(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の送信器(301,304)と前記受信部(U1)との通信可能範囲よりも、前記第2の送信器(302,303)と前記受信部(U2)との通信可能範囲の方が広い、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の遠隔操作システム。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
(作業車両)
図1は本実施形態の作業車両の側面図である。
図1において、本実施形態の作業車両の遠隔操作システムSは、作業車両の一例としての農業機械のトラクタ1を有する。トラクタ1は、走行車体の前後部に前輪2,2と後輪3,3とを備え、走行車体前部のエンジンルーム4内に搭載したエンジンEの回転動力をトランスミッションケース5内の変速装置によって適宜減速して、これらを前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。前記エンジンルーム4はボンネット6で覆う構成である。また、機体後部にロータリ耕耘装置18などの作業機を装着し、PTO軸(図示せず)で作業機を駆動する構成としている。
【0019】
走行車体の上部には、キャビン7が支持されている。キャビン7の上部には、外付けGPSユニット230が支持されている。キャビン7の内部には、トランスミッションケース5の上部位置に運転座席8が配置され、この運転座席8の前方には、ステアリングハンドル10や、前後進レバー11、駐車ブレーキ(図示せず)等が配置されている。また、運転座席8の前方には、速度メータ(図示せず)や、操作用の各種スイッチ(後述)などが配置されている。運転座席8の前方下部には、クラッチペダル12や、アクセルペダル13、左右ブレーキペダル(後述)等の走行操作具が配置されている。
【0020】
図1において、トランスミッションケース5の後部上方には油圧シリンダケース14が設けられ、この油圧シリンダケース14の左右両側にはリフトアーム15,15が回動自在に枢着されている。リフトアーム15,15とロワーリンク16,16との間にはリフトロッド17,17が介装連結され、ロワーリンク16,16の後部には作業機の一例としてのロータリ耕耘装置18が連結されている。
【0021】
油圧シリンダケース14内に収容されている油圧シリンダ14aに作動油が供給されるとリフトアーム15,15が上昇側に回動され、リフトロッド17、ロワーリンク16等を介して作業機(ロータリ耕耘装置)18が上昇する。反対に油圧シリンダ14a内の作動油が油圧タンクを兼ねるトランスミッションケース5内に排出されると、リフトアーム15,15は下降する。
トラクタ1の走行車体の後方にはロータリ耕耘装置18が連結されており、該ロータリ耕耘装置18は、耕耘部18aと、耕耘部18a上方を覆うメインカバー18bと、メインカバー18bの後部に枢着されたリヤカバー18c等を有する。なお、作業機はロータリ耕耘装置18に限定されず、プラウやカルチベータ等の作業機を着脱可能である。
【0022】
(操作部材の説明)
図2は本実施形態の作業車両の座席前方の操作部材の説明図である。
図3は本実施形態の作業車両の座席右方の操作部材の説明図である。
図2において、キャビン7の室内には、運転座席8から作業者が操作可能な範囲にステアリングハンドル10や、前後進レバー11、メインキー201、耕耘の深さを調整するための耕深調整ダイヤル202、遠隔操作モードと手動操作モードとを切り換える遠隔操作モード切換スイッチ203(切換部材)が配置されている。また、ステアリングハンドル10の下方には、クラッチペダル12やアクセルペダル13、左ブレーキペダルP1、右ブレーキペダルP2等の操作部材が配置されている。
【0023】
図3において、キャビン7の右側の前部には、副変速レバー210が配置されている。副変速レバー210は、前方の低速位置と後方の中速位置との間で切り替え可能に構成されている。副変速レバー210の上部後面には、主変速を増減させるための主変速操作部材211が設けられている。本実施形態の主変速操作部材211は、主変速を増速させるための主変速増速スイッチ211aと、主変速を減速させるための主変速減速スイッチ211bとを有する。また、副変速レバー210の前面には、前後進クラッチの入切を行うためのクラッチボタン212が設置されている。副変速レバー210の後側には、予め設定された定回転Aと定回転Bとで作業を行うための定回転スイッチ(アクセルメモリスイッチ)213が配置されている。定回転スイッチ213の後側には、PTO軸への駆動伝達/切断を行うPTOクラッチ(図示せず)の入切を行うためのPTOスイッチ214が配置されている。
【0024】
PTOスイッチ214の後側には、操作パネル216が設置されている。操作パネル216には、定回転スイッチ213の入力された場合のエンジンEの回転数の設定値(定回転A,B)を増減させるための回転数増減スイッチ(アクセルメモリ増減スイッチ)216aが設置されている。
前記操作パネル216には、ブレーキの圧力を調整するためのブレーキ調整ダイヤル216bも設置されている。なお、ブレーキ圧はブレーキが作動する場合の油圧であり、ブレーキ圧が高いと急旋回し易いが圃場が荒れやすく、ブレーキ圧が低いと急旋回しにくいが圃場が荒れにくい。
前記操作パネル216には、トラクタ1の旋回時に自動的に旋回の内輪にブレーキをかけるか否かを設定するオートブレーキスイッチ216cが設置されている。
【0025】
前記操作パネル216には、トラクタ1の旋回に連動してロータリ耕耘装置18を自動的に上昇させるか否かを設定するオートリフトスイッチ216dが設置されている。
前記操作パネル216には、トラクタ1が後進する際にロータリ耕耘装置18を自動的に上昇させるか否かを設定するバックアップスイッチ216eが設置されている。
前記操作パネル216には、変速時に油圧クラッチのクラッチ圧の上昇速度を調整することで変速の感度を調整する変速感度調整スイッチ216fと、現在の変速感度の設定(敏感、標準、鈍感)を表示する表示ランプ216gとが設置されている。
【0026】
