(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
【0022】
<静電荷像現像用トナー>
本実施形態に係る静電荷像現像用トナー(以下「トナー」とも称する)は、結着樹脂、離型剤、および着色剤を含有するトナー粒子を有する。
そして、トナー粒子中で前記離型剤がドメインを形成しており、トナー粒子の表面から0.2μm以内に存在する離型剤が全離型剤のうち50%以上である。
さらに、トナー粒子の動的粘弾性測定におけるtanδの極大となる温度が50℃以上90℃以下の範囲に存在し、tanδの極大となる温度よりも10℃高い温度でのtanδが0.80以上1.20以下である。
【0023】
少なくとも一方の面(片面または両面)に対して、ベタ画像(画像濃度100%の画像)を形成した記録媒体(例えば、用紙)は、ベタ画像が形成された面が、他の記録媒体(例えば、用紙)に接して重ねられることがある。そして、記録媒体のベタ画像が形成された面とは反対面(裏面)に、線、文字等の書き込みを行った場合に、ベタ画像と接する記録媒体には、裏移りが発生する場合がある(以下、単に「裏移り」と称する場合がある)。この現象は、例えば、記録媒体として用いる紙の坪量が小さい場合および平滑性が高い場合、画像形成装置に備えられている定着装置の加熱時間が長い場合などに顕著に発生しやすい傾向がある。
ここで、本明細書中において、裏移りとは、画像濃度100%のトナー画像が定着された記録媒体を積み重ね、画像濃度100%の定着画像が形成されている領域の反対面から書き込んだときに、トナー画像定着後の定着画像の少なくとも一部が、他の記録媒体へ移行する現象を表す。
【0024】
裏移りの発生の原因は、例えば、次のように考えられる。例えば、硬度の高い鉛筆(例えば、2Hなど)などで、画像濃度100%で形成されたトナー画像の定着画像(以下、単に「画像」と称する場合がある。)が形成されていない面(裏面)から、画像が形成されている部分に書き込むと、画像が擦られる。この場合に、画像の一部に割れが発生する。そして、書き込みにより画像が擦られていくうちに、画像と接触している用紙に、割れた画像の一部が移行する。その結果、裏移りが発生すると考えられる。
画像の一部に割れが発生する原因としては、例えば、離型剤を含んでいるトナー粒子を有するトナーにより形成した画像中では、画像の全域にわたって、ドメインを形成して離型剤が存在している。そして、離型剤と離型剤以外との境界部分で割れが発生すると考えられる。また、ドメインを形成している離型剤をトナー粒子の表面側に偏在させたトナーにより形成した画像では、画像中の表面側と記録媒体側に離型剤が分布する。しかしながら、画像の記録媒体側に分布する離型剤は、例えば、定着するときの加熱時間などによっては、離型剤のドメイン径が成長(特に長径)してしまう。この場合、記録媒体と画像に、ドメイン径が成長した離型剤が介在しやすくなるため、ドメイン径が成長した離型剤の存在のために、記録媒体と画像との間で割れが発生しやすくなると考えられる。その結果、裏移りが発生しやすくなると考えられる。
【0025】
これに対し、本実施形態に係る静電荷像現像用トナーは、上記構成により、ベタ画像が定着している記録媒体の裏面から書き込みを行ったとき、他の記録媒体への裏移りの発生が抑制される。
【0026】
トナー粒子の粘弾性が適度な範囲にある場合、トナー画像を定着するとき、トナー画像中の記録媒体側に存在する離型剤のドメイン径(特にドメインの長径)の成長が抑制されるため、記録媒体と定着後のトナー画像との間で発生する割れが抑制される。その結果、裏移りの発生が抑制されると推測される。
すなわち、tanδが極大となる温度をT0(℃)としたとき、tanδが極大となる温度T0よりも10℃高い温度(T0+10(℃))でのtanδの値は、離型剤のドメイン径の成長と関連している。具体的には、T0が50℃以上90℃以下の範囲にあり、T0+10(℃)におけるtanδの値が、0.80以上1.20以下の範囲であるとき、裏移りの発生が抑制される。
【0027】
室温(例えば25℃)からトナー粒子を含むトナーを加熱していくと、tanδが極大となる温度の近くでガラス転移が起こり、トナー粒子に含まれる樹脂成分はガラス状態となる。さらに、温度T0からT0+10℃のtanδが離型剤のドメイン径の成長に対する反発力に対応すると考えられる。すなわち、ガラス転移温度より高温側で、tanδの低下が大きい場合には、離型剤のドメイン径が成長しようとすることに対して、トナー粒子が弾性的にはたらくことにより、離型剤のドメイン径の成長が抑制されると考えられる。
【0028】
ここで、tanδが1.20より大きい場合には、離型剤のドメイン径の成長を抑制しにくくなり、裏移りが発生する場合がある。一方で、tanδが0.80より小さい場合には、画像と記録媒体(例えば、用紙)の親和性が低下することで、画像と記録媒体との接着性が低下し、定着不良が生じる場合があり、結果として、裏移りが発生する場合がある。
また、tanδが極大となる温度T0が50℃より小さい場合には、画像の耐熱性が低下し、摩擦熱等により裏移りが発生する場合がある。一方で、90℃より大きい場合には、ガラス転移温度が高くなるため、定着時の必要な熱量が大きくなりすぎ、記録媒体側に分布している離型剤のドメイン径が成長しやすくなる。その結果、記録媒体と画像との間で割れが発生しやすくなり、裏移りが発生する場合がある。
なお、本実施形態のトナーは、ドメイン径の成長が抑制されるため、例えば、記録媒体が薄い場合および平滑性が高い場合、並びに画像形成装置に備えられている定着装置の加熱時間が長い場合であっても、裏移りの発生が抑制されやすいと考えられる。
【0029】
以上から、本実施形態に係るトナーは、トナー画像中の離型剤のドメイン径の成長が抑制されるため、裏移りの発生が抑制されると推測される。
【0030】
以下、本実施形態に係るトナーの詳細について説明する。
【0031】
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子と、必要に応じて、外添剤と、を含んで構成される。
【0032】
(トナー粒子)
トナー粒子は、例えば、結着樹脂と、着色剤と、離型剤と、必要に応じて、その他添加剤と、を含んで構成される。
【0033】
−結着樹脂−
結着樹脂としては、例えば、スチレン類(例えばスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等)、(メタ)アクリル酸エステル類(例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等)、エチレン性不飽和ニトリル類(例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等)、ビニルエーテル類(例えばビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等)、ビニルケトン類(ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等)、オレフィン類(例えばエチレン、プロピレン、ブタジエン等)等の単量体の単独重合体、又はこれら単量体を2種以上組み合せた共重合体からなるビニル系樹脂が挙げられる。
結着樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、変性ロジン等の非ビニル系樹脂、これらと前記ビニル系樹脂との混合物、又は、これらの共存下でビニル系単量体を重合して得られるグラフト重合体等も挙げられる。
これらの結着樹脂は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
結着樹脂としては、裏移りを抑制する点で、ポリエステル樹脂を用いることも好適である。
ポリエステル樹脂としては、例えば、公知のポリエステル樹脂が挙げられる。
【0035】
ポリエステル樹脂としては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮重合体が挙げられる。なお、ポリエステル樹脂としては、市販品を使用してもよいし、合成したものを使用してもよい。
【0036】
多価カルボン酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、セバシン酸等)、脂環式ジカルボン酸(例えばシクロヘキサンジカルボン酸等)、芳香族ジカルボン酸(例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸等)、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステルが挙げられる。これらの中でも、多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
多価カルボン酸は、ジカルボン酸と共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上のカルボン酸を併用してもよい。3価以上のカルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの無水物、又はこれらの低級(例えば炭素数1以上5以下)アルキルエステル等が挙げられる。
多価カルボン酸は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
多価カルボン酸としては、裏移りを抑制する点で、イソフタル酸を用いることがよい。この点で、イソフタル酸の含有量は、全多価カルボン酸成分に対して、50質量%以上であることがよく、51質量%以上であることがよく、55質量%以上であることがよく、60質量%以上であることがよい。イソフタル酸を用いる場合、含有量の上限は特に限定されないが、例えば、全多価カルボン酸成分に対して、100質量%以下でもよく、95質量%以下でもよい。イソフタル酸をこの範囲で用いると、tanδが極大となる温度よりも10度高い温度(T0+10(℃))におけるtanδを調整しやすくなる。
【0038】
イソフタル酸は反応性が高いため、イソフタル酸を用いて得られた結着樹脂は、低分子量部またはオリゴマーの含有量が小さくなりやすい。それにより、結着樹脂としての靱性が高まることで、T0+10(℃)におけるtanδの値を0.80以上1.20以下に調整しやすくなる。さらに、イソフタル酸を含有することにより、結着樹脂と離型剤との間の相溶性が向上することで、トナー画像の記録媒体側に分布している離型剤のドメイン径の成長が抑制されやすくなる。その結果、離型剤の割れに起因する裏移りがより抑制されやすくなると考えられる。
【0039】
多価アルコールとしては、例えば、脂肪族ジオール(例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等)、脂環式ジオール(例えばシクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等)、芳香族ジオール(例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。これらの中でも、多価アルコールとしては、例えば、芳香族ジオール、脂環式ジオールが好ましく、より好ましくは芳香族ジオールである。
多価アルコールとしては、ジオールと共に、架橋構造又は分岐構造をとる3価以上の多価アルコールを併用してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが挙げられる。
多価アルコールは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0040】
