(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも表層部が弾性材料からなり熱源により加熱される一方の転動体と、少なくとも表層部が前記一方の転動体の表層部よりも硬度の高い材料からなる他方の転動体とにより、印画部よりも搬送方向上流側において記録媒体を挟持し加熱して搬送する第1の挟持搬送手段と、
前記第1の挟持搬送手段を経た前記記録媒体を、少なくとも表層部が弾性材料からなり熱源により加熱される一方の転動体と、少なくとも表層部が前記一方の転動体の表層部よりも硬度の高い材料からなる他方の転動体とにより、印画部よりも搬送方向上流側において挟持し加熱して、印画部に向けて搬送する第2の挟持搬送手段と、
前記第1及び第2の挟持搬送手段を制御する制御手段と、を備え、
前記第1及び第2の挟持搬送手段の少なくとも一方における前記一方の転動体の前記記録媒体に対する接触面積が調整可能であって、
前記制御手段は、前記記録媒体に関する特性に応じて、前記第1及び第2の挟持搬送手段の少なくとも一方における前記一方の転動体の前記記録媒体に対する接触面積を調整することにより、前記一方の転動体から前記記録媒体への伝熱量を制御し、
前記第1及び第2の挟持搬送手段の少なくとも一方は、前記記録媒体の反りを矯正するデカール機能を有し、前記デカール機能を有する一の挟持搬送手段は、前記一方の転動体を前記記録媒体の印画面である表面に接触させ、前記デカール機能を有する他の挟持搬送手段は、前記一方の転動体を前記記録媒体の裏面に接触させ、
前記記録媒体の厚さが所定の厚さを下回っている場合には、前記第2の挟持搬送手段における挟持を解除することを特徴とする搬送装置。
少なくとも表層部が弾性材料からなり熱源により加熱される一方の転動体と、少なくとも表層部が前記一方の転動体の表層部よりも硬度の高い材料からなる他方の転動体とにより、印画部よりも搬送方向上流側において記録媒体を挟持し加熱して搬送する第1の挟持搬送手段と、
前記第1の挟持搬送手段を経た前記記録媒体を、少なくとも表層部が弾性材料からなり熱源により加熱される一方の転動体と、少なくとも表層部が前記一方の転動体の表層部よりも硬度の高い材料からなる他方の転動体とにより、印画部よりも搬送方向上流側において挟持し加熱して、印画部に向けて搬送する第2の挟持搬送手段と、
前記第1及び第2の挟持搬送手段を制御する制御手段と、を備え、
前記第1及び第2の挟持搬送手段の少なくとも一方における前記一方の転動体の前記記録媒体に対する接触面積が調整可能であって、
前記制御手段は、前記記録媒体に関する特性に応じて、前記第1及び第2の挟持搬送手段の少なくとも一方における前記一方の転動体の前記記録媒体に対する接触面積を調整することにより、前記一方の転動体から前記記録媒体への伝熱量を制御し、
前記第1の挟持搬送手段として3つの挟持搬送手段と、
前記第2の挟持搬送手段として2つの挟持搬送手段と、を備え、
前記第1の挟持搬送手段をなす挟持搬送手段と、前記第2の挟持搬送手段をなす挟持搬送手段とは、交互に配置されていることを特徴とする搬送装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
印画前の記録媒体を加熱するにあたって、記録媒体の種類の切替時において、転動体自体の温度を昇降させることにした場合には、迅速な温度調整が行えない。表層部が弾性材料からなる転動体は比熱が大きく、急激な温度変化を生じないからである。したがって、比熱の異なる記録媒体に切替えるときには、転動体を所望の温度に調整するまで待つ必要があり、迅速な切替えができない。
【0007】
また、転動体の記録媒体への接触時間を変化させることにした場合には、比熱の大きい記録媒体を用いる場合に、記録媒体の搬送速度を下げなければならない。記録媒体の搬送速度を下げることは、印画速度も下げることになってしまうので好ましくない。近年の記録装置においては、印画時間の短縮化の観点から、記録媒体を高速搬送することが要請されているからである。
【0008】
さらに、特許文献1では、ヒータによって加熱されるプレヒータ部を記録媒体に対して単に接触させるようにしており、記録媒体の温度を記録媒体の種類に応じた所望の温度に調整することはできない。
【0009】
そこで本発明の課題は、印画前の記録媒体を加熱して搬送する搬送装置において、温度制御効率が向上されて搬送速度の高速化が可能となり、また、記録媒体の切替えが迅速に行える搬送装置及びこの搬送装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【0010】
さらに本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0012】
1.