副変速レバー210の左側(キャビン7の内側)には、作業機昇降レバー220が配置されている。本実施形態の作業機昇降レバー220は、作業機18を8段階で高さ調整可能に構成されている。作業機昇降レバー220の内側には、エンジンEの回転数を調整するためのアクセルレバー221が配置されている。作業機昇降レバー220の後側には、作業機昇降スイッチ222が配置されている。作業機昇降スイッチ222は、作業機18をワンタッチで上昇または下降させることが可能なように入力可能に構成されている。作業機昇降スイッチ222の後側には、主変速を増減させるための主変速増減スイッチ223が配置されている。
【0027】
図4は本実施形態の作業車両の概略説明図であり、
図4(A)は平面図、
図4(B)は側面図である。
図4において、本実施形態のトラクタ1では、ボンネット6の前端部に第1の検知部材の一例としての前方検知レーダセンサ241が配置されている。前方検知レーダセンサ241は、第1の電磁波の一例として24GHz帯の電波のものが好適に利用可能であるが、これに限定されず、車載レーダーで広く使用されているミリ波(波長1mm〜10mm)等も使用可能である。本実施形態の前方検知レーダセンサ241は、トラクタ1の前方の近距離(3m〜5m)から中距離(8m程度)にある障害物(人や物)を検知可能に構成されている。
【0028】
なお、本実施形態では、
図4に示すように、前方検知レーダセンサ241は、ほぼ水平方向にレーダ波(電波、第1の電磁波)を照射するように構成されている。中距離を検知可能なレーダー波を下向きに照射すると、圃場面、地面を障害物と誤検知する恐れがあるが、これが低減されている。
また、本実施形態では、前方検知レーダセンサ241は、上下方向(高さ方向、重力方向)よりも左右方向(幅方向、水平方向)の方が検知エリア241aが広く設定されている。上下方向の検知エリア241aを広くすると圃場面を障害物と誤検知する恐れが高くなると共に、左右方向の検知エリア241aを狭くすると人等の障害物を検知できない場合が発生しやすくなるが、本実施形態では、これが低減されている。
【0029】
特に、本実施形態では、左右方向の検知エリア241aは、車両停止予定距離L1(一例として「前方3m」に設定)において、作業機(ロータリ耕耘装置18)の幅(一例として、5m)をカバーするように設定されている。したがって、前方検知レーダセンサ241で障害物を検知してから、トラクタ1の制御部Cが、ブレーキをかけ始めて停止するまでに障害物に接触しないように、距離、横幅の範囲を検知することができる。したがって、事故の発生を低減できる。
なお、本実施形態では、車両停止予定距離L1よりも近距離で障害物を検知した場合、トラクタ1は、一時停止(走行停止、ブレーキ作動)を行うように制御部Cで制御される。これは、自動走行(前進または後進)時のみに制御が行われるようにすることも可能であるし、オペレータの手動走行時にも行われるようにすることも可能である。
【0030】
また、本実施形態では、車両停止予定距離L1よりも前方に離れた位置に警報検知距離L2(一例として5m)が設定されている。したがって、警報検知距離L2よりも近距離の位置に障害物が検知されている場合、制御部Cがトラクタ1のキャビン7内の図示しない警報ランプを点灯させたり、警報ブザーや音声案内でオペレータに警報を告げたり、ホーン(警笛)を鳴らしてオペレータや障害物(人や動物)に警報をする等が可能である。したがって、車両停止予定距離L1よりも前方に警報検知距離L2を設定することで、いきなり停止させるのではなく、事前に警報を出すことが可能となり、安全性が向上する。
なお、前方検知レーダセンサ241が物体を検知しても、制御部Cが障害物までの距離を計算して、警報検知距離L2の付近および警報検知距離L2よりも遠方で、且つ、高さが所定の高さよりも低い位置の物体である場合は、圃場面と判断して、障害物と判断しないようにすることも可能である。すなわち、地面から所定の高さについては、障害物非検知ゾーンを設定することも可能である。このように設定することで、圃場の端付近にある畦畔等を誤検知しないようにすることができる。
【0031】
なお、前方検知レーダセンサ241の検知エリア241aは、トラクタ1における所定の操作で変更可能とすることが望ましい。装着されている作業機の実際の幅と、左右方向の検知エリア241aが一致していない場合に、作業機の幅に検知エリア241aの幅を合わせるように、自動または手動で変更可能とすることが望ましい。検知エリア241aの方が狭い場合に、検知エリア241a外の障害物に作業機が接触する恐れがあったり、検知エリア241aの方が広い場合は、畦や圃場端の看板、電柱等を検知すると、接触しないのに接触すると誤検知する恐れがあったりする。よって、作業機の幅と検知エリア241aを一致させることで、走行の停止が必要な幅を確実にカバーすることができる。
【0032】
特に、トラクタ1が自動で走行しながら作業を行っている場合には、後述するタブレット端末TAB等の端末において、手動で検知エリアを変更できるように構成することがさらに好適である。前方検知レーダセンサ241の検知エリア241aと作業ルートによっては、障害物ではないものの誤検知が発生する可能性があり、誤検出による一時停止が発生することとなる。誤検知による一時停止が発生すると作業が滞ることとなる。したがって、障害物でないものが作業ルート上に存在する場合、オペレータの操作で、障害物でないものの近辺を通過する時期だけ検知エリア241aを狭くし、通過後に検知エリア241aを戻すといった手動入力をすることで、作業が滞ることなく、スムーズに行うことができる。
【0033】
なお、一般的に、ボンネット6の前面中央付近に支持されることが多いトラクタ1のメーカのロゴ等のデザイン的な意匠部分に、前方検知レーダセンサ241を設置することが可能である。このようなデザイン的な意匠部分は、樹脂で構成されることが多い。そして、樹脂からの反射率の低い24GHz帯の電波を使用する前方検知レーダセンサ241を設置しても検出に悪影響を与えにくいと共に、前方検知レーダセンサ241の前面をデザイン的な意匠部分で覆うことができる。エンジンEの冷却のためにボンネットの前方から吸気が行われるが、前方検知レーダセンサ241の前面が覆われていないとゴミや土埃等がセンサ面に付着して検出に悪影響が及ぶ可能性があるが、前方検知レーダセンサ241の前面が覆われることで、これが低減される。
このとき、デザイン的な意匠部分は、凹凸のある立体的なものではなく、外面が凹凸の無い平面的なものである方が、ゴミや土埃等が凹凸に溜まりにくく、清掃もし易くなる。よって、前方検知レーダセンサ241のメンテナンス性も向上し、検出性能も維持することができるため、好ましい。
【0034】
