特許第6962042号(P6962042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962042シミュレーション装置およびシミュレーション方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962042
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】シミュレーション装置およびシミュレーション方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   G05B23/02 G
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-139047(P2017-139047)
(22)【出願日】2017年7月18日
(65)【公開番号】特開2019-21032(P2019-21032A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 謙一
【審査官】 大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−169771(JP,A)
【文献】 特表2014−525088(JP,A)
【文献】 特開平10−260626(JP,A)
【文献】 特開2017−91032(JP,A)
【文献】 特開平5−149762(JP,A)
【文献】 特開2009−15477(JP,A)
【文献】 特開2015−176219(JP,A)
【文献】 特開2011−39762(JP,A)
【文献】 特開2001−106703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00−23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント装置の運転状態を予測するシミュレーション装置であって、
外部のトラッキングシミュレータ装置による前記運転状態のトラッキングにおいて設定された調整パラメータであって、シミュレーションモデル内の実プロセスを記述する物理的・化学的係数としての前記調整パラメータを、前記トラッキングシミュレータ装置によるトラッキング時に実プラントから得られた前記プラント装置の運転条件の情報に関連付けて蓄積するパラメータ蓄積部と、
予測対象の前記プラント装置の運転条件を基に、シミュレーションモデルを用いて前記運転状態を予測する予測シミュレータ部と、
前記予測シミュレータ部における前記シミュレーションモデルの調整パラメータを動的に設定する調整パラメータ設定部と、
を備え、
前記調整パラメータ設定部は、予測対象の前記運転条件に類似する運転条件の情報に関連付けられた前記調整パラメータを前記パラメータ蓄積部から取得し、取得した前記調整パラメータを基に、前記予測シミュレータ部の前記シミュレーションモデルの調整パラメータを設定する、
シミュレーション装置。
【請求項2】
前記パラメータ蓄積部は、前記調整パラメータを外乱に関する前記運転条件の情報である外乱情報に関連付けて蓄積し、
前記調整パラメータ設定部は、予測対象の外乱情報に類似する前記外乱情報に関連付けられた前記調整パラメータを取得する、
請求項1記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
前記パラメータ蓄積部は、前記調整パラメータを前記プラント装置に対する制御量に関する前記運転条件の情報である制御量情報に関連付けて蓄積し、
前記調整パラメータ設定部は、予測対象の制御量に類似する前記制御量情報に関連付けられた前記調整パラメータを取得する、
請求項1または2記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
前記パラメータ蓄積部は、前記調整パラメータを前記プラント装置の運転時間に関する前記運転条件の情報である運転時間情報に関連付けて蓄積し、
前記調整パラメータ設定部は、予測対象の運転時間に類似する前記運転時間情報に関連付けられた前記調整パラメータを取得する、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記調整パラメータ設定部は、予測対象の前記運転条件と、前記運転条件の情報との距離を計算することにより類似を判断する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
前記調整パラメータ設定部は、前記パラメータ蓄積部から前記調整パラメータを複数取得し、複数の前記調整パラメータと前記調整パラメータと関連づけられた前記プラント装置の運転条件の情報とを基にした機械学習を用いて前記シミュレーションモデルの前記調整パラメータを設定する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
【請求項7】
前記予測シミュレータ部の出力を基に前記プラント装置に対する制御器による制御量を予測する制御量予測部をさらに備え、
前記予測シミュレータ部は、前記制御量予測部によって予測された制御量を基に、前記運転状態を予測する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
【請求項8】
前記調整パラメータ設定部は、前記制御量予測部によって予測された制御量に類似する前記運転条件の情報に関連付けられた前記調整パラメータを取得する、
請求項7に記載のシミュレーション装置。
【請求項9】
前記予測シミュレータ部は、前記制御量の予測のためのアルゴリズムあるいはパラメータが動的あるいは静的に変更された制御量予測部の予測結果を基に、前記運転状態を予測する、
請求項7又は8に記載のシミュレーション装置。
【請求項10】
前記予測シミュレータ部は、所定期間先の将来の前記運転状態を予測する、
請求項1〜9のいずれか1項に記載のシミュレーション装置。
【請求項11】
プラント装置の運転状態を予測するシミュレーション方法であって、
パラメータ蓄積部が、外部のトラッキングシミュレータ装置による前記運転状態のトラッキングにおいて設定された調整パラメータであって、シミュレーションモデル内の実プロセスを記述する物理的・化学的係数としての前記調整パラメータを、前記トラッキングシミュレータ装置によるトラッキング時に実プラントから得られた前記プラント装置の運転条件の情報に関連付けて蓄積するステップと、
シミュレーション装置が、予測対象の前記プラント装置の運転条件を基に、シミュレーションモデルを用いて前記運転状態を予測するステップと、
前記シミュレーション装置が、前記シミュレーションモデルの調整パラメータを動的に設定するステップと、
を備え、
前記調整パラメータを動的に設定するステップでは、予測対象の前記運転条件に類似する運転条件の情報に関連付けられた前記調整パラメータを前記パラメータ蓄積部から取得し、取得した前記調整パラメータを基に、前記シミュレーションモデルの調整パラメータを設定する、
シミュレーション方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラント装置の運転状態を予測するシミュレーション装置およびシミュレーション方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、化学プラント、発電プラント、熱処理プラント等の各種プラントにおけるプラント装置によるプロセスに関するシミュレーションを行う装置が用いられている。例えば、下記特許文献1は、対象プロセスのモデルに基づいたプロセスシミュレーションに関して開示する。このプロセスシミュレーションは対象のプラント(以下、「実プラント」という。)の設備とは別のコンピュータ等のシステム上で実行される。
