数の共通接点56が、圧電素子列39aと圧電素子列39bとの間の領域に配置されている。このように、本実施の形態では、COF25との接続を行うための接点を1箇所に集めることで、圧電アクチュエータ24とCOF25との接合面積を小さくすることができる。
【0052】
また、本実施の形態のように、圧電素子列39aと圧電素子列39bとの間で個別配線52の位置が搬送方向にずれているため、圧電素子列39aから引き出された個別配線52の延長線上に位置する領域は、圧電素子列39bから引き出された隣接する2つの個別配線52の間のスペースとなっている。また、圧電素子列39bから引き出された個別配線52の延長線上に位置する領域は、圧電素子列39aから引き出された隣接する2つの個別配線52の間のスペースとなっている。このように、本実施の形態では、振動膜40の上面の空いたスペースを利用して、共通配線55を配置することができる。
【0053】
ここで、個別配線52と共通配線55(共通接点56)との距離が小さすぎると、個別配線52と共通配線55とがショートしてしまう虞がある。そこで、本実施の形態では、個別配線52の長さ方向における個別接点53と共通接点56との離隔距離D1を、搬送方向における個別接点53の配列間隔D2よりも大きくしている。これにより、個別配線52と共通配線55とがショートしてしまうのを防止することができる。
【0054】
また、本実施の形態では、各圧電素子列39a、39bから引き出された複数の個別接点53、及び、複数の共通接点56が、振動膜40の上面の、圧電膜43から走査方向の内側に離れた領域に配置されている。これにより、複数の個別接点53と複数の共通接点56とが、同一の平面上に配置され、圧電アクチュエータ24とCOF25との接合が簡単になる。
【0055】
また、本実施の形態では、振動膜40の上面の、保護部材26の穴26b及びインク供給部材27の穴27aから露出した部分、すなわち、保護部材26及びインク供給部材27と重ならない部分に、接点53、54、56が配置されている。これにより、接点53、54、56に対してCOF25を接続することができる。
【0056】
また、圧電アクチュエータ24と接合される基材71の下面71aには、複数の個別接点72よりも右側に複数の共通接点76bが配置されている。そのため、本実施の形態と異なり、基材71の下面71aに個別配線を設けると、例えば、後述の変形例1(
図9参照)のように、複数の共通接点76bを迂回するように個別配線を引き回す必要がある。これに対して、本実施の形態では、共通接点76a、76bのない基材71の上面71bに個別配線73を配置するため、個別配線73の引き回しの自由度を高くすることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、圧電アクチュエータ24において、複数の個別配線52が搬送方向(本発明の「第1方向」)に配列されているのに対して、COF25において複数の個別接点72が搬送方向(本発明の「第3方向」)に配列されている。すなわち、本発明の第3方向が本発明の第1方向と平行な方向である。また、圧電アクチュエータ24において、個別配線52が圧電素子41から走査方向(本発明の「第2方向」)に引き出されているのに対して、COF25の基材71が、圧電アクチュエータ24との接続部分から、走査方向(本発明の「第4方向」)に延びている。すなわち、本発明の第4方向が、本発明の第2方向と平行な方向となっている。これにより、圧電アクチュエータ24とCOF25とによって構成されるアクチュエータ装置を構造の簡単なものとすることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、圧電アクチュエータ24に、複数の個別接点53、2つの共通接点54及び複数の共通接点56といった多数の接点が高密度に配置されている。また、これに対応して、COF25の基材71の下面71aに、複数の個別接点72、2つの共通接点75及び複数の共通接点76a、76bといった多数の接点が高密度に配置されている。そこで、本実施の形態では、圧電アクチュエータ24とCOF25とを、NCF80を用いたNCF接合によって接合している。これにより、上記のように多数の接点が高密度に配置されている場合に、接点間がショートしてしまうのを防止することができる。
【0059】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
【0060】
上述の実施の形態では、個別接点72を基材71の上面71bに引き出し、個別配線73やドライバIC74を基材71の上面に配置したが、これには限られない。例えば、変形例1では、
図9、
図10に示すように、COF101において、基材71の下面71aにドライバIC74が実装されている。そして、複数の個別接点72は、基材71の上面71bには引き出されておらず、基材71の下面71aに配置された複数の個別配線102と接続されている。複数の個別配線102は、共通接点76bを迂回するように延び、ドライバIC74と接続されている。
