特許第6962071号(P6962071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962071
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】レベルシフター、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20211025BHJP
【FI】
   H03K19/0175 210
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-164249(P2017-164249)
(22)【出願日】2017年8月29日
(65)【公開番号】特開2019-41357(P2019-41357A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2020年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100128598
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 聖一
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】北澤 岳夫
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−128590(JP,A)
【文献】 特開2006−173889(JP,A)
【文献】 特開平11−195975(JP,A)
【文献】 特開2007−27676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K19/0175−19/0185
H01L27/04
H01L21/822
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイレベルが第1高電位でありローレベルが第1低電位である入力信号を第1回路から入力し、前記入力信号をレベルシフトしてハイレベルが第2高電位でありローレベルが第2低電位である出力信号を第2回路へ出力するレベルシフターであって、
電源電位として前記第1高電位と前記第1低電位とが与えられ、第1信号と第2信号とを出力する組み合わせ回路と、
電源電位として前記第2高電位と前記第2低電位とが与えられ、前記第1信号および前記第2信号に応じて前記出力信号を生成するレベルシフト回路と、を備え、
前記第2高電位は前記第1高電位よりも高く、
前記組み合わせ回路には、前記第2高電位が前記レベルシフト回路に与えられたことによって論理レベルがアクティブとなり、前記第2高電位が前記レベルシフト回路に与えられなかったことによって論理レベルが非アクティブとなるように切り替えるイネーブル信号が与えられ、
前記組み合わせ回路は、前記イネーブル信号が非アクティブであれば前記第1信号および前記第2信号を共にローレベルとし、前記イネーブル信号がアクティブであれば前記第1信号および前記第2信号の一方をハイレベルとし、他方をローレベルとする
ことを特徴とするレベルシフター。
【請求項2】
前記組み合わせ回路は、
前記イネーブル信号がアクティブの場合に、前記入力信号の論理レベルと同じ論理レベルとなる第1信号を出力し、前記イネーブル信号が非アクティブの場合に論理レベルがローレベルとなる第1信号を出力し、
前記イネーブル信号がアクティブの場合に、前記入力信号の論理レベルを反転した論理レベルとなる第2信号を出力し、前記イネーブル信号が非アクティブの場合に論理レベルがローレベルとなる第2信号を出力する、
ことを特徴とする請求項1に記載のレベルシフター。

【請求項3】
前記イネーブル信号は、アクティブである場合にハイレベルとなり、
前記組み合わせ回路は、
前記イネーブル信号が入力されるインバーターと、
前記入力信号と前記インバーターの出力信号とが入力され、前記第2信号を出力する第1NORゲートと、
前記第1NORゲートの出力信号と前記インバーターの出力信号とが入力され、前記第1信号を出力する第2NORゲートと、
を有することを特徴とする請求項2に記載のレベルシフター。
【請求項4】
前記組み合わせ回路における前記第1信号の出力端と前記レベルシフト回路における前記第1信号の入力端とに接続される第1保護回路と、
前記組み合わせ回路における前記第2信号の出力端と前記レベルシフト回路における前記第2信号の入力端とに接続される第2保護回路と、
を備え、
前記第1保護回路および前記第2保護回路の各々は、
前記組み合わせ回路から出力される信号の入力端と前記レベルシフト回路へ出力する信号の出力端とに接続される抵抗と、
前記第2高電位が高電源電位として供給される第1端子と前記レベルシフト回路へ出力する信号の出力端に接続される第2端子とを備え、前記第2端子の電位が前記第1端子の電位よりも高い場合に、前記第2端子から前記第1端子へ一方向に電流を流す第1保護素子と、
