特許第6962083号(P6962083)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962083
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20211025BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
   G03G21/00 510
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-171180(P2017-171180)
(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-45787(P2019-45787A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】春原 剛
(72)【発明者】
【氏名】千葉 敬仁
【審査官】 飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−106320(JP,A)
【文献】 特開2017−032951(JP,A)
【文献】 特開2003−215973(JP,A)
【文献】 特開2011−090136(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0091229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧手段と加熱手段とを含み、画像が形成された記録媒体を前記加圧手段と前記加熱手段とで挟むことにより前記画像を定着させる定着手段と、
前記定着手段を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段の負荷を検出する負荷検出手段と、
前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の前記負荷及び前記負荷を検出するときの前記定着手段の温度に基づいて、前記定着手段の異常を検知する異常検知手段と、
を備え
前記異常検知手段は、前記定着手段の温度が、前記画像を定着させる際の定着温度よりも低い温度の場合における前記負荷を用いて、前記定着手段の異常の有無を検知する
定着装置。
【請求項2】
前記定着手段の温度を検出する温度検出手段を備え、
前記異常検知手段は、前記温度検出手段により検出された温度が、前記画像を定着させる際の定着温度よりも低い温度の場合に、前記定着手段に前記記録媒体を通過させて前記定着手段の異常の有無を検知する
請求項記載の定着装置。
【請求項3】
前記異常検知手段は、前記温度検出手段により検出された温度と前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の前記負荷の変化との関係を用いて前記定着手段の異常の有無を検知する
請求項記載の定着装置。
【請求項4】
加圧手段と加熱手段とを含み、画像が形成された記録媒体を前記加圧手段と前記加熱手段とで挟むことにより前記画像を定着させる定着手段と、
前記定着手段を駆動する駆動手段と、
前記駆動手段の負荷を検出する負荷検出手段と、
前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の前記負荷及び前記負荷を検出するときの前記定着手段の温度に基づいて、前記定着手段の異常を検知する異常検知手段と、
を備え、
前記異常検知手段は、前記定着手段による定着が最後に実行されてから、前記定着手段の温度が前記画像を定着させる際の定着温度よりも低い温度となる期間が経過した場合に、前記記録媒体を前記定着手段に通過させて前記定着手段の異常の有無を検知する
着装置。
【請求項5】
前記異常検知手段は、前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の負荷として、前記記録媒体が前記定着手段に突入する際の突入期間及び前記記録媒体が前記定着手段から排出される際の排出期間を除いた前記記録媒体の通過期間の少なくとも一部の期間の負荷を用いて前記定着手段の異常の有無を検知する
請求項1〜の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記異常検知手段は、厚さの異なる複数の前記記録媒体のうち、最大の厚さの前記記録媒体を選択して前記定着手段に通過させることにより、前記定着手段の異常の有無を検知する
請求項1〜の何れか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、
前記記録媒体に形成された画像を定着させる請求項1〜の何れか1項記載の定着装置と、
を備えた画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成手段は、前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の前記負荷を用いて前記定着手段の異常を検知する際、前記記録媒体に画像を形成しない
請求項記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記記録媒体の一方の面に形成された画像を前記定着装置により定着した後に、前記記録媒体の他方の面にも前記画像形成手段により画像が形成されるように前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記定着手段の温度が前記画像を定着させる際の定着温度に到達する前に前記記録媒体を前記定着手段に通過させて、前記異常検知手段により前記定着手段の異常の有無が検知され、前記定着手段の温度が前記定着温度に到達した後に前記画像形成手段により前記記録媒体に画像が形成されるように前記搬送手段を制御する制御手段と、
