特許第6962098号(P6962098)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6962098三次元造形用サポート材、三次元造形用材料セット及び三次元造形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962098
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】三次元造形用サポート材、三次元造形用材料セット及び三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20211025BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20211025BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20211025BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20211025BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20211025BHJP
   C08F 220/70 20060101ALI20211025BHJP
   C08F 283/06 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   B29C64/40
   B33Y70/00
   B33Y30/00
   B29C64/112
   C08F2/44 C
   C08F220/70
   C08F283/06
【請求項の数】9
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-183454(P2017-183454)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59035(P2019-59035A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 尚
(72)【発明者】
【氏名】廣川 一彦
(72)【発明者】
【氏名】荒木 雅昭
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−030245(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037574(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10−64/40
B33Y 10/00−99/00
C08F 2/44
C08F 220/70
C08F 283/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性モノマー、
光重合開始剤、
ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、及び、
水溶性相溶化剤を含み、
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のメチル又はエチルエステル化合物であり、
前記水溶性相溶化剤が、ジ又はトリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物である
三次元造形用サポート材。
【請求項2】
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、リシノール酸、10−ヒドロキシ−シス−12−オクタデセン酸、オキソオクタデカン酸、10−オキソ−11−オクタデセン酸、リシネライジン酸、及び、10−ヒドロキシオクタデカン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物である請求項1に記載の三次元造形用サポート材。
【請求項3】
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、リシノール酸のアルキルエステル化合物である請求項に記載の三次元造形用サポート材。
【請求項4】
前記水溶性モノマーが、ヒドロキシ基を有するモノマーを含む請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の三次元造形用サポート材。
【請求項5】
前記水溶性モノマーが、ヒドロキシアルキルアクリルアミド化合物を含む請求項に記載の三次元造形用サポート材。
【請求項6】
界面活性剤を更に含む請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の三次元造形用サポート材。
【請求項7】
重合禁止剤を更に含む請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の三次元造形用サポート材。
【請求項8】
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の三次元造形用サポート材と、
三次元造形材と、を含む、
三次元造形用材料セット。
【請求項9】
重合性化合物を含む三次元造形材を吐出する第1吐出部と、
請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載の三次元造形用サポート材を収容し、前記サポート材を吐出する第2吐出部と、
吐出した前記三次元造形材及び前記サポート材を硬化する光を照射する光照射部と、を備える
三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形用サポート材、三次元造形用材料セット及び三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、立体的な造形対象物を平行な複数の面で切断した各断面形状に対応させて積層造形用粉末の層を結合剤により結合し、この結合された層よりなる断面形状を順次積層させることによって、造形対象物の三次元モデルとなる三次元造形物を作製する技術が知られている。
上記技術を、粉末固着積層法による三次元造形ともいう。
【0003】
また、特許文献1には、SP値の加重平均値9.0〜10.3の硬化性樹脂成分を含有してなるインクジェット光造形法における光造形品形成用モデル材が開示されている。
【0004】
特許文献2には、酸価が20以下であり、活性エネルギー線硬化型インクであるモデル材を用いて印刷するモデル材印刷工程と、酸価が80以上であり、活性エネルギー線硬化型インクであるサポート材を印刷するサポート材印刷工程と、上記サポート材印刷工程によって印刷されたサポート材を除去するサポート材除去工程とを含むことを特徴とする三次元造形物の製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献3には、造形テーブル上にモデル材を吐出するモデル材用プリンタヘッドと、造形テーブル上にサポート材を吐出するサポート材用プリンタヘッドと、造形テーブル上に吐出された前記モデル材、サポート材を硬化させるための光源とを有するインクジェット光造形装置を用いて三次元造形物を形成する三次元造形方法であって、前記造形テーブル上に、各層の形成として、モデル材用プリンタヘッドからモデル材を吐出し、サポート材用プリンタヘッドからサポート材を吐出する工程と、前記造形テーブル上に吐出された前記モデル材、前記サポート材を前記光源からの光によって硬化させて層を形成する工程と、上記層の形成工程を繰り返して前記モデル材と前記サポート材とからなる三次元造形物を造形する工程とを有し、前記モデル材用プリンタヘッドから吐出されるモデル材が、SP値の加重平均値9.0〜10.3の硬化性樹脂成分を含有し、該モデル材の硬化性樹脂成分が、単官能エチレン性不飽和単量体(A)と、ウレタン基を含有しない多官能エチレン性不飽和単量体(B)と、ウレタン含有エチレン性不飽和単量体(C)と、光重合開始剤(D)とを含有し、該モデル材の重量に基づいて、(A)の含有量が50%〜90%、(B)の含有量が3%〜25%、(C)の含有量が5%〜35%であり、前記サポート材用プリンタヘッドから吐出されるサポート材が、水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)と、前記水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(F)と相溶し、かつ(F)の光硬化物と相溶しない水溶性化合物であるアルキレンオキサイド付加物および/または水(G)と、光重合開始剤(D)とを含有し、該サポート材の重量に基づいて、(F)の含有量が3〜45%、(G)の含有量が50〜95%であり、前記モデル材と前記サポート材とからなる三次元造形物が、水に浸漬することで前記サポート材の光硬化物を前記モデル材の光硬化物から分離させて該モデル材の光硬化物を抽出できることを特徴する三次元造形方法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、インクジェット光造形法によりモデル材を造形するために使用されるモデル材用樹脂組成物であって、樹脂組成物全体100重量部に対して、19〜49重量部の非水溶性単官能エチレン性不飽和単量体(A)と、15〜50重量部の二官能以上の多官能エチレン性不飽和単量体(B)と、10〜45重量部のオリゴマー(C)と、3〜15重量部の光重合開始剤(D)と、0.005〜3.0重量部の表面調整剤(E)と、を含有する、モデル材用樹脂組成物が開示されている。