多価アルコールとしては、裏移りを抑制する点で、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることがよい。この点で、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、全多価アルコール成分に対して、50質量%以上であることがよく、60質量%以上でもよく、100質量%であってもよい。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物をこの範囲で用いると、tanδが極大となる温度よりも10度高い温度におけるtanδを調整しやすくなる。
【0041】
ポリエステル樹脂中の多価カルボン酸成分および多価アルコール成分の分析は、以下の方法によって行う。
まず、公知の溶剤分離法(例えばソックスレー法、エマルションフロー法)により、トナー粒子から着色剤および離型剤を分離する。なお、トナー粒子が外添剤を有する場合、上記溶剤分離法を行う前に、トナー粒子から外添剤を分離するとよい。
次いで、各材料の溶解度の差を利用して、トナー粒子から更にポリエステル樹脂を分離する。そして、トナー粒子から分離したポリエステル樹脂について、
1H−NMR(
1H−核磁気共鳴法)によりポリエステル樹脂の構造を特定する。具体的には、エステル結合に結合するプロトンに由来するピーク(以下、プロトンピークと称す)を検出し、検出された各プロトンピークを帰属させることによりポリエステル樹脂の構造を特定する。
なお、
1H−NMRの測定条件は以下に示す通りである。
【0042】
−測定条件−
・測定装置:核磁気共鳴装置(日本電子(JEOL)製AL−400(磁場9.4T(H核400MHz)))
・容器:φ5mmガラス管
・溶媒:重クロロホルム溶液
・測定温度:25℃
・観測核:1H
・積算回数:64回
・基準物質:テトラメチルシラン(TMS:溶媒に対してTMS濃度0.05体積%)
・サンプル濃度:0.7mLの重クロロホルム溶液に30mgのサンプルを溶解
【0043】
なお、
1H−NMRの測定によるポリエステル樹脂の分析が難しい場合は、
1H−NMRの測定に加え、
13C−NMR(
13C−核磁気共鳴法;Bruker Biospin社製、型番ADVANCEDIII HD Sample Express 600MHz NMR)、赤外吸収スペクトル(IR)、ガスクロマトグラフ質量分析(GC−MS)の測定結果を必要に応じて用いてもよい。
【0044】
ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、45℃以上75℃以下が好ましく、48℃以上70℃以下がより好ましい。
なお、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0045】
ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、5000以上500000以下が好ましく、7000以上200000以下がより好ましい。
ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)は、2000以上100000以下が好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量分布Mw/Mnは、1.2以上100以下が好ましく、1.5以上60以下がより好ましい。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定する。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120GPCを用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行う。重量平均分子量及び数平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出する。
【0046】
ポリエステル樹脂は、周知の製造方法により得られる。具体的には、例えば、重合温度を180℃以上230℃以下とし、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合の際に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる方法により得られる。
なお、原料の単量体が、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。この場合、重縮合反応は溶解補助剤を留去しながら行う。相溶性の悪い単量体が存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪い単量体とその単量体と重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0047】
結着樹脂の含有量としては、例えば,トナー粒子全体に対して、40質量%以上98質量%以下が好ましく、50質量%以上96質量%以下がより好ましく、60質量%以上94質量%以下がさらに好ましい。
【0048】
−離型剤−
離型剤としては、例えば、炭化水素系ワックス;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス;モンタンワックス等の合成又は鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス;などが挙げられる。離型剤は、これに限定されるものではない。
中でも、離型剤は、炭化水素系ワックスを用いることがよい。炭化水素系ワックスは、炭化水素を骨格として有するワックスであり、例えば、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレン系ワックス(ポリエチレン骨格を有するワックス)、ポリプロピレン系ワックス(ポリプロピレン骨格を有するワックス)、パラフィン系ワックス(パラフィン骨格を有するワックス)、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。炭化水素系ワックスは、これに限定されるものではない。また、これらの炭化水素系ワックスは、1種類単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
離型剤の融解温度は、60℃以上110℃以下であることがよく、65℃以上105℃以下が好ましく、70℃以上105℃以下がより好ましい。
なお、融解温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線から、JIS K 7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」の融解温度の求め方に記載の「融解ピーク温度」により求める。
なお、測定対象となるトナーのトナー粒子中の離型剤の融解温度を測定する方法としては、以下のようにして測定する。示差走査熱量測定(DSC)装置により、常温(例えば、25℃)から200℃まで温度を上昇させて測定を実施する(ファーストスキャン)。200℃で測定が終了したら、常温まで温度を下げたのち、再度200℃まで温度を上昇させて測定を実施する(セカンドスキャン)。ファーストスキャンとセカンドスキャンの融解温度ピークをそれぞれ比較し、ファーストスキャンに対するセカンドスキャンの吸熱量の比が0.8から1.2以内にあれば離型剤に起因する融解ピークとみなし、この時の融解ピーク温度を離型剤の融解温度とみなす。
【0050】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0051】
離型剤は、全離型剤の50%以上がトナー粒子表面から0.2μm以内の範囲に存在している。(以下、このトナー粒子の表面から0.2μm以内に存在している離型剤の存在割合を「離型剤の存在率」とも称する。)。
離型剤の存在率は、50%以上であるが、裏移り抑制を効果的にする点で、60%以上であることがよく、70%以上であることが好ましい。離型剤の存在率の上限値は特に限定されず、100%以下でもよく、90%以下でもよい。
【0052】
離型剤のドメイン長径の個数平均径は、裏移りの抑制を効果的にする点で、0.1μm以上1.0μm以下であることがよく、0.2μm以上0.9μm以下が好ましく、0.3μm以上0.8μm以下がより好ましい。
また、離型剤が形成するドメインのうち、裏移りの抑制を効果的にする点で、1.5μm以上の離型剤のドメイン長径の割合が10%以下であることがよく、8%以下であることがよく、6%以下であることがよい。1.5μm以上の離型剤のドメイン長径の割合は少ないほうがよいため、下限値は0%でもよい。
【0053】
ここで、離型剤の存在率、及び離型剤のドメイン長径の測定方法を説明する。
【0054】
測定用の試料および画像は、以下の方法により調製する。
トナー粒子(又はトナー)をエポキシ樹脂に混合して包埋し、エポキシ樹脂を固化する。得られた固化物を、ウルトラミクロトーム装置(Leica社製UltracutUCT)により切断し、厚さ80nm以上130nm以下の薄片試料を作製する。次に、得られた薄片試料を30℃のデシケータ内で四酸化ルテニウムにより3時間染色する。そして、超高分解能電界放出形走査電子顕微鏡(FE−SEM。日立ハイテクノロジーズ社製S−4800)にて、染色された薄片試料のSEM画像を得る。
なお、トナー粒子の断面において、着色剤のドメインは、離型剤のドメインよりも小さいので、大きさによって区別可能である。また、着色剤のドメインは、離型剤のドメインの染色の濃淡よっても区別可能である。
【0055】
離型剤の存在率は、以下の方法により測定される値である。
前記SEM画像において、最大長がトナー粒子の体積平均粒径の85%以上であるトナー粒子断面を選択し、染色された離型剤のドメインを観察し、トナー粒子全体の離型剤の面積と、トナー粒子の表面から0.2μm以内の領域に存在する離型剤の面積を求め、両者の面積の比(トナー粒子の表面から0.2μm以内の領域に存在する離型剤の面積/トナー粒子全体の離型剤の面積)を算出する。そして、この算出を100個のトナー粒子について行い、その平均値を離型剤の存在率とする。
最大長がトナー粒子の体積平均粒径の85%以上のトナー粒子断面を選択する理由は、体積平均粒径85%未満の断面はトナー粒子端部の断面であると予想され、トナー粒子端部の断面には、トナー粒子中のドメインの状態がよく反映されていないからである。
【0056】
離型剤のドメイン径(ドメインの平均径)は、以下の方法により測定される値である。
前記SEM画像において、最大長がトナー粒子の体積平均粒径の85%以上であるトナー粒子断面を30個選択し、染色された離型剤のドメインを合計100個観察する。ドメインそれぞれの最大長を測定し、この最大長をドメインの長径とし、その算術平均を平均長径とする。
【0057】
離型剤の存在率を50%以上とする制御方法としては、例えば、トナー粒子の作製において、シェル層を形成するときのみに離型剤を使用する方法が挙げられる。
【0058】
離型剤のドメインの平均長径は、例えば、トナー粒子を凝集合一法で製造し、製造の際に使用する離型剤粒子分散液に含まれる離型剤粒子の体積平均粒径を調整すること;体積平均粒径の異なる離型剤粒子分散液を複数用意し、それを組み合せて使用すること;等によって制御しうる。
【0059】
離型剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上20質量%以下が好ましく、2質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0060】