を備えた請求項又は請求項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、故障予測の対象となる画像形成装置の画像形成処理の実行における画像形成パラメータを収集する収集手段と、前記収集された画像形成パラメータを蓄積する蓄積手段と、前記蓄積された画像形成パラメータの変動の傾向に基づいて、前記画像形成パラメータの前記傾向に対する変曲点を抽出する抽出手段と、過去に発生した画像形成装置の故障の事例に基づいて、当該故障の発生前に変曲点が生じた画像形成パラメータについて、当該変曲点における特徴を抽出して故障予測の基準を作成する基準作成手段と、前記変動の傾向と前記基準とに基づいて、前記変曲点以後に前記故障予測の対象となる画像形成装置に生ずる故障を予測する予測手段と、を備えたことを特徴とする故障予測装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、画像形成した未定着トナーを転写された用紙に、加熱ローラと加圧ローラとで熱及び圧を付与する定着装置を備える画像形成装置において、前記定着装置での障害の原因の故障診断を行う方法であって、前記定着装置内で発生した用紙詰まりの発生回数を記憶し、前記定着装置の接離モータの電流値を記憶し、前記定着装置の加圧ローラ側の加圧分離板先端の位置を記憶し、前記3つの記憶したデータを用いて、ブースティング法により重み付けを行い、前記定着装置での障害の原因の推定を含む画像形成装置を構成する機器の故障を診断することを特徴とする故障診断方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−147049号公報
【特許文献2】特開2013−25196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、定着手段に記録媒体を通過させずに定着手段の異常を検知する場合と比較して、精度良く定着手段の異常を検知することができる定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の定着装置は、加圧手段と加熱手段とを含み、画像が形成された記録媒体を前記加圧手段と前記加熱手段とで挟むことにより前記画像を定着させる定着手段と、前記定着手段を駆動する駆動手段と、前記駆動手段の負荷を検出する負荷検出手段と、前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の前記負荷及び前記負荷を検出するときの前記定着手段の温度に基づいて、前記定着手段の異常を検知する異常検知手段と、を備え、前記異常検知手段は、前記定着手段の温度が、前記画像を定着させる際の定着温度よりも低い温度の場合における前記負荷を用いて、前記定着手段の異常の有無を検知する。
【0008】
請求項記載の発明は、前記定着手段の温度を検出する温度検出手段を備え、前記異常検知手段は、前記温度検出手段により検出された温度が、前記画像を定着させる際の定着温度よりも低い温度の場合に、前記定着手段に前記記録媒体を通過させて前記定着手段の異常の有無を検知する。
【0009】
請求項記載の発明は、前記異常検知手段は、前記温度検出手段により検出された温度と前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の前記負荷の変化との関係を用いて前記定着手段の異常の有無を検知する。
【0010】
請求項記載の発明は、加圧手段と加熱手段とを含み、画像が形成された記録媒体を前記加圧手段と前記加熱手段とで挟むことにより前記画像を定着させる定着手段と、前記定着手段を駆動する駆動手段と、前記駆動手段の負荷を検出する負荷検出手段と、前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の前記負荷及び前記負荷を検出するときの前記定着手段の温度に基づいて、前記定着手段の異常を検知する異常検知手段と、を備え、前記異常検知手段は、前記定着手段による定着が最後に実行されてから、前記定着手段の温度が前記画像を定着させる際の定着温度よりも低い温度となる期間が経過した場合に、前記記録媒体を前記定着手段に通過させて前記定着手段の異常の有無を検知する。
【0011】
請求項記載の発明は、前記異常検知手段は、前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の負荷として、前記記録媒体が前記定着手段に突入する際の突入期間及び前記記録媒体が前記定着手段から排出される際の排出期間を除いた前記記録媒体の通過期間の少なくとも一部の期間の負荷を用いて前記定着手段の異常の有無を検知する。
【0012】
請求項記載の発明は、前記異常検知手段は、厚さの異なる複数の前記記録媒体のうち、最大の厚さの前記記録媒体を選択して前記定着手段に通過させることにより、前記定着手段の異常の有無を検知する。
【0013】
請求項記載の発明の画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成手段と、前記記録媒体に形成された画像を定着させる請求項1〜の何れか1項記載の定着装置と、を備える。
請求項記載の発明は、前記画像形成手段は、前記記録媒体が前記定着手段を通過する際の前記負荷を用いて前記定着手段の異常を検知する際、前記記録媒体に画像を形成しない。
【0014】
請求項記載の発明は、前記記録媒体の一方の面に形成された画像を前記定着装置により定着した後に、前記記録媒体の他方の面にも前記画像形成手段により画像が形成されるように前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記定着手段の温度が前記画像を定着させる際の定着温度に到達する前に前記記録媒体を前記定着手段に通過させて、前記異常検知手段により前記定着手段の異常の有無が検知され、前記定着手段の温度が前記定着温度に到達した後に前記画像形成手段により前記記録媒体に画像が形成されるように前記搬送手段を制御する制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1及び請求項記載の発明によれば、定着手段に記録媒体を通過させずに定着手段の異常を検知する場合と比較して、精度良く定着手段の異常を検知することができる。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、温度検出手段を用いずに定着手段の温度を検出する場合と比較して、定着手段の温度が定着温度よりも低いか否かを良好に判定することができる。
【0018】
請求項に記載の発明によれば、温度検出手段により検出された温度と記録媒体が定着手段を通過する際の負荷の変化との関係を考慮せずに定着手段の異常の有無を検知する場合と比較して、精度良く定着手段の異常を検知することができる。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、定着手段による定着が最後に実行されてから経過した時間を考慮せずに定着手段の異常の有無を検知する場合と比較して、精度良く定着手段の異常を検知することができる。
