(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961978
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】液滴吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
B41J2/14
B41J2/14 501
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-66817(P2017-66817)
(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公開番号】特開2018-167477(P2018-167477A)
(43)【公開日】2018年11月1日
【審査請求日】2020年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100182051
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 直宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 脩平
【審査官】
上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−076296(JP,A)
【文献】
特開平11−277756(JP,A)
【文献】
特開2001−219559(JP,A)
【文献】
特開2015−217516(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2014/0098160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴吐出ヘッドであって、
複数の吐出口が形成された吐出口形成面を有する流路構造体を備え、
前記吐出口形成面は、所定方向に沿って長い矩形状であり、
前記吐出口形成面には、前記所定方向に配置された前記複数の吐出口からなる吐出口列と、前記所定方向と平行に延びる第1溝及び前記所定方向と平行に延びる第2溝とが形成されており、
第1溝の一端及び第2溝の一端は、前記吐出口形成面の外縁上に位置し、
第1溝の他端と第2溝の他端は離間しており、且つ、前記所定方向に関して前記吐出口列の両端の吐出口よりも内側に位置し、
第1溝と第2溝とは、前記吐出口形成面の一方の短辺側から前記吐出口形成面の長辺方向に見たとき、少なくとも部分的に重なっている液滴吐出ヘッド。
【請求項2】
第1溝の前記一端は、前記吐出口形成面の前記一方の短辺上に位置し、
第2溝の前記一端は、前記吐出口形成面の他方の短辺上に位置し、
第1溝及び第2溝は、前記吐出口列に対して、前記吐出口形成面の一方の長辺側に形成されている請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項3】
前記吐出口形成面には、前記所定方向と平行に延びる第3溝及び前記所定方向と平行に延びる第4溝がさらに形成されており、
第3溝の一端は、前記吐出口形成面の前記一方の短辺上に位置し、
第4溝の一端は、前記吐出口形成面の前記他方の短辺上に位置し、
第3溝の他端と第4溝の他端は離間しており、
第3溝及び第4溝は、前記吐出口列に対して、前記吐出口形成面の他方の長辺側に形成されている請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
前記吐出口列は、前記吐出口形成面の前記一方の短辺に最も近い第1吐出口と、前記吐出口形成面の前記他方の短辺に最も近い第2吐出口とを含み、
第1溝の前記所定方向の長さは、前記一方の短辺から第1吐出口までの距離以上であり、
第2溝の前記所定方向の長さは、前記他方の短辺から第2吐出口までの距離以上である請求項2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項5】
前記流路構造体には、前記複数の吐出口にそれぞれ連通する複数の圧力室がさらに形成されており、
各圧力室は、前記所定方向と直交する方向に延び、
第1溝及び第2溝の幅は、各圧力室の前記吐出口形成面側の面の、前記所定方向と直交する方向の長さ以下である請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項6】
第1溝及び第2溝の深さは、前記吐出口形成面から、前記各圧力室の前記吐出口形成面側の面までの距離よりも小さい請求項5に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項7】