少なくとも表層部が弾性材料からなり熱源により加熱される一方の転動体と、少なくとも表層部が前記一方の転動体の表層部よりも硬度の高い材料からなる他方の転動体とにより、印画部よりも搬送方向上流側において記録媒体を挟持し加熱して搬送する第1の挟持搬送手段と、
前記第1の挟持搬送手段を経た前記記録媒体を、少なくとも表層部が弾性材料からなり熱源により加熱される一方の転動体と、少なくとも表層部が前記一方の転動体の表層部よりも硬度の高い材料からなる他方の転動体とにより、印画部よりも搬送方向上流側において挟持し加熱して、印画部に向けて搬送する第2の挟持搬送手段と、
前記第1及び第2の挟持搬送手段を制御する制御手段と、を備え、
前記第1及び第2の挟持搬送手段の少なくとも一方における前記一方の転動体の前記記録媒体に対する接触面積が調整可能であって、
前記制御手段は、前記記録媒体に関する特性に応じて、前記第1及び第2の挟持搬送手段の少なくとも一方における前記一方の転動体の前記記録媒体に対する接触面積を調整することにより、前記一方の転動体から前記記録媒体への伝熱量を制御することを特徴とする搬送装置。
2.
前記第1及び第2の挟持搬送手段の前記一方の転動体は、前記記録媒体を挟持するときに所定温度に加熱されていることを特徴とする前記1記載の搬送装置。
3.
前記制御手段は、前記第2の挟持搬送手段において前記一方の転動体の前記記録媒体に対する接触面積を調整することを特徴とする前記1又は2記載の搬送装置。
4.
前記記録媒体に関する特性として、材質、厚さ、幅又は坪量のうちの少なくとも何れか一つを含む変量を用いることを特徴とする前記1、2又は3記載の搬送装置。
5.
前記第1及び第2の挟持搬送手段が構成する前記記録媒体の搬送経路は、略平面であることを特徴とする前記1〜4の何れかに記載の搬送装置。
6.
前記第1及び第2の挟持搬送手段の少なくとも一方は、前記記録媒体の反りを矯正するデカール機能を有することを特徴とする前記1〜5の何れかに記載の搬送装置。
7.
前記デカール機能を有する一の挟持搬送手段は、前記一方の転動体を前記記録媒体の印画面である表面に接触させ、
前記デカール機能を有する他の挟持搬送手段は、前記一方の転動体を前記記録媒体の裏面に接触させることを特徴とする前記6記載の搬送装置。
8.
前記記録媒体の厚さが所定の厚さを下回っている場合には、前記第2の挟持搬送手段における挟持を解除することを特徴とする前記7記載の搬送装置。
9.
前記第1の挟持搬送手段として3つの挟持搬送手段と、
前記第2の挟持搬送手段として2つの挟持搬送手段と、を備え、
前記第1の挟持搬送手段をなす挟持搬送手段と、前記第2の挟持搬送手段をなす挟持搬送手段とは、交互に配置されていることを特徴とする前記1〜8の何れかに記載の搬送装置。
10.
前記1〜9の何れかに記載の搬送装置と、
前記搬送装置により前記印画部に搬送された前記記録媒体に対して画像形成を行う印画ヘッドとを備えたことを特徴とする画像形成装置。
11.
