特許第6962046号(P6962046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962046
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20211025BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20211025BHJP
   C08L 23/22 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08L25/08
   C08L23/16
   C08L7/00
   C08L23/22
   C08K3/04
   C08K3/36
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-145128(P2017-145128)
(22)【出願日】2017年7月27日
(65)【公開番号】特開2019-26685(P2019-26685A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】芦浦 誠
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−253051(JP,A)
【文献】 特開2004−59833(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/081026(WO,A1)
【文献】 特開2006−213807(JP,A)
【文献】 特開2006−213809(JP,A)
【文献】 特開2017−145342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水添率が70%以上である水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を20〜75質量%、全二重結合量が60質量%未満であるゴム系重合体またはそのブレンドを25〜80質量%含有するゴム成分からなり、前記全二重結合量が60質量%未満であるゴム系重合体が、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エポキシ化天然ゴム、または臭素化ブチルゴムであることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分100質量部に対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを20〜200質量部配合してなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体およびゴム系重合体を含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは操縦安定性、低燃費性および耐久性に優れることが求められ、タイヤを構成するゴム組成物には、高硬度、低発熱性並びに引張り破断強度および引張り破断伸びに優れることが求められる。タイヤ用ゴム組成物の引張り破断強度および引張り破断伸びを高くするため、天然ゴムを配合することが知られている。しかし、天然ゴムは、酸素、オゾンおよび熱などにより劣化しやすいという課題がある。
【0003】
特許文献1および2は、水添共役ジエン重合体からなるゴム組成物が、水添しない共役ジエン重合体からなるゴム組成物に比べ、引張り破断強度および引張り破断伸びを高くすることを記載する。しかし、これらの水添共役ジエン重合体は、水添しない共役ジエン重合体や他のジエン系ゴムと共に配合したゴム組成物にすると、引張り破断強度および引張り破断伸びに期待された改良効果が得られなかった。すなわち、水添共役ジエン重合体、並びに水添しない共役ジエン重合体や他のジエン系ゴムを配合したゴム組成物の引張り破断強度および引張り破断伸びにおいて、加成則にも満たない物性しか得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2014/126184号
【特許文献2】国際公開WO2014/133097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体およびゴム系重合体を含み、機械的特性を従来レベル以上に改良したタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、水添率が70%以上である水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を20〜75質量%、全二重結合量が60質量%未満であるゴム系重合体またはそのブレンドを25〜80質量%含有するゴム成分からなり、前記全二重結合量が60質量%未満であるゴム系重合体が、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、エポキシ化天然ゴム、または臭素化ブチルゴムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体に対し、全二重結合量が60質量%未満であるゴム系重合体またはそのブレンドを特定量配合するようにしたので、引張り破断強度および引張り破断伸びに代表される機械的特性を従来レベル以上に向上することができる。
【0008】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対し、カーボンブラックおよび/またはシリカを20〜200質量部配合することにより、機械的特性をより優れたものにすることができる。また本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤに好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、水添率が70%以上である水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を含む。水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物を共重合したランダム共重合体の共役ジエン部が水素添加された水添共重合体である。芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレンなどが挙げられる。なかでもスチレンが好ましい。これらは単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。
【0010】
共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。なかでも1,3−ブタジエンが好ましい。これらは単独でも、2種以上の組み合わせでもよい。