【0003】
一方、近年では、シミュレータを実プロセスと並行して動作させ、シミュレータの動作を実プラントにおける実際のプロセス(以下、「実プロセス」という。)の動作に適合させるようなシミュレーションの技術が盛んに研究されている。例えば、下記特許文献2,3および下記非特許文献1には、実プロセスから得られた各物理量の計測データ(温度、圧力、流量、組成等)とシミュレーション結果とが同期するように動作するトラッキングシミュレータを用いて、プラント装置の将来の運転状態をシミュレートすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6043348号公報
【特許文献2】特許第4789277号公報
【特許文献3】特許第5212890号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大谷 哲也、“オンライン・シミュレータによるプラント操業革新”、計測と制御、第47巻第11号、p.927−932、2008年11月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来のトラッキングシミュレータを用いた技術においては、将来の実プラントの運転条件の変更、将来の気象変化などの外乱条件の変化等を考慮した将来のプラント装置の運転状態の予測を実現することは困難である。加えて、実プラントの特性の劣化を考慮した将来のプラント装置の運転状態の予測を実現することも困難である。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、将来のプラント装置の運転状態を正確に予測することが可能なシミュレーション装置およびシミュレーション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一側面に係るシミュレーション装置は、プラント装置の運転状態を予測するシミュレーション装置であって、外部のトラッキングシミュレータ装置による運転状態のトラッキングにおいて設定されたシミュレーションモデルの調整パラメータを、トラッキングシミュレータ装置によるトラッキング時に実プラントから得られたプラント装置の運転条件の情報に関連付けて蓄積するパラメータ蓄積部と、予測対象のプラント装置の運転条件を基に、シミュレーションモデルを用いて運転状態を予測する予測シミュレータ部と、予測シミュレータ部におけるシミュレーションモデルの調整パラメータを動的に設定する調整パラメータ設定部と、を備え、調整パラメータ設定部は、予測対象の運転条件に類似する運転条件の情報に関連付けられた調整パラメータをパラメータ蓄積部から取得し、取得した調整パラメータを基に、予測シミュレータ部のシミュレーションモデルの調整パラメータを設定する。
【0009】
本発明の他の側面に係るシミュレーション方法は、プラント装置の運転状態を予測するシミュレーション方法であって、パラメータ蓄積部が、外部のトラッキングシミュレータ装置による運転状態のトラッキングにおいて設定されたシミュレーションモデルの調整パラメータを、トラッキングシミュレータ装置によるトラッキング時に実プラントから得られたプラント装置の運転条件の情報に関連付けて蓄積するステップと、シミュレーション装置が、予測対象のプラント装置の運転条件を基に、シミュレーションモデルを用いて運転状態を予測するステップと、シミュレーション装置が、シミュレーションモデルの調整パラメータを動的に設定するステップと、を備え、調整パラメータを動的に設定するステップでは、予測対象の運転条件に類似する運転条件の情報に関連付けられた調整パラメータをパラメータ蓄積部から取得し、取得した調整パラメータを基に、シミュレーションモデルの調整パラメータを設定する。
【0010】
かかる構成のシミュレーション装置あるいはシミュレーション方法によれば、パラメータ蓄積手段によって、外部のトラッキングシミュレータ装置において過去に設定されたシミュレーションモデルの調整パラメータの履歴情報が実プラントのプラント装置の運転条件の情報に関連付けて蓄積され、シミュレーション装置により、予測対象の運転条件に類似する運転条件の情報に関連付けられた調整パラメータが取得され、その調整パラメータが動的に設定されたシミュレーションモデルを用いて、プラント装置の運転状態が予測される。これにより、過去のトラッキングシミュレータ装置の実行結果から予測対象の区間と類似の運転条件で設定された調整パラメータが取得され、その調整パラメータを用いて運転状態が予測されるので、プラント装置の運転状態を正確に予測することができる。その結果、適切なプラントの運転計画、あるいは適切なプラント設備の保守計画等の作成に利用することができる。
【0011】
パラメータ蓄積部は、調整パラメータを外乱に関する運転条件の情報である外乱情報に関連付けて蓄積し、調整パラメータ設定部は、予測対象の外乱情報に類似する外乱情報に関連付けられた調整パラメータを取得する、ことも好適である。
【0012】
かかる構成を採れば、個々のプラントのプロセスごとの外乱に関する運転領域を考慮したシミュレーションを行うことにより、プラント装置の運転状態を正確に予測することができる。
【0013】
また、パラメータ蓄積部は、調整パラメータをプラント装置に対する制御量に関する運転条件の情報である制御量情報に関連付けて蓄積し、調整パラメータ設定部は、予測対象の制御量に類似する制御量情報に関連付けられた調整パラメータを取得する、ことも好適である。
【0014】
かかる構成を採れば、個々のプラントのプロセスごとの制御状態に関する運転領域を考慮したシミュレーションを行うことにより、プラント装置の運転状態を正確に予測することができる。
【0015】
さらに、パラメータ蓄積部は、調整パラメータをプラント装置の運転時間に関する運転条件の情報である運転時間情報に関連付けて蓄積し、調整パラメータ設定部は、予測対象の運転時間に類似する運転時間情報に関連付けられた調整パラメータを取得する、ことも好適である。
【0016】
かかる構成を採れば、個々のプラントのプロセスごとの劣化状態等の時間的要因に関する運転領域を考慮したシミュレーションを行うことにより、プラント装置の運転状態を正確に予測することができる。
【0017】
また、調整パラメータ設定部は、予測対象の運転条件と、運転条件の情報との距離を計算することにより類似を判断する、ことも好適である。
【0018】
この場合、個々のプラントのプロセスごとの運転領域に一致したシミュレーションを行うことができる。
【0019】
さらに、調整パラメータ設定部は、パラメータ蓄積部から調整パラメータを複数取得し、複数の調整パラメータと調整パラメータと関連づけられたプラント装置の運転条件の情報とを基にした機械学習を用いてシミュレーションモデルの調整パラメータを設定する、ことも好適である。
【0020】
この場合も、個々のプラントのプロセスごとの運転領域に一致したシミュレーションを行うことができる。
【0021】
またさらに、予測シミュレータ部の出力を基にプラント装置に対する制御器による制御量を予測する制御量予測部をさらに備え、予測シミュレータ部は、制御量予測部によって予測された制御量を基に、運転状態を予測する、ことも好適である。