前記レベルシフト回路へ出力する信号の出力端に接続される第1端子と前記第2低電位が低電源電位として供給される第2端子とを備え、前記第2端子の電位が前記第1端子の電位よりも高い場合に、前記第2端子から前記第1端子へ一方向に電流を流す第2保護素子と、を含み、
前記第1低電位と前記第2低電位の電位差の絶対値が、前記第1保護素子の順方向電圧よりも小さく、かつ前記第2保護素子の順方向電圧よりも小さい
ことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載のレベルシフター。
【請求項5】
前記第1低電位と前記第2低電位とが同じ電位であることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載のレベルシフター。
【請求項6】
請求項1乃至5のうち何れか1項に記載のレベルシフターを含むことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧の異なる回路間の信号伝送技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル回路とアナログ回路とでは、例えば前者の電源電圧は3.3Vであり、後者の電源電圧は12Vであるといった具合に、電源電圧が異なることが一般的である。デジタル回路とアナログ回路との間の信号伝送のように、電源電圧の異なる回路間の信号伝送ではレベルシフト回路が必要となる。また、電源電圧の異なる回路間で信号伝送を行う際には、静電気放電(ESD:Electro-Static Discharge:以下、「ESD」)に伴って発生する高電圧パルスが半導体チップの内部回路を破壊したり、誤動作させてしまったりしないように、保護回路をレベルシフト回路の前段に設ける必要がある。
【0003】
特許文献1には、保護素子260からなる保護回路と保護素子270からなる保護回路を、図7に示すようにシフト回路250の前段に設けることで、ESD対を実現する技術が開示されている。特許文献1に開示の技術では、電源電圧の低い低電位側(VDD1側)でESDが発生し、低電位側からの出力信号211或いは出力信号241に高電圧パルスが重畳すると、その高電圧パルスに応じた電流が保護素子260或いは保護素子270を介して電源電圧の高い高電位側の電源線VDD2に流れる。これにより、レベルシフト回路250のゲート(具体的には、電界効果トランジスターT2、T3、T5およびT6の各々のゲート)に上記高電圧パルスが印加されることが回避され、ゲートの破壊が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−27676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の技術では、保護素子260および保護素子270の各々から見て低電位側にスイッチ280およびスイッチ290がそれぞれ配置されている。このため、低電位側でESDが発生し、出力信号211或いは出力信号241に高電圧パルスが重畳すると、その高電圧パルスがスイッチ280或いはスイッチ290に印加され、スイッチ280或いはスイッチ290が破損する可能性がある。スイッチ280或いはスイッチ290が破損すると、低電位側からの出力信号211或いは出力信号241がレベルシフト回路250に伝達されなくなり、システム全体が動作しなくなる。このような事態の発生を回避するためにスイッチ280およびスイッチ290を設けないようにすることが考えられるが、この場合、以下のような問題が発生する。
【0006】
すなわち、低電位側の内部回路210は常時動作させる一方、高電位側の内部回路230を間欠的に動作させる場合など、低電位側の電源電圧が印加されている一方、高電位側の電源電圧が印加さていないといった事態が発生する場合に、タイミングによっては保護素子260或いは保護素子270を介して電源線VDD2に流れるリーク電流が発生するといった問題がある。高電位側の電源電圧が印加さていない状態では電源線VDD2の電位はほぼゼロとなっている一方、出力信号211と出力信号241は差動信号であるため、一方はハイレベル(電源線VDD1の電位)となっているからである。例えば信号241がハイレベルであれば保護素子260を介してリーク電流が流れ、信号211がハイレベルであれば保護素子270を介してリーク電流が流れる。
【0007】
