(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記開口の長辺方向における前記開口の両端のそれぞれにおける、前記開口の短辺方向の長さよりも、前記開口の長辺方向における前記開口の中心における、前記開口の短辺方向の長さが短い、請求項1〜3の何れか一項に記載のプローブアンテナ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図を参照しつつ、プローブアンテナについて説明する。このプローブアンテナは、導波管の端面を導体で形成し、その端面に開口を形成することで、アンテナとして機能するようにしたものである。そしてこのプローブアンテナでは、導波管の端面に設けられる開口の長辺方向における開口端に沿った長さが、所定の動作周波数に対応する自由空間波長の0.47倍以上、かつ、0.5倍以下となるように、開口が形成される。これにより、このプローブアンテナは、被測定物から離して配置されても、被測定物から発し、あるいは、被測定物により散乱される電磁場を測定可能とし、かつ、測定される電磁場の空間分解能を向上できる。なお、以下の説明において、開口の長辺方向とは、開口の外接矩形における長辺の延伸方向を表し、開口の短辺方向とは、開口の長辺方向と直交する方向を表す。
【0015】
図1(a)は、一つの実施形態によるプローブアンテナの斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)に示されるプローブアンテナを端面側から見た正面図である。
【0016】
プローブアンテナ1は、導波管2を有する。
【0017】
導波管2は、例えば、アルミニウム、あるいは黄銅などの導体により、中空の方形の筒状に形成される。また、電気的損失及び耐環境の面から、導波管2が黄銅で形成される場合、導波管2の内部が金メッキされてもよい。さらに、導波管2は、樹脂を中空の方形の筒状に形成し、形成された樹脂の内部を導体、例えば金でメッキすることで形成されてもよい 。そして導波管2の一方の端面11には、方形状の開口12が形成される。プローブアンテナ1は、開口12を介して、受信した電磁波を導波管2内に導き、あるいは、導波管2内を伝搬する電磁波を開口12を介して導波管2外へ放射する。
【0018】
導波管2の各部の寸法は、プローブアンテナ1の動作周波数を持つ電磁波が導波管2内を伝搬可能なように設定される。例えば、導波管2の延伸方向と直交する平面における、導波管2の内側の長辺方向(以下、単に導波管2の長辺方向と呼ぶ)の長さは、プローブアンテナ1の動作周波数に相当する自由空間波長λの1/2よりも大きく、かつ、自由空間波長λ未満に設定される。これにより、自由空間波長λを持つ電磁波が、各伝送モードのうちのTE
10モードのみで導波管2内を伝搬可能となるので、伝送効率の低下が抑制される。また、導波管2の延伸方向と直交する平面における、導波管2の内側の短辺方向(以下、単に導波管2の短辺方向と呼ぶ)の長さは、導波管2の長辺方向の長さ未満、例えば、長辺方向の長さの略半分に設定される。例えば、動作周波数がX帯(8.20GHz〜12.5GHz)に含まれる場合、方形導波管のEIA規格(WR-90)において定められるように、導波管2の長辺方向の長さは、例えば、22.86mmに設定され、導波管2の短辺方向の長さは、例えば、10.16mmに設定される。また、動作周波数がKu帯(11.9GHz〜18GHz)に含まれる場合、方形導波管のEIA規格(WR-62)において定められるように、導波管2の長辺方向の長さは、例えば、15.799mmに設定され、導波管2の短辺方向の長さは、例えば、7.899mmに設定される。
【0019】
導波管2の端面11も、例えば、アルミニウム、あるいは黄銅などの導体により形成される。また、電気的損失及び、耐環境の面から、端面11が黄銅で形成される場合、端面11は金メッキされてもよい。さらに、端面11は、樹脂で形成され、その樹脂を、導体、例えば金メッキすることで形成されてもよい。そして端面11に形成される方形状の開口12は、開口12の長辺方向と導波管2の長辺方向とが略平行となり、かつ、開口12の短辺方向と導波管2の端辺方向とが略平行となるように形成される。さらに、開口12は、例えば、端面11の中心と開口12の中心とが一致するように形成される。なお、端面11内の開口12の位置は上記に限られない。例えば、開口12の中心と端面11の中心とが一致しない位置に開口12は形成されてもよい。例えば、開口12の中心が、端面11の中心に対して導波管2の長辺方向または短辺方向の何れかあるいは両方に沿って数mmずれるように、開口12は形成されてもよい。