【0020】
請求項に記載の発明によれば、記録媒体が定着手段に突入する際の突入期間又は記録媒体が定着手段から排出される際の排出期間の負荷を用いて定着手段の異常の有無を検知する場合と比較して、精度良く定着手段の異常を検知することができる。
【0021】
請求項に記載の発明によれば、厚さの異なる複数の記録媒体のうち、最大の厚さ以外の厚さの記録媒体を選択して定着手段に通過させることにより、定着手段の異常の有無を検知する場合と比較して、精度良く定着手段の異常を検知することができる。
請求項記載の発明によれば、記録媒体が定着手段を通過する際の負荷を用いて定着手段の異常を検知する際、記録媒体に画像を形成する場合と比較して、負荷を検知する際の定着動作に伴う定着不良を防止することができる。
【0022】
請求項に記載の発明によれば、定着手段の温度が定着温度に到達するまで記録媒体に対する画像形成を開始させない場合と比較して、定着手段の温度が定着温度に到達するまでの時間を有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略構成図である。
図2】加圧ロールが離間位置に位置している状態での定着装置の構成を示す概略断面図である。
図3】加圧ロールが加圧位置に位置している状態での定着装置の構成を示す概略断面図である。
図4】第1実施形態に係る画像形成装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
図5】正常時のトルク検出部による検出結果の時系列データの一例を示すグラフである。
図6】用紙が定着装置に突入するタイミングの説明に供する概略構成図である。
図7】用紙が定着装置から排出されるタイミングの説明に供する概略構成図である。
図8】第1実施形態に係る異常検知処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
図9】モータの電流値の波形の一例を示す線図である。
図10】定着装置が初期状態の場合及び定着装置に異常が有る場合におけるモータの電流値の波形の一例を示す線図である。
図11】第2実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略構成図である。
図12】第2実施形態に係る画像形成装置の電気系の要部構成を示すブロック図である。
図13】第2実施形態に係る異常検知処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態例を詳細に説明する。
【0025】
(第1実施形態)
【0026】
図1図3を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10の構成を説明する。なお、以下では、黄色をY、マゼンタ色をM、シアン色をC、黒色をKで表すと共に、各構成部品及びトナー画像(画像)を色毎に区別する必要がある場合には、符号の末尾に各色に対応する色の符号(Y、M、C、K)を付して説明する。また、以下では、各構成部品及びトナー画像を色毎に区別せずに総称する場合には、符号の末尾の色の符号を省略して説明する。
【0027】
(全体構成)
【0028】
図1に示すように、画像形成装置10の装置本体10Aの内部には、入力される画像データをY、M、C、Kの4色の階調データに変換する画像処理を行う画像処理部12が設けられている。
【0029】
また、装置本体10Aの中央側には、各色のトナー画像を形成する画像形成ユニット16が、水平方向に対して傾斜する方向に間隔をおいて配置されている。また、各色の画像形成ユニット16の鉛直方向の上方には、各色の画像形成ユニット16で形成されたトナー画像が多重に転写される一次転写ユニット18が設けられている。
【0030】
さらに、一次転写ユニット18の側方(図1の左側)には、後述する供給搬送ユニット30によって搬送経路60に沿って搬送された用紙Pに、一次転写ユニット18に多重に転写されたトナー画像を転写する二次転写ロール22が設けられている。なお、用紙Pは、記録媒体の一例である。
【0031】
二次転写ロール22に対して用紙Pの搬送方向(以下、「用紙搬送方向」という。)の下流側には、定着装置24が設けられている。また、定着装置24は、用紙Pに転写されたトナー画像を熱及び圧力によって用紙Pに定着させる。
【0032】
また、定着装置24に対して用紙搬送方向の下流側には、トナー画像が定着された用紙Pを画像形成装置10の装置本体10Aの上部に設けられた排出部26に排出する排出ロール28が設けられている。
【0033】
一方、画像形成ユニット16の鉛直方向の下方及び側方には、用紙Pを供給し搬送する供給搬送ユニット30が設けられている。また、一次転写ユニット18の鉛直方向の上方には、装置本体10Aの正面から装置本体10Aに対して着脱可能とされ、現像器38に補給されるトナーが充填されるトナーカートリッジ14が色別に4個(14K〜14Y)装置幅方向に並んで配置されている。各色のトナーカートリッジ14は、装置奥行方向に延びる円柱状とされ、各色の現像器38と図示しない補給管を介して接続されている。
【0034】
(画像形成ユニット)
【0035】
図1に示すように、各色の画像形成ユニット16は、すべて同様に構成されている。そして、画像形成ユニット16は、回転する円柱状の像保持体34と、像保持体34の表面を帯電させる帯電器36と、を備えている。
【0036】
また、画像形成ユニット16は、帯電した像保持体34の表面に露光光を照射するLED(Light Emitting Diode)ヘッド32を備えている。また、画像形成ユニット16は、LEDヘッド32による露光光の照射によって形成された静電潜像を現像剤(本実施の形態では、負極に帯電したトナー)で現像してトナー画像として可視化する現像器38を備えている。また、画像形成ユニット16は、像保持体34の表面を清掃する図示しない清掃ブレードを備えている。
【0037】
現像器38には、像保持体34と対向して現像ロール39が配置されており、現像器38は、現像ロール39を用いて像保持体34に形成された静電潜像を現像剤で現像してトナー画像として可視化する。
【0038】
そして、帯電器36、LEDヘッド32、現像ロール39、及び清掃ブレードは、像保持体34の表面と対向して、像保持体34の回転方向の上流側から下流側へ向けてこの順番で配置されている。
【0039】
(転写部(一次転写ユニット・二次転写ロール))
【0040】