前記印画ヘッドは、印画中は固定されて配置されており、搬送されている前記記録媒体に対して画像形成を行うことを特徴とする前記10記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、印画前の記録媒体を加熱して搬送する搬送装置において、温度制御効率が向上されて搬送速度の高速化が可能となり、また、記録媒体の切替えが迅速に行える搬送装置及びこの搬送装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態の搬送装置を備えた画像形成装置を示す概略斜視図である。
【0016】
この搬送装置1は、
図1に示すように、シート状の記録媒体101を加熱して搬送し、この記録媒体101に対する印画ヘッド2による良好な印画を可能とする装置である。記録媒体101は、各種の紙、布、合成樹脂シート、金属箔などであり、その表面に印画ヘッド2による印画が行えるものである。記録媒体101として紙を用いる場合、その厚さは、例えば0.3mm〜1.5mm程度である。
【0017】
この実施形態においては、記録媒体101としては枚葉式のシートを用いているが、連続した(長尺)シートを用いることもできる。印画ヘッド2は、この実施形態においては、印画中は固定して配置されるインクジェットヘッドであり、画像形成装置として、いわゆるシングルパス方式のインクジェット記録装置3を構成している。印画ヘッド2は、イエローインク用ヘッド2Y、マゼンタインク用ヘッド2M、シアンインク用ヘッド2C及びブラックインク用ヘッド2Kから構成されている。なお、印画ヘッド2は、より多くの色のインクを用いる5個以上のヘッド、例えば、8色のインクを用いる8個のヘッドから構成してもよい。インクジェット記録装置3は、搬送装置1と印画ヘッド2とを備えて構成されている。なお、印画ヘッド2は、記録媒体101の搬送方向に直交する方向(幅方向)に走査されるものであってもよい。
【0018】
インクジェット記録装置3は、用紙供給箱4に収納された印画前の記録媒体101を、搬送装置1により、印画ヘッド2による印画部に搬送するように構成されている。印画ヘッド2による印画がなされた記録媒体101は、図示しない乾燥装置により乾燥され、用紙回収箱6に搬送される。インクジェット記録装置3を構成する搬送装置1、印画ヘッド2及び乾燥装置等は、制御手段となる制御装置7によって制御されて動作する。なお、紫外線硬化型のインクを用いる場合には、印画がなされた記録媒体101には、紫外線照射がなされる。
【0019】
図2は、本発明の実施形態の搬送装置を示す概略側面図である。
【0020】
搬送装置1は、
図2に示すように、複数の挟持搬送手段である複数の挟持搬送ローラ11、12、13、14、15を有して構成されている。これら挟持搬送ローラ11、12、13、14、15はそれぞれ、記録媒体101を挟持し加熱して搬送する。これら挟持搬送ローラ11、12、13、14、15は、前述したように、制御装置7によって制御されて動作する。
【0021】
複数の挟持搬送ローラ11、12、13、14、15は、第1の挟持搬送ローラ11、13、15と、第2の挟持搬送ローラ12、14とを有して構成されている。この実施形態においては、第1の挟持搬送手段として3つの第1の挟持搬送ローラ11、13、15と、第2の挟持搬送手段として2つの第2の挟持搬送ローラ12、14とを備えており、第1の挟持搬送ローラ11、13、15と第2の挟持搬送ローラ12、14とは、交互に配置されている。ただし、挟持搬送ローラの数及び配置は、何ら限定されるものではなく、搬送装置1は、1個の第1の挟持搬送ローラと1個の第2の挟持搬送ローラとにより構成することもできる。
【0022】
第1の挟持搬送ローラ11、13、15は、回転軸に配置された熱源(例えば、カーボンヒータ)20により加熱される、少なくとも表層部が弾性材料(例えば、ゴム材料)からなる円柱状の一方の転動体21と、少なくとも表層部が一方の転動体21の表層部よりも硬度の高い材料(例えば、金属材料や硬質ゴム)からなり一方の転動体21に平行に配置された円柱状の他方の転動体22とを有して構成されている。他方の転動体22も、回転軸に配置された熱源(例えば、カーボンヒータ)20により加熱される。他方の転動体22は、サーボモータ26により回転操作される。一方の転動体21は、他方の転動体22に対して、加圧バネ27により圧接されている。
【0023】
第1の挟持搬送ローラ11、13、15はそれぞれ、一方の転動体21が記録媒体101の印画面である表面(
図2中の上面)側に配置され、他方の転動体22が記録媒体101の裏面(
図2中の下面)側に配置されている。第1の挟持搬送ローラ11、13、15はそれぞれ、一方の転動体21と他方の転動体22とにより記録媒体101を挟持して加熱し、回転操作されることにより記録媒体101を搬送する。
【0024】