【0061】
また、変形例1では、2つの共通接点75及び複数の共通接点76a、76bが基材71の下面71aから上面71bに引き出され、基材71の上面71bに配置された共通配線103と接続されている。共通配線103は、共通接点75、76a、76bにわたって走査方向及び搬送方向に延びた部分103aと、部分103aの搬送方向の両端部から右側に延びた2つの部分103bとを有する。また、変形例1では、
図9に示すように、共通接点76aのすぐ右側に位置する折れ曲がり線L2において上方に折り曲げられている。
【0062】
また、上述の実施の形態や変形例1では、2つの圧電素子列39a、39bの両方から共通接点56a、56bが引き出されているが、これには限られない。
【0063】
例えば、変形例2では、
図11に示すように、圧電アクチュエータ110において、左側の圧電素子列39aからのみ、共通接点56aが引き出されている。すなわち、圧電アクチュエータ110には、右側の圧電素子列39bから引き出された共通接点56b(
図3参照)が存在しない。そして、
図12、
図13に示すように、COF111において、基材71の下面71aに、複数の個別接点72と接続される複数の個別配線112が配置されている。また、2つの共通接点75及び複数の共通接点76aは、基材71の上面71bに引き出されている。また、基材71の上面71bに、2つの共通接点75及び複数の共通接点76aと接続される共通配線113が配置されている。なお、変形例2では、COF111に共通接点76b(
図6参照)が存在しない。
【0064】
複数の個別配線112は、対応する個別接点72と接続され、個別接点72との接続部分から右側に向かって延びている。共通配線113は、複数の共通接点76aにわたって搬送方向に延びた部分113aと、部分113aの搬送方向の両端部から走査方向の右側に延びて、基材71の上面71bに引き出された共通接点75と接続される2つの部分113bとを有する。
【0065】
この場合には、COF111に、個別接点72よりも基材71の縁71cから離れた共通接点76bがなく、共通接点76aは、個別接点72よりも基材71の縁71cに近い位置に配置されている。そして、個別配線112が、個別接点72との接続部分から、共通接点76aと反対側(基材71の縁71cから離れる方向)に延びている。これにより、個別配線112を、共通接点76aを迂回するように引き回すことなくドライバIC74まで直線的に延ばすことができる。
【0066】
また、上述の実施の形態では、COF25が、圧電アクチュエータ24との接合部分から、走査方向の片側にのみ引き出されていたが、これには限られない。変形例3では、
図14に示すように、ヘッドユニット130において、COF131の基材132が、圧電アクチュエータ24との接合部分から走査方向の両側に引き出され、途中で上方に曲がって延びている。具体的には、
図15、
図16に示すように、基材132は、共通接点76aのすぐ左側に位置する折れ曲がり線L3、及び、共通接点76bのすぐ右側に位置する折れ曲がり線L4において、それぞれ上方に折れ曲がっている。これにより、変形例4では、COF131の途中部分に、接点72、75、76a、76bが配置されている。また、COF131において、基材132の圧電アクチュエータ24との接合部分の両側に位置する部分の下面132aに、それぞれ、ドライバIC74が実装されている。
【0067】
また、変形例3では、
図15に示すように、個別接点72aと接続される個別配線133aが、基材132の下面132aに配置され、隣接する共通接点76bの間の領域を通って、左側のドライバIC74まで直線的に延びている。また、個別接点72bと接続される個別配線133bは、基材132の下面132aに配置され、隣接する共通接点76aの間の領域を通って、右側のドライバIC74まで直線的に延びている。すなわち、変形例4では、個別接点72aと接続される個別配線133aと、個別接点72bと接続される個別配線133bとが、個別接点72a、72bとの接続部分から走査方向の互いに反対側に延びている。
【0068】
この場合、搬送方向において、個別接点72aが、隣接する共通接点76bの間に位置するため、個別配線133aを個別接点72aからドライバIC74まで直線的に延ばすことができる。すなわち、個別配線133aを、共通接点76bを迂回するように引き回す必要がない。また、搬送方向において、個別接点72bが、隣接する共通接点76aの間に位置するため、個別配線133bを個別接点72bからドライバIC74まで直線的に延ばすことができる。すなわち、個別配線133bを、共通接点76aを迂回するように引き回す必要がない。
【0069】
また、変形例3では、
図16に示すように、共通接点75、76a、76bは、基材132の上面132bに引き出されている。共通配線134は、基材132の上面132bに配置されている。共通配線134は、共通接点75、76a、76bにわたって走査方向及び搬送方向に延びた部分134aと、部分134aの搬送方向の両端部から、走査方向の両側に延びた2つの部分134bとを有する。
