(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962044
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】モータ制御装置、画像形成装置及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H02P 29/00 20160101AFI20211025BHJP
H02P 6/08 20160101ALI20211025BHJP
H02P 6/16 20160101ALI20211025BHJP
【FI】
H02P29/00
H02P6/08
H02P6/16
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-141651(P2017-141651)
(22)【出願日】2017年7月21日
(65)【公開番号】特開2019-22406(P2019-22406A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2020年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東海林 元広
(72)【発明者】
【氏名】高野 幸寿
(72)【発明者】
【氏名】星野 豊彦
【審査官】
池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−277887(JP,A)
【文献】
特開2007−097365(JP,A)
【文献】
特開2009−131022(JP,A)
【文献】
特開2006−163533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 29/00
H02P 6/08
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転に対する速度制御をしつつ前記モータの回転に対する位置制御を行う第1の制御と、前記モータの回転に対する位置制御を行わずに前記モータの回転に対する速度制御のみを行う第2の制御とを切り替える切替部であって、前記モータの回転の加速時又は減速時には、前記モータが一定速度で回転している場合に比較して、前記第2の制御に切り替える切替部を備え、
前記切替部は、前記モータの回転における加速度又は減速度が閾値を超えた場合には、前記第2の制御に切り替え、
前記閾値は、前記モータの回転の加速開始からの時間に応じて変動する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項2】
モータの回転に対する速度制御をしつつ前記モータの回転に対する位置制御を行う第1の制御と、前記モータの回転に対する位置制御を行わずに前記モータの回転に対する速度制御のみを行う第2の制御とを切り替える切替部であって、前記モータの回転の加速時又は減速時には、前記モータが一定速度で回転している場合に比較して、前記第2の制御に切り替える切替部を備え、
前記切替部は、前記モータの回転における加速度又は減速度が閾値を超えた場合には、前記第2の制御に切り替え、
前記加速度又は前記減速度が閾値を超えた場合は、前記モータの回転に対する位置制御時の回転位置のずれがエラー処理の判断基準となる値を超えた場合であっても、当該エラー処理を行わない
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項3】
モータの回転に対する速度制御をしつつ前記モータの回転に対する位置制御を行う第1の制御と、前記モータの回転に対する位置制御を行わずに前記モータの回転に対する速度制御のみを行う第2の制御とを切り替える切替部であって、前記モータの回転の加速時又は減速時には、前記モータが一定速度で回転している場合に比較して、前記第2の制御に切り替える切替部を備え、
前記モータの回転位置を検出した結果に応じてサーボ制御を行うときに前記モータに指示する速度がパルス周期によって与えられる場合に、前記切替部は、前記モータの回転の加速開始時において連続する少なくとも2パルスの周期から加速度を特定する
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項4】
モータの回転に対する速度制御をしつつ前記モータの回転に対する位置制御を行う第1の制御と、前記モータの回転に対する位置制御を行わずに前記モータの回転に対する速度制御のみを行う第2の制御とを切り替える切替部であって、前記モータの回転の加速時又は減速時には、前記モータが一定速度で回転している場合に比較して、前記第2の制御に切り替える切替部を備え、
前記切替部は、前記モータが停止状態から回転しはじめる際と、前記モータが回転状態から停止する際には、前記モータが回転中に加速又は減速する場合に比較して、前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とするモータ制御装置。