一次転写ユニット18は、無端状の中間転写ベルト42と、中間転写ベルト42が巻き掛けられ、図示しないモータにより回転駆動して中間転写ベルト42を矢印A方向に周回させる駆動ロール46と、を備えている。また、一次転写ユニット18は、中間転写ベルト42が巻き掛けられ、中間転写ベルト42に張力を付与する張力付与ロール48と、張力付与ロール48の鉛直方向上方に配置されて中間転写ベルト42と従動回転する補助ロール50と、を備えている。また、一次転写ユニット18は、中間転写ベルト42を挟んで各色の像保持体34の反対側に各々配置される一次転写ロール52を備えている。
【0041】
以上の構成により、各色の画像形成ユニット16の像保持体34上に順次形成されたY、M、C、Kの各色のトナー画像が、各色の一次転写ロール52によって、中間転写ベルト42上に多重に転写される。
【0042】
さらに、中間転写ベルト42の表面に接して中間転写ベルト42の表面を清掃する清掃ブレード56が、中間転写ベルト42を挟んで駆動ロール46の反対側に配置されている。
【0043】
また、中間転写ベルト42を挟んで補助ロール50の反対側には、中間転写ベルト42上に転写されたトナー画像を、搬送される用紙Pに転写する二次転写ロール22が設けられている。そして、二次転写ロール22は接地されており、補助ロール50は二次転写ロール22の対向電極を形成しており、補助ロール50には、二次転写電圧が印加されることにより、用紙Pにトナー画像が転写される。
【0044】
(供給搬送ユニット)
【0045】
供給搬送ユニット30は、装置本体10A内において、画像形成ユニット16に対して鉛直方向の下方に配置され、複数の用紙Pが積載される給紙部材62を備えている。
【0046】
さらに、供給搬送ユニット30は、給紙部材62に積載された用紙Pを搬送経路60へ送り出す給紙ロール64と、給紙ロール64によって送り出された用紙Pを1枚ずつ分離する分離ロール66と、用紙Pの搬送タイミングを合わせる位置合わせロール68と、を備えている。そして、各ロールが、用紙搬送方向の上流側から下流側に向けてこの順番で配置されている。
【0047】
以上の構成により、給紙部材62から供給された用紙Pは、回転する位置合わせロール68によって中間転写ベルト42と二次転写ロール22との接触部(二次転写位置)へ定められたタイミングで送り出される。
【0048】
(定着装置)
【0049】
図2及び図3に示すように、本実施の形態に係る定着装置24は、コイルユニット100、ソフトフェライト等を含む外部磁性部材102、加熱手段の一例としての加熱ベルト104、及び加圧手段の一例としての加圧ロール106を備えている。なお、図2では、加圧ロール106が、加熱ベルト104と離間した離間位置に移動された状態の一例を示している。また、図3では、加圧ロール106が、加熱ベルト104と接触して、加熱ベルト104を加圧する加圧位置に移動された状態の一例を示している。
【0050】
コイルユニット100の内部には、図示しない定着電源からの電力の供給によって磁界を発生する複数の励磁コイル108が設けられている。また、加熱ベルト104は、電磁誘導により発熱する発熱層を含んで形成された無端状のベルトである。また、加熱ベルト104の内周面より内側の領域には、摺動シート109、液晶ポリマー等を含んで形成された押圧パッド110、及び感温磁性合金を含んで形成された内部磁性部材112が設けられている。
【0051】
一方、加圧ロール106は、アルミニウム等の金属を含んで形成された心金114、及び発泡シリコンゴム等のスポンジ弾性層116を備えている。また、加圧ロール106は、ラッチ機構131(図4参照。)により、離間位置(図2の位置)と加圧位置(図3の位置)との間で移動可能とされている。
【0052】
また、加圧ロール106が離間位置にある場合は、駆動手段の一例としてのモータ132(図4参照。)の駆動対象が切替部133(図4参照。)によって加熱ベルト104に切り替えられ、加熱ベルト104が駆動(回転)される。一方、ラッチ機構131によって加圧ロール106が加圧位置に移動した場合は、モータ132の駆動対象が切替部133によって加圧ロール106に切り替えられ、加圧ロール106が駆動(回転)する。その結果、加熱ベルト104は、加圧ロール106の回転に伴い、従動して回転する。
【0053】
以上の構成により、定着装置24に搬送された用紙Pは、定着装置24により加熱及び加圧されて、用紙Pの一方の面(画像形成面)にトナー画像が定着される。
【0054】
さらに、供給搬送ユニット30は、定着装置24によって一方の面にトナー画像が定着された用紙Pを、排出ロール28によって排出部26にそのまま排出させずに、他方の面にトナー画像を形成するために用いる両面搬送装置70を備えている。
【0055】
両面搬送装置70は、排出ロール28から位置合わせロール68に向けて用紙Pの表裏が反転されて用紙Pが搬送される両面搬送経路72と、両面搬送経路72に沿って用紙Pを搬送する搬送ロール74及び搬送ロール76とを備えている。
【0056】
(その他)
【0057】
画像形成装置10は、搬送経路60に沿って定着装置24の用紙搬送方向の上流側に設けられた用紙検知センサ80、及び下流側に設けられた用紙検知センサ82を備えている。本実施の形態に係る用紙検知センサ80、82は、一例として、一組の発光素子及び受光素子を備えた反射型のセンサである。用紙検知センサ80、82は、発光素子から設置位置に対応する搬送経路60上の検知位置に対して光を照射する。また、用紙検知センサ80、82は、受光素子で受光した光量に応じた信号レベルの信号(以下、「検知信号」という。)を出力する。用紙Pが上記検知位置を搬送されている期間は、発光素子から照射された光が用紙Pにより反射される。従って、用紙検知センサ80、82は、用紙Pが上記検知位置を搬送されている期間と搬送されていない期間で異なる信号レベルの検知信号を出力する。
【0058】
このように、本実施の形態では、用紙検知センサ80、82として、反射型のセンサを適用しているが、これに限定されず、例えば、透過型のセンサ等、他のセンサを適用してもよい。
【0059】
(画像形成工程)
【0060】
まず、画像処理部12から各色のLEDヘッド32に各色の階調データが順次出力される。そして、LEDヘッド32から階調データに応じて出射された露光光は、帯電器36によって帯電した像保持体34の表面に照射される。これにより、像保持体34の表面には静電潜像が形成される。像保持体34上に形成された静電潜像は、各色の現像器38によって現像され、各々Y、M、C、Kの各色のトナー画像として可視化される。
