特許第6961982号(P6961982)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6961982
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】シート搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/26 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   B65H31/26
【請求項の数】12
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-69925(P2017-69925)
(22)【出願日】2017年3月31日
(65)【公開番号】特開2018-172186(P2018-172186A)
(43)【公開日】2018年11月8日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】重野 博彰
【審査官】 松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−337570(JP,A)
【文献】 特開2000−320532(JP,A)
【文献】 特開2005−298213(JP,A)
【文献】 特開2007−119198(JP,A)
【文献】 特開2014−118225(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0167350(US,A1)
【文献】 特開2000−238955(JP,A)
【文献】 特開平11−334976(JP,A)
【文献】 特開平08−169618(JP,A)
【文献】 特開2016−181662(JP,A)
【文献】 特開平11−006519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 31/00−31/40
B41J 29/00−29/70
G03G 13/00
G03G 15/00
G03G 21/16−21/18
H05K 5/00−5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送部と、
前記搬送部から排出される搬送済みのシートを支持する支持面を有する排出部と、
前記排出部におけるシートの排出方向下流側において、シートが更に排出方向下流側へ移動するのを規制する第一ストッパと
を備え、
前記第一ストッパは、
前記排出部に対して回動可能に取り付けられて、第一位置から第二位置を経て第三位置に至る範囲内を回動する回動部と、
前記排出部に対してスライド可能に取り付けられるスライド部と、
弾性変形に伴って生じる弾性力で、前記スライド部を一方向へ付勢する付勢部と
を有し、
前記スライド部は、前記付勢部によって付勢されて、その付勢力で前記回動部を押圧するように構成され、
前記回動部は、少なくとも前記第三位置にある場合にシートの排出方向上流側から下流側に向かって上り勾配となる傾斜角をなす規制面を有し、前記排出部へと排出されるシートの排出方向先端に前記規制面で当接することによって該シートの移動を規制可能に構成され、
しかも、前記回動部は、前記第三位置から前記第二位置を経て前記第一位置へと回動すると、前記支持面に対する前記規制面の傾斜角が減少して前記回動部の上方への突出量が小さくなるように構成され、
さらに、前記回動部は、前記第三位置から前記第二位置までの範囲内にある場合には、前記回動部が前記スライド部から受ける押圧力で、前記第二位置から前記第三位置へと回動する向きに付勢されており、
前記シートの排出方向に直交する前記シートの幅方向両側において前記第一ストッパを挟む位置には、前記排出部におけるシートの支持面よりも上方へ突出する第二ストッパが設けられ、
前記第二ストッパの上面には、シートの排出方向上流側から下流側に向かって上り勾配となる傾斜角が付与されており、前記第二ストッパの上端は、前記第二位置にある前記回動部よりも高い位置にある
シート搬送装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシート搬送装置であって、
前記スライド部は、前記スライド部におけるシートの排出方向下流側端部が、少なくとも前記第三位置にある前記回動部におけるシートの排出方向上流側端部と同じ高さ位置以上となる高さ位置に設けられている
シート搬送装置。
【請求項3】
シートを搬送する搬送部と、
前記搬送部から排出される搬送済みのシートを支持する支持面を有する排出部と、
前記排出部におけるシートの排出方向下流側において、シートが更に排出方向下流側へ移動するのを規制する第一ストッパと
を備え、
前記第一ストッパは、
前記排出部に対して回動可能に取り付けられて、第一位置から第二位置を経て第三位置に至る範囲内を回動する回動部と、
前記排出部に対してスライド可能に取り付けられるスライド部と、
弾性変形に伴って生じる弾性力で、前記スライド部を一方向へ付勢する付勢部と
を有し、
前記スライド部は、前記付勢部によって付勢されて、その付勢力で前記回動部を押圧するように構成され、
前記回動部は、少なくとも前記第三位置にある場合にシートの排出方向上流側から下流側に向かって上り勾配となる傾斜角をなす規制面を有し、前記排出部へと排出されるシートの排出方向先端に前記規制面で当接することによって該シートの移動を規制可能に構成され、
しかも、前記回動部は、前記第三位置から前記第二位置を経て前記第一位置へと回動すると、前記支持面に対する前記規制面の傾斜角が減少して前記回動部の上方への突出量が小さくなるように構成され、
さらに、前記回動部は、前記第三位置から前記第二位置までの範囲内にある場合には、前記回動部が前記スライド部から受ける押圧力で、前記第二位置から前記第三位置へと回動する向きに付勢されており、
前記スライド部は、前記スライド部におけるシートの排出方向下流側端部が、少なくとも前記第三位置にある前記回動部におけるシートの排出方向上流側端部と同じ高さ位置以上となる高さ位置に設けられている
シート搬送装置。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシート搬送装置であって、
前記スライド部において、前記排出部へと排出されるシートに接触し得る箇所には、上向きに突出する複数のリブが形成されている
シート搬送装置。
【請求項5】
シートを搬送する搬送部と、
前記搬送部から排出される搬送済みのシートを支持する支持面を有する排出部と、
前記排出部におけるシートの排出方向下流側において、シートが更に排出方向下流側へ移動するのを規制する第一ストッパと
を備え、
前記第一ストッパは、
前記排出部に対して回動可能に取り付けられて、第一位置から第二位置を経て第三位置に至る範囲内を回動する回動部と、
前記排出部に対してスライド可能に取り付けられるスライド部と、