【請求項5】
前記切替部は、前記モータが停止状態から回転しはじめる際の連続する少なくとも2パルスの周期の加速度が大きい場合は、前記周期の加速度が小さい場合に比較して、前記第2の制御に切り替える
ことを特徴とする請求項4記載のモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、
モータを含む駆動機構と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、
モータを含む駆動機構と
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置、画像形成装置及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ制御技術として速度フィードバック運転と速度オープンループ運転とを切り替える仕組みが開示されており、具体的には、モータが高速又高負荷の状態においては速度オープンループで制御することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−219681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、1つの機器において、モータの回転に対する位置制御及び速度制御の併用する場合がある。このような場合にモータの回転速度を急激に速く又は遅くしようとすると、速度制御に比べて位置制御が困難となることから、より精緻な位置制御のための専用ハードウェア又はソフトウェアを実装しなければならない。
【0005】
本発明は、モータの回転に対して位置制御及び速度制御の双方を行うことが可能な機器において、モータの回転速度を急激に変化させる場合であっても位置制御を行い得るような構成に比べて、より簡易な構成でモータ制御を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係るモータ制御装置は、モータの回転に対する速度制御をしつつ前記モータの回転に対する位置制御を行う第1の制御と、前記モータの回転に対する位置制御を行わずに前記モータの回転に対する速度制御のみを行う第2の制御とを切り替える切替部であって、前記モータの回転の加速時又は減速時には、前記モータが一定速度で回転している場合に比較して、前記第2の制御に切り替える切替部を備え、前記切替部は、前記モータの回転における加速度又は減速度が閾値を超えた場合には、前記第2の制御に切り替え、前記閾値は、前記モータの回転の加速開始からの時間に応じて変動する。
【0009】
請求項2に係るモータ制御装置は、モータの回転に対する速度制御をしつつ前記モータの回転に対する位置制御を行う第1の制御と、前記モータの回転に対する位置制御を行わずに前記モータの回転に対する速度制御のみを行う第2の制御とを切り替える切替部であって、前記モータの回転の加速時又は減速時には、前記モータが一定速度で回転している場合に比較して、前記第2の制御に切り替える切替部を備え、前記切替部は、前記モータの回転における加速度又は減速度が閾値を超えた場合には、前記第2の制御に切り替え、前記加速度又は前記減速度が閾値を超えた場合は、前記モータの回転に対する位置制御時の回転位置のずれがエラー処理の判断基準となる値を超えた場合であっても、当該エラー処理を行わない。
【0011】
請求項
3に係るモータ制御装置は、モータの回転に対する速度制御をしつつ前記モータの回転に対する位置制御を行う第1の制御と、前記モータの回転に対する位置制御を行わずに前記モータの回転に対する速度制御のみを行う第2の制御とを切り替える切替部であって、前記モータの回転の加速時又は減速時には、前記モータが一定速度で回転している場合に比較して、前記第2の制御に切り替える切替部を備え、前記モータの回転位置を検出した結果に応じてサーボ制御を行うときに前記モータに指示する速度がパルス周期によって与えられる場合に、前記切替部は、前記モータの回転の加速開始時において連続する少なくとも2パルスの周期から加速度を特定する。
【0012】
請求項4に係るモータ制御装置は、モータの回転に対する速度制御をしつつ前記モータの回転に対する位置制御を行う第1の制御と、前記モータの回転に対する位置制御を行わずに前記モータの回転に対する速度制御のみを行う第2の制御とを切り替える切替部であって、前記モータの回転の加速時又は減速時には、前記モータが一定速度で回転し ている場合に比較して、前記第2の制御に切り替える切替部を備え、前記切替部は、前記モータが停止状態から回転しはじめる際と、前記モータが回転状態から停止する際には、前記モータが回転中に加速又は減速する場合に比較して、前記第2の制御に切り替える。
【0013】
請求項
5に係るモータ制御装置は、請求項5に記載の構成において、前記切替部は、前記モータが停止状態から回転しはじめる際の連続する少なくとも2パルスの周期の加速度が大きい場合は、前記周期の加速度が小さい場合に比較して、前記第2の制御に切り替える。
【0014】