第2の挟持搬送ローラ12、14は、加熱ローラ23により加熱される、少なくとも表層部が弾性材料(例えば、ゴム材料)からなる円柱状の一方の転動体24と、少なくとも表層部が一方の転動体24の表層部よりも硬度の高い材料(例えば、金属材料や硬質ゴム)からなり一方の転動体24に平行に配置された円柱状の他方の転動体25とを有して構成されている。加熱ローラ23は、一方の転動体21に平行な円柱状に構成され、回転軸に配置された熱源(例えば、カーボンヒータ)20により加熱される。他方の転動体25は、回転軸に配置された熱源20により加熱される。他方の転動体25は、サーボモータ26により回転操作される。一方の転動体24は、他方の転動体25に対して、加圧バネ27により圧接されている。
【0025】
記録媒体101の搬送方向上流側の第2の挟持搬送ローラ12は、一方の転動体24が記録媒体101の裏面側に配置され、他方の転動体25が記録媒体101の表面側に配置されている。記録媒体101の搬送方向下流側の第2の挟持搬送ローラ14は、一方の転動体24が記録媒体101の表面側に配置され、他方の転動体25が記録媒体101の裏面側に配置されている。第2の挟持搬送ローラ12、14はそれぞれ、第1の挟持搬送ローラ11、13、15を経た記録媒体101を、一方の転動体24と他方の転動体25とにより挟持し加熱して、回転操作されることにより印画部に向けて搬送する。
【0026】
この実施形態においては、用紙供給箱4から供給された記録媒体101は、
図2中矢印Tで示すように、第1の挟持搬送ローラ11により搬送され、次に、第2の挟持搬送ローラ12により搬送され、第1の挟持搬送ローラ13により搬送され、第2の挟持搬送ローラ14により搬送され、第1の挟持搬送ローラ15により搬送されて、印画部に向けて搬送される。
【0027】
この搬送装置1においては、各挟持搬送ローラ11、12、13、14、15の各転動体21、22、24、25に対応して、温度センサ(例えば、サーモスタット)30及び冷却ファン31が配置されている。また、この搬送装置1における記録媒体101の搬送経路上には、複数の温度センサ(例えば、熱電対)32が配置されている。各転動体21、22、24、25及び記録媒体101は、温度センサ30、32の検知結果に基づいて制御回路7が熱源20及び冷却ファン31を制御することにより、所望の温度に維持される。なお、所望の温度とは、用いるインクの特性によって異なり、紫外線硬化型のインクを用いる場合には、例えば、30℃〜40℃程度である。
【0028】
この搬送装置1を用いるインクジェット記録装置3においては、印画前の記録媒体101の温度管理は重要である。記録媒体101上におけるインクの濡れ性(広がり性)を所望の状態とするためには、印画前の記録媒体101の温度を所定の温度にしておく必要があるからである。
【0029】
この搬送装置1においては、
図2中矢印Uで示すように、各挟持搬送ローラ11、12、13、14、15の個別の昇降操作が可能となっており、記録媒体101の搬送経路を、直線状(平面状)の経路とすることもできるし、上下に屈曲する経路とすることもできる。
【0030】
記録媒体101の搬送経路において、各挟持搬送ローラ11、12、13、14、15の前後となる位置には、記録媒体101の移動をガイドするガイド板33が配置されている。ガイド板33は、記録媒体101の表面側及び裏面側にそれぞれ配置されている。このガイド板33の裏面(記録媒体101が接触しない面)には、ヒータが設けられており、ガイド板33によりガイドされる記録媒体101を加熱するようになっている。ガイド板33に設けられたヒータは、制御回路7によって制御される。
【0031】
また、記録媒体101の搬送経路において、搬送装置1の入口となる位置には、記録媒体101の通過を検知する通過検知センサ34が設けられ、搬送装置1の出口となる位置にも、通過検知センサ35が設けられている。制御回路7は、これら通過検知センサ34、35による検知結果に応じて、各挟持搬送ローラ11、12、13、14、15を制御する。
【0032】
また、この搬送装置1においては、記録媒体101の表面側にある各転動体21、24、25は、記録媒体101の裏面側にある各転動体22、24、25に対して、昇降用サーボモータ28により、接離操作が可能となっている。
【0033】
図3は、本発明の実施形態の搬送装置の転動体を示す側面図である。
【0034】
この搬送装置1においては、第2の挟持搬送ローラ12、14は、搬送前の記録媒体101の反りを矯正するデカール機能を有している。すなわち、記録媒体101の搬送方向上流側の第2の挟持搬送ローラ12は、
図3に示すように、一方の転動体24を記録媒体101の裏面に接触させており、