弾性変形に伴って生じる弾性力で、前記スライド部を一方向へ付勢する付勢部と
を有し、
前記スライド部は、前記付勢部によって付勢されて、その付勢力で前記回動部を押圧するように構成され、
前記回動部は、少なくとも前記第三位置にある場合にシートの排出方向上流側から下流側に向かって上り勾配となる傾斜角をなす規制面を有し、前記排出部へと排出されるシートの排出方向先端に前記規制面で当接することによって該シートの移動を規制可能に構成され、
しかも、前記回動部は、前記第三位置から前記第二位置を経て前記第一位置へと回動すると、前記支持面に対する前記規制面の傾斜角が減少して前記回動部の上方への突出量が小さくなるように構成され、
さらに、前記回動部は、前記第三位置から前記第二位置までの範囲内にある場合には、前記回動部が前記スライド部から受ける押圧力で、前記第二位置から前記第三位置へと回動する向きに付勢されており、
前記スライド部において、前記排出部へと排出されるシートに接触し得る箇所には、上向きに突出する複数のリブが形成されている
シート搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のシート搬送装置であって、
前記回動部は、前記第一位置から前記第二位置までの範囲内にある場合には、前記回動部が前記スライド部から受ける押圧力で、前記第二位置から前記第一位置へと回動する向きに付勢されている
シート搬送装置。
【請求項7】
請求項に記載のシート搬送装置であって、
前記回動部は、第一エッジを挟んで両側に形成された第一面及び第二面を有し、
前記スライド部は、第二エッジを挟んで両側に形成された第三面及び第四面を有し、
前記回動部及び前記スライド部は、前記回動部が前記第二位置にある場合に、前記第一エッジと前記第二エッジとが接触する位置関係にあり、
前記スライド部の押圧方向に対する前記第一面の傾斜角が、前記回動部を前記第二位置から前記第一位置に向かって回動させた際に、前記スライド部の前記第二エッジで前記回動部の前記第一面を押圧すると、前記回動部が前記第一位置へと付勢される傾斜角とされるか、前記スライド部の押圧方向に対する前記第三面の傾斜角が、前記回動部を前記第二位置から前記第一位置に向かって回動させた際に、前記スライド部の前記第三面で前記回動部の前記第一エッジを押圧すると、前記回動部が前記第一位置へと付勢される傾斜角とされており、
前記スライド部の押圧方向に対する前記第二面の傾斜角が、前記回動部を前記第二位置から前記第三位置に向かって回動させた際に、前記スライド部の前記第二エッジで前記回動部の前記第二面を押圧すると、前記回動部が前記第三位置へと付勢される傾斜角とされるか、前記スライド部の押圧方向に対する前記第四面の傾斜角が、前記回動部を前記第二位置から前記第三位置に向かって回動させた際に、前記スライド部の前記第四面で前記回動部の前記第一エッジを押圧すると、前記回動部が前記第三位置へと付勢される傾斜角とされている
シート搬送装置。
【請求項8】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシート搬送装置であって、
前記排出部には、前記排出部におけるシートの支持面よりも下方へ凹む凹部が設けられ、
前記回動部は、少なくとも前記第三位置へと回動した際に、前記回動部の一端が前記凹部に入り込む位置に配置され、
前記凹部内には、前記第三位置へと回動した前記回動部に当接することにより、前記回動部を前記第三位置に位置決めする位置決め部が設けられている
シート搬送装置。
【請求項9】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシート搬送装置であって、
前記排出部には、前記回動部が前記第三位置にある場合に、前記付勢部によって付勢された前記スライド部に当接して、前記スライド部から作用する押圧力を受ける受け部が設けられている
シート搬送装置。
【請求項10】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載のシート搬送装置であって、
前記回動部が前記第二位置から前記第一位置までの範囲内に回動するのを規制する規制位置、及び前記回動部が前記第二位置から前記第一位置までの範囲内に回動するのを規制しない非規制位置へ変位可能な規制部材を備える
シート搬送装置。
【請求項11】
請求項10に記載のシート搬送装置であって、
前記規制部材は、前記回動部に対して回動可能に取り付けられ、前記回動部が前記第三位置へと回動する際に、前記規制部材の自重で回動して前記回動部から垂れ下がり、その垂れ下がった下端で前記排出部に当接することにより、前記回動部が前記第二位置から前記第一位置までの範囲内に回動するのを規制するように構成されている
シート搬送装置。
【請求項12】
シートを搬送する搬送部と、
前記搬送部から排出される搬送済みのシートを支持する支持面を有する排出部と、
前記排出部におけるシートの排出方向下流側において、シートが更に排出方向下流側へ移動するのを規制する第一ストッパと
を備え、
前記第一ストッパは、
前記排出部に対して回動可能に取り付けられて、第一位置から第二位置を経て第三位置に至る範囲内を回動する回動部と、
前記排出部に対してスライド可能に取り付けられるスライド部と、
弾性変形に伴って生じる弾性力で、前記スライド部を一方向へ付勢する付勢部と
を有し、
前記スライド部は、前記付勢部によって付勢されて、その付勢力で前記回動部を押圧するように構成され、
前記回動部は、少なくとも前記第三位置にある場合にシートの排出方向上流側から下流側に向かって上り勾配となる傾斜角をなす規制面を有し、前記排出部へと排出されるシートの排出方向先端に前記規制面で当接することによって該シートの移動を規制可能に構成され、
しかも、前記回動部は、前記第三位置から前記第二位置を経て前記第一位置へと回動すると、前記支持面に対する前記規制面の傾斜角が減少して前記回動部の上方への突出量が小さくなるように構成され、
さらに、前記回動部は、前記第三位置から前記第二位置までの範囲内にある場合には、前記回動部が前記スライド部から受ける押圧力で、前記第二位置から前記第三位置へと回動する向きに付勢されており、
前記スライド部は、前記回動部よりもシートの排出方向上流側に位置し、前記回動部の回動中心よりもシートの排出方向上流側にある、前記回動部の第一端部に当接するように構成され、
前記回動部は、前記第一位置から前記第二位置を経て前記第三位置に至る範囲内を回動する際、前記回動部の回動中心を挟んで前記第一端部の反対側にある前記回動部の第二端部が、前記回動部の回動中心よりもシートの排出方向下流側において変位するように構成されている