請求項
6に係る画像形成装置は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、モータを含む駆動機構とを備える。
【0015】
請求項
7に係る電子機器は、請求項1〜75のいずれか1項に記載のモータ制御装置と、モータを含む駆動機構とを備える。
【発明の効果】
【0016】
請求項1,
6,7に係る発明によれば、モータの回転に対して位置制御及び速度制御の双方を行うことが可能な機器において、モータの回転速度を急激に変化させる場合であっても位置制御を行い得るような構成に比べて、より簡易な構成でモータ制御が実現され、モータの回転の加速開始からの時間に応じた閾値を用いることができる。
【0019】
請求項
2に係る発明によれば、
モータの回転に対して位置制御及び速度制御の双方を行うことが可能な機器において、モータの回転速度を急激に変化させる場合であっても位置制御を行い得るような構成に比べて、より簡易な構成でモータ制御が実現され、位置制御を行わないときにエラー処理を行わなくて済む。
【0021】
請求項
3に係る発明によれば、モータの回転に対して位置制御及び速度制御の双方を行うことが可能な機器において、モータの回転速度を急激に変化させる場合であっても位置制御を行い得るような構成に比べて、より簡易な構成でモータ制御が実現され、モータの回転位置を検出した結果に応じてサーボ制御を行うときにモータに指示する速度がパルス周期によって与えられるものである場合に、そのパルスの周期によってモータの回転における加速度が特定される。
【0022】
請求項
4に係る発明によれば、モータの回転に対して位置制御及び速度制御の双方を行うことが可能な機器において、モータの回転速度を急激に変化させる場合であっても位置制御を行い得るような構成に比べて、より簡易な構成でモータ制御が実現され、モータが停止状態から回転しはじめる際と、モータが回転状態から停止する際に、第2の制御に切り替えられる。
【0023】
請求項
5に係る発明によれば、モータの回転に対して位置制御及び速度制御の双方を行うことが可能な機器において、モータの回転速度を急激に変化させる場合であっても位置制御を行い得るような構成に比べて、より簡易な構成でモータ制御が実現され、モータが停止状態から回転しはじめる際の連続する少なくともパルスの周期によってモータの回転における加速度が特定される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係る電子機器の構成の一例を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係る駆動部の構成の一例を示す図である。
【
図3A】第1実施形態における各信号の状態を示すタイミングチャートである。
【
図3B】第1実施形態における各信号の状態を示すタイミングチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る駆動部におけるモータ駆動系の構成の一例を示す図である。
【
図5A】第2実施形態における各信号の状態を示すタイミングチャートである。
【
図5B】第2実施形態における各信号の状態を示すタイミングチャートである。
【
図6】第3実施形態に係る駆動部におけるモータ駆動系の構成の一例を示す図である。
【
図7A】第3実施形態における各信号の状態を示すタイミングチャートである。
【
図7B】第3実施形態における各信号の状態を示すタイミングチャートである。
【
図8】第4実施形態に係る駆動部におけるモータ駆動系の構成の一例を示す図である。
【
図9A】第4実施形態における各信号の状態を示すタイミングチャートである。
【
図9B】第4実施形態における各信号の状態を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の各実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電子機器1のハードウェア構成を示す図である。電子機器1は、例えばプリント、コピー、スキャン及びファクシミリといった複数の機能を備える画像形成装置であり、本発明に係る電子機器の一例である。電子機器1は、制御部11、通信部12、記憶部13、UI(User Interface)部14、及び画像形成部15を備える。
【0026】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶装置とを備えており、電子機器1の全体的な制御を行う。ROMには、ハードウェアやOS(Operating System)の起動の手順を記述したファームウェアが記憶されている。RAMは、CPUが演算を実行する際のデータの記憶に用いられる。通信部12は、外部の通信装置との間で通信を行うための通信I/F(Interface)を備える。通信部12は、LAN(Local Area Network)などの通信回線に接続される。記憶部13は、例えば半導体メモリやハードディスク記憶装置などを備え、OSのほか、各種の機能を実現するためのソフトウェア(プログラム)を記憶している。UI部14は、表示部と操作部とを含む。表示部は例えば液晶表示装置を備え、ユーザが電子機器1を操作するための表示画面を表示する。操作部は、例えば表示部の表示画面を覆うように設けられたタッチパネルや、表示画面に隣接する位置に設けられた複数のキーなどを備え、ユーザが行った操作を受け付けて、その操作に応じた信号を制御部11に出力する。制御部11は、この操作の内容に従って電子機器1を制御する。