図4において、本実施形態のトラクタ1には、前側のバンパ242に、第2の検知部材の一例としての超音波センサ243が設置されている。本実施形態では、超音波センサ243は左右一対配置されている。超音波センサ243は、市販の超音波センサを使用可能であり、前方検知レーダセンサ241の電波に対して周波数帯が異なる(実施例では、低い周波数の)第2の電磁波の一例としての超音波(20kHz〜数GHz)を出力、照射して障害物を検知可能である。
【0035】
図4に示すように、前方検知レーダセンサ241の検知エリア241aは、トラクタ1の近くほど上下方向および左右方向が狭くなり、いわゆる死角が発生する。したがって、超音波センサ243は、死角をカバーするように、検知エリア243aが設定されている。本実施形態では、超音波センサ243は、トラクタ1の前方に対して幅方向の外側に傾斜した方向に超音波を出力して検知を行うように設定されている。したがって、前方検知レーダセンサ241で検知できない近距離の障害物を検知でき、安全性が向上する。
したがって、本実施形態では、前方検知レーダセンサ241と超音波センサ243とにより、検知部材の一例としての前方障害物センサ群241+243が構成され、前方障害物センサ群241+243によりトラクタ1の前方の障害物の検知が行われる。したがって、1つのセンサで検知を行う場合に比べて、死角が少なく、安全性が向上する。
【0036】
図4において、本実施形態のトラクタ1には、キャビン7の上部(ルーフ)の後部には、撮影部材の一例としての後方確認カメラ246が設置されている。後方確認カメラ246は、トラクタ1の後方の映像を撮影する。
また、本実施形態では、キャビン7のルーフには、後方確認カメラ246の近傍に、検知部材の一例としての後方検知レーダセンサ247が配置されている。後方検知レーダセンサ247は、前方検知レーダセンサ241と同様の電波を照射するセンサにより構成されている。なお、後方確認カメラ246や後方検知レーダセンサ247をキャビン7のルーフに設置することで、泥等の飛散物が付着したり衝突することが低減される。
【0037】
したがって、本実施形態では、後方確認カメラ246と後方検知レーダセンサ247により、検知部材の一例としての後方障害物センサ群246+247が構成され、後方障害物センサ群246+247によりトラクタ1の後方の障害物の検知が行われる。したがって、一方で安全確認を行う場合に比べて、安全性が向上する。
【0038】
図4において、本実施形態では、後方検知レーダセンサ247は、水平方向に電波を照射する前方検知レーダセンサ241と異なり、キャビン7のルーフ(天井)から斜め下方に向けて電波を照射している。したがって、障害物の検知エリア247aは、前方検知レーダセンサ241の検知エリア241aに比べて、短く設定されている。すなわち、トラクタ1の近距離の障害物を検知可能に構成されている。これは、前進に比べて、後進は速度が低速に設定されており、近距離の検知で十分安全を確保可能であるためである。また、近距離の検知とすることで、畦畔等の誤検知距離も短くなる。
なお、後方検知レーダセンサ247においても、前方検知レーダセンサ241と同様に、地面から所定の高さ以下(後方検知レーダセンサ247から所定距離以上)については障害物の非検知ゾーンとすることが好ましい。
【0039】
図4において、本実施形態では、後方検知レーダセンサ247の検知エリア247aは、作業機(ロータリ耕耘装置18)の昇降時の移動範囲を考慮して設定されている。すなわち、作業機の移動範囲内においては、作業機を障害物と誤検知することとなるため、本実施形態では、作業機の移動範囲に検知エリア247aが重複しないように、検知エリア247aが絞られて設定されている。したがって、後方検知レーダセンサ247は、作業機が上昇位置に移動した位置よりも上方に配置され、上昇位置の作業機が検知エリア247aに入らないように、検知エリア247aが斜め後方に向いている。
【0040】
特に、
図4に示すように、本実施形態では、検知エリア247aは、高さ方向よりも左右方向の幅が広く設定されている。高さ方向の幅の方が広いと、地面を誤検知しやすいが、左右方向の幅が広く設定されることで、作業機の左右方向の幅の全域をカバーしつつ地面の誤検知を低減可能である。ここで、本実施形態では、後側の車両停止予定距離L1′において、検知エリア247aの左右方向(走行車体幅方向)の幅が、作業機の幅以上となるように設定されている。したがって、作業機の幅全域を検知エリア247aがカバーできる。
【0041】
なお、作業機の移動範囲と検知エリア247aを重複させると共に、作業機の大きさや位置(上昇位置か下降位置か)を別のセンサや登録情報、あるいは後方確認カメラ246の画像等から取得して、後方検知レーダセンサ247の検知結果から作業機に該当するものを除外するように処理を行う構成とすることも可能である。
【0042】
他にも、後方検知レーダセンサ247から作業機までの距離に基づいて、所定の距離の範囲を非検知ゾーンに予め設定しておき、検知エリア247aにおいて非検知ゾーンでは物体を検知しても、障害物と見なさないようにすることも可能である。なお、非検知ゾーンの設定をする場合は、作業機の種類毎に独立に設定可能にすることが好ましく、作業機毎の非検知ゾーンの設定データを予め登録しておき、装着された作業機に応じて対応する設定データを読み出すように構成することで処理も簡素化することが可能である。
【0043】
さらに、他にも、後方検知レーダセンサ247の検知エリア247aに対して、作業機の上昇時の高さを、検知エリア247aに作業機がかからない高さに設定することで、誤検知を防止することも可能である。
なお、後方検知レーダセンサ247による障害物の検知は、後進時にのみ行い、前進時には行わないようにすることで、前進時に後方検知レーダセンサ247が作業機を誤検知して走行を停止させてしまうといったような不要な停止を抑制することが可能である。
【0044】
図4において、本実施形態のトラクタ1では、キャビン7のルーフの前端部には、撮影部材の一例としての前方を確認するための前方確認カメラ248が設置されている。また、キャビン7のルーフの左右側部には、左右一対の側方確認カメラ249も設置されている。したがって、各レーダセンサ241,247や超音波センサ243で障害物を検知した場合に、カメラ246,248,249の映像をオペレータが確認して、回避すべき障害物か回避が必要ない障害物かを確認することも可能である。なお、カメラ246,248,249の映像は、キャビン7にモニタを設置して確認可能にすることも可能であるし、タブレット端末TABに表示して確認可能にすることも可能である。
