(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962081
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】マルチレベル電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/483 20070101AFI20211025BHJP
【FI】
H02M7/483
【請求項の数】10
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2017-170739(P2017-170739)
(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-47686(P2019-47686A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】大井 一伸
(72)【発明者】
【氏名】小堀 賢司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 鎮教
【審査官】
白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−214021(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/162591(WO,A1)
【文献】
国際公開第2016/114330(WO,A1)
【文献】
特開2016−119831(JP,A)
【文献】
特開2015−047056(JP,A)
【文献】
特開2015−216790(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0194904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/00〜 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1〜第4直流電源を順次直列接続し、前記第1直流電源の正極端子の電位、または、前記第1,第2直流電源の共通接続点の電位、または、前記第2,第3直流電源の共通接続点の電位、または、前記第3,第4直流電源の共通接続点の電位、または、前記第4直流電源の負極端子の電位の中から選択して出力する2相以上のマルチレベル電力変換装置であって、
前記各第1〜第4直流電源の直流電圧V1〜V4を検出し、
前記直流電圧V1〜V4、および、電圧指令値V*に基づいて、以下の(3)式により、補正後の電圧指令値V*’を算出し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいてマルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数3】
【請求項2】
第1〜第4直流電源を順次直列接続し、前記第1直流電源の正極端子の電位、または、前記第1,第2直流電源の共通接続点の電位、または、前記第2,第3直流電源の共通接続点の電位、または、前記第3,第4直流電源の共通接続点の電位、または、前記第4直流電源の負極端子の電位の中から選択して出力する2相以上のマルチレベル電力変換装置であって、
前記各第1〜第4直流電源の直流電圧V1〜V4を検出し、
前記直流電圧V1〜V4、および、電圧指令値V*に基づいて、
以下の(3)式の1/2Vn(n=1,2,3,4)に、以下の(4)式を代入した以下の(5)式により、補正後の電圧指令値V*’を算出し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいてマルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数3】
【数16】
【数5】
【請求項3】
第1〜第4直流電源を順次直列接続し、前記第1直流電源の正極端子の電位、または、前記第1,第2直流電源の共通接続点の電位、または、前記第2,第3直流電源の共通接続点の電位、または、前記第3,第4直流電源の共通接続点の電位、または、前記第4直流電源の負極端子の電位の中から選択して出力する2相以上のマルチレベル電力変換装置であって、
前記各第1〜第4直流電源の直流電圧V1〜V4を検出し、
前記直流電圧V1〜V4、および、電圧指令値V*に基づいて、
以下の(3)式の1/2Vn(n=1,2,3,4)に、以下の(6)式を代入
した式により、補正後の電圧指令値V*’を算出し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいてマルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数3】
【数17】
【請求項4】
第1〜第8直流電源を順次直列接続し、前記第1直流電源の正極端子の電位と、前記第1,第2直流電源の共通接続点の電位と、前記第2,第3直流電源の共通接続点の電位と、前記第3,第4直流電源の共通接続点の電位と、前記第4,第5直流電源の共通接続点の電位と、前記第5,第6直流電源の共通接続点の電位と、前記第6,第7直流電源の共通接続点の電位と、前記第7,第8直流電源の共通接続点の電位と、前記第8直流電源の負極端子の電位の中から選択して出力する2相以上のマルチレベル電力変換装置であって、
前記各第1〜第8直流電源の直流電圧V1〜V8を検出し、
前記直流電圧V1〜V8、および、電圧指令値V*に基づいて、以下の(9)式によって、補正後の電圧指令値V*’を生成し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいて、マルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数9】
【請求項5】
第1〜第8直流電源を順次直列接続し、前記第1直流電源の正極端子の電位と、前記第1,第2直流電源の共通接続点の電位と、前記第2,第3直流電源の共通接続点の電位と、前記第3,第4直流電源の共通接続点の電位と、前記第4,第5直流電源の共通接続点の電位と、前記第5,第6直流電源の共通接続点の電位と、前記第6,第7直流電源の共通接続点の電位と、前記第7,第8直流電源の共通接続点の電位と、前記第8直流電源の負極端子の電位の中から選択して出力する2相以上のマルチレベル電力変換装置であって、
前記各第1〜第8直流電源の直流電圧V1〜V8を検出し、
前記直流電圧V1〜V8、および、電圧指令値V*に基づいて、
以下の(9)式の1/4Vn(n=1,2,…,8)に、以下の(10)式を代入
した式により、補正後の電圧指令値V*’を生成し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいて、マルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数9】
【数18】
【請求項6】
第1〜第8直流電源を順次直列接続し、前記第1直流電源の正極端子の電位と、前記第1,第2直流電源の共通接続点の電位と、前記第2,第3直流電源の共通接続点の電位と、前記第3,第4直流電源の共通接続点の電位と、前記第4,第5直流電源の共通接続点の電位と、前記第5,第6直流電源の共通接続点の電位と、前記第6,第7直流電源の共通接続点の電位と、前記第7,第8直流電源の共通接続点の電位と、前記第8直流電源の負極端子の電位の中から選択して出力する2相以上のマルチレベル電力変換装置であって、
前記各第1〜第8直流電源の直流電圧V1〜V8を検出し、
