(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962005
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】不吐出抑制装置、印刷指示装置、インクジェットヘッド駆動回路及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
B41J2/165 207
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-104113(P2017-104113)
(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-199234(P2018-199234A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 史暁
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 博之
【審査官】
加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−150869(JP,A)
【文献】
特開2014−108554(JP,A)
【文献】
特開2013−059951(JP,A)
【文献】
特開2016−064670(JP,A)
【文献】
特開2006−272571(JP,A)
【文献】
特開2007−144681(JP,A)
【文献】
特開2005−161615(JP,A)
【文献】
特開2006−007641(JP,A)
【文献】
特開2014−087964(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0070117(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 − 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段と、
不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段と、
前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段と、
印刷データを前記印刷装置に送信することで印刷指示を行う印刷指示装置の異常を検出する異常検出手段と、
を有し、
前記生成制御手段は、前記異常検出手段により印刷データを前記印刷装置に送信できない異常が検出された場合に不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする不吐出抑制装置。
【請求項2】
印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれている場合、当該印刷データから不吐出防止用吐出データを抽出して記録する記録手段を有し、
前記生成制御手段は、当該印刷データの印刷処理中に前記異常検出手段により当該印刷データを前記印刷装置に送信できない異常が検出された場合、前記生成手段に不吐出防止用吐出データを生成させずに、前記記録手段により記録された不吐出防止用吐出データを取得させることを特徴とする請求項1に記載の不吐出抑制装置。
【請求項3】
送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段と、
不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段と、
前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段と、
を有し、
前記生成制御手段は、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれていない場合、不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする不吐出抑制装置。
【請求項4】
前記生成制御手段は、前記印刷装置における印刷速度に適応させて不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする請求項3に記載の不吐出抑制装置。
【請求項5】
送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段と、
不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段と、
前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段と、
を有し、
前記生成制御手段は、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれている場合において、当該印刷データを印刷するだけでは前記吐出条件を満たす液滴の吐出ができない場合、前記吐出条件を満たすよう、当該印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データを補填する不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させ、
前記指示手段は、前記印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データ及び前記生成手段により生成された不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示することを特徴とする不吐出抑制装置。
【請求項6】
前記生成制御手段は、印刷データに前記吐出条件を満たす不吐出防止用吐出データが含まれていない場合に不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする請求項5に記載の不吐出抑制装置。
【請求項7】
前記生成制御手段は、前記印刷装置における印刷速度が所定の速度より遅い場合に不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする請求項5に記載の不吐出抑制装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の不吐出抑制装置を搭載したことを特徴とする印刷指示装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の不吐出抑制装置を搭載したことを特徴とするインクジェットヘッド駆動回路。