【0020】
開口12を介して放射または受信可能な電磁波の動作周波数は、開口12の長辺方向の開口端に沿った長さに依存する。これは、プローブアンテナ1が電磁波を放射または受信する際、開口端に沿って電磁場が強くなるためである。本実施形態では、開口12の長辺方向の開口端に沿った長さは、プローブアンテナ1の動作周波数に相当する自由空間波長λの0.47倍以上、かつ、0.5倍以下に設定される。開口12の長辺方向の開口端に沿った長さが自由空間波長λの0.5倍以下に設定されることにより、導波管2の長辺方向における、電磁波を受信する部分(本実施形態では、開口12)のサイズが、導波管2のサイズよりも小さくて済む。そのため、測定される電磁場の導波管2の長辺方向における空間分解能が向上する。特に、被測定物がアレイアンテナである場合、複数のアンテナ素子が自由空間波長λの1/2の間隔を空けて配置されることがある。このような場合でも、本実施形態によるプローブアンテナ1による空間分解能は、アンテナ素子間の間隔以下となる。そのため、プローブアンテナ1は、個々のアンテナ素子から放射された電磁波による電磁場を測定する際に、隣接する他のアンテナ素子から放射された電磁波による影響を軽減できる。
【0021】
一方、開口12の長辺方向の開口端に沿った長さが自由空間波長λの0.47倍以上に設定されることにより、プローブアンテナ1は、動作周波数を持つ電磁波を受信するのに十分なアンテナ性能を維持できる。
【0022】
また、開口12の短辺方向の長さは、開口12の長辺方向の開口端に沿った長さ未満であることが好ましい。これにより、プローブアンテナ1は、開口12の短辺方向についても、開口12の長辺方向と同程度の空間分解能を達成できる。
【0023】
なお、プローブアンテナ1が使用される場合、例えば、端面11が設けられた側と反対側の導波管2の端部近傍に同軸導波管変換器が取り付けられる。そして、導波管2内を伝搬する電磁波は、同軸導波管変換器を介し、同軸導波管変換器に接続される同軸ケーブルを介して信号処理回路(例えば、ベクトルネットワークアナライザといった測定器)へ伝送される。
【0024】
以下、電磁界シミュレーションにより求めた、プローブアンテナ1のアンテナ特性について説明する。
【0025】
図2(a)は、電磁界シミュレーションにより求めた、開口12の長辺方向の長さを一定とし、開口12の短辺方向の長さを変えたときのプローブアンテナ1のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図2(b)は、電磁界シミュレーションにより求めた、プローブアンテナ1の利得の周波数特性を示す図である。
図2(a)及び
図2(b)のそれぞれにおいて、横軸は周波数を表す。
図2(a)において、縦軸はリターンロスを表し、
図2(b)において、縦軸は利得を表す。
【0026】
このシミュレーションにおいて、プローブアンテナ1の動作周波数は10GHz(すなわち、自由空間波長3cm)である。また、導波管2の長辺方向及び短辺方向のそれぞれの長さを、X帯(8.20GHz〜12.5GHz)で用いられる導波管のEIA規格(WR-90)に合わせて、22.86mm、10.16mmとした。そして開口12の長辺方向の長さを14.6mmとした。
【0027】
図2(a)において、グラフ201〜207は、それぞれ、開口12の短辺方向の長さを0.5mm、1.0mm、2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mmとしたときのプローブアンテナ1のリターンロスの周波数特性を表す。グラフ201〜207に示されるように、動作周波数10GHzにおいて、開口12の短辺方向の長さにかかわらず、プローブアンテナ1のリターンロスが、一般的にアンテナが電磁波を受信可能とされるリターンロスの許容限界値である-6dB以下となる。したがって、プローブアンテナ1では、開口12の短辺方向の長さが開口12の長辺方向の長さよりも短い場合に、開口12の短辺方向の長さによらずに、リターンロスが電磁波を受信するのに十分な程度に抑制されていることが分かる。
【0028】