前記直流電圧V1〜V8、および、電圧指令値V*に基づいて、
以下の(9)式の1/4Vn(n=1,2,…,8)に、以下の(11)式を代入
した式により、補正後の電圧指令値V*’を生成し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいて、マルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数9】
【数19】
【請求項7】
各相共通の共通モジュールと、前記共通モジュールに接続された2相以上の相モジュールと、を備え、
前記共通モジュールは、
直列接続された第1,第2直流電源と、
前記第1直流電源の正極端に一端が接続された第1共通スイッチと、
前記第1直流電源の負極端に一端が接続された第4共通スイッチと、
前記第1共通スイッチの他端と前記第4共通スイッチの他端との間に接続された第1フライングキャパシタと、
前記第1共通スイッチと前記第1フライングキャパシタの共通接続点と、前記第4共通スイッチと前記第1フライングキャパシタの共通接続点と、の間に直列接続された第2,第3共通スイッチと、
前記第2直流電源の正極端に一端が接続された第5共通スイッチと、
前記第2直流電源の負極端に一端が接続された第8共通スイッチと、
前記第5共通スイッチの他端と前記第8共通スイッチの他端との間に接続された第2フライングキャパシタと、
前記第5共通スイッチと前記第2フライングキャパシタの共通接続点と、前記第8共通スイッチと前記第2フライングキャパシタの共通接続点と、の間に直列接続された第6,第7共通スイッチと、を有し、
前記相モジュールは、前記第1共通スイッチの一端側
と出力端子の間、
および、前記第2,第3共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第8共通スイッチの一端側と
前記出力端子の間にスイッチングデバイスを有し、
前記第1共通スイッチの一端側の電位、または、前記第2,第3共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第8共通スイッチの一端側の電位の中から選択して出力するマルチレベル電力変換装置であって、
前記第1共通スイッチと前記第3共通スイッチ、あるいは、前記第5共通スイッチと前記第7共通スイッチをオンするMODE1と、前記第2共通スイッチと前記第4共通スイッチ、あるいは、前記第6共通スイッチと前記第8共通スイッチをオンするMODE2を備え、
前記第1直流電源の電圧VDCP、前記第2直流電源の電圧VDCN、前記第1フライングキャパシタの電圧VFCP、前記第2フライングキャパシタの電圧VFCNを検出し、
各MODE別に、以下の(12)式〜(15)式によって、前記第1共通スイッチの一端と前記第2,第3共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V1,前記第2,第3共通スイッチの共通接続点と前記第4,第5共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V2、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点と前記第6,第7共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V3、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点と前記第8共通スイッチの一端間の直流電圧V4、を演算し、
前記直流電圧V1〜V4、および、電圧指令値V*に基づいて、以下の(3)式によって、補正後の電圧指令値V*’を生成し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいて、マルチレベル電力変換装置内の相モジュールのスイッチングデバイスのゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数3】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【請求項8】
各相共通の共通モジュールと、前記共通モジュールに接続された2相以上の相モジュールと、を備え、
前記共通モジュールは、
直列接続された第1,第2直流電源と、
前記第1直流電源の正極端に一端が接続された第1共通スイッチと、
前記第1直流電源の負極端に一端が接続された第4共通スイッチと、
前記第1共通スイッチの他端と前記第4共通スイッチの他端との間に接続された第1フライングキャパシタと、
前記第1共通スイッチと前記第1フライングキャパシタの共通接続点と、前記第4共通スイッチと前記第1フライングキャパシタの共通接続点と、の間に直列接続された第2,第3共通スイッチと、
前記第2直流電源の正極端に一端が接続された第5共通スイッチと、
前記第2直流電源の負極端に一端が接続された第8共通スイッチと、
前記第5共通スイッチの他端と前記第8共通スイッチの他端との間に接続された第2フライングキャパシタと、
前記第5共通スイッチと前記第2フライングキャパシタの共通接続点と、前記第8共通スイッチと前記第2フライングキャパシタの共通接続点と、の間に直列接続された第6,第7共通スイッチと、を有し、
前記相モジュールは、前記第1共通スイッチの一端側
と出力端子の間、
および、前記第2,第3共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第8共通スイッチの一端側と
前記出力端子の間にスイッチングデバイスを有し、
前記第1共通スイッチの一端側の電位、または、前記第2,第3共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第8共通スイッチの一端側の電位の中から選択して出力するマルチレベル電力変換装置であって、
前記第1共通スイッチと前記第3共通スイッチ、あるいは、前記第5共通スイッチと前記第7共通スイッチをオンするMODE1と、前記第2共通スイッチと前記第4共通スイッチ、あるいは、前記第6共通スイッチと前記第8共通スイッチをオンするMODE2を備え、
前記第1直流電源の電圧VDCP、前記第2直流電源の電圧VDCN、前記第1フライングキャパシタの電圧VFCP、前記第2フライングキャパシタの電圧VFCNを検出し、
各MODE別に、以下の(12)式〜(15)式によって、前記第1共通スイッチの一端と前記第2,第3共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V1,前記第2,第3共通スイッチの共通接続点と前記第4,第5共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V2、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点と前記第6,第7共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V3、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点と前記第8共通スイッチの一端間の直流電圧V4、を演算し、
前記直流電圧V1〜V4、および、電圧指令値V*に基づいて、
以下の(3)式の1/2Vn(n=1,2,3,4)に、以下の(4)式を代入した以下の(5)式