【0045】
なお、カメラ246,248,249の映像を、オペレータが確認する方法に限定されない。例えば、センサ241,243,247で障害物を検知した場合に、カメラ246,248,249の映像をトラクタ1の制御部で画像解析して、人や所定の大きさ以上の物体であるか否かを判別し、人等を判別された場合は、警報検知距離L2未満では警報を発し、車両停止予定距離L1未満ではトラクタ1を停止するように制御することが可能である。あるいは、停止せず、障害物を回避すべく進路を変更するように制御することも可能である。なお、このとき、画像解析は、トラクタ1の制御部で行うことに限定されない。例えば、トラクタ1がインターネット回線を介してサーバに接続しておき、ディープラーニングの手法等で障害物の判別を行う等とすることも可能である。
【0046】
この時、判別された障害物が所定未満の小さなものの場合(例えば、埃や雨滴、小さな土のかたまり等)では、トラクタ1の走行を維持する(停止や回避行動を取らない)ように制御することも可能であるし、一旦停止してオペレータがカメラの映像で確認するように促す構成とすることも可能である。
さらに、画像解析で、障害物が人である場合と、所定の大きさ以上の物体である場合とで、警報検知距離L2と、車両停止予定距離L1の一方または両方を変更することが可能である。例えば、人の場合は、安全を考慮して、警報検知距離L2を長めの10mとして、10m未満になると警報を発するようにするが、物体の場合は警報検知距離L2を8mとして8m未満にならないと警報を発しないようにすることも可能である。車両停止予定距離L1も同様にすることが可能である。
【0047】
図4において、本実施形態のトラクタ1では、キャビン7のルーフの下部の四隅には、検知部材の一例としての超音波センサ251が配置されている。超音波センサ251は、トラクタ1の左右両側の障害物を検知する。したがって、車輪2,3の近傍に人が居たり資材が置きっぱなしになっていて、走行(前進または後進)開始時に、車輪2,3に巻き込まれる恐れが無いかを検知することが可能である。なお、停止中にトラクタ1の側部に障害物があることを超音波センサ251が検知した場合は、トラクタ1の走行の操作がされても、警報を発して走行を開始しないように制御部Cで制御することが好ましい。そして、オペレータが直接または側方確認カメラ249の映像で確認し、所定の入力を行った場合に、走行を開始できるようにすることが可能である。このように構成することで、側方の障害物に接触する事故を低減することができる。
【0048】
なお、このとき、側方確認カメラ249の映像を画像解析して、人であると判別された場合は、所定の入力が行われても走行を開始しないように構成することで、安全性をさらに向上できる。
また、障害物が人ではなく所定の大きさ以上の物体の場合、超音波センサ251または側方確認カメラ249の映像の画像解析で、障害物までの距離を計測し、障害物が作業機の幅の内側に存在する場合は、走行を開始しないように構成することも可能である。このように構成することで、安全性をさらに向上できる。
さらに、障害物を検知したとしても、障害物が所定の大きさ未満の物体の場合、障害物と判定せず、走行を開始可能にすることで、円滑な走行を実施することができる。
【0049】
また、1つの圃場に対して複数台のトラクタ1で作業を行う場合に、トラクタ1が左右に並んで併走するような状況では、トラクタ1どうしの間隔によっては、相手方のトラクタ1を超音波センサ251が検知する場合がある。この場合に障害物として走行を停止すると作業が円滑に行われない。したがって、複数台のトラクタ1が作業を行う場合は、相手方のトラクタ1が走行する側の超音波センサ251の障害物検知を無効にするか、障害物を検知する距離をトラクタ1どうしの間隔よりも短い距離に設定するように制御することが好ましい。
【0050】
なお、障害物の検知において、GPSユニット230で検知するGPS情報に基づいて障害物の検知を行うことも可能である。例えば、圃場の領域のGPS情報と、トラクタ1の現在位置のGPS情報を取得しておき、前方検知レーダセンサ241が障害物を検知した場合に、トラクタ1の現在位置と障害物までの距離から、障害物が圃場の外部に存在する場合は、障害物と判定しないようにすることも可能である。このように構成することで、特に、自動走行で圃場内で作業を行う場合に、トラクタ1が不要な停止をせずに、円滑に作業を行うことができ、オペレータによる手動走行時でも、不要な警告や不要な停止の発生が低減される。
【0051】
前述の本実施形態において、各センサ241,243,247,251とカメラ246,248,249を全て設置する構成を例示したが、これに限定されない。レーダセンサ241,247は超音波センサ243,251に比べて高価であるため、例えば、前方のみレーダセンサを設置し、後方は、後方確認カメラ246のみで障害物を検知する構成とすることも可能である。これは、作業は前進しながら行うことがほとんどであり、後進しながら作業を行うことはほとんどないためであるのと、後方には作業機があって誤検知しやすい状況であるため、高価なレーダセンサを設置しても費用対効果が良くない点もある。
【0052】
(サーバ、端末の説明)
図1において、実施形態の作業車両の遠隔操作システムSは、作業者が使用する端末の一例としてのタブレット端末TABを有する。タブレット端末TABは、トラクタ1との間で、無線通信で情報の送受信が可能に構成されている。
なお、本実施形態のタブレット端末TABは、第1の通信部(第1の送信器)の一例としての短距離通信モジュール301と、第2の通信部(第2の送信器)の一例としての長距離通信モジュール302と、を有する。各通信モジュール301,302は、異なる通信規格で情報の送受信が可能であり、通信可能な距離は、短距離通信モジュール301よりも長距離通信モジュール302の方が長距離に設定されている。一例として、短距離通信モジュール301として、Bluetooth(登録商標)のclass2(通信可能距離:10m程度)を利用することが可能であり、長距離通信モジュール302として無線LAN(通信可能距離100m程度)を利用することが可能である。なお、通信モジュール301,302は、例示したものに限定されず、設計や仕様、要求される性能に応じて変更可能である。
【0053】
