(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、自己診断に用いるテスト用アナログ信号の電圧値は常に同じ値であるため、かかる電圧値をAD変換して得られるディジタル値も平常時には常に同じ値となる。AD変換後に得られるディジタル値は、産業用制御装置が備える記憶部に記憶されており、かかる記憶部が故障していわゆるデータの固着が発生すると、記憶部において同じ値が記憶されたままとなる。このようなデータの固着が発生すると、テスト用アナログ信号の変換結果が異常値を示す場合でも、記憶部には正常値が記憶されたままのためにAD変換装置は正常であると誤判定されるおそれがある。
【0005】
上述の問題は、産業用ロボットを制御するために用いられる産業用制御装置のみならず、AD変換装置を含み任意の産業用設備や産業用機械を制御するために用いられる産業用制御装置において起こり得る。そこで、AD変換装置の異常や記憶部の異常など、産業用制御装置における異常を精度良く判定可能な技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
[形態1]産業用制御装置であって、単一または複数の信号源から入力されるアナログ信号に基づき、互いに異なる電圧値の2つの変換対象アナログ信号を出力する変換対象信号出力部と、前記2つの変換対象アナログ信号を入力し、前記2つの変換対象アナログ信号を対象としてアナログディジタル変換を行うことにより、各変換対象アナログ信号に応じた互いに異なる電圧値の2つの変換後ディジタル信号を出力するアナログディジタル変換部と、2つの変数を用いた予め定められた演算を実行する演算実行部であって、前記2つの変数として互いに異なる2つの値が互いに置き換えて用いられた場合に得られる結果が置き換え前と後とで互いに異なることとなる予め定められた演算を実行する演算実行部であり、前記2つの変換後ディジタル信号の示す2つの電圧値である2つの変換後電圧値を前記2つの変数として用いて前記演算を実行し、その後、前記2つの変換後電圧値を互いに置き換えて前記2つの変数として用いて前記演算を実行する、演算実行部と、前記2つの変換後電圧値の置き換え前と後とで得られる2つの前記演算の実行結果を、順次上書きして記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている前記実行結果に基づき、前記2つの変換対象アナログ信号を出力する前記変換対象信号出力部と、前記2つの変換対象アナログ信号を対象として前記アナログディジタル変換を行う前記アナログディジタル変換部と、前記アナログディジタル変換により得られる2つの変換後ディジタル信号の示す前記2つの変換後電圧値を前記2つの変数として用いて前記演算が実行された場合と、前記2つの変数として互いに置き換えて用いて前記演算が実行された場合とで得られる2つの実行結果を、順次上書きして記憶する前記記憶部と、のうちの少なくとも1つが異常であるか否かを判定する正常性判定部と、を備える、産業用制御装置。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば産業用制御装置が提供される。この産業用制御装置は、互いに異なる電圧値の2つの変換対象アナログ信号を出力する変換対象信号出力部と;前記2つの変換対象アナログ信号を入力し、各変換対象アナログ信号に応じた互いに異なる電圧値の2つの変換後ディジタル信号を出力するアナログディジタル変換部と;前記2つの変換後ディジタル信号の示す2つの電圧値である2つの変換後電圧値を用いた演算処理であって、前記2つの変換後電圧値を互いに置き換えた演算結果が互いに異なる値となる予め定められた演算処理を実行する演算実行部と;前記2つの変換後電圧値を互いに置き換えて得られる2つの前記演算処理の結果を、順次上書きして記憶する記憶部と;前記記憶部に記憶されている前記演算処理の結果に基づき、前記変換対象信号出力部と、前記アナログディジタル変換部と、前記記憶部と、のうちの少なくとも1つの正常性を判定する正常性判定部と;を備える。
【0008】
この形態の産業用制御装置によれば、2つの変換後電圧値を互いに置き換えた演算結果が互いに異なる値となる予め定められた演算処理を実行し、2つの前記演算処理の結果を、順次上書きして記憶部に記憶するので、記憶部の異常によりデータの固着が発生した場合であっても、かかる記憶部の異常を精度良く検出できる。また、記憶部が異常ではない場合にも、2つの変換後電圧値を用いた演算処理の結果に基づき、変換対象信号出力部と、アナログディジタル変換部と、のうちの少なくとも1つの正常性を判定した場合に、かかる判定を精度良く行うことができる。
【0009】
(2)上記産業用制御装置において、前記演算処理は、前記2つの変換後電圧値の一方を被除数とし、他方を除数とする除算であってもよい。この形態の産業用制御装置によれば、演算処理は、2つの変換後電圧値の一方を被除数とし、他方を除数とする除算であるので、2つの変換後電圧値を互いに置き換えた演算結果が互いに異なる値となるような演算を、簡易な処理にて実現できる。
【0010】
(3)上記産業用制御装置において、前記変換対象信号出力部は、センサが出力する単一のアナログ信号を入力する2つの分圧器であって、互いに分圧比が異なる2つの分圧器を有し;前記2つの変換対象アナログ信号は、前記2つの分圧器からそれぞれ出力されるアナログ信号であってもよい。この形態の産業用制御装置によれば、センサとは別に外部からテスト用の基準電圧を入力するための構成を設けることなく、簡易且つ安価な構成で、2つの変換対象アナログ信号を生成することができる。加えて、演算処理が除算である場合には、2つの分圧器が正常であるとの前提の下、センサが出力する単一のアナログ信号の変動によって演算処理の結果が変動することを抑制できる。したがって、演算処理の結果に基づき、2つの分圧器の正常性を容易且つ精度良く判定できる。