により、補正後の電圧指令値V*’を生成し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいて、マルチレベル電力変換装置内の相モジュールのスイッチングデバイスのゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数3】
【数16】
【数5】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【請求項9】
各相共通の共通モジュールと、前記共通モジュールに接続された2相以上の相モジュールと、を備え、
前記共通モジュールは、
直列接続された第1,第2直流電源と、
前記第1直流電源の正極端に一端が接続された第1共通スイッチと、
前記第1直流電源の負極端に一端が接続された第4共通スイッチと、
前記第1共通スイッチの他端と前記第4共通スイッチの他端との間に接続された第1フライングキャパシタと、
前記第1共通スイッチと前記第1フライングキャパシタの共通接続点と、前記第4共通スイッチと前記第1フライングキャパシタの共通接続点と、の間に直列接続された第2,第3共通スイッチと、
前記第2直流電源の正極端に一端が接続された第5共通スイッチと、
前記第2直流電源の負極端に一端が接続された第8共通スイッチと、
前記第5共通スイッチの他端と前記第8共通スイッチの他端との間に接続された第2フライングキャパシタと、
前記第5共通スイッチと前記第2フライングキャパシタの共通接続点と、前記第8共通スイッチと前記第2フライングキャパシタの共通接続点と、の間に直列接続された第6,第7共通スイッチと、を有し、
前記相モジュールは、前記第1共通スイッチの一端側
と出力端子の間、
および、前記第2,第3共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点
と前記出力端子の間、
および、前記第8共通スイッチの一端側と
前記出力端子の間にスイッチングデバイスを有し、
前記第1共通スイッチの一端側の電位、または、前記第2,第3共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点の電位、または、前記第8共通スイッチの一端側の電位の中から選択して出力するマルチレベル電力変換装置であって、
前記第1共通スイッチと前記第3共通スイッチ、あるいは、前記第5共通スイッチと前記第7共通スイッチをオンするMODE1と、前記第2共通スイッチと前記第4共通スイッチ、あるいは、前記第6共通スイッチと前記第8共通スイッチをオンするMODE2を備え、
前記第1直流電源の電圧VDCP、前記第2直流電源の電圧VDCN、前記第1フライングキャパシタの電圧VFCP、前記第2フライングキャパシタの電圧VFCNを検出し、
各MODE別に、以下の(12)式〜(15)式によって、前記第1共通スイッチの一端と前記第2,第3共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V1,前記第2,第3共通スイッチの共通接続点と前記第4,第5共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V2、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点と前記第6,第7共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V3、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点と前記第8共通スイッチの一端間の直流電圧V4、を演算し、
前記直流電圧V1〜V4、および、電圧指令値V*に基づいて、
以下の(3)式の1/2Vn(n=1,2,3,4)に、以下の(6)式を代入
した式により、補正後の電圧指令値V*’を生成し、
前記補正後の電圧指令値V*’に基づいて、マルチレベル電力変換装置内の相モジュールのスイッチングデバイスのゲート信号を生成することを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【数3】
【数17】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【請求項10】
前記各相の相モジュールは、
前記第1共通スイッチの一端と前記第2,第3共通スイッチの共通接続点との間に順次直列接続された第1,第2スイッチングデバイスと、
前記第6,第7共通スイッチの共通接続点と前記第8共通スイッチの一端との間に順次直列接続された第3,第4スイッチングデバイスと、
前記第1,第2スイッチングデバイスの共通接続点と前記第3,第4スイッチングデバイスの共通接続点との間に順次直列接続された第5,第6,第7,第8スイッチングデバイスと、
前記第5,第6スイッチングデバイスの共通接続点と前記第7,第8スイッチングデバイスの共通接続点との間に順次直列接続された第1,第2ダイオードと、を有し、前記第1,第2ダイオードの共通接続点を前記第1,第2直流電源の共通接続点と接続し、前記第6,第7スイッチングデバイスの共通接続点を出力端子としたことを特徴とする請求項7〜9のうち何れかに記載のマルチレベル電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレベル電力変換装置に係り、特に、直流電圧が指令値からずれてしまった場合でも出力電圧が歪まないようにする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置の構成例として、特許文献1等に5レベルインバータが開示されている。
図12に5レベルインバータを簡略化した構成を示す。
【0003】
直流部にはそれぞれ直流電圧V1,V2,V3,V4に充電された4台の第1〜第4直流電源(コンデンサ)C1〜C4によりV1+V2,V2,0,−V3,−V3−V4の5つの電位レベルが生成される。スイッチング素子により出力端子Oと直流部の1つの電位レベルを導通させ、電圧を出力する。なお、上記の各電位レベルは、第2直流電源C2と第3直流電源コンデンサC3の共通接続点NPを基準とした電位である。
【0004】
図13は、特許文献4に記載された
図12と同様に直流電源を4つ直列接続した5レベル電力変換装置の構成例である。
【0005】
特許文献1の構成では、電位レベルV2,−V3はフライングキャパシタによって生成される。
図6に、フライングキャパシタを有する5レベル電力変換装置の構成(1相あたり)を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−220765号公報
【特許文献2】特開平10−164856号公報
【特許文献3】特開2013−211970号公報
【特許文献4】特開2016−32343号公報
【特許文献5】特開2014−204548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
マルチレベル電力変換装置では、直流電圧V1,V2,V3,V4が常に規定の値になるようにすることが重要である。特許文献1ではフライングキャパシタを規定値に制御する方法が紹介されており、定常的には直流電圧V1,V2,V3,V4を規定値に制御できる。
【0008】
しかし、負荷変動による出力電流の急変などにより、過渡的に直流電圧V1,V2,V3,V4が規定値からずれてしまう場合がある。このような状態では、以下に示すように出力電圧に歪みが生じてしまう。
【0009】
