(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962054
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】ワイヤーハーネス取付部品の取付構造
(51)【国際特許分類】
H02G 3/32 20060101AFI20211025BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
H02G3/32
B60R16/02 623D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-149964(P2017-149964)
(22)【出願日】2017年8月2日
(65)【公開番号】特開2019-30177(P2019-30177A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(72)【発明者】
【氏名】奥野 光寛
【審査官】
木村 励
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−5581(JP,A)
【文献】
特開2008−22595(JP,A)
【文献】
特開2016−137775(JP,A)
【文献】
特開2009−27770(JP,A)
【文献】
特開2017−11810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーユニット搭載ルームに配置されるパワーユニットにワイヤーハーネスを、プロテクタを介して取り付けるためのワイヤーハーネス取付部品の取付構造において、
前記パワーユニットに組み付け部を介して取り付けられ、該組み付け部から折り曲げて設けられた挿し込み部を有するブラケットと、前記ブラケットの挿し込み部に挿入して取り付けられる挿入部を有し、かつ前記ワイヤーハーネスを保持する保持部を有するプロテクタとで構成され、前記プロテクタの保持部に該ワイヤーハーネスの向きをワイヤーハーネスが配設された基本面から変える湾曲部を形成するとともに該プロテクタに設けられるブラケットの挿入部が、前記プロテクタの保持部に設けられるワイヤーハーネスの向きを変える湾曲部の曲がり方向と反対側の面に設けられ、かつ該挿入部の一端側が前記湾曲部の近傍に設けられるとともに該挿入部の他端側が前記ブラケットの前記挿し込み部を挿入する側となって前記保持部のワイヤーハーネスの軸方向から所定角度なすように配設されていることを特徴とするワイヤーハーネス取付部品の取付構造。
【請求項2】
前記プロテクタは、前記ワイヤーハーネスの底部周面を保持する保持部に、前記ワイヤーハーネスの向きをワイヤーハーネスが配設された基本面から下方に変える方向に前記湾曲部を設け、前記保持部に保持されたワイヤーハーネスの曲がり部とプロテクタの保持部の間に間隙を形成したことを特徴とする請求項1に記載のワイヤーハーネス取付部品の取付構造。
【請求項3】
前記プロテクタの保持部に前記ワイヤーハーネスの挟持部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のワイヤーハーネス取付部品の取付構造。
【請求項4】
前記プロテクタに設けられる挿入部には、ブラケットの挿入口と反対側の先端部に、幅方向の目印用リブが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のワイヤーハーネス取付部品の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーユニット搭載ルームに配置されるパワーユニットにワイヤーハーネスを、プロテクタを介して固定するためのワイヤーハーネス取付部品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルーム等の車両用パワーユニット搭載ルームでは、限られたスペースにパワーユニット等の各部品が内蔵されており、これら各部品をワイヤーハーネスで接続する接続作業が困難であった(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−29056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に軽自動車では、これら各部品を限られたパワーユニット搭載ルームのスペース内で、パワーユニットから引き出されたワイヤーハーネスを使って各部品間を接続する接続作業が困難であった。
【0005】
本発明は、パワーユニット搭載ルームに配置されるパワーユニットにワイヤーハーネスを、プロテクタを介して固定するためのワイヤーハーネス取付部品の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、パワーユニット搭載ルームに配置されるパワーユニットにワイヤーハーネスを、プロテクタを介して取り付けるためのワイヤーハーネス取付部品の取付構造において、前記パワーユニットに組み付け部を介して取り付けられ、該組み付け部から折り曲げて設けられた挿し込み部を有するブラケットと、前記ブラケットの挿し込み部に挿入して取り付けられる挿入部を有し、かつ前記ワイヤーハーネスを保持する保持部を有するプロテクタとで構成され、前記プロテクタの保持部に該ワイヤーハーネスの向きをワイヤーハーネスが配設された基本面から変える湾曲部を形成するとともに該プロテクタに設けられるブラケットの挿入部が、前記プロテクタの保持部に設けられるワイヤーハーネスの向きを変える湾曲部の曲がり方向と反対側の面に設けられ、かつ該挿入部の一端側が前記湾曲部の近傍に設けられるとともに該挿入部の他端側が