【0007】
特許文献5には、光硬化性樹脂組成物を用いてインクジェット方式によって光学的立体造形物を製造する際にサポート部の形成に用いるための光硬化性樹脂組成物であって、当該サポート部形成用の光硬化性樹脂組成物の全質量に基づいて、(A)下記の一般式(I);
【0008】
【化1】

(式中、R1は水素原子またはメチル基を示し、R2は炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状のアルキレン基を示す。)
【0009】
で表されるN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(I)を2〜20質量%;(B)下記の一般式(II);
【0010】
【化2】

(式中、R3は水素原子またはメチル基を示す。)
【0011】
で表される(メタ)アクリロイルモルホリン(II)を2〜20質量%;(C)(メタ)アクリロイルオキシ基を1個以上有する(メタ)アクリレート化合物を3〜30質量%;(D)2個以上のヒドロキシル基を有するポリヒドロキシ化合物を40〜90質量%;および、(E)光ラジカル重合開始剤を0.1〜5質量%;の割合で含有することを特徴とするサポート部形成用の光硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2012−111226号公報
【特許文献2】特開2015−123684号公報
【特許文献3】特開2015−227057号公報
【特許文献4】特開2017−31249号公報
【特許文献5】特開2015−183103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、水溶性モノマー、光重合開始剤、ヒドロキシ基を有しない不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、水溶性相溶化剤を含むサポート材に比べ、インクジェット吐出性、及び、硬化後のサポート材における水除去性に優れる三次元造形用サポート材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
は、
水溶性モノマー、光重合開始剤、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、及び、水溶性相溶化剤を含む三次元造形用サポート材である。
【0015】
は、
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸の炭素数1乃至8のアルキルエステル化合物であるに記載の三次元造形用サポート材である。
【0016】
は、
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のメチル又はエチルエステル化合物であるに記載の三次元造形用サポート材である。
【0017】
は、
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、リシノール酸、10−ヒドロキシ−シス−12−オクタデセン酸、オキソオクタデカン酸、10−オキソ−11−オクタデセン酸、リシネライジン酸、及び、10−ヒドロキシオクタデカン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物である乃至のいずれか1に記載の三次元造形用サポート材である。
【0018】
は、
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、リシノール酸のアルキルエステル化合物であるに記載の三次元造形用サポート材である。
【0019】
は、
前記水溶性モノマーが、ヒドロキシ基を有するモノマーを含む乃至のいずれか1に記載の三次元造形用サポート材である。
【0020】
は、
前記水溶性モノマーが、ヒドロキシアルキルアクリルアミド化合物を含むに記載の三次元造形用サポート材である。
【0021】
は、
前記水溶性相溶化剤が、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物である乃至のいずれか1に記載の三次元造形用サポート材である。
【0022】
は、
前記水溶性相溶化剤が、ジ又はトリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物である乃至のいずれか1に記載の三次元造形用サポート材である。
【0023】
10は、
界面活性剤を更に含む乃至のいずれか1に記載の三次元造形用サポート材である。
【0024】
11は、
重合禁止剤を更に含む乃至10のいずれか1に記載の三次元造形用サポート材である。
【0025】
12は、
乃至11のいずれか1に記載の三次元造形用サポート材と、三次元造形材と、を含む、三次元造形用材料セットである。
【0026】
13は、
重合性化合物を含む三次元造形材を吐出する第1吐出部と、乃至11のいずれか1に記載の三次元造形用サポート材を収容し、前記サポート材を吐出する第2吐出部と、吐出した前記三次元造形材及び前記サポート材を硬化する光を照射する光照射部と、を備える三次元造形装置である。
【発明の効果】
【0027】
又はによれば、水溶性モノマー、光重合開始剤、ヒドロキシ基を有しない不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、水溶性相溶化剤を含むサポート材に比べ、インクジェット吐出性、及び、硬化後のサポート材における水除去性に優れる三次元造形用サポート材が提供される。
によれば、前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸の炭素数9以上のアルキルエステル化合物である場合に比べ、硬化後のサポート材における水除去性により優れる三次元造形用サポート材が提供される。
によれば、前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物が、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸の炭素数3乃至8のアルキルエステル化合物である場合に比べ、硬化後のサポート材における水除去性により優れる三次元造形用サポート材が提供される。
によれば、前記水溶性モノマーが、カルボキシ基を有するモノマーである場合に比べ、インクジェット吐出安定性により優れる三次元造形用サポート材が提供される。
によれば、前記水溶性モノマーが、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物である場合に比べ、硬化後のサポート材における水除去性により優れる三次元造形用サポート材が提供される。
によれば、前記水溶性相溶化剤が、水溶性セルロース化合物である場合に比べ、硬化後のサポート材における水除去性により優れる三次元造形用サポート材が提供される。
によれば、前記水溶性相溶化剤が、テトラ以上のポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物である場合に比べ、硬化後のサポート材における水除去性により優れる三次元造形用サポート材が提供される。
10によれば、水溶性モノマー、光重合開始剤、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、及び、水溶性相溶化剤をのみを含む場合に比べ、インクジェット吐出性、及び、硬化後のサポート材における水除去性により優れる三次元造形用サポート材が提供される。
11によれば、水溶性モノマー、光重合開始剤、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、及び、水溶性相溶化剤をのみを含む場合に比べ、インクジェット吐出性、及び、硬化後のサポート材における水除去性により優れる三次元造形用サポート材が提供される。