第1溝の深さは前記一端から前記他端に向かって小さくなっており、
第2溝の深さは前記一端から前記他端に向かって小さくなっている請求項1又は2に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項8】
前記吐出口形成面は前記所定方向に長い矩形状であり、
前記吐出口形成面の長辺には、前記吐出口形成面の短辺方向に切り欠かれた複数の切り欠きが形成されており、
第1溝の前記一端及び第2溝の前記一端の少なくとも一方は、前記複数の切り欠きのうちのいずれか一つの切り欠き上に位置する請求項1に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項9】
液滴吐出ヘッドであって、
複数の吐出口が形成された吐出口形成面を有する流路構造体を備え、
前記吐出口形成面は、所定方向に沿って長い矩形状であり、
前記吐出口形成面には、前記所定方向に配置された複数の吐出口からなる吐出口列と、前記所定方向に延びる第1溝及び第2溝とが形成されており、
第1溝の一端及び第2溝の一端はそれぞれ、前記吐出口形成面の外縁よりも内側において、前記吐出口形成面と直交する方向に前記流路構造体を貫通する貫通孔と連通し、
第1溝の他端と第2溝の他端は離間しており、且つ、前記所定方向に関して前記吐出口列の両端の吐出口よりも内側に位置し、
第1溝と第2溝とは、前記吐出口形成面の一方の短辺側から前記吐出口形成面の長辺方向に見たとき、少なくとも部分的に重なっている液滴吐出ヘッド。
【請求項10】
第1溝及び第2溝は、前記吐出口列に対して、前記吐出口形成面の一方の長辺側に形成されている請求項9に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項11】
前記吐出口形成面には、前記所定方向に延びる第3溝及び第4溝がさらに形成されており、
第3溝の一端及び第4溝の一端はそれぞれ、前記吐出口形成面と直交する方向に前記液滴吐出ヘッドを貫通する貫通孔と連通し、
第3溝の他端と第4溝の他端は離間しており、
第3溝及び第4溝は、前記吐出口列に対して、前記吐出口形成面の他方の長辺側に形成されている請求項10に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項12】
前記吐出口列は、前記吐出口形成面の一方の短辺に最も近い第1吐出口と、前記吐出口形成面の他方の短辺に最も近い第2吐出口とを含み、
第1溝の前記所定方向の長さは、前記一方の短辺から第1吐出口までの距離以上であり、
第2溝の前記所定方向の長さは、前記他方の短辺から第2吐出口までの距離以上である請求項10に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項13】
前記流路構造体には、前記複数の吐出口にそれぞれ連通する複数の圧力室がさらに形成されており、
各圧力室は、前記所定方向と直交する方向に延び、
第1溝及び第2溝の幅は、各圧力室の前記吐出口形成面側の面の、前記所定方向と直交する方向の長さ以下である請求項9又は10に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項14】
第1溝及び第2溝の深さは、前記吐出口形成面から、前記各圧力室の前記吐出口形成面側の面までの距離よりも小さい請求項13に記載の液滴吐出ヘッド。
【請求項15】
第1溝の深さは前記一端から前記他端に向かって小さくなっており、
第2溝の深さは前記一端から前記他端に向かって小さくなっている請求項9又は10に記載の液滴吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の吐出口から液滴を吐出する液滴吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の吐出口が所定の方向に高密度で配列された液滴吐出ヘッドが知られている。このような液滴吐出ヘッドにおいて、前記複数の吐出口から液滴を吐出すると、液滴は吐出口が形成された面(以下、吐出口形成面と表記する)付近に存在する空気を巻き込んで飛翔する。このため、吐出口形成面付近は負圧となり、吐出口形成面に沿って液滴吐出ヘッドの外縁から中央部に向かう気流が発生する。前記所定の方向の両端部の吐出口から吐出された液滴は特にこの気流の影響を受け易く、目標位置よりも吐出口列の中央側にずれて着弾する。この現象は、高周波数で液滴を吐出するほど顕著となる。
【0003】
前記現象に対処するため、配列方向の両端部に位置する吐出口から吐出される液体の運動エネルギーが、配列方向の中央部に位置する吐出口から吐出される液体の運動エネルギーよりも大きい液体吐出ヘッドが存在する(例えば特許文献1)。