図2(b)において、グラフ211〜217は、それぞれ、開口12の短辺方向の長さを0.5mm、1.0mm、2.0mm、3.0mm、4.0mm、5.0mm、6.0mmとしたときのプローブアンテナ1の利得の周波数特性を表す。グラフ211〜217に示されるように、動作周波数10GHzにおいて、開口12の短辺方向の長さにかかわらず、プローブアンテナ1の利得は5dBi以上となっている。したがって、プローブアンテナ1では、開口12の短辺方向の長さが開口12の長辺方向の長さよりも短い場合に、開口12の短辺方向の長さによらずに、十分な利得が得られていることが分かる。
【0029】
図3は、電磁界シミュレーションにより求めた、開口12の短辺方向の長さを一定とし、開口12の長辺方向の長さを変えたときのプローブアンテナ1のリターンロスを示す図である。なお、このシミュレーションにおいても、動作周波数及び導波管2の長辺方向の長さ及び短辺方向の長さは、
図2(a)及び
図2(b)に示される電磁界シミュレーションで用いた動作周波数及び導波管2の各辺の長さと同じとした。また、開口12の短辺方向の長さを0.5mmとした。
図3において、横軸は開口12の長辺方向の長さを表し、縦軸はリターンロスを表す。グラフ300は、動作周波数10GHzにおける、開口12の長辺方向の長さとプローブアンテナ1のリターンロスの関係を表す。
【0030】
グラフ300に示されるように、動作周波数に相当する自由空間波長λの半分に近い長さでは、開口12の長辺方向の長さが短くなるほど、リターンロスが増加することが分かる。そして、開口12の長辺方向の長さが自由空間波長λの略0.47倍となるときに、プローブアンテナ1のリターンロスが、一般的にアンテナが電磁波を受信可能とされるリターンロスの許容限界値である-6dBとなる。そのため、開口12の長辺方向の長さは、自由空間波長λの0.47倍以上となることが好ましいことが分かる。
【0031】
以上に説明してきたように、このプローブアンテナは、導波管の端面に設けられた開口を介して電磁波を受信または放射する。そして導波管の長辺方向と略平行となる、開口の長辺方向における開口端に沿った長さが、動作周波数に相当する自由空間波長の0.47倍以上、かつ、0.5倍以下となるように、開口が形成される。そのため、このプローブアンテナは、被測定物から離して配置されても、被測定物から発し、あるいは、被測定物により散乱された電磁波を受信できるとともに、受信した電磁波に基づいて電磁場を測定する際の空間分解能を向上できる。
【0032】
変形例によれば、開口12の長辺方向における開口12の両端での開口12の短辺方向の長さよりも、開口12の長辺方向における中心での短辺方向の長さの方が短くなるように、開口12は形成されてもよい。
【0033】
図4(a)及び
図4(b)は、それぞれ、この変形例による、プローブアンテナ1を端面11側から見たプローブアンテナ1の正面図である。
図4(a)に示される変形例では、開口12は、ボウタイ状あるいは砂時計状に形成されている。一方、
図4(b)に示される変形例では、開口12は、H字状に形成されている。
【0034】
図5(a)は、電磁界シミュレーションにより求めた、
図4(a)に示される、開口12がボウタイ状または砂時計状に形成されたときのプローブアンテナ1のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図5(b)は、電磁界シミュレーションにより求めた、
図4(a)に示される、開口12がボウタイ状または砂時計状に形成されたときのプローブアンテナ1の利得の周波数特性を示す図である。
図5(a)及び
図5(b)のそれぞれにおいて、横軸は周波数を表す。
図5(a)において、縦軸はリターンロスを表し、
図5(b)において、縦軸は利得を表す。
【0035】
このシミュレーションにおいて、プローブアンテナ1の動作周波数は10GHz(すなわち、自由空間波長3cm)である。また、導波管2の長辺方向及び短辺方向のそれぞれの長さを、X帯(8.20GHz〜12.5GHz)で用いられる導波管のEIA規格(WR-90)に合わせて、22.86mm、10.16mmとした。そして開口12の長辺方向の長さを12mmとした。また、開口12の長辺方向における中心での開口12の短辺方向の長さを2mmとし、開口12の長辺方向における両端での開口12の短辺方向の長さを変更して、プローブアンテナ1のリターンロスの周波数特性を調べた。
【0036】