シート搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シート搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排出トレイにストッパが設けられて、排出トレイへ排出される被記録媒体が排出トレイから脱落するのを、ストッパによって抑制可能に構成された画像形成装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載のストッパは、排出トレイに対して回動可能に取り付けられ、ストッパを使用する場合にはストッパを立てることができ、ストッパを使用しない場合にはストッパを倒すことができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−183106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の画像形成装置は、画像形成装置の上部に画像読取装置を備えた複合機として構成されている。被記録媒体が排出される排出トレイは、画像読取装置の下方となる位置に設けられている。複合機の正面には開口が設けられ、排出トレイへと排出された被記録媒体は、開口を通じて装置の外部へ取り出し可能となっている。
【0005】
しかし、上述のような開口から被記録媒体を取り出す際、ストッパが立ててあると、ストッパが障害物となって、その分だけ実質的な開口が狭くなるので、被記録媒体を取り出しにくくなる。特に、装置の高さ方向(上下方向)寸法を小型化したい場合には、上述のような開口の高さ方向寸法も小さめに設定される可能性があり、そのような場合には、ストッパが邪魔になりやすく、シートを取り出しにくくなる。
【0006】
本開示の一局面においては、ストッパが邪魔になりにくいシート搬送装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、シート搬送装置であって、シートを搬送する搬送部と、搬送部から排出される搬送済みのシートを支持する支持面を有する排出部と、排出部におけるシートの排出方向下流側において、シートが更に排出方向下流側へ移動するのを規制する第一ストッパとを備え、第一ストッパは、排出部に対して回動可能に取り付けられて、第一位置から第二位置を経て第三位置に至る範囲内を回動する回動部と、排出部に対してスライド可能に取り付けられるスライド部と、弾性変形に伴って生じる弾性力で、スライド部を一方向へ付勢する付勢部とを有し、スライド部は、付勢部によって付勢されて、その付勢力で回動部を押圧するように構成され、回動部は、少なくとも第三位置にある場合にシートの排出方向上流側から下流側に向かって上り勾配となる傾斜角をなす規制面を有し、排出部へと排出されるシートの排出方向先端に規制面で当接することによって該シートの移動を規制可能に構成され、しかも、回動部は、第三位置から第二位置を経て第一位置へと回動すると、支持面に対する規制面の傾斜角が減少して回動部の上方への突出量が小さくなるように構成され、さらに、回動部は、第三位置から第二位置までの範囲内にある場合には、回動部がスライド部から受ける押圧力で、第二位置から第三位置へと回動する向きに付勢されている。
【0008】
このように構成されたシート搬送装置によれば、第一ストッパを使用する場合には、回動部を第三位置へと回動させることにより、シートの移動を規制することができる。また、第一ストッパを使用しない場合には、回動部を第一位置へと回動させることにより、第一ストッパを邪魔にならない場所に配置することができる。回動部を第三位置へと回動させる際には、回動部を第二位置から第三位置までの範囲内へ回動させれば、回動部がスライド部から受ける押圧力で第三位置へと回動し、第三位置で保持される。
【0009】
一方、利用者が排出部からシートを取り出す際には、回動部を第三位置から第二位置に向かって回動させれば、回動部の上方への突出量が小さくなる。したがって、排出部からシートを取り出す際に回動部が邪魔にならず、シートを取り出す作業が容易になり、シートと回動部との接触に起因するシートの損傷も抑制できる。しかも、排出部からシートを取り出された後は、回動部をスライド部からの押圧力で第三位置へ復帰させることができる。したがって、利用者が手作業で回動部を第三位置へ戻さなくても済み、その分だけ操作性が良好になり、回動部が中途半端な位置に留まるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は第一実施形態として例示する複合機を示す斜視図である。
図2図2は第一位置にある第一ストッパ及びその周辺の構成を示す斜視図である。
図3図3は第三位置にある第一ストッパ第一ストッパ及びその周辺の構成を示す斜視図である。
図4図4図2中に示すIV部の拡大図である。
図5図5図4に示した部分を分解して示す説明図である。
図6図6Aは第一位置にある第一ストッパ及びその周辺の構成を示す縦断面図である。図6Bは第三位置にある第一ストッパ及びその周辺の構成を示す縦断面図である。
図7図7は第二位置にある第一ストッパ及びその周辺の構成を拡大して示す縦断面図である。
図8図8A図6A中にVIIIA−VIIIA線で示す切断箇所の断面図である。図8B図6B中にVIIIB−VIIIB線で示す切断箇所の断面図である。
図9図9Aは第二実施形態として例示する第一ストッパが第一位置にある状態を示す縦断面図である。図9Bは第二実施形態として例示する第一ストッパが第三位置にある状態を示す縦断面図である。
図10図10Aは第三実施形態として例示する第一ストッパが第一位置にある状態を示す縦断面図である。図10Bは第三実施形態として例示する第一ストッパが第三位置にある状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本開示の一態様について、例示的な実施形態を挙げて説明する。なお、以下の説明においては、図中に併記した上下左右前後の方向を利用して装置各部の相対的な位置関係を説明する。ただし、これらの各方向は装置各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するために規定した方向にすぎない。
【0012】
(1)第一実施形態
[複合機の構成]
以下に例示するのは、図1に示すように、本開示の一態様に相当する構成を備えた複合機1(Multifunction Peripheral;MFP)である。複合機1は、本体ユニット2と、本体ユニット2の上方に配置された読取ユニット3とを備える。読取ユニット3は、フラットベッド部4(以下、FB部4と称する。FBはFlatbedの略称。)と、FB部4の上方に配置された自動原稿送り部5(以下、ADF部5と称する。ADFはAutomatic Document Feederの略称。)とを備える。
【0013】
本体ユニット2の内部には、制御部、画像形成部、及び通信部等が設けられている。本体ユニット2の上部には、ジョイントカバー7が設けられている。ジョイントカバー7は、本体ユニット2の上部を覆うカバーであり、また、本体ユニット2とFB部4とを連結する部材でもある。ジョイントカバー7は、本体ユニット2に対して相対的に開閉可能に構成されている。ジョイントカバー7を開いた際には、本体ユニット2の上部が開放され、本体ユニット2の内部に設けられた機構(上述の画像形成部等。)のメンテナンス等を実施することができる。
