(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
肌の所定部位のシミ又は皺の目立ち方の目視による評価値を標準化し、符号を反転させたものを前記回帰式の目的変数とする請求項1又は2記載の肌のぼかし力の算出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
肌の見えの典型的な指標である反射率や半透明性T
Sのような肌内部の散乱や吸収といった肌の光学的な性質は、シミや小皺に代表される肌表面の細かな凹凸形状や色ムラの見え方に影響する。しかしながら、反射率とシミや小皺の目視評価との相関性が高いとは言えず、さらに、加齢との関係についても、反射率は概略加齢により減少する傾向があるものの、日焼けなど外的要因により大きく変化するために、明確な相関があるとはいえない。
【0008】
例えば、日焼けにより肌の色が暗くなり、肌の反射率が低下し、半透明性T
Sが減少した場合は、シミや小皺が目立ちやすくなるが、必ずしも肌年齢が高くなったという印象はもたれない。これに対し、加齢により肌の反射率が低下し、半透明性T
Sが増加した場合は、半透明性T
Sの増加がもたらす光学的な影響が、シミや小皺を目立ちにくくする方向に働く。しかしながら、反射率の低下がシミや小皺が目立ち易くなる方向に働くために、両者が相殺されることになる。実際には、加齢により、肌そのものの光学的な変化、即ち、反射率が低下し半透明性T
Sが増加することに加え、シミや小皺の数や量も増える。そのため、肌年齢が高くなったという印象が持たれやすくなる。
【0009】
そこで、本発明は、半透明性と反射率を用いて肌自体の光学的性質としてのシミや小皺の目立ちにくさを客観的に評価できる指標を得、さらに、肌年齢も算出できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、(i)シミや皺の目立ち方の目視による評価値を目的変数とし、反射率と半透明性の双方を説明変数として重回帰分析すると、反射率又は半透明性を説明変数として単回帰分析した場合に比して、回帰式により得るシミや皺の目立ち方の予測値の精度が高くなり、この予測値が、シミ又は皺を目立ちにくくする肌の性質の指標となること、(ii)実年齢を目的変数とし、反射率と半透明性の双方を説明変数として重回帰分析すると、いずれか一方を説明変数として単回帰分析をした場合に比して、回帰式により得る年齢の予測値と実年齢との相関性が高くなるので、重回帰分析により得られた年齢の予測値が肌の光学的性質からみた肌年齢の指標となることを見出し、本発明を想到した。
【0011】
即ち、本発明は、複数人についての肌の所定の部位のシミ又は皺の目立ち方の目視による評価値を目的変数とし、次式で表される肌の所定部位の半透明性T
S
T
S=1−(R
S,S/R
S,L)
(式中、R
S,Lは、肌の所定部位における領域Lの反射率、
R
S,Sは、領域Lに含まれる、領域Lよりも小さい領域Sの反射率)
及び肌の所定の部位の反射率Rを説明変数とした重回帰分析に基づいてシミ又は皺を目立ちにくくする肌の性質の程度(以下、肌のぼかし力という)を算出する次式(1)を得、
肌のぼかし力=a+b×T
S+c×R (1)
(式中、a、b、cは係数)
任意の被験者の肌の所定の部位の反射率R及び半透明性T
Sを測定し、式(1)により該被験者の肌のぼかし力を算出する肌のぼかし力の算出方法を提供する。
【0012】
また、本発明は、複数人についての実年齢を目的変数とし、次式で表される肌の所定の部位の半透明性T
S
T
S=1−(R
S,S/R
S,L)
(式中、R
S,Lは、肌の所定部位における領域Lの反射率、
R
S,Sは、領域Lに含まれる、領域Lよりも小さい領域Sの反射率)
及び肌の反射率Rを説明変数とした重回帰分析に基づいて肌年齢を算出する次式(2)を得、
肌年齢=d+e×T
S+f×R (2)
(式中、d、e、fは係数)
任意の被験者の肌の所定の部位の反射率R及び半透明性T