【0061】
さらに、一次転写ユニット18の一次転写ロール52によって、像保持体34上に形成された各色のトナー画像が、周回する中間転写ベルト42上に多重に転写される。
【0062】
中間転写ベルト42上に多重に転写された各色のトナー画像は、給紙部材62から給紙ロール64、分離ロール66、位置合わせロール68によって搬送経路60に沿って搬送されてきた用紙Pに二次転写ロール22によって二次転写位置で二次転写される。
【0063】
さらに、トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置24へと搬送される。そして、トナー画像が定着装置24によって用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、排出ロール28によって排出部26に排出される。
【0064】
一方、用紙Pの両面に画像を形成させる場合は、定着装置24によって一方の面(表面)にトナー画像が定着された用紙Pは、排出ロール28によって排出部26にそのまま排出されない。排出ロール28が逆回転されることで、用紙Pの用紙搬送方向が切り替えられる。そして、この用紙Pは、搬送ロール74、76により両面搬送経路72に沿って搬送される。
【0065】
両面搬送経路72に沿って搬送された用紙Pは、表裏が反転されて再度位置合わせロール68へと搬送される。そして、用紙Pの他方の面(裏面)にトナー画像が転写及び定着された後、用紙Pは、排出ロール28によって排出部26に排出される。
【0066】
次に、図4を参照して、本実施の形態に係る画像形成装置10の電気系の要部構成について説明する。
【0067】
図4に示すように、本実施の形態に係る画像形成装置10は、画像形成装置10の全体的な動作を司る、異常検知手段の一例としてのCPU(Central Processing Unit)120、及び各種プログラムや各種パラメータ等が予め記憶されたROM(Read Only Memory)122を備えている。また、画像形成装置10は、CPU120による各種プログラムの実行時のワークエリア等として用いられるRAM(Random Access Memory)124、及びフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶部126を備えている。なお、CPU120は、異常検知手段の一例である。
【0068】
また、画像形成装置10は、外部装置と通信データの送受信を行う通信回線I/F(Interface)部128を備えている。また、画像形成装置10は、画像形成装置10に対するユーザからの指示を受け付ける一方、ユーザに対して画像形成装置10の動作状況等に関する各種情報を表示する操作表示部130を備えている。なお、操作表示部130は、例えば、プログラムの実行により操作指示の受け付けを実現する表示ボタンや各種情報が表示される表示面にタッチパネルが設けられたディスプレイ、及びテンキーやスタートボタン等のハードウェアキーを含む。
【0069】
また、画像形成装置10は、加熱ベルト104又は加圧ロール106を回転駆動するモータ132の負荷(トルク)を検出する負荷検出手段の一例としてのトルク検出部134を備えている。本実施の形態に係るトルク検出部134は、モータ132に接続されており、モータ132のトルクを、モータ132に流れる電流値として検出する。
【0070】
なお、本実施の形態に係るトルク検出部134の構成は、モータ132のトルクを検出可能であれば特に限定されない。例えば、トルク検出部134として、シャント抵抗間の電圧を測定して電流を検出する構成のものを適用してもよい。また、例えば、トルク検出部134として、モータ132に電流が流れる経路上に抵抗を設け、該抵抗間の電圧を測定して電流を検知する構成のものを適用してもよい。また、例えば、トルク検出部134として、モータ132に電流が流れる経路上にホール素子による電流センサを設けて電流を検知する構成のものを適用してもよい。また、トルク検出部134は、検出した電流を電圧に変換して出力する構成でもよい。さらに、例えば、トルク検出部134として、モータ132のトルクを検出するトルク検出器を適用してもよい。
【0071】
また、画像形成装置10は、前述した画像形成ユニット16や一次転写ユニット18等の用紙Pに対する画像形成に関する各種処理を行う構成部位を含む画像形成部136を備えている。そして、CPU120、ROM122、RAM124、記憶部126、通信回線I/F部128、操作表示部130、ラッチ機構131、モータ132、切替部133、トルク検出部134、画像形成部136、及び用紙検知センサ80、82の各部がアドレスバス、データバス、及び制御バス等のバス138を介して互いに接続されている。
【0072】
以上の構成により、本実施の形態に係る画像形成装置10は、CPU120により、ROM122、RAM124、及び記憶部126に対するアクセス、並びに通信回線I/F部128を介した外部装置との間での通信データの送受信を各々行う。また、画像形成装置10は、CPU120により、操作表示部130を介した各種指示情報の取得、及び操作表示部130に対する各種情報の表示を各々行う。また、画像形成装置10は、CPU120により、モータ132の制御、トルク検出部134から出力された電流値の取得、及び画像形成部136の制御を各々行う。
【0073】
さらに、画像形成装置10は、CPU120により、用紙検知センサ80、82の各々から出力された検知信号を各々取得する。従って、画像形成装置10は、CPU120により、取得した該検知信号の信号レベルによって、用紙Pが用紙検知センサ80、82の各々による検知位置を通過しているか否かを検知する。
【0074】
ところで、例えば経時劣化又はラッチ機構131によるラッチ動作によって瞬間的に荷重がかかることにより定着装置24に異常が発生した場合、異常が発生した箇所で加圧する力が低下し、定着不良が発生する場合がある。なお、定着装置24の異常とは、例えば加圧ロール106が破断する等の異常であるが、これに限られるものではない。例えば加熱ベルト104の破断等、別の箇所に発生した異常も含まれる。
【0075】
そこで、本実施の形態に係る画像形成装置10では、定着装置24の加圧ロール106に異常が発生したことを検知する異常検知機能が搭載されている。
【0076】