【0022】
この場合、実プラントにおいて制御器によって制御量が制御されている場合であっても、その制御器による制御量が予測されることによって、プラント装置の運転状態を正確に予測することができる。
【0023】
さらにまた、調整パラメータ設定部は、制御量予測部によって予測された制御量に類似する運転条件の情報に関連付けられた調整パラメータを取得する、ことも好適である。
【0024】
この場合、個々のプラントのプロセスの制御量に関する運転領域を考慮したシミュレーションを行うことにより、プラント装置の運転状態をより正確に予測することができる。できる。
【0025】
また、予測シミュレータ部は、制御量の予測のためのアルゴリズムあるいはパラメータが動的あるいは静的に変更された制御量予測部の予測結果を基に、運転状態を予測する、ことも好適である。
【0026】
かかる構成を採れば、個々のプラントのプロセスの制御状態を変更しながらシミュレーションを行うことにより、複数の制御状態のプラント装置の運転状態を比較することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、将来のプラント装置の運転状態を正確に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の好適な一実施形態に係るシミュレーションシステムの構成概略図である。
図2図1の各装置を構成するコンピュータ100のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3図1の予測シミュレータ装置7の機能構成を示すブロック図である。
図4図3の調整パラメータ設定部7cによって検索される設定履歴データのデータ分布を示すグラフである。
図5図3の調整パラメータ設定部7cによって検索される設定履歴データのデータ分布を示すグラフである。
図6図1のシミュレーションシステム1による実プロセスのシミュレーションの動作手順を示すフローチャートである。
図7図1のトラッキングシミュレータ装置3の動作手順を示すフローチャートである。
図8図1の予測シミュレータ装置7の動作手順を示すフローチャートである。
図9】従来手法において同期シミュレーション及び予測シミュレーションによって得られた状態値の時間変化を示すグラフである。
図10】従来手法において同期シミュレーション及び予測シミュレーションによって得られた状態値の時間変化を示すグラフである。
図11】従来手法において同期シミュレーション及び予測シミュレーションによって得られた状態値の別の時間変化を示すグラフである。
図12】従来手法において同期シミュレーション及び予測シミュレーションによって得られた状態値の別の時間変化を示すグラフである。
図13】本実施形態において、過去の運転時刻の制御量が検索クエリ点に追加された場合の同期シミュレーション及び予測シミュレーションによって得られた状態値の時間変化を示している。
図14】変形例にかかる予測シミュレータ装置7Aの機能構成を示すブロック図である。
図15】変形例にかかる予測シミュレータ装置7Bの機能構成を示すブロック図である。
図16図15の予測シミュレータ装置7Bの動作手順を示すフローチャートである。
図17】シミュレーションシステム1による実プロセスのシミュレーションの動作手順の変形例を示すフローチャートである。
図18】トラッキングシミュレータ装置3の動作手順の変形例を示すフローチャートである。
図19】本発明の変形例に係るシミュレーションシステムの構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0030】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係るシミュレーションシステムの構成概略図である。同図に示されるシミュレーションシステム1は、本実施形態にかかるシミュレーション装置であり、化学プラント、発電プラント、熱処理プラント等の各種プラント(以下、「実プラント」という。)におけるプラント装置によるプロセス(以下、「実プロセス」という。)に関するシミュレーションを行うコンピュータシステムであり、複数の装置が通信ネットワークを介してデータを送受信することによってシミュレーション処理が実現される。具体的には、シミュレーションシステム1は、プラント装置として、ガスタービン、ボイラー、熱交換器、ガラス融解炉、航空機エンジン等を対象としうるが、シミュレーション対象のプラント装置はこれには限定されない。シミュレーションシステム1は、トラッキングシミュレータ装置3、データベース装置5、及び予測シミュレータ装置7を含んで構成されている。これらのトラッキングシミュレータ装置3、データベース装置5、及び予測シミュレータ装置7は、LAN等の有線あるいは無線の通信ネットワークを介して互いにデータの送受信が可能なように構成されている。なお、これらの装置は、任意の組み合わせで共通の装置によって一体化されていてもよいし、逆に複数の装置によって構成されていてもよい。また、これらの装置は、必ずしも実プラント内に設置されている必要はなく、実プラントから離れた場所に設置されていてもよい。
【0031】
図2は、トラッキングシミュレータ装置3、データベース装置5、及び予測シミュレータ装置7を構成するコンピュータ100のハードウェア構成を示すブロック図である。同図に示すように、コンピュータ100は、物理的には、CPU101、主記憶装置であるRAM102及びROM103、入力キー、タッチセンサ等の入力デバイスである入力装置104、タッチパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ等の出力装置105、データ送受信デバイスである通信モジュール106、半導体メモリ等の補助記憶装置108、などを含むコンピュータシステム(情報処理プロセッサ)として構成されている。各装置の後述する処理機能は、図2に示されるCPU101、RAM102等のハードウェア上に1又は複数の所定のコンピュータソフトウェアを読み込ませることにより、CPU101の制御のもとで入力装置104、出力装置105、及び通信モジュール106を動作させるとともに、RAM102や補助記憶装置108におけるデータの読み出し及び書き込みを行うことで実現される。なお、各装置は、1つのコンピュータ100によって構成されてもよいし、階層的に接続された複数のコンピュータ100によって構成されてもよい。
【0032】
トラッキングシミュレータ装置3は、プラント装置、プラント装置を制御する制御装置(制御用コンピュータ、制御盤などの制御器)等を含む実プラント9と通信ネットワークNWを介してデータの送受信が可能に構成され、プラント装置の運転状態を推定する機能を有する。例えば、トラッキングシミュレータ装置3は、実プロセスの物理・化学的な内部状態、例えば、実プラント9内のある箇所の温度、実プラント9内のある部分の圧力、流量、組成などの時間的に変化する物理量を推定する。
【0033】
このトラッキングシミュレータ装置3は、実プラント9から実プロセスに関する現在の運転条件データ(運転条件に関する情報)及び現在の運転状態データを取得する。取得する運転条件データとしては、プラント装置を制御するための制御量、実プラント9内の外乱に関する外乱情報等が挙げられる。制御量は、実プラント9の制御装置においてユーザから直接あるいは間接に操作されることによって設定された制御量(ヒータ制御による目標温度、冷却水の流量、原料の投入量など)、実プラント9の制御装置によって自動制御された際の制御量等である。外乱情報は、実プラント9内のセンサ装置等によって取得されたユーザによる操作が不可能なプラントの特性に関する情報であり、例えば、気温、気圧、湿度、日射量、発電プラントにおける燃料の特性(比重あるいは発熱量等)等の情報である。取得する運転状態データは、実プラント9の実プロセスの現在の物理・化学的な内部状態を示すデータであり、例えば、実プラント9内のある部分の圧力、流量、組成などの時間的に変化する物理量を示すデータである。