【0027】
画像形成部15は、例えば電子写真方式やインクジェット方式などの画像形成方式によって、記録媒体である用紙に画像を形成する。画像形成部15は、例えば記録媒体の搬送系や画像形成エンジンの駆動系に用いられるモータを含む駆動機構と、その駆動を制御するモータ制御装置とを備える駆動部16を備えている。
【0028】
図2は、第1実施形態に係る駆動部16の構成を例示した図である。
図2に示された構成が本発明の切替部の一例を構成する。駆動部16は、モータ101と、モータ101を駆動するドライバ102と、モータ101の回転状態に応じたパルスを発生するエンコーダ103と、モータ101の回転における加速度又は減速度が閾値を超えるか否かを判定する判定部104と、モータ101の回転に対する位置制御を行う位置制御部105と、モータ101の回転に対する速度制御を行う速度制御部106とを少なくとも含む。この駆動部16においては、モータ101の回転位置を検出した結果に応じてサーボ制御が行われるようになっている。なお、モータ101は、例えばブラシレスモータであるが、本発明におけるモータはどのようなものであってもよく、その種類は問わない。
図2に示すモータ101以外の構成、つまりドライバ102、エンコーダ103、判定部104、位置制御部105及び速度制御部106によって、本発明に係るモータ制御装置の一例が構成される。
【0029】
図2において、モータON信号がロー(L)レベルからハイ(H)レベルとなり、モータ101の回転速度が指令パルス信号によって与えられることで、位置制御部105及び速度制御部106によるモータ101の制御が開始される。位置制御部105は、モータ101の回転速度を指定する指令パルス信号、エンコーダ103から出力されるA相信号、A相信号よりも1/4周期ずれてエンコーダ103から出力されるB相信号、及び、これらA相信号及びB相信号に基づいて判定されるCW/CCW(モータの回転方向)信号に応じて、モータ101の回転速度を補正するための速度補正信号を速度制御部106に出力することにより、モータ101の位置制御を行う。速度制御部106は、指令パルス信号、A相信号、B相信号、CW/CCW信号、及び位置制御部105から入力される速度補正信号に応じて、モータ101の回転方向を指定する駆動(回転)方向信号及びモータ101に電力を供給するためのPWM(Pulse Width Modulation)信号をドライバ102に出力することで、モータ101の速度制御を行う。
【0030】
判定部104は、指令パルス信号に基づいてモータ101の回転速度における加速度及び減速度を求め、その加速度又は減速度が、判定部104により記憶されている閾値を超えるか否かを判定する。ここで、モータ101の回転速度における加速度に対する閾値は正の値であり、加速度が閾値を超えるとは加速度の絶対値が閾値の絶対値よりも大きいことを意味する。また、モータ101の回転速度における減速度に対する閾値は負の値であり、減速度が閾値を超えるとは減速度の絶対値が閾値の絶対値よりも大きいことを意味する。
【0031】
図3Aに示すように、モータON信号がローレベルからハイレベルになり、モータ101が停止状態から回転し始めた後に、加速度又は減速度が閾値を超えない場合には、判定部104からローレベルの位置制御イネーブル信号が位置制御部105に出力される。位置制御部105は、ローレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、モータ101に対する位置制御を行う。なぜなら、加速度又は減速度が閾値を超えない、比較的緩やかな速度変化に対して追随するような位置制御は十分に可能だからである。このように、モータ101の回転の速度変化が一定の範囲に収まるような、モータ101の回転が一定速度の場合には、モータ101の回転に対する位置制御とともに速度制御を行う第1の制御が実施される。この第1の制御は、モータ101が回転状態から停止する際にも実施されることになる。
【0032】
一方、
図3Bに示すように、モータON信号がローレベルからハイレベルになり、モータ101が停止状態から回転し始めた後に、加速度又は減速度が閾値を超えた場合には、少なくともモータ101の回転速度がいったん0になるまでは、判定部104からハイレベルの位置制御イネーブル信号が位置制御部105に出力される。位置制御部105は、ハイレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、モータ101に対する位置制御を行わない。この場合、位置制御部105から速度制御部106に対して速度補正信号が出力されないことになり、速度制御部106による速度制御のみでモータ101の回転が制御される。このように、モータ101の回転の加速時又は減速時には、モータ101の回転に対する位置制御を行わずに速度制御のみを行う第2の制御が実施される。