−着色剤−
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、ピグメントイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ピグメントレッド、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、ピグメントブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレートなどの種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系などの各種染料等が挙げられる。
着色剤は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
着色剤は、必要に応じて表面処理された着色剤を用いてもよく、分散剤と併用してもよい。また、着色剤は、複数種を併用してもよい。
【0062】
着色剤の含有量としては、例えば、トナー粒子全体に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、3質量%以上15質量%以下がより好ましい。
【0063】
−その他の添加剤−
その他の添加剤としては、例えば、磁性体、帯電制御剤、無機粉体等の周知の添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、内添剤としてトナー粒子に含まれる。
【0064】
−トナー粒子の特性等−
トナー粒子は、単層構造のトナー粒子であってもよいし、芯部(コア粒子)と芯部を被覆する被覆層(シェル層)とで構成された所謂コア・シェル構造のトナー粒子であってもよい。
ここで、コア・シェル構造のトナー粒子は、例えば、結着樹脂と必要に応じて着色剤及び離型剤等のその他添加剤とを含んで構成された芯部と、結着樹脂を含んで構成された被覆層と、で構成されていることがよい。
【0065】
トナー粒子の体積平均粒径(D50v)としては、2μm以上10μm以下が好ましく、3μm以上8μm以下がより好ましい。
【0066】
なお、トナー粒子の各種平均粒径、及び各種粒度分布指標は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン・コールター社製)を使用して測定される。
測定に際しては、分散剤として、界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい)の5%水溶液2ml中に測定試料を0.5mg以上50mg以下加える。これを電解液100ml以上150ml以下中に添加する。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザーIIにより、アパーチャー径として100μmのアパーチャーを用いて2μm以上60μm以下の範囲の粒径の粒子の粒度分布を測定する。なお、サンプリングする粒子数は50000個である。
測定される粒度分布を基にして分割された粒度範囲(チャンネル)に対して体積、数をそれぞれ小径側から累積分布を描いて、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、数粒径D16p、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、累積数平均粒径D50p、累積84%となる粒径を体積粒径D84v、数粒径D84pと定義する。
これらを用いて、体積粒度分布指標(GSDv)は(D84v/D16v)
1/2、数粒度分布指標(GSDp)は(D84p/D16p)
1/2として算出される。
【0067】
トナー粒子の平均円形度としては、0.94以上1.00以下が好ましく、0.95以上0.98以下がより好ましい。
【0068】
トナー粒子の平均円形度は、(円相当周囲長)/(周囲長)[(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)]により求められる。具体的には、次の方法で測定される値である。
まず、測定対象となるトナー粒子を吸引採取し、扁平な流れを形成させ、瞬時にストロボ発光させることにより静止画像として粒子像を取り込み、その粒子像を画像解析するフロー式粒子像解析装置(シスメックス社製のFPIA−3000)によって求める。そして、平均円形度を求める際のサンプリング数は3500個とする。
なお、トナーが外添剤を有する場合、界面活性剤を含む水中に、測定対象となるトナー(現像剤)を分散させた後、超音波処理をおこなって外添剤を除去したトナー粒子を得る。
【0069】
トナー粒子は、動的粘弾性測定におけるtanδの極大となる温度(T0)が50℃以上90℃以下の範囲に存在する。そして、tanδの極大となる温度よりも10℃高い温度(T0+10℃)でのtanδが0.80以上1.20以下である。(T0+10℃)でのtanδは、0.85以上1.18以下であることがよく、0.88以上1.15以下であることが好ましい。
ここで、本明細書中で、動的粘弾性測定におけるtanδ(tan Delta:動的粘弾性の力学損失正接)は、動的粘弾性温度依存性測定により、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G’’を求め、G’’/G’で定義されるものである。ここで、G’は変形するとき、歪みに対して発生する応力の関係における弾性率の弾性応答成分であり、変形仕事に対するエネルギーは貯蔵される。弾性率の粘性応答成分がG’’である。また、G’’/G’で定義されるtanδは、変形仕事に対するエネルギーの損失と貯蔵の割合の尺度となる。
【0070】
動的粘弾性測定はレオメータによって測定可能である。
具体的には、測定対象となるトナー粒子(又はトナー)を、プレス成型機を用いて、常温(例えば25℃)で錠剤型へ成形することにより測定用サンプルを作製する。そして、この測定用サンプルを使用して、レオメータにより、以下の条件で動的粘弾性測定を実施し、tanδを求める。
−測定条件−
測定装置:レオメータARES(ティー・エイ・インスツルメント社製)
測定治具:8mmパラレルプレート
ギャップ:4mmに調整
周波数 :1Hz
測定温度:30℃〜150℃
歪み :0.03〜20%(自動制御)
昇温速度:1℃/min
測定間隔:1℃ごと
【0071】
トナー粒子のガラス転移温度は、裏移りの発生を抑制する点で、45℃以上70℃以下であることがよく、45℃以上65℃以下が好ましく、48℃以上65℃以下がより好ましい。
トナーのガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により得られたDSC曲線より求め、より具体的にはJIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」のガラス転移温度の求め方に記載の「補外ガラス転移開始温度」により求められる。
【0072】
(外添剤)
外添剤としては、例えば、無機粒子が挙げられる。該無機粒子として、SiO
2、TiO
2、Al
2O
3、CuO、ZnO、SnO
2、CeO
2、Fe
2O
3、MgO、BaO、CaO、K
2O、Na
2O、ZrO
2、CaO・SiO
2、K
2O・(TiO
2)n、Al
2O
3・2SiO
2、CaCO
3、MgCO
3、BaSO
4、MgSO
4等が挙げられる。
【0073】
外添剤としての無機粒子の表面は、疎水化処理が施されていることがよい。疎水化処理は、例えば疎水化処理剤に無機粒子を浸漬する等して行う。疎水化処理剤は特に制限されないが、例えば、シラン系カップリング剤、シリコーンオイル、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
疎水化処理剤の量としては、通常、例えば、無機粒子100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である。
【0074】
外添剤としては、樹脂粒子(ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メラミン樹脂等の樹脂粒子)、クリーニング活剤(例えば、ステアリン酸亜鉛に代表される高級脂肪酸の金属塩、フッ素系高分子量体の粒子)等も挙げられる。
【0075】
外添剤の外添量としては、例えば、トナー粒子に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.01質量%以上6質量%以下がより好ましい。
【0076】
(トナーの製造方法)
次に、本実施形態に係るトナーの製造方法について説明する。
本実施形態に係るトナーは、トナー粒子を製造後、トナー粒子に対して、外添剤を外添することで得られる。
【0077】
トナー粒子は、乾式製法(例えば、混練粉砕法等)、湿式製法(例えば凝集合一法、懸濁重合法、溶解懸濁法等)のいずれにより製造してもよい。トナー粒子の製法は、これらの製法に特に制限はなく、周知の製法が採用される。
これらの中でも、凝集合一法により、トナー粒子を得ることがよい。
【0078】
具体的には、例えば、トナー粒子を凝集合一法により製造する場合、
結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液を準備する工程(樹脂粒子分散液準備工程)と、樹脂粒子分散液中で(必要に応じて他の粒子分散液を混合した後の分散液中で)、樹脂粒子(必要に応じて他の粒子)を凝集させ、凝集粒子を形成する工程(凝集粒子形成工程)と、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して加熱し、凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、を経て、トナー粒子を製造する。
【0079】
以下、各工程の詳細について説明する。
なお、以下の説明では、着色剤、及び離型剤を含むトナー粒子を得る方法について説明するが、着色剤、離型剤は、必要に応じて用いられるものである。無論、着色剤、離型剤以外のその他添加剤を用いてもよい。
【0080】
−樹脂粒子分散液準備工程−
まず、結着樹脂となる樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と共に、例えば、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
【0081】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0082】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0083】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0084】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0085】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0086】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0087】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0088】
−凝集粒子形成工程−
次に、樹脂粒子分散液と共に、着色剤粒子分散液と、離型剤粒子分散液と、を混合する。