【請求項10】
コンピュータを、
送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段、
不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段、
前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段、
印刷データを前記印刷装置に送信することで印刷指示を行う印刷指示装置の異常を検出する異常検出手段、
として機能させ、
前記生成制御手段は、前記異常検出手段により印刷データを前記印刷装置に送信できない異常が検出された場合に不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とするプログラム。
【請求項11】
コンピュータを、
送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段、
不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段、
前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段、
として機能させ、
前記生成制御手段は、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれていない場合、不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とするプログラム。
【請求項12】
コンピュータを、
送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段、
不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段、
前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段、
として機能させ、
前記生成制御手段は、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれている場合において、当該印刷データを印刷するだけでは前記吐出条件を満たす液滴の吐出ができない場合、前記吐出条件を満たすよう、当該印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データを補填する不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させ、
前記指示手段は、前記印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データ及び前記生成手段により生成された不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不吐出抑制装置、印刷指示装置、インクジェットヘッド駆動回路及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
DFE(Digital Front End)は、ページ記述言語PDL(Page Description Language)で記述された印刷データが上流システムから送信されてくると、その印刷データに対しRIP(Raster Image Processor)処理を実行することでラスタイメージを生成し、その生成したラスタイメージをプリンタに転送して印刷媒体上に画像を形成させる。
【0003】
DFEがラスタイメージの送信先とするプリンタの種類の1つにインクジェットプリンタがある。インクジェットプリンタは、ノズルからインク滴を吐出して画像を形成するが、インク滴を吐出しない時間が長くなりノズルの中でインクの増粘が起こると、ノズルの吐出性能が低下する。ひどい場合には目詰まりが発生することにもなりかねない。この目詰まりを防止するために、プリンタは、印刷する画像とは別に印字前や印字中にノズルからインク滴を吐出させる、いわゆる不吐出防止用吐出を行っている。
【0004】
例えば、ノズルの位置が固定されている連続紙プリンタにおいては、印刷対象の画像データに不吐出防止用吐出データ(以下、「ダミーデータ」とも称する)を含めてノズルから吐出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5874265号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、DFEにおいて何らかの障害が発生したことにより、プリンタに印刷データを出力することができない場合、印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データもノズルから吐出されなくなる。
【0007】
本発明は、印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る不吐出抑制装置は、送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段と、不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段と、前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段と、
印刷データを前記印刷装置に送信することで印刷指示を行う印刷指示装置の異常を検出する異常検出手段と、を有
し、前記生成制御手段は、前記異常検出手段により印刷データを前記印刷装置に送信できない異常が検出された場合に不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする。
【0010】
また、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれている場合、当該印刷データから不吐出防止用吐出データを抽出して記録する記録手段を有し、前記生成制御手段は、当該印刷データの印刷処理中に前記異常検出手段により当該印刷データを前記印刷装置に送信できない異常が検出された場合、前記生成手段に不吐出防止用吐出データを生成させずに、前記記録手段により記録された不吐出防止用吐出データを取得させることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る不吐出抑制装置は、送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段と、不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段と、前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段と、を有し、前記生成制御手段は、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれていない場合、不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする。