【0011】
芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物のランダム共重合体としては、スチレン及び1,3−ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエン共重合体)が好ましい。したがって、水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体としては、水添スチレンブタジエン共重合体が好ましい。
【0012】
芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、モノマーとして、芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物や任意に他の共重合性モノマーを用いた重合を行うことにより製造することができる。ここで、重合法としては、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれを用いてもよいが、溶液重合法が特に好ましい。また、重合形式としては、回分式及び連続式のいずれを用いてもよい。本明細書において、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体および水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、特許文献1、特許文献2に記載された方法に基づき製造することができる。
【0013】
溶液重合法を用いる場合、具体的な重合方法の一例としては、有機溶媒中において、共
役ジエン化合物を含むモノマーを、重合開始剤及び必要に応じて用いられるランダマイザ
ーの存在下、アニオン重合を行う方法が挙げられる。
【0014】
上記により得られた芳香族ビニル−共役ジエン重合体は、任意にその活性末端と、シリカと相互作用する官能基を有する化合物とを反応させることにより、芳香族ビニル−共役ジエン重合体の重合終了末端に、シリカと相互作用する官能基を導入することができる。芳香族ビニル−共役ジエン重合体の活性末端は、分子鎖の端に存在する、炭素−炭素二重結合を有するモノマーに由来する構造以外の部分を意味する。
【0015】
本発明において、水添芳香族ビニル−共役ジエン重合体は、上記で得られた芳香族ビニル−共役ジエン重合体を水素添加(水添)して得られる。水添反応の方法及び条件は、所望の水添率の重合体が得られるのであれば、特に制限されるものではない。それらの水添方法の例としては、チタンの有機金属化合物を主成分とする触媒を水添触媒として使用する方法、鉄、ニッケル、コバルトの有機化合物とアルキルアルミニウム等の有機金属化合物からなる触媒を使用する方法、ルテニウム、ロジウム等の有機金属化合物の有機錯体を使用する方法、パラジウム、白金、ルテニウム、コバルト、ニッケル等の金属を、カーボン、シリカ、アルミナ等の担体に担持した触媒を使用する方法などがある。各種の方法の中では、チタンの有機金属化合物単独、またはそれとリチウム、マグネシウム、アルミニウムの有機金属化合物とから成る均一触媒(特公昭63−4841号公報、特公平1−37970号公報)を用い、低圧、低温の穏和な条件で水添する方法は工業的に好ましく、また共役ジエン化合物の二重結合への水添選択性も高く本発明の目的に適している。
【0016】
水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体は、その水素添加率(本明細書において「水添率」と略記することがある。)が70%以上、好ましくは80〜99%、より好ましくは90〜98%、さらに好ましくは93〜98%である。水添率が70%未満であると、引張り破断強度および引張り破断伸びなどの機械的特性を十分に向上することができない。また水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の水添率は、架橋性を付与するため100%未満である。なお、水添率は、芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が有する炭素−炭素二重結合部の合計を100%としたとき、水素添加された炭素−炭素結合部の百分率(%)をいう。なお、水素添加率は、1H−NMRを測定して得られたスペクトルの不飽和結合部のスペクトル減少率から計算することができる。
【0017】
水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200,000以上、より好ましくは400,000以上である。重量平均分子量が200,000未満では、良好な機械的特性が得られない虞がある。また、水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体の重量平均分子量は、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下であり、更に好ましくは700,000以下である。重量平均分子量が2,000,000を超えると、加工性が低下する傾向がある。なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による測定値から標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0018】
水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が水添スチレンブタジエン共重合体である場合、水添スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、特に好ましくは20質量%以上であり、最も好ましくは25質量%以上である。スチレン含有量が5質量%未満であると、充分なグリップ性能が得られない虞がある。また、水添スチレンブタジエン共重合体のスチレン含有量は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下である。スチレン含有量が40質量%を超えると、充分な機械的特性が得られず、低燃費性も悪化する虞がある。なお、スチレン含有量は、1H−NMRにより測定することができる。
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体を20〜95質量%、好ましくは35〜85質量%、より好ましくは50〜75質量%含有する。水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が20質量%未満であると、ゴム組成物の機械的特性を十分に改良することができない。また水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体が95質量%を超えると、ゴム系重合体またはそのブレンドを含有させることに伴う作用効果が十分に得られない。