そして、混合分散液中で、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とをヘテロ凝集させ目的とするトナー粒子の径に近い径を持つ、樹脂粒子と着色剤粒子と離型剤粒子とを含む凝集粒子を形成する。
【0089】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、凝集粒子を形成する。
凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0090】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0091】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0092】
−融合・合一工程−
次に、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液に対して、例えば、樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0093】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
なお、凝集粒子が分散された凝集粒子分散液を得た後、当該凝集粒子分散液と、樹脂粒子が分散された樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、凝集粒子の表面にさらに樹脂粒子を付着するように凝集して、第2凝集粒子を形成する工程と、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液に対して加熱をし、第2凝集粒子を融合・合一して、コア/シェル構造のトナー粒子を形成する工程と、を経て、トナー粒子を製造してもよい。
【0094】
また、トナー粒子は、以下に示す凝集合一法で製造してもよい。
【0095】
具体的には、各分散液を準備する工程(分散液準備工程)と、
結着樹脂となる第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、および着色剤の粒子(以下「着色剤粒子」とも称する)が分散された着色剤粒子分散液を混合し、得られた分散液中で、各粒子を凝集させ、第1凝集粒子を形成する工程(第1凝集粒子形成工程)と、
第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液を得た後、結着樹脂となる第2樹脂粒子および離型剤の粒子(以下「離型剤粒子」とも称する)が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加して、第1凝集粒子の表面に更に第2樹脂粒子及び離型剤粒子を凝集して、第2凝集粒子を形成する工程(第2凝集粒子形成工程)と、
第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液を得た後、第2凝集粒子分散液と、結着樹脂となる第3樹脂粒子が分散された第3樹脂粒子分散液と、をさらに混合し、第2凝集粒子の表面にさらに第3樹脂粒子を付着するように凝集して、第3凝集粒子を形成する工程(第3凝集粒子形成工程)と、
第3凝集粒子が分散された第3凝集粒子分散液に対して加熱をし、第3凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成する工程(融合・合一工程)と、
を経て、トナー粒子を製造することが好ましい。
【0096】
なお、トナー粒子の製造方法は、上記に限られない。例えば、樹脂粒子分散液、および着色剤粒子分散液を混合し、得られた混合分散液中で、各粒子を凝集させる。次に、その凝集過程で、混合分散液に対して、添加速度を次第に速めつつ又は離型剤粒子の濃度を高めながら、離型剤粒子分散液を添加し、更に各粒子の凝集を進行させて、凝集粒子を形成する。そして、その凝集粒子を融合・合一して、トナー粒子を形成してもよい。
【0097】
以下、各工程の詳細について説明する。
【0098】
−各分散液準備工程−
まず、凝集合一法で使用する各分散液と準備する。具体的には、結着樹脂となる第1樹脂粒子が分散された第1樹脂粒子分散液、着色剤粒子が分散された着色剤粒子分散液、結着樹脂となる第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液、結着樹脂となる第3樹脂粒子が分散された第3樹脂粒子分散液、および離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を準備する。
なお、各分散液準備工程において、第1樹脂粒子と第2樹脂粒子と第3樹脂粒子を「樹脂粒子」と称して説明する。
【0099】
ここで、樹脂粒子分散液は、例えば、樹脂粒子を界面活性剤により分散媒中に分散させることにより調製する。
【0100】
樹脂粒子分散液に用いる分散媒としては、例えば水系媒体が挙げられる。
水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも特に、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤が挙げられる。非イオン系界面活性剤は、アニオン界面活性剤又はカチオン界面活性剤と併用してもよい。
界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
樹脂粒子分散液において、樹脂粒子を分散媒に分散する方法としては、例えば回転せん断型ホモジナイザーや、メディアを有するボールミル、サンドミル、ダイノミル等の一般的な分散方法が挙げられる。また、樹脂粒子の種類によっては、例えば転相乳化法を用いて樹脂粒子分散液中に樹脂粒子を分散させてもよい。
なお、転相乳化法とは、分散すべき樹脂を、その樹脂が可溶な疎水性有機溶剤中に溶解せしめ、有機連続相(O相)に塩基を加えて、中和したのち、水媒体(W相)を投入することによって、W/OからO/Wへの、樹脂の変換(いわゆる転相)が行われて不連続相化し、樹脂を、水媒体中に粒子状に分散する方法である。
【0103】
樹脂粒子分散液中に分散する樹脂粒子の体積平均粒径としては、例えば0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.08μm以上0.8μm以下がより好ましく、0.1μm以上0.6μm以下がさらに好ましい。
なお、樹脂粒子の体積平均粒径は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所社製、LA−700)の測定によって得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小径側から累積分布を引き、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。なお、他の分散液中の粒子の体積平均粒径も同様に測定される。
【0104】
樹脂粒子分散液に含まれる樹脂粒子の含有量としては、例えば、5質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0105】
なお、樹脂粒子分散液と同様にして、例えば、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液も調製される。つまり、樹脂粒子分散液における粒子の体積平均粒径、分散媒、分散方法、及び粒子の含有量に関しては、着色剤粒子分散液中に分散する着色剤粒子、及び離型剤粒子分散液中に分散する離型剤粒子についても同様である。
【0106】
−第1凝集粒子形成工程−
次に、第1樹脂粒子分散液と、着色剤粒子分散液と、を混合する。
そして、この混合分散液中で、第1樹脂粒子と着色剤粒子とをヘテロ凝集させ、第1樹脂粒子と着色剤粒子とを含む第1凝集粒子を形成する。
【0107】
具体的には、例えば、混合分散液に凝集剤を添加すると共に、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後、第1樹脂粒子のガラス転移温度(具体的には、例えば、第1樹脂粒子のガラス転移温度−30℃以上ガラス転移温度−10℃以下)の温度に加熱し、混合分散液に分散された粒子を凝集させて、第1凝集粒子を形成する。
第1凝集粒子形成工程においては、例えば、混合分散液を回転せん断型ホモジナイザーで攪拌下、室温(例えば25℃)で上記凝集剤を添加し、混合分散液のpHを酸性(例えばpHが2以上5以下)に調整し、必要に応じて分散安定剤を添加した後に、上記加熱を行ってもよい。
【0108】
凝集剤としては、例えば、混合分散液に添加される分散剤として用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩、2価以上の金属錯体が挙げられる。特に、凝集剤として金属錯体を用いた場合には、界面活性剤の使用量が低減され、帯電特性が向上する。
凝集剤の金属イオンと錯体もしくは類似の結合を形成する添加剤を必要に応じて用いてもよい。この添加剤としては、キレート剤が好適に用いられる。
【0109】
無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム等の金属塩、及び、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体等が挙げられる。
キレート剤としては、水溶性のキレート剤を用いてもよい。キレート剤としては、例えば、酒石酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、イミノジ酸(IDA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)等が挙げられる。
キレート剤の添加量としては、例えば、第1樹脂粒子100質量部に対して0.01質量部以上5.0質量部以下が好ましく、0.1質量部以上3.0質量部未満がより好ましい。
【0110】
−第2凝集粒子形成工程−
次に、第1凝集粒子が分散された第1凝集粒子分散液を得た後、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加する。
なお、第2樹脂粒子は第1樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0111】
そして、第1凝集粒子、第2樹脂粒子、及び離型剤粒子が分散された分散液中で、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子を凝集する。具体的には、例えば、第1凝集粒子形成工程において、第1凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第1凝集粒子分散液に、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を添加し、この分散液に対して、第2樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
【0112】
この工程を経て、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子が付着した凝集粒子を形成する。つまり、第1凝集粒子の表面に、第2樹脂粒子及び離型剤粒子の凝集物が付着した第2凝集粒子を形成する。このとき、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第1凝集粒子分散液に順次添加しているため、第1凝集粒子の表面には、粒子径方向外側に向かって、離型剤粒子の濃度(存在率)が次第に大きくなって、第2樹脂粒子及び離型剤粒子の凝集物が付着する。