電圧指令値V*と出力電圧Voの関係を説明する。電圧指令値V*とキャリア三角波との比較に基づいてスイッチング素子をオンオフさせるPWM変調においては、電圧指令値V*=0.5の場合、
図12の上から2段目の電位レベルと出力端子Oがスイッチング素子により接続され、出力電圧Vo=V2となる。
【0010】
電圧指令値V*=−0.8ならば、キャリア三角波1周期あたり最下段の電位−V3−V4が出力される期間が60%,上から4番目の電位−V3が出力される期間が40%となり、キャリア1周期平均の出力電圧はVo=0.6×(−V3−V4)+0.4×−V3=−V3−0.6×V4となる。任意の電圧指令値V*に対する出力電圧Voは以下の(1)式で表される。
【0011】
【数1】
【0012】
(1)式の関係を
図14に示す。ここでは、直流電圧V1,V3が規定値よりも過剰、直流電圧V2,V4が規定値よりも不足した状態であることを想定している。電圧指令値V*と出力電圧Voの関係は直線ではない。この条件で、
図15(a)に示すように電圧指令値V*として正弦波を与えると、出力電圧Voは
図15(b)に示すように歪んでしまう。
【0013】
出力電圧歪みは出力電流歪みの原因となり、系統連系用途であればフィルタリアクトルやトランス、コンデンサの発熱や焼損等、他の装置に悪影響を与える原因となる。モータ駆動用途においても鉄損増加やトルクリプルの原因となる。そのため、出力電圧Voの歪みは小さくしなければならない。
【0014】
出力電圧Voの歪みを小さくするには、直流電圧V1,V2,V3,V4の変動を抑える必要がある。そのためには直流コンデンサ容量を増加する必要があり、装置の容積やコストが増加してしまう。
【0015】
直流コンデンサ容量を増加せずに出力電圧の歪みを抑制する方法として、特許文献2,3が開示されている。特許文献2にはキャリア三角波の振幅を補正する手段、特許文献3には電圧指令値を補正する手段が開示されている。しかし、これらは3レベルインバータ向けの技術であり、そのままでは5レベルインバータに適用することができない。
【0016】
特許文献4には、空間ベクトル変調適用時の5レベルインバータにおける出力電圧歪みの抑制方法が開示されている。しかし、PWM変調には適用することができない。また、特許文献4の
図19には複数の直流電圧が変動すると演算が難しいとの記述がある。
【0017】
以上示したようなことから、マルチレベル電力変換装置において、直流電圧が規定値からずれてしまった場合においても、直流コンデンサ容量を増加せずに出力電圧の歪みを抑制することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、第1〜第4直流電源を順次直列接続し、前記第1直流電源の正極端子の電位、または、前記第1,第2直流電源の共通接続点の電位、または、前記第2,第3直流電源の共通接続点の電位、または、前記第3,第4直流電源の共通接続点の電位、または、前記第4直流電源の負極端子の電位の中から選択して出力する2相以上のマルチレベル電力変換装置であって、前記各第1〜第4直流電源の直流電圧V1〜V4を検出し、前記直流電圧V1〜V4、および、電圧指令値V*に基づいて、以下の(3)式により、補正後の電圧指令値V*’を算出し、前記補正後の電圧指令値V*’に基づいてマルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とする。
【0019】
【数3】
【0020】
また、その一態様として、前記(3)式の1/2Vn(n=1,2,3,4)に、以下の(4)式を代入した以下の(5)式によって補正後の電圧指令値V*’を生成することを特徴とする。
【0021】
【数16】
【0022】
【数5】
【0023】
また、他の態様として、前記(3)式の1/2Vn(n=1,2,3,4)に、以下の(6)式を代入して補正後の電圧指令値V*’を生成することを特徴とする。
【0024】
【数17】
【0025】
また、その他の態様として、第1〜第8直流電源を順次直列接続し、前記第1直流電源の正極端子の電位と、前記第1,第2直流電源の共通接続点の電位と、前記第2,第3直流電源の共通接続点の電位と、前記第3,第4直流電源の共通接続点の電位と、前記第4,第5直流電源の共通接続点の電位と、前記第5,第6直流電源の共通接続点の電位と、前記第6,第7直流電源の共通接続点の電位と、前記第7,第8直流電源の共通接続点の電位と、前記第8直流電源の負極端子の電位の中から選択して出力する2相以上のマルチレベル電力変換装置であって、前記各第1〜第8直流電源の直流電圧V1〜V8を検出し、前記直流電圧V1〜V8、および、電圧指令値V*に基づいて、以下の(9)式によって、補正後の電圧指令値V*’を生成し、前記補正後の電圧指令値V*’に基づいて、マルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号を生成することを特徴とする。
【0026】
【数9】
【0027】
また、その一態様として、前記(9)式の1/4Vn(n=1,2,...,8)に、以下の(10)式を代入して補正後の電圧指令値V*’を生成することを特徴とする。
【0028】
【数18】
【0029】
また、他の態様として、前記(9)式の1/4Vn(n=1,2,...,8)に、以下の(11)式を代入して補正後の電圧指令値V*’を生成することを特徴とする。
【0030】
【数19】
【0031】
また、その他の態様として、各相共通の共通モジュールと、前記共通モジュールに接続された2相以上の相モジュールと、を備え、前記共通モジュールは、直列接続された第1,第2直流電源と、前記第1直流電源の正極端に一端が接続された第1共通スイッチと、前記第1直流電源の負極端に一端が接続された第4共通スイッチと、前記第1共通スイッチの他端と前記第4共通スイッチの他端との間に接続された第1フライングキャパシタと、前記第1共通スイッチと前記第1フライングキャパシタの共通接続点と、前記第4共通スイッチと前記第1フライングキャパシタの共通接続点と、の間に直列接続された第2,第3共通スイッチと、前記第2直流電源の正極端に一端が接続された第5共通スイッチと、前記第2直流電源の負極端に一端が接続された第8共通スイッチと、前記第5共通スイッチの他端と前記第8共通スイッチの他端との間に接続された第2フライングキャパシタと、前記第5共通スイッチと前記第2フライングキャパシタの共通接続点と、前記第8共通スイッチと前記第2フライングキャパシタの共通接続点と、の間に直列接続された第6,第7共通スイッチと、を有し、前記相モジュールは、前記第1共通スイッチの一端側、または、前記第2,第3共通スイッチの共通接続点、または、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点、または、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点、または、前記第8共通スイッチの一端側を入力端子とし、前記各入力端子と出力端子の間にスイッチングデバイスを有し、各入力端子の電位の中から選択して出力するマルチレベル電力変換装置であって、前記第1共通スイッチと前記第3共通スイッチ、あるいは、前記第5共通スイッチと前記第7共通スイッチをオンするMODE1と、前記第2共通スイッチと前記第4共通スイッチ、あるいは、前記第6共通スイッチと前記第8共通スイッチをオンするMODE2を備え、前記第1直流電源の電圧VDCP、前記第2直流電源の電圧VDCN、前記第1フライングキャパシタの電圧VFCP、前記第2フライングキャパシタの電圧VFCNを検出し、各MODE別に、以下の(12)式〜(15)式によって、前記第1共通スイッチの一端と前記第2,第3共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V1,前記第2,第3共通スイッチの共通接続点と前記第4,第5共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V2、前記第4,第5共通スイッチの共通接続点と前記第6,第7共通スイッチの共通接続点間の直流電圧V3、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点と前記第8共通スイッチの一端間の直流電圧V4、を演算し、前記直流電圧V1〜V4、および、電圧指令値V*に基づいて、以下の(3)式によって、補正後の電圧指令値V*’を生成し、前記補正後の電圧指令値V*’に基づいて、マルチレベル電力変換装置内の相モジュールのスイッチングデバイスのゲート信号を生成することを特徴とする。