【0034】
トラッキングシミュレータ装置3は、実プラント9から得られた運転条件データおよび運転状態データを基に、トラッキングシミュレーション(同期シミュレーション)(以下、この処理を単に「同期」または「トラッキング」ともいう。)を実行する。なお、トラッキングシミュレータ装置3には、予め、対象プロセスの物理・化学的現象の原理あるいは対象プロセスの実験結果等を基に設計された動的なシミュレーションモデルが実装されている。このシミュレーションモデルは、非線形関数fを用いて次式(1);
【数1】


によって表される動的モデルであり、xは実プロセスの運転状態を示す値であり、uは実プロセスの制御量を示す値であり、dは実プロセスの外乱を示す値であり、pは実プロセスを記述するシミュレーションモデル内の物理的・化学的係数としての調整パラメータである。値x,u,d,pは、それぞれ、1次元の変数あるいは多次元ベクトルである。この調整パラメータpを調整することにより、実プラント9内の設備の性能劣化、性質変化等がシミュレーションモデルによって表現される。例えば、この調整パラメータpの調整により、実プラント9の圧縮機性能の変化を表現することができる。ここで、上記式(1)のシミュレーションモデルは連続時間モデルとして微分方程式で記述されているが、離散時間モデルとして差分方程式で記述されてもよい。
【0035】
詳細には、トラッキングシミュレータ装置3は、実プラント9から得られた運転条件データを非線形関数fの値u及び値dに適用したシミュレーションモデルを用いることにより、運転条件データ及び運転状態データを取得した時点の実プラント9の運転状態を示す量xの推定値xcalを算出する。また、トラッキングシミュレータ装置3にはパラメータ調整部3aが実装されており、パラメータ調整部3aは、シミュレーションモデルを用いたシミュレーションによる推定値xcalが実プラント9からの運転状態データの示す計測値yobsに追従(トラッキング)するように、トラッキングシミュレータ装置3内の調整パラメータpを設定する。すなわち、パラメータ調整部3aは、時間的に連続して実プラント9から運転条件データ及び運転状態データを取得し、運転条件データを反映したシミュレーションモデルを用いて連続して運転状態の値xを推定する。さらに、パラメータ調整部3aは、下記式(2)で表される観測式を用いて推定した運転状態の値xcalの観測値ycalを算出する。この観測式は、実プラント9のセンサ装置等によって運転状態を観測した結果得られる値を表現するための非線形関数である。
y=g(x) …(2)
さらに、パラメータ調整部3aは、シミュレーションモデルの調整パラメータpを調整しながら値xcalの推定を繰り返し、値xcalから算出した観測値ycalが、値xcalを求めるのに用いた運転条件データに対応する運転状態データが示す計測値yobsに一致するように調整パラメータpを調整する。このとき、調整パラメータpの調整手法としては、特許第4789277号公報、特開2009−163507号公報等に記載された出力誤差法を用いた調整パラメータの推定方法、文献「大谷 哲也、“オンライン・シミュレータによるプラント操業革新”、計測と制御、第47巻第11号、p.927−932、2008年11月発行」に記載されたPID調整器を用いた調整パラメータの推定方法、あるいはカルマンフィルタを用いた調整パラメータの推定方法等が採用される。
【0036】
加えて、トラッキングシミュレータ装置3は、運転条件データおよび運転状態データを基にして繰り返しトラッキングシミュレーションを実行することにより設定された調整パラメータpの設定履歴データを、トラッキングシミュレーション時に実プラント9から取得した運転条件データに関連付けてデータベース装置5に蓄積する。具体的には、トラッキングシミュレータ装置3は、繰り返し設定した調整パラメータpと、その調整パラメータpの設定時にトラッキングシミュレーションによって得られた値xcal及びその観測値ycalとを、トラッキングシミュレーションに用いた運転条件データに含まれる制御量(制御量情報)uobs及び外乱値(外乱情報)dobsと、その運転条件データに対応して実プラント9から得られた運転状態の計測値yobsと、トラッキングシミュレーションによってシミュレートする実プラント9の運転時刻の情報(運転時間情報)と、に対応付けてデータベース装置5に蓄積する。この設定履歴データは、データベース装置5のパラメータ蓄積部(パラメータ蓄積手段)5aに、トラッキングシミュレータ装置3によってトラッキングシミュレーションが実行されるタイミングで格納される。さらに、データベース装置5には、データ管理部5bが備えられ、データ管理部5bによって設定履歴データの出力および管理が可能とされる。すなわち、データ管理部5bは、設定履歴データを出力装置105(図2)に出力し、ユーザによる入力装置104(図2)を用いた指示入力に応じて設定履歴データの一部の削除を実行する。このような機能を有することで、ユーザがプロセスの状態を知ることができる。また、ユーザが運転状態の予測に不要と考える設定履歴データを削除することもできる。例えば、計測系の不具合によって明らかに誤った計測値を基に同期した際のデータを削除する、データベースのデータ量が多くなったために過去の類似データの一部を削除してデータベースの容量を確保する、実プラント9への新規設備の追加に伴い過去のデータが役に立たなくなったために過去のデータを削除する、計測値への追随性が悪いデータ(差分|yobs−ycal|が閾値より大きいデータ)を削除する、といったことが可能となる。
【0037】
次に、予測シミュレータ装置7の機能構成について詳細に説明する。図3は、予測シミュレータ装置7の機能構成を示すブロック図である。予測シミュレータ装置7は、機能的な構成要素として、プロセスシミュレータ部(予測シミュレータ部)7a、制御モデル部(制御量予測部)7b、及び調整パラメータ設定部7cを含んで構成されている。
【0038】
プロセスシミュレータ部7aは、ユーザによって入力装置104(図2)を用いて設定された予測対象の実プラント9の運転条件を基にしたシミュレーションモデルを用いて、実プロセスの将来の予測期間の運転状態を予測する処理(予測シミュレーション)を繰り返し実行する。詳細には、プロセスシミュレータ部7aは、ユーザによって設定された実プロセスの外乱を示す値dと、調整パラメータ設定部7cによって設定された調整パラメータpと、制御モデル部7bから出力された制御量uとを用いて、トラッキングシミュレータ装置3と同様にして、予め実装されたシミュレーションモデルを用いて実プロセスの運転状態の値xおよび観測値yを予測する。プロセスシミュレータ部7aが用いるシミュレーションモデルの運転状態の値xの初期値は、トラッキングシミュレータ装置3から事前に予測シミュレータ装置7内に複製されてもよい。そして、プロセスシミュレータ部7aは、予測した値xを基にしたシミュレーション結果を出力装置105(図2)に出力するとともに、値xあるいはその観測値y=g(x)をその都度制御モデル部7bに出力する。