【0113】
ここで、混合分散液の添加方法としては、パワーフィード添加法を利用することがよい。このパワーフィード添加法を利用することで、混合分散液中の離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、混合分散液を第1凝集粒子分散液に添加することができる。
【0114】
以下、図を参照しつつ、パワーフィード添加法を利用した混合分散液の添加方法について説明する。
【0115】
図3には、パワーフィード添加法に用いる装置を示している。なお、
図3中、311は、第1凝集粒子分散液を示し、312は、第2樹脂粒子分散液を示し、313は、離型剤粒子分散液を示している。
【0116】
図3に示す装置は、第1凝集粒子が分散されて第1凝集粒子分散液を収容している第1収容槽321と、第2樹脂粒子が分散された第2樹脂粒子分散液を収容している第2収容槽322と、離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液を収容している第3収容槽323と、を有している。
【0117】
第1収容槽321と第2収容槽322とは、第1送液管331で連結されている。第1送液管331の経路途中には、第1送液ポンプ341が介在している。第1送液ポンプ341の駆動により、第2収容槽322に収容された分散液は、第1送液管331を通じて、第1収容槽321に収容された分散液へ送液される。
第1収容槽321には、第1攪拌装置351が配置されている。第1攪拌装置351の駆動により、第2収容槽322に収容された分散液を第1収容槽321に収容された分散液へ送液したとき、第1収容槽321において各分散液が攪拌及び混合される。
【0118】
第2収容槽322と第3収容槽323とは、第2送液管332で連結されている。第2送液管332の経路途中には、第2送液ポンプ342が介在している。第2送液ポンプ342の駆動により、第3収容槽323に収容された分散液は、第2送液管332を通じて、第2収容槽322に収容された分散液へ送液される。
第2収容槽322には、第2攪拌装置352が配置されている。第2攪拌装置352の駆動により、第3収容槽323に収容された分散液を第2収容槽322に収容された分散液へ送液したとき、第2収容槽322において各分散液が攪拌及び混合される。
【0119】
図3に示す装置では、まず、第1収容槽321において、第1凝集粒子形成工程を実施して、第1凝集粒子分散液を作製し、第1収容槽321に第1凝集粒子分散液を収容する。なお、別の槽で、第1凝集粒子形成工程を実施して、第1凝集粒子分散液を作製した後、第1凝集粒子分散液を第1収容槽321に収容してもよい。
【0120】
この状態で、第1送液ポンプ341及び第2送液ポンプ342を駆動する。この駆動により、第2収容槽322に収容された第2樹脂粒子分散液を、第1収容槽321に収容された第1凝集粒子分散液へ送液する。そして、第1攪拌装置351の駆動により、第1収容槽321において各分散液が攪拌及び混合される。
一方、第3収容槽323に収容された離型剤粒子分散液を第2収容槽322に収容された第2樹脂粒子分散液へ送液する。そして、第2攪拌装置352の駆動により、第2収容槽322において各分散液が攪拌及び混合される。
【0121】
このとき、第2収容槽322に収容された第2樹脂粒子分散液には、離型剤粒子分散液が順次送液され、次第に離型剤粒子の濃度が高まってゆく。このため、第2収容槽322には、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液が収容されることになり、この混合分散液が第1収容槽321に収容された第1凝集粒子分散液に送液される。そして、この混合分散液の送液は、混合分散液中の離型剤粒子分散液の濃度が高まりつつ、しかも連続的に行われる。
【0122】
このように、パワーフィード添加法を利用することにより、第1凝集粒子分散液に、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、第2樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を添加することができる。
そして、パワーフィード添加法において、第2収容槽322および第3収容槽323に収容された各分散液の送液開始時期及び送液速度を調整することにより、トナー粒子の離型剤ドメインの分布特性が調整される。また、パワーフィード添加法において、第2収容槽322および第3収容槽323に収容された各分散液の送液中に、送液速度を調整することによっても、トナー粒子の離型剤ドメインの分布特性が調整される。
【0123】
具体的には、第3収容槽323から第2収容槽322に離型剤粒子分散液が送液し終わる時期によって調整される。より具体的には、例えば、第2収容槽322から第1収容槽321への送液が終わる前に、第3収容槽323から第2収容槽322への離型剤粒子分散液の送液が終わると、その時点以上には、第2収容槽322の混合分散液中の離型剤粒子の濃度が上昇しない。
【0124】
また、例えば、第2収容槽322および第3収容槽323から各分散液を送液する時期および第2収容槽322から第1収容槽321に分散液を送液する送液速度によって調整される。より具体的には、例えば、第3収容槽323からの離型剤粒子分散液の送液開始時期および第2収容槽322からの分散液の送液開始時期を早め、第2収容槽322からの分散液の送液速度を低下すると、形成される凝集粒子において、粒子のより内側から外側まで離型剤粒子が配置された状態となる。
【0125】
なお、以上説明したパワーフィード添加法は、上記手法に限定されるわけではない。例えば、1)別途、第2樹脂粒子分散液を収容した収容槽と、第2樹脂粒子及び離型剤粒子分散液が分散された混合分散液を収容槽とを設け、送液速度を変えつつ各収容槽から各分散液を第1収容槽321へ送液する方法、別途、離型剤粒子分散液を収容した収容槽と、第2樹脂粒子及び離型剤粒子分散液が分散された混合分散液を収容した収容槽とを設け、送液速度を変えつつ各収容槽から各分散液を第1収容槽321へ送液する方法など、種々の方法を採用してもよい。
【0126】
以上により、第1凝集粒子の表面に第2樹脂粒子及び離型剤粒子が付着するようにして凝集した第2凝集粒子が得られる。
【0127】
−第3凝集粒子形成工程−
次に、第2凝集粒子が分散された第2凝集粒子分散液を得た後、第2凝集粒子分散液と、結着樹脂となる第3樹脂粒子が分散された第3樹脂粒子分散液と、をさらに混合する。
なお、第3樹脂粒子は第1又は第2樹脂粒子と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0128】
そして、第2凝集粒子、及び第3樹脂粒子が分散された分散液中で、第2凝集粒子の表面に第3樹脂粒子を凝集する。具体的には、例えば、第2凝集粒子形成工程において、第2凝集粒子が目的とする粒径に達したときに、第2凝集粒子分散液に、第3樹脂粒子分散液を添加し、この分散液に対して、第3樹脂粒子のガラス転移温度以下で加熱を行う。
そして、分散液のpHを、例えば6.5以上8.5以下程度の範囲にすることにより、凝集の進行を停止させる。
【0129】
−融合・合一工程−
次に、第3凝集粒子が分散された第3凝集粒子分散液に対して、例えば、第1、第2及び第3樹脂粒子のガラス転移温度以上(例えば第1、第2及び第3樹脂粒子のガラス転移温度より10から30℃高い温度以上)に加熱して、第3凝集粒子を融合・合一し、トナー粒子を形成する。
【0130】
以上の工程を経て、トナー粒子が得られる。
【0131】
ここで、融合・合一工程終了後は、溶液中に形成されたトナー粒子を、公知の洗浄工程、固液分離工程、乾燥工程を経て乾燥した状態のトナー粒子を得る。
洗浄工程は、帯電性の点から充分にイオン交換水による置換洗浄を施すことがよい。また、固液分離工程は、特に制限はないが、生産性の点から吸引濾過、加圧濾過等を施すことがよい。また、乾燥工程も特に方法に制限はないが、生産性の点から凍結乾燥、気流乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等を施すことがよい。
【0132】
そして、本実施形態に係るトナーは、例えば、得られた乾燥状態のトナー粒子に、外添剤を添加し、混合することにより製造される。混合は、例えばVブレンダー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー等によって行うことがよい。更に、必要に応じて、振動篩分機、風力篩分機等を使ってトナーの粗大粒子を取り除いてもよい。
【0133】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーを少なくとも含むものである。
本実施形態に係る静電荷像現像剤は、本実施形態に係るトナーのみを含む一成分現像剤であってもよいし、当該トナーとキャリアと混合した二成分現像剤であってもよい。
【0134】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアが挙げられる。キャリアとしては、例えば、磁性粉からなる芯材の表面に被覆樹脂を被覆した被覆キャリア;マトリックス樹脂中に磁性粉が分散・配合された磁性粉分散型キャリア;多孔質の磁性粉に樹脂を含浸させた樹脂含浸型キャリア;等が挙げられる。
なお、磁性粉分散型キャリア、及び樹脂含浸型キャリアは、当該キャリアの構成粒子を芯材とし、これに被覆樹脂により被覆したキャリアであってもよい。
【0135】
磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物等が挙げられる。
【0136】
被覆樹脂、及びマトリックス樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、オルガノシロキサン結合を含んで構成されるストレートシリコーン樹脂又はその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、被覆樹脂、及びマトリックス樹脂には、導電性粒子等、その他添加剤を含ませてもよい。
導電性粒子としては、金、銀、銅等の金属、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム等の粒子が挙げられる。
【0137】
ここで、芯材の表面に被覆樹脂を被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0138】
二成分現像剤における、トナーとキャリアとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100が好ましく、3:100乃至20:100がより好ましい。
【0139】
<画像形成装置/画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置/画像形成方法について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、を備える。そして、静電荷像現像剤として、本実施形態に係る静電荷像現像剤が適用される。
【0140】
本実施形態に係る画像形成装置では、像保持体の表面を帯電する帯電工程と、帯電した像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、本実施形態に係る静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像工程と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写工程と、記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着工程と、を有する画像形成方法(本実施形態に係る画像形成方法)が実施される。