【0014】
ジョイントカバー7の上面には、排出部8が設けられている。本体ユニット2が有する画像形成部において被記録媒体(本開示でいうシートの一例に相当。)に画像が形成される際には、その被記録媒体が排出部8へと排出される。排出部8には、シートストッパ9が設けられている。シートストッパ9は、排出部8へと排出される被記録媒体が、過剰に排出方向下流側へと押し出されるのを規制する部材である。シートストッパ9の詳細については後述する。
【0015】
ジョイントカバー7の上方には、上述のFB部4が架設されている。FB部4の前面には、操作パネル11が設けられている。複合機1の前面において、操作パネル11と排出部8との間となる位置には、排出部8から被記録媒体を取り出すための取出口12が構成されている。読取ユニット3は、ジョイントカバー7に対して相対的に開閉可能に構成されている。読取ユニット3を開くと、排出部8と読取ユニット3との間の空間が拡大する。排出部8に小さな被記録媒体が排出された場合、被記録媒体が上述の取出口12から奥まった位置に排出され得るが、そのような場合には読取ユニット3を開くことにより、小さな被記録媒体であっても簡単に取り出すことができる。
【0016】
本体ユニット2の前面には、手差しスロットカバー14が設けられている。手差しスロットカバー14を開いた際には、例えば封筒や厚紙等の被記録媒体を手差し供給口(図示略。)にセットすることができる。手差しスロットカバー14の下方には、記録紙トレイ15が設けられている。記録紙トレイ15には、カット紙等の被記録媒体を収容することができる。
【0017】
ADF部5は、FB部4に対して相対的に開閉可能に構成されている。ADF部5を開くと、FB部4の上面に設けられたプラテン(図示略。)の上に原稿を載せたりプラテン上の原稿を取り除いたりすることができる。ADF部5を閉じると、ADF部5はプラテンの上に載せられた原稿を押さえる原稿台カバーとして機能する。
【0018】
なお、以上説明した構成以外にも、複合機1は様々な構成を備えているが、これらの構成は周知であり、本開示の要部には関連しないので、本明細書での説明は省略する。
[シートストッパの詳細]
次に、上述のシートストッパ9について、更に詳細に説明する。シートストッパ9は、図2及び図3に示すように、可動式の第一ストッパ21と、固定式の第二ストッパ22とを有する。これら第一ストッパ21及び第二ストッパ22は、双方とも排出部8における被記録媒体の排出方向下流側において、被記録媒体が更に排出方向下流側へ移動するのを規制する部材である。第一ストッパ21は、図4、及び図5に示すように、回動部23と、スライド部24とを有する。また、第一ストッパ21は、図6A図6B、及び図7に示すように、付勢部25を有する。
【0019】
回動部23は、ジョイントカバー7に対して回動可能に取り付けられて、第一位置(図2及び図6A参照。)から第二位置(図7参照。)を経て第三位置(図3及び図6B参照。)に至る範囲内を回動可能に構成されている。ジョイントカバー7には、図5に示すよ
うに、軸受26が設けられている。回動部23には支軸27が設けられている。軸受26及び支軸27は左右対称な位置に二つある(ただし、図5には左の軸受26が表れ、右の軸受26が表れない。)。左の支軸27は、図5中に破線の矢印で示すように、左の軸受26に嵌め込まれる。右の支軸27は、右の軸受26に嵌め込まれる。
【0020】
回動部23は、第三位置にある場合に、被記録媒体の排出方向上流側から下流側に向かって(図6A及び図6B中でいう前方に向かって)上り勾配となる傾斜角をなす規制面29を有する。被記録媒体が排出部8へと排出された際、第三位置にある回動部23は、被記録媒体の排出方向先端に規制面29で当接することにより、被記録媒体が更に前方へと移動するのを規制する。
【0021】
回動部23は、第三位置(図6B参照。)から第一位置(図6A参照。)へと回動すると、規制面29の傾斜角(排出部8の支持面(本実施形態では水平面。)に対する角度。)が減少し、回動部23の上方への突出量が小さくなるように構成されている。ジョイントカバー7には、排出部8における被記録媒体の支持面よりも下方へ凹む凹部31が設けられている。回動部23は、第一位置(図6A参照。)へと回動した際に、回動部23の上面と凹部31の上端がほぼ一致する位置に収まるように配置されている。
【0022】
また、回動部23は、第三位置(図6B参照。)へと回動した際に、回動部23の一端231(図6Bにおける左下の端部。)が凹部31に入り込む位置に配置されている。凹部31内には、位置決め部33が設けられている。回動部23が第三位置へと回動した際には、位置決め部33と回動部23の下端とが当接することにより、回動部23が第三位置に位置決めされる。また、回動部23が第三位置を超えて第二位置とは反対方向へ回動するのを、位置決め部33によって規制することができる。
【0023】
スライド部24は、ジョイントカバー7に対して、図6A及び図6B中でいう前後方向へスライド可能に取り付けられている。より詳しく説明すると、スライド部24には、図5に示すように、引っ掛け部35が設けられている。ジョイントカバー7には、引っ掛け部35が挿し入れられるガイド孔37が設けられている。また、スライド部24には、フック部41が設けられている。ジョイントカバー7には、フック部41が引っ掛かる受け部43が設けられている。
【0024】
引っ掛け部35及びガイド孔37は左右対称な位置に二つある。左の引っ掛け部35は、スライド部24の下面から下方へ突出する部分と、その突出部分の先端から屈曲して左方へと突出する部分とを有する形状とされている。右の引っ掛け部35は、スライド部24の下面から下方へ突出する部分と、その突出部分の先端から屈曲して右方へと突出する部分とを有する形状とされている。
【0025】
ガイド孔37は、ジョイントカバー7に設けられた台座部45を上下方向に貫通している。ガイド孔37は、前後方向に細長く延びていて、ガイド孔37の前端付近の一部では、当該一部よりも後方へと延びる部分に比べ、ガイド孔37の左右方向幅が広くされている。ガイド孔37の左右方向幅が広くされた部分においては、引っ掛け部35を上方からガイド孔37へ挿し入れることができる。左の引っ掛け部35は、図5中に破線の矢印で示すように、左のガイド孔37に挿し入れられる。右の引っ掛け部35は、右のガイド孔37に挿し入れられる。
【0026】
引っ掛け部35を上方からガイド孔37へ挿し入れた後、さらにスライド部24をジョイントカバー7に対して相対的に後方へとスライドさせると、引っ掛け部35がガイド孔37における左右方向幅の狭い部分へと導入される。この状態において、引っ掛け部35は、引っ掛け部35の下端において左方又は右方へ突出する部分が、ガイド孔37の下端