12によれば、水溶性モノマー、光重合開始剤、ヒドロキシ基を有しない不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、水溶性相溶化剤を含むサポート材を用いる場合に比べ、サポート材のインクジェット吐出性、及び、硬化後のサポート材における水除去性に優れる三次元造形用材料セットが提供される。
13によれば、水溶性モノマー、光重合開始剤、ヒドロキシ基を有しない不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、水溶性相溶化剤を含むサポート材を用いる場合に比べ、サポート材のインクジェット吐出性、及び、硬化後のサポート材における水除去性に優れる三次元造形装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る三次元造形装置の一例を示す概略構成図である。
図2A】本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図2B】本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
図2C】本実施形態に係る三次元造形物の製造方法の一例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一例である実施形態について説明する。
なお、実質的に同一の機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は適宜省略する場合がある。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの両方を包含する概念として用いられる語である。
【0030】
(三次元造形用サポート材)
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、水溶性モノマー、光重合開始剤、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、及び、水溶性相溶化剤を含む。
【0031】
本発明者らが詳細な検討を行った結果、三次元造形に用いられる従来の光硬化型のサポート材を用いた場合、モノマーの重合で生成したポリマーと非反応性の成分とが相溶することにより明確な海島構造を形成せず、生成したポリマーと非反応性成分の混合物の粘度が高く、水への拡散速度が遅くなるため溶解しにくく、水除去性が十分でない場合があることを見出した。
【0032】
これに対して、本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、上記構成により、インクジェット吐出性、及び、硬化後のサポート材における水除去性に優れる。その理由は、定かではないが、以下に示すように推測される。
ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物を含むことにより、モノマーの重合で生成したポリマーと非反応性の成分との相分離をより進行して、海島構造を形成して除去しやすくなるとともに、除去時に水への油性成分の分散をより促進するため、硬化後のサポート材における水除去性に優れる三次元造形用サポート材が得られると考えられる。
また、本実施形態に係る三次元造形用サポート材を用いることにより、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物、及び、水溶性相溶化剤が協奏的に作用し、インクジェット吐出安定性にも優れると考えられる。
以下、本実施形態に係る三次元造形用サポート材の詳細について説明する。
【0033】
<ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物>
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物を含む。
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸の炭素数1乃至20のアルキルエステル化合物であることが好ましく、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸の炭素数1乃至8のアルキルエステル化合物であることがより好ましく、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のメチル又はエチルエステル化合物であることが更に好ましい。
【0034】
また、前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、リシノール酸、10−ヒドロキシ−シス−12−オクタデセン酸、オキソオクタデカン酸、10−オキソ−11−オクタデセン酸、リシネライジン酸、及び、10−ヒドロキシオクタデカン酸よりなる群から選ばれた少なくとも1種の不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物であることが好ましく、リシノール酸のアルキルエステル化合物であることがより好ましく、リシノール酸の炭素数1乃至8のアルキルエステル化合物であることが更に好ましく、リシノール酸のメチル又はエチルエステル化合物であることが特に好ましい。
【0035】
前記ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物として具体的には、例えば、リシノール酸メチル、リシノール酸エチル、リシノール酸n−プロピル、リシノール酸イソプロピル、リシノール酸n−ブチル、リシノール酸n−ヘキシル、リシノール酸n−オクチル、10−ヒドロキシ−シス−12−オクタデセン酸メチル、10−ヒドロキシ−シス−12−オクタデセン酸エチル、オキソオクタデカン酸メチル、オキソオクタデカン酸エチル、10−オキソ−11−オクタデセン酸メチル、10−オキソ−11−オクタデセン酸エチル、リシネライジン酸メチル、リシネライジン酸エチル、10−ヒドロキシオクタデカン酸メチル、10−ヒドロキシオクタデカン酸エチル等が挙げられる。
【0036】
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態に係る三次元造形用サポート材におけるヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物の含有量は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、三次元造形用サポート材の全質量に対し、10質量%以上60質量%以下であることが好ましく、15質量%以上55質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上45質量%以下であることが特に好ましい。
【0037】
<水溶性相溶化剤>
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、水溶性相溶化剤を含む。
水溶性相溶化剤としては、水溶性であり、かつ、エチレン性不飽和基を有しない化合物であることが好ましく、分子量1,000未満の低分子化合物であっても、分子量(重量平均分子量)が1,000以上のポリマーであってもよい。中でも、分子量100以上250未満の低分子化合物がより好ましい。またヘッドの加熱温度を考慮して、引火点は100℃以上の低分子化合物が好ましい。
本実施形態における水溶性とは、25℃の水100質量部に対する対象物質の溶解量が1質量部以上であることを意味する。
【0038】
前記水溶性相溶化剤としては、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、ポリアルキレングリコール構造を有する化合物であることが好ましく、ポリエチレングリコール構造、及び、ポリプロピレングリコール構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の構造を有する化合物であることがより好ましい。
また、前記水溶性相溶化剤としては、硬化後のサポート材における水除去性の観点から、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基等の親水性基を有する化合物であることが好ましく、ヒドロキシ基を有する化合物であることがより好ましい。
また、前記水溶性相溶化剤は、硬化後のサポート材における水除去性の観点から、ヒドロキシ基を1又は2つ有する化合物であることが更に好ましく、ヒドロキシ基を1つ有する化合物であることが特に好ましい。
【0039】
前記水溶性相溶化剤の分子量は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、1,000未満であることが好ましく、700以下であることがより好ましく、500以下であることが更に好ましく、120以上400以下であることが特に好ましい。
【0040】