【0011】
(4)上記産業用制御装置において、前記アナログディジタル変換部は、2つのアナログディジタル変換装置を有し;前記2つの変換対象アナログ信号は、それぞれ前記2つのアナログディジタル変換装置の内の互いに異なるアナログディジタル変換装置に入力されてもよい。この形態の産業用制御装置によれば、2つのアナログディジタル変換装置を有するので、2つの変換対象アナログ信号をそれぞれ確実に変換して変換後ディジタル信号を出力できる。加えて、仮に一方のアナログディジタル変換装置が異常となった場合でも、他方のアナログディジタル変換装置を用いて、正しい変換後ディジタル信号を出力できる。このため、センサ等から出力されるアナログ信号を用いた制御対象装置の制御を継続することができる。
【0012】
(5)上記産業用制御装置において、前記正常性判定部は、前記記憶部に記憶されている前記演算処理の結果が上書き前と上書き後とで同じ場合に、前記記憶部は異常であると判定してもよい。この形態の産業用制御装置によれば、記憶部に記憶されている演算処理の結果が上書き前と上書き後とで同じ場合に、記憶部は異常であると判定するので、記憶部の異常を精度良く判定できる。
【0013】
(6)上記産業用制御装置において、前記正常性判定部は、前記2つの演算処理の結果が予めそれぞれに定められた正常値範囲内の値であるか否かを判定し、前記2つの演算処理の結果がいずれも前記正常値範囲内の値であると判定された場合に、前記記憶部は正常であると判定してもよい。この形態の産業用制御装置によれば、2つの演算処理の結果がいずれも正常値範囲内の値であると判定された場合に、記憶部は正常であると判定するので、記憶部の正常性を精度良く判定できる。
【0014】
(7)上記産業用制御装置において、前記正常性判定部は、前記2つの変換後電圧値が、予めそれぞれに定められた正常電圧範囲内の値であるか否かを判定し;前記正常性判定部は、前記2つの演算処理の結果がいずれも前記正常値範囲内の値ではないと判定された場合であって、前記2つの変換後電圧値のうちの一方が前記正常電圧範囲内の値ではないと判定された場合に、前記記憶部は正常であると判定してもよい。この形態の産業用制御装置によれば、2つの演算処理の結果がいずれも正常値範囲内の値ではないと判定された場合であって、2つの変換後電圧値のうちの一方が正常電圧範囲内の値ではないと判定された場合に、記憶部は正常であると判定するので、記憶部の正常性を精度良く判定できる。
【0015】
(8)上記産業用制御装置において、前記記憶部は、前記2つの変換後電圧値を互いに置き換えて得られる2つの前記演算処理の結果を、予め定められた期間ごとに順次上書きして記憶してもよい。この形態の産業用制御装置によれば、2つの演算処理の結果を、予め定められた期間ごとに順次上書きして記憶するので、変換対象信号出力部と、アナログディジタル変換部と、記憶部と、のうちの少なくとも1つの正常性を判定するために用いられる演算処理の結果を定期的に更新できる。このため、正常性判定部の判定を定期的に行った場合にも、各回において、有意義な判定を行うことができる。換言すると、同じ値に基づく判定を重複して行うといった無駄な処理の実行を回避できる。また、2つの演算処理の結果が記憶部に記憶されている期間(他方の演算結果で上書きされるまでの期間)を互いに等しくできる。このため、一方の演算処理の結果が他方の演算処理の結果に比べて記憶部に記憶されている期間が長くなって記憶部にデータ固着が生じてしまうことを抑制できる。
【0016】
(9)上記産業用制御装置において、前記2つの変換対象アナログ信号は、センサが出力する単一のアナログ信号から生成された信号であり;前記2つの変換後ディジタル信号のうちの少なくとも一方に応じた指示信号を、ロボットを制御するロボットコントローラに出力する出力モジュールを、さらに備えてもよい。この形態の産業用制御装置によれば、センサが出力するアナログ信号に応じてロボットを制御する構成に用いられる産業用制御装置において、異常を精度良く判定することができる。
【0017】
本発明は、種々の形態で実現することも可能である。例えば、産業用制御装置に用いられる入力モジュールまたは出力モジュール、プログラマブルロジックコントローラ、ロボットコントローラ、アナログディジタル変換装置、アナログディジタル変換装置の管理装置、アナログディジタル変換装置の正常性判定方法等の形態で実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.第1実施形態:
A−1.全体装置構成:
図1は、本発明の一実施形態としての産業用制御装置30を適用したロボット制御システム10の概略構成を示すブロック図である。ロボット制御システム10は、産業用ロボット60(以下、単に「ロボット60」と呼ぶ)を制御するためのシステムであり、後述するセンサ20での検出値に応じてロボット60を制御する。ロボット制御システム10は、上述のセンサ20および産業用制御装置30に加えて、ロボットコントローラ40と、アクチュエータ50とを備える。
【0020】