【0070】
また、上述の実施の形態では、圧電アクチュエータ24の複数の個別配線52、及び、複数の個別接点53、72が搬送方向に並び、COF25が圧電アクチュエータ24との接合部分から走査方向に延びていたが、これには限られない。例えば、複数の個別接点53、72が、複数の個別配線52が並ぶ搬送方向(本発明の「第1方向」)に対して傾いた方向(本発明の「第3方向」)に並んでおり、COFが圧電アクチュエータ24との接合部分から、上記第3方向と交差する第4方向に延びていてもよい。また、このとき、第4方向は、走査方向(本発明の「第2方向」)と平行な方向であってもよいし、走査方向に対して傾いた方向であってもよい。あるいは、第3方向が搬送方向と平行な方向であり、第4方向が走査方向に対して傾いた方向であってもよい。
【0071】
また、上述の実施の形態では、全ての個別配線52の個別接点53の延長線上に、共通接点56が配置されていたが、これには限られない。変形例4では、
図17に示すように、ヘッドユニット140において、圧電素子列39aから引き出された複数の個別配線52を、隣接する3つの個別配線52によってそれぞれ構成される、搬送方向に並んだ4つの配線群141aに区分する。そして、各配線群141aを構成する個別配線52のうち、搬送方向の中央に位置する1つの個別配線52の延長線上にのみ、圧電素子列39bから引き出された共通接点142aが配置されている。
【0072】
同様に、変形例4では、圧電素子列39bから引き出された複数の個別配線52を、隣接する3つの個別配線52によってそれぞれ構成される、搬送方向に並んだ4つの配線群141bに区分する。そして、各配線群141bを構成する個別配線52のうち、搬送方向の中央に位置する1つの個別配線52の延長線上にのみ、圧電素子列39aから引き出された共通接点142bが配置されている。
【0073】
変形例4のように、一部の個別配線52の延長線上にのみ共通接点142a、142bを配置する場合でも、共通電極49の電位のばらつきを抑えることができる。また、この場合には、上述の実施の形態の場合と比較して、共通配線の数が少ない分、圧電アクチュエータにおける配線や接点の密度を小さくすることができる。
【0074】
なお、配線群141a、141bの数は4つであることには限られず、2つ、3つ又は5つ以上であってもよい。また、各配線群141a、141bを構成する個別配線52の数は3つであることには限られず、2つ又は4つ以上であってもよい。また、配線群141aの間、及び、配列群141bの間で、個別配線52の数が異なっていてもよい。
【0075】
また、配線群141a、141bを構成する複数の個別配線52のうち、搬送方向の中央に位置する1つの個別配線52の延長線上に、共通接点142a、142bが配置されることにも限られない。配線群141a、141bを構成する複数の個別配線52のうち、搬送方向の中央以外の1つの個別配線52の延長線上に、共通接点142a、142bが配置されていてもよい。
【0076】
また、上述の実施の形態では、2つの圧電素子列39a、39bから引き出された複数の個別接点53が搬送方向に並び、複数の共通接点56aが、複数の個別接点53よりも左側の位置において搬送方向に並び、複数の共通接点56bが、複数の個別接点53よりも右側の位置において搬送方向に並んでいる。すなわち、上述の実施の形態では、圧電アクチュエータ24に、個別接点53の接点列と、共通接点56aの接点列と、共通接点56bの接点列の合計3列の接点列が、走査方向に並んでいる。しかしながら、これには限られない。
【0077】
例えば、変形例5では、
図18に示すように、ヘッドユニット150において、圧電素子列39aから引き出された複数の個別接点151aと複数の共通接点152aとが、搬送方向に交互に並んで1つの接点列153a(本発明の「第1の接点列」)を形成している。また、圧電素子列39bから引き出された複数の個別接点151bと複数の共通接点152bとが、搬送方向に交互に並んで1つの接点列153b(本発明の「第2の接点列」)を形成している。すなわち、変形例6では、個別接点53と共通接点56とが交互に並ぶ接点列が、走査方向に2列に並んでいる。なお、この場合でも、個別接点151aの長さ方向の延長線上に共通接点152bが配置され、個別接点151bの長さ方向の延長線上に共通接点152aが配置される。
【0078】
変形例5の場合には、上述の実施の形態の場合と比較して、走査方向に並ぶ接点列の数が少ないため、圧電アクチュエータのCOF25との接続を行うための接点が配置される領域の走査方向の長さが短い。これにより、COF25の圧電アクチュエータとの接合部分の面積を小さくすることができる。
【0079】