中でも、前記水溶性相溶化剤は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物であることが好ましく、ジ又はトリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物であることがより好ましい。
また、前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物におけるモノアルキルエーテルは、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、炭素数1〜8のモノアルキルエーテルであることが好ましく、炭素数1〜4のモノアルキルエーテルであることがより好ましい。
前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物におけるポリアルキレングリコールは、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、ポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールであることが好ましく、ポリエチレングリコールであることがより好ましい。
また、前記ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル化合物におけるポリアルキレングリコールのアルキレンオキシ構造の繰り返し数は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、2以上10以下であることが好ましく、2以上6以下であることがより好ましく、2以上4以下であることが更に好ましく、2又は3であることが特に好ましい。
【0041】
前記水溶性相溶化剤として具体的には、例えば、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピレンエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノベンゾイルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられる。
【0042】
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、水溶性相溶化剤を、1種単独で含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態に係る三次元造形用サポート材における水溶性相溶化剤の含有量は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、三次元造形用サポート材の全質量に対し、10質量%以上45質量%以下であることが好ましく、15質量%以上40質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。
【0043】
<水溶性モノマー>
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、水溶性モノマーを含む。
前記水溶性モノマーとして、水溶性のエチレン性不飽和化合物が好ましく挙げられる。
また、前記水溶性モノマーは、単官能モノマーであっても、多官能モノマーであってもよいが、硬化後のサポート材における水除去性の観点から、単官能モノマーであることが好ましい。
前記水溶性モノマーとしては、不飽和カルボン酸化合物、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物、及び、(メタ)アクリルアミド化合物が好ましく挙げられる。
【0044】
不飽和カルボン酸化合物としては、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド及びN−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0045】
前記水溶性モノマーとしては、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、ヒドロキシ基を有するモノマーを含むことが好ましく、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物及びヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましく、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド化合物を含むことが更に好ましく、ヒドロキシアルキルアクリルアミド化合物を含むことが特に好ましい。
ヒドロキシアルキルアクリルアミド化合物は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−ヒドロキシプロピルアクリルアミド又はN−ヒドロキシブチルアクリルアミドであることが好ましく、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドであることがより好ましい。
【0046】
また、本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、水溶性モノマーとして、ヒドロキシ基を有するモノマーを、水溶性モノマーの全質量に対し、50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、90質量%以上含むことが特に好ましい。
【0047】
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、水溶性モノマーを、1種単独で含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態に係る三次元造形用サポート材における水溶性モノマーの含有量は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、三次元造形用サポート材の全質量に対し、20質量%以上55質量%以下であることが好ましく、25質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。
【0048】
<光重合開始剤>
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、光重合開始剤を含む。
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
【0049】
光ラジカル重合開始剤として具体例には、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、及び、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等の周知の光重合開始剤が挙げられる。
中でも、硬化性の観点から、芳香族ケトン類を含むことが好ましく、芳香族ケトン類、及び、チオキサントン化合物を含むことがより好ましい。
【0050】
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、光重合開始剤を、1種単独で含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態に係る三次元造形用サポート材における光重合開始剤の含有量は、硬化性の観点から、三次元造形用サポート材の全質量に対し、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上5質量%以下であることがより好ましい。
【0051】
<界面活性剤>
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、界面活性剤を更に含むことが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の周知の界面活性剤が挙げられる。
【0052】
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、界面活性剤を、1種単独で含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態に係る三次元造形用サポート材における界面活性剤の含有量は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、三次元造形用サポート材の全質量に対し、0.05質量%以上2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上1質量%以下であることがより好ましい。
【0053】
<重合禁止剤>
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、重合禁止剤を更に含むことが好ましい。