以下、図5図7を参照して、本実施の形態に係る異常検知機能について詳細に説明する。なお、図5は、定着装置24に異常が発生しておらず、正常な状態で4枚の用紙Pが1枚ずつ順番に定着装置24により搬送されて画像が定着された状態でのトルク検出部134から出力された電流値の時系列データを示している。また、図6及び図7は、図5に示した電流値の時系列データを説明するための図であり、用紙Pの搬送位置を示している。また、錯綜を回避するために、図6及び図7では、中間転写ベルト42を破線で示している。
【0077】
図5に示すように、トルク検出部134から出力される電流値は、用紙Pの先端が定着装置24に突入するタイミングで上に凸のピーク値となり、用紙Pの後端が定着装置24から排出されるタイミングで下に凸のピーク値となる。
【0078】
次に、図6及び図7を参照して、図5に示した電流値の時系列の変化の原理について説明する。図6に示すように、加圧ロール106が加圧位置に移動したラッチONの状態において、用紙Pの先端が定着装置24における加熱ベルト104と加圧ロール106とのニップ部に突入した際に、加圧ロール106には、加圧ロール106の回転方向とは逆方向の力(図6の矢印Dの力)が働き、モータ132のトルクが増加する。従って、トルク検出部134から出力される電流値も増加し、上に凸のピーク値となる。その後、用紙Pは定着装置24に挟まれて搬送され、用紙Pが定着装置24に突入した際の上記逆方向の力が働かなくなるため、上記電流値が減少する。
【0079】
一方、図7に示すように、用紙Pの後端が上記ニップ部から排出される際に、加圧ロール106には、加圧ロール106の回転方向と同一方向の力(図7の矢印Eの力)が働き、モータ132のトルクが減少する。従って、トルク検出部134から出力される電流値も減少し、下に凸のピーク値となる。
【0080】
なお、以下では、上に凸のピーク値を上ピーク値と称し、下に凸のピーク値を下ピーク値と称する場合がある。
【0081】
定着装置24は、繰り返し使用しているうちに、例えば加圧ロール106のスポンジ弾性層116が経時劣化して一部が破断する等の異常が発生し、異常が発生した箇所で加圧する力が低下する場合がある。このため、定着装置24に異常が発生している状態では、定着装置24に異常が発生していない状態と比較して、トルク検出部134によって検出されるトルクとしてのモータ132に流れる電流の電流値が低下する傾向がある。
【0082】
そこで、本実施の形態に係る異常検知機能では、用紙Pが定着装置24を通過する際のモータ132に流れる電流の電流値を用いて、定着装置24の異常を検知する。
【0083】
次に、図8を参照して、上記異常検知機能の実行時における本実施の形態に係る画像形成装置10の作用を説明する。なお、図8は、CPU120によって実行される異常検知処理プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。図8の異常検知処理プログラムの処理は、画像形成装置10の電源が投入されている間は繰り返し実行される。また、異常検知処理プログラムはROM122に予めインストールされている。また、ここでは、説明を簡単にするために、前述した画像形成工程による用紙Pに画像を形成する処理については説明を省略する。
【0084】
ステップS100では、異常検知処理を実行すべき実行タイミングが到来したか否かを判定する。ここで、異常検知処理の実行タイミングが到来した場合とは、具体的には、例えば異常検知処理を前回実行してから予め定めた枚数の用紙Pに対して画像形成処理を実行した場合、予め定めた時刻になった場合等であるが、これらに限られるものではない。
【0085】
予め定めた枚数は、例えば経時変化により定着装置24に異常が検知される虞があると判定される枚数に設定される。具体的には、予め定めた枚数は一例として数千枚に設定されるが、これに限られるものではない。
【0086】
そして、ステップS100で肯定判定された場合はステップS102へ移行し、否定判定された場合は、本ルーチンを終了する。
【0087】
ステップS102では、用紙Pに対して画像形成処理を前回実行してから予め定めた期間が経過したか否かを判定する。ここで、予め定めた期間は、定着装置24による定着が最後に実行されてから、定着装置24の温度が用紙Pに形成された画像を定着させる際の定着温度よりも低い温度となる期間に設定される。これは、定着装置24の温度が低い方が、定着装置24に異常が発生している場合にトルク検出部134から出力される電流値の変動が大きく、定着装置24の異常が検知しやすくなるためである。ここで、定着温度よりも低い温度としては、画像形成完了後、次の画像形成指示を受け付けるまでの待機状態において定着装置24に設定される待機温度としてもよいし、待機温度とは異なる予め定めた温度としてもよい。ここで、待機状態とは、画像形成前に定着装置24を待機温度に維持し、画像形成が指示された場合に速やかに画像形成処理を実行可能な準備状態をいう。
【0088】
なお、以下では、定着装置24の温度が用紙Pに形成された画像を定着させる際の定着温度よりも低い温度の状態を低温状態と称する。なお、例えば定着装置24の温度が用紙Pに形成された画像を定着させる際の定着温度よりも低く且つ定着温度との差が予め定めた閾値以上の状態を低温状態としてもよい。一方、定着装置24の温度が用紙Pに形成された画像を定着させる際の定着温度以上の状態を高温状態と称する。また、定着温度は、例えば用紙Pの厚みに応じて予め設定される。
【0089】
そして、ステップS102で肯定判定された場合はステップS104へ移行し、否定判定された場合は、本ルーチンを終了する。
【0090】
ステップS104では、CPU120は、用紙Pの搬送を開始させる。なお、画像形成部136は、本ルーチンにより用紙Pが定着装置24を通過する際の負荷を用いて定着装置24の異常を検知する際、用紙Pに画像を形成しない。
【0091】
ステップS105では、用紙検知センサ80から出力された検知信号を取得する。
【0092】
ステップS106では、CPU120は、ステップS105で取得した検知信号に基づいて、用紙Pの先端が搬送経路60上の用紙検知センサ80による検知位置を通過したか否かを判定する。CPU120は、ステップS106の判定が否定判定となった場合はステップS105へ戻る。一方、ステップS106の判定が肯定判定となった場合はステップS108に移行する。
【0093】