【0004】
また、記録媒体が搬送される方向と交差する方向に往復移動しつつ吐出口から液体を吐出して、前記記録媒体に記録を行う記録ヘッドが存在する(例えば特許文献2)。この記録ヘッドの吐出口形成面には、吐出口列の延びる方向に沿って記録ヘッドを横切るように連続した溝が形成されている。これにより、往方向への移動と復方向の移動との間で、記録ヘッドと記録媒体との間に流入する気流の流量の差を小さくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−170595
【特許文献2】特開2011−20380
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記記録ヘッドでは、吐出口列の延びる方向に沿って記録ヘッドを横切る溝が形成されているため、溝が形成されていない他の記録ヘッドと比べて吐出口形成面への空気の流入口が増える。この溝を有する前記記録ヘッドでは、高周波数で液滴を吐出したとしても、吐出口形成面に沿って流入する空気の量は相対的に低減される。この結果、吐出口列の両端部の吐出口から吐出された液滴に対する気流の影響は低減されると考えられる。
【0007】
ここで、前記溝は、吐出口列が延びる方向に前記記録ヘッドを貫通している。このため、溝の両端部から進入した空気は、両端部よりも吐出口列方向の内側の地点で衝突する。このとき、一方の端部から進入した気流の力と他方の端部から進入した気流の力とが同じであれば、2つの気流の方向は吐出口形成面に垂直な方向に変換されると考えられる。このため、2つの気流の衝突地点付近の吐出口から吐出された液滴は、吐出口列方向の気流の影響を受けることなく、吐出口形成面に垂直な方向に飛翔すると考えられる。しかしながら、一方の端部から進入した気流の力が他方の端部から進入した気流の力よりも大きい場合がある。この場合、前記衝突地点において、2つの気流の方向は吐出口形成面に垂直な方向には変換されず、一方の端部から進入した気流の成分が残ると考えられる。このため、前記衝突地点付近の吐出口から吐出された液滴は、吐出口形成面に垂直な方向よりも、他方の端部側にそれて飛翔し、他方の端部側にずれて着弾する可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、吐出口列方向の両端部及び内側の吐出口から吐出される液滴の着弾位置ずれを低減することが可能な液滴吐出ヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に従えば、液滴吐出ヘッドであって、複数の吐出口が形成された吐出口形成面を有する流路構造体を備え、
前記吐出口形成面は、所定方向に沿って長い矩形状であり、前記吐出口形成面には、
前記所定方向に配置された前記複数の吐出口からなる吐出口列と、前記所定方向と平行に延びる第1溝及び前記所定方向と平行に延びる第2溝とが形成されており、第1溝の一端及び第2溝の一端は、前記吐出口形成面の外縁上に位置し、第1溝の他端と第2溝の他端は離間しており、且つ、前記所定方向に関して前記吐出口列の両端の吐出口よりも内側に位置し、第1溝と第2溝とは
、前記吐出口形成面の一方の短辺側から前記吐出口形成面の長辺方向に見たとき、少なくとも部分的に重なっている液滴吐出ヘッドが提供される。
【0010】
本発明の第2の態様に従えば、液滴吐出ヘッドであって、複数の吐出口が形成された吐出口形成面を有する流路構造体を備え、
前記吐出口形成面は、所定方向に沿って長い矩形状であり、前記吐出口形成面には、
前記所定方向に配置された複数の吐出口からなる吐出口列と、前記所定方向に延びる第1溝及び第2溝とが形成されており、第1溝の一端及び第2溝の一端はそれぞれ、前記吐出口形成面の外縁よりも内側において、前記吐出口形成面と直交する方向に前記流路構造体を貫通する貫通孔と連通し、第1溝の他端と第2溝の他端は離間しており、且つ、前記所定方向に関して前記吐出口列の両端の吐出口よりも内側に位置し、第1溝と第2溝とは
、前記吐出口形成面の一方の短辺側から前記吐出口形成面の長辺方向に見たとき、少なくとも部分的に重なっている液滴吐出ヘッドが提供される。
【0011】
本発明の第1及び第2の態様によれば、高周波数でインク滴を吐出することにより吐出口形成面付近が負圧となった場合、空気は第1溝及び第2溝或いは貫通孔からも流入する。この結果、吐出口形成面に平行に流入する空気の量が、相対的に低減され、吐出口列の両端部の吐出口から吐出されたインク滴に対する気流の影響を低減することができる。
【0012】