本発明は以上に説明した課題に鑑みて為されたものであり、電源電圧の異なる回路間の信号伝送を仲介するレベルシフト回路にESD対策のために設けられる保護回路を介して流れるリーク電流を低減することを解決課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するために、本発明に係るレベルシフターは、ハイレベルが第1高電位でありローレベルが第1低電位である入力信号を第1回路から入力し、前記入力信号をレベルシフトしてハイレベルが第2高電位でありローレベルが第2低電位である出力信号を第2回路へ出力するレベルシフターであって、電源電位として前記第1高電位と前記第1低電位とが与えられ、第1信号と第2信号とを出力する組み合わせ回路と、電源電位として前記第2高電位と前記第2低電位とが与えられ、前記第1信号および前記第2信号に応じて前記出力信号を生成するレベルシフト回路と、を備え、前記第2高電位は前記第1高電位よりも高く、前記組み合わせ回路には、前記第2高電位が前記レベルシフト回路に与えられたときに論理レベルがアクティブとなり、前記第2高電位が前記レベルシフト回路に与えられていないときに論理レベルが非アクティブとなるイネーブル信号が与えられ、前記組み合わせ回路は、前記イネーブル信号が非アクティブであれば前記第1信号および前記第2信号を共にローレベルとし、前記イネーブル信号がアクティブであれば前記第1信号および前記第2信号の一方をハイレベルとし、他方をローレベルとすることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第2高電位がレベルシフト回路に与えられておらず、第2回路が動作していない状況下では、イネーブル信号は非アクティブとなり、第1信号および第2信号は共にローレベルになる。このため、特許文献1における保護回路が上記レベルシフト回路の前段に設けられていたとしても、上記状況下で当該保護回路を介して流れるリーク電流を低減することができる。つまり、本発明によれば、ESD対策のためにレベルシフト回路の前段に設けられる保護回路を介して流れるリーク電流を低減できる。加えて、本発明によれば高電位側の回路を間欠的に動作させることが可能になる。
【0010】
上述したレベルシフターは、前記イネーブル信号がアクティブの場合に、前記入力信号の論理レベルと同じ論理レベルとなる第1信号を出力し、前記イネーブル信号が非アクティブの場合に論理レベルがローレベルとなる第1信号を出力し、前記イネーブル信号がアクティブの場合に、前記入力信号の論理レベルを反転した論理レベルとなる第2信号を出力し、前記イネーブル信号が非アクティブの場合に論理レベルがローレベルとなる第2信号を出力するように、上記組み合わせ回路が構成されていることが好ましい。
【0011】
本態様によれば、イネーブル信号がアクティブである場合には、第1信号は第1回路の出力信号と同じ論理レベルとなり、第2信号は第1信号を論理反転した論理レベルとる一方、イネーブル信号が非アクティブである場合には、第1信号および第2信号は共にローレベルとなる。
【0012】
イネーブル信号のアクティブレベルをハイレベルとする場合の上記組み合わせ回路の具体的な構成としては、前記イネーブル信号が入力されるインバーターと、前記入力信号と前記インバーターの出力信号とが入力され、前記第2信号を出力する第1NORゲートと、前記第1NORゲートの出力信号と前記インバーターの出力信号とが入力され、前記第1信号を出力する第2NORゲートと、を有する構成が挙げられる。
【0013】
上述したレベルシフターは、前記組み合わせ回路における前記第1信号の出力端と前記レベルシフト回路における前記第1信号の入力端とに接続される第1保護回路と、前記組み合わせ回路における前記第1信号の出力端と前記レベルシフト回路における前記第2信号の入力端とに接続される第2保護回路と、を備えることが好ましい。第1保護回路および第2保護回路の具体的な構成としては、以下の第1保護素子および第2保護素子と抵抗とを組み合わせた構成が挙げられる。上記抵抗は、組み合わせ回路から出力される信号の入力端と前記レベルシフト回路へ出力する信号の出力端とに接続される。第1保護素子は、前記第2高電位が高電源電位として供給される第1端子と前記レベルシフト回路へ出力する信号の出力端に接続される第2端子とを備え、前記第2端子の電位が前記第1端子の電位よりも高い場合に、前記第2端子から前記第1端子へ一方向に電流を流す。第2保護素子は、前記レベルシフト回路へ出力する信号の出力端に接続される第1端子と前記第2低電位が低電源電位として供給される第2端子とを備え、前記第2端子の電位が前記第1端子の電位よりも高い場合に、前記第2端子から前記第1端子へ一方向に電流を流す。そして、この態様のレベルシフターにおいては、第1低電位と第2低電位の電位差が、第1保護素子の順方向電圧よりも小さく、かつ第2保護素子の順方向電圧よりも小さいことが好ましい。ここで、順方向電圧とは、第2端子および第1端子間の電圧であって、第2端子から第1端子へ流れる電流が急激に増加する電圧のことを言う。
【0014】