【0032】
【数3】
【0033】
【数12】
【0034】
【数13】
【0035】
【数14】
【0036】
【数15】
【0037】
また、その一態様として、前記(3)式の1/2Vn(n=1,2,3,4)に、以下の(4)式を代入した以下の(5)式によって補正後の電圧指令値V*’を生成することを特徴とする。
【0038】
【数16】
【0039】
【数5】
【0040】
また、他の態様として、前記(3)式の1/2Vn(n=1,2,3,4)に、以下の(6)式を代入して補正後の電圧指令値V*’を生成することを特徴とする。
【0041】
【数17】
【0042】
また、その一態様として、 前記各相の相モジュールは、前記第1共通スイッチの一端と前記第2,第3共通スイッチの共通接続点との間に順次直列接続された第1,第2スイッチングデバイスと、前記第6,第7共通スイッチの共通接続点と前記第8共通スイッチの一端との間に順次直列接続された第3,第4スイッチングデバイスと、前記第1,第2スイッチングデバイスの共通接続点と前記第3,第4スイッチングデバイスの共通接続点との間に順次直列接続された第5,第6,第7,第8スイッチングデバイスと、前記第5,第6スイッチングデバイスの共通接続点と前記第7,第8スイッチングデバイスの共通接続点との間に順次直列接続された第1,第2ダイオードと、を有し、前記第1,第2ダイオードの共通接続点を前記第1,第2直流電源の共通接続点と接続し、前記第6,第7スイッチングデバイスの共通接続点を出力端子としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、マルチレベル電力変換装置において、直流電圧が規定値からずれてしまった場合においても、直流コンデンサ容量を増加せずに出力電圧の歪みを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】実施形態1におけるマルチレベル電力変換装置の制御ブロックを示す図。
【
図2】実施形態2におけるマルチレベル電力変換装置の制御ブロックを示す図。
【
図4】9レベル電力変換装置の主回路構成の一例を示す図。
【
図5】実施形態3におけるマルチレベル電力変換装置の制御ブロックを示す図。
【
図7】実施形態4における直流電圧の演算ブロックを示す図。
【
図8】第1フライングキャパシタ側のスイッチングパターンのMODE1を示す図。
【
図9】第1フライングキャパシタ側のスイッチングパターンのMODE2を示す図。
【
図10】第2フライングキャパシタ側のスイッチングパターンのMODE1を示す図。
【
図11】第2フライングキャパシタ側のスイッチングパターンのMODE2を示す図。
【
図12】5レベル電力変換装置の構成を示す簡略図。
【
図13】従来の5レベル電力変換装置の構成例を示す図。
【
図15】直流電圧のずれにより出力電圧が歪む様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本願発明におけるマルチレベル電力変換装置の実施形態1〜4を
図1〜
図11に基づいて詳述する。
【0046】
[実施形態1]
本実施形態1では、
図12の概略図で示すようなマルチレベル電力変換装置の制御方法について説明する。
図12では、簡略して一相のみを示しているが、相数は2以上とする。
【0047】
図12に示すように、本実施形態1のマルチレベル電力変換装置は、第1〜第4直流電源(コンデンサ)C1〜C4が順次直列接続される。前記第1〜第4直流電源C1〜C4の電圧は、それぞれ、直流電圧V1〜V4である。
【0048】
また、第1直流電源C1の正極端子、第1,第2直流電源C1,C2の共通接続点、第2,第3直流電源C2,C3の共通接続点NP、第3,第4直流電源C3,C4の共通接続点、第4直流電源の負極端子、と出力端子Oとの間にスイッチング素子を設ける。
【0049】
そして、第1直流電源C1の正極端子の電位V1+V2、または、第1,第2直流電源C1,C2の共通接続点の電位V2、または、第2,第3直流電源C2,C3の共通接続点NPの電位0、または、第3,第4直流電源C3,C4の共通接続点の電位−V3、または、第4直流電源の負極端子の電位−V3−V4の中から選択して出力する。
【0050】
図1に本実施形態1におけるマルチレベル電力変換装置の制御ブロックを示す。
【0051】
電圧指令値V*はフィードフォワードで与えられる他、インバータ出力電流指令値とインバータ出力電流検出値との偏差をアンプで増幅した電流制御の結果や、インバータ出力電圧指令値とインバータ出力電圧検出値との偏差をアンプで増幅した電圧制御の結果として与えられる。
【0052】
直流電圧V1,V2,V3,V4は、正規化された値であり、規定値に等しければ正規化により0.5になるものとする。直流電圧V1〜V4は検出されて制御部に入力される。
【0053】
減算器1aは電圧指令値V*から直流電圧V2を減算し、V*−V2を求める。除算器2aは、減算器1aの出力V*−V2を被除数、直流電圧V1を除数として(V*−V2)/V1を求める。乗算器3aは、除算器2aの出力(V*−V2)/V1に1/2を乗算する。加算器4aは、乗算器3aの出力(V*−V2)/2V1に1/2を加算し、(V*−V2)/2V1+1/2を求める。
【0054】
除算器2bは、電圧指令値V*を被除数、直流電圧V2を除数としてV*/V2を求める。乗算器3bは、除算器2bの出力V*/V2に1/2を乗算し、V*/2V2を求める。
【0055】
除算器2cは電圧指令値V*を被除数、直流電圧V3を除数としてV*/V3を求める。乗算器3cは、除算器2cの出力V*/V3に1/2を乗算し、V*/2V3を求める。
【0056】
加算器1bは、電圧指令値V*に直流電圧V3を加算し、V*+V3を求める。除算器2dは、加算器1bの出力V*+V3を被除数、直流電圧V4を除数として(V*+V3)/V4を求める。乗算器3dは、除算器2dの出力(V*+V3)/V4に1/2を乗算し、(V*+V3)/2V4を求める。減算器4bは、乗算器3dの出力(V*+V3)/2V4から1/2を減算し、(V*+V3)/2V4−1/2を求める。
【0057】
減算器5aは、電圧指令値V*から直流電圧V2を減算し、V*−V2を求める。比較器6aは、減算器5aの出力V*−V2がプラスなら1,マイナスなら0を出力する。
【0058】
スイッチSW1の上側端子には加算器4aの出力(V*−V2)/2V1+1/2が入力され、スイッチSW1の下側端子には乗算器3bの出力V*/2V2が入力される。比較器6aの出力が1,すなわちV*>V2ならばスイッチSW1は上側端子入力を出力する。比較器6aの出力が0,すなわちV*<V2ならばスイッチSW1は下側端子入力を出力する。