【0039】
制御モデル部7bは、実プラント9内の制御装置を模擬することにより、実プラント9に設定される制御量uを予測する。具体的には、制御モデル部7bには制御装置の動作に関する数理モデルが実装されており、制御モデル部7bは、プロセスシミュレータ部7aから出力された実プロセスの運転状態の値xを基に、数理モデルを用いて制御量uの予測値を算出する。そして、制御モデル部7bは、算出した制御量uの予測値をプロセスシミュレータ部7aにフィードバックする。これにより、プロセスシミュレータ部7aによる現実の制御装置の制御を考慮した運転状態の予測が可能となる。なお、制御モデル部7bに実装される数理モデルは実プラント9内の実際の制御装置と同じ動作を行うモデルであることが好ましいが、実際の制御装置のアルゴリズムあるいはパラメータを変更した場合にどのような運転傾向になるかをシミュレーションで知るために、実際の制御装置と異なるアルゴリズムあるいはパラメータが設定されたモデルであってもよい。具体的には、アルゴリズムあるいはパラメータを少しずつ変更(動的な変更)しながら算出した制御量uの予測値をプロセスシミュレータ部7aにフィードバックしてもよいし、アルゴリズムあるいはパラメータをあるアルゴリズムあるいはあるパラメータに設定(静的な変更)しながら算出した制御量uの予測値をプロセスシミュレータ部7aにフィードバックしてもよい。
【0040】
調整パラメータ設定部7cは、ユーザによって設定された予測対象の実プラント9の予測期間における運転条件、及びユーザによって設定された予測対象の実プラント9の予測期間を基に、データベース装置5から設定履歴データを取得及び参照することにより、プロセスシミュレータ部7aのシミュレーションモデルの調整パラメータpを動的に設定する。この調整パラメータ設定部7cによる調整パラメータの設定は、ユーザによる選択により、以下に説明する第1の設定方法あるいは第2の設定方法のいずれかに切り替えて実行される。
【0041】
まず、第1の設定方法は、次のような方法である。すなわち、調整パラメータ設定部7cは、設定された予測対象の予測期間中の運転時刻における運転条件を基に、外乱の値d及び制御量uと運転時刻tとの組み合わせを検索クエリ点として作成し、この検索クエリ点の最近傍のデータをデータベース装置5のパラメータ蓄積部5aに蓄積された設定履歴データの中から検索及び抽出する。そして、調整パラメータ設定部7cは、抽出した最近傍の設定履歴データに含まれる調整パラメータpを、プロセスシミュレータ部7aのシミュレーションモデルの調整パラメータpとして設定する。図4には、調整パラメータ設定部7cによって検索される設定履歴データのデータ分布を示している。このように、検索クエリ点に含まれる外乱の値dとして外気温が設定され、検索クエリ点に含まれる制御量uとして原料の投入量が設定されている場合には、検索クエリ点に距離的に最も近い外気温及び投入量を持つ設定履歴データPが抽出される。これにより、検索クエリ点に含まれる予測対象の運転条件に類似する運転条件データに関連付けられた調整パラメータpが、プロセスシミュレータ部7aのシミュレーションモデルの調整パラメータにその都度設定される。
【0042】
このとき、調整パラメータ設定部7cは、検索クエリ点Pと設定履歴データPとの距離を評価(判断)する際には、検索クエリ点Pと設定履歴データPとの距離D(P,P)を、下記式(3);
【数2】


により計算することにより評価する。上記式(3)において、値u,d,tは、それぞれ、設定履歴データPに含まれる制御量、外乱値、運転時刻であり、“||x−y||”は、2つのベクトルx,yから計算されるユークリッドノルム、すなわち、差分ベクトルの長さを表し、a,b,cは非負パラメータを示す。つまり、上記式(3)において、第1項は制御量の違いに対応する距離を、第2項は外乱値の違いに対応する距離を、第3項は時間的な距離をそれぞれ表している。このような距離の演算式を用いることで、調整パラメータ設定部7cは、予測対象の運転条件である外乱値及び制御量に類似する運転条件データと、運転時刻が近い運転時間情報とに関連付けられた調整パラメータpを、パラメータ蓄積部5aから取得することができる。運転時刻が近い調整パラメータpを取得するのは、将来の予測対象の運転時刻に近い最新の運転時刻に同期(トラッキング)により設定された調整パラメータを用いるほうが運転状態のシミュレーションの信頼性が向上するためである。
【0043】
また、第2の設定方法は、次のような方法である。上記の第1の設定方法では最近傍の設定履歴データしか参照しないので、調整パラメータの設定値が安定しないことがありうる。例えば、検索クエリ点の位置が少ししか変わらないのに設定された調整パラメータの設定値が大きく変動する場合がある。このようなことが想定される場合は、ユーザによって第2の設定方法が選択される。すなわち、調整パラメータ設定部7cは、検索クエリ点からの距離を基にデータベース装置5のパラメータ蓄積部5aに蓄積された設定履歴データの中から複数のデータを抽出し、抽出した複数のデータに含まれる調整パラメータを基にプロセスシミュレータ部7aのシミュレーションモデルの調整パラメータpを設定する。図5には、調整パラメータ設定部7cによって検索される設定履歴データのデータ分布を示している。このように、検索クエリ点からの距離が所定値以内の外気温及び投入量を持つ複数の設定履歴データの集合Pが抽出される。この場合の距離算出方法は、第1の設定方法と同様である。調整パラメータ設定部7cは、設定履歴データの集合Pから調整パラメータを設定する方法としては、データ集合Pに含まれる調整パラメータの平均値等の重み付け加算値を算出する、データ集合Pに対して教師あり学習による機械学習を適用する、等の方法を用いる。機械学習の方式としては、最小二乗法による線形多重回帰、リッジ回帰、部分最小二乗法(PLS:Partial Least Squares)、主成分回帰(PCR:Principal Components Regression)、非線形の方式であるニューラルネットワーク、ディープラーニング等の方式が用いられうる。
【0044】
なお、運転状態を正確に予測するためには、予測期間での運転条件の変更あるいは外乱条件の変更等による調整パラメータの時間的ダイナミクスを考慮したほうがよい場合がある。このような場合には、第1及び第2の設定方法においては、予測対象の運転時刻における制御量及び外乱値のほか、過去の運転時刻の制御量および外乱値を検索クエリ点に追加してもよい。これにより、調整パラメータの時間的考慮して予測対象の運転時刻の調整パラメータを適切に設定できる。
【0045】
また、第1及び第2の設定方法においては、検索クエリ点として、制御量、外乱値、時間等の連続値以外に、予測対象の実プロセスの種類によっては、指標値、離散値等の離散的な値が検索クエリ点に設定されてもよい。例えば、実プロセスの制御モードが複数ある場合は、その制御モードを運転条件として検索クエリ点に追加してもよい。また、実プロセスが複数の種類の生産物を切り替えて生成できるプラントのプロセスの場合、生産物の種類を示す指標値も運転条件として検索クエリ点に追加してもよい。ただし、このような離散値を検索クエリ点に追加した場合は、検索クエリ点と設定履歴データとの距離の評価が困難となるため、検索クエリ点の離散値の示す運転条件と一致する設定履歴データをパラメータ蓄積部5aから抽出してから、抽出した設定履歴データを基に第1あるいは第2の設定方法を用いて調整パラメータを設定することができる。