センサ20は、ロボット60の動作制御に関わるパラメータの値を検知し、アナログ信号として出力する。ロボットの動作制御に関わるパラメータとしては、例えば、ロボット60が多関節型の産業用ロボットである場合には、アームや手首の位置や角度などが該当する。また、例えば、ロボット60の動作する環境の温度であったり、ロボット60が移動する場合には、かかる移動距離であったり、ロボット60による処理対象のワークを搬送する搬送路が設けられている場合には、かかる搬送路における所定位置の重量であったり、ロボット60により流体流量の調整用の弁が制御される場合には、かかる流体流量であったりしてもよい。
【0021】
産業用制御装置30は、センサ20とロボットコントローラ40とに電気的に接続されている。産業用制御装置30は、センサ20から出力されるアナログ信号を入力し、ディジタル信号にAD変換してロボットコントローラ40に出力する。また、産業用制御装置30は、AD変換に関わる構成の異常を自己診断する機能を有する。かかる自己診断機能とは、後述の入力モジュール100の構成要素(後述の変換対象信号出力部110、AD変換部120、および記憶部140)が正常か否かを判定する機能を意味し、後述の正常性判定処理を行うことにより実現される。産業用制御装置30は、入力モジュール100と、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)200と、出力モジュール300とを備える。本実施形態において、入力モジュール100とプログラマブルロジックコントローラ200とは、LAN(Local Area Network)により互いに通信可能に構成されている。同様に、プログラマブルロジックコントローラ200と出力モジュール300とは、LANにより互いに通信可能に構成されている。
【0022】
入力モジュール100は、センサ20から出力されるアナログ信号を入力してAD変換し、ディジタル信号(以下、「変換後ディジタル信号」とも呼ぶ)を出力する。また、入力モジュール100は、上述の自己診断機能を有する。入力モジュール100は、自己診断結果(後述の正常性判定処理の結果)が行われた場合、かかる診断結果を出力する。入力モジュール100の詳細構成については、後述する。
【0023】
プログラマブルロジックコントローラ200は、入力モジュール100から出力される変換後ディジタル信号に基づき、出力モジュール300に指示信号を生成して出力する。指示信号とは、ロボット60の動作の制御内容を指示する信号を意味する。また、プログラマブルロジックコントローラ200が入力モジュール100から出力される自己診断結果を入力する場合には、指示信号とは、かかる自己診断結果に応じた指示内容を示す信号を意味する。本実施形態では、自己診断結果が入力モジュール100のいずれかの構成要素が異常であるとの結果であった場合には、プログラマブルロジックコントローラ200から出力される指示信号は、ロボット60の動作停止を指示する信号である。
【0024】
出力モジュール300は、プログラマブルロジックコントローラ200から出力された指示信号を、ロボットコントローラ40に出力する。
【0025】
ロボットコントローラ40は、産業用制御装置30(出力モジュール300)から出力される指示信号に応じて、アクチュエータ50を制御する。アクチュエータ50は、ロボット60の動作を実現する。例えば、ロボット60が交流モータを有する構成においては、アクチュエータ50は、かかる交流モータに電力を供給するインバータ回路として構成される。この構成においては、ロボットコントローラ40は、インバータ回路が有するスイッチング素子を駆動するための信号を出力する機能を有する。ロボットコントローラ40は、例えば、マイコンによって構成してもよい。
【0026】
A−2.産業用制御装置の詳細構成:
図2は、
図1に示す入力モジュール100の詳細構成を示すブロック図である。入力モジュール100は、入力端子101と、変換対象信号出力部110と、アナログディジタル変換部120(AD変換部120)と、マイコン150とを備える。入力端子101は、センサ20と電気的に接続されており、センサ20から出力されるアナログ信号を入力する。
【0027】
変換対象信号出力部110は、入力端子101と電気的に接続され、入力端子101に入力されたアナログ信号に基づき、AD変換部120におけるAD変換の対象となる信号(以下、「変換対象アナログ信号」と呼ぶ)を生成して出力する。変換対象信号出力部110は、2つの分圧器(第1分圧器111及び第2分圧器112)を備える。第1分圧器111は、2つの抵抗器R1、R2を備え、入力端子101に入力されたアナログ信号を所定の分圧比で電圧降下させて得られた信号を、変換対象アナログ信号Vk1aとして出力する。同様に、第2分圧器112は、2つの抵抗器R3、R4を備え、入力端子101に入力されたアナログ信号を所定の分圧比で電圧降下させて得られた信号を、変換対象アナログ信号Vk2aとして出力する。本実施形態において、第1分圧器111の分圧比と、第2分圧器112の分圧比とは、互いに異なる。これは、4つの抵抗器R1〜R4の抵抗値を調整することにより予め実現されている。このため、第1分圧器111から出力される変換対象アナログ信号Vk1aの電圧値と、第2分圧器112から出力される変換対象アナログ信号Vk2aの電圧値とは、互いに異なる。
【0028】