また、上述の実施の形態では、複数の個別配線52の長さ方向が走査方向と平行であったが、これには限られない。個別配線52の長さ方向が、走査方向に対して傾いた方向であってもよい。また、この場合、個別配線52間で、個別配線52の長さ方向の走査方向に対する傾きが異なっていてもよい。そして、この場合には、走査方向に対して傾いた、各個別配線の長さ方向における延長線上に共通接点を設ければよい。
【0080】
また、上述の実施の形態では、走査方向における個別接点53と共通接点56との離間距離D1が、搬送方向における個別接点53の配列間隔D2よりも大きくなっていたが、離間距離D1は、配列間隔D2以下であってもよい。
【0081】
また、上述の実施の形態では、共通接点56が、個別接点53の配置面である振動膜40の上面に配置されていたが、これには限られない。例えば、個別接点53と共通接点56とが、振動膜40の上面以外の同じ面上に配置されていてもよい。あるいは、共通接点56は、圧電膜43の上面など、個別接点53の配置面とは異なる面に配置されていてもよい。
【0082】
また、上述の実施の形態では、圧電アクチュエータ24の上面に保護部材26が配置され、接点53、54、56が、保護部材26と重ならない位置に配置されていたが、これには限られない。例えば、圧電アクチュエータ24の上面に保護部材26が配置されていなくてもよい。
【0083】
また、上述の実施の形態では、圧電アクチュエータ24とCOF25とをNCF接合によって接合したが、これには限られない。例えば、圧電アクチュエータ24とCOF25との間にACF(Anisotropic Conductive Film、異方性導電膜)を配置し、COF25を、加熱しつつ、圧電アクチュエータ24に向けて押圧することによって、ACFの対応する接点に挟まれた部分に導電性を持たせて接点同士を導通させる、いわゆるACF接合によって圧電アクチュエータ24とCOF25とを接合させてもよい。
【0084】
また、以上の例では、走査方向並んだ2つの圧電素子列39の間の領域に個別接点を配置したが、これには限られない。例えば、変形例6では、
図19、
図20に示すように、ヘッドユニット200は、流路基板221、ノズルプレート220、及び、圧電アクチュエータ222を備えている。
【0085】
流路基板221は、複数の圧力室226が形成された基板である。ノズルプレート220は、複数のノズル224が形成された薄板状の部材であり、流路基板221の下面に接合されている。圧電アクチュエータ222は、流路基板221の上面に配置されている。圧電アクチュエータ222は、振動膜230、複数の圧電素子240、保護膜243、層間絶縁膜236、配線235、及び、配線保護膜237を有する。
【0086】
圧電アクチュエータ222の、複数の圧力室226の走査方向のノズル224と反対側の端部とそれぞれ重なる位置には、複数の連通孔222aが形成されている。そして、これら複数の連通孔222aを介して、複数の圧力室226に供給される。
【0087】
振動膜230は、流路基板221の上面の全域に、複数の圧力室226を覆うように配置されている。複数の圧電素子240は、振動膜230を挟んで、複数の圧力室226とそれぞれ対向して配置されている。各圧電素子240は、下電極231(本発明の「第2電極」)、圧電膜232、及び、上電極233(本発明の「第1電極」)を有する。
【0088】
下電極231は、振動膜230の上面の、圧力室226と対向する領域に形成されている。また、
図19に示すように、複数の圧力室226の間の領域には下電極231と同じ材料によって導電膜238が形成され、この導電膜238により、複数の圧電素子240の間で下電極231同士が導通している。言い換えれば、振動膜230の上面のほぼ全域に、複数の下電極231とそれらの間の導電膜238からなる、1つの大きな共通電極239が配置されている。
【0089】
圧電膜232は、振動膜230の圧力室226と対向する領域において、下電極231の上に形成されている。圧電膜232は、圧力室226よりも小さい、走査方向に長い矩形の平面形状を有する。上電極233は、圧電膜232よりも一回り小さい、矩形の平面形状を有する。上電極233は、圧電膜232の上面の中央部に形成されている。保護膜234は、複数の圧電素子240の圧電膜232に跨って、振動膜230の上面のほぼ全域にわたって形成されている。
【0090】
層間絶縁膜236は、保護膜234の上に形成されている。層間絶縁膜236の上には、複数の個別配線235(本発明の「第1個別配線」)が配置される。個別配線235の一端部は、圧電膜232の右端部の上面に、保護膜234及び層間絶縁膜236を介して被さるように配置されている。また、保護膜234と層間絶縁膜236の、上電極233の右端部を覆う部分には、これらの膜を貫通するように配置されたスルーホール255が設けられている。そして、スルーホール255を介して個別配線235と上電極233の右端部とが導通している。また、複数の圧電素子240に対応する複数の個別配線235は、上電極233からそれぞれ右方へ引き出されている。
【0091】