【0059】
加算器5bは電圧指令値V*に直流電圧V3を加算し、V*+V3を求める。比較器6cは、加算器5bの出力V*+V3がプラスなら1,マイナスなら0を出力する。
【0060】
スイッチSW2の上側端子には乗算器3cの出力V*/2V3が入力され、スイッチSW2の下側端子には減算器4bの出力(V*+V3)/2V4−1/2が入力される。比較器6cの出力が1,すなわちV*>−V3ならばスイッチSW2は上側端子入力を出力する。比較器6cの出力が0すなわち、V*<−V3ならばスイッチSW2は下側端子入力を出力する。
【0061】
比較器6bは、電圧指令値V*>0なら1,電圧指令値V*<0なら0を出力する。スイッチSW3の上側端子には、スイッチSW1の出力が入力され、スイッチSW3の下側端子にはスイッチSW2の出力が入力される。V*>0ならばスイッチSW3は上側端子入力を出力し、V*<0ならばスイッチSW3は下側端子入力を出力する。
【0062】
スイッチSW3の出力が補正後の電圧指令値V*’となり、補正後の電圧指令値V*’とキャリア三角波とを比較しマルチレベル電力変換装置内のスイッチング素子のゲート信号(オンオフ信号)を生成する。
【0063】
電圧歪みは、電圧指令値V*をPWM変調する際に(1)式による変換が行われることが原因である。そこで、本実施形態1では電圧指令値V*をあらかじめ(1)式の逆関数で補正する。(1)式の逆関数は、以下の(2)式で表すことができる。
【0065】
(2)式の出力電圧Voに電圧指令値V*を代入し、その結果得られた(2)式の電圧指令値V*を補正後の電圧指令値V*’とする。補正後の電圧指令値V*’をPWM変調することにより、電圧指令値V*と出力電圧Voを一致させることができる。補正後の電圧指令値V*’の演算式は、以下の(3)式となる。
【0067】
図1は、(3)式を演算する制御ブロック図である。
【0068】
以上示したように、本実施形態1によれば、以下の効果が得られる。
【0069】
5レベル電力変換装置において、各第1〜第4直流電源C1〜C4の直流電圧V1〜V4が規定値からずれてしまった場合でも、交流側の出力電圧Voは指令値通りとすることができるようになり、出力電圧Voの歪みを抑制することができる。これにより、マルチレベル電力変換装置に接続する系統や負荷への悪影響を低減でき、マルチレベル電力変換装置の信頼性を向上させることができる。
【0070】
また、出力電圧Voの歪みが抑制されることによって、各第1〜第4直流電源C1〜C4の直流電圧V1〜V4の変動や脈動を許容できるようになるため、直流コンデンサ容量を低減することができ、装置の小型化や低コスト化につながる。
【0071】
また、本実施形態1は、複数の第1〜第4直流電源C1〜C4の直流電圧V1〜V4が一度にずれた場合、直流電圧V1〜V4の総和は規定値通りだが個別の第1〜第4直流電源C1〜C4の直流電圧V1〜V4のバランスが崩れた場合、各第1〜第4直流電源C1〜C4の直流電圧V1〜V4は等しくバランスしているが総和がずれた場合、の各々の場合について、対応することができる。
【0072】
[実施形態2]
図2には本実施形態2におけるマルチレベル電力変換装置の制御ブロックを示す。本実施形態2は実施形態1にある4個の除算器2a〜2dと、その後段の乗算器3a〜3dを、以下の構成に置き換えたものである。その他の構成は実施形態1と同様であるため説明は省略する。
【0073】
減算器7a〜7dは、1から実施形態1における除数である直流電圧V1,V2,V3,V4を減算する。乗算器8a〜8dは、減算器7a〜7dの出力と、実施形態1における被除数V*−V2,V2,V3,V*+V3との積を求める。乗算器9a〜9dは乗算器8a〜8dの出力を2倍する。
【0074】
図1の最も上にある乗算器3aを例に説明すると、実施形態1では(V*−V2)/2V1を求めていたが、本実施形態2では乗算器9aにおいて(V*−V2)×2(1−V1)を求めている。
【0075】
実施形態1は除算を4回行うが、除算は演算負荷が高いという問題がある。本実施形態2は、マクローリン展開を用いた以下の近似式(4)式により除算を乗算に置換し演算負荷を低減した。
【0077】
特許文献1などの方式を適用し直流電圧V1,V2,V3,V4が規定値に制御されているならば、過渡的な変動が生じても直流電圧V1,V2,V3,V4は規定値0.5に近い値となるため、近似を行っても誤差は小さく実施形態1に比べて歪みはほとんど増加しない。(規定値とのずれ10%で誤差1%)
図2での演算内容を以下の(5)式に示す。
【0079】
直流電圧V1,V2,V3,V4の変動が大きいならば、近似式を求める際にマクローリン展開を高い次数まで行うことで、演算負荷は増加するが誤差をより小さくすることができる。以下の(6)式は2次まで展開した近似式である。(規定値とのずれ20%で誤差1%)
【0081】
以上示したように、本実施形態2によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、本実施形態2は、実施形態1に比べて、除算を使用しないため演算負荷を下げることができる。その結果、演算遅延の低減による制御の安定化や制御機能を搭載した装置(基板など)のコスト低減といった効果が得られる。
【0082】
また、近似式の次数を上げれば直流電圧が規定値から大きくずれてしまった場合でも演算精度を維持でき、直流コンデンサ容量低減と演算負荷低減の両立を図ることができる。
【0083】
[実施形態3]
図3に本実施形態3を適用する9レベル電力変換装置の簡略した構成図を示す。
図3に示すように、本実施形態3のマルチレベル電力変換装置は、第1〜第8直流電源C1〜C8が順次直列接続される。前記第1〜第8直流電源C1〜C8は、それぞれ、直流電圧V1〜V8に制御される。
【0084】
そして、第1直流電源C1の正極端子の電位V1+V2+V3+V4、または、第1,第2直流電源C1,C2の共通接続点の電位V2+V3+V4、または、第2,第3直流電源C2,C3の共通接続点の電位V3+V4、または、第3,第4直流電源C3,C4の共通接続点の電位V4、または、第4,第5直流電源C4,C5の共通接続点NPの電位0、または、第5,第6直流電源C5,C6の共通接続点の電位−V5、または、第6,第7直流電源C6,C7の共通接続点の電位−V5−V6、または、第7,第8直流電源C7,C8の共通接続点の電位−V5−V6−V7、または、第8直流電源C8の負極端子の電位−V5−V6−V7−V8の中から選択して出力する。
【0085】
図4は、特許文献5に開示されている
図6と同様に第1〜第8直流電源C1〜C8を8つ直列接続した9レベル電力変換装置の構成例である。
【0086】
第1直流電源C1の正極端子と第1,第2直流電源C1,C2の共通接続点との間には、第1スイッチング素子S1と第1ダイオードD1が直列接続される。第1,第2直流電源C1,C2の共通接続点と第2,第3直流電源C2,C3の共通接続点との間には、第2,第3ダイオードD2,D3が直列接続される。第2,第3直流電源C2,C3の共通接続点と第3,第4直流電源C3,C4の共通接続点との間には、第4,第5ダイオードD4,D5が直列接続される。第3,第4直流電源C3,C4の共通接続点と第4,第5直流電源C4,C5の共通接続点との間には、第6,第7ダイオードD6,D7が直列接続される。
【0087】