また、第1溝の他端と第2溝の他端は離間しており、第1溝内の気流は第1溝の他端において吐出口形成面に垂直な方向に変換され、第2溝内の気流は第2溝の他端において吐出口形成面に垂直な方向に変換される。このため、第1溝内の気流の力と第2溝内の気流の力が異なっていたとしても、第1溝内の気流と第2溝内の気流とが衝突して吐出口列方向の成分が残り、衝突地点付近の吐出口から吐出されるインク滴の着弾位置が吐出口列方向にずれるおそれがない。つまり、吐出口列の内側の吐出口から吐出されるインク滴の着弾位置が、気流の影響を受けて吐出口列方向にずれるおそれがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の液滴吐出ヘッドによれば、吐出口列方向の両端部及び内側の吐出口から吐出される液滴の着弾位置ずれを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は印刷装置の構成を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図3は本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドを構成する流路構造体の底面図である。
【
図4】
図4は第2変形例の流路構造体の底面図である。
【
図5】
図5は第3変形例の流路構造体の底面図である。
【
図6】
図6は第5変形例の流路構造体の底面図である。
【
図7】
図7は第6変形例の流路構造体の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るインクジェットヘッドについて、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更することができる。
【0016】
図1に示すように、印刷装置1は、筐体2と、プラテン3と、四つのインクジェットヘッド4(液滴吐出ヘッドの一例)と、二つの搬送ローラ5、6と、コントローラ7とを主に備える。
【0017】
プラテン3は筐体2内に配置されている。四つのインクジェットヘッド4は、プラテン3と対向するように、記録用紙Sの搬送方向に並べて配置されている。四つのインクジェットヘッド4にはそれぞれ、図示しないインクタンクから、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクが供給される。各インクジェットヘッド4は、対応する色のインク滴を吐出する。各インクジェットヘッド4は、搬送方向と直交する用紙幅方向に長い、いわゆるライン型のインクジェットヘッドである。二つの搬送ローラ5、6は、プラテン3を搬送方向に挟むように配置されている。二つの搬送ローラ5、6は、図示しないモータによってそれぞれ駆動され、プラテン3上の記録用紙Sを搬送方向へ搬送する。コントローラ7は、PC等の外部装置8と無線或いは有線で接続されており、外部装置8から送信された印刷データに基づいて、印刷装置1の各部を制御する。
【0018】
例えば、コントローラ7は、モータを制御して搬送ローラ5、6を駆動する。これにより、記録用紙Sが搬送方向に搬送される。また、コントローラ7は、プラテン3上に記録用紙Sがある状態で、インクジェットヘッド4を制御してインクを吐出する。これにより、記録用紙Sに画像が印刷される。
【0019】
各インクジェットヘッド4は、
図1及び
図2に示すように、流路構造体10とアクチュエータアセンブリ20とから構成される。
図2に示すように、流路構造体10には複数のインク流路11が形成されている。各インク流路11は、流路構造体10の底面に形成された吐出口12と、吐出口12と連通する圧力室13とを含む。各圧力室13は、搬送方向に長い矩形状であり、吐出口11とは反対側の端部において、各インク流路11に供給するインクを貯留するリザーバ14と連通している。アクチュエータアセンブリ20は、複数のインク流路11にそれぞれ対応する複数のアクチュエータを備える。各アクチュエータは、例えば、ピエゾ素子又は熱抵抗器を備える。各アクチュエータは、コントローラ7と電気的に接続されており、対応するインク流路11の圧力室13内のインクに吐出エネルギーを付与する。アクチュエータアセンブリ20及びアクチュエータの構成は公知であるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
流路構造体10の底面を吐出口形成面10aと称する。
図3に示すように、吐出口形成面10aは、用紙幅方向(所定方向の一例)に長い矩形状である。また吐出口形成面10aには、搬送方向に並ぶ2列の吐出口列12−1,12−2が形成されている。各吐出口列は、吐出口形成面10aの長辺方向に一定の間隔Pで配置された複数の吐出口12により形成されている。2列の吐出口列12−1,12−2は、間隔Pの半分(1/2P)だけ吐出口形成面10aの長辺方向にずれて配置されている。なお、本実施形態では2列の吐出口列12−1,12−2が形成されているが、1列の吐出口列が形成されていてもよく、或いは3列以上の吐出口列が形成されていてもよい。