【0033】
モータ101の回転速度の急激な変化に追随して位置制御を行うためには、専用のハードウェア又はソフトウェアが必要となる。第1実施形態では、このような場合には、意図的に位置制御を行わず、速度制御のみでモータ101の回転を制御するようにしている。このため、上記のような専用のハードウェア又はソフトウェアを実装して位置制御及び速度制御を同時に行う場合に比べて、精緻な制御はできないが或る程度の正確なモータ制御は可能となる。
【0034】
第1実施形態によれば、モータ101に対する指令速度の加速度又は減速度が閾値を超えるような急激な速度変化があった場合、位置制御を行なわずに速度制御のみをおこなうように切り替えられる。つまり、モータ101が停止状態から回転しはじめる際と、モータ101が回転状態から停止する際には、モータ101が回転中に加速又は減速する場合に比較して、第2の制御に切り替えられることになる。これにより、精緻な位置制御のためのハードウェア及びソフトウェアを実装する必要がなく、簡易な構成となる。
【0035】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態の構成は第1実施形態と共通であり、信号の種類及び動作が異なる。
図4は、第2実施形態に係る駆動部16の構成を例示する図である。
図4において
図2と同じ構成には同一の符号を付している。
図4に示す駆動部16においては、モータ101の回転位置を検出した結果に応じてサーボ制御が行われるが、モータ101に指示する速度が指令パルス信号のパルス周期によって与えられる点が第1実施形態と異なる。
【0036】
判定部104は、モータON信号がローレベルからハイレベルとなった後に、モータ101の回転の加速開始時において連続する少なくとも2パルスの周期からモータ101の回転速度の加速度を特定する。そして、判定部104は、特定した加速度が、判定部104により記憶されている閾値を超えるか否かを判定する。
【0037】
図5Aに示すように、モータON信号がローレベルからハイレベルになった後に、パルス周期から特定される加速度が閾値を超えない場合には、判定部104からローレベルの位置制御イネーブル信号が位置制御部105に出力される。位置制御部105は、ローレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、モータ101に対する位置制御を行う。
【0038】
一方、
図5Bに示すように、モータON信号がローレベルからハイレベルになった後に、パルス周期から特定される加速度が閾値を超えた場合には、少なくともモータ101の回転速度がいったん0になるまでは、判定部104からハイレベルの位置制御イネーブル信号が位置制御部105に出力される。位置制御部105は、ハイレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、モータ101に対する位置制御を行わない。この場合、位置制御部105から速度制御部106に対して速度補正信号が出力されないことになり、速度制御部106による速度制御のみでモータ101の回転が制御される。なお、上記は加速度に注目した制御の例であったが、減速度についても同様の考え方でモータ101の回転に対する制御が行われる。
【0039】
第2実施形態によれば、モータ101に対する指令速度の加速度又は減速度が閾値を超えるような急激な速度変化があった場合、位置制御を行なわずに速度制御のみに切り替えられる。これにより、精緻な位置制御のためのハードウェア及びソフトウェアを実装する必要がなく、簡易な構成となる。
【0040】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態の構成は第1実施形態又は第2実施形態と共通であり、その動作が異なる。
図6は、第3実施形態に係る駆動部16の構成を例示する図である。
図6において
図2,4と同じ構成には同一の符号を付している。
図6に示す駆動部16においては、判定部104により記憶される閾値がモータ101の回転の加速開始からの時間に応じて変動する点で、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。このため、判定部104には、モータ101に対して指令される速度が0を超えてからの時間経過に応じて変動する閾値の関数が記憶されている。
【0041】
判定部104は、モータON信号がローレベルからハイレベルとなった後に、モータ101に対して指令される速度を特定し、その速度がモータ101の回転速度の加速開始からの経過時間に応じた閾値を超えるか否かを判定する。