【0012】
また、前記生成制御手段は、前記印刷装置における印刷速度に適応させて不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする。
【0013】
本発明に係る不吐出抑制装置は、送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段と、不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段と、前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段と、を有し、前記生成制御手段は、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれている場合において、当該印刷データを印刷するだけでは前記吐出条件を満たす液滴の吐出ができない場合、前記吐出条件を満たすよう、当該印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データを補填する不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させ、前記指示手段は、前記印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データ及び前記生成手段により生成された不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示することを特徴とする。
【0014】
また、前記生成制御手段は、印刷データに前記吐出条件を満たす不吐出防止用吐出データが含まれていない場合に不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする。
【0015】
また、前記生成制御手段は、前記印刷装置における印刷速度が所定の速度より遅い場合に不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る印刷指示装置は、上記記載の不吐出抑制装置を搭載したことを特徴とする。
【0017】
本発明に係るインクジェットヘッド駆動回路、上記記載の不吐出抑制装置を搭載したことを特徴とする。
【0018】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段、不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段、前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段、
印刷データを前記印刷装置に送信することで印刷指示を行う印刷指示装置の異常を検出する異常検出手段、として機能させ
、前記生成制御手段は、前記異常検出手段により印刷データを前記印刷装置に送信できない異常が検出された場合に不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする。
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段、不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段、前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段、として機能させ、前記生成制御手段は、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれていない場合、不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させることを特徴とする。
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、送られてきた印刷装置のノズルの不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示する指示手段、不吐出防止用吐出データを生成して前記指示手段に送る生成手段、前記指示手段が受け取る不吐出防止用吐出データが、前記ノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、前記生成手段における不吐出防止用吐出データの生成制御を行う生成制御手段、として機能させ、前記生成制御手段は、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれている場合において、当該印刷データを印刷するだけでは前記吐出条件を満たす液滴の吐出ができない場合、前記吐出条件を満たすよう、当該印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データを補填する不吐出防止用吐出データを前記生成手段に生成させ、前記指示手段は、前記印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データ及び前記生成手段により生成された不吐出防止用吐出データに従い前記ノズルに液滴を吐出させるよう指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の発明によれば、印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することができる。
また、印刷データを印刷装置に送信できない状況においてもノズルの目詰まりを防止することができる。
【0021】
請求項
2に記載の発明によれば、印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データに従ってノズルに液滴を吐出させることができる。
【0022】
請求項
3に記載の発明によれば、