付近でジョイントカバー7に引っ掛かり、スライド部24は、前後方向へはスライド可能、かつ上下方向及び左右方向へは変位不能な状態になる。
【0027】
フック部41及び受け部43は左右対称な位置に二つある。左のフック部41は、スライド部24の下面に沿って後方へと延びて弾性変形可能に構成された板ばね状部分と、その板ばね状部分の先端から右方へと突出する爪状部分とを有する形状とされている。右のフック部41は、スライド部24の下面に沿って後方へと延びて弾性変形可能に構成された板ばね状部分と、その板ばね状部分の先端から左方へと突出する爪状部分とを有する形状とされている。左の受け部43は、左の台座部45の左側面から左方へ突出する爪状部分を有する。右の受け部43は、右の台座部45の右側面から右方へ突出する爪状部分を有する。左のフック部41は、図5中に破線の矢印で示すように、左の受け部43に引っ掛かる。右のフック部41は、右の受け部43に引っ掛かる。
【0028】
スライド部24がジョイントカバー7に取り付けられる際、左右のフック部41は、左右の台座部45を左右両側から挟み込む位置に配置される。スライド部24をジョイントカバー7に対して相対的に後方へとスライドさせた際には、フック部41の板ばね状部分が弾性変形しつつ受け部43の爪状部分を乗り越える。これにより、スライド部24をジョイントカバー7に対して相対的に前方へとスライドさせた際には、フック部41の爪状部分が受け部43の爪状部分に引っ掛かり、スライド部24の前方への変位が規制される状態となる(図8B参照。)。
【0029】
このようにしてスライド部24がジョイントカバー7に取り付けられた状態において、スライド部24はガイド孔37の上方を覆う位置に配置される。そのため、何らかの事情で複合機1に水等の液体がかかったとしても、ガイド孔37に液体が直接かかるのをスライド部24によって防ぐことができる。また、台座部45は、凹部31の底よりも高い位置にある。そのため、上述のような液体がスライド部24やその周囲にある部分を伝って凹部31の内側へ入り込んだとしても、その液体が台座部45の上面に達するほど大量でなければ、ガイド孔37を通じて装置内へ液体が浸入するのを台座部45によって防ぐことができる。
【0030】
スライド部24において、排出部8へと排出される被記録媒体に接触し得る箇所には、上向きに突出する複数のリブ47が形成されている(図4参照。)。本実施形態の場合は、リブ47が設けられることにより、スライド部24における被記録媒体の排出方向下流側端部241の高さ位置は、第三位置(図6B参照。)にある回動部23における被記録媒体の排出方向上流側端部231と同じ高さ位置以上となるように構成されている。
【0031】
付勢部25は、弾性変形に伴って生じる弾性力で、スライド部24を一方向(図6A及び図6B中でいう前方。)へ付勢している。本実施形態の場合、付勢部25は、コイルスプリングを利用した圧縮ばねによって構成されている。スライド部24は、付勢部25によって図6A及び図6B中でいう前方に向かって付勢され、その付勢力で回動部23を押圧するように構成されている。
【0032】
ただし、スライド部24が付勢部25によって付勢されて前方へスライドすると、フック部41が受け部43に引っ掛かる(図8B参照。)。この状態に至ると、スライド部24が、更に前方へ変位することはなく、付勢部25からスライド部24へと作用する付勢力は、スライド部24を介して受け部43に作用する状態になる。なお、この状態において、回動部23は第三位置にあり、自重によって第三位置から第一位置へ回動する方向へと付勢される。そのため、回動部23とスライド部24は、回動部23の自重による付勢力により、互いに接触する状態が維持される。一方、回動部23が第一位置にある場合、スライド部24は、回動部23に当接する。このとき、付勢部25からスライド部24へ
と作用する付勢力は、スライド部24を介して回動部23に作用する状態になる。また、フック部41は、受け部43から離れる位置まで後退する(図8A参照。)。
【0033】
回動部23は、第三位置(図6B参照。)から第二位置(図7参照。)までの範囲内にある場合には、回動部23がスライド部24から受ける押圧力で、第二位置から第三位置へと回動する向き(図6Bにおいて時計回りとなる向き。)に付勢されている。また、回動部23は、第一位置(図6A参照。)から第二位置(図7参照。)までの範囲内にある場合には、回動部23がスライド部24から受ける押圧力で、第二位置から第一位置へと回動する向き(図6Aにおいて反時計回りとなる向き。)に付勢されている。
【0034】
より詳しく説明すると、本実施形態の場合、図7に示すように、回動部23は、第一エッジ51と、第一エッジ51を挟んで両側に形成された第一面61及び第二面62を有する形状とされている。また、スライド部24は、第二エッジ52と、第二エッジ52を挟んで両側に形成された第三面63及び第四面64を有する形状とされている。回動部23及びスライド部24は、回動部23が第二位置(図7参照。)にある場合に、第一エッジ51と第二エッジ52とが接触する位置関係にある。この位置関係にある場合には、スライド部24から回動部23に対して作用する付勢力の向きが、第一エッジ51と第二エッジ52との接触点から回動部23の回動中心に至る向きとなり、回動部23には回転モーメントが生じない。
【0035】
一方、本実施形態の場合、スライド部24の押圧方向(図7中でいう前方向。)に対する第一面61の傾斜角は、回動部23を第二位置(図7参照。)から第一位置(図6A参照。)に向かって回動させた際に、スライド部24の第二エッジ52で回動部23の第一面61を押圧すると、回動部23が第一位置(図6A参照。)へと付勢される傾斜角とされている。すなわち、スライド部24の第二エッジ52で回動部23の第一面61を押圧した際、第一面61には、第一面61に沿ったせん断応力や第一面61に垂直な垂直応力等が作用するが、その垂直応力の一部(分力)が、他の応力に起因する摩擦抵抗等を上回って回動部23に反時計回りの回転モーメントが生じるように、第一面61の傾きが設定されている。
【0036】
なお、本実施形態の場合は、スライド部24の第二エッジ52が回動部23の第一面61を押圧する位置関係にあるので、上述のような構成になっている。ただし、スライド部24の第三面63が回動部23の第一エッジ51を押圧する位置関係にある場合には、スライド部24の押圧方向に対する第三面63の傾斜角が、回動部23を第二位置から第一位置に向かって回動させた際に、スライド部24の第三面63で回動部23の第一エッジ51を押圧すると、回動部23が第一位置へと付勢される傾斜角とされていればよい。
【0037】
また、本実施形態の場合、スライド部24の押圧方向(図7中でいう前方向。)に対する第四面64の傾斜角は、回動部23を第二位置(図7参照。)から第三位置(図6B参照。)に向かって回動させた際に、スライド部24の第四面64で回動部23の第一エッジ51を押圧すると、回動部23が第三位置(図6B参照。)へと付勢される傾斜角とされている。