Sを測定し、式(2)により該被験者の肌年齢を算出する肌年齢の算出方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により算出される肌のぼかし力は、肌を目視評価した場合のシミ又は皺の目立ち方の評価値を目的変数とし、その肌の半透明性T
S及び反射率Rを説明変数とした重回帰分析による回帰式に基づいて算出されるので、シミ又は皺を目立ちにくくする肌の性質の客観的な指標となり、肌のぼかし力を客観的に評価することができる。また、本発明により算出される肌年齢は実年齢と相関性があり、肌の反射率や半透明性の点から肌の年齢を評価したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】
図1Aは、肌の半透明性の測定方法(第1照射領域S)の説明図である。
【
図1B】
図1Bは、肌の半透明性の測定方法(第2照射領域L)の説明図である。
【
図2A】
図2Aは、実施例(説明変数が半透明性と反射率)におけるぼかし力と、目視による頬部のシミの評価値との関係図である。
【
図2B】
図2Bは、実施例(説明変数が半透明性と反射率)におけるぼかし力と、目視による口周囲の皺の評価値との関係図である。
【
図2C】
図2Cは、実施例(説明変数が半透明性と反射率)におけるぼかし力と、目視による目尻の皺の評価値との関係図である。
【
図3A】
図3Aは、比較例(説明変数が反射率のみ)におけるぼかし力と、目視による頬部のシミの評価値との関係図である。
【
図3B】
図3Bは、比較例(説明変数が反射率のみ)におけるぼかし力と、目視による口周囲の皺の評価値との関係図である。
【
図3C】
図3Cは、比較例(説明変数が反射率のみ)におけるぼかし力と、目視による目尻の皺の評価値との関係図である。
【
図4A】
図4Aは、比較例(説明変数が半透明性のみ)におけるぼかし力と、目視による頬部のシミの評価値との関係図である。
【
図4B】
図4Bは、比較例(説明変数が半透明性のみ)におけるぼかし力と、目視による口周囲の皺の評価値との関係図である。
【
図4C】
図4Cは、比較例(説明変数が半透明性のみ)におけるぼかし力と、目視による目尻の皺の評価値との関係図である。
【
図5】
図5は、半透明性と反射率と加齢との関係図である。
【
図6A】
図6Aは、実施例(説明変数が半透明性と反射率)における肌年齢と実年齢との関係図である。
【
図6B】
図6Bは、比較例(説明変数が反射率のみ)における肌年齢と実年齢との関係図である。
【
図6C】
図6Cは、比較例(説明変数が半透明性のみ)における肌年齢と実年齢との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明では、肌のぼかし力の点から肌を評価する。この肌のぼかし力は、肌に存在するシミや皺を目立ちにくくするという肌の性質であり、その数値はぼかし力の程度を表す。本発明では肌のぼかし力を次式(1)で算出する。
【0016】
肌のぼかし力=a+b×T
S+c×R (1)
(式中、a、b、cは係数)
【0017】
式(1)は、複数人の肌の所定の部位のシミ又は皺の目視による評価値を目的変数とし、肌の所定の部位の肌の半透明性T
S及び反射率Rを説明変数とした重回帰分析に基づいて得ることができる。この場合、重回帰分析による回帰式をそのまま肌のぼかし力の算出式としてもよく、後述するように必要に応じて回帰式に補正を加えてもよい。
【0018】
ここで、肌の所定部位の半透明性T
Sは次式で表される。
T
S=1−(R
S,S/R
S,L)、
(式中、R
S,Lは、肌の所定部位における領域Lの反射率、
R
S,Sは、領域Lに含まれる、領域Lよりも小さい領域Sの反射率)
【0019】
半透明性T
Sは、より具体的には特許文献1に記載の方法で算出される。即ち、
図1A及び
図1Bに示すように、肌1の所定の部位(例えば、口の周囲、目尻、頬等)反射率を、JIS Z8722に従い積分球10を用いて拡散照明方式により反射率を測定する(de:8°)。図中、符号11は照明光を入射させる入射窓、符号12は試料からの拡散反射光を受光する受光窓である。
【0020】
この半透明性T