【0046】
次に、上述したシミュレーションシステム1に動作手順を説明するとともに、本実施形態にかかるシミュレーション方法について詳述する。図6は、シミュレーションシステム1による実プロセスのシミュレーションの動作手順を示すフローチャート、図7は、トラッキングシミュレータ装置3の動作手順を示すフローチャート、図8は、予測シミュレータ装置7の動作手順を示すフローチャートである。
【0047】
まず、図6を参照して、ユーザによりトラッキングシミュレータ装置3に対して同期する期間が設定される(ステップS01)。それに応じて、トラッキングシミュレータ装置3において同期期間における同期シミュレーションの処理が実行される(ステップS02)。その後、ユーザによって予測シミュレータ装置7による予測シミュレーションの実行が指示された場合(ステップS03;YES)、さらにユーザにより、予測シミュレータ装置7に対して予測対象の実プロセスに関する運転条件および予測期間が設定される(ステップS04)。そして、予測シミュレータ装置7により予測シミュレーションが実行される(ステップS05)。この予測シミュレーションはユーザの指示に応じて繰り返し実行される。このとき、予測シミュレータ装置7を構成する単一のコンピュータ100が予測シミュレーションを繰り返し実行してもよいし、予測シミュレータ装置7を構成する複数のコンピュータ100が個々の運転条件および予測期間で予測シミュレーションを並列に実行してもよい。例えば、あるコンピュータ100が外気温TA度の運転条件で予測シミュレーションを行い、他のコンピュータ100が外気温TB度の運転条件で予測シミュレーションを行ってもよい。
【0048】
図7に移って、トラッキングシミュレータ装置3による同期シミュレーションの処理の手順について説明する。最初に、トラッキングシミュレータ装置3において、実プラント9から現在の運転条件データ及び現在の運転状態データが取得される(ステップS101)。そして、トラッキングシミュレータ装置3において、それらのデータを用いた同期シミュレーションが実行される(ステップS102)。次に、トラッキングシミュレータ装置3により、設定履歴データを含む同期結果のデータが、実プラント9から取得した運転条件データ及び運転時間情報に関連付けてデータベース装置5に記憶される(ステップS103)。さらに、トラッキングシミュレータ装置3により、ユーザによって設定された同期期間の同期シミュレーションが終了したかが判定され(ステップS104)、終了した場合(ステップS104;NO)は同期シミュレーションの処理が終了とされ、終了していない場合(ステップS104;YES)はステップS101に戻って同期シミュレーションの処理が繰り返される。
【0049】
図8に移って、予測シミュレータ装置7による予測シミュレーションの処理の手順について説明する。最初に、ユーザにより、予測シミュレータ装置7に対して予測対象の実プロセスに関する運転条件および予測期間が設定されると(ステップS201)、ユーザにより予測シミュレータ装置7における調整パラメータの設定方法が第1及び第2の設定方法のうちから選択される(ステップS202)。そうすると、予測シミュレータ装置7において、トラッキングシミュレータ装置3からシミュレーションモデルの現在状態量の値xの情報が取得され、予測シミュレータの運転状態の値xの初期値に設定される(ステップS203)。その後、予測シミュレータ装置7により、選択された第1あるいは第2の設定方法を用いて、予測対象の実プラント9の予測期間における運転条件及び予測対象の実プラント9の予測期間を基に、シミュレーションモデルの調整パラメータpが動的に設定される(ステップS204)。設定された調整パラメータpは予測シミュレータ装置7においてユーザに提示される(ステップS205)。
【0050】
その後、予測シミュレータ装置7においてユーザからの予測シミュレーションの実行が指示されたか否かが判定され(ステップS206)、指示されていない場合には(ステップS206;NO)、処理がステップS202に戻されて再度調整パラメータが設定される。一方、予測シミュレーションの実行が指示された場合には(ステップS206;YES)、予測シミュレータ装置7により、設定した調整パラメータを用いて予測シミュレーションが実行され(ステップS207)、予測された運転状態の値に関するシミュレーション結果が出力される(ステップS208)。このような予測シミュレーションの処理によれば、予測シミュレーションのための調整パラメータをユーザが予め知ることができる。
【0051】
以上説明したシミュレーションシステム1及びそれを用いたシミュレーション方法によれば、データベース装置5によってトラッキングシミュレータ装置3において過去に設定されたシミュレーションモデルの調整パラメータの履歴情報が実プラント9のプラント装置の運転条件の情報に関連付けて蓄積され、予測シミュレータ装置7により、予測対象の運転条件に類似する運転条件の情報に関連付けられた調整パラメータが取得され、その調整パラメータが動的に設定されたシミュレーションモデルを用いて、実プラント9の運転状態が予測される。これにより、過去のトラッキングシミュレータ装置3の同期処理の実行結果から予測対象の区間と類似の運転条件で設定された調整パラメータが取得され、その調整パラメータを用いて実プラント9の運転状態が予測されるので、実プラント9の運転状態を正確に予測することができる。その結果、個々のプラントのプロセスごとの外乱に関する運転領域、プロセスごとの制御状態に関する運転領域、及び劣化状態等の時間的要因に関する運転領域を考慮したシミュレーションを行うことにより、プラント装置の運転状態を正確に予測することができ、予測結果を適切なプラントの運転計画、あるいは適切なプラント設備の保守計画等の作成に利用することができる。例えば、ある化学プラントを特定の運転条件で数か月運転した場合にプラントの生産効率はどの程度になるかということが評価可能な予測値を正確に取得することができ、その評価結果に応じてプラントの運転計画、またはプラント装置の保守計画を作成することができる。また、本実施形態では、第1あるいは第2の設定方法を用いてシミュレーションモデルが設定されるので、個々のプラントのプロセスごとの運転領域に一致したシミュレーションを行うことができる。
【0052】
さらに、本実施形態では、予測シミュレータ装置7が制御モデル部7bを備えるので、実プラント9において制御装置によって制御量が動的に制御されている場合であっても、その制御装置による制御量が予測されることによって、実プラント9の運転状態を正確に予測することができる。加えて、本実施形態では、予測シミュレータ装置7において、アルゴリズムあるいはパラメータが動的あるいは静的に変更された制御モデル部7bの予測結果を基に、運転状態が予測されている。このような構成により、実プラント9の実プロセスの制御状態を変更しながらシミュレーションを行うことにより、複数の制御状態の実プロセスの運転状態を比較することができる。
【0053】