AD変換部120は、変換対象信号出力部110から出力されるアナログ信号、すなわち、2つの変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2aを入力してAD変換し、2つのディジタル信号を出力する。AD変換部120は、第1AD変換装置121と、第2AD変換装置122とを備える。第1AD変換装置121は、第1分圧器111と電気的に接続されており、変換対象アナログ信号Vk1aを入力してAD変換し、変換後ディジタル信号Vk1dを出力する。第2AD変換装置122は、第2分圧器112と電気的に接続されており、変換対象アナログ信号Vk2aを入力してAD変換し、変換後ディジタル信号Vk2dを出力する。上述のように、2つの変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2aの電圧値は互いに異なるため、2つの変換後ディジタル信号Vk1d、Vk2dの示す電圧値も互いに異なる。
【0029】
マイコン150は、CPU(Central Processing Unit)130と、記憶部140とを備える。CPU130は、記憶部140に予め記憶されている図示しない制御プログラムを実行することにより、演算実行部131、正常性判定部132、および指示信号出力部133として機能する。演算実行部131は、2つの変換後ディジタル信号Vk1d、Vk2dの示す2つの電圧値(以下、「変換後電圧値」と呼ぶ)を用いた予め定められた演算処理を実行する。予め定められた演算処理とは、2つの変換後電圧値を互いに置き換えた演算結果が互いに異なる値となる演算処理であり、本実施形態では、除算を意味する。上述のように、2つの変換後ディジタル信号Vk1d、Vk2dの示す電圧値(2つの変換後電圧値)は、互いに異なる。したがって、一方を被除数とし他方を除数とする除算の結果と、被除数と除数とを置き換えて得られる除算結果とは、互いに異なることとなる。本実施形態では、変換後ディジタル信号Vk1dを被除数とし、変換後ディジタル信号Vk2dを除数とした除算の結果を、「第1演算結果Vk1d/Vk2d」と呼ぶ。また、変換後ディジタル信号Vk2dを被除数とし、変換後ディジタル信号Vk1dを除数とした除算の結果を、「第2演算結果Vk2d/Vk1d」と呼ぶ。
【0030】
正常性判定部132は、後述する正常性判定処理を実行することにより、変換対象信号出力部110、AD変換部120、および記憶部140の正常性を判定する。指示信号出力部133は、指示信号Vsを出力する。平常時には、指示信号出力部133は、第1AD変換装置121から出力される変換後ディジタル信号Vk1dに基づき、センサ20から出力されたアナログ信号の電圧値およびロボット60の制御内容を判断して、指示信号Vsを出力する。これに対して、入力モジュール100において異常が発生した場合には、換言すると、正常性判定部132により異常であると判定された場合には、指示信号出力部133は、ロボット60の動作停止を指示する信号を指示信号Vsとして出力する。
【0031】
記憶部140は、RAM(Random Access Memory)を備え、上述の図示しない制御プログラムを予め記憶し、また、演算実行部131による演算結果(第1演算結果Vk1d/Vk2d、およびVk2d/Vk1d)を記憶する。後述の正常性判定処理では、除算結果が所定の期間ごとに定期的に記憶部140に記憶される。
【0032】
A−3.正常性判定処理:
図3は、第1実施形態における正常性判定処理の手順を示すフローチャートである。入力モジュール100の電源がオンすると、正常性判定部132により正常性判定処理が実行される。正常性判定処理とは、変換対象信号出力部110、AD変換部120、および記憶部140の正常性を判定するための処理である。
【0033】
正常性判定部132は、前回と逆のパターンの演算処理の結果(除算結果)を記憶部140に上書きして記憶する(ステップS105)。例えば、ステップS105が前回実行された際に、第1演算結果Vk1d/Vk2dが記憶された場合には、今回のステップS105では、第2演算結果Vk2d/Vk1dが上書きして記憶される。
【0034】
正常性判定部132は、ステップS105を実行前の演算処理の結果、すなわち、上書き前の演算処理の結果と、ステップS105を実行後の演算処理の結果、すなわち、上書き後の演算処理の結果とが同じであるか否かを判定する(ステップS110)。上書き前と上書き後とで演算処理の結果が同じであると判定された場合(ステップS110:YES)、正常性判定部132は、記憶部140は異常であると判定する(ステップS115)。これに対して、上書き前と上書き後とで演算処理の結果が同じでないと判定された場合(ステップS110:NO)、正常性判定部132は、記憶部140は正常であると判定する(ステップS120)。上述のように、第1演算結果Vk1d/Vk2dと、第2演算結果Vk2d/Vk1dとは、互いに異なる値となる。また、記憶部140に上書きされる除算結果は、前回と逆のパターン除算結果である。したがって、記憶部140の故障によりデータ固着が生じてない場合には、上書き前と上書き後とで演算結果は異なる。これに対して、データ固着が生じている場合には、上書き前と上書き後とで演算結果は同じとなる。
【0035】
上述のステップS115が実行された場合、つまり、記憶部140は異常であると判定された場合、所定時間経過するまで待機し(ステップS140)、所定時間が経過した場合(ステップS140:YES)、上述のステップS105に戻る。したがって、第1演算結果Vk1d/Vk2dと、第2演算結果Vk2d/Vk1dとが、所定時間ごとに記憶部140に順次上書きされて記憶されることとなる。所定時間としては、例えば、24時間としてもよい。もちろん、24時間に限らず任意の時間としてもよい。なお、上述のように、ステップS115が実行されて、記憶部140は異常であると判定された場合、指示信号出力部133は、ロボット60の動作停止を指示する信号を、指示信号Vsとして出力する。