本態様によれば、低電位側でESDが発生し、第1信号或いは第2信号に正の高電圧パルスが重畳したとしても、その高電圧パルスに応じた電流は第1保護回路或いは第2保護回路における第1保護素子を介して第2高電位側へ流れる。また、第1信号或いは第2信号に負の高電圧パルスが重畳したとしても、その高電圧パルスに応じた電流は第1保護回路或いは第2保護回路における第2保護素子を介して第1低電位電源線に流れる。これにより、上記レベルシフト回路が特許文献1におけるレベルシフト回路250のような構成である場合に、ゲートに上記高電圧パルスが印加されることが回避され、ゲートの破壊が防止される。加えて、本態様によれば、高電位側の電源電圧が印加されていない状況では、第1保護素子の第1端子の電位は第2低電位となり、第1保護素子の第2端子の電位は第1低電位となる。一方、第2保護素子の第1端子の電位は第1低電位となり、第2保護素子の第2端子の電位は第2低電位となる。第2低電位の方が第1低電位よりも高い場合、第1保護素子を介してリーク電流が流れることはない。また、第2保護素子においても第2端子と第1端子間の電圧は順方向電圧よりも小さいため、当該第2保護素子を介して大きなリーク電流が流れることはない。第1低電位の方が第2低電位よりも高い場合、第2保護素子を介してリーク電流が流れることはない。第1保護素子においても、第2端子と第1端子間の電圧は順方向電圧よりも小さいため、当該第1保護素子を介して大きなリーク電流が流れることはない。
【0015】
上述したレベルシフターは、第1低電位と第2低電位とが同じ電位であることが好ましい。本態様によれば、第1信号或いは第2信号がローレベルである場合に第1および第2保護素子を介して流れるリーク電流をゼロにすることができる。加えて本態様によれば、第1低電位電源線と第2低電位電源線とを共通の電源線とすることができる。
【0016】
また、本発明は、レベルシフターのほか、当該レベルシフターを備える電子機器として概念することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態によるレベルシフター30の構成例を示す図である。
図2】イネーブル信号ENがアクティブである場合に組み合わせ回路310から出力される第1信号S1および第2信号S2を説明するための図である。
図3】イネーブル信号ENが非アクティブである場合に組み合わせ回路310から出力される第1信号S1および第2信号S2を説明するための図である。
図4】本発明に係るパソコン2000の斜視図である。
図5】本発明に係る携帯電話機3000の斜視図である。
図6】本発明に係る携帯情報端末4000の斜視図である。
図7】レベルシフターにおける従来のESD対策を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0019】
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態によるレベルシフター30の構成例を示す図である。
レベルシフター30は、互いに動作電圧の異なる第1回路10と第2回路20との間の信号授受を仲介する。第1回路10は、例えばデジタル回路であり、第1高電位電源線PVDDLと第1低電位電源線PVSSLに接続されている。第1高電位電源線PVDDLの電位VDDLは第1低電位電源線PVSSLの電位VSSLよりも高く、電位VDDLと電位VSSLの電位差が第1回路10の動作電圧となる。第1回路10は、ハイレベルが電位VDDLであり、ローレベルが電位VSSLである入力信号INSを出力する。
【0020】
第2回路20は、例えばアナログ回路であり、第2高電位電源線PVDDHと第2低電位電源線PVSSHに接続されている。第2高電位電源線PVDDHの電位VDDHは第2低電位電源線PVSSHの電位VSSHよりも高く、電位VDDHと電位VSSHの電位差が第2回路20の動作電圧となる。本実施形態では、電位VDDHは電位VDDLよりも高い。以下では、電位VDDLを「第1高電位」と呼び、電位VDDHを「第2高電位」と呼ぶ。同様に以下では、電位VSSLを「第1低電位」と呼び、電位VSSHを「第2低電位」と呼ぶ。なお、本実施形態では、第1低電位と第2低電位は同じ電位である。第2回路20には、ハイレベルが第2高電位であり、ローレベルが第2低電位である信号OUTSが入力される。
【0021】
図1に示すようにレベルシフター30は、第1回路10と第2回路20に接続されている。レベルシフター30には、第1回路10から入力信号INSが入力される。レベルシフター30は、入力信号INSをレベルシフトして信号OUTSを生成し、第2回路20に与える。図1に示すように、レベルシフター30は、組み合わせ回路310と、レベルシフト回路320と、保護回路330Aと、保護回路330Bと、を含む。組み合わせ回路310は第1高電位電源線PVDDLと第1低電位電源線PVSSLとに接続されており、レベルシフト回路320は、第2高電位電源線PVDDHと第2低電位電源線PVSSHとに接続されている。組み合わせ回路310には、電源電位として第1高電位と第1低電位とが与えられ、レベルシフト回路320には、電源電位として第2高電位と第2低電位とが与えられる。