従来の特許文献(特許第4789277号)に開示されたプラントの状態予測のためのシミュレーション手法では、同期シミュレーションを実行する装置が保持しているパラメータ等の状態データを、状態予測のための予測シミュレーションを実行するシミュレーション装置にコピーした後に、予測シミュレーションが実行されている。しかし、このような従来手法では、予測対象の予測期間内で運転条件を変更する場合、あるいは、予測対象のプラントにおける気象変化等の外乱条件の変化が生じる場合に、予測精度が低下する傾向がある。図9及び図10には、従来手法において同期シミュレーション及び予測シミュレーションによって得られた状態値の時間変化を示している。図9(a)は、実プラント9の運転時刻T1で同期シミュレーションが停止され、その時刻T1以降の運転時刻を対象に予測シミュレーションが実行された場合に予測された実プラント9内の温度の変化を示し、図9(b)は、このときの同期シミュレーション及び予測シミュレーションにおいて設定された調整パラメータの変化を示している。なお、時刻T1の直前で温度が大きく減少しているが、これはユーザが実プラント9に対してある操作を行ったことが想定されている。また、図10(a)には、実プラント9内で実測された温度の時刻T1以降の変化が実線で示され、図10(b)には、時刻T1以降に同期シミュレーションが実行された場合の調整パラメータの変化が実線で示されている。このように、調整パラメータが時刻T1までは同期シミュレーションによって動的に変更されているため実測値に近い温度が得られるが、時刻T1以降は予測シミュレーションにおいて調整パラメータが固定値に設定されているため、温度の予測値が実測値よりも低くなり誤差が生じてしまう傾向にある。このような誤差を低減するためには、運転条件の変更または外乱値の変動に伴う適切な調整パラメータの設定値を事前に予測する必要がある。
【0054】
また、図11及び図12には、従来手法において同期シミュレーション及び予測シミュレーションによって得られた状態値の別の時間変化を示している。図11(a)は、実プラント9の運転時刻T1で同期シミュレーションが停止され、その時刻T1以降の運転時刻を対象に予測シミュレーションが実行された場合に予測された実プラント9内の温度の変化を示し、図11(b)は、このときの同期シミュレーション及び予測シミュレーションにおいて設定された調整パラメータの変化を示している。なお、時刻T1までに調整パラメータが徐々に減少しているが、これは実プロセスの劣化が徐々に進んでいることが想定されている。また、図12(a)には、実プラント9内で実測された温度の時刻T1以降の変化が実線で示され、図12(b)には、時刻T1以降に同期シミュレーションが実行された場合の調整パラメータの変化が実線で示されている。このような場合も、時刻T1以降は予測シミュレーションにおいて調整パラメータが固定値に設定されているため、温度の予測値が実測値よりも低くなり誤差が生じてしまう傾向にある。このような誤差を低減するためには、実プロセスの劣化に応じて適切な調整パラメータの設定値を事前に予測する必要がある。
【0055】
一方、従来の特許文献(特開2009−15477号公報)に開示されたシミュレーション手法によれば、トラッキングシミュレータ内のパラメータをパラメータ関数式で置換する手法が採用されているが、このような手法によっても、シミュレーションモデルの時間的ダイナミックスを考慮できない。そのため、パラメータの変化が制御量あるいは外乱に対して長い時定数を持っている場合、この手法では定常状態での予測精度は向上できても過渡状態における予測精度は低い。また、この手法では実プロセスの劣化には対応できない。
【0056】
上記の従来手法に対して、本実施形態では、運転条件の変更、外乱値の変動、あるいは実プロセスの劣化に対応して、適切な調整パラメータの設定値を事前に予測し、予測したシミュレーションモデルの調整パラメータを用いて実プロセスの将来の運転状態を予測する。そのため、従来手法に比較してより正確な予測値を取得することができる。
【0057】
また、本実施形態では、予測シミュレータ装置7に実装された第1及び第2の設定方法においては、予測対象の運転時刻における制御量及び外乱値のほか、過去の運転時刻の制御量および外乱値が検索クエリ点に追加可能とされている。図13には、予測シミュレータ装置7において、過去の運転時刻の制御量が検索クエリ点に追加された場合の同期シミュレーション及び予測シミュレーションによって得られた状態値の時間変化を示している。図13(a)は、実プラント9の運転時刻T1で同期シミュレーションが停止され、その後の時刻T2以降の運転時刻を対象に予測シミュレーションが実行された場合に予測された実プラント9内の制御量としてのポンプ流量の変化を示し、図13(b)は、このときの同期シミュレーション及び予測シミュレーションにおいて設定された調整パラメータの変化を示している。このように、運転時刻T2での予測値を取得するためにシミュレーションモデルの調整パラメータp(T2)を設定する際には、時刻T1以前の過去の複数のポンプ流量の値uが検索クエリ点に含められる。そのため、過去の複数の調整パラメータの設定履歴を基にポンプ流量の変化の傾向に対応した調整パラメータの変化が予測されることで、実プロセスに適合した調整パラメータの値が設定される。例えば、図13(b)の点線で示すように、時刻T2以降では、その直前の同期シミュレーションによって予測された調整パラメータの値から調整パラメータの値が徐々に上昇することが予測されている。
【0058】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。
【0059】
例えば、予測シミュレータ装置の構成は変更されてもよい。図14には、変形例にかかる予測シミュレータ装置7Aの機能構成を示す。図14に示す予測シミュレータ装置7Aは、制御モデル部7bを備えない点で、予測シミュレータ装置7と異なる。予測シミュレータ装置7Aにおいては、プロセスシミュレータ部7aは、ユーザによって事前に設定された制御量を基に運転状態の予測処理を実行する。この変形例は、実プラント9内の制御装置の出力、あるいは実プラント9内に設定される制御量が予め確定している場合に適用でき、制御装置を模擬する制御モデルと連結することなく予測シミュレーションを実行できる。
【0060】
また、予測シミュレータ装置の構成は、図15に示す構成に変更されてもよい。図15に示す予測シミュレータ装置7Bは、制御モデル部7bの出力がその都度調整パラメータ設定部7cにも入力される構成を有する点で、予測シミュレータ装置7と異なる。この変形例は、実プラント9内の制御装置の挙動を基に調整パラメータを設定しない場合は将来のプロセスの状態が正しく予測できない場合に適用される。例えば、実プロセスが劣化する傾向を有しており、その劣化に応じてある被制御変数が変化して制御装置の出力が変動する傾向がある場合は、本変形例の構成を適用する必要がある。また、予測シミュレータ装置7Bにおいては、調整パラメータ設定部7cが予測シミュレーションの処理ループに含まれているため、実際に予測シミュレーションを実行しないと予測期間で用いる調整パラメータを知得することはできない。そのため、設定した調整パラメータをユーザに提示することなく予測シミュレーションが実行される。
【0061】
図16には、予測シミュレータ装置7Bによる予測シミュレーションの処理の手順を示す。最初に、ユーザにより、予測シミュレータ装置7Bに対して予測対象の実プロセスに関する運転条件および予測期間が設定されると(ステップS301)、ユーザにより予測シミュレータ装置7Bにおける調整パラメータの設定方法が第1及び第2の設定方法のうちから選択される(ステップS302)。そうすると、予測シミュレータ装置7Bにおいて、トラッキングシミュレータ装置3からシミュレーションモデルの現在状態量の値xの情報が取得され、予測シミュレータの運転状態の値xの初期値に設定される(ステップS303)。さらに、予測シミュレータ装置7Bにより、予測期間のすべての運転時刻における予測シミュレーションの処理が終了したかが判定される(ステップS304)。すべての運転時刻の処理が終了した場合には(ステップ304;YES)、予測期間内のすべての運転時刻に関して予測された運転状態の値に関するシミュレーション結果が出力される(ステップS308)。