【0036】
上述のステップS120が実行された場合、つまり、記憶部140は正常であると判定された場合、正常性判定部132は、各変換後電圧値は、正常値範囲内であるか否かを判定する(ステップS125)。センサ20から入力されるアナログ信号は変動するものの、或る一定範囲内での変動に収まる。したがって、変換後ディジタル信号Vk1d、Vk2dの示す電圧値も、変換対象信号出力部110およびAD変換部120が正常であれば、或る一定範囲内での変動で収まる。そこで、予め変換対象信号出力部110およびAD変換部120が正常である場合の各変換後電圧値の正常値の範囲を求めておき、ステップS125では、かかる正常値範囲内に、変換後電圧値が含まれているか否かが判定される。ここで、各AD変換装置121、122に入力される変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2の示す電圧値は、互いに異なる値である。しかし、これら2つの変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2は、単一のアナログ信号(センサ20から入力端子101に入力されるアナログ信号)を所定の分圧比で電圧降下させて得られた信号である。このため、これら2つの変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2の相対的な大きさ(比率)は、センサ20から入力されるアナログ信号が変動したとしても、或る一定範囲内での変動に収まる。したがって、これら2つの変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2をAD変換して得られた2つの変換後ディジタル信号Vk1d、Vk2dによる演算処理の実行結果(除算結果)も、或る一定範囲内での変動に収まる。
【0037】
変換後電圧値が正常値範囲内に含まれていると判定された場合(ステップS125:YES)、正常性判定部132は、変換対象信号出力部110およびAD変換部120は正常であると判定する(ステップS130)。これに対して、変換後電圧値が正常値範囲内に含まれていないと判定された場合(ステップS125:NO)、正常性判定部132は、変換対象信号出力部110またはAD変換部120は異常であると判定する(ステップS135)。変換対象信号出力部110の異常とは、例えば、抵抗器R1の抵抗値が変化して、分圧比が規定値から外れた場合などが該当する。AD変換部120の故障としては、例えば、第1AD変換装置121の変換機能の故障などが該当する。なお、ステップS135が実行されて、変換対象信号出力部110またはAD変換部120は異常であると判定された場合、指示信号出力部133は、ロボット60の動作停止を指示する信号を、指示信号Vsとして出力する。
【0038】
上述のステップS130またはS135の完了後、上述のステップS140が実行される。
【0039】
以上説明した第1実施形態の産業用制御装置30によれば、2つの変換後電圧値を互いに置き換えた演算結果が互いに異なる値となる予め定められた演算処理である除算を実行し、2つの演算結果Vk1d/Vk2d、Vk2d/Vk1dを、順次上書きして記憶部140に記憶するので、記憶部140の異常によりデータの固着が発生した場合であっても、かかる記憶部140の異常を精度良く検出できる。また、記憶部140が異常ではない場合にも、2つの演算結果Vk1d/Vk2d、Vk2d/Vk1dに基づき、変換対象信号出力部110と、AD変換部120と、のうちの少なくとも1つの正常性を精度良く判定できる。
【0040】
また、「2つの変換後電圧値を互いに置き換えた演算結果が互いに異なる値となる予め定められた演算処理」として、2つの変換後電圧値の一方を被除数とし、他方を除数とする除算を実行するので、2つの変換後電圧値を互いに置き換えた演算結果が互いに異なる値となるような演算を、簡易な処理にて実現できる。
【0041】
また、センサ20とは別に、外部からテスト用の基準電圧を入力するための構成を設けることなく、簡易且つ安価な構成で、正常性判定に用いる2つの変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2aを生成することができる。加えて、2つの分圧器111、112が正常である場合において、センサ20が出力するアナログ信号の変動によって2つの演算結果Vk1d/Vk2d、Vk2d/Vk1dが変動することを抑制できる。したがって、演算処理の結果に基づき、2つの分圧器111、112の正常性を容易且つ精度良く判定できる。
【0042】
また、AD変換部120は、2つのAD変換装置121、122を有するので、2つの変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2aをそれぞれ確実に変換して変換後ディジタル信号Vk1d、Vk2dを出力できる。加えて、仮に第1AD変換装置121が異常となった場合でも、第2AD変換装置122を用いて、正しい変換後ディジタル信号Vk1dを出力できる。このため、本実施形態とは異なり、第1AD変換装置121が異常の場合もセンサ20から出力されるアナログ信号を用いたロボット60の制御を継続する構成を採用することもできる。
【0043】