【0038】
すなわち、スライド部24の第四面64で回動部23の第一エッジ51を押圧した際、第一エッジ51には、第一エッジ51における接線方向に沿ったせん断応力や第一エッジ51における接線方向に垂直な垂直応力等が作用するが、その垂直応力の一部(分力)が、他の応力に起因する摩擦抵抗等を上回って回動部23に時計回りの回転モーメントが生じるように、第四面64の傾きが設定されている。
【0039】
なお、本実施形態の場合は、スライド部24の第四面64が回動部23の第一エッジ5
1を押圧する位置関係にあるので、上述のような構成になっている。ただし、スライド部24の第二エッジ52が回動部23の第二面62を押圧する位置関係にある場合には、スライド部24の押圧方向に対する第二面62の傾斜角が、回動部23を第二位置から第三位置に向かって回動させた際に、スライド部24の第二エッジ52で回動部23の第二面62を押圧すると、回動部23が第三位置へと付勢される傾斜角とされていればよい。
【0040】
第二ストッパ22は、排出部8における被記録媒体の排出方向(図2における前方。)に直交する被記録媒体の幅方向(図2における左右方向。)の両側において第一ストッパ21を挟む位置に設けられている。第二ストッパ22は、排出部8における被記録媒体の支持面よりも上方へ突出している。第二ストッパ22の上面には、被記録媒体の排出方向上流側から下流側に向かって(図2中でいう前方に向かって)上り勾配となる傾斜角が付与されている。また、第二ストッパ22の上端は、第二位置(図6A中に破線で示す位置参照。)にある回動部23よりも高い位置にある。
【0041】
[効果]
以上説明したような複合機1によれば、第一ストッパ21を使用する場合には、回動部23を第三位置(図6B参照。)へと回動させることにより、被記録媒体の移動を規制することができる。また、第一ストッパ21を使用しない場合には、回動部23を第一位置(図6A参照。)へと回動させることにより、第一ストッパ21を邪魔にならない場所に配置することができる。回動部23を第三位置へと回動させる際には、回動部23を第二位置(図7参照。)から第三位置(図6B参照。)までの範囲内へ回動させれば、回動部23がスライド部24から受ける押圧力で第三位置へと回動し、第三位置で保持される。
【0042】
一方、利用者が排出部8から被記録媒体を取り出す際には、回動部23を第三位置(図6B参照。)から第二位置(図7参照。)に向かって回動させれば、回動部23の上方への突出量が小さくなる。したがって、排出部8から被記録媒体を取り出す際に回動部23が邪魔にならず、被記録媒体を取り出す作業が容易になり、被記録媒体と回動部23との接触に起因する被記録媒体の損傷も抑制できる。しかも、排出部8から被記録媒体を取り出された後は、回動部23をスライド部24からの押圧力で第三位置へ復帰させることができる。したがって、利用者が手作業で回動部23を第三位置へ戻さなくても済み、その分だけ操作性が良好になり、回動部23が中途半端な位置(例えば、第二位置付近。)に留まるのを抑制することができる。
【0043】
なお、本実施形態の場合、回動部23が第三位置にある場合、上方への突出量は、第二ストッパ22を上回る。また、回動部23が第一位置にある場合、上方への突出量は、第二ストッパ22を下回る。したがって、排出部8へ排出される被記録媒体の枚数が多い場合には、回動部23を第三位置へ変位させることが好ましい。一方、回動部23が第一位置にある場合でも、第二ストッパ22は上方へ突出する状態にある。したがって、排出部8へ排出される被記録媒体の枚数が少ない場合には、回動部23が第一位置にある状態であっても、第二ストッパ22だけでシートストッパ9としての役割を果たすことができる。
【0044】
また、本実施形態の場合、回動部23を第一位置(図6A参照。)から第二位置(図7参照。)までの範囲内へ回動させれば、回動部23がスライド部24から受ける押圧力で第一位置へと回動し、第一位置で保持される。この状態においては、回動部23の上方への突出量が最も小さくなる。したがって、回動部23を使用しない場合には、回動部23を第一位置へ回動させることにより、回動部23が邪魔にならないようにすることができ、その際、利用者が手作業で回動部23を第一位置へ移動させなくても済み、その分だけ操作性が良好になり、回動部23が中途半端な位置(例えば、第二位置付近。)に留まるのを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態の場合、利用者が排出部8から被記録媒体を取り出す際に、回動部23が被記録媒体に押されて第三位置から第二位置に向かって回動したとしても、被記録媒体が第二ストッパ22に接触すると、それ以上は回動部23が第二位置に向かって押されなくなる。そのため、被記録媒体の取り出し作業によって、回動部23が第二位置を超えて第一位置に近づくのを抑制でき、回動部23が無駄に第一位置へと回動してしまうのを抑制できる。
【0046】
また、本実施形態の場合、上述のような位置決め部33が設けられているので、回動部23を第三位置に適正に位置決めすることができる。
また、本実施形態の場合、スライド部24の端部241が、第三位置にある回動部23の端部231以上の高い位置にあるので、スライド部24の端部を通過する被記録媒体の先端が、回動部23の端部231に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態の場合、スライド部24に上述のようなリブ47が形成されているので、スライド部24と被記録媒体との接触面積を少なくし、被記録媒体をスムーズに排出できる。
【0048】
また、本実施形態の場合、上述のような受け部43が設けられているので、第三位置にある回動部23にはスライド部24から過大な付勢力は作用せず、回動部23に不要な負荷がかかることを抑制できる。
【0049】
(2)第二実施形態
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態以降の実施形態は、第一実施形態で例示した構成の一部を変更しただけなので、第一実施形態との相違点を中心に詳述し、第一実施形態と同様な部分に関しては、その詳細な説明を省略する。また、第一実施形態で示した各構成と機能的に見て同等な構成には、第一実施形態で示した符号と同じ符号を付す。
【0050】
第二実施形態では、回動部23が、第一位置(図9A参照。)から第二位置(図示略。)までの範囲内にある場合に、回動部23がスライド部24から押圧力を受けても、第二位置から第一位置へと回動する向き(図9Aにおいて反時計回りとなる向き。)には付勢されない点で、第一実施形態とは相違する。
【0051】