【0062】
一方、すべての運転時刻の処理が終了していない場合には(ステップ304;NO)、予測シミュレータ装置7により、選択された第1あるいは第2の設定方法を用いて、予測対象の実プラント9の予測期間における運転条件及び予測対象の実プラント9の運転時刻を基に、シミュレーションモデルの調整パラメータpが動的に設定される(ステップS305)。その後、予測シミュレータ装置7Bにより、設定した調整パラメータを用いて予測シミュレーションが実行され(ステップS306)、予測対象の運転時刻が次の時間ステップに進められた後に(ステップS307)、処理がステップS304に戻される。
【0063】
また、図6及び図7に示した動作手順は、図17及び図18に示すような手順に変更されてもよい。
【0064】
図17に示す手順においては、まず、シミュレーションシステム1の動作が開始されると、一定期間待機されることにより実プロセスに関する一定期間分の運転条件データ及び運転状態データが実プラント9内に蓄積される(S401)。その後、トラッキングシミュレータ装置3において実プラント9から取得される運転条件データ及び運転状態データを基にした同期シミュレーションの処理が実行される(ステップS402)。続いて、予測シミュレータ装置7により、予測シミュレーションが実行される(ステップS403)。この予測シミュレーションによるシミュレーション結果を基に、予測シミュレータ装置7によりプロセスの運転状態の異常の有無が判定される(ステップS404)。その結果、異常ありと判定された場合には(ステップS404;YES)、予測シミュレータ装置7によって警告が出力された後に(ステップS405)、処理がステップS401に戻される。一方、異常なしと判定された場合には(ステップS404;NO)、予測シミュレータ装置7によって処理がステップS401に戻される。この変形例の動作手順によれば、定期的に蓄積されるプロセスの運転データを用いて同期シミュレーションを実行した後、同期シミュレーションの結果を用いて所定期間先(将来)のプラントの運転傾向を把握することができる。このとき、予測値に異常値があれば(例えば、ガスタービンにおいてNOx排出量が閾値を超えている場合など)、ユーザに自動で警告メールを送信する、といった動作が可能となる。この場合の予測シミュレーションの基となる運転条件は複数通り設定されてもよい。
【0065】
図18には、図17のステップS402における同期シミュレーションの動作手順を示している。最初に、トラッキングシミュレータ装置3において、実プラント9において蓄積された運転条件データ及び運転状態データが取得される(ステップS501)。そして、トラッキングシミュレータ装置3において、それらの蓄積データを用いた同期シミュレーションが連続して複数回実行される(ステップS502)。次に、トラッキングシミュレータ装置3により、連続した同期シミュレーション処理の結果取得された設定履歴データを含む同期結果のデータが、同期結果に対応する運転条件データ及び運転時間情報に関連付けてデータベース装置5に記憶される(ステップS503)。
【0066】
上述した実施形態において、予測シミュレーションで用いられるシミュレーションモデルは、同期シミュレーションで用いられるシミュレーションモデルと同じ関数によって表される動的モデルを用いている。一方で、同期シミュレーションが時間的ダイナミクスを考慮した動的モデルであっても、予測シミュレーションの目的があるプロセスの外乱または劣化に対する定常的な状態の予測である場合には、下記式(4)で示すような静的モデルの式で表されるシミュレーションモデルが用いられてもよい。
【数3】


例えば、予測期間が仮に1年間である場合、1年分の動的モデルを用いた予測シミュレーションの計算コストは大きい。このような場合は、静的モデルを用いて1か月ごとの1年間の定常的な運転状態を求めることが好ましい。例えば、現在の実プラント9の運転時刻からT秒後の制御量u、外乱値d、及び調整パラメータpを定めることにより、現在の運転時刻からT秒後のプロセスの運転状態値xが求められる。このような予測シミュレーションを、T=1か月、2か月、…、12か月と各時点を対象に繰り返し実行すれば、少ない計算コストで運転状態の長期のトレンド予測が可能となる。
【0067】
また、上述した実施形態においては、予測シミュレーションは同期シミュレーションと並列に逐次実行されてもよいし、ユーザによって設定された任意の時刻において実行されてもよい。
【0068】
上述した実施形態において、トラッキングシミュレータ装置3及び予測シミュレータ装置7は、必ずしも実プラント9と同じサイトに設置されている必要はない。例えば、実プラント9のデータをインターネット回線、LAN等の通信ネットワークを介して送受信可能であればトラッキングシミュレータ装置3及び予測シミュレータ装置7は別のサイトに設置されていてもよい。
【0069】
また、同期シミュレーションの処理は実プロセスと同期してリアルタイムで実行されてもよいし、実プラント9で取得・蓄積された運転条件データ及び運転状態データを用いてバッチ処理で実行されてもよい。
【0070】
上述した実施形態においては、予測対象の運転条件である外乱の値がユーザによって設定されていたが、外部のサーバ装置を参照することによって取得されてもよい。図19には、本発明の変形例にかかるシミュレーションシステム1Aの構成概略を示している。シミュレーションシステム1Aにおいては、予測シミュレータ装置7が、インターネット回線等の通信ネットワークNW1を介して、外部サーバ装置11から、予測対象の運転条件である外乱値として、例えば、将来の温度予測値、気圧予測値等の気象データを取得可能に構成されている。
【0071】
また、気象条件に関する外乱値は実プラント9内で実測されない場合もありうる。このような場合、実プラント9から取得する外乱値の計測値に代えて、気象機関などの公的機関から得られたデータ、あるいは、実プラント9の近接地点で測定された記録データで代用してもよい。また、実プラント9から得られる計測値には高周波ノイズ等のノイズが混入している場合も想定される。このような場合、生の計測値をそのままトラッキングシミュレータ装置に入力すると同期結果が振動することがある。そこで、実プラント9からの計測値を対象にローパスフィルタ等のノイズ除去手段によってノイズを除去した後に、ノイズが除去された計測値を用いて同期シミュレーションを動作させるようにしてもよい。
【0072】
予測シミュレータ装置7に実装される第1及び第2の設定方法においては、検索クエリ点に、実プラント9の運転状態を示す量xの推定値xcal等の他の値が追加されてもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,1A シミュレーションシステム(シミュレーション装置)
3 トラッキングシミュレータ装置
5 データベース装置
5a パラメータ蓄積部
7,7A,7B 予測シミュレータ装置
7a プロセスシミュレータ部(予測シミュレータ部)
7b 制御モデル部(制御量予測部)
7c 調整パラメータ設定部
9 実プラント
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