また、本実施形態の作業車両の遠隔操作システムSでは、タブレット端末TAB以外にも、第2の送信器の一例としての非常停止用リモートコントローラ(非常停止用リモコン)303と、第1の送信器の一例としての作業設定用リモートコントローラ(作業設定用リモコン)304とを有する。
非常停止用リモコン303には、非常停止ボタン303aが設けられている。したがって、非常停止ボタン303aの入力がされると、非常停止用リモコン303から非常停止信号が出力、送信される。
【0054】
作業設定用リモコン304には、一時停止ボタン304aが設けられている。一時停止ボタン304aの入力がされると、作業設定用リモコン304から一時停止信号が出力、送信される。
また、作業設定用リモコン304には、エンジンEの回転数を設定するためのエンジン設定ボタン304bが設けられている。前記定回転Aと定回転Bに対して、エンジン設定ボタン304bが入力されるたびに、定回転A→定回転B→定回転A→…の順にエンジンEの回転数の設定が変更可能に構成されている。
前記作業設定用リモコン304には、警鐘の一例としてのホーンを鳴らすためのホーンボタン304cが設けられている。
【0055】
前記作業設定用リモコン304には、PTO軸への駆動の伝達の入/切を切り換えるPTO入切ボタン304dが設けられている。また、作業設定用リモコン304には、作業機(ロータリ耕耘装置18)を上昇させる作業機上昇ボタン304eが設けられている。さらに、作業設定用リモコン304には、作業機(ロータリ耕耘装置18)を下降させる作業機下降ボタン304fが設けられている。また、作業設定用リモコン304には、トラクタ1を前進させる前進ボタン304gが設けられている。さらに、作業設定用リモコン304には、トラクタ1を後進させる後進ボタン304hが設けられている。
したがって、各ボタン304a〜304hへの入力がされると、入力に応じた制御信号が作業設定用リモコン304から出力される。
【0056】
(機能ブロック図の説明)
図5は本実施形態の作業車両の操作システムの機能ブロック図である。
図5において、実施形態1の作業車両の遠隔操作システムSは、トラクタの制御部C(CA〜CC)と、制御部の一例であって作業設定手段の一例としてのとしてのメータパネルPa1、端末の一例であって作業設定手段の一例としてのタブレット端末の端末制御部CD等を有する。各制御部CA〜CDは、外部との信号の入出力等を行う入出力インターフェース(I/O)、必要な処理を行うためのプログラムおよび情報等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ)、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU(中央演算処理装置)、ならびに発振器等を有する小型情報処理装置、いわゆる、マイクロコンピュータにより構成されており、前記ROMやRAM、不揮発性メモリ等の記憶部材に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0057】
(タブレット端末の制御部)
図5において、タブレット端末TABの端末制御部CDは、入力部の一例としてのタッチパネルTAB1や、電源ボタンや音量変更ボタン等の入力ボタンTAB2、通信部の一例としての通信モジュールTAB3、位置計測部の一例としてのGPSモジュール等の信号出力要素からの出力信号が入力される。したがって、端末制御部CDには、通信モジュールTAB3を介してトラクタ1の制御部CA〜CCから情報や信号の入力が可能である。
【0058】
端末制御部CDは、表示器の一例としてのタッチパネルTAB1や、スピーカ(図示せず)、通信モジュールTAB3、その他の図示しない制御要素に接続されている。端末制御部CDは、各制御要素へ、制御信号を出力している。よって、通信モジュールTAB3を介してトラクタ1の制御部CA〜CCに情報や信号を出力可能である。
【0059】
端末制御部CDは、前記タッチパネルTAB1からの入力信号に応じた処理を実行して、前記各制御要素CA〜CCに制御信号を出力する機能を有している。本実施形態の端末制御部CDは、基本ソフトウェアの一例としてのオペレーティングシステムOSや、アプリケーションソフトウェアの一例であって、処理手段の一例としての処理ソフトウェアAP1、その他の、図示しないアプリケーションソフトウェア(インターネットブラウザや文書作成ソフトウェア等)を有する。
【0060】
図6は本実施形態のタブレット端末に表示される遠隔操作用の画像の一例である。
図6において、本実施形態の処理ソフトウェアAP1は、起動された場合に、タッチパネルTAB1には、各カメラ246,248,249が撮影した画像305a〜305dと、発せられている警告の表示画像305eと、作業設定用リモコン304の各ボタン304a〜304hと非常停止ボタン303aとに相当する各入力部306,307a〜307hと、を表示し、入力を受付可能な状態とする。そして、非常停止ボタン303aに相当する入力部306への入力がされると、長距離通信モジュール302を介して、トラクタ1に向けて非常停止信号を送信する。また、非常停止ボタン303a以外の各ボタン304a〜304hに相当する入力部307a〜307hへの入力がされると、短距離通信モジュール301を介してトラクタ1に一時停止信号等の各種信号を送信する。
【0061】
(トラクタの制御部)
図5において、本実施形態のトラクタの制御部Cは、複数の制御部CA〜CC,Pa1からなり、各制御部CA〜CC,Pa1は、一例として、いわゆる、ECU:Electronic Control Unitで構成されている。各制御部CA〜CCは、通信回線としてのCAN:Controller Area Networkで接続されており、互いにアクセス可能に構成されている。また、CANには、位置計測部の一例としての外付けGPSからのGPSの測位情報を受信したり、外部のタブレット端末TABの短距離通信モジュール301や作業設定用リモコン304と通信可能な第1の通信ユニット(通信部)U1や、タブレット端末TABの長距離通信モジュール302や非常停止用リモコン303等と通信可能な第2の通信ユニットU2、トラクタ1のメータパネルPa1、操作パネル216が接続されており、各制御部CA〜CCと通信情報や操作情報などが送受信される。
なお、本実施形態では、第1の通信ユニットU1は、短距離通信モジュール301等と通信できるように、短距離通信モジュール301と同一の通信方式のモジュールで構成されており、第2の通信ユニットU2は、長距離通信モジュール302と同一の通信方式のモジュールで構成されている。