印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することができる。また、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれていない場合にノズルの目詰まりを防止することができる。
【0023】
請求項
4に記載の発明によれば、適切な吐出タイミングで不吐出防止用吐出データに基づきノズルに液滴を吐出させることができる。
【0024】
請求項
5に記載の発明によれば、
印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することができる。また、ノズルの目詰まりを確実に防止することができる。
【0025】
請求項
6に記載の発明によれば、印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データだけではノズルの目詰まりを防止できないおそれがある場合でもノズルの目詰まりを確実に防止することができる。
【0026】
請求項
7に記載の発明によれば、印刷速度が遅いために印刷データに含まれている不吐出防止用吐出データだけではノズルの目詰まりを防止できないおそれがある場合でもノズルの目詰まりを確実に防止することができる。
【0027】
請求項
8に記載の発明によれば、印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することができる。
【0028】
請求項
9に記載の発明によれば、印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することができる。
【0029】
請求項
10に記載の発明によれば、印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することができる。
また、印刷データを印刷装置に送信できない状況においてもノズルの目詰まりを防止することができる。
請求項11に記載の発明によれば、印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することができる。また、印刷データに不吐出防止用吐出データが含まれていない場合にノズルの目詰まりを防止することができる。
請求項12に記載の発明によれば、印刷装置のノズルに目詰まりが起こりうる事象が検出されたときにノズルに吐出させる不吐出防止用吐出データを生成することができる。また、ノズルの目詰まりを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施の形態における印刷システムの全体構成図である。
【
図2】本実施の形態におけるプリンタインタフェースボード5の内部構成図である。
【
図3】本実施の形態における印刷データ出力制御部が実施する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0032】
図1は、本実施の形態における印刷システムの全体構成図である。
図1には、上流システム1、DFE2及びプリンタ3が示されている。上流システム1は、プリンタ3に印刷させる印刷データを生成する。DFE2は、上流システム1により生成された印刷データにRIP処理を実行することでラスタイメージを生成し、ラスタイメージ化した印刷データをプリンタ3に送信することで印刷指示を行う印刷指示装置である。プリンタ3は、ラスタイメージ化された印刷データを印刷する印刷装置である。
【0033】
DFE2は、CPU及びRAMを搭載したマザーボード4と、プリンタ3を接続するプリンタインタフェース(I/F)ボード5と、を内部バス6で接続して構成される。内部バス6は、PCI(Peripheral Component Interconnect)−Express(PCIe)という接続規格に準拠している高速伝送路である。
【0034】
図2は、本実施の形態におけるプリンタインタフェースボード5の内部構成図である。プリンタインタフェースボード5は、PCIeインタフェース(I/F)7、PCIe通信処理部8、画像処理部9、印刷データ出力制御部10及びプリンタインタフェース(I/F)20を有している。PCIeインタフェース7は、上流システム1から送信されてくる印刷対象の画像データ(印刷データ)を受信する通信手段であり、いわゆる物理層の通信モデルとして機能する。PCIe通信処理部8は、上流システム1から受信された印刷データを画像処理部9が使用するメモリ領域にDMA(Direct Memory Access)転送する通信手段であり、いわゆる論理層の通信モデルとして機能する。画像処理部9は、RIP処理を実行することで印刷データをラスタイメージ化する。印刷データ出力制御部10は、ラスタイメージ化された印刷データをプリンタインタフェース20に送る。プリンタインタフェース20は、送られてきた印刷データをプリンタ3に出力する。
【0035】
本実施の形態における印刷データ出力制御部10は、出力処理部11、ダミーデータ生成部12、画像形成制御部13、異常検出部14及び記録部15を有している。出力処理部11は、ラスタイメージ化された印刷データをプリンタインタフェース20に出力する。また、出力処理部11は、プリンタ3のノズル(図示せず)の目詰まりを防止するためにダミーデータを出力することによって、ダミーデータに従いノズルに液滴を吐出させるよう指示する。出力するダミーデータは、ダミーデータ生成部12により生成される場合もあるし、印刷データに含まれている場合もある。更に、ダミーデータ生成部12により生成されたダミーデータと、印刷データに含まれているダミーデータと、を混在させる場合もある。ダミーデータ生成部12は、ダミーデータを生成して出力処理部11に送る。
【0036】
画像形成制御部13は、出力処理部11が受け取るダミーデータがノズルの目詰まりを防止しうる吐出条件を満たすよう、ダミーデータ生成部12におけるダミーデータの生成制御を行う生成制御手段として機能する。異常検出部14は、DFE2の異常を検出する異常検出手段として機能する。具体的には、PCIeインタフェース7、PCIe通信処理部8及び画像処理部9は、何らかの障害が発生すると異常検出信号を印刷データ出力制御部10へ送出するが、異常検出部14は、いずれかの構成要素7,8,9から送出された異常検出信号を受信することでDFE2の異常を検出する。あるいは、異常検出部14は、構成要素7,8,9から正常信号を定周期的に受信し、所定時間内に正常信号が受信できなくなったことで異常を検出するようにしてもよい。
【0037】