前記ブラケットの前記挿し込み部を挿入する側となって前記保持部のワイヤーハーネスの軸方向から所定角度なすように配設されていることで、前記パワーユニットに組み付けられていることにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明のワイヤーハーネス取付部品の取付構造によれば、ワイヤーハーネスにプロテクタを組み付けてからプロテクタをブラケットに組み付けることができるので、狭いパワーユニット搭載ルームにも容易にプロテクタを組み付けることができる。また、ワイヤーハーネスが配設された方向と角度をつけてブラケット挿入部が設けられているので、ブラケットを外す際に工具が当たる等の不具合を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】パワーユニット搭載ルームに組み付けられたプロテクタを示す概念図である。
【
図3】
図2のプロテクタを外してパワーユニットに取り付けられたブラケットを示す斜視図である。
【
図4】プロテクタをブラケットに組み付けた状態を示す斜視図である。
【
図5】
図4の一部を断面にして拡大して示す一部拡大断面図である。
【
図6】
図4のプロテクタとブラケットの組付け部分を縦断面にして示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下本発明の実施の形態によるワイヤーハーネス取付部品の取付構造を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、自動車のパワーユニット搭載ルーム、通常はエンジンルームに組み付けられたワイヤーハーネス取付部品の取付構造を示したもので、
図2はその部分拡大図である。
図3は、
図1のプロテクタを外してブラケットを示した図である。
図4ないし
図7は、ブラケットに取り付けられたプロテクタを示したものである。
図8及び
図9はプロテクタを示したものである。
【0010】
図1ないし
図5において、1はパワーユニット搭載ルームに配置されるパワーユニット1で、ダッシュパネル2から引き出されてパワーユニット1にプロテクタ3を介して固定されたワイヤーハーネス4を示したものである。
図1の矢視F方向が車体の前方を示している。
プロテクタ3はパワーユニット1に形成された図示しない取付座面に取り付けられたブラケット5に取り付けて保持されたものである。ブラケット5は、ワイヤーハーネス4の配索個所に合わせてパワーユニット1に形成された取付座面に取り付けられている。
【0011】
前記ブラケット5は、
図3に示すように、L字形に折り曲げられた金属製のプレートで構成されている。このブラケット5は、パワーユニット1にボルト締め等により取り付けられる組み付け部Aとなる取付基板51と、この取付基板51から直交する方向に向けて折り曲げられたプロテクタを取り付ける取付部Bとなる挿し込み部52とで構成されている。該ブラケット5の取付基板51は、パワーユニット1の取付座面に取り付けられる基準面となるもので、水平方向に限らず、パワーユニット1の壁面に沿って取り付けられる基準位置となるものである。該ブラケット5の挿し込み部52は取付基板51に対して直交する方向に折り曲げられたもので、上方に限らず取付基板51に対して略直交する方向に延びて構成されている。該ブラケット5は取付基板51および挿し込み部52の長手方向両側を折り曲げてフランジ部5aが形成されて補強されている。このブラケット5は取付基板51に形成された図示しない取付孔に、ボルト6を介してパワーユニット1構成部品に固定されている。また、前記ブラケット5の挿し込み部52には、板面に略逆三角形の位置決め孔53が形成されている。
【0012】
前記プロテクタ3の構造について、
図4ないし
図9により説明する。
前記プロテクタ3は、ワイヤーハーネス4を配索するための横断面U字形状のワイヤーハーネス配索部3aを有する保持部31と、この保持部31の一端にワイヤーハーネス配索部3aを平面上で略直角に折り曲げて設けられた湾曲部32と、前記湾曲部32と反対側の保持部31の片側側壁面に設けられたブラケット挿入部33とで構成されている。前記保持部31には、ワイヤーハーネス配索部3aの一側から薄肉状のヒンジ部を介して延出されてワイヤーハーネス配索部3aの上方を円弧状に覆う帯状の蓋部31aが設けられている。該蓋部31aは、先端に設けられた係合突起部(図示せず)がワイヤーハーネス配索部3aの他側縁部に設けられた係合穴(図示せず)に係合することで組み付けられている。
前記保持部31には、ワイヤーハーネス配索部3aに円周方向のリブ形状31bが複数設けられており、ワイヤーハーネス4を蓋部31aによって挟んで保持するように構成されている。この帯状の蓋部31aを閉じることで、ワイヤーハーネス配索部3aに配索されたワイヤーハーネス4を挟持して、ワイヤーハーネス配索部3aからのワイヤーハーネス4の離脱を防ぐものである。
前記プロテクタ3には、ワイヤーハーネス配索部3aを有する保持部31の他に細いワイヤーハーネスを保持するワイヤーハーネス配索部3bを有する分岐部34が一体に設けられている。分岐部34にもワイヤーハーネス配索部3bの一側から延出されてワイヤーハーネス配索部3bの上方を覆う帯状の蓋部34aが設けられている。
【0013】