【0021】
また、吐出口形成面10aには、2列の吐出口列12−1,12−2に対して、一方の長辺10b側に第1溝15及び第2溝16が形成されている。すなわち、第1溝15の一部及び第2溝16の一部は、吐出口列12−2と一方の長辺10bとの間に位置している。なお、本実施形態では、第1溝15の幅は第2溝16の幅と等しく、第1溝15と第2溝16と
は、吐出口形成面10aの一方の短辺側から吐出口形成面10aの長辺方向に見たとき
に完全に重なっている。しかし、第1溝15と第2溝16とは、搬送方向に多少ずれていてもよく
、吐出口形成面10aの一方の短辺側から吐出口形成面10aの長辺方向に見たときに少なくとも部分的に重なっていればよい。第1溝15は、吐出口形成面10aの一方の短辺10d上から長辺方向に沿って延びている。第2溝16は、吐出口形成面10aの他方の短辺10e上から長辺方向に沿って延びている。つまり、第1溝15の一端15aは吐出口形成面10aの一方の短辺10d上に位置する。また、第2溝16の一端16aは吐出口形成面10aの他方の短辺10e上に位置している。なお、第1溝15の他端15bと第2溝16の他端16bとは離間しており、第1溝15と第2溝16は連通していない。第1溝15の他端15b及び第2溝16の他端16bは、吐出口形成面10aの長辺方向に関して、一方の短辺10dに最も近い吐出口12と他方の短辺10eに最も近い吐出口12の内側に位置する。
【0022】
第1溝15の用紙幅方向の長さは、吐出口形成面10aの一方の短辺10dから、その短辺10dに最も近い吐出口12(第1吐出口の一例)までの距離d1以上であればよい。第2溝16の用紙幅方向の長さは、吐出口形成面10aの他方の短辺10eから、その短辺10eに最も近い吐出口12(第2吐出口の一例)までの距離d2以上であればよい。また、第1溝15及び第2溝16の幅は、圧力室13の一部を構成する底面の搬送方向の長さd3以下であればよい。さらに、第1溝15及び第2溝16の深さは、吐出口形成面10aから圧力室13の底面までの距離d4よりも小さければよい。なお、第1溝15の用紙幅方向の長さと第2溝16の用紙幅方向の長さは互いに異なっていてもよい。第1溝15の幅と第2溝16の幅は互いに異なっていてもよい。第1溝15の深さと第2溝16の深さは互いに異なっていてもよい。
【0023】
本実施形態のインクジェットヘッド4は、吐出口形成面10aに第1溝15及び第2溝16が形成されいる。さらに当該インクジェットヘッド4において、第1溝15及び第2溝16がそれぞれ吐出口形成面10aの短辺10d,10eから延びている。このため、高周波数でインク滴を吐出することにより吐出口形成面10a付近が負圧となった場合、空気は第1溝15及び第2溝16からも流入する。この結果、吐出口形成面10aに沿って流入する空気の量は、第1溝15及び第2溝16が形成されていない場合と比べて低減される。したがって、第1溝15及び第2溝16によって、吐出口列12−1,12−2の両端部の吐出口12から吐出されたインク滴に対する気流の影響を低減することができる。
【0024】
また、第1溝15の他端15bと第2溝16の他端16bとは離間しており、第1溝15と第2溝は連通していない。このため、第1溝15内の気流と第2溝16内の気流とが衝突することがない。即ち、第1溝15内の気流は第1溝15の他端15bにおいて吐出口形成面10aに垂直な方向に変換され、第2溝16内の気流は第2溝16の他端16bにおいて吐出口形成面10aに垂直な方向に変換される。このため、第1溝15内の気流の力と第2溝16内の気流の力が異なる場合であっても、第1溝15内の気流と第2溝16内の気流とが衝突することはない。よって双方の気流が衝突して吐出口列方向の成分が残り、衝突地点付近の吐出口12から吐出されるインク滴の着弾位置が吐出口列方向にずれるおそれがない。つまり、吐出口列12−1,12−2の内側の吐出口12から吐出されるインク滴の着弾位置が、気流の影響を受けて吐出口列方向にずれるおそれがない。
【0025】