【0141】
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体の表面に形成されたトナー画像を直接記録媒体に転写する直接転写方式の装置;像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写し、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する中間転写方式の装置;トナー画像の転写後、帯電前の像保持体の表面をクリーニングするクリーニング手段を備えた装置;トナー画像の転写後、帯電前に像保持体の表面に除電光を照射して除電する除電手段を備える装置等の周知の画像形成装置が適用される。
中間転写方式の装置の場合、転写手段は、例えば、表面にトナー画像が転写される中間転写体と、像保持体の表面に形成されたトナー画像を中間転写体の表面に一次転写する一次転写手段と、中間転写体の表面に転写されたトナー画像を記録媒体の表面に二次転写する二次転写手段と、を有する構成が適用される。
【0142】
なお、本実施形態に係る画像形成装置において、例えば、現像手段を含む部分が、画像形成装置に対して脱着されるカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、例えば、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容した現像手段を備えるプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0143】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0144】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置に対して脱着するプロセスカートリッジであってもよい。
【0145】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ロール22及び中間転写ベルト20内面に接する支持ロール24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。なお、支持ロール24は、図示しないバネ等により駆動ロール22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ロール22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーを含むトナーの供給がなされる。
【0146】
第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。なお、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0147】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ロール(帯電手段の一例)2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yによって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段の一例)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段の一例)4Y、現像したトナー画像を中間転写ベルト20上に転写する一次転写ロール5Y(一次転写手段の一例)、及び一次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段の一例)6Yが順に配置されている。
なお、一次転写ロール5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各一次転写ロール5Y、5M、5C、5Kには、一次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各一次転写ロールに印加する転写バイアスを可変する。
【0148】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。
まず、動作に先立って、帯電ロール2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(例えば20℃における体積抵抗率:1×10
−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー画像パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0149】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによってトナー画像として可視像(現像像)化される。
【0150】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体の一例)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー画像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー画像が予め定められた一次転写位置へ搬送される。
【0151】
感光体1Y上のイエロートナー画像が一次転写へ搬送されると、一次転写ロール5Yに一次転写バイアスが印加され、感光体1Yから一次転写ロール5Yに向う静電気力がトナー画像に作用され、感光体1Y上のトナー画像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μAに制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーは感光体クリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0152】
また、第2のユニット10M以降の一次転写ロール5M、5C、5Kに印加される一次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー画像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー画像が重ねられて多重転写される。
【0153】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー画像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ロール24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された二次転写ロール(二次転写手段の一例)26とから構成された二次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体の一例)Pが供給機構を介して二次転写ロール26と中間転写ベルト20とが接触した隙間に予め定められたタイミングで給紙され、二次転写バイアスが支持ロール24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー画像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー画像が記録紙P上に転写される。なお、この際の二次転写バイアスは二次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0154】
この後、記録紙Pは定着装置(定着手段の一例)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー画像が記録紙P上へ定着され、定着画像が形成される。定着装置28は、一対の定着ロールで構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、定着装置は、具体的には、加圧ロールと、定着ベルトと、を備え、定着ベルトを介して加圧ロールを押圧し、定着ベルトと加圧ロールとの間に記録紙Pが通過する接触部を形成する押圧パッドを、定着ベルトの内側に備えて構成された定着装置でもよい。このような構成の定着装置の場合、記録紙Pと定着ベルトがトナー画像と接する時間が増加するため、トナー画像に対する加熱時間が長くなる。
【0155】
トナー画像を転写する記録紙Pとしては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙が挙げられる。記録媒体は記録紙P以外にも、OHPシート等も挙げられる。
定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、記録紙Pの表面も平滑が好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等が好適に使用される。
【0156】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
【0157】
<プロセスカートリッジ/トナーカートリッジ>
本実施形態に係るプロセスカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るプロセスカートリッジは、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容し、静電荷像現像剤により、像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるプロセスカートリッジである。
【0158】
なお、本実施形態に係るプロセスカートリッジは、上記構成に限られず、現像装置と、その他、必要に応じて、例えば、像保持体、帯電手段、静電荷像形成手段、及び転写手段等のその他手段から選択される少なくとも一つと、を備える構成であってもよい。
【0159】
以下、本実施形態に係るプロセスカートリッジの一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主要部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0160】
図2は、本実施形態に係るプロセスカートリッジを示す概略構成図である。
図2に示すプロセスカートリッジ200は、例えば、取り付けレール116及び露光のための開口部118が備えられた筐体117により、感光体107(像保持体の一例)と、感光体107の周囲に備えられた帯電ロール108(帯電手段の一例)、現像装置111(現像手段の一例)、及び感光体クリーニング装置113(クリーニング手段の一例)を一体的に組み合わせて保持して構成し、カートリッジ化されている。
なお、
図2中、109は露光装置(静電荷像形成手段の一例)、112は転写装置(転写手段の一例)、115は定着装置(定着手段の一例)、300は記録紙(記録媒体の一例)を示している。
【0161】
次に、本実施形態に係るトナーカートリッジについて説明する。
本実施形態に係るトナーカートリッジは、本実施形態に係るトナーを収容し、画像形成装置に着脱されるトナーカートリッジである。トナーカートリッジは、画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するための補給用のトナーを収容するものである。
【0162】