重合禁止剤としては、例えば、フェノール系重合禁止剤(例えば、p−メトキシフェノール、クレゾール、t−ブチルカテコール、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−ブチルフェノール)、4,4'−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)、ヒンダードアミン、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)、ヒドロキノン等の周知の重合禁止剤が挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、重合禁止剤を、1種単独で含んでいても、2種以上含んでいてもよい。
本実施形態に係る三次元造形用サポート材における重合禁止剤の含有量は、硬化後のサポート材における水除去性、及び、インクジェット吐出安定性の観点から、三次元造形用サポート材の全質量に対し、0.1質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下であることがより好ましい。
【0055】
<その他の添加剤>
本実施形態に係る三次元造形用サポート材は、その他の添加剤を更に含んでいてもよい。その他の添加剤としては、公知の添加剤を用いることができ、例えば、着色剤、溶剤、増感剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、重合促進剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)等の周知の添加剤が挙げられる。
【0056】
<三次元造形用サポート材の特性>
本実施形態に係る三次元造形用サポート材の表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下の範囲が好ましく挙げられる。また、三次元造形材とサポート材とが硬化前に液体同士で隣接した際に表面張力差による液の移動を抑制する観点で、使用する三次元造形材の表面張力と本実施形態に係る三次元造形用サポート材の表面張力との絶対値の差は、2mN/m以下が好ましく、1mN/m以下がより好ましい。
なお、三次元造形用サポート材及び後述する三次元造形材の表面張力は、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学(株)製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値である。
【0057】
本実施形態に係る三次元造形用サポート材の粘度は、30mPa・s以上50mPa・s以下の範囲が好ましく挙げられる。
ここで、三次元造形用サポート材及び後述する三次元造形材の粘度は、レオマット115(Contraves社製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1,400s−1の条件で測定した値である。
【0058】
(三次元造形用材料セット)
本実施形態に係る三次元造形用材料セットは、本実施形態に係る三次元造形用サポート材と、造形インクと、を含む。
【0059】
<三次元造形材(モデル材)>
本実施形態に用いられる三次元造形材は、特に制限はないが、1液硬化型の三次元造形材であっても、2液硬化型の三次元造形材であってもよいが、ラジカル重合性の三次元造形材であることが好ましく、重合性化合物を含むことがより好ましく、重合性化合物、及び、光重合開始剤を含むことが特に好ましい。
また、本実施形態に用いられる三次元造形材は、重合禁止剤、界面活性剤等のその他添加剤を含んでもよい。
【0060】
−重合性化合物−
三次元造形材に用いられる重合性化合物は、特に制限はないが、エチレン性不飽和化合物であることが好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する化合物であれば、特に制限はなく、単官能エチレン性不飽和化合物であっても、多官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
中でも、本実施形態に用いられる三次元造形材は、エチレン性不飽和化合物として、ウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。
【0061】
−ウレタン(メタ)アクリレート−
ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタン構造と2個以上の(メタ)アクリロイル基を一分子内に有する化合物である。ウレタン(メタ)アクリレートは、モノマーであってもよし、オリゴマーであってもよいが、オリゴマーであることがよい。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの双方を意味する。また、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル基及びメタクリロイル基の双方を意味する。
【0062】
ウレタン(メタ)アクリレートの官能数((メタ)アクリロイル基の数)は、2以上20以下(好ましくは2以上15以下)がよい。
【0063】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとを用いた反応生成物が挙げられる。具体的には、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリイソシアネート化合物及びポリオール化合物を反応させたプレポリマーであって、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーと、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられる。また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとの反応生成物が挙げられる。
【0064】
・ポリイソシアネート化合物
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、鎖状飽和炭化水素イソシアネート、環状飽和炭化水素イソシアネート、芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。これら中でも、ポリイソシアネート化合物は、近紫外領域に光吸収帯を持たない鎖状飽和炭化水素イソシアネート、近紫外領域に光吸収帯を持たない環状飽和炭化水素イソシアネートが好ましい。
鎖状飽和炭化水素イソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
環状飽和炭化水素イソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、水添トルエンジイソシアネート等が挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
・ポリオール化合物
ポリオール化合物としては、例えば、ジオール、多価アルコール等が挙げられる。
ジオールとしては、例えば、アルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,16−ヘキサデカンジオール、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等)等が挙げられる。
多価アルコールとしては、例えば、ヒドロキシル基を3個以上含有するアルキレン多価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、エリスリトール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、マンニトール等)が挙げられる。
【0066】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等も挙げられる。
【0067】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、多価アルコールの多量体、多価アルコールとアルキレンオキサイドとの付加物、アルキレンオキサイドの開環重合体等が挙げられる。
ここで、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,8−デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール等が挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0068】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと二塩基酸との反応生成物、環状エステル化合物の開環重合体等が挙げられる。