第4,第5直流電源C4,C5の共通接続点と第5,第6直流電源C5,C6の共通接続点との間には、第8,第9ダイオードD8,D9が直列接続される。第5,第6直流電源C5,C6の共通接続点と第6,第7直流電源C6,C7の共通接続点との間には、第10,第11ダイオードD10,D11が直列接続される。第6,第7直流電源C6,C7の共通接続点と第7,第8直流電源C7,C8の共通接続点との間には、第12,第13ダイオードD12,D13が直列接続される。第7,第8直流電源C7,C8の共通接続点と第8直流電源C8の負極端子との間には、第14ダイオードD14と第2スイッチング素子S2が直列接続される。
【0088】
第1スイッチング素子S1と第1ダイオードD1の共通接続点と第2,第3ダイオードD2,D3の共通接続点との間には、第3,第4スイッチング素子S3,S4が直列接続される。第4,第5ダイオードD4,D5の共通接続点と第6,第7ダイオードD6,D7の共通接続点との間には第5,第6スイッチング素子S5,S6が直列接続される。
【0089】
第8,第9ダイオードD8,D9の共通接続点と第10,第11ダイオードD10,11の共通接続点との間には第7,第8スイッチング素子S7,S8が直列接続される。第12,第13ダイオードD12,D13の共通接続点と、第14ダイオードD14と第2スイッチング素子S2の共通接続点との間には第9,第10スイッチング素子S9,S10が直列接続される。
【0090】
第3,第4スイッチング素子S3,S4の共通接続点と第5,第6スイッチング素子S5,S6の共通接続点との間には第11,第12スイッチング素子S11,S12が直列接続される。第7,第8スイッチング素子S7,S8の共通接続点と第9,第10スイッチング素子S9,S10の共通接続点との間には第13,第14スイッチング素子S13,S14が直列接続される。
【0091】
第11,第12スイッチング素子S11,S12の共通接続点と第13,第14スイッチング素子S13,S14の共通接続点との間には第15,第16スイッチング素子S15,S16が直列接続される。第15,第16スイッチング素子S15,S16の共通接続点が出力端子Oとなる。
【0092】
図5に本実施形態3におけるマルチレベル電力変換装置の制御ブロックを示す。本実施形態3は、実施形態1を9レベル電力変換装置に適用できるよう拡張した構成である。
【0093】
図5に示すように、電圧指令値補正部10には、正規化した直流電圧V1,V2,V3,V4,V5,V6,V7,V8および電圧指令値V*が入力される。これら直流電圧V1〜V8は、規定値に等しければ正規化により0.25になるとする。電圧指令値補正部10は、直流電圧V1〜V8および電圧指令値V*に基づいて、後述する(9)式により補正後の電圧指令値V*’を演算する。
【0094】
電圧指令値補正部10の出力が補正後の電圧指令値V*’となり、補正後の電圧指令値V*’とキャリア三角波とを比較し、スイッチング素子のゲート信号(オンオフ信号)を生成する。
【0095】
実施形態1の制御方法は、5レベルを超えるマルチレベル電力変換装置に適用することができる。本実施形態3では9レベルに適用した例を示す。9レベル電力変換装置においては、実施形態1と同様の考え方により、電圧指令値V*と出力電圧Voの関係を以下の(7)で示すことができる。
【0097】
9レベル電力変換装置では(7)式の逆関数で電圧指令値V*を補正すればよい。逆関数を以下の(8)式に示す。
【0099】
(8)式の出力電圧Voに電圧指令値V*を代入し、得られた結果の電圧指令値V*を補正後の電圧指令値V*’としてPWM変調を行う。補正後の電圧指令値V*’の演算式を、以下の(9)式に示す。
【0101】
本実施形態3においても、実施形態2のように、除算を乗算に置換し演算負荷を低減することができる。以下の(10)式に1次のマクローリン展開による除算の近似式を、以下の(11)式に2次の近似式を示す。
【0104】
以上示したように、本実施形態3によれば、9レベル電力変換装置においても実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。また、同様の拡張を行うことで、5レベルや9レベル以外のマルチレベル電力変換装置にも適用することができる。また、本実施形態3は実施形態2と組み合わせ、演算負荷を下げることができる。
【0105】
[実施形態4]
本実施形態4は、
図6に示すようなフライングキャパシタFCP,FCNを有するマルチレベル電力変換装置の主回路構成に実施形態1を適用できるようにしたものである。
【0106】
ここで、
図6に示すマルチレベル電力変換装置の構成を説明する。
図6に示すマルチレベル電力変換装置は、各相共通の共通モジュール11と、各相毎(2相以上)の相モジュール12と、を備える。共通モジュール11では、第1,第2直流電源DCP,DCNが直列接続される。
【0107】
共通モジュール11は、第1直流電源DCPの正極端に第1共通スイッチSc1の一端が接続される。第1直流電源DCPの負極端に第4共通スイッチSc4の一端が接続される。第1共通スイッチSc1の他端と第4共通スイッチSc4の他端との間に第1フライングキャパシタFCPが接続される。
【0108】
第1共通スイッチSc1と第1フライングキャパシタFCPの共通接続点と、第4共通スイッチSc4と第1フライングキャパシタFCPの共通接続点と、の間に第2,第3共通スイッチSc2,Sc3が直列接続される。
【0109】
第2直流電源DCNの正極端に第5共通スイッチSc5の一端が接続される。第2直流電源DCNの負極端に第8共通スイッチSc8の一端が接続される。第5共通スイッチSc5の他端と第8共通スイッチSc8の他端との間に第2フライングキャパシタFCNが接続される。
【0110】
第5共通スイッチSc5と第2フライングキャパシタFCNの共通接続点と、第8共通スイッチSc8と第2フライングキャパシタFCNの共通接続点と、の間に第6,第7共通スイッチSc6,Sc7が直列接続される。
【0111】
ここで、第1共通スイッチSc1の一端側と第2,第3共通スイッチSc2,Sc3の共通接続点間の電圧を直流電圧V1とし、第2,第3共通スイッチSc2,Sc3の共通接続点と第4,第5共通スイッチSc4,Sc5の共通接続点との間の電圧を直流電圧V2とし、第4,第5共通スイッチSc4,Sc5の共通接続点と第6,第7共通スイッチSc6,Sc7の共通接続点との間の電圧を直流電圧V3とし、第6,第7共通スイッチSc6,Sc7の共通接続点と第8共通スイッチSc8の一端との間の電圧を直流電圧V4とする。
【0112】
相モジュール12は、第1共通スイッチSc1の一端側の電位、または、第2,第3共通スイッチSc2,Sc3の共通接続点の電位、または、第4,第5共通スイッチSc4,Sc5の共通接続点の電位、または、第6,第7共通スイッチSc6,Sc7の共通接続点の電位、または、第8共通スイッチSc8の一端側の電位の中から選択して出力する。
【0113】
具体的には、相モジュール12は、第1共通スイッチSc1の一端と第2,第3共通スイッチSc2,Sc3の共通接続点との間に第1,第2スイッチングデバイスSd1,Sd2が順次直列接続される。第6,第7共通スイッチSc6,Sc7の共通接続点と第8共通スイッチSc8の一端との間に第3,第4スイッチングデバイスSd3,Sd4が順次直列接続される。
【0114】
第1,第2スイッチングデバイスSd1,Sd2の共通接続点と第3,第4スイッチングデバイスSd3,Sd4の共通接続点との間に第5,第6,第7,第8スイッチングデバイスSd5,Sd6a,Sd6b,Sd7a,Sd7b,Sd8が順次直列接続される。