また、第1溝15は少なくとも、吐出口形成面10aの一方の短辺10dからその短辺10dに最も近い吐出口12までの長さd1を有している。さらに、第2溝16は少なくとも、吐出口形成面10aの他方の短辺10eからその短辺10eに最も近い吐出口12までの長さd2を有している。このため、少なくとも吐出口列12−1,12−2の両端の吐出口12から吐出されたインク滴に対する気流の影響を低減することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、吐出口形成面10aには、2列の吐出口列12−1,12−2に対して一方の長辺10b側に第1溝15及び第2溝16が形成されていた。しかし、吐出口形成面において、他方の長辺10c側に第1溝15及び第2溝16が形成されてもよい。換言すれば、第1溝15の一部及び第2溝16の一部は、吐出口列12−1と他方の長辺10cとの間に位置していてもよい。或いは、第1溝及び第2溝は、2列の吐出口列12−1,12−2の間に形成されていてもよい(第1変形例)。2列の吐出口列12−1,12−2の間に形成される場合、第1溝15及び第2溝16の幅は、2列の吐出口列12−1,12−2の間隔よりも狭ければよい。この構成によっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0027】
或いは、
図4に示されるように、第3溝17及び第4溝18が、2列の吐出口列12−1,12−2に対して第1溝15及び第2溝16と対称となるように、さらに形成されてもよい(第2変形例)。この場合は、第3溝17及び第4溝18は、それぞれ、第1溝15及び第2溝16と同じ構造を有することが好ましい。この構成によれば、高周波数でインク滴を吐出することにより吐出口形成面10a付近が負圧となった場合、空気は第3溝17及び第4溝18からも流入する。従って、吐出口形成面10aに沿って流入する空気の量がさらに低減される。したがって、第1溝15及び第2溝16に加えて、第3溝17及び第4溝18によって、吐出口列12−1,12−2の両端部の吐出口12から吐出されたインク滴に対する気流の影響をさらに低減することができる。
【0028】
また、本実施形態では、第1溝15は、吐出口形成面10aの一方の短辺10d上から用紙幅方向に延びており、第2溝16は、吐出口形成面10aの他方の短辺10e上から用紙幅方向に延びていたが、この構成には限られない。例えば、
図5に示すように、第1溝115は、吐出口形成面10aの一方の長辺10bから吐出形成面10aの短辺方向に沿って延びた後、吐出口列12−2の手前で吐出口形成面10aの長辺方向に屈曲し、吐出口列12−2に沿って延びてもよい。また、第2溝116も同様に、吐出口形成面10aの一方の長辺10bから吐出形成面10aの短辺方向に沿って延びた後、吐出口列12−2の手前で吐出口形成面10aの長辺方向に屈曲し、吐出口列12−2に沿って延びてもよい(第3変形例)。つまり、第1溝115の一端115a及び第2溝116の一端116aは、吐出口形成面10aの一方の長辺10b上に位置してもよい。なお、この変形例においても、第1溝115の他端115bと第2溝116の他端116bとは離間しており、第1溝115と第2溝116は連通していない。この変形例の構成によっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0029】
また、本実施形態では、第1溝15及び第2溝16の深さは、一定であったが、用紙幅方向に沿って深さが変わっていてもよい。即ち、第1溝15の深さは、一端15aから他端15bに向かって浅くなっていてもよい。第2溝16の深さも、第1溝15の深さと同様に、一端16bから他端16bに向かって浅くなっていてもよい(第4変形例)。この構成によれば、第1溝15及び第2溝16内の気流をそれぞれ、第1溝15の他端15b及び第2溝16の他端16bにおいて、確実に吐出口形成面10aと直交する方向に逃がすことができる。
【0030】
本実施形態及び上記変形例では、第1溝15(115)の一端15a(115a)及び第2溝16(116)の一端16a(116a)は、吐出口形成面10aの短辺上あるいは長辺上、即ち、吐出口形成面10aの外縁上に位置していたが、これらの構成には限られない。例えば、
図6に示すように、第1溝215の一端215aは、吐出口形成面10aの外縁よりも内側において、吐出口形成面10aと直交する方向に流路構造体10を貫通する貫通孔231と連通していてもよい。また、第1溝215の一端215aと同様に、第2溝216の一端216aは、吐出口形成面10aの外縁よりも内側において、吐出口形成面10aと直交する方向に流路構造体10を貫通する貫通孔232と連通していてもよい。(第5変形例)。この構成によれば、高周波数でインク滴を吐出することにより吐出口形成面10a付近が負圧となった場合、空気は貫通孔231,232から第1溝215及び第2溝216に流入する。従って、吐出口形成面10aに沿って流入する空気の量が低減される。また、この変形例においても、第1溝215の他端215bと第2溝216の他端216bとは離間しており、第1溝215と第2溝216は連通していない。従って、この変形例によっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0031】