ここで、多価アルコールとしては、例えば、ポリエーテルポリオールの説明で例示した多価アルコールが挙げられる。
二塩基酸としては、例えば、カルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等)、カルボン酸の無水物等が挙げられる。
環状エステル化合物としては、例えば、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0069】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、グリコールとアルキレンカーボネートとの反応生成物、グリコールとジアリールカーボネートとの反応生成物、グリコールとジアルキルカーボネートとの反応生成物等が挙げられる。
ここで、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等が挙げられる。ジアリールカーボネートとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチルジフェニルカーボネート、2−トリル−4−トリルカーボネート、4,4’−ジエチルジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピルジフェニルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、ビスクロロフェニルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート等が挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等が挙げられる。
【0070】
・ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート
ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、グリシジル基含有化合物(例えばアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等)と(メタ)アクリル酸との付加物も挙げられる。
【0071】
−ウレタン(メタ)アクリレート重量平均分子量−
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量としては、500以上5,000以下が好ましく、1,000以上3,000以下がより好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0072】
−他のエチレン性不飽和化合物−
他のエチレン性不飽和化合物としては、N−ビニル基、ビニルエーテル基及び(メタ)アクリロイル基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0073】
具体的には、他のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリレート(単官能の(メタ)アクリレート、多官能の(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
【0074】
単官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレート、複素環を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド化合物等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−t−シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールのブロックポリマーのモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
複素環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン、4−(メタ)アクリロイルオキシメチル−2−シクロヘキシル−1,3−ジオキソラン、アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミド化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド及び
N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0075】
多官能の(メタ)アクリレートのうち、2官能の(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,10−デカンジオールジアクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジアクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,8−オクタンジオールジアクリレート、1,7−ヘプタンジオールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールAジアクリレート、PO(プロピレンオキサイド)変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性ビスフェノールFジアクリレート等が挙げられる。
【0076】
多官能の(メタ)アクリレートのうち、3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性ジグリセリンテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート変性アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。
【0077】
重合性化合物の含有量は、三次元造形材全体に対して、90質量%以上99質量%以下が好ましく、93質量%以上97質量%以下がより好ましい。
特に、重合性化合物は、ウレタン(メタ)アクリレートと前記他のエチレン性不飽和化合物とを併用することが好ましい。この場合、ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は、三次元造形材全体に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下がより好ましい。一方、前記他のエチレン性不飽和化合物の含有量は、三次元造形材全体に対して、40質量%以上75質量%以下が好ましく、50質量%以上65質量%以下がより好ましい。
なお、重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0078】
−光重合開始剤−
光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、上述したものが好適に挙げられる。
光重合開始剤の含有量は、例えば、三次元造形材に対して、1質量%以上10質量%以下が好ましく、3質量%以上5質量%以下がより好ましい。
なお、光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0079】
−重合禁止剤−
重合禁止剤としては、上述したものが好適に挙げられる。
重合禁止剤の含有量は、例えば、三次元造形材に対して、0.1質量%以上1質量%以下が好ましく、0.3質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。
なお、重合禁止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0080】
−界面活性剤−
界面活性剤としては、上述したものが好適に挙げられる。
界面活性剤の含有量は、例えば、三次元造形材に対して、0.05質量%以上0.5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上0.3質量%以下がより好ましい。
なお、界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0081】
−その他の添加剤−
前記以外で、その他の添加剤としては、例えば、着色剤、溶剤、増感剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、重合促進剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)等の周知の添加剤が挙げられる。
【0082】
−三次元造形材の特性−