第二実施形態においては、回動部23が第一位置(図9A参照。)から第二位置(図示略。)までの範囲内にある場合に、スライド部24の垂直面66が回動部23の第一エッジ51を押圧する位置関係にある。ただし、スライド部24の押圧方向に対する垂直面66の傾斜角は、回動部23を第二位置から第一位置に向かって回動させた際に、スライド部24の垂直面66で回動部23の第一エッジ51を押圧しても、回動部23が第一位置へと付勢されることがない角度となっている。
【0052】
すなわち、スライド部24の垂直面66で回動部23の第一エッジ51を押圧した際、第一エッジ51に作用する応力の一部(分力)は、回動部23に反時計回りの回転モーメントを生じさせ得る。ただし、回動部23が反時計回りに回動するには、第一エッジ51がスライド部24の垂直面66に沿って摺動するので、第一エッジ51と垂直面66との間には摩擦抵抗が生じる。垂直面66の角度は、上述のような摩擦抵抗によって回動部23が反時計回りには回動しなくなるような角度に該当する。
【0053】
このように構成されたシートストッパ9の場合は、利用者が手動操作で回動部23を第一位置へと変位させることになる。一方、回動部23を第三位置へと変位させる場合には
、第一実施形態の場合と同様の操作をすればよく、回動部23を第二位置と第三位置との間となる位置まで変位させれば、スライド部24から受ける力で回動部23が第三位置へと変位する。
【0054】
なお、第二実施形態において、回動部23及び排出部8には、回動部23が第一位置へ変位した時点で互いに軽く噛み合う凹凸を設けてある。このように構成すれば、回動部23を手動操作で第一位置へ変位させた際、回動部23が第一位置へ変位した瞬間に凹凸が噛み合うので、回動部23を第一位置へ変位させた際にスナップ感がある構造(すなわち、カチッと第一位置に位置決めされる感触がある構造。)にすることができる。
【0055】
(3)第三実施形態
次に、第三実施形態について説明する。第三実施形態は、図10A及び図10Bに示すように、規制部材71が設けられている点、及び第二ストッパ22の上方向への突出量が第二実施形態よりも小さくされている(すなわち、高さ方向寸法が低くされている。)点で、第二実施形態とは相違する。
【0056】
規制部材71は、回動部23に対して回動可能に取り付けられ、図10Aに示す非規制位置と図10Bに示す規制位置との間で変位可能に構成されている。規制部材71が図10Bに示す規制位置にある場合、規制部材71は、回動部23が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制する。また、規制部材71が図10Aに示す規制位置にある場合、規制部材71は、回動部23が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制しない。
【0057】
本実施形態の場合、規制部材71は、回動部23が第三位置(図10B参照。)へと回動する際に、規制部材71の自重で回動して回動部23から垂れ下がり、その垂れ下がった下端で排出部8に当接することにより、回動部23が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制する。回動部23を第三位置から第一位置へと変位させたい場合には、利用者は回動部23を操作する際に規制部材71も操作して、規制部材71を非規制位置へと回動させつつ、回動部23を第三位置から第一位置へと回動させる。
【0058】
このように構成されていれば、規制部材71を規制位置へ変位させることにより、回動部23が第一位置へ回動するのを抑制することができる。したがって、第一実施形態及び第二実施形態とは異なり、回動部23が第一位置へ回動するのを第二ストッパ22によって抑制しなくても済むので、第二ストッパ22の上方向への突出量を小さめにすることも可能となる。よって、第二ストッパ22の突出量を小さくしたい場合には、上述のような規制部材71を設けると有効である。
【0059】
また、上記規制部材71の場合、回動部23を第三位置へ回動させれば、規制部材71が自重で垂れ下がって、回動部23が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制する状態になる。よって、利用者が規制部材71を規制位置へ変位させる操作をしなくても済むので、操作性が良好になる。
【0060】
なお、本実施形態において、規制部材71は、回動部23が第三位置へと回動する際に、規制部材23の自重で回動して回動部23から垂れ下がるが、その垂れ下がった時点で規制部材23の下端が排出部8に当接するように構成するか否かは任意である。すなわち、規制部材23の下端は、回動部23に荷重がかかって回動部23が第二位置へ向かって回動した時点で排出部8に当接してもよく、このように構成されていても、回動部23が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制することができる。
【0061】
(4)他の実施形態
以上、被記録媒体搬送装置について、例示的な実施形態を挙げて説明したが、上述の実施形態は本開示の一態様として例示されるものにすぎない。すなわち、本開示は、上述の例示的な実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内において、様々な形態で実施することができる。
【0062】
例えば、上記実施形態では、被記録媒体が排出される排出部8に本開示の構成を適用する例を示したが、ADF部5に設けられた原稿排出トレイに本開示の構成を適用してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、本開示のシート搬送装置の一例として、複合機1に設けられたシート搬送装置を例示したが、複合機1として構成されているか否かは任意である。例えば、単機能の画像形成装置や自動原稿送り装置であっても、本開示の構成を採用することができる。
【0064】
なお、上記各実施形態における一つの構成要素によって実現していた機能を、複数の構成要素によって実現するように構成してもよい。また、複数の構成要素によって実現していた機能を一つの構成要素によって実現するように構成してもよい。また、上記各実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記各実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれる全ての態様が本開示の実施形態に該当する。
【0065】
(5)補足
なお、以上説明した例示的な実施形態から明らかなように、本開示のシート搬送装置は、更に以下に挙げるような構成を備えていてもよい。
【0066】
まず、本開示のシート搬送装置において、回動部は、第一位置から第二位置までの範囲内にある場合には、回動部がスライド部から受ける押圧力で、第二位置から第一位置へと回動する向きに付勢されていてもよい。
【0067】