図5(a)において、グラフ501〜505は、それぞれ、開口12の長辺方向の両端における、開口12の短辺方向の長さを、4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mmとしたときのプローブアンテナ1のリターンロスの周波数特性を表す。グラフ501〜505に示されるように、開口12の長辺方向の両端における、開口12の短辺方向の長さが長くなるほど、リターンロスが極値となる、すなわち、プローブアンテナ1が共振する周波数は低くなる。しかし、開口12の長辺方向の両端における、開口12の短辺方向の長さが4.0mm〜8.0mmの範囲内では、動作周波数10GHzにおいて、プローブアンテナ1のリターンロスが、-6dB以下となる。したがって、この変形例でも、プローブアンテナ1では、リターンロスが電磁波を受信するのに十分な程度に抑制されていることが分かる。
【0037】
図5(b)において、グラフ511〜515は、それぞれ、開口12の長辺方向の両端における、開口12の短辺方向の長さを4.0mm、5.0mm、6.0mm、7.0mm、8.0mmとしたときのプローブアンテナ1の利得の周波数特性を表す。グラフ511〜515に示されるように、この変形例でも、動作周波数10GHzにおいて、プローブアンテナ1の利得は5dBi以上得られていることが分かる。
【0038】
図6(a)は、電磁界シミュレーションにより求めた、
図4(b)に示される、開口12がH字状に形成されたときのプローブアンテナ1のリターンロスの周波数特性を示す図である。
図6(b)は、電磁界シミュレーションにより求めた、
図4(b)に示される、開口12がH字状に形成されたときのプローブアンテナの利得の周波数特性を示す図である。
図6(a)及び
図6(b)のそれぞれにおいて、横軸は周波数を表す。
図6(a)において、縦軸はリターンロスを表し、
図6(b)において、縦軸は利得を表す。
【0039】
このシミュレーションにおいても、プローブアンテナ1の動作周波数は10GHz(すなわち、自由空間波長3cm)である。また、導波管2の長辺方向及び短辺方向のそれぞれの長さを、X帯(8.20GHz〜12.5GHz)で用いられる導波管のEIA規格(WR-90)に合わせて、22.86mm、10.16mmとした。そして開口12の長辺方向の長さを8.7mmとした。また、開口12の長辺方向における、それぞれの端部から3mmまでの区間における、開口12の短辺方向の長さを8mmとし、開口12の長辺方向における、中心部の2.7mmの区間における、開口12の短辺方向の長さを2mmとした。
【0040】
図6(a)において、グラフ600は、プローブアンテナ1のリターンロスの周波数特性を表す。グラフ600に示されるように、動作周波数10GHzにおいて、プローブアンテナ1のリターンロスが、-6dB以下となる。したがって、この変形例でも、プローブアンテナ1では、リターンロスが電磁波を受信するのに十分な程度に抑制されていることが分かる。
【0041】
図6(b)において、グラフ610は、プローブアンテナ1の利得の周波数特性を表す。グラフ610に示されるように、この変形例でも、動作周波数10GHzにおいて、プローブアンテナ1の利得として5dBi以上得られていることが分かる。
【0042】
図4(a)及び
図4(b)に示される変形例では、開口の長辺方向に沿った開口端が湾曲又は屈曲されるので、開口端に沿った長さよりも開口の長辺方向の長さを短縮できる。そのため、これらの変形例によるプローブアンテナは、測定される電磁場の空間分解能をより向上できる。
【0043】
なお、開口の形状は、上記の実施形態または変形例に限られない。例えば、
図4(a)に示されるように、開口がボウタイ状または砂時計状に形成される場合において、長辺が折れ線状に形成されてもよい。また、上記の実施形態または変形例において、開口の各コーナーが円弧状に形成されてもよい。
【0044】
図7(a)〜
図7(f)は、開口の形状の他の一例を示す図である。
図7(a)に示される例では、開口12は、長手方向における両端部分が略円形に形成され、その両端部分が矩形状の部分で接続された形状となる。また、
図7(b)に示される例では、開口12は、同形状の二つの三角形が頂点側にて互いに対向し、かつ、その二つの三角形が互いに部分的に重なる形状となるように形成される。さらに、
図7(c)に示される例では、開口12は、同形状の二つの三角形が頂点側にて互いに対向し、かつ、その二つの三角形が矩形状の部分で接続された形状となる。
【0045】
図7(d)に示される例では、開口12は、同形状の二つの扇形が中心角側にて互いに対向し、かつ、その二つの扇形が互いに部分的に重なる形状となるように形成される。さらに、