また、各変換後電圧値が正常値範囲内であるか否かに応じて、変換対象信号出力部110およびAD変換部120の正常性を判定するので、変換対象信号出力部110およびAD変換部120の正常性を精度良く判定できる。
【0044】
また、2つの演算結果Vk1d/Vk2d、Vk2d/Vk1dを、予め定められた期間ごとに順次上書きして記憶するので、変換対象信号出力部110と、AD変換部120と、記憶部140と、のうちの少なくとも1つの正常性を判定するために用いられる演算結果を定期的に更新できる。このため、正常性判定部132により定期的に行われる判定の各回において、有意義な判定を行うことができる。換言すると、同じ値に基づく正常性判定を重複して行うといった無駄な処理の実行を回避できる。また、2つの演算処理Vk1d/Vk2d、Vk2d/Vk1dの結果が記憶部140に記憶されている期間(他方で上書きされるまでの期間)を互いに等しくできる。このため、一方の演算処理の結果が他方の演算処理の結果に比べて記憶部140に記憶されている期間が長くなって記憶部140にデータ固着が生じてしまうことを抑制できる。
【0045】
B.第2実施形態:
図4は、第2実施形態における入力モジュール100aの詳細構成を示すブロック図である。第2実施形態における入力モジュール100aは、変換対象信号出力部110に代えて変換対象信号出力部110aを備える点、およびAD変換部120に代えてAD変換部120aを備える点において、第1実施形態における入力モジュール100と異なる。第2実施形態の入力モジュール100aにおけるその他の構成は、第1実施形態の入力モジュール100と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。なお、第2実施形態におけるロボット制御システムの構成は、上述の変換対象信号出力部110aおよびAD変換部120aを除き、第1実施形態におけるロボット制御システム10の構成と同じである。
【0046】
第2実施形態の変換対象信号出力部110aは、第2分圧器112に代えてテスト用アナログ信号出力部115を備える点において、第1実施形態の変換対象信号出力部110と異なる。変換対象信号出力部110aにおける他の構成は、第1実施形態の変換対象信号出力部110と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
テスト用アナログ信号出力部115は、所定の電圧値のアナログ電圧信号を出力する。本実施形態では、テスト用アナログ信号出力部115は、ツェナー定電圧ダイオードを有する。テスト用アナログ信号出力部115は、第1分圧器111が出力する変換対象アナログ信号Vk1aとは異なる電圧値の変換対象アナログ信号を出力する。本実施形態では、テスト用アナログ信号出力部115は、変換対象アナログ信号として、第1実施形態の第2分圧器112が出力する変換対象アナログ信号Vk2aと同じ電圧値の信号を出力する。
【0048】
AD変換部120aは、第1AD変換装置121および第2AD変換装置122に代えて、第3AD変換装置123を備える。第3AD変換装置123は、マルチプレクサ124と、AD変換部125とを備える。マルチプレクサ124は、第1分圧器111およびテスト用アナログ信号出力部115と電気的に接続され、それぞれから出力される変換対象アナログ信号Vk1a、Vk2aを入力し、これら2つの変換対象アナログ信号のいずれか一方を、選択的に順次切り替えて出力する。AD変換部125は、マルチプレクサ124から出力される変換対象アナログ信号をAD変換し、変換後ディジタル信号Vk1dまたは変換後ディジタル信号Vk2dを、交互に出力する。
【0049】
以上説明した第2実施形態の産業用制御装置は、第1実施形態の産業用制御装置30と同様な効果を有する。
【0050】
C.第3実施形態:
図5は、第3実施形態における正常性判定処理の手順を示すフローチャートである。第3実施形態における正常性判定処理は、ステップS110に代えてステップS111を実行する点において、
図3に示す第1実施形態における正常性判定処理と異なる。第3実施形態における正常性判定処理のその他の手順は、第1実施形態の正常性判定処理の手順と同じであるので、同一の手順には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、第3実施形態におけるロボット制御システムの装置構成は、第1実施形態のロボット制御システム10と同じであるので、同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0051】
ステップS105において、前回と逆のパターンの演算処理の結果(除算結果)が記憶部140に上書きして記憶されると、正常性判定部132は、前回の演算結果と今回の演算処理の結果とが、いずれも正常値範囲内であるか否かを判定する(ステップS111)。第1実施形態において説明したとおり、変換後ディジタル信号Vk1d、Vk2dの示す電圧値も、変換対象信号出力部110およびAD変換部120が正常であれば、それぞれ或る一定範囲内での変動で収まる。したがって、第1演算結果Vk1d/Vk2dと、第2演算結果Vk2d/Vk1dとは、いずれも、変換対象信号出力部110およびAD変換部120が正常であれば、或る一定範囲内での変動で収まる。そこで、予め変換対象信号出力部110およびAD変換部120が正常である場合の第1演算結果Vk1d/Vk2dの正常値範囲と、第2演算結果Vk2d/Vk1dの正常値範囲とを求めておき、ステップS111では、かかる正常値範囲内に、各演算結果Vk1d/Vk2d、Vk2d/Vk1dが含まれているか否かが判定される。前回の演算結果と今回の演算処理の結果とが、いずれも正常値範囲内であると判定された場合(ステップS111:YES)、上述のステップS120が実行され、記憶部140は正常であると判定される。これに対して、前回の演算結果と今回の演算処理の結果とのうち少なくとも一方が正常値範囲内でないと判定された場合(ステップS111:NO)、上述のステップS115が実行され、記憶部140は異常であると判定される。