【0115】
第5,第6スイッチングデバイスSd5,Sd6aの共通接続点と第7,第8スイッチングデバイスSd7b,Sd8の共通接続点との間に第1,第2ダイオードD1a,D1b,D2a,D2bが順次直列接続される。
【0116】
第1,第2ダイオードD1b,D2aの共通接続点を第1,第2直流電源DCP,DCNの共通接続点と接続する。第6,第7スイッチングデバイスSd6b,Sd7aの共通接続点を出力端子Oとする。
【0117】
なお、第6スイッチングデバイスS6a,S6b,第7スイッチングデバイスS7a,S7b,第1ダイオードD1a,D1b,第2ダイオードD2a,D2bは、耐電圧の関係から2つ直列接続しているが、耐電圧の問題が解消できるのであれば、1つでもよい。
【0118】
なお、
図6の主回路構成は、5レベル電力変換装置の1相のみの構成を示している。3相の電力変換装置の場合は、共通モジュール11は各相で共通化され、相モジュール12は各相別に設けられる。
【0119】
図7に本実施形態4におけるマルチレベル電力変換装置の直流電圧V1〜V4の演算ブロックを示す。
図7に基づいて、本実施形態4におけるマルチレベル電力変換装置の演算ブロックを説明する。
【0120】
正規化した第1,第2直流電源DCP,DCNの電圧VDCP,VDCNは、規定値に等しければ正規化により1になるとする。正規化した第1フライングキャパシタFCPの電圧VFCP、および、正規化した第2フライングキャパシタFCNの電圧VFCNは、規定値に等しければ正規化により0.5になるとする。
【0121】
減算器13aは、第1直流電源DCPの電圧VDCP−第1フライングキャパシタFCPの電圧VFCPを演算する。スイッチSW4の上側端子には第1フライングキャパシタFCPの電圧VFCPが入力され、下側端子には減算器13aの出力VDCP−VFCPが入力される。
【0122】
スイッチSW4は、第1〜第4共通スイッチSc1〜Sc4のスイッチングパターンがMODE1ならば上側端子の信号を出力し、MODE2ならば下側端子の信号を出力し、それ以外の指令が来たらスイッチの切り替えを行わず前回の状態を維持する。
【0123】
第1〜第4共通スイッチSc1〜Sc4のスイッチングパターンMODE1におけるONの素子は、
図8の丸で囲った第1,第3共通スイッチSc1,Sc3である。第1〜第4共通スイッチSc1〜Sc4のスイッチングパターンMODE2におけるONの素子は、
図9の丸で囲った第2,第4共通スイッチSc2,Sc4である。なお、スイッチングパターンMODE1,MODE2の両方で第2,第5,第6スイッチングデバイスSd2,Sd5,Sd6a,Sd6bはONとなる。スイッチングパターンMODE1,MODE2の両方の場合において、スイッチSW4出力は直流電圧V1となり、実施形態1,2における
図1や
図2の直流電圧V1に入力される。
【0124】
減算器14aは、第1直流電源DCPの電圧VDCPからスイッチSW4の出力信号(つまり、直流電圧V1)を減算する。減算器14aの出力は直流電圧V2となり、実施形態1,2における
図1や
図2の直流電圧V2に入力される。
【0125】
減算器13bは、第2直流電源の電圧VDCN−第2フライングキャパシタFCNの電圧VFCNを演算する。スイッチSW5の上側端子には第2フライングキャパシタFCNの電圧VFCNが入力され、下側端子には減算器13bの出力VDCN−VFCNが入力される。
【0126】
スイッチSW5は、第5〜第8共通スイッチSc5〜Sc8のスイッチングパターンがMODE1ならば上側端子の信号を出力し、MODE2ならば下側端子の信号を出力し、それ以外の指令が来たらスイッチの切り替えを行わず前回の状態を維持する。
【0127】
第5〜第8共通スイッチSc5〜Sc8のスイッチングパターンMODE1におけるONの素子は、
図10の丸で囲った第5,第7共通スイッチSc5,Sc7である。第5〜第8共通スイッチSc5〜Sc8のスイッチングパターンMODE2におけるONの素子は、
図11の丸で囲った第6,第8共通スイッチSc6,Sc8である。なお、スイッチングパターンMODE1,MODE2の両方で、第3,第7,第8スイッチングデバイスSd3,Sd7a,Sd7b,Sd8はONとなる。スイッチングパターンMODE1,MODE2の両方の場合において、スイッチSW5出力は直流電圧V3となり、実施形態1,2の
図1や
図2の直流電圧V3に入力される。
【0128】
減算器14bは、第2直流電源DCNの電圧VDCNからスイッチSW5の出力信号を減算する。減算器14bの出力は直流電圧V4となり、実施形態1,2における
図1や
図2の直流電圧V4に入力される
特許文献1に示すフライングキャパシタを有するマルチレベル電力変換装置の場合、通常は第1,第2直流電源DCP,DCN,第1,第2フライングキャパシタFCP,FCNの電圧を検出し、直流電圧V1,V2,V3,V4は検出しない。このような場合、実施形態1を適用するには直流電圧V1,V2,V3,V4を求める必要がある。本実施形態4は、
図6の主回路構成で直流電圧V1,V2,V3,V4を求める方法を示す。
【0129】
図6の構成では、直流電圧V1,V2は第1〜第4共通スイッチSc1〜Sc4のスイッチングパターンに依存する。スイッチングパターンMODE1,MODE2はそれぞれ
図8,
図9の丸で囲ったスイッチング素子がON状態となる。スイッチングパターンMODE1では第1共通スイッチSc1と第3共通スイッチSc3がON状態で、スイッチングパターンMODE2では第2共通スイッチSc2と第4共通スイッチSc4がON状態であるため、直流電圧V1,V2は第1直流電源DCPの電圧VDCP,第1フライングキャパシタFCPの電圧VFCPを用いて以下の(12)式,(13)式で表される。ここでは、第1〜第4共通スイッチSc1〜Sc4のオン電圧降下は無視する。
【0132】
直流電圧V3,V4も同様に第5〜第8共通スイッチSc5〜Sc8に依存する。スイッチングパターンMODE1,MODE2はそれぞれ
図10,
図11の丸で囲ったスイッチング素子がON状態となる。スイッチングパターンMODE1では第5共通スイッチSc5と第7共通スイッチSc7がON状態で、スイッチングパターンMODE2では第6共通スイッチcS6と第8共通スイッチSc8がON状態であるため、直流電圧V3,V4は第2直流電源DCNの電圧VDCN,第2フライングキャパシタFCPの電圧VFCNを用いて以下の(14)式,(15)式で表される。ここでは、第5〜第8共通スイッチSc5〜Sc8のオン電圧降下は無視する。
【0135】
本実施形態4では、スイッチングパターンに応じて
図7のスイッチSW4,SW5を切り替え直流電圧V1,V2,V3,V4を求められるようにした。求めた直流電圧V1,V2,V3,V4を実施形態1,2における
図1や
図2に入力し、補正後の電圧指令値V*’を演算し、補正後の電圧指令値V*’に基づいて相モジュールのスイッチングデバイスのゲート信号を生成すれば、フライングキャパシタを有する構成でも実施形態1や実施形態2を適用することができる。
【0136】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0137】
V1〜V4…直流電圧
C1〜C4…第1〜第4直流電源
O…出力端子
SW1〜SW5…スイッチ
10…電圧指令値補正部
11…共通モジュール
12…相モジュール
DCP…第1直流電源
DCN…第2直流電源
FCP…第1フライングキャパシタ
FCN…第2フライングキャパシタ