【0062】
(メータパネルPa1の説明)
メータパネルPa1には、遠隔操作モード切換スイッチ203、その他の図示しない信号出力要素からの出力信号が入力される。
メータパネルPa1は、遠隔操作モード切換スイッチ203の入力が、手動操作モードの場合には、メータパネルPa1の表示部に手動操作モードであることを表示すると共に、各制御部CA〜CCに対して、ステアリングハンドル10やアクセルペダル13、主変速増減ボタン211,223等の操作部材の入力に応じて、トラクタ1を制御するように制御信号を出力する。また、メータパネルPa1は、遠隔操作モード切換スイッチ203の入力が、遠隔操作モードの場合には、メータパネルPa1の表示部に遠隔操作モードであることを表示すると共に、各制御部CA〜CCに対して、タブレット端末TABからの入力情報(作業設定)に応じて、トラクタ1を制御するように制御信号を出力する。
【0063】
なお、本実施形態では、遠隔操作モードと手動操作モードの切り換えを、遠隔操作モード切換スイッチ203で行う構成を例示したが、これに限定されない。例えば、タブレット端末TABへの入力で遠隔操作モードと手動操作モードの切り換えが可能な構成とすることも可能である。
他にも、サーバ側の処理(例えば、特定の時間になった場合とか、圃場の特定の領域にトラクタ1が進入した場合等)で、遠隔操作モードと手動操作モードの切り換えが可能な構成とすることも可能である。また、遠隔操作モードと手動操作モードの切り換えは、遠隔操作モード切換スイッチ203への入力と、タブレット端末TABへの入力と、サーバの処理とを組み合わせることも可能である。
【0064】
(走行制御部CAの説明)
(走行制御部CAに接続された信号出力要素)
走行制御部CAは、副変速レバー操作位置センサSN1、前後進レバー操作位置センサSN2、主変速増減ボタン211,223、クラッチボタン212、クラッチペダル踏込検知スイッチSN3、前後進クラッチ圧力センサSN4、1〜4速クラッチ圧力センサSN5a〜SN5d、高速・低速クラッチ圧力センサSN6、アクセルセンサSN7、耕深調整ダイヤル202、定回転スイッチ213、車速センサSN8、ステアリングホイールセンサSN9、切れ角センサSN10、方位センサSN11、障害物センサ241,243,247,251、カメラ246,248,249等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
【0065】
副変速レバー操作位置センサSN1は、副変速レバー210の位置を検出する。前後進レバー操作位置センサSN2は、前後進レバー11の位置を検出する。クラッチペダル踏込検知スイッチSN3は、クラッチペダル12が踏み込まれた場合にスイッチが押され、クラッチペダル12が踏み込まれたか否かを検知する。前後進クラッチ圧力センサSN4は、前後進クラッチ(正逆クラッチ)を作動させる圧油の圧力(クラッチ圧力)を検知する。1〜4速クラッチ圧力センサSN5a〜SN5dは、主変速部(多段変速装置)における1速〜4速を制御するクラッチを作動させる圧油の圧力(クラッチ圧力)を検知する。高速・低速クラッチ圧力センサSN6は、高低クラッチを作動させる圧油の圧力(クラッチ圧力)を検知する。
【0066】
アクセルセンサSN7は、アクセルペダル13やアクセルレバー221の位置を検出する。車速センサSN8は、トラクタ1の車速を検知する。ステアリングホイールセンサSN9は、ステアリングホイール(ステアリングハンドル)10の操作量(回転量)を検出する。切れ角センサSN10は、トラクタ1の車輪2,3の切れ角、すなわち、進行方向に対する傾斜角を検出する。なお、本実施形態の切れ角センサSN10は、前輪2の近傍に配置されており、前輪2の切れ角を検出する。方位センサSN11は、トラクタ1の方位を検出する。なお、方位センサSN11は、IMU:Inertial measurement unit(慣性計測装置)や地磁気を検出する磁気センサ、ジャイロセンサ、あるいはこれらを組み合わせた従来公知のセンサを使用可能である。障害物センサ241,243,247,251は、トラクタ1の周囲の障害物を検知する。カメラ246,248,249は、トラクタ1の周囲の映像を撮影する。
【0067】
(走行制御部CAに接続された被制御要素)
走行制御部CAは、前進切換ソレノイドSL1、前後進昇圧ソレノイドSL2、後進切換ソレノイドSL3、クラッチペダルソレノイドSL4、1速ソレノイドSL5、1,3速昇圧ソレノイドSL6、3速ソレノイドSL7、2速ソレノイドSL8、2,4速昇圧ソレノイドSL9、4速ソレノイドSL10、高速昇圧ソレノイドSL11、低速昇圧ソレノイドSL12、右ステアリングソレノイドSL14、左ステアリングソレノイドSL15、その他の図示しない制御要素に接続されている。
【0068】
前進切換ソレノイドSL1は、前後進レバー操作位置センサSN2の検出結果が前進の場合に、前後進クラッチ(正逆クラッチ)の正転クラッチギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。前後進昇圧ソレノイドSL2は、前後進クラッチに供給される油圧の比例制御弁を制御する。本実施形態の前後進昇圧ソレノイドSL2は、前後進クラッチ圧力センサSN4の検出結果に基づいて、前後進クラッチが前進または後進に接続される場合に、クラッチ圧の上昇率を制御する。後進切換ソレノイドSL3は、前後進レバー操作位置センサSN2の検出結果が後進の場合に、前後進クラッチ(正逆クラッチ)の逆転クラッチギヤが繋がるように油圧の制御弁を駆動する。なお、各切換ソレノイドSL1,SL3は、クラッチボタン212の入力がされた場合やクラッチペダル踏込検知スイッチSN3が踏込を検知した場合には、各クラッチギヤが繋がらないように、制御弁を切り換える。クラッチペダルソレノイドSL4は、クラッチボタン212の入力に応じて、クラッチを切る場合に、クラッチペダル12に接触して、クラッチペダル12を踏み込んだ位置に移動させる。
【0069】