【0052】
本実施形態では、第1演算結果Vk1d/Vk2dの正常値範囲と、第2演算結果Vk2d/Vk1dの正常値範囲とが互いに重複しないように構成されている。具体的には、4つの抵抗器R1〜R4の抵抗値を調整することにより、第1分圧器111および第2分圧器112の分圧比を調整して、第1演算結果Vk1d/Vk2dの正常値範囲と、第2演算結果Vk2d/Vk1dの正常値範囲とが互いに重複しないようにしている。したがって、記憶部140が異常となりいずれか一方の演算結果でデータ固着が生じた場合、かかる固着された演算結果は、他方の演算結果の正常値範囲から外れることとなる。このため、上述のステップS111を実行することにより、記憶部140は異常であると精度良く判定できる。
【0053】
以上説明した第3実施形態の産業用制御装置は、第1実施形態の産業用制御装置30と同様な効果を有する。
【0054】
D.他の実施形態:
D−1.他の実施形態1:
第1、2実施形態では、ステップS110において、上書き前と上書き後とで演算処理の結果が同じであると判定した場合(ステップS110:YES)、記憶部140は異常であると判定されていた。また、第3実施形態では、ステップS111において、前回の演算結果と今回の演算処理の結果とのうち少なくとも一方が正常値範囲内でないと判定された場合(ステップS111:NO)、記憶部140は異常であると判定されていた。しかし、記憶部140は正常に動作しているにも関わらず、変換対象信号出力部110、110aと、AD変換部120、120aとのうち少なくとも一方が異常のために、たまたま演算結果が同じになる、或いは、前回の演算結果と今回の演算処理の結果とのうち少なくとも一方が正常値範囲内でなくなる場合もある。そこで、正常性判定部132は、より詳細な正常性判定を行うように構成されてもよい。具体的には、異常のパターンをより細分化して異常箇所を精度良く特定するようにしてもよい。例えば、
図6に示すような正常性判定テーブルを予め記憶部140に記憶しておき、かかるテーブルに応じて、正常性の判断、また、異常の場合には、異常箇所を特定してもよい。
【0055】
図6は、その他の実施形態1において用いられる正常性判定テーブルの一例を示す説明図である。正常性判定テーブルでは、判定結果と予想される故障箇所とが予め対応付けられている。また、互いに異なる判定結果として第1〜第14のケースが記憶されている。「判定結果」欄において、「ANS1判定」とは、第1演算結果Vk1d/Vk2dが正常値範囲内であるか否かの判定結果を示す。また、「ANS2判定」とは、第2演算結果Vk2d/Vk1dが正常値範囲内であるか否かの判定結果を示す。また、「Vk1判定」とは、変換後ディジタル信号Vk1dの示す変換後電圧値が正常値範囲内(正常電圧範囲内)であるか否かの判定結果を示す。また、「Vk2判定」とは、変換後ディジタル信号Vk2dの示す変換後電圧値が正常値範囲内(正常電圧範囲内)であるか否かの判定結果を示す。なお、判定結果において「ok」は、正常値範囲内であることを示し、「fail」は、正常値範囲内でないことを示す。「予想される異常部」欄において、「第1ADC」とは、第1AD変換装置121を示す。「第2ADC」とは、第2AD変換装置122を示す。「K1」とは、第1分圧器111を示す。「K2」とは、第2分圧器112を示す。また、「予想される異常部」欄において、「good」とは、異常が無いことが確実であることを示す。また、「fault」とは、異常の可能性があること、すなわち、異常箇所の候補であることを示す。
【0056】
第1のケースでは、ANS1判定、ANS2判定、Vk1判定、Vk2判定のいずれも正常値範囲内であるとの結果であり、「予想される異常部」のいずれもgoodである。第2のケースでは、ANS1判定およびANS2判定はokであるが、Vk1判定およびVk2判定はいずれもfailである。このケースでは、例えば、第1分圧器111と第2分圧器112とがいずれも異常となったが、たまたま分圧比が互いに同じ程度に変化したため、ANS1判定およびANS2判定はokとなった場合が予測される。この場合も、記憶部140はgoodであると予測できる。他方、第1ADC、第2ADC、K1、およびK2は、faultとなり、いずれかに異常があると予想される。
【0057】
第3のケースは、ANS2判定はfailであるが、他の判定はokである。この場合、記憶部140は異常であると予想される。第7のケースも同様に、記憶部140は異常であると予想される。第4〜第6のケース、および第8〜第10のケースは、いずれの機能部(第1ADC、第2ADC、K1、およびK2)にも異常の可能性がある。換言すると、これらのケースでは、異常のある機能部を特定できない。
【0058】
第11のケースでは、ANS1判定およびANS2判定がfailであり、Vk1判定およびVk2判定はokである。このケースでは、記憶部140において、正しい第1演算結果の値、および正しい第2演算結果の値とは異なる値でデータの固着が生じた場合が想定される。したがって、このケースでは、「予想される異常部」欄において、記憶部がfaultであり、他の機能部(第1ADC、第2ADC、K1、K2)は、いずれもgoodとなっている。