なお、
図1に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱される構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収容されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0163】
以下、実施例および比較例を挙げ、本実施形態をより具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0164】
<樹脂分散液の調製>
[ポリエステル樹脂分散液(P1)の調製]
・テレフタル酸:20モル部
・イソフタル酸:77モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:55モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:45モル部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ及び精留塔を備えたフラスコに、上記の材料を仕込み、1時間を要して温度を210℃まで上げ、上記材料100部に対してチタンテトラエトキシド1部を投入した。生成する水を留去しながら0.5時間を要して230℃まで温度を上げ、該温度で1時間脱水縮合反応を継続した後、反応物を冷却した。このようにして、ポリエステル樹脂(P1)を合成した。得られたポリエステル樹脂(P1)の重量平均分子量(Mw)は、36,000であった。
温度調節手段及び窒素置換手段を備えた容器に、酢酸エチル40部及び2−ブタノール25部を投入し、混合溶剤とした後、ポリエステル樹脂(P1)100部を徐々に投入し溶解させ、ここに、10質量%アンモニア水溶液(樹脂の酸価に対してモル比で3倍量相当量)を入れて30分間攪拌した。
次いで、容器内を乾燥窒素で置換し、温度を40℃に保持して、混合液を攪拌しながらイオン交換水400部を2部/分の速度で滴下し、乳化を行った。滴下終了後、乳化液を室温(20℃乃至25℃)に戻し、攪拌しつつ乾燥窒素により48時間バブリングを行うことにより、酢酸エチル及び2−ブタノールを1,000ppm以下まで低減させ、イオン交換水を加え、固形分量を20質量%に調整して、体積平均粒径180nmのポリエステル樹脂粒子分散液(P1)とした。
【0165】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P2)の調製]
・テレフタル酸:10モル部
・イソフタル酸:90モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:55モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:45モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P2)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P2)の重量平均分子量(Mw)は、47,000であった。
【0166】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P3)の調製]
・テレフタル酸:13モル部
・イソフタル酸:84モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:55モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:45モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P3)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P3)の重量平均分子量(Mw)は、44,000であった。
【0167】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P4)の調製]
・テレフタル酸:30モル部
・イソフタル酸:65モル部
・トリメリット酸無水物:5モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:55モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:45モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P4)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P4)の重量平均分子量(Mw)は、48,0000であった。
【0168】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P5)の調製]
・テレフタル酸:45モル部
・イソフタル酸:52モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:55モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:45モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P5)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P5)の重量平均分子量(Mw)は、38,000であった。
【0169】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P6)の調製]
・テレフタル酸:20モル部
・イソフタル酸:77モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:20モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:35モル部
・エチレングリコール:45モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P6)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P6)の重量平均分子量(Mw)は、47,000であった。
【0170】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P7)の調製]
・テレフタル酸:20モル部
・イソフタル酸:77モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:30モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:35モル部
・エチレングリコール:35モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P7)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P7)の重量平均分子量(Mw)は、42,000であった。
【0171】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P8)の調製]
・テレフタル酸:30モル部
・フマル酸:67モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:30モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:70モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P8)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P8)の重量平均分子量(Mw)は、39,000であった。
【0172】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P9)の調製]
・テレフタル酸:55モル部
・イソフタル酸:45モル部
・エチレングリコール:40モル部
・ネオペンチルグリコール:60モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P9)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P9)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P9)の重量平均分子量(Mw)は、43,000であった。
【0173】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P10)の調製]
・テレフタル酸:93モル部
・イソフタル酸:4モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:55モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:45モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P10)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P10)の重量平均分子量(Mw)は、35,000であった。
【0174】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P11)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製において反応時間を1時間から2時間に変更した以外は同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P11)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P11)の重量平均分子量(Mw)は、57,000であった。
【0175】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P12)の調製]
ポリエステル樹脂粒子分散液(P4)の調製において反応時間を1時間から2時間に変更した以外は同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P12)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P12)の重量平均分子量(Mw)は、78,000であった。
【0176】
[ポリエステル樹脂粒子分散液(P13)の調製]
・テレフタル酸:5モル部
・イソフタル酸:67モル部
・ドデセニルコハク酸無水物:25モル部
・トリメリット酸無水物:3モル部
・ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:75モル部
・ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物:25モル部
上記成分に変更した以外は、ポリエステル樹脂粒子分散液(P1)の調製の調整と同様にして、ポリエステル樹脂粒子分散液(P13)を得た。なお、ポリエステル樹脂(P13)の重量平均分子量(Mw)は、40,000であった。
【0177】
<着色剤粒子分散液の調製>
・カーボンブラックRegal330(キャボットコーポレーション社製):100部
・イオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンRK):10部