図3中矢印Eで示すように、弾性変形されて凹むことにより、記録媒体101を裏面側に凸の形状に反らせる。一方、記録媒体101の搬送方向下流側の第2の挟持搬送ローラ14は、一方の転動体24を記録媒体101の表面に接触させており、弾性変形されて凹むことにより、記録媒体101を表面側に凸の形状に反らせる。このように、2つの第2の挟持搬送ローラ12、14が、記録媒体101を互いに反対側に反らせることにより、記録媒体101が元々有していた反りが矯正される。
【0035】
なお、記録媒体101の反りは、表面側に凸の形状である場合には、印画部における吸着保持によって矯正することができる。そのため、搬送前の記録媒体101の反りが表面側に凸である場合、又は、反りがない場合には、必ずしも反りの矯正を行う必要はない。この場合には、2つの第2の挟持搬送ローラ12、14を均等に用いることにより、記録媒体101の反りを変化させないようにしてもよい。一方、搬送前の記録媒体101の反りが裏面側に凸の形状である場合には、吸着保持によって矯正できない。そのため、一方の転動体24を記録媒体101の表面に接触させている記録媒体101の搬送方向下流側の第2の挟持搬送ローラ14のみを用いて、記録媒体101の反りを表面側に凸の反りに矯正させることが好ましい。
【0036】
記録媒体101の搬送方向上流側の第2の挟持搬送ローラ12は、
図3に示すように、鉛直方向に対して他方の転動体25が一方の転動体24に対して搬送方向Tの下流側となる方向のオフセット角度θを有している。オフセット角度θは、例えば0°〜10°である。記録媒体101の搬送方向下流側の第2の挟持搬送ローラ14は、
図2に示すように、鉛直方向に対して他方の転動体25が一方の転動体24に対して搬送方向Tの下流側となる方向のオフセット角度θを有している。オフセット角度θは、例えば0°〜10°である。
【0037】
この搬送装置1においては、第2の挟持搬送ローラ12、14における一方の転動体24は、記録媒体101に対する接触面積が調整可能となっている。接触面積の調整は、一方の転動体24の他方の転動体25に対するニップ圧(接触圧)の変更により行う。すなわち、第2の挟持搬送ローラ12、14に対応する加圧バネ27は、電動シリンダ29により、一方の転動体24に対する押圧力が変更できるようになっている。一方の転動体24に対する加圧バネ27の押圧力が変更されることにより、一方の転動体24の他方の転動体25に対するニップ圧が変更される。
【0038】
一方の転動体24のニップ圧が小さいときには、一方の転動体24の弾性変形量が小さく、記録媒体101に対する接触面積は小さい。そして、一方の転動体24のニップ圧が大きくなると、
図3に示すように、一方の転動体24の弾性変形量が大きくなり、記録媒体101に対する接触面積が大きくなる。このように一方の転動体24の記録媒体101に対する接触面積を調整することにより、一方の転動体24から記録媒体101への伝熱量を制御することができる。一方の転動体24から記録媒体101への伝熱量は、これら一方の転動体24及び記録媒体101の接触面積に比例するからである。
【0039】
制御回路7は、記録媒体101に関する特性に応じて、電動シリンダ29を介して、第2の挟持搬送ローラ12、14における一方の転動体24の記録媒体101に対する接触面積を調整することにより、一方の転動体24から記録媒体101への伝熱量を制御する。記録媒体101に関する特性としては、材質、厚さ、幅又は坪量のうちの少なくとも何れか一つを含む変量を用いることができる。このような記録媒体101に関する特性は、制御回路7に手動入力されるものとしてもよいし、各種センサによって検知されて制御回路7に入力されるものとしてもよい。また、制御回路7には、環境温度、環境湿度、環境気圧など、記録媒体101の温度及び比熱に影響する変量が入力されることが好ましい。
【0040】
一方の転動体24の記録媒体101に対する接触面積を調整することにより、記録媒体101への伝熱量を、記録媒体101に関する特性及び温度に応じた適切な値に微調整することができる。例えば、記録媒体101の厚さや材質等によって決まる記録媒体101の比熱が大きい場合又は所望の温度との温度差が大きい場合には、一方の転動体24の記録媒体101への接触面積を大きくして、伝熱量を大きくする。接触面積の調整は、一方の転動体24の温度を上げるよりも迅速に行えるので、記録媒体101の種類の切替時における待ち時間を極めて短くすることができる。また、記録媒体101の搬送速度を下げる必要がないので、高い印画速度を維持することができる。逆に、記録媒体101の比熱が小さい場合又は所望の温度との温度差が小さい場合には、一方の転動体24の記録媒体101への接触面積を小さくして、伝熱量を小さくする。接触面積の調整は、一方の転動体24の温度を下げるよりも迅速に行えるので、記録媒体101の種類の切替時における待ち時間を極めて短くすることができる。また、接触面積の調整は、無段階に微妙な調整が行えるので、記録媒体101への伝熱量を適切な値に微調整することができる。
【0041】