前記ブラケット挿入部33は、底面に前記ブラケット5の挿し込み部52の挿入口33aを設け、内部に挿し込み部52を収容する間隙部33bを設けたものである。間隙部33bには、前記ブラケット5の挿し込み部52の厚み方向に係合する保持部33cが設けられており、この保持部33cの板面には、前記ブラケット5の挿し込み部52に設けられた位置決め孔53に係合する逆三角形の突起部33dが設けられている。この突起部33dは挿入口33a側が薄く、間隙部33bの奥が厚く形成されており、挿し込み部52の挿入が容易で、抜け方向には外れにくく形成されている。前記保持部33cは、挿し込み部52の挿入時には、突起部33dによって挿し込み部52が反発力を保持しつつ可動し、突起部33dが位置決め孔53に係合すると挿し込み部52の反発力が働いて挿し込み部52の離脱を防ぐように構成されている。前記保持部33cの上端部には突起部33dが設けられた部分に薄肉のブラケット取り外し用爪部33eが設けられており、この爪部33eを操作することで、突起部33dを位置決め孔53から離脱させることができるように構成されている。前記ブラケット挿入部33には前記保持部33cの上方部分に切欠き部33fが形成されており、この切欠き部33fに前記爪部33eが設けられている。
前記ブラケット挿入部33の外側には、切欠き部33fを挟んでブラケット5の挿し込み部52と平行にリブ33gが突設され、更にブラケット挿入部33の隣接する面にも連続して突設されて、挿し込み部52の挿入時の位置決めを図れるように構成されている。
【0014】
前記ブラケット挿入部33の取付位置について説明する。
前記プロテクタ3には、保持部31に該ワイヤーハーネス4の向きをワイヤーハーネス4が配設された基本面から下方向に変える湾曲部32が形成されている。該プロテクタ3に設けられるブラケット5の挿し込み部52、すなわちブラケット取付部Bは、前記プロテクタ3の保持部31に設けられるワイヤーハーネス4の向きを変える湾曲部32の曲がり方向と反対側の面に設けられている。
該ブラケット挿入部33の取付位置は、一端側が前記湾曲部32の近傍に設けられるとともに該ブラケット挿入部33の他端側が保持部31のワイヤーハーネス4の軸方向から所定角度θなすように配設されている(
図9参照)。
【0015】
上記ワイヤーハーネス取付部品の取付構造の取付手順を説明する。
パワーユニット1に形成された取付座面に、取付基板51を固定し、ブラケット5を組み付ける。ブラケット5の組み付け部Aは、ボルト6を介してパワーユニット1の取付部に固定される。次に、ワイヤーハーネス配索部3aに配索されたワイヤーハーネス4を蓋部34aを介して保持してプロテクタ3に取り付ける。そして、プロテクタ3のブラケット挿入部33に、ブラケット5の挿し込み部52を挿入させて係合させる。最後に、パワーユニット1をパワーユニット搭載ルームに配設して組み付ける。
【0016】
上記構成によると、前記プロテクタ3の保持部31に該ワイヤーハーネス4の向きをワイヤーハーネス4が配設された基本面から変える湾曲部32を形成するとともに該プロテクタ3に設けられるブラケット挿入部33が、前記プロテクタ3の保持部31に設けられるワイヤーハーネス4の向きを変える湾曲部32の曲がり方向と反対側の面に設けられ、かつ該ブラケット挿入部33の一端側が前記湾曲部32の近傍に設けられるとともに該ブラケット挿入部33の他端側が保持部31のワイヤーハーネス4の軸方向から所定角度θなすように配設されている。したがって、プロテクタ3に設けられるブラケット挿入部33が、ワイヤーハーネス4が配設されている基本面の方向と一定角度θなすようにして設けられているので、プロテクタ3をブラケット5から外す作業を行う場合に、爪部33eを操作する工具が誤ってワイヤーハーネス4に接触するなどの不具合を防ぐことができる。
【0017】
前記プロテクタ3は、前記ワイヤーハーネス4の底部周面を保持する保持部31に、前記ワイヤーハーネス4の向きをワイヤーハーネス4が配設された基本面から下方に変える方向に前記湾曲部32を設け、前記保持部31に保持されたワイヤーハーネス4の曲がり部とプロテクタ3の保持部31の間に間隙が形成されるので、プロテクタ3をブラケット5から外す作業を行う場合に、爪部33eを操作する工具が誤ってワイヤーハーネス4に接触するなどの不具合を防ぐことができる。
【0018】
前記プロテクタ3の保持部31に前記ワイヤーハーネス4の挟持部を設けたので、ワイヤーハーネス4の離脱を防ぐことができる。また、前記プロテクタ3に設けられる挿入部33には、ブラケット挿入口33aと反対側の先端部に、幅方向の目印用リブ33gが設けられているので、プロテクタ3をブラケット5の挿し込み部52に組み付ける作業の目印となる。また、ブラケット5の挿し込み部52の長さは、ブラケット挿入部33に組み付けたときの高さが、ワイヤーハーネス4を取り付けたプロテクタ3の保持部31の幅と略同じ長さに設定することで、他の部品との接触、および工具を用いてプロテクタ3を外す際の他の部品との干渉を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、プロテクタ3の保持部31に設けられた湾曲部32の角度は、下方向に向いていれば、直角に限らず、任意の角度で形成することができる。プロテクタ3に設けるワイヤーハーネス配索部の数は、任意で良く、ワイヤーハーネスの数により、任意に増減することができる。等、その他本発明の技術的範囲を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 パワーユニット
2 ダッシュパネル
3 プロテクタ
3a ワイヤーハーネス配索部
31 保持部
31a 蓋部
31b リブ形状
32 湾曲部
33 ブラケット挿入部
33a 挿入口
33b 間隙部
33c 保持部
33d 突起部
33e ブラケット取り外し用爪部
33f 切欠き部
33g リブ
4 ワイヤーハーネス
5 ブラケット
51 取付基板
52 挿し込み部
53 位置決め孔