三次元造形材の表面張力は、20mN/m以上40mN/m以下の範囲が好ましく挙げられる。また、三次元造形材とサポート材が硬化前に液体同士で隣接した際に表面張力差による液の移動を抑制する観点で、三次元造形材の表面張力と本実施形態に係る三次元造形用サポート材の表面張力との絶対値の差は、2mN/m以下が好ましく、1mN/m以下がより好ましい。
三次元造形材の粘度は、30mPa・s以上50mPa・s以下の範囲が好ましく挙げられる。
【0083】
(三次元造形装置)
本実施形態に係る三次元造形装置は、本実施形態に係る三次元造形用サポート材を備える三次元造形装置であれば、特に制限はないが、重合性化合物を含む三次元造形材を吐出する第1吐出部と、本実施形態に係る三次元造形用サポート材を収容し、前記サポート材を吐出する第2吐出部と、吐出した前記三次元造形材及び前記サポート材を硬化する光を照射する光照射部と、を備えることが好ましい。
また、本実施形態に係る三次元造形装置は、光造形法、粉末法、熱溶解積層法、又は、インクジェット法等のいずれの三次元造形装置であってもよいが、光造形法による三次元造形装置が好ましく挙げられる。
【0084】
本実施形態に係る三次元造形装置における第1吐出部及び第2吐出部としては、インクジェット方式により吐出する吐出する吐出装置であれば、特に制限はないが、インクジェットヘッドが好ましく挙げられる。
インクジェットヘッドは、特に制限はなく、公知のインクジェットヘッドが用いられる。例えば、ピエゾ型のインクジェットヘッドが挙げられる。
また、インクジェットヘッドの数や、インクジェットヘッドにおけるノズル数は、特に制限はなく、適宜設定すればよい。
前記三次元造形用サポート材及び前記三次元造形材の吐出温度は、特に制限はなく、使用する前記三次元造形用サポート材及び前記三次元造形材に応じてそれぞれ調製することができる。
前記三次元造形用サポート材及び前記三次元造形材における吐出量についても、特に制限はなく、目的とする厚さとなる量を吐出すればよい。また、必要に応じて、前記吐出は、複数回行ってもよい。
【0085】
本実施形態に係る三次元造形装置における光照射部としては、前記三次元造形用サポート材及び前記三次元造形材を硬化させる光を照射する装置であればよいが、紫外線照射装置及び電子線照射装置が好ましく挙げられる。
なお、本実施形態における「光」は、特に断りのない限り、可視光線だけでなく、紫外線、及び、赤外線等も含むものとする。
前記光照射部は、紫外線の照射を行うことが好ましい。
また、前記光照射時における硬化は、前記三次元造形用サポート材及び前記三次元造形材は、一度に硬化してもよいし、別々に硬化してもよい。
【0086】
前記硬化に使用する光照射装置としては、特に制限はなく、公知のものが用いられる。中でも、紫外線照射装置及び電子線照射装置が好ましく挙げられ、紫外線照射装置がより好ましく挙げられる。
紫外線(UV)照射装置としては、特に制限はないが、発光ダイオード(UV−LED)、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、及び、メタルハライドランプ等が挙げられる。
前記光照射部は、1つのみ有していても、2つ以上有していてもよい。
なお、前記三次元造形用サポート材を硬化する光照射部と、前記三次元造形材を硬化する光照射部とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0087】
また、本実施形態に係る三次元造形装置は、前記三次元造形用サポート材を除去するサポート材除去部を備えていてもよいし、本実施形態に係る三次元造形装置とは別の装置に前記サポート材除去部を備えていてもよい。
更に、本実施形態に係る三次元造形装置は、その他、公知の装置や部材を備えていてもよい。
【0088】
以下、本実施形態に係る三次元造形装置について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本実施形態に係る三次元造形装置の一例を示す概略構成図である。
【0089】
本実施形態に係る三次元造形装置101は、インクジェット方式の三次元造形装置である。図1に示すように、三次元造形装置101は、例えば、造形ユニット10と、造形台20と、を備えている。また、三次元造形装置101は、装置に脱着可能に、ラジカル重合性の三次元造形材(モデル材)を収容するモデル材カートリッジ30と、サポート材を収容するサポート材カートリッジ32と、を備えている。なお、図1中、MDは三次元造形物を示し、SPはサポート部を示す。
【0090】
造形ユニット10は、例えば、モデル材の液滴を吐出するモデル材吐出ヘッド12(第1吐出部の一例)と、サポート材の液滴を吐出するサポート材吐出ヘッド14(第2吐出部の一例)と、光を照射する光照射装置16(光照射装置)とを備えている。その他、造形ユニット10は、図示しないが、例えば、造形台20上に吐出したモデル材及びサポート材のうち、余分なモデル材及びサポート材を除去し、平坦化する回転ローラを備えていてもよい。
【0091】
造形ユニット10は、例えば、不図示の駆動装置により、造形台20の造形領域上を、主走査方向と、これと交差(例えば直交)する副走査方向に移動可能な方式(所謂、キャリッジ方式)となっている。
【0092】
モデル材吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、各材の液滴を圧力により吐出するピエゾ方式(圧電方式)の吐出ヘッドが適用されている。各吐出ヘッドは、これに限られず、ポンプによる圧力により、各材を吐出する方式の吐出ヘッドであってもよい。
【0093】
モデル材吐出ヘッド12は、例えば、モデル材カートリッジ30と不図示の供給管を通じて連結されている。そして、モデル材カートリッジ30により、モデル材吐出ヘッド12へモデル材が供給される。
サポート材吐出ヘッド14は、例えば、サポート材カートリッジ32と不図示の供給管を通じて連結されている。そして、サポート材カートリッジ32により、サポート材吐出ヘッド14へサポート材が供給される。
【0094】
モデル材吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、有効な吐出領域(モデル材及びサポート材を吐出するノズルの配置領域)が、造形台20の造形領域よりも小さい短尺状の吐出ヘッドとなっている。
なお、モデル材吐出ヘッド12及びサポート材吐出ヘッド14は、各々、例えば、有効な吐出領域(モデル材及びサポート材を吐出するノズルの配置領域)が、造形台20上の造形領域幅(造形ユニット10の移動方向(主走査方向)と交差(例えば直交)する方向の長さ)以上とした長尺状のヘッドとしてもよい。この場合、造形ユニット10は、主走査方向のみに移動する方式とする。
【0095】
光照射装置16は、モデル材及びサポート材の種類に応じて選択される。光照射装置16としては、例えば、紫外線照射装置等が挙げられる。紫外線照射装置としては、前述したものが挙げられる。
【0096】
造形台20は、不図示の駆動装置により、昇降可能となっている。
【0097】
次に、本実施形態に係る三次元造形装置101の動作(三次元造形物の製造方法)について説明する。
【0098】
まず、不図示のコンピュータ等により、例えば、モデル材により造形する三次元造形物の三次元CAD(Computer Aided Design)データから、三次元造形用のデータとして、例えば、造形物を形成するための二次元形状データ(スライスデータ)を生成する。このとき、サポート材によりサポート部を形成するための二次元形状データ(スライスデータ)も生成する。サポート部を形成するための二次元形状データは、下方位置の造形物の幅より、上方位置の造形物の幅が大きく、いわゆるオーバーハングしている部分がある場合、このオーバーハング部分を下方より支持するようにサポート部が形成されるようになっている。
【0099】
次に、造形物を形成するための二次元形状データに基づいて、造形ユニット10を移動させながら、モデル材吐出ヘッド12から、モデル材を吐出し、造形台20上に、モデル材の層を形成する。そして、光照射装置16により、モデル材の層へ光を照射し、モデル材を硬化し、造形物の一部となる層を形成する。
【0100】
必要に応じて、サポート部を形成するための二次元データに基づいて、造形ユニット10を移動させながら、サポート材吐出ヘッド14から、サポート材を吐出し、造形台20上に、モデル材の層と隣接して、サポート材の層を形成する。そして、光照射装置16により、サポート材の層へ光を照射し、サポート材を硬化し、サポート部の一部となる層を形成する。
このようにして、造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第1層LAY1を形成する(図2A参照)。ここで、図2A中、MD1は、第1層LAY1における造形物の一部となる層を示し、SP1は、第1層LAY1におけるサポート部の一部となる層を示す。
【0101】