【0022】
組み合わせ回路310には、第1回路10から入力信号INSが入力される他、イネーブル信号ENが入力される。イネーブル信号ENは、第2高電位電源線PVDDHに電位VDDHが与えられているか否かに応じて(すなわち、レベルシフト回路320に第2高電位が与えられているか否かに応じて)、論理レベルの切り替え(アクティブ/非アクティブの切り替え)が行われる信号である。本実施形態では、高電位側の電源がオンになって第2高電位がレベルシフト回路320に与えられていればイネーブル信号ENはアクティブとなり、同電源がオフであればイネーブル信号ENは非アクティブとなる。本実施形態においてイネーブル信号ENがアクティブであるとは、当該イネーブル信号ENの論理レベルがハイレベル(第1高電位)であることを言い、イネーブル信号ENが非アクティブであるとは、当該イネーブル信号ENの論理レベルがローレベル(第1低電位)であることを言う。
【0023】
本実施形態の組み合わせ回路310は、図1に示すようにインバーター310aと、第1NORゲートであるNORゲート310bと、第2NORゲートであるNORゲート310cとを含む。インバーター310aには、イネーブル信号ENが入力される。インバーター310aは、イネーブル信号ENを反転させた信号を出力する。NORゲート310bには、入力信号INSとインバーター310aの出力信号とが入力され、両信号の論理和を反転させた信号を出力する。図1に示すように、本実施形態では、NORゲート310bの出力信号が第2信号S2となる。図2に示すように、イネーブル信号ENがアクティブであれば、信号S2は入力信号INSの論理レベルを反転させた信号となる。これに対して、イネーブル信号ENが非アクティブであれば、図3に示すように、入力信号INSがハイレベルであるかローレベルであるかに関わらず、信号S2はローレベルになる。
【0024】
NORゲート310cには、第2信号S2とインバーター310aの出力信号とが入力され、両信号の論理和を反転させた信号を出力する。図1に示すように、本実施形態では、NORゲート310cの出力信号が第1信号S1となる。図2に示すように、イネーブル信号ENがアクティブであれば、信号S1は、信号S2の論理レベルを反転させた信号、すなわち入力信号INSと同じ論理レベルの信号となる。これに対して、イネーブル信号ENが非アクティブであれば、図3に示すように、入力信号INSがハイレベルであるかローレベルであるかに関わらず、信号S1はローレベルになる。
【0025】
つまり、イネーブル信号ENがアクティブであれば、組み合わせ回路310は、入力信号INSと同じ論理レベルの第1信号S1と第1信号S1を反転した第2信号S2とを出力する。そして、イネーブル信号ENが非アクティブであれば、組み合わせ回路310は第1信号S1および第2信号S2を共にローレベルにする。
【0026】
レベルシフト回路320は、ハイレベルが第2高電位であり、ローレベルが第2低電位である信号OUTSを上記第1信号S1および第2信号S2に応じて出力する。図1に示すように、レベルシフト回路320は、Pチャネル電界効果トランジスターT10およびT30と、Nチャネル電界効果トランジスターT20およびT40と、を含む。
【0027】
Pチャネル電界効果トランジスターT10とNチャネル電界効果トランジスターT20は、第2高電位電源線PVDDHと第2低電位電源線PVSSHの間に直列に介挿されている。より詳細に説明すると、Pチャネル電界効果トランジスターT10のソースは第2高電位電源線PVDDHに接続されており、Pチャネル電界効果トランジスターT10のドレインはNチャネル電界効果トランジスターT20のドレインに接続されている。そして、Nチャネル電界効果トランジスターT20のソースは第2低電位電源線PVSSHに接続されている。Pチャネル電界効果トランジスターT30とNチャネル電界効果トランジスターT40も、第2高電位電源線PVDDHと第2低電位電源線PVSSHの間に直列に介挿されている。より詳細に説明すると、Pチャネル電界効果トランジスターT30のソースは第2高電位電源線PVDDHに接続されており、Pチャネル電界効果トランジスターT30のドレインはNチャネル電界効果トランジスターT40のドレインに接続されている。そして、Nチャネル電界効果トランジスターT40のソースは第2低電位電源線PVSSHに接続されている。
【0028】
Pチャネル電界効果トランジスターT10のゲートは、Pチャネル電界効果トランジスターT30のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT40のドレインの共通接続点に接続されている。Pチャネル電界効果トランジスターT30のゲートは、Pチャネル電界効果トランジスターT10のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT20のドレインの共通接続点に接続されている。Nチャネル電界効果トランジスターT20のゲートには保護回路330Aを介して第1信号S1が与えられ、Nチャネル電界効果トランジスターT40のゲートには保護回路330Bを介して第2信号S2が与えられる。