図7(e)に示される例では、開口12は、同形状の二つの扇形が中心角側にて互いに対向し、かつ、その二つの扇形が矩形状の部分で接続された形状となる。さらにまた、
図7(f)に示される例では、開口12は、
図7(d)に示された開口のすべてのコーナーが丸められるとともに、扇形の辺が開口12の長手方向に沿って凹状の曲線となるように形成される。これらの何れの変形例についても、開口の長辺方向に沿った開口端が湾曲又は屈曲されるので、開口端に沿った長さよりも開口の長辺方向の長さが短縮される。
【0046】
図8(a)〜
図8(c)は、開口の形状のさらに他の一例を示す図である。
図8(a)に示される例では、開口12は、
図1(b)に示される開口と同様に、矩形状に形成されるが、この例では、開口12の各コーナーが曲面状に形成される。また、
図8(b)に示される例では、開口12は矩形状に形成されるが、開口12の各コーナーが線状に面取りされる。さらに、
図8(c)に示される例では、開口12は、楕円状に形成され、その楕円の長軸方向が端面の長手方向と略平行となる。
図8(a)〜
図8(c)に示される変形例の開口を持つプローブアンテナも、
図1(a)及び
図1(b)に示されるプローブアンテナと同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、
図7(a)〜図(f)または
図8(a)〜
図8(c)に示される変形例についても、上記の実施形態と同様に、開口12の中心と導波管の端面の中心とが一致しない位置に開口12は形成されてもよい。例えば、開口12の中心が、端面11の中心に対して導波管2の長辺方向または短辺方向の何れかあるいは両方に沿って数mmずれるように、開口12は形成されてもよい。
【0048】
さらに他の変形例によれば、導波管の端面に、複数の開口が形成されてもよい。
図9(a)〜
図9(f)は、それぞれ、複数の開口が形成された変形例による、プローブアンテナを端面側から見たプローブアンテナの正面図である。
【0049】
図9(a)に示された変形例では、導波管の端面11において、
図7(a)に示された形状を持つ二つの開口12−1、12−2が、端面11の短辺方向に沿って並べて配置される。同様に、
図9(b)〜
図9(f)のそれぞれに示される変形例についても、導波管の端面11において、
図7(b)〜
図7(f)に示された形状を持つ二つの開口12−1、12−2が端面の短辺方向に沿って並べて配置される。さらに、
図1(b)、
図4(a)または
図4(b)に示される形状を持つ開口が、導波管の端面11の短辺方向に沿って並べて配置されてもよい。さらにまた、3個以上の開口が、導波管の端面11の短辺方向に沿って並べて配置されてもよい。このように、端面の短辺方向に沿って複数の開口が形成されることで、プローブアンテナは、端面の長辺方向における空間分解能が低下することを抑制しつつ、利得を向上できる。
【0050】
また他の変形例によれば、プローブアンテナが有する導波管の断面形状は、矩形でなくてもよく、例えば、楕円形であってもよい。ただしこの場合も、導波管の長辺方向と端面に形成される開口の長辺方向とが略平行となるように、開口が形成されることが好ましい。また導波管の長辺方向のサイズは、プローブアンテナの動作周波数を持つ電磁波が導波管内を単一の伝送モード(すなわち、TE
10モード)で伝搬できるサイズとなるように設定されることが好ましい。
【0051】
上記の実施形態または変形例によるプローブアンテナは、例えば、被測定物から放射される電磁波または被測定物により散乱される電磁波による電磁場を測定するための測定装置に利用することができる。
【0052】
図10は、上記の実施形態または変形例によるプローブアンテナを用いた測定装置の一例の概略構成図である。測定装置100は、プローブアンテナ101と、同軸導波管変換器102と、可動台103と、測定器104と、制御装置105とを有する。測定装置100は、さらに、測定結果を表示するための表示装置(図示せず)、または、測定結果を他の機器へ出力するための通信インターフェース(図示せず)を有していてもよい。本実施形態では、測定装置100による被測定物は、所定の動作周波数に相当する自由空間波長λの1/2の間隔を空けて2次元的に複数の矩形のアンテナ素子が配置されるアレイアンテナ110である。測定装置100は、アレイアンテナ110から発した、所定の動作周波数を持つ電磁波を受信してアレイアンテナ110の近傍界における、電磁場の振幅及び位相を測定する。そして測定装置100は、測定した振幅及び位相に基づいて、アレイアンテナ110の遠方界におけるアレイアンテナ110から放射される電磁波の放射パターンを推定する。