Sの算出では、肌1の所定の部位において絞り2を用い、領域S(以下、第1照射領域ともいう)と、領域Sを含み、該領域Sよりも大きい領域L(以下、第2照射領域ともいう)の2通りで光を照射して反射率を測定する。肌に半透明性が無いと第1照射領域における反射率と第2照射領域における反射率は等しくなるが、肌が半透明性を有すると
図1Aに示すように第1照射領域が狭い場合には肌1内で拡散して出射する光の一部が絞り2で遮られるので第1照射領域の反射率は第2照射領域(領域L)における反射率よりも小さくなる。そこで、第1照射領域の面積A1と第2照射領域の面積A2の比率A1/A2は、種々の肌に対して半透明性の程度を十分に検出できる大きさとすることが好ましく、例えば、A1/A2を0.05以上0.5以下とすることが好ましく、0.1以上0.3以下とすることがより好ましい。また、第1照射領域の面積A1自体は5〜40mm
2が好ましく、7〜20mm
2がより好ましい。第2照射領域の面積A2自体は30〜250mm
2が好ましく、60〜150mm
2がより好ましい。なお、第2照射領域での反射率は、一般的な、拡散照明方式による反射率(de:8°)と一致する。
【0021】
測定波長は肌の半透明性分布が顕著に表れる、可視光領域を含む長波長域とすることが好ましい。より具体的には、550nm〜800nmの範囲の中から選ぶことが好ましい。
【0022】
絞り2としては、低反射率である黒色材料で形成された所定の開口部を有する環状の絞りや、開口部が可変のアイリス型の絞り等を使用することができる。
【0023】
また、積分球を用いた反射率の測定において基準試料として使用する白色板としては、反射率が0.5より大きいものが好ましく、0.6以上が好ましく、0.65以上がより好ましい。また、白色板は半透明性が充分に小さいものが好ましく、高散乱の材からなる白色板の厚みを薄くすることが好ましい。白色板の厚みは0.2mm以下が好ましく、0.15mm以下がより好ましく、0.1mm以下がさらに好ましい。このような白色板としては、例えば、PPC用紙(コピー用普通紙)をあげることができる。
【0024】
式(1)を得るにあたり、反射率Rとして、半透明性T
Sの算出に使用した反射率R
S,Lを使用してもよく、顔面の異なる箇所で測定した反射率Rを使用してもよいが、半透明性T
Sの測定部位と同程度の反射率になる部位を反射率の測定箇所とすることが好ましい。さらに、同じ箇所を測定することがより好ましい。反射率Rの測定方法としては、半透明性T
Sの算出に使用した反射率R
S,Lの測定方法と同様に積分球を用いた拡散照明方式としてもよく、市販の種々の反射率測定装置により異なる照明条件の下で測定してもよい。肌の見えと関連づける上では、測定波長は可視光領域とすることが好ましい。
【0025】
また、式(1)を得るにあたり、複数人の肌の所定の部位のシミ又は皺の目立ち方の目視による評価値は、上述の半透明性T
S及び反射率R
S,Lの測定部位と同一部位の評価値とすることができるが、全く同一の部位である必要はない。半透明性T
S及び反射率R
S,Lの測定部位と、シミ又は皺の目立ち方の目視評価を行う部位が同程度の評価値となる部位であればよい。したがって、例えば、顔面の1箇所で肌の半透明性T
S及び反射率R
S,Lを測定し、顔面の複数箇所でシミ又は皺の目立ち方の目視評価を行ってもよい。この場合、シミ又は皺の目立ち方は顔全体の印象に繋がる評価値となる。
【0026】
シミ又は皺の目立ち方の目視による評価値は、例えば、美容専門のパネラーがシミ又は皺の目立ち方を複数段階で評価した数値(例えば、0〜6の評価値)とすることができる。この場合、パネラーは複数人とすることが好ましい。また、被評価者となる複数人は年齢の近い者又は同世代の者(例えば、10歳代、20歳代、又は30歳代)とし、各年代の人数を好ましくは10人以上、より好ましくは20人以上とすることが好ましい。これにより、式(1)の算出に係る複数人のシミ又は皺は、色素ムラやシワ形状の程度が概略当該世代の人が一般に有する範囲内となり、更に平均化されるためにシミ又は皺の目立ち方の相違は、シミ又は皺を見えにくくする肌の性質(肌のぼかし力)の寄与によると考えることができる。
【0027】