記録部15は、画像処理部9から送られてくる印刷データにダミーデータが含まれている場合、その印刷データからダミーデータを抽出して記録する記録手段として機能する。
【0038】
ダミーデータは、形成対象となる画像とは別に、プリンタ3のノズルの目詰まりを防止するためにノズルに液滴を吐出させるためのデータである。目詰まりを防止するためには、例えば、10インチ内で全てのノズルからそれぞれ100回吐出させるなどの吐出条件を満たす必要がある。従って、各ノズルからは、形成対象となる画像とダミーデータとを合わせて吐出条件を満たすよう液滴を吐出させればよい。このため、画像形成制御部13は、画像処理部9から送られてくる印刷データを参照しつつ、ダミーデータ生成部12におけるダミーデータの生成を制御する。
【0039】
なお、印刷データにおける各画素の画素データにダミーデータであることを示すフラグ情報をセットすることで、当該画素がダミーデータであるかどうかを判別できるようにしてもよい。
【0040】
記録部15は、印刷データにおけるフラグ情報を参照することで、印刷データからダミーデータを抽出することができる。また、画像形成制御部13は、印刷データにダミーデータが含まれているかどうか、また含まれている場合には印刷データにおける各ダミーデータの位置、各ノズルからの液滴の吐出回数やタイミングを認識することができる。
【0041】
印刷データ出力制御部10における各構成要素11〜15は、DFE2に搭載されたCPUと、CPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、記録部15は、記憶手段としてRAMを利用する。
【0042】
ところで、印刷データ出力制御部10の上流側で何らかの障害が発生すると、正常でない印刷データとして、例えば用紙全体若しくは用紙の一部が真っ黒となる印刷データが生成されてしまう場合がある。このような場合、画像形成制御部13は、印刷データをプリンタ3に出力しない方がよいので出力を停止するよう制御する。あるいは、印刷データがプリンタ3から全く出力されない場合もある。このように、出力処理部11が印刷データをプリンタ3に出力しなくなると、これに合わせてダミーデータも出力されなくなる。そうすると、ノズルの目詰まりを防止できなくなる。
【0043】
そこで、本実施の形態では、DFE2において印刷データが出力できなくなるような障害、換言するとプリンタ3のノズルに目詰まりが起こりうる事象が発生したときでもダミーデータだけはプリンタ3から出力できるようにしたことを特徴としている。
【0044】
次に、本実施の形態における印刷データ出力制御部10が実施するダミーデータの出力制御処理について
図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、本実施の形態では、プリンタインタフェースボード5は、印刷データ(印刷ジョブに含まれている印刷データ)の印刷処理中に上流システム1から所定の通信データ量単位に分割されて当該印刷データを受信するものとして説明する。
【0045】
PCIeインタフェース7が上流システム1から送信されてきた印刷データを受信し、その印刷データをPCIe通信処理部8が画像処理部9へ転送すると、画像処理部9は、RIP処理を実行することで印刷データをラスタイメージ化する。以上の処理が行われることで、印刷データ出力制御部10は、ラスタイメージ化された印刷データを受信することになるが(ステップS111)、このとき、異常検出部14が上流の構成要素7,8,9のいずれからも異常検出信号を受信していない場合、つまり、印刷データ出力制御部10が正常な印刷データを受信した場合(ステップS112でY)、記録部15は、印刷データにダミーデータが含まれているかどうかを確認し、ダミーデータが含まれている場合(ステップS113でY)、印刷データからダミーデータを抽出して記録する(ステップS114)。本実施の形態では、記録部15の内部に保存することを想定しているが、別途設けた記憶手段に保存するようにしてもよい。印刷データにダミーデータが含まれていない場合(ステップS113でN)、当然ながらダミーデータは記録されない。
【0046】
続いて、印刷データに吐出条件を満たすダミーデータが含まれているかどうかを判定する。吐出条件としては、上記において例示したように10インチ内で全てのノズルからそれぞれ100回吐出させるなどである。従って、印刷データにダミーデータが含まれていない場合、また印刷データにダミーデータが含まれていたとしても上記吐出条件を満たすほどのダミーデータが含まれていない場合、画像形成制御部13は、吐出条件を満たしていないと判定する。なお、ここでは、特に断らない限り、便宜的に印刷データにダミーデータが含まれている場合、その印刷データに含まれるダミーデータは吐出条件を満たすものとして説明する。
【0047】
印刷データにダミーデータが含まれていることによって吐出条件を満たす場合(ステップS115でY)、出力処理部11は、印刷データをプリンタインタフェース20に出力する(ステップS118)。プリンタインタフェース20は、印刷データをプリンタ3に送信することで印刷が実行されるが、このときのダミーデータは、吐出条件を満たしていることからノズルの目詰まりが防止される。
【0048】
一方、印刷データにダミーデータが含まれていないことによって吐出条件を満たさない場合(ステップS115でN)、画像形成制御部13は、ダミーデータ生成部12にダミーデータを生成させる(ステップS116)。もちろん、ダミーデータ生成部12は、吐出条件を満たすダミーデータを生成することになる。そして、出力処理部11は、画像処理部9から送られてきた印刷データに、ダミーデータ生成部12が生成したダミーデータを合成する(ステップS117)。そして、印刷データをプリンタインタフェース20に出力する(ステップS118)。このときのダミーデータは、吐出条件を満たしていることからノズルの目詰まりが防止される。
【0049】
ところで、印刷データに含まれているダミーデータが吐出条件を満たしていない場合、印刷データのみをプリンタ3に送信して印刷を実行させてもノズルの目詰まりを防止できるとは限らない。
【0050】