1速ソレノイドSL5は、主変速増減ボタン211,223の入力により、1速にする入力がされた場合に、1速用のギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。3速ソレノイドSL7は、主変速増減ボタン211,223の入力により、3速にする入力がされた場合に、3速用のギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。1,3速昇圧ソレノイドSL6は、1速クラッチ圧力センサSN5aや3速クラッチ圧力センサSN5cの検出結果に基づいて、1,3速クラッチに供給される油圧の比例制御弁を制御して、クラッチ圧の上昇率を制御する。2速ソレノイドSL8は、主変速増減ボタン211,223の入力により、2速にする入力がされた場合に、2速用のギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。4速ソレノイドSL10は、主変速増減ボタン211,223の入力により、4速にする入力がされた場合に、4速用のギヤが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。2,4速昇圧ソレノイドSL9は、2速クラッチ圧力センサSN5bや4速クラッチ圧力センサSN5dの検出結果に基づいて、2,4速クラッチに供給される油圧の比例制御弁を制御して、クラッチ圧の上昇率を制御する。
【0070】
高速昇圧ソレノイドSL11および低速昇圧ソレノイドSL12は、副変速レバー操作位置センサSN1に応じて、高低クラッチが繋がるように、油圧の制御弁を駆動する。なお、各昇圧ソレノイドSL11,SL12は、高速・低速クラッチ圧力センサSN6の検知結果に基づいて、クラッチ圧(油圧)を上昇させる。
【0071】
右ステアリングソレノイドSL14および左ステアリングソレノイドSL15は、ステアリングホイールセンサSN9や切れ角センサSN10の検知結果に基づいて、ステアリングシリンダSCを駆動する。すなわち、進行方向を右傾させる場合、ステアリングシリンダSCが前輪2を右に傾斜させるように、右ステアリングソレノイドSL14が油圧系の制御弁を駆動し、左傾させる場合、左ステアリングソレノイドSL15が油圧系の制御弁を駆動する。したがって、例えば、右旋回が行われる場合、右ステアリングソレノイドSL14でトラクタ1を右折させた後、方位センサSN11の信号やGPS情報に基づいて、進行方向が180度逆になるのに合わせて、左ステアリングソレノイドSL15でステアリングハンドル10を直進の位置まで戻すように制御することが可能である。このようにすることで、旋回作業を自動で行うことができる。
【0072】
(エンジン制御部CB)
エンジン制御部CBは、図示しないエンジン回転センサ等の信号出力要素からの出力信号が入力され、燃料ポンプや、その他の図示しない制御要素に接続されている。
エンジン制御部CBは、前記信号出力要素からの出力信号等に応じた処理を実行して、前記制御要素等に制御信号を出力する機能を有している。エンジン制御部CBは、アクセルレバー221やアクセルペダル13、定回転スイッチ213の入力に応じて、エンジンEの回転数を制御する。なお、エンジンの回転数の制御自体は従来公知であり、例えば、特開2013−24038号公報に記載の構成を適用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0073】
また、エンジン制御部CBは、ステアリングハンドル10が切られて旋回中はエンジンの回転数を低下させ、減速した状態で旋回させ、ステアリングハンドル10が直進に戻ると、元の回転数に戻すように制御することも可能である。このように、作業機が上昇して負荷が軽くなる旋回時にエンジン回転数を落とすことで、燃料の無駄な消費を抑えることができる。また、旋回時に速度を下げることで、旋回性能が向上すると共に、車輪が土を抉りにくくなって圃場を傷めにくくなる。
【0074】
(作業機昇降制御部CC)
作業機昇降制御部CCは、作業機昇降センサSN31、耕深センサSN32、リフトアームセンサSN33、PTOスイッチ214、作業機用コネクタCON等の信号出力要素からの出力信号が入力されている。
【0075】
ここで、本実施形態において、作業機用コネクタCONは、一例として、通信規格AG−PORTに対応して構成されている。作業機用コネクタCONには、ロータリ耕耘装置18などの作業機のコネクタが電気的に接続され、作業機の制御部に制御信号を送信したり、作業機を識別するID情報などを作業機から読み取る。
【0076】
なお、作業機昇降センサSN31は、リフトアーム15,15を昇降操作するポジションレバー(作業機昇降レバー220)の操作位置を検出する。耕深センサSN32は、作業機18に支持されており、作業機18の耕耘の深さを検出する。リフトアームセンサSN33は、リフトアーム15の根元近傍に支持されており、リフトアーム15の高さを検出する。
【0077】
作業機昇降制御部CCは、作業機上昇ソレノイドSL21や、作業機下降ソレノイドSL22、PTOクラッチソレノイドSL23、その他の図示しない制御要素に接続されている。
作業機昇降制御部CCは、前記信号出力要素や各制御部などからの出力信号に応じた処理を実行して、前記制御要素や各制御部等に制御信号を出力する機能を有している。
【0078】
本実施形態の作業機昇降制御部CCは、各センサSN31〜SN33の検出結果や、耕深調整ダイヤル202の入力に応じて、作業機上昇ソレノイドSL21と作業機下降ソレノイドSL22の通電、非通電を制御する。これにより、油圧シリンダ14aへの圧油の供給、排出を行ない、リフトアーム15,15の昇降を制御する。
PTOクラッチソレノイドSL23は、PTOスイッチ214の入切の入力に応じて、PTOクラッチへ圧油を供給する制御弁の制御を行う。
【0079】
なお、本実施形態の制御部C(各制御部CA〜CC)は、メータパネルPa1からの制御信号に基づいて、手動操作モードか遠隔操作モードかを判別する。そして、各制御部CA〜CCは、手動操作モードの場合は、主変速増減ボタン211,223や副変速レバー210、前後進レバー11、クラッチボタン212、クラッチペダル12、アクセルペダル13、PTOスイッチ214、アクセルレバー221、耕深調整ダイヤル202、定回転スイッチ213、ステアリングハンドル10、作業機昇降レバー220等の操作部材からの入力に応じて、各クラッチやステアリングシリンダ、油圧シリンダ14a、エンジンE等の制御対象機器の制御を行う。
【0080】
また、本実施形態の制御部Cは、遠隔操作モード(自動走行モード)の場合は、圃場において予め設定された経路に沿って、GPS情報に応じて自動走行しながら作業を行う。