【0053】
プローブアンテナ101は、上記の実施形態または変形例の何れかによるプローブアンテナとすることができる。なお、プローブアンテナ101が有する導波管及び開口の各部の寸法は、アレイアンテナ110から発する電磁波の動作周波数に応じて、上記の実施形態または変形例のように設定される。そしてプローブアンテナ101は、開口が形成される端面が被測定物であるアレイアンテナ110と対向するように可動台103に取り付けられる。またプローブアンテナ101は、例えば、アレイアンテナ110の法線方向に沿って、アレイアンテナ110とプローブアンテナ101とが電磁結合しないような距離、すなわち、プローブアンテナ101がアレイアンテナ110に近づきすぎてアレイアンテナ110の特性に影響を及ぼさない距離、一般的には3波長から10波長程度の距離だけ離して配置される。
【0054】
プローブアンテナ101は、測定装置100が測定動作を実行している間、プローブアンテナ101が有する導波管の端面に形成される開口を介してアレイアンテナ110から放射される、所定の動作周波数を持つ電磁波を受信する。受信した電磁波は、導波管内を伝搬して同軸導波管変換器102に達する。
【0055】
同軸導波管変換器102は、例えば、プローブアンテナ101が有する導波管の開口が形成される端面とは反対側の端部近傍に取り付けられる。そして同軸導波管変換器102は、導波管内を伝搬した電磁波を、同軸導波管変換器102と測定器104間を接続する同軸ケーブルを介して測定器104へ出力する。
なお、プローブアンテナ101と同軸導波管変換器102の間に、テーパ導波管あるいはステップ導波管などが設けられてもよい。
【0056】
可動台103は、例えば、互いに直交する2方向のそれぞれにおいて移動可能なXYステージとすることができる。可動台103は、制御装置105からの制御信号に従って、可動台103に取り付けられるプローブアンテナ101を個々の測定位置に移動させる。個々の測定位置は、例えば、アレイアンテナ110が有する各アンテナ素子の正面位置とすることができる。これにより、測定装置100は、アレイアンテナ110から放射される電磁波を平面に沿ってスキャンできる。なお、可動台103は、XYZステージといった互いに直交する3軸のそれぞれに沿って移動可能な可動ステージを有していてもよい。この場合には、測定装置100は、アレイアンテナ110から放射される電磁波を、円筒面、球面あるいは他の形状の面に沿ってスキャンしてもよい。
【0057】
測定器104は、例えば、ベクトルネットワークアナライザとすることができる。測定器104は、同軸ケーブルを介してアレイアンテナ110の入力端子と接続される。また測定器104は、同軸ケーブルを介して同軸導波管変換器102と接続される。そして測定器104は、アレイアンテナ110へ同軸ケーブルを介して測定用の信号を出力する。さらに、測定器104は、可動台103により調節される、プローブアンテナ101の測定位置ごとに、プローブアンテナ101が受信した電磁波を変換して得られる電気信号を同軸導波管変換器102から同軸ケーブルを介して受信する。そして測定器104は、アレイアンテナ110へ出力した測定用の信号と、同軸導波管変換器102から受信した電気信号とに基づいて、測定位置ごとの電磁場の振幅及び位相を測定する。
【0058】
測定器104は、測定位置ごとの電磁場の振幅及び位相の測定値を制御装置105へ出力する。
【0059】
制御装置105は、測定装置100全体を制御する。また制御装置105は、プローブアンテナ101の測定位置に関する情報と、測定器104から受信した、測定位置ごとの電磁波の振幅及び位相とに基づいて、遠方界におけるアレイアンテナ110の放射パターンを推定する。そのために、制御装置105は、例えば、一つまたは複数のプロセッサと、メモリと、制御装置105を可動台103及び測定器104と接続する通信インターフェースを有する。
【0060】
制御装置105は、測定動作を開始すると、可動台103に対してプローブアンテナ101を着目する測定位置へ移動させる制御信号を出力する。プローブアンテナ101が着目する測定位置へ移動した後に、制御装置105は、測定器104から、その着目する測定位置における電磁場の振幅及び位相の測定値を受信する。そして制御装置105は、受信した測定値を測定位置の座標と対応付けて、制御装置105が有するメモリに保存する。