なお、用紙検知センサ80が設けられていない構成の場合は、例えば、CPU120は、用紙Pの給紙部材62からの搬送を開始してからの期間が閾値以上となった場合に、用紙Pの先端が搬送経路60上の用紙検知センサ80による検知位置を通過したと判定してもよい。また、この場合の閾値は、給紙部材62から定着装置24までの搬送経路60の距離と用紙Pの搬送速度とから適宜定めればよい。
【0094】
ステップS108では、CPU120は、トルク検出部134から出力された電流値を取得する。
【0095】
ステップS110では、CPU120は、用紙検知センサ82から出力された検知信号を取得する。
【0096】
ステップS112では、CPU120は、ステップS105で取得した検知信号に基づいて、用紙Pの後端が搬送経路60上の用紙検知センサ82による検知位置を通過したか否かを判定する。CPU120は、ステップS112の判定が否定判定となった場合は、ステップS108へ戻る。一方、ステップS112の判定が肯定判定となった場合はステップS110に移行する。
【0097】
なお、用紙検知センサ82が設けられていない構成の場合は、例えば、CPU120は、用紙Pの給紙部材62からの搬送を開始してからの期間が閾値以上となった場合に、用紙Pの後端が搬送経路60上の用紙検知センサ82による検知位置を通過したと判定してもよい。また、この場合の閾値は、給紙部材62から定着装置24までの搬送経路60の距離と用紙Pの搬送速度とから適宜定めればよい。さらに、ステップS108で取得した検知信号の電流値から下ピーク値を検出した場合に用紙Pの後端が搬送経路60上の用紙検知センサ82による検知位置を通過したと判定してもよい。
【0098】
ステップS108で取得した電流値は、用紙Pの先端が用紙検知センサ80を通過して定着装置24に突入した後、用紙Pの後端が用紙検知センサ82を通過するまでの期間に取得した電流値なので、取得した電流値は上ピーク値から下ピーク値を含む期間の電流値となる。すなわち、ステップS108で取得した電流値は、図9に示すように、用紙Pが定着装置24に突入する際の突入期間A、用紙Pが定着装置24を通過する通過期間B、及び用紙Pが定着装置24から排出される際の排出期間Cの電流値である。
【0099】
そこで、ステップS114では、CPU120は、ステップS108で取得した電流値のうち、突入期間A及び排出期間Cを除いた通過期間Bの少なくとも一部の期間の電流値を用いて定着装置24の異常の有無を検知する。
【0100】
例えば、CPU120は、用紙Pの通過期間Bの少なくとも一部の期間の電流値の代表値を用いて定着装置24の異常の有無を検知する。ここで、代表値としては、平均値、中央値、最大値、及び最小値が挙げられるが、これらに限られるものではない。また、通過期間Bの全期間の電流値を用いて定着装置24の異常の有無を検知してもよいし、通過期間Bの一部の期間の電流値を用いて定着装置24の異常の有無を検知してもよい。
【0101】
具体的には、CPU120は、例えば用紙Pの通過期間Bの少なくとも一部の期間の電流値の代表値の初期値(以下、単に初期値と称する)と、ステップS105で取得したトルク検出部134から出力された電流値(以下、検出電流値と称する)と、の比較により定着装置24の異常の有無を検知する。
【0102】
例えば、定着装置24がほとんど使用されていない初期状態で用紙Pを搬送させて検出電流値を測定すると、その波形は図10に示すような波形W1となる。そして、加圧ロール106が破断する等の異常が発生した場合は、検出電流値は全体的に低い値となり、図10に示すような波形W2となる。
【0103】
そこで、初期値と検出電流値との差が閾値以上の場合に定着装置24に異常が有ると判定する。ここで、初期値は、例えば画像形成装置10の工場出荷時に用紙Pを搬送させて測定した検出電流値の代表値を用いてもよい。また、画像形成装置10が最初に設置された際又は定着装置24が新品に交換された際に用紙Pを搬送させて測定した検出電流値の代表値を用いてもよい。何れの場合も、初期値は、記憶部126に記憶される。
【0104】
また、閾値は、例えば初期値と検出電流値との差と、定着装置24の異常と、の関係について予め実験した結果等に基づいて適宜設定される。すなわち、閾値は、初期値と検出電流値との差が閾値以上の場合に、定着装置24に異常が発生する又は発生する虞があると判定される値に設定される。
【0105】
ステップS116では、CPU120は、定着装置24の異常が検知されたか否かを判定する。そして、ステップS116の判定が肯定判定となった場合はステップS118へ移行する。一方、否定判定となった場合は本ルーチンを終了する。
【0106】
ステップS118では、CPU120は、例えば定着装置24に異常又は異常が発生する虞があることが検知されたことを示すメッセージを操作表示部130に表示させることによりユーザに警告する。なお、警告するだけでなく、画像形成装置10が画像形成処理を実行している場合には、画像形成処理を中止させるようにしてもよい。
【0107】
このように、本実施形態では、用紙Pの通過期間Bの少なくとも一部の期間の電流値の代表値を用いて定着装置24の異常の有無を検知する。
【0108】
なお、用紙Pが定着装置24に突入する際の突入期間A又は用紙Pが定着装置24から排出される際の排出期間Cの電流値の代表値を用いて定着装置24の異常の有無を検知するようにしてもよい。
【0109】
また、本実施形態では、ステップS102で用紙Pに対して画像形成処理を前回実行してから予め定めた期間が経過した場合に異常検知処理を実行する場合について説明したが、ステップS102の処理を省略してもよい。すなわち、予め定めた期間が経過する前に異常検知処理を実行してもよい。この場合、画像形成処理を実行した直後等のように、定着装置24が高温状態の場合がある。定着装置24が高温状態の場合においても、定着装置24に異常が発生している場合の検出電流値は、高温状態の初期値と比較すると低下する。また、定着装置24が高温になるに従って、定着装置24に異常が発生している場合の検出電流値と初期値との差が小さくなる。
【0110】
従って、ステップS114で初期値と検出電流値との差が閾値以上か否かを判定する際に、初期値及び閾値を定着装置24の温度に応じて調整してもよい。具体的には、画像形成処理を前回実行してからの経過期間が長くなるに従って定着装置24の温度は低下していくので、経過期間が長くなるに従って初期値及び閾値を小さくしてステップS114の処理を実行すればよい。
【0111】