【0029】
Pチャネル電界効果トランジスターT10のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT20のドレインの共通接続点にはインバーターINVが接続されており、Pチャネル電界効果トランジスターT10のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT20のドレインの共通接続点の電位を反転した電位が信号OUTSとして第2回路20に出力される。
【0030】
前掲図2に示すように、イネーブル信号ENがアクティブである状況下では、第1信号S1および第2信号S2の信号レベルは、入力信号INSの信号レベルに応じて変化する。具体的には、入力信号INSがハイレベルあれば、第1信号S1はハイレベルとなり、第2信号S2はローレベルとなる。第1信号S1がハイレベルであり、第2信号S2がローレベルであると、Nチャネル電界効果トランジスターT20はオンとなり、Nチャネル電界効果トランジスターT40はオフとなる。Nチャネル電界効果トランジスターT20がオンであるため、Pチャネル電界効果トランジスターT10のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT20のドレインの共通接続点の電位は第2低電位電源線PVSSHの電位、すなわち、ローレベルとなる。このため、信号OUTS(上記共通接続点の電位をインバーターINVにより論理反転した電位)はハイレベルとなる。なお、チャネル電界効果トランジスターT10のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT20のドレインの共通接続点の電位がローレベルとなるため、Pチャネル電界効果トランジスターT30はオンとなる。このため、Pチャネル電界効果トランジスターT30のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT40のドレインの共通接続点の電位は第2高電位電源線PVDDHの電位となり、Pチャネル電界効果トランジスターT10はオフとなる。
【0031】
これに対して、イネーブル信号ENがアクティブである状況下で入力信号INSがローレベルあると、第1信号S1はローレベルとなり、第2信号S2はハイレベルとなる。第1信号S1がローレベルであり、第2信号S2がハイレベルであると、Nチャネル電界効果トランジスターT20はオフとなり、Nチャネル電界効果トランジスターT40はオンとなる。Nチャネル電界効果トランジスターT40がオンであるため、Pチャネル電界効果トランジスターT30のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT40のドレインの共通接続点の電位は第2低電位電源線PVSSHの電位となり、Pチャネル電界効果トランジスターT10がオンとなる。Pチャネル電界効果トランジスターT10がオンであり、Nチャネル電界効果トランジスターT20がオフであるため、Pチャネル電界効果トランジスターT10のドレインとNチャネル電界効果トランジスターT20のドレインの共通接続点の電位は第2高電位電源線PVDDHの電位、すなわち、ハイレベルとなり、信号OUTSはローレベルとなる。このとき、Pチャネル電界効果トランジスターT30はオフとなる。
【0032】
このように、イネーブル信号ENがアクティブである状況下では、第1回路10から出力された入力信号INSはレベルシフト回路320によって、ハイレベルが電位VDDHであり、ローレベルが電位VSSHである信号OUTSに変換されて第2回路20へ出力される。
【0033】
保護回路330Aと保護回路330Bは共にESD対策のための回路である。図1に示すように、第1保護回路である保護回路330Aの構成と第2保護回路である保護回路330Bの構成は同じである。以下では、保護回路330Aと保護回路330Bを区別する必要がない場合には、「保護回路330」と表記する。図1に示すように、保護回路330は、第1保護素子であるダイオード330aと第2保護素子であるダイオード330bと、抵抗330cとを有する。図1に示すように、ダイオード330aとダイオード330bは、第2高電位電源線VDDHと第2低電位電源線VSSHの間に直列に介挿されている。より詳細に説明すると、ダイオード330aの第1端子(カソード)は第2高電位電源線PVDDHに、ダイオード330aの第2端子(アノード)はダイオード330bの第1端子(カソード)に、ダイオード330bの第2端子(アノード)は第2低電位電源線PVSSHに、夫々接続されている。つまり、ダイオード330aの第1端子には高電源電位として第2高電位が供給され、ダイオード330bの第2端子には低電源電位として第2低電位が供給される。