【0061】
制御装置105は、着目する測定位置を変更しながら上記の処理を繰り返すことで、各測定位置における電磁場の振幅及び位相の測定値を得る。そして制御装置105のプロセッサは、各測定位置における電磁場の振幅及び位相の測定値に対してフーリエ変換を実行することで、アレイアンテナ110の遠方における、アレイアンテナ110の放射パターンを推定できる。なお、アレイアンテナ110の放射パターンを求める方法の詳細については、例えば、A.D.YAGHJIAN、「An Overview of Near-Field Antenna Measurement」、IEEE TRANSACTIONS ON ANTENNAS AND PROPAGATION、Vol. AP-34、pp.30-45、No.1、1986年を参照されたい。
【0062】
制御装置105は、推定した放射パターンを表す情報を、例えば、制御装置105と接続される表示装置へ出力する。あるいは、制御装置105は、推定した放射パターンを表す情報を、他の機器へ出力してもよい。
【0063】
この測定装置によれば、プローブアンテナ101の開口の長辺方向の長さ及び短辺方向の長さがアレイアンテナの互いに隣接するアンテナ素子間の間隔以下となる。そのため、この測定装置は、各測定位置において、着目するアンテナ素子から放射された電磁波による電磁場を測定する際に、隣接するアンテナ素子により放射された電磁波による、電磁場への影響を軽減できる。そのため、この測定装置は、被測定物となるアレイアンテナの放射特性をより正確に評価できる。
【0064】
図11は、上記の実施形態または変形例によるプローブアンテナを用いた測定装置の他の一例の概略構成図である。測定装置200は、二つのプローブアンテナ101−1、101−2と、同軸導波管変換器102−1、102−2と、測定器104と、制御装置105とを有する。測定装置200は、さらに、測定結果を表示するための表示装置(図示せず)、または、測定結果を他の機器へ出力するための通信インターフェース(図示せず)を有していてもよい。本実施形態による測定装置200は、
図10に示される測定装置100と比較して、プローブアンテナ及び同軸導波管変換器を二つ有する点と、可動台を有さない点で相違する。また測定装置200は、被測定物による電磁波の散乱特性、例えば、レーダ反射断面積を測定する。
【0065】
以下では、測定装置200の各構成要素のうち、測定装置100と相違する構成要素及びその関連部分について説明する。
【0066】
被測定物210は、例えば、金属といった電磁波を散乱する材料により形成され、かつ、回転可能な台座211−1上に、例えば、円筒形状で発泡スチロールといった、電磁波の反射率が低い材料により形成された支持台211−2を介して載置される。そして、測定装置200の測定動作中、制御装置105からの制御信号に従って台座211が1周回転することで、被測定物210も1周回転する。そのため、測定装置200は、モノスタティック散乱計測の手法に従って、被測定物210の散乱特性を測定できる。なお、測定装置200は、遠方界での散乱パターンを求める数学的手法に応じて、バイスタテック測定、平面スキャナ、球面スキャナあるいは円筒スキャナ等の種々の近傍界測定手法に従って、被測定物210により散乱された電磁場を測定してもよい。
【0067】
プローブアンテナ101−1、101−2は、それぞれ、上記の実施形態または変形例の何れかによるプローブアンテナとすることができる。そしてプローブアンテナ101−1、101−2は、それぞれ、開口が形成される端面が被測定物210と対向するように固定台212に取り付けられる。またプローブアンテナ101−1、101−2は、例えば、被測定物210から2D
2/λ以下の距離だけ離して配置される。なお、Dは、被測定物210の長手方向の一辺の長さを表す。
【0068】
プローブアンテナ101−1は、測定装置200が測定動作を実行している間、送信アンテナとして動作する。プローブアンテナ101−1は、測定器104から同軸導波管変換器102−1を通り、かつ、プローブアンテナ101−1が有する導波管の端面の開口を介して、所定の動作周波数を持つ電磁波を被測定物210へ向けて放射する。プローブアンテナ101−1の開口のサイズが小さいため、プローブアンテナ101−1は、被測定物210に対して一様に電磁波を照射できる。なお、プローブアンテナ101−1の代わりに、ホーンアンテナなど、他の送信用のアンテナが用いられてもよい。
【0069】