なお、左右2つの圧電素子列241a、241bのうち、左側の圧電素子列241aから引き出された個別配線235は、右側の圧電素子列241bの圧電素子240間において、層間絶縁膜236の上に配置されている。すなわち、左側の圧電素子240に接続された個別配線235は、隔壁228の上方において、右側の2つの圧電素子240の間を通過して右方へ延びている。
【0092】
個別配線235の下の層間絶縁膜236は、流路基板221の右端部まで形成されている。流路基板221の右端部においては、層間絶縁膜236の上に、複数の個別接点242(本発明の「第1個別接点」)が搬送方向に並べて配置されている。上電極233から右方へ引き出された配線235は個別接点242と接続されている。また、流路基板221の右端部には、複数の個別接点242よりもさらに右側に、搬送方向に延びた共通接点243(本発明の「第1共通接点」)が配置されている。これにより、共通接点243は、複数の配線235の長さ方向における、複数の個別接点242の延長線上に配置されている。一方、共通電極239は、共通接点243と対向する位置まで右側まで延びている。そして、共通接点243は、保護膜234及び層間絶縁膜236を貫通する複数のスルーホール245を介して、共通電極239と接続されている。複数のスルーホール245は、例えば、保護膜234及び層間絶縁膜236の、個別配線235の個別接点242の延長線上の位置に配置されている。
【0093】
配線保護膜237は、層間絶縁膜236の上に、複数の個別配線235を覆うように形成されている。配線保護膜237は、流路基板221の右端部まで延び、個別配線235の個別接点242との接続箇所までの部分を覆っている。一方、複数の個別接点242と共通接点243は、配線保護膜237から露出している。
【0094】
図19、
図20に示すように、圧電アクチュエータ222の右端部の上面には、COF250がそれぞれ接合されている。そして、COF250は、
図21、
図22に示すように、基材261と、複数の個別接点262(本発明の「第2個別接点」)と、複数の個別配線263(本発明の「第2個別配線」)と、ドライバIC264と、1つの共通接点265(本発明の「第2共通接点」)と、2つの共通配線266(本発明の「第2共通配線」)とを備えている。
【0095】
基材261は、ポリイミドなどの合成樹脂材料などからなるフィルム状の部材である。複数の個別接点262は、基材261の下面261aの個別接点242と対向する部分に配置され、個別接点242と接続されている。また、個別接点262は、基材261に形成された図示しないスルーホールを介して基材261の上面261bに引き出されている。複数の個別配線263は、基材261の上面261bに配置されている。複数の個別配線263は複数の個別接点262に対して個別のものであり、基材261の上面261bに引き出された個別接点262と接続され、個別接点262との接続部分から走査方向の右側に向かって延びている。複数の個別配線263の個別接点262と反対側の端は、基材261の上面261bに配置されたドライバIC264に接続されている。
【0096】
共通接点265は、基材261の下面261aの共通接点243と対向する部分に配置され、搬送方向に延びており、共通接点243と接続されている。共通配線266は、基材261の下面261aに配置されている。共通配線266は、共通接点265の搬送方向の両端部に接続され、共通接点265との接続部分から走査方向の右側に向かって延びている。
【0097】
変形例6の場合にも、個別配線235の長さ方向における個別接点242の延長線上に搬送方向に延びた共通接点243が配置され、共通電極239と共通接点243とが、搬送方向に並んだ複数のスルーホール245を介して接続されているため、圧電素子240同士の間隔を広げることなく、共通電極239の電位を均一にすることができる。
【0098】
また、上述の実施の形態や変形例1〜5等、変形例6以外の場合においても、複数の圧電素子41の下電極42同士が繋がって共通電極を形成し、上電極44が個別電極となっていてもよい。なお、この場合には、上電極44が本発明の第1電極に相当し、下電極42が本発明の第2電極に相当する。
【0099】
また、以上の例では、圧電アクチュエータが走査方向にならんだ2つの圧電素子列39a、39bを有するものであったが、これには限られない。例えば、圧電アクチュエータが圧電素子列を1つだけ有するものであってもよい。
【0100】
また、以上では、圧電膜を第1電極と第2電極とで挟んだ圧電素子を有する圧電アクチュエータにCOFが接合されたアクチュエータ装置に本発明を適用した例について説明したが、これには限られない。第1電極と第2電極とを有する圧電素子以外の駆動素子を備えたアクチュエータと、アクチュエータに接続される配線部材とを備えたアクチュエータ装置に本発明を適用することも可能である。
【0101】
また、アクチュエータ装置は、インクジェットヘッドに用いられるものであることにも限られない。インクジェットヘッド以外の装置に用いられるアクチュエータ装置に本発明を適用することも可能である。