シミ又は皺の目視の評価項目としては、例えば、細かな色ムラ(シミ)や形状ムラ(皺)に関わるものであればよい。また、評価項目の数は1つでもよいが、複数の評価項目で目視を行い、平均化処理を行うのがより好ましい。
【0028】
次に、複数人のシミ又は皺の評価値の分布の幅が評価項目により異なる場合等においては、平均値が0、標準偏差が1となるように標準化しておくことが好ましい。これにより、シミ又は皺の評価項目により評価の幅が異なっても、評価項目間の寄与度をそろえた上で目視スコアを平均化することができる。
【0029】
また、シミ又は皺の目立ち方の評価値の取り方を、目立ち方の程度が大きいほど大きな数値とした場合には、小さな数値とした場合に対して、評価値の正負の符号を反転させたものを、式(1)を得る場合の目的変数とすることが好ましい。
【0030】
複数人について、肌の所定の部位の半透明性T
S及び反射率R、ならびにシミ又は皺の目立ち方の目視による評価値を取得した後は、シミ又は皺の目立ち方の目視による評価値を目的変数とし、半透明性T
Sと反射率Rを説明変数として重回帰分析を行い、重回帰分析により得た回帰式に基づいて肌のぼかし力を算出する式(1)を得る。この場合、回帰式をそのまま肌のぼかし力の算出式(1)としてもよく、あるいは、回帰式に対して、定数を足したり掛けたりして回帰式の値が適当な範囲内(例えば0から1)に収まるようにする等の補正を行い、肌のぼかし力を算出する式(1)としてもよい。
【0031】
一方、任意の被験者について、式(1)を得たときと対応する評価部位の半透明性T
Sと反射率R
S,Lを測定し、その結果と式(1)から当該被験者の肌のぼかし力を算出する。こうして得られたぼかし力は、その被験者のシミ又は皺の目立ちにくさの客観的評価指標となる。このぼかし力は、当該被験者の半透明性T
Sと反射率R
S,Lを素肌について測定した場合には、その素肌におけるシミ又は皺の目立ちにくさの指標となり、基礎化粧料を適用した後や、メークアップ化粧料を適用した後は、それらの化粧料の適用後のシミ又は皺の目立ちにくさの指標となる。したがって、任意の被験者において、化粧料の適用の前後で半透明性T
Sと反射率Rを測定し、ぼかし力を算出することにより、その化粧料のぼかし力の効果を評価することができる。よって、ぼかし力の算出は美容目的上有用となる。
【0032】
また、複数人の実年齢を目的変数とし、上述の式(1)を得るときと同様に取得した、複数人の肌の所定の部位の半透明性T
Sと反射率Rを説明変数として重回帰分析すると、実年齢を予測する回帰式を得ることができる。この回帰式により得られる実年齢の予測値は、実年齢との相関性が高い。したがって、この実年齢の予測値は、肌の半透明性T
S及び肌の反射率Rという光学的性質から導かれる肌年齢ということができる。よって、本発明では、実年齢を予測する回帰式に基づいて肌年齢を算出する次式(2)を得る。
肌年齢=d+e×T
S+f×R (2)
【0033】
この場合、反射率Rとしては、式(1)の場合と同様に、半透明性T
Sの算出に使用した反射率R
S,Lを使用してもよく、顔面の異なる箇所または異なる照明条件下で測定した反射率Rを使用してもよい。
【0034】
また、肌年齢を算出する式(2)として、実年齢を予測する回帰式をそのまま肌年齢を算出する式(2)としてもよく、あるいは実年齢を予測する回帰式に対して定数を足したり掛けたりして肌年齢の値が適当な範囲内(例えば0から1)に収まるようにする等の補正を行い、肌年齢を指標化し、それを算出する式(2)を得ても良い。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を施例により具体的に説明する。
【0036】
実施例1
年齢18〜19歳2名、20〜24歳5名、25〜29歳4名、30〜34歳9名、35〜39歳10名の合計30名を被験者とし、被験者の洗顔後の頬部のシミ、口周囲の皺、及び目尻の皺の目立ち方の程度を美容専門のパネラー8名が目視により0〜6の7段階に評価し、パネラー8名の平均値を評価値(目視スコア)とした。
【0037】
一方、30名の被験者の顔の口脇の半透明性T
S及び反射率R
S,Lを
図1A、