また、記録媒体101の厚さが所定の厚さを下回っている場合には、第2の挟持搬送ローラ14における挟持を解除することが好ましい。薄紙は比熱が小さいので、挟持を解除することによって伝熱量を下げることが好ましいからである。
【0042】
なお、このような一方の転動体の記録媒体101に対する接触面積の調整は、第1の挟持搬送ローラ11、13、15において行うこととしてもよい。
【0043】
この搬送装置1を用いるインクジェット記録装置3においては、記録媒体101上におけるインクの濡れ性(広がり性)を所望の状態とするために、印画前の記録媒体101の温度を所定の温度にしておくことができる。
【0044】
図4は、本発明の実施形態の搬送装置及び画像形成装置を示すブロック図である。
【0045】
この搬送装置1及び画像形成装置3においては、
図4に示すように、制御回路7に、記録媒体101に関する特性入力36、環境に関する特性入力37、通過検知センサ34、35及び温度センサ30、32が接続されている。制御回路7には、記録媒体101に関する特性データ、環境に関する特性データ(温度、湿度、気圧等)、通過検知センサ34、35による通過検知データ、温度センサ30、32による温度データが入力される。
【0046】
制御回路7には、熱源20、冷却ファン31、電動シリンダ29、サーボモータ26、昇降用サーボモータ28、印画ヘッド2及びメモリ38が接続されている。制御回路7は、特性データ、通過検知データ及び温度データに基づき、メモリ38に予め記憶されている制御テーブルに従って、熱源20、冷却ファン31、電動シリンダ29、サーボモータ26及び昇降用サーボモータ28を制御する。また、制御回路7は、印画データに基づいて印画ヘッド2を制御し、記録媒体101に対する印画を実行する。
【0047】
図5は、制御回路による制御内容を示すフローチャートである。
【0048】
上述した搬送装置1の制御は、例えば、
図5に示すように、制御回路7が所定の制御を実行することによって行われる。
図5は、制御のためのサブルーチンを示している。
【0049】
動作を開始し(ステップst1)、記録媒体101に関する特性データを読み取る(ステップst2)。ここで、環境(周囲温度や湿度気圧等)に関する特性データをも読み取ってもよい。
【0050】
ステップst2で読み取った記録媒体101に関する特性データに基づき、メモリ38に記憶された制御テーブルに従って、昇降用サーボモータ28及び電動シリンダ29を制御し、各転動体間の接触圧を所定の状態とする(ステップst3)。
【0051】
温度センサ(サーモスタット)30による転動体の温度データを読み取る(ステップst4)。
【0052】
ステップst4で読み取った転動体の温度データに基づき、メモリ38に記憶された制御テーブルに従って、熱源20及び冷却ファン31を制御し、各転動体の温度を所定の温度とする(ステップst5)。
【0053】
通過検知センサ34による通過検知データを読取り、搬送装置1の入口での記録媒体101の通過が検知されたか否かを判別し(ステップst6)、通過が検知されたならばステップst7に進み、通過が検知されないならばリターンする。
【0054】
各サーボモータ26を所定の速度で駆動させて、搬送装置1内の記録媒体101を搬送する(ステップst7)。
【0055】
温度センサ(熱電対)32による記録媒体101の温度データを読み取る(ステップst8)。
【0056】
ステップst8で読み取った記録媒体101の温度データに基づき、メモリ38に記憶された制御テーブルに従って、電動シリンダ29を制御し、第2の挟持搬送ローラ12、14におけるニップ圧を調整して、記録媒体101への電熱量を制御する(ステップst9)。ここで、記録媒体101の温度が所望の温度より低い場合には、ニップ圧を強くして記録媒体101への電熱量を大きくし、記録媒体101の温度が所望の温度より高い場合には、ニップ圧を弱くし(又は離間させてニップ圧を0として)記録媒体101への電熱量を小さくする。
【0057】
通過検知センサ35による通過検知データを読取り、搬送装置1の出口での記録媒体101の通過が検知されたか否かを判別し(ステップst10)、通過が検知されたならばリターンし、通過が検知されないならばステップst7に戻る。
【0058】
本発明は、前述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってよい。また、前述した実施形態においては、インク吐出方向が上下方向と略平行となるように構成された印画ヘッド2を示したが、インク吐出方向は如何なる方向であってもよく、例えば、傾斜方向や水平方向となるように構成してもよい。また、前述した各転動体として、無端ゴムベルトに替えてもよい。
【0059】
その他、具体的な細部構造や数値等及び制御回路7の制御内容等についても適宜に変更可能であることは勿論である。加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。