【0034】
保護回路330におけるダイオード330aの第2端子とダイオード330bの第1端子の共通接続点は、保護回路330における信号の出力端となっている。保護回路330Aの出力端はNチャネル電界効果トランジスターT40のゲートに接続されており、保護回路330Bの出力端はNチャネル電界効果トランジスターT20のゲートに接続されている。抵抗330cは上記出力端と組み合わせ回路310からの信号入力端とに接続されている。より詳細に説明すると、保護回路330Aの抵抗330cは当該保護回路330Aの出力端とNORゲート310cの出力端に接続されており、第1保護回路330Bの抵抗330cは第1保護回路330の出力端とNORゲート310cの出力端に接続されている。
【0035】
ダイオード330aとダイオード330bでは、各々における第2端子の電位が第1端子の電位よりも高い場合に、第2端子から第1端子へ一方向に電流が流れる。ダイオード330aは、低電位側(VDDL側)でESDが発生し、第1信号S1或いは第2信号S2に正の高電圧パルスが重畳して第2端子の電位が第1端子の電位よりも高くなったときに、その高電圧パルスに応じた電流を第2高電位電源線VDDHへ流す。これにより、Nチャネル電界効果トランジスターT20或いはT40のゲートの破損が防止される。ダイオード330bは、低電位側(VDDL側)でESDが発生し、第1信号S1或いは第2信号S2に負の高電圧パルスが重畳して第2端子の電位が第1端子の電位よりも高くなったときに、その高電圧パルスに応じた電流を第2低電位電源線VSSHから引き抜きぬいて第1低電位電源線PVSSLに流す。これにより、Nチャネル電界効果トランジスターT20或いはT40のゲートの破損が防止される。
以上がレベルシフター30の構成である。
【0036】
本実施形態のレベルシフター30では、保護回路330よりも低電圧側には、特許文献1におけるスイッチ280或いは290のような能動素子は設けられていない。このため、低電圧側でのESDの発生により破損することはない。また、本実施形態では、第2高電位電源線PVDDHに電位VDDHが与えられていない状況下ではイネーブル信号ENは非アクティブとされ、組み合わせ回路310から出力される第1信号S1と第2信号S2は共にローレベル(第1低電位)となる。前述したように、本実施形態では第1低電位と第2低電位とは同じ電位である。このため、ESDが発生していない状況下では、保護回路330Aと保護回路330Bの何れにおいてもダイオード330aの第2端子の電位が第1端子の電位よりも高くなることはなく、ダイオード330a経由でリーク電流が流れることはない。同様に、ダイオード330bの第2端子の電位が第1端子の電位よりも高くなることはなく、ダイオード330b経由でリーク電流が流れることもない。
【0037】
以上説明したように本実施形態によれば、電源電圧の異なる第1回路10および第2回路20間の信号伝送を仲介するレベルシフト回路320にESD対策のために設けられる保護回路330Aおよび保護回路330Bを介してリーク電流が流れることを回避しつつ、高電位側の回路(第2回路20)を間欠的に動作させることが可能になる。
【0038】
<変形例>
以上本発明の一実施形態について説明したが、以下の変形を加えても勿論良い。
上記実施形態では、第1低電位電源線PVSSLと第2低電位電源線PVSSHとが夫々別個の電源線であったが、第1低電位(電位VSSL)と第2低電位(電位VSSH)が同じ電位であれば、第1低電位電源線PVSSLと第2低電位電源線PVSSHとを共通の電源線としても良い。また、第1低電位の第2低電位とが同じ電位である必要はなく、両者が異なっていても良い。第1低電位と第2低電位とが異なる場合、高電位側の回路(第2回路20)を間欠的に動作させる際に第1保護素子330a或いは第2保護素子330bを介して流れるリーク電流を低減させるために、第1低電位と第2低電位の電位差の絶対値が、第1保護素子330aの順方向電圧よりも小さく、かつ第2保護素子330bの順方向電圧よりも小さいことが好ましい。保護素子の順方向電圧とは、保護素子の第2端子および第1端子間の電圧であって、第2端子から第1端子へ流れる電流が急激に増加する電圧のことを言う。例えば、第1保護素子の順方向電圧と第2保護素子の順方向電圧が共にVthである場合には、以下の式(1)を満たすことが好ましい。
|VSSH−VSSL|<vth
【0039】