本実施形態のインクジェットヘッド4の流路構造体10は、
図7に示すように、複数のヘッドチップ310を用紙幅方向に千鳥状に配置することによって構成されてもよい(第6変形例)。本変形例において、各ヘッドチップ310の底面には、それぞれが複数の吐出口12からなり、搬送方向に並ぶ2列の吐出口列12−1,12−2が形成されている。2列の吐出口列12−1,12−2はそれぞれ用紙幅方向に延びている。なお、各ヘッドチップ310の底面は、流路構造体10の底面と面一となっており、流路構造体10の底面とともに吐出口形成面10aを構成している。また、吐出口形成面10aの長辺10b,10cにはそれぞれ、複数のヘッドチップ310と搬送方向に対向するように、複数の切り欠き320が形成されている。そして、各ヘッドチップ310の底面には、用紙幅方向に延びる第1溝315及び第2溝316が形成されている。
【0032】
例えば、吐出口形成面10aの短辺10eに最も近いヘッドチップ310において、第1溝315は、用紙幅方向に隣接する切り欠き320から延びており、第2溝316は、吐出口形成面10aの短辺10eから延びている。また、短辺10eに2番目に近いヘッドチップ310において、第1溝315は、用紙幅方向の一方側に隣接する切り欠き320(長辺10b上の、短辺10eに2番目に近い切り欠き320)から延びている。さらに、短辺10eに2番目に近いヘッドチップ310において、第2溝316は、用紙幅方向の他方側に隣接する切り欠き320(長辺10b上の、短辺10eに最も近い切り欠き320)から延びている。つまり、用紙幅方向の最も外側に配置されたヘッドチップ310においても、用紙幅方向の内側に配置されたヘッドチップ310においても、第1溝315の一端315a及び第2溝316の一端316aは、吐出口形成面10aの外縁上に位置している。
【0033】
この構成によれば、各ヘッドチップ310において高周波数でインク滴を吐出することにより各ヘッドチップ310の底面付近が負圧となった場合、空気は第1溝315及び第2溝316に流入する。従って、各ヘッドチップ310の底面に沿って流入する空気の量が低減される。また、この変形例の各ヘッドチップ310においても、第1溝315の他端315bと第2溝316の他端316bとは離間しており、第1溝315と第2溝316は連通していない。従って、この変形例によっても、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0034】
以上、ライン型のインクジェットヘッドの実施形態について説明してきたが、本発明の液滴吐出装置は、いわゆるシリアル型のインクジェットヘッドであってもよい。シリアル型のインクジェットヘッドは、搬送方向に並べられた複数の吐出口を有し、移動機構によって用紙幅方向に移動されながら複数の吐出口から記録用紙上にインク滴を吐出する。そして、記録用紙が搬送方向に所定量搬送された後、再度、用紙幅方向に移動されながら複数の吐出口からインク滴を吐出する。
【0035】
通常のシリアル型のインクジェットヘッドでは、吐出口形成面に溝が形成されていない。このため、高周波数でインク滴を吐出する場合、複数の吐出口のうち搬送方向の両端の吐出口から吐出されたインク滴の着弾位置がずれてしまう可能性がある。つまり、1回目の用紙幅方向への移動の際に搬送方向の最も上流側の吐出口から吐出されたインク滴の着弾位置が、搬送方向の下流側にずれる可能性がある。また、2回目の用紙幅方向への移動の際に搬送方向の最も下流側の吐出口から吐出されたインク滴の着弾位置が、搬送方向の上流側にずれる可能性がある。この場合、1回目の用紙幅方向への移動により形成された画像と、2回目の用紙幅方向への移動により形成された画像との間に、白スジと呼ばれる搬送方向に不連続な部分が形成される。
【0036】
これに対し、本発明に係るシリアル型のインクジェットヘッドでは、吐出口形成面に溝が形成されている。このため、高周波数でインク滴を吐出しても、端ヨレが生じにくく、白スジの発生を低減することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 印刷装置
2 筐体
3 プラテン
4 インクジェットヘッド
5,6 搬送ローラ
7 コントローラ
10 流路構造体
11 インク流路
12 吐出口
13 圧力室
14 リザーバ
15 第1溝
16 第2溝
17 第3溝
18 第4溝
20 アクチュエータアセンブリ