そこで、画像形成制御部13は、画像処理部9から送信されてきた印刷データに含まれているダミーデータが吐出条件を満たしていない場合(ステップS115でN)、画像形成制御部13は、出力処理部11から出力されるダミーデータが吐出条件を満たすことになるよう、ダミーデータ生成部12にダミーデータを生成させることによって印刷データに含まれているダミーデータを補填させる(ステップS116)。そして、出力処理部11は、画像処理部9から送られてきた印刷データに、ダミーデータ生成部12が生成したダミーデータを合成する(ステップS117)。このように、ダミーデータ生成部12により生成されたダミーデータと、印刷データに含まれているダミーデータと、を混在させて、ダミーデータが吐出条件を満たすようにする。そして、出力処理部11は、印刷データをプリンタインタフェース20に出力する(ステップS118)。このときのダミーデータは、吐出条件を満たしていることからノズルの目詰まりが防止される。
【0051】
以上の処理を、印刷ジョブに含まれている印刷データの全てに対して繰り返し行う(ステップS119)。
【0052】
一方、印刷データ出力制御部10が正常な印刷データを受信しなかった場合(ステップS112でN)、ダミーデータ生成部12はダミーデータを生成することになる。なお、印刷データ出力制御部10が正常な印刷データを受信しなかった場合というのは、異常検出部14が異常を検出したときをいい、異常な印刷データを受信した可能性がある場合、また印刷データを受信できなかった場合をいう。
【0053】
このとき、ステップS114において記録部15がダミーデータを記録している場合(ステップS120でY)、画像形成制御部13は、ダミーデータ生成部12にダミーデータを生成させずに、記録部15により記録されたダミーデータを取得させる(ステップS121)。一方、記録部15によりダミーデータが記録されていない場合(ステップS120でN)、画像形成制御部13は、ダミーデータ生成部12にダミーデータを生成させる。このとき、ダミーデータ生成部12は、吐出条件を満たすダミーデータを生成する。
【0054】
そして、出力処理部11は、ダミーデータ生成部12が生成したダミーデータをプリンタインタフェース20に出力する(ステップS123)。なお、正常に受信できなかった印刷データは出力しない。このときのダミーデータは、吐出条件を満たしていることからノズルの目詰まりが防止される。
【0055】
以上説明したように、本実施の形態によれば、DFE2で異常が検出された場合に限らず、正常な印刷データに吐出条件を満たすダミーデータが含まれていない場合でも、プリンタ3に対して吐出条件を満たすダミーデータを出力することができるので、ノズルの目詰まりが防止される。
【0056】
ところで、前述したように、ノズルの目詰まりを防止するには、吐出条件を満たすようにノズルから液滴を吐出させる必要がある。画像処理部9から送られてくる印刷データに含まれているダミーデータが吐出条件を満たす場合、上記説明では便宜的に吐出条件を満たすものとして説明した。ただ、何らかの理由により、プリンタ3における印刷速度が変更される場合がある。つまり、画像処理部9から送られてくる印刷データに含まれているダミーデータが吐出条件を満たす場合でも、プリンタ3における印刷速度が遅くなると、吐出条件を満たさなくなる可能性が生じてくる。上記例示した10インチ内で全てのノズルからそれぞれ100回吐出させるという吐出条件は、プリンタ3が所定の速度で印刷を行うことを前提としている。従って、画像処理部9から送られてくる印刷データに含まれているダミーデータが吐出条件を満たしていても、印刷速度が遅ければ、ノズルからは、吐出条件を満たす吐出が行われない場合もあり得る。
【0057】
そこで、本実施の形態においては、次のようにしてプリンタ3における印刷速度を考慮したダミーデータを生成できるようにした。
【0058】
プリンタ3の印刷速度は、プリンタインタフェース20が検出可能なので、ステップS115において、本実施の形態における画像形成制御部13は、プリンタインタフェース20からプリンタ3の印刷速度を取得する。そして、画像処理部9から送られてくる印刷データに含まれているダミーデータが所定の速度で印刷されるときに吐出条件を満たす場合であっても、検出されたプリンタ3の印刷速度では吐出条件を満たさなくなる場合、印刷データに含まれているダミーデータを補填するようにダミーデータ生成部12にダミーデータを生成させる。これにより、検出されたプリンタ3の印刷速度でも、ノズルに吐出条件を満たす吐出を行わせることができるので、ノズルの目詰まりが防止される。
【0059】
なお、プリンタ3の印刷速度が所定の速度より速い場合、画像処理部9から送られてくる印刷データに含まれているダミーデータでも、吐出条件を満たす吐出をノズルに行わせることはできる。ただ、この場合は、必要以上にダミーデータを吐出させてしまうことになるので、印刷データに含まれているダミーデータを間引くようにしてもよい。これは、画像形成制御部13が、ダミーデータ生成部12若しくは出力処理部11に対してダミーデータの間引く画素位置を指示し、ダミーデータを間引かせるようにしてもよい。このようにして、ノズルからの吐出量、つまりインク消費量が削減される。
【0060】
本実施の形態では、以上のようにしてノズルからの不吐出を抑制することができる。本実施の形態では、ノズルからの不吐出を抑制する不吐出抑制装置としての機能をDFE2のプリンタインタフェースボード5に搭載したが、プリンタ3側、例えばインクジェットヘッド駆動回路に搭載するよう構成してもよい。これにより、DFE2を利用しない印刷システムにおいても、前述したノズルからの不吐出を抑制する機能を実現することが可能となる。なお、不吐出抑制装置としての機能をプリンタ3に設けた場合、プリンタ3は、DFE2から正常に動作している旨の正常信号が送られてこないことで異常を検出するようにしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態は、ノズル(又はノズルを搭載したインクジェットヘッド)が移動不能に固定されていることによって液滴の吐出を他のノズルによって代用できない印刷装置、例えば連続紙プリンタへの適用に適しているが、液滴の吐出を他のノズルによって代用できる可動型のインクジェットヘッドを搭載する印刷装置、例えばカット紙プリンタにも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 上流システム、2 DFE、3 プリンタ、4 マザーボード、5 プリンタインタフェース(I/F)ボード、6 内部バス、7 PCIeインタフェース(I/F)、8 PCIe通信処理部、9 画像処理部、10 印刷データ出力制御部、11 出力処理部、12 ダミーデータ生成部、13 画像形成制御部、14 異常検出部、15 記録部、20 プリンタインタフェース(I/F)。