【0059】
第12のケースでは、ANS1判定、ANS2判定、およびVk1判定がfailであり、Vk2判定がokである。このケースでは、Vk1判定がfailのために、換言すると、第1分圧器111と第1AD変換装置121とのうちのいずれかが異常であるために、ANS1判定およびANS2判定がfailになったと想定される。したがって、このケースでは、「予想される異常部」欄において、第1ADC、K1および記憶部がfaultであり、他の機能部(第2ADCおよびK2)はgoodになっている。第13のケースは、第12のケースと同様に、第2分圧器112と第2AD変換装置122とのうちのいずれかが異常であるために、ANS1判定およびANS2判定がfailになったと想定され、「予想される異常部」欄において、第2ADCおよびK2のみがfailとなり、他の機能部(第1ADC、K1および記憶部)はgoodになっている。第14のケースは、ANS1判定、ANS2判定、Vk1判定およびVk2判定のいずれもfailであるため、異常箇所が特定できず、いずれの機能部についてもfaultが設定されている。
【0060】
なお、以上の説明は、第1、2実施形態についてより詳細な正常性判定をするための一例であったが、第3実施形態についても、同様な正常性判定テーブルを設けてより詳細な正常性判定を行ってもよい。以上説明した他の実施形態1の構成によれば、より詳細に異常判定を行うことができ、異常箇所を精度良く特定できる。
【0061】
D−2.他の実施形態2:
各実施形態では、演算実行部131が実行する演算処理は、2つの変換後電圧値のうち、一方を被除数とし他方を除数とする除算であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、除算やべき算など、2つの変換後電圧値を互いに置き換えた演算結果が互いに異なる値となる任意の演算処理を、演算実行部131が実行する演算処理としてもよい。このような構成においても、各実施形態と同様な効果を有する。
【0062】
D−3.他の実施形態3:
変換対象信号出力部の構成は、第1、2実施形態の変換対象信号出力部110の構成および第3実施形態の変換対象信号出力部110aの構成に限定されない。例えば、第1の変換対象アナログ信号として、各実施形態と同様に変換対象アナログ信号Vk1aを出力し、第2の変換対象アナログ信号として、入力端子101に入力されるアナログ信号をそのまま出力する構成としてもよい。また、例えば、上記抵抗器R1、R2、R3の合計3つからなる分圧器を、1つだけ用意しておき、抵抗器R1とR2との間から出力されるアナログ信号を第1の変換対象アナログ信号として出力し、抵抗器R2とR3との間から出力されるアナログ信号を第2の変換対象アナログ信号として出力する構成としてもよい。すなわち、一般には、互いに異なる電圧値の2つの変換対象アナログ信号を出力する任意の構成を、変換対象信号出力部が有してもよい。
【0063】
D−4.他の実施形態4:
各実施形態では、自己診断機能は入力モジュール100、100aが有していたが、プログラマブルロジックコントローラ200や出力モジュール300が備える構成としてもよい。例えば、プログラマブルロジックコントローラ200や出力モジュール300が、駆動に必要な電源をDC/DC変換装置を利用して生成する場合、例えば、24Vの直流電源から3.3Vの直流電源を生成する場合、かかるDC/DC変換装置の正常性を判定するために自己診断機能を有する装置を配置する場合が想定される。この構成では、上述した入力端子101、変換対象信号出力部110、110a、AD変換部120、120a、マイコン150と同様な機能を有する自己診断部を設け、DC/DC変換装置から出力されるアナログ信号(3.3V電源)を入力端子101に入力し、AD変換した後、変換後ディジタル信号に基づきDC/DC変換装置の正常性を判定する。また、かかる自己診断部自体を自己診断するために、上述した各実施形態の正常性判定処理を実行してもよい。また、産業用制御装置30は、ロボット60(産業用ロボット60)を制御するためのロボット制御システム10に限らず、AD変換機能を有する任意の産業用設備や産業用機械を制御するために用いられてもよい。
【0064】
D−5.他の実施形態5:
上記実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、演算実行部131、正常性判定部132および指示信号出力部133のうちの少なくとも1つの機能部を、集積回路、ディスクリート回路、またはそれらの回路を組み合わせたモジュールにより実現してもよい。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピューター読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピューター内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピューターに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピューター読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0065】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。