また、画像形成処理の実行中に図8の異常検知処理を実行してもよい。この場合、画像形成処理の実行中なので定着装置24は高温状態であり、また用紙Pは搬送された状態なので、ステップS102及びステップS104の処理は省略される。
【0112】
(第2実施形態)
【0113】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一部分については同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0114】
図11には、本実施形態に係る画像形成装置10Aの構成図を示した。また、図12には、画像形成装置10Aの電気系の要部構成のブロック図を示した。画像形成装置10Aは、温度検出手段の一例としての温度センサ90を備えた点が図1に示す画像形成装置10と異なる。
【0115】
温度センサ90は、定着装置24の近傍に設けられ、定着装置24の温度を検出する。
【0116】
次に、図13を参照して、本実施形態に係る異常検知機能の実行時における本実施の形態に係る画像形成装置10Aの作用を説明する。
【0117】
なお、図8の異常検知処理と同じ処理を行うステップについては同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0118】
ステップS101では、温度センサ90から定着装置24の温度を取得する。
【0119】
ステップS103では、ステップS101で取得した温度から、定着装置24が低温状態か否かを判定する。そして、ステップS103が肯定判定された場合はステップS104へ移行する。一方、否定判定された場合は本ルーチンを終了する。
【0120】
ステップS114Aでは、CPU120は、初期値と検出電流値との差が閾値以上か否かを判定することにより、定着装置24の異常の有無を判定する。具体的には、ステップS101で取得した温度と用紙Pが定着装置24を通過する際の検出電流値の変化との関係を用いて定着装置24の異常を判定する。前述したように、定着装置24の温度によって検出電流値は変化し、定着装置24が高温になるに従って検出電流値は低下する。従って、定着装置24の温度に関係無く閾値を一定にした場合には、定着装置24の異常の有無の検知を誤る虞がある。そこで、定着装置24の温度に応じて初期値及び閾値を設定する。例えば、定着装置24の温度、初期値、及び閾値の関係を表すテーブルデータ又は関係式を予め記憶部126に記憶しておき、これを用いて定着装置24の温度に応じた初期値及び閾値を設定する。
【0121】
このように、本実施の形態では、温度センサ90により検出された定着装置24の温度を用いて定着装置24の異常の有無を検知する。
【0122】
なお、上記実施形態では、用紙Pの種類が1種類の場合について説明したが、給紙部材62が複数の厚さの用紙Pを収容する構成としてもよい。この場合、厚さの異なる複数の用紙Pのうち、最大の厚さの用紙Pを選択して定着装置24に通過させることにより、定着装置24の異常の有無を検知するようにしてもよい。すなわち、図8、13のステップS104において、厚さの異なる複数の用紙Pのうち、最大の厚さの用紙Pを選択して搬送させる。これは、用紙Pの厚さが大きいほど検出電流値の変化も大きく、異常の有無を検知しやすくなるからである。
【0123】
また、上記実施形態で説明した画像形成装置10、10Aは、用紙Pの一方の面に形成された画像を定着装置24により定着した後に、用紙Pの他方の面にも画像形成部136により画像が形成されるように用紙Pを搬送する搬送手段の一例としての両面搬送装置70を備えた構成である。
【0124】
また、例えば朝一番に画像形成装置10、10Aに電源を投入して画像形成処理を実行する場合、定着装置24が定着温度に到達するまでに時間がかかる。このため、定着装置24の温度が定着温度に到達するまで用紙Pに対して画像形成処理を開始できないが、この時間を利用して用紙Pを搬送させ、異常検知処理を行ってもよい。
【0125】
そこで、定着装置24の温度が画像を定着させる際の定着温度に到達する前に用紙Pを定着装置24に通過させて、異常検知処理を実行し、定着装置24の温度が定着温度に到達した後に画像形成部136により用紙Pに画像が形成されるように両面搬送装置70を制御するようにしてもよい。
【0126】
すなわち、定着装置24が定着温度に到達するのを待たずに用紙Pを搬送させ、定着装置24の温度が定着温度に到達する前の低温状態で異常検知処理を実行した後に、両面搬送装置70により用紙Pの表裏を反転させ、定着装置24が定着温度に到達してから用紙Pに画像を形成するようにしてもよい。
【0127】
また、本実施の形態では、電磁誘導により加熱を行う所謂IH(Induction Heating)方式の定着装置を用いた場合について説明したが、これに限定されない。例えば、ハロゲンランプ等を用いた別の方式の定着装置を用いてもよい。
【0128】
また、本実施の形態では、異常検知処理プログラムがROM122に予めインストールされている場合について説明したが、これに限定されない。例えば、異常検知処理プログラムが、CD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)等の記憶媒体に格納されて提供される形態、又はネットワークを介して提供される形態としてもよい。
【0129】
さらに、本実施の形態では、異常検知処理を、プログラムを実行することにより、コンピュータを利用してソフトウェア構成により実現する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、異常検知処理を、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成の組み合わせによって実現する形態としてもよい。
【0130】
その他、本実施の形態で説明した画像形成装置10の構成(図1図4参照。)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0131】
また、上記本実施の形態で説明した異常検知処理プログラムの処理の流れ(図8参照)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0132】
10 画像形成装置
24 定着装置
90 温度センサ
104 加熱ベルト
106 加圧ロール
120 CPU
132 モータ
134 トルク検出部
136 画像形成部
P 用紙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13