次に、造形台20を下降する。この造形台20の下降は、次に形成する第2層(造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第2層)の厚み分とする。
【0102】
次に、第1層LAY1と同様に、造形物の一部となる層と、必要に応じて、サポート部の一部となる層とからなる第2層LAY2を形成する(図2B参照)。ここで、図2B中、MD2は、第2層LAY2における造形物の一部となる層を示し、SP2は、第2層LAY2におけるサポート部の一部となる層を示す。
【0103】
そして、この第1層LAY1及び第2層LAY2を形成する動作を繰り返し実施し、第n層LAYnまで形成する。これにより、少なくとも一部がサポート部でサポートされた造形物が形成される(図2C参照)。ここで、図2C中、MDnは、第n層LAYnにおける造形物の一部となる層を示す。MDは造形物を示す。SPはサポート部を示す。
【0104】
その後、造形物からサポート部を除去すると、目的とする造形物が得られる。ここで、サポート部の除去は、例えば、手で取り外す方式(ブレークアウェイ方式)、気体又は液体を噴射して取り外す方式等が採用される。
なお、得られた造形物は、研磨処理等の後処理を施してもよい。
【実施例】
【0105】
以下、実施例により本実施形態を詳細に説明するが、本実施形態は、これら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0106】
<サポート材1の調製>
・水溶性モノマー:HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド、KJケミカルズ(株)製)を28.5質量部、
・ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物:URIC H31(伊藤製油(株)製リシノール酸メチル)を52.5質量部、
・相溶化剤:MTG(トリエチレングリコールモノメチルエーテル、日本乳化剤(株)製)を17.5質量部、
・重合開始剤:Irgacure819(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製)を1質量部、
・重合禁止剤:MEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル)を0.2質量部、
・界面活性剤:TEGO Wet 270(ポリエーテル変性シロキサンコポリマー、エボニック社製)を0.3質量部
上記成分を混合し、サポート材1を調製した。
【0107】
<サポート材2の調製>
サポート材1のMTGをBDG(ジエチレングリコールモノブチルエーテル、日本乳化剤(株)製)に変更しただけで、あとは同様に上記成分を混合し、サポート材2を調製した。
【0108】
<サポート材3の調製>
サポート材1のMTGをiBDG(ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、日本乳化剤(株)製)に変更しただけで、あとは同様に上記成分を混合し、サポート材3を調製した。
【0109】
<サポート材4の調製>
サポート材1のMTGをMFTG(トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、日本乳化剤(株)製)に変更しただけで、あとは同様に上記成分を混合し、サポート材4を調製した。
【0110】
<サポート材5の調製>
サポート材1のURIC H31をリシネライジン酸メチル(関東化学(株)製)に変更しただけで、あとは同様に上記成分を混合し、サポート材5を調製した。
【0111】
<比較例1のサポート材C1の調製>
・水溶性モノマー:HEAA(KJケミカルズ(株)製)を28.5質量部、
・ヒドロキシ基を1つ有する不飽和脂肪酸のアルキルエステル化合物:URIC H31(伊藤製油(株)製)リシノール酸メチルを70質量部、
・重合開始剤:Irgacure819(BASF社製)を1質量部、
・重合禁止剤:MEHQを0.2質量部、
・界面活性剤:TEGO Wet 270(エボニック社製)を0.3質量部
上記成分を混合し、比較例1となるサポート材C1を調製した。
【0112】
<比較例2のサポート材C2の調製>
・水溶性モノマー:HEAA(KJケミカルズ(株)製)を28.5質量部、
・相溶化剤:MTG(日本乳化剤(株)製)を70質量部、
・重合開始剤:Irgacure819(BASF社製)を1質量部、
・重合禁止剤:MEHQを0.2質量部、
・界面活性剤:TEGO Wet 270(エボニック社製)を0.3質量部
上記成分を混合し、比較例2となるサポート材C2を調製した。
【0113】
<モデル材1の調製>
・ウレタンアクリレートオリゴマー:12.70質量部
(「U−200PA」新中村化学工業(株)製)
・ウレタンアクリレートオリゴマー:16.40質量部
(「UA−4200」新中村化学工業(株)製)
・アクリレートモノマー:50.40質量部
(「VEEA」(株)日本触媒製、2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルアクリレート)
・アクリレートモノマー:14.60質量部
(「IBXA」大阪有機化学工業(株)製、イソボルニルアクリレート)
・重合禁止剤:0.50質量部
(MEHQ(ヒドロキノンモノメチルエーテル))
・重合開始剤:3.00質量部
(Irgacure819:BASF社製、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)
・重合開始剤:1.00質量部
(Irgacure 379:BASF社製、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン)
・増感剤:1.00質量部
(ITX(2−イソプロピルチオキサントン))
・シアン顔料:1.00質量部
(KY410−4B:大成化工(株)製)
・界面活性剤:0.20質量部
(TEGO Wet 270:エボニック社製、ポリエーテル変性シロキサンコポリマー)
上記成分を混合し、モデル材1を調製した。
【0114】
(実施例1乃至5、並びに、比較例1及び2)
<三次元造形物の作製>
三次元造形装置は、インクジェットヘッドとして富士フィルムダイマティックス社製Polarisヘッド(型番:PQ512/85)を、紫外線照射光源としてINTEGRATION TECHNOLOGY LTD社製Subzero−055(100w/cmの強度)を選択し、これらを駆動部と制御部とからなる造形装置に設置し、これを試験用の造形装置とした。なお、造形装置は、インクジェットヘッドと光源とが共に往復運動する方式であり、一度の走査(スキャン)毎に厚み20μmのモデル材層及び必要に応じサポート材層の積層、並びに、紫外線照射による硬化処理を行い、三次元造形物、及び、必要に応じてサポート材による支持部(サポート部)の形成を行う装置とした。また、造形装置では、モデル材及びサポート材は、遮光条件下、保存タンクから送液ポンプによりサンゴバン社製Tygon 2375耐薬チューブを経由し、日本ポール(株)製プロファイル・スター A050フィルター(ろ過精度5μm)を通過させ、異物を除去した後にインクジェットヘッドへ送液する仕組みとした。
前記造形装置により、前記で作製した各例のサポート材1乃至5、C1又はC2と、及び、モデル材1とを用い、厚さ2mm、中心穴直径1cm、外径3cmのドーナツ形状の三次元造形物の直径1cmの穴にサポート材1を満たし硬化したサポート材が付着したままであるドーナツの穴がサポート材で埋まった形状のテスト三次元造形物を形成した。
【0115】
<水除去性評価>
テスト三次元造形物を、100mLの水を入れたビーカー内に入れ、ヤマト科学(株)製振とう器MK161にセットし、温度30℃、60rpmで楕円振とうさせて、1時間後のサポート材の残り方で判定した。A(○)が残っていない場合、B(△)が穴が開いているが半分程度残っている場合、C(×)が穴も開いてない場合とする。実施例1乃至実施例5、及び、比較例1のサポート材は、紫外線照射により相分離を起こし、ホワイトチョコレート状の硬化物になるが、比較例2のサポート材では紫外線照射で相分離状態にならず、高粘性の液体を生じるだけでサポート材として機能しなかった(不適)。
【0116】
<インクジェット吐出性評価>
ヘッド温度50℃、印加電圧60V、周波数5kHzにて2560000発の連続吐出を行い、不吐ノズルの割合を吐出質量により計測した。A(○)が10%未満の場合、B(△)が10%以上30%未満の場合、C(×)が30%以上の場合とする。
【0117】
【表1】
【符号の説明】
【0118】
10 造形ユニット
12 モデル材吐出ヘッド
14 サポート材吐出ヘッド
16 光照射装置
20 造形台
30 モデル材カートリッジ
32 サポート材カートリッジ
101 三次元造形装置
図1
図2A
図2B
図2C