【0020】
タイヤ用ゴム組成物は、全二重結合量が60質量%未満であるゴム系重合体またはそのブレンドを含有する。ゴム系重合体は、その全二重結合量が60質量%未満、好ましくは50〜0.5質量%、より好ましくは20〜0.5質量%である。本明細書において、全二重結合量が60質量%未満であるゴム系重合体は、単独で含有しても複数を組合わせたブレンドで含有してもよい。ゴム系重合体のブレンドは、組成する各ゴム系重合体の全二重結合量が60質量%未満でも、ゴム系重合体のブレンドの全二重結合量が全体として60質量%未満でもよい。ゴム系重合体の全二重結合量を60質量%未満にすることにより、水添芳香族ビニル−共役ジエン共重合体と架橋反応するとき、架橋点がほぼ均質に分散するため、架橋点の局在化を抑制することができ、応力集中やそれに起因する破壊を防ぐことができる。本明細書において、ゴム系重合体の全二重結合量は、構成されるモノマーの条件組成比から算出することができるが、そのモノマー組成比は、1H−NMR等で測定することができる。
【0021】
全二重結合量が60質量%未満であるゴム系重合体として、例えばエポキシ化天然ゴム、ブチルゴム、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)のようなハロゲン化ジエン系ゴム、芳香族ビニル−共役ジエン−アルケン共重合体等のその分子鎖の末端および/または側鎖がハロゲン原子、エポキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基、アミド基等により、変性された変性ジエン系ゴムや、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリシクロアルケン等を例示することができる。なかでもEPDM、エポキシ化天然ゴム、Br−IIRが好ましい。また、上述した通り、ゴム系重合体のブレンドの全二重結合量が60質量%未満である限りにおいて、ゴム系重合体のブレンドは全二重結合量が60質量%以上である他のゴム系重合体を含有してもよい。他のゴム系重合体として、例えばエチレン−プロピレンゴム(EPM)、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0022】
本発明において、ゴム系重合体またはそのブレンドは、ゴム成分100質量%中5〜80質量%、好ましくは15〜65質量%、より好ましくは25〜50質量%含有する。ゴム系重合体またはそのブレンドが5質量%未満であると、ゴム系重合体またはそのブレンドを含有させることに伴う作用効果が十分に得られない。またゴム系重合体またはそのブレンドが80質量%を超えると、ゴム組成物の機械的特性を十分に改良することができない。
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、カーボンブラックおよび/またはシリカを配合することができる。カーボンブラックおよび/またはシリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよびシリカの合計で好ましくは20〜200質量部、より好ましくは40〜150質量部、更に好ましくは50〜100質量部であるとよい。カーボンブラックおよびシリカの配合量を20質量部以上にすることによりゴム組成物の機械的特性を向上することができる。またカーボンブラックおよびシリカの配合量を200質量部以下にすることにより、ゴム組成物の発熱性を小さくすることができる。またタイヤにしたとき重量の増加を抑制することができる。
【0024】
本発明においてカーボンブラックとしては、例えばSAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、HMF、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、特に制限されるものではないが、好ましくは70〜240m2/g、より好ましくは90〜200m2/gであるとよい。カーボンブラックの窒素吸着比表面積を70m2/g以上にすることにより、ゴム組成物の機械的特性を確保することができる。またカーボンブラックの窒素吸着比表面積を240m2/g以下にすることにより、加工性を確保することができる。本明細書において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217−2に準拠して、測定するものとする。
【0025】
シリカとしては、例えば湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを単独または2種以上を組合わせて使用してもよい。シリカのCTAB吸着比表面積は、特に制限されるものではないが、好ましくは80〜260m2/g、より好ましくは140〜200m2/gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積を80m2/g以上にすることにより、ゴム組成物の機械的特性を確保することができる。またシリカのCTAB吸着比表面積を260m2/g以下にすることにより、ウェット性能および低転がり抵抗性を良好にすることができる。本明細書において、シリカのCTAB比表面積は、ISO 5794により測定された値とする。
【0026】
本発明では、シリカと共にシランカップリング剤を配合するとよい。シランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を向上し、機械的特性、低転がり抵抗性およびウェット性能のバランスをより高くすることができる。
【0027】
シランカップリング剤の種類は、シリカ配合のゴム組成物に使用可能なものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等の硫黄含有シランカップリング剤を例示することができる。
【0028】
シランカップリング剤の配合量は、シリカの重量に対し、好ましくは3〜15質量%を配合すると良く、より好ましくは5〜10質量%にすると良い。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の3質量%未満であるとシリカの分散を十分に改良することができない虞がある。シランカップリング剤の配合量がシリカ配合量の15質量%を超えるとシランカップリング剤同士が縮合し、ゴム組成物における所望の硬度や強度を得ることができない。