・イオン交換水:400部
上記成分を混合し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製)により、240MPaで10分間処理し、着色剤粒子分散液(1)(固形分濃度:20質量%)を得た。
【0178】
<離型剤粒子分散液の調製>
[離型剤粒子分散液(W1)の調製]
・フィッシャートロプシュワックス(日本精蝋社製FNP−0090、融解温度90℃):100部
・アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンRK):2部
・イオン交換水:400部
上記材料を混合して100℃に加熱し、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、体積平均粒径190nmの離型剤粒子が分散された離型剤粒子分散液(W1)(固形分量20質量%)を得た。
【0179】
[離型剤粒子分散液(W2)の調製]
フィッシャートロプシュワックスをポリエチレン系ワックス(炭化水素系ワックス、ベーカーペトロライト製ポリワックス725、融解温度104℃)に変更した以外は、離型剤粒子分散液(W1)の調製方法と同様にして、離型剤粒子分散液(W2)を得た。
【0180】
[離型剤粒子分散液(W3)の調製]
フィッシャートロプシュワックスをパラフィンワックス(HNP9、日本精鑞社製:融解温度75℃)に変更した以外は、離型剤粒子分散液(W1)の調製方法と同様にして、離型剤粒子分散液(W3)を得た。
【0181】
[トナー粒子(1)の作製]
・樹脂粒子分散液(P1):70部
・着色剤粒子分散液(1):5部
上記成分を円筒ステンレス容器に入れ、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)により4,000rpmでせん断力を加えながら10分間分散して混合した。次いで、凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液0.2部を徐々に滴下して、ホモジナイザーの回転数を5,000rpmにして15分間分散して混合し、原料分散液(初期の分散液)とした。
その後、4枚パドルの攪拌翼を用いた攪拌装置、及び、温度計を備えた重合釜に原料分散液を移し、攪拌回転数を700rpmにしてマントルヒーターにて加熱し始め、45℃にて凝集粒子の成長を促進させた。またこの際、0.3Nの硝酸や1Nの水酸化ナトリウム水溶液を用いて分散液のpHを3.0乃至4.0の範囲に制御した。上記pH範囲で2時間ほど保持し、凝集粒子を形成した。
次に、追加分散液(樹脂粒子分散液(P1):22部/離型剤粒子分散液(W1):3部)を追添加し、前記凝集粒子の表面に結着樹脂の樹脂粒子を付着させた。更に47℃に昇温し、光学顕微鏡及びマルチサイザーIIで粒子の大きさ及び形態を確認しながら凝集粒子を整えた。
その後、キレート剤(HIDS、(株)日本触媒製)0.2部を添加し、次いで、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを7.8に調整し、15分間保持した。その後、凝集粒子を融合させるためにpHを8.0とした後、86℃まで昇温させた。光学顕微鏡で凝集粒子が融合したのを確認した後、1.0℃/分の降温速度で冷却した。その後20μmメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、真空乾燥機で乾燥してトナー粒子(1)を得た。得られたトナー粒子(1)の体積平均粒径は5.3μmであった。
【0182】
<実施例2〜9、14〜16、比較例1〜3>
表1にしたがって、ポリエステル樹脂粒子分散液の種類、離型剤粒子分散液の種類を変更した以外は、トナー粒子(1)の作製と同様にして、各トナー粒子を作製した。
【0183】
<実施例10>
トナー粒子の表面から0.2μm以内の範囲に存在する離型剤の存在率が表2に示す値となるように、初期の分散液における樹脂粒子分散液(P1)、及び追加分散液における樹脂粒子分散液(P1)の添加量を下記のように変更した以外は、トナー粒子(1)の作製と同様にして、各トナー粒子を作製した。
・初期の分散液における樹脂粒子分散液(P1):65部
・追加分散液における樹脂粒子分散液(P1) :27部
【0184】
<実施例11>
トナー粒子の表面から0.2μm以内の範囲に存在する離型剤の存在率が表2に示す値となるように、初期の分散液における樹脂粒子分散液(P1)、及び追加分散液における離型剤粒子分散液(W1)の添加量を下記のように変更した以外は、トナー粒子(1)の作製と同様にして、各トナー粒子を作製した。
・初期の分散液における樹脂粒子分散液(P1):80部
・追加分散液における離型剤粒子分散液(W1):12部
【0185】
<実施例12>
[トナー粒子(12)の作製]
丸型ステンレス製フラスコと容器AとをチューブポンプAで接続し、チューブポンプAの駆動により容器Aに収容した収容液をフラスコへ送液し、容器Aと容器BとをチューブポンプBで接続し、チューブポンプBの駆動により容器Bに収容した収容液を容器Aへ送液する装置(
図3参照)を準備した。そして、この装置を用いて、以下の操作を実施した。
【0186】
・樹脂粒子分散液(P1):60部
・着色剤粒子分散液(1):5部
上記材料を丸型ステンレス製フラスコに入れ、0.1Nの硝酸を添加してpHを3.5に調整した後、ポリ塩化アルミニウム濃度が10質量%の硝酸水溶液0.2部を添加した。続いて、ホモジナイザー(IKA社製ウルトラタラックスT50)を用いて30℃において分散した後、加熱用オイルバス中で1℃/30分のペースで温度を上げながら、凝集粒子の粒径を成長させた。
一方、ポリエステル製ボトルの容器Aに樹脂粒子分散液(P1)27部を入れ、同じく容器Bに離型剤粒子分散液(W1)を3部入れた。次に、チューブポンプAの送液速度を0.50部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.10部/1分に設定し、凝集粒子形成中の丸型ステンレス製フラスコ内の温度が37.0℃に到達した時点からチューブポンプA及びBを駆動させ、各分散液の送液を開始した。これにより、離型剤粒子の濃度を次第に高めながら、樹脂粒子および離型剤粒子が分散された混合分散液を容器Aから凝集粒子形成中の丸型ステンレス製フラスコへ送液した。そして、フラスコへの各分散液の送液が完了し、フラスコ内の温度が48℃になった時点から30分保持し、第2凝集粒子を形成させた。
その後、樹脂粒子分散液(P1)50部を緩やかに追加して1時間保持し、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを8.5に調整した後、攪拌を継続しながら85℃まで加熱し、5時間保持した。その後、20℃/分の速度で20℃まで冷却し、濾過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させることにより、体積平均粒径6.0μmのトナー粒子(12)を得た。
【0187】
<実施例13>
[トナー粒子(13)の作製]
トナー粒子(12)の作製において、チューブポンプAの送液速度を0.50部/1分、チューブポンプBの送液速度を0.06部/1分に設定し、フラスコ内の温度が40.0℃に到達した時点から、チューブポンプA及びBを駆動させた以外は、トナー粒子(12)と同様にしてトナー粒子(13)を得た。得られたトナー粒子の体積平均粒径は6.0μmであった。
【0188】
(トナーの作製)
トナー粒子(1) :100部
シリカ粒子 : 0.8部
(日本アエロジル社製、商品名RY50)
上記組成をヘンシェルミキサーにより周速20m/sで15分間の混合を行い、トナー(1)を得た。また、トナー(1)を各例のトナー粒子に変更して、各トナーを得た。
【0189】
(キャリアの作製)
スチレンメチルメタクリレート共重合体 : 5部
(質量比(スチレン/メチルメタクリレート):70/30)
トルエン :15部
カーボンブラック : 1部
(キャボット社製、Regal330)
上記成分を混合し、10分間スターラーで攪拌させて被覆層形成用溶液を調製した。次に、この被覆液とフェライト粒子(体積平均粒径:40μm)100部とを真空脱気型ニーダーに入れて、60℃において30分攪拌した後、さらに加温しながら減圧して脱気し、乾燥させることによりキャリアを作製した。
【0190】
(現像剤の作製)
トナー(1)の8部とキャリア92部をVブレンダーにて混合し、現像剤(1)を作製した。また、トナー(1)を、上記のトナーの作製で作製した各トナーに変更して、各現像剤を得た。
【0191】
<評価>
(トナー粒子の物性)
各例で得られたトナーについて、トナー粒子の表面から0.2μm以内の範囲に存在する離型剤の存在率、離型剤のドメイン長径(ドメインの平均長径)、離型剤のドメイン長径が1.5μmの割合について、既述の方法に従って測定した。
また、tanδの極大となる温度(T0)、tanδの極大となる温度よりも10℃高い温度(T0+10)でのtanδ、トナー粒子のガラス転移温度を既述の方法に従って測定した。
【0192】
(定着画像の裏移りの評価)
各例の現像剤を、富士ゼロックス社製「DocuPrint CP400d」改造機の現像器に充填した。
この画像形成装置を用いて、温度25℃、湿度55%RHの環境下、トナー載り量が15g/m
2となるように、画像濃度100%の画像(ベタ画像)を連続してA4サイズの用紙(富士ゼロックス社製 SP紙;坪量60g/m
2)の片面に50枚出力し、画像が形成された画像形成面の上に、画像が形成されていない白紙面が重なるように、画像形成後のA4用紙を重ねた。
次に、重ねたA4用紙を反転させ、画像が形成されていない白紙面の上に、2Hの鉛筆を用いて、45度±1度の角度で、1kgの加重となるように、線を描いた。その後、鉛筆で線を描いた紙の下の紙を、下記の評価基準にしたがって、裏移りの評価を行った。
−評価基準−
A:白紙上に裏移りが全く見えない
B:白紙上にわずかに点状の黒色汚れが見えるものの、実使用上問題ないレベル
C:白紙上にわずかに線状の黒色汚れが見えるものの、実使用上許容できるレベル。
D:白紙上に鉛筆の線に沿った裏移りしているのがわずかに認識でき、実使用上許容できないレベル。
E:白紙上に鉛筆の線に沿った裏移りしているのがはっきりと認識できるレベル。
【0193】
(画像欠けの評価)
裏打移りの評価で評価に用いた画像を光学顕微鏡オリンパス社製、BX51で観察し、画像の状態を下記の評価基準にしたがって評価した。
−評価基準−
A:画像の割れ・欠け等が全く発生していない。
B:画像の割れ・欠け等が点状にわずかに発生している。
C:画像の割れ・欠け等が線状にわずかに発生している。
D:画像の割れ・欠け等が線状にはっきりと発生しているが、用紙の下地は見えていない。
E:画像の割れ・欠け等が線状にはっきりと発生、用紙の下地が見えている。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
上記結果から、本実施例のトナーは、比較例のトナーに比べ、定着画像の裏移りが抑制されていることがわかる。なお、裏移りの評価結果が低いものは、画像欠けの評価結果も低いことが分かる。
【0197】
表1中、「BPA(A0)付加物」は、ビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物を表す。
なお、表1中のビスフェノールAアルキレンオキサイド付加物の含有量は、多価アルコール全体に対する量を表す。また、イソフタル酸含有量は、多価カルボン酸全体に対する量を表す。