このように構成されたシート搬送装置によれば、回動部を第一位置から第二位置までの範囲内へ回動させれば、回動部がスライド部から受ける押圧力で第一位置へと回動し、第一位置で保持される。この状態においては、回動部の上方への突出量が最も小さくなる。したがって、回動部を使用しない場合には、回動部を第一位置へ回動させることにより、回動部が邪魔にならないようにすることができ、その際、利用者が手作業で回動部を第一位置へ移動させなくても済み、その分だけ操作性が良好になり、回動部が中途半端な位置に留まるのを抑制することができる。
【0068】
また、本開示のシート搬送装置において、回動部は、第一エッジを挟んで両側に形成された第一面及び第二面を有し、スライド部は、第二エッジを挟んで両側に形成された第三面及び第四面を有し、回動部及びスライド部は、回動部が第二位置にある場合に、第一エッジと第二エッジとが接触する位置関係にあり、スライド部の押圧方向に対する第一面の傾斜角が、回動部を第二位置から第一位置に向かって回動させた際に、スライド部の第二エッジで回動部の第一面を押圧すると、回動部が第一位置へと付勢される傾斜角とされるか、スライド部の押圧方向に対する第三面の傾斜角が、回動部を第二位置から第一位置に向かって回動させた際に、スライド部の第三面で回動部の第一エッジを押圧すると、回動部が第一位置へと付勢される傾斜角とされており、スライド部の押圧方向に対する第二面の傾斜角が、回動部を第二位置から第三位置に向かって回動させた際に、スライド部の第二エッジで回動部の第二面を押圧すると、回動部が第三位置へと付勢される傾斜角とされるか、スライド部の押圧方向に対する第四面の傾斜角が、回動部を第二位置から第三位置に向かって回動させた際に、スライド部の第四面で回動部の第一エッジを押圧すると、回
動部が第三位置へと付勢される傾斜角とされていてもよい。
【0069】
このように構成されたシート搬送装置によれば、回動部及びスライド部に上述のような第一エッジ、第二エッジ、第一面、第二面、第三面、及び第四面を設けることにより、回動部を所期の方向へ付勢することができる。
【0070】
また、本開示のシート搬送装置において、シートの排出方向に直交するシートの幅方向両側において第一ストッパを挟む位置には、排出部におけるシートの支持面よりも上方へ突出する第二ストッパが設けられ、第二ストッパの上面には、シートの排出方向上流側から下流側に向かって上り勾配となる傾斜角が付与されており、第二ストッパの上端は、第二位置にある回動部よりも高い位置にあってもよい。
【0071】
このように構成されたシート搬送装置によれば、利用者が排出部からシートを取り出す際に、回動部がシートに押されて第三位置から第二位置に向かって回動したとしても、シートが第二ストッパに接触すると、それ以上は回動部が第二位置に向かって押されなくなる。そのため、シートの取り出し作業によって、回動部が第二位置を超えて第一位置に近づくのを抑制でき、回動部が無駄に第一位置へと回動してしまうのを抑制できる。
【0072】
また、本開示のシート搬送装置において、排出部には、排出部におけるシートの支持面よりも下方へ凹む凹部が設けられ、回動部は、少なくとも第三位置へと回動した際に、回動部の一端が凹部に入り込む位置に配置され、凹部内には、第三位置へと回動した回動部に当接することにより、回動部を第三位置に位置決めする位置決め部が設けられていてもよい。
【0073】
このように構成されたシート搬送装置によれば、回動部を第三位置に適正に位置決めすることができる。
また、本開示のシート搬送装置において、スライド部は、スライド部におけるシートの排出方向下流側端部が、少なくとも第三位置にある回動部におけるシートの排出方向上流側端部と同じ高さ位置以上となる高さ位置に設けられていてもよい。
【0074】
このように構成されたシート搬送装置によれば、スライド部の端部が、少なくとも第三位置にある回動部の端部以上の高い位置にあるので、スライド部の端部を通過するシートの先端が、回動部の端部に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0075】
また、本開示のシート搬送装置において、スライド部において、排出部へと排出されるシートに接触し得る箇所には、上向きに突出する複数のリブが形成されていてもよい。
このように構成されたシート搬送装置によれば、シートがリブによって案内されるため、スライド部とシートとの接触面積を少なくし、シートをスムーズに排出できる。
【0076】
また、本開示のシート搬送装置において、排出部には、回動部が第三位置にある場合に、付勢部によって付勢されたスライド部に当接して、スライド部から作用する押圧力を受ける受け部が設けられていてもよい。
【0077】
このように構成されたシート搬送装置によれば、第三位置にある回動部に不要な負荷がかかることを抑制できる。
また、本開示のシート搬送装置において、回動部が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制する規制位置、及び回動部が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制しない非規制位置へ変位可能な規制部材を備えてもよい。
【0078】
このように構成されたシート搬送装置によれば、規制部材を規制位置へ変位させること
により、回動部が第一位置へ回動するのを抑制することができる。
また、本開示のシート搬送装置において、規制部材は、回動部に対して回動可能に取り付けられ、回動部が第三位置へと回動する際に、規制部材の自重で回動して回動部から垂れ下がり、その垂れ下がった下端で排出部に当接することにより、回動部が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制するように構成されていてもよい。
【0079】
このように構成されたシート搬送装置によれば、回動部を第三位置へ回動させれば、規制部材が自重で垂れ下がって、回動部が第二位置から第一位置までの範囲内に回動するのを規制する状態になる。よって、利用者が規制部材を規制位置へ変位させる操作をしなくても済むので、操作性が良好になる。
【符号の説明】
【0080】
1…複合機、2…本体ユニット、3…読取ユニット、4…フラットベッド部(FB部)、5…自動原稿送り部(ADF部)、7…ジョイントカバー、8…排出部、9…シートストッパ、11…操作パネル、12…取出口、14…手差しスロットカバー、15…記録紙トレイ、21…第一ストッパ、22…第二ストッパ、23…回動部、24…スライド部、25…付勢部、26…軸受、27…支軸、29…規制面、31…凹部、33…位置決め部、35…引っ掛け部、37…ガイド孔、41…フック部、43…受け部、45…台座部、47…リブ、51…第一エッジ、52…第二エッジ、61…第一面、62…第二面、63…第三面、64…第四面、66…垂直面、71…規制部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10