【0042】
図7Aに示すように、モータ101に対して指令される速度が、モータ101の回転速度の加速開始からの経過時間に応じた閾値(図中の点線部分)を超えない場合には、判定部104からローレベルの位置制御イネーブル信号が位置制御部105に出力される。位置制御部105は、ローレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、モータ101に対する位置制御を行う。
【0043】
一方、
図7Bに示すように、モータ101に対して指令される速度が、モータ101の回転速度の加速開始からの経過時間に応じた閾値(図中の点線部分)を超えた場合には、少なくともモータ101の回転速度がいったん0になるまでは、判定部104からハイレベルの位置制御イネーブル信号が位置制御部105に出力される。位置制御部105は、ハイレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、モータ101に対する位置制御を行わない。この場合、位置制御部105から速度制御部106に対して速度補正信号が出力されないことになり、速度制御部106による速度制御のみでモータ101の回転が制御される。なお、上記は加速度に注目した制御の例であったが、減速度についても同様の考え方でモータ101の回転に対する制御が行われる。
【0044】
第3実施形態によれば、モータ101に対する指令速度の加速度又は減速度が閾値を超えるような急激な速度変化があった場合、位置制御を行なわずに速度制御のみに切り替えられる。これにより、精緻な位置制御のためのハードウェア及びソフトウェアを実装する必要がなく、簡易な構成となる。さらに、加速開始直後の急激な速度変化に対しては位置制御を行なわずに速度制御のみに切り替えられるが、加速開始から十分な時間が経過したときに同じような急激な速度変化(ただしそのタイミングでの閾値を超えないような速度変化)があった場合には、位置制御及び速度制御が併用される。
【0045】
<第4実施形態>
本発明の第4実施形態の構成は第1実施形態、第2実施形態又は第3実施形態と共通であり、その動作が異なる。
図8は、第4実施形態に係る駆動部16の構成を例示する図である。
図8において
図2,4,6と同じ構成には同一の符号を付している。
図8に示す駆動部16においては、 判定部104によりモータ1−1の回転速度の加速度又は減速度が閾値を超えたと判定された場合は、モータ101の回転に対する位置制御時の回転位置のずれがエラー処理の判断基準となる値を超えた場合であっても、当該エラー処理を行わない。ここでいうエラー処理とは、例えばモータ101に対する制御の中止又はエラーメッセージの出力等の、エラーであることがユーザに分かるような処理のことである。
【0046】
図9Aに示すように、モータON信号がローレベルからハイレベルになった後に、モータ101の加速度又は減速度が閾値を超えない場合には、判定部104からローレベルの位置制御イネーブル信号が位置制御部105に出力される。位置制御部105は、ローレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、エンコーダ103からの出力に応じて特定される位置ずれが、エラー処理の判断基準となる値(図中の点線)を超えない場合にはエラー処理を行わないが、エラー処理の判断基準となる値(図中の点線)を超えた場合にはエラー処理を行う。
【0047】
一方、
図9Bに示すように、モータON信号がローレベルからハイレベルになった後に、モータ101の加速度又は減速度が閾値を超えた場合には、少なくともモータ101の回転速度がいったん0になるまでは、判定部104からハイレベルの位置制御イネーブル信号が位置制御部105に出力される。位置制御部105は、ハイレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、モータ101に対する位置制御を行わない。位置制御部105は、ハイレベルの位置制御イネーブル信号が供給されている期間は、エンコーダ103からの出力に応じて特定される位置ずれが、エラー処理の判断基準となる値(図中の点線)を超えない場合であっても超えた場合であってもエラー処理を行わない。
【0048】
第4実施形態によれば、モータ101に対する指令速度の加速度又は減速度が閾値を超えるような急激な速度変化があった場合、位置制御を行なわずに速度制御のみの制御に切り替えられる。これにより、精緻な位置制御のためのハードウェア及びソフトウェアを実装する必要がなく、簡易な構成となる。さらに、位置制御を行わないときには位置ずれに応じたエラー処理は不要であるから、これを行わないようにすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…電子機器、11…制御部、12…通信部、13…記憶部、14…UI部、15…画像形成部、16…駆動部、101…モータ、102…ドライバ、103…エンコーダ、104…判定部、105…位置制御部、106…速度制御部。