一方、プローブアンテナ101−2は、測定装置200が測定動作を実行している間、受信アンテナとして動作する。そしてプローブアンテナ101−2は、プローブアンテナ101−2が有する導波管の端面に形成される開口を介して、プローブアンテナ101−1から放射され、かつ、被測定物210により散乱された電磁波を受信する。受信した電磁波は、矩形導波管内を伝搬して同軸導波管変換器102−2に達する。なお、プローブアンテナ101−1、101−2が有する導波管及び開口の各部の寸法は、プローブアンテナ101−1から発する電磁波の動作周波数に応じて、上記の実施形態または変形例のように設定される。
【0070】
同軸導波管変換器102−1は、例えば、プローブアンテナ101−1が有する導波管の開口が形成される端面とは反対側の端部近傍に取り付けられる。そして同軸導波管変換器102−1は、同軸導波管変換器102−1と測定器104間を接続する同軸ケーブルを介して測定器104に接続される。そして同軸導波管変換器102−1は、測定器104から同軸ケーブルを伝搬する測定用の電磁波を、プローブアンテナ101−1の導波管内を伝搬する電磁波に変換する。
【0071】
同軸導波管変換器102−2は、例えば、プローブアンテナ101−2が有する導波管の開口が形成される端面とは反対側の端部近傍に取り付けられる。そして同軸導波管変換器102−2は、プローブアンテナ101−2の導波管内を伝搬した電磁波を、同軸導波管変換器102−2と測定器104間を接続する同軸ケーブルを介して測定器104へ出力する。
【0072】
測定器104は、同軸ケーブルを介して同軸導波管変換器102−1、102−2と接続される。そして測定器104は、プローブアンテナ101−1から電磁波として放射される測定用の電磁波を、同軸導波管変換器102−1へ同軸ケーブルを介して出力する。さらに、測定器104は、プローブアンテナ101−2が受信した電磁波を同軸導波管変換器102−2から同軸ケーブルを介して受信する。そして測定器104は、同軸導波管変換器102−1へ出力した測定用の電磁波と同軸導波管変換器102−2から受信した電磁波とに基づいて、被測定物210により散乱された電磁波による被測定物210の近傍界における電磁場の振幅及び位相を測定する。
【0073】
測定器104は、被測定物210の近傍界における電磁場の振幅及び位相の測定値を制御装置105へ出力する。
【0074】
制御装置105は、測定装置200全体を制御する。また制御装置105は、測定器104から受信した、被測定物210の近傍界における電磁波の振幅及び位相とに基づいて、被測定物210のレーダ反射断面積を推定する。
【0075】
制御装置105のプロセッサは、測定器104から受信した、被測定物210の近傍界における電磁波の振幅及び位相に基づいて、被測定物210のレーダ反射断面積を推定する。なお、レーダ反射断面積を求める方法の詳細については、例えば、D. G. Falconer、「Extrapolation of Near-Field RCS Measurements to the Far Zone」、IEEE TRANSACTIONS ON ANTENNAS AND PROPAGATION、Vol. 36、pp.822-829 、NO. 6、 1988年を参照されたい。
【0076】
制御装置105は、求めた被測定物210のレーダ反射断面積を表す情報を、例えば、制御装置105と接続される表示装置へ出力する。あるいは、制御装置105は、被測定物210のレーダ反射断面積を表す情報を、他の機器へ出力してもよい。
【0077】
この測定装置によれば、プローブアンテナ101−1、101−2の開口の長辺方向及び短辺方向のそれぞれのサイズが動作周波数に相当する自由空間波長の1/2以下となる。そのため、この測定装置は、被測定物の近傍界における電磁場の振幅及び位相の測定値の空間解像度を向上できる。そのため、この測定装置は、被測定物による電磁波の散乱特性をより高精度で評価できる。
【0078】
ここに挙げられた全ての例及び特定の用語は、読者が、本発明及び当該技術の促進に対する本発明者により寄与された概念を理解することを助ける、教示的な目的において意図されたものであり、本発明の優位性及び劣等性を示すことに関する、本明細書の如何なる例の構成、そのような特定の挙げられた例及び条件に限定しないように解釈されるべきものである。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。