図1Bに示した積分球を用いて測定した。この場合、入射光を白色光とし、絞りの開口を、第1照射領域(領域S)では直径4mmの円形、第2照射領域(領域L)では直径11mmの円形とし、650nmにおける半透明性T
S及び反射率R
S,Lを得た。
【0038】
頬部のシミ、口周囲の皺、及び目尻の皺という評価部位ごとに、8名のパネラーの評価値の符号を反転させ、さらにこれら頬部、口周囲、及び目尻の評価値の平均値を求めて各部位に共通する目的変数とし、口脇の半透明性T
S及び反射率R
S,Lを説明変数として重回帰分析をすることにより回帰式を得、その回帰式をぼかし力の算出式として次の式を得た。
ぼかし力 = -9.34 + 8.06 × 反射率R
S,L + 13.06 × 半透明性T
S
【0039】
このぼかし力の算出式に上記30名の被験者の半透明性T
S及び反射率R
S,Lを入れることにより各被験者のぼかし力を求めた。この値と、目視スコアの関係を
図2A、
図2B、
図2Cに示す。決定係数R
2は、シミでは0.1911、口周囲の皺では0.2731、目尻の皺では0.1708であった。
【0040】
比較例1
実施例1において、重回帰分析の説明変数として反射率R
S,Lのみを使用し、実施例1と同様にしてぼかし力と、頬部のシミ、口周囲の皺、目尻の皺の各目視スコアとの関係を
図3A、
図3B、
図3Cに示す。決定係数R
2は、シミでは0.1097、口周囲の皺では0.0445、目尻の皺では0.059であった。
【0041】
比較例2
実施例1において、重回帰分析の説明変数として半透明性T
Sのみを使用し、実施例1と同様にしてぼかし力と、頬部のシミ、口周囲の皺、目尻の皺の各目視スコアとの関係を
図4A、
図4B、
図4Cに示す。決定係数R
2は、シミでは0.1383、口周囲の皺では0.2767、目尻の皺では0.1463であった。
【0042】
実施例1、比較例1及び比較例2の結果から、実施例1では、比較例1や比較例2よりもぼかし力と目視スコアとの相関性が高く、予測精度が高いことがわかる。
【0043】
実施例2
20代20名、30代20名、40代19名、50代18名、60代10名、計87名を被験者とし、実施例1と同様の方法により各被験者の口脇の反射率R
S,Lと半透明性T
Sとの関係を
図5に示す。
図5から、加齢により半透明性T
Sが増加し、反射率R
S,Lが減少する傾向のあることがわかり、半透明性T
Sと反射率R
S,Lが加齢による肌の見えに関わっていると考えられる。即ち、加齢により半透明性T
Sが増加してシミや皺を目立ちにくくしているが、一方では反射率R
S,Lは減少しており、これはシミや皺を目立ち易くしている。その結果として、両者の効果が相殺されて、加齢による肌の変化のぼかし力への寄与は小さくなる。この変化は、表面形状や色素ムラの影響を除いた肌自体の光学的性質の加齢変化を表していると考えられる。
【0044】
そこで、実施例2の被験者87名の実年齢を目的変数とし、実施例2で求めた口脇の半透明性T
S及び反射率R
S,Lを説明変数として重回帰分析することにより肌の光学的性質から年齢を予測する次の回帰式を得た。
年齢の予測値 = -276.24 × 反射率R
S,L + 172.58 × 半透明性T
S + 122.02
【0045】
この回帰式を用いて予測される年齢は肌の光学的性質から予測されるので肌年齢といえる。そこで、この回帰式を肌年齢の算出式として各被験者の肌年齢を算出し、肌年齢と実年齢との関係を
図6Aに示す。決定係数R
2は0.6358であった。
【0046】
比較例3
実施例2において、重回帰分析の説明変数として、反射率R
S,Lのみを使用する以外は実施例2と同様にして各被験者の肌年齢と実年齢の関係を求めた。結果を
図6Bに示す。決定係数R
2は0.3202であった。
【0047】
比較例4
実施例2において、重回帰分析の説明変数として、半透明性T
Sのみを使用する以外は実施例2と同様にして各被験者の肌年齢と実年齢の関係を求めた。結果を
図6Cに示す。決定係数R
2は0.5217であった。
【0048】
実施例2、比較例3及び比較例4から、実施例2では、比較例3や比較例4よりも肌年齢と実年齢との相関性が高いことがわかる。