【0029】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫又は架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、可塑剤、加工助剤、テルペン系樹脂、熱硬化性樹脂などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を、本発明の目的を阻害しない範囲内で配合することができる。またかかる添加剤は一般的な方法で混練してゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0030】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤのキャップトレッド、アンダートレッド、サイドトレッド、ビード部、繊維コードの被覆ゴムを形成するのに好適である。本発明の引張り破断強度および引張り破断伸び等の機械的特性に優れたタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、操縦安定性、タイヤ耐久性などを優れたものにすることができる。
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
表4に記載されたタイヤ用ゴム組成物の共通組成を有し、表1〜3に記載の原材料を配合した18種類のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜7、比較例1〜6、参考例1〜5)を調製するにあたり、硫黄、および加硫促進剤を除く成分を1.7Lのバンバリーミキサーで5分間混練し、145℃に達したとき放出し冷却しマスターバッチとした。得られたマスターバッチに、硫黄、および加硫促進剤を加えて70℃のオープンロールで混練することにより、18種類のタイヤ用ゴム組成物を得た。また表4に記載の各添加剤の配合量は、表1〜3に記載のゴム成分100質量部に対する質量部として表されている。
【0032】
得られたタイヤ用ゴム組成物を、所定形状の金型を用いて180℃で、5分間加硫し、加硫ゴム試験片を作成した。得られた加硫ゴム試験片を用いて以下の方法で抗張積を求めた。
抗張積の評価方法
上記により得られた加硫ゴム試験片を用いて、JIS K6251に準拠して、ダンベル型JIS3号形試験片を作製した。得られた試験片を用い、室温(23℃)で500mm/分の引張り速度で引張り試験を行い、引張り破断強度および引張り破断伸びを測定し、得られた引張り破断強度および引張り破断伸びの積を抗張積として算出した。得られた好調積の値は、参考例1の値を100とする指数として、表1〜3の「抗張積」の欄に記載した。この指数が大きいほど抗張積が高く、機械的特性が優れることを意味する。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
なお、表1〜3において使用した原材料の種類を下記に示す。
・水添SBR:水添スチレンブタジエン共重合体、以下の製造方法により調製した。
水添SBRの製造方法
窒素置換された内容量10Lのオートクレーブ反応器に、シクロヘキサン4533g、スチレン367.8g(3.531mol)、ブタジエン714.0g(13.119mol)およびN,N,N′,N′―テトラメチルエチレンジアミン0.432mL(2.901mmol)を仕込み、攪拌を開始した。反応容器内の内容物の温度を50℃にした後、n−ブチルリチウム3.509mL(5.509mmol)を添加した。重合転化率がほぼ100%に到達した後、さらにブタジエン12.0gを添加して5分間反応させた後、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン8.5gを添加し、30分間反応させた。
次いで、反応液を80℃以上にして系内に水素を導入した。
次いで、チタノセンジクロライドを主体とする触媒0.70g、ジエチルアルミニウムクロライド1.2gおよびn-ブチルリチウム0.30gを加え、水素圧1.0MPaを保つように反応させた。所定の水素積算流量に到達後、反応液を常温、常圧に戻して反応容器より抜き出し、重合溶液を得た。中和後、スチームストリッピング法により固体状のゴムを回収した。得られた固体ゴムをロールにより脱水し、乾燥機中で乾燥を行い、水添SBRを得た。そのスチレン量は34質量%、重量平均分子量は340,000および水添率は95%であった。
【0037】
・S−SBR:溶液重合スチレンブタジエンゴム、JSR社製HPR850
・EPDM−1;エチレン−プロピレン−ジエンゴム、住友化学社製エスプレン505、全二重結合量が10質量%
・EPDM−2;エチレン−プロピレン−ジエンゴム、住友化学社製エスプレン305、全二重結合量が7.3質量%
・NR:天然ゴム、RSS#3、全二重結合量が100質量%
・ENR−50:エポキシ化天然ゴム、RRIM−CONSULTCORPORATION製ENR 50、全二重結合量が50質量%
・NR:天然ゴム、RSS#3
・BR:ブタジエンゴム、日本ゼオン(株)製Nipol BR1220、全二重結合量が100質量%
・Br−IIR:臭素化ブチルゴム、ARLANXEO社製X Butyl BB X2、全二重結合量が2.0質量%
・シリカ:Evonik社製ZEOSIL 1165MP
・カーボンブラック:ハード級カーボンブラック、キャボットジャパン社製ショウブラックN339
【0038】
【表4】
【0039】
なお、表4において使用した原材料の種類を下記に示す。
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸YR
・老化防止剤:Solutia社製SANTOFLEX 6PPD
・カップリング剤:シランカップリング剤、Evonik社製Si69
・オイル:昭和シェル石油社製エキストラクト 4号S
・硫黄:細井化学工業社製油処理硫黄、硫黄含有率が95質量%
・加硫促進剤−1:大内新興化学工業(株)製ノクセラー CZ−G(CBS)
・加硫促進剤−2:大内新興化学工業(株)製ノクセラー D(DPG)
【0040】
表1〜3から明らかなように実施例1〜7のタイヤ用ゴム組成物は、抗張積が高く、機械的特性が向上していることが確認された。
【0041】
比較例1のタイヤ用ゴム組成物は、水添スチレンブタジエン共重合体を配合していないので抗張積が劣る。
比較例2のタイヤ用ゴム組成物は、水添スチレンブタジエン共重合体の含有量が20未満であるので抗張積が劣る。
比較例3,4のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム系重合体の全二重結合量が60質量%以上であるので、抗張積が劣る。
比較例5,6のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム系重合体ブレンドの全二重結合量が60質量%以上であるので、抗張積が劣る。
比較例7のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム系重合体の全二重結合量が60質量%以上であるので、抗張積が劣る。