なお、前述のように障害物センサ241,243,247,251が障害物を検知すると、制御部Cは、警報を発したり、トラクタ1を一時停止させたりする。トラクタ1の停止後は、タブレット端末TABにカメラ246,248,249に映像を送信する。そして、オペレータが安全を確認後、各入力ボタン304b〜304h,307b〜307hへの入力がされると、走行が開始(再開)される。なお、トラクタ1の停止は、エンジンE自体を停止させても良いし、エンジンEは停止させずに前後進クラッチを「切」にしても良い。
【0081】
本実施形態では、自動走行モード中に、前進から後進に移行する場合に、一旦停止して、オペレータが後方確認カメラ246で安全の確認をして、自動走行の入力がされると後進が開始されるように制御部Cが制御する。このようにすることで、比較的高価な後方検知レーダセンサ247を設けなくても、後方確認カメラ246のみで安全を確保しつつ、部品点数、製造コストを削減することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態では、自動走行モード中に、非常停止ボタン303a,306が入力される等で緊急停止信号を受信した場合、制御部C(各制御部CA〜CC)は、トラクタ1を緊急停止させる。トラクタ1が緊急停止されると、予め設定された操作がされた後に、走行開始の信号(前進ボタン304g,307gまたは後進ボタン304h、307hへの入力)が受信されるまで、トラクタ1の走行を停止するように制御部Cが制御する。本実施形態では、トラクタ1が緊急停止されると、予め設定された操作の一例として、メインキー201を一度「切」にした後に再度「入」にする操作が行われた後に、走行開始の信号が入力されるとトラクタ1の走行が開始(再開)される。したがって、トラクタ1が緊急停止されるとオペレータがトラクタ1に乗り込んで操作をしないと、緊急停止が解除されないように構成されている。よって、緊急停止の状態になると、オペレータがトラクタ1まで行くこととなり、このとき、トラクタ1の周囲の状況、安全を確認することとなる。そして、確認後に緊急停止の解除が行われるので、緊急停止の原因となった不安全状況を確認、解消したうえで、緊急停止の解除を行うことができる。よって、緊急停止後に安全を確認したうえで走行を再開できる。
【0083】
なお、緊急停止を解除する操作は例示した操作に限定されず、緊急停止解除用のボタンを設けたり、複数のボタンを同時に押した場合に緊急停止を解除するようにしたり、複数のボタンを所定の順番で押した場合に緊急停止を解除するように構成することが可能である。
【0084】
また、本実施形態では、自動走行モード中に、一時停止ボタン304a,307aが入力される等で一時停止信号を受信した場合、制御部C(各制御部CA〜CC)は、トラクタ1を一時停止させる。トラクタ1が一時停止されると、走行開始の信号(前進ボタン304g,307gまたは後進ボタン304h,307hへの入力)を受信するまで、トラクタ1の走行を停止するように制御部Cが制御する。そして、走行開始の信号が受信されるとトラクタ1の自動走行が開始(再開)される。作業者が、別の軽作業(燃料を取りに行ったり等)をしたりとか、トイレに行くとか、電話をするとかで、トラクタ1から一時的に目を離すために、一時的にトラクタ1を停止させたい場合に、一時停止を行うことができる。よって、緊急停止の解除のような特別な作業を行わなくても、走行開始の信号の出力だけで再開することが可能であり、操作性が向上する。
【0085】
そして、本実施形態では、緊急停止信号と一時停止信号は、異なる通信方式(通信規格)で送受信される。したがって、2つの信号が、混信することが抑制される。よって、従来技術のように、混信で非常停止してしまい、非常停止を解除するためにトラクタ1まで行って乗り込んで非常停止の解除作業を行うという無駄な手間が発生することが抑制される。よって、安定して遠隔操作作業を行うことができる。
また、本実施形態では、緊急停止信号と一時停止信号は、通信可能距離が異なり、緊急停止信号は通信可能距離が長く設定されている。したがって、トラクタ1とオペレータとの距離が離れて、一時停止等の操作ができなくても、緊急停止は行うことができ、安全性が確保されやすい。
【0086】
また、本実施形態では、各通信ユニットU1,U2と、タブレット端末TABやリモコン303,304は、入力がなくても周期的な通信(ポーリング)が行われている。そして、長距離通信モジュール302や非常停止用リモコン303との通信が、所定の時間(例えば1分)途絶した場合、制御部Cはトラクタ1を非常停止させる。したがって、オペレータが非常停止の入力をしても反応しないエリアでトラクタ1が走行し続けて事故が発生することを低減でき、安全性が向上する。また、トラクタ1とオペレータの間に、人や別の車両、建造物等が入ったり、天候や通信環境等の一時的な変化で通信が短時間途絶しても、非常停止されないので、非常停止の解除のためにトラクタ1まで行く回数が減り、作業性が向上する。
【0087】
また、本実施形態では、短距離通信モジュール301や作業設定用リモコン304との通信が、所定の時間(例えば5分)途絶した場合、制御部Cはトラクタを一時停止させる。従って、所定の時間、作業設定ができない状態では一時停止させ、作業の入力が可能な状態となるまで待機させることができる。また、一時的に通信が途絶しても一時停止されないので、トラクタ1の走行を再開させるまで作業が滞ることがなく、作業性が向上する。
【0088】
なお、通信が所定期間途絶した後に、接続が再確立されて通信が可能(通信復帰)になった場合に、自動走行を再開する構成とすることも可能であるが、非常停止または一時停止した状態から自動で走行を再開しない構成とすることが望ましい。自動で走行を再開した場合に、トラクタ1の近くに人が近づいている可能性もあり、安全を確認して、オペレータの入力がされてから走行を再開したほうが安全性が向上するためである。なお、一時停止している状態では、走行開始の信号で走行を開始させることが可能である。一時停止側の通信途絶後に非常停止側の通信が途絶した場合、トラクタ1を一時停止した状態のままとなっている構成では、非常停止側の通信が復帰し且つ一時停止側の通信復帰した場合、走行開始の信号で走行を再開できる。よって、トラクタ1に乗り込んで非常停止の解除をする必要がなく、操作性、作業性が向上する。なお、安全性をさらに向上させるために、一時停止側の通信途絶後に非常停止側の通信が途絶した場合、トラクタ1を一時停止状態から非常停止状態に移行させるように構成することも可能である。