第2信号S2を入力信号INSと同じ論理レベルとし、第1信号S1を入力信号INSの論理レベルを反転した信号としても良い。具体的には、NORゲート310Bの出力信号を第1信号S1とし、NORゲート330cの出力信号を第2信号S2とすれば良い。また、組み合わせ回路310の構成は図1に示す構成に限定されない。要は、第1回路10から入力信号INSを入力し、第1信号S1と第2信号のうちの一方を当該入力信号INSと同じ論理レベルとし、他方を反転した論理レベルとする回路であれば、他の構成の回路を用いても良い。レベルシフト回路320についても同様に、ハイレベルが第2高電位であり、ローレベルが第2低電位である信号OUTSを第1信号S1と第1信号S1を論理反転した第2信号S2に応じて出力する回路であれば、他の構成の回路を用いても良い。具体的には、特許文献1におけるレベルシフト回路250を用いることが考えられる。
【0040】
上記実施形態では、第1保護素子としてダイオード330aを用い、第2保護素子としてダイオード330bを用いたが、ダイオード接続された電界効果トランジスターを用いても良い。
【0041】
<応用例>
次に、上記実施形態のレベルシフター30の応用例について説明する。図4は、上記レベルシフター30を適用したモバイル型のパーソナルコンピューター2000の構成例を示す図である。パーソナルコンピューター2000は、表示ユニット1000と本体部2010を備える。本体部2010には、電源スイッチ2001及びキーボード2002が設けられている。パーソナルコンピューター2000では、表示ユニット1000に表示させる画像を表す画像データを処理する画像処理回路(デジタル回路)と表示ユニット1000を駆動する駆動回路(アナログ回路)との間の信号伝送を仲介するためにレベルシフター30が用いられている。また、パーソナルコンピューター2000がWI−FIなどの無線通信機能を備えている場合には、無線通信を実現する無線通信部におけるベースバンド処理回路(デジタル回路)と無線電波の送受信を行う送受信回路(アナログ回路)間の信号伝送にもレベルシフター30が用いられている。
【0042】
図5は、レベルシフター30を適用した携帯電話機3000の構成例を示す図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001及びスクロールボタン3002、並びに表示ユニット1000を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、表示ユニット1000に表示される画面がスクロールされる。携帯電話機3000においても、表示ユニット1000に表示させる画像を表す画像データを処理する画像処理回路と表示ユニット1000を駆動する駆動回路との間の信号伝送を仲介するためにレベルシフター30が用いられている。また、携帯電話機3000において無線通信を実現する無線通信部におけるベースバンド処理回路と無線電波の送受信を行う送受信回路間の信号伝送にもレベルシフター30が用いられている。
【0043】
図6は、上記レベルシフター30を適用した情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)4000の構成例を示す図である。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001及び電源スイッチ4002、並びに表示ユニット1000を備える。電源スイッチ4002を操作すると、住所録やスケジュール帳といった各種の情報が表示ユニット1000に表示される。情報携帯端末4000においても、表示ユニット1000に表示させる画像を表す画像データを処理する画像処理回路と表示ユニット1000を駆動する駆動回路との間の信号伝送を仲介するためにレベルシフター30が用いられている。
【0044】
レベルシフター30が適用される電子機器としては、図4図6に示すものの他、デジタルスチルカメラ、液晶テレビ、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワープロ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。なお、レベルシフター30により信号伝送を仲介される2つの回路の組み合わせはデジタル回路とアナログ回路の組み合わせに限定される訳ではなく、要は電源電圧が異なる回路であれば良い。
【符号の説明】
【0045】
10…第1回路、20…第2回路、30…レベルシフター、310…組み合わせ回路、310a…インバーター、310b…NORゲート、310c…NORゲート、320…レベルシフト回路、T10,T30…Pチャネル電界効果トランジスター、T20,T40…Nチャネル電界効果トランジスター、INV…インバーター、330,330A,330B…保護回路、330a…ダイオード、330b…ダイオード、330c…抵抗、2000…パーソナルコンピューター、3000…携帯電話機、4000…情報携帯端末。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7