特許第6962181号(P6962181)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6962181
(24)【登録日】2021年10月18日
(45)【発行日】2021年11月5日
(54)【発明の名称】半導電性ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/02 20060101AFI20211025BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20211025BHJP
   C08K 5/39 20060101ALI20211025BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20211025BHJP
【FI】
   C08L71/02
   C08K3/22
   C08K5/098
   C08K5/14
   C08K5/39
   G03G15/00 551
   G03G15/00 552
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-251667(P2017-251667)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-116566(P2019-116566A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2020年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000108993
【氏名又は名称】株式会社大阪ソーダ
(72)【発明者】
【氏名】宇野 和樹
(72)【発明者】
【氏名】宇渡 真一
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 尚也
(72)【発明者】
【氏名】安田 和敬
(72)【発明者】
【氏名】河戸 勇磨
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/051689(WO,A1)
【文献】 特開2007−131790(JP,A)
【文献】 特開2007−224215(JP,A)
【文献】 特開2006−309063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 71/02
C08K 3/22
C08K 5/098
C08K 5/14
C08K 5/39
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ゴム成分として、ポリエーテル系重合物、(b)銅化合物、(c)有機過酸化物、(d)架橋助剤を含有することを特徴とする半導電性ゴム組成物。
【請求項2】
前記ポリエーテル系重合物が、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテルから選択される少なくとも二つのユニットを構成単位に含むことを特徴とする請求項1に記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項3】
前記(b)銅化合物が、酸化銅、水酸化銅、炭酸銅、塩化銅、硫化銅、硫酸銅から選択される無機銅化合物、カルボン酸の銅塩及びジチオカルバミン酸の銅塩から選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項4】
前記(b)銅化合物が、酸化銅、ステアリン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅から選択される少なくとも一種の銅化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項5】
前記(d)架橋助剤が、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアネート、o,o`‐ジベンゾイル、p‐キノンジオキシム、m‐フェニレンジマレイミドから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項6】
前記(b)銅化合物の配合量が、前記(a)ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項7】
前記(a)ゴム成分100質量部に対する前記(c)有機過酸化物の含有量をX質量部、前記(c)有機過酸化物の活性酸素量をY(%)としたとき、
0.4≦X×Y≦200
であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項8】
更に、(e)導電剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物を用いてなる半導電性ゴム材料。
【請求項10】
請求項9に記載の半導電性ゴム材料を用いた半導電性ゴムロール又は半導電性無端ゴムベルト。
【請求項11】
請求項10に記載の半導電性ゴムロール又は半導電性無端ゴムベルトを用いてなる電子写真機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の半導電性ゴム組成物及び半導電性ゴム組成物を用いてなる半導電性ゴム材料は、その半導電性特性により、コピー機、プリンター等における電子写真プロセスの現像、帯電、転写などの半導電性ローラー又はベルトに用いられる部材に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、接触帯電方式に用いられる帯電ロール、転写ロール、現像ロールにおいて、より高画質化、高速化の要求から、基材部分でゴム材料の更なる物性向上が求められている。尚、以下、半導電性部材の例として電子写真機器用途を例示して記載するが、本発明は、その用途を電子写真機器用途のみに限定する物ではない。
【0003】
高画質化、高速化の要求から、特に電子写真複写機のゴム帯電ロール、転写ロール等の半導電性ゴム材料は下記の条件をみたすことが要求される。
(1)測定環境が低温低湿下及び高温高湿下において、半導電特性を有すること。
(2)低温低湿下、高温高湿下においても印刷特性が変わらないことが好ましいため、体積抵抗率の環境依存性が小さいこと。
(3)感光体と直接接触する部材、帯電ロール、転写ロール等に関しては、感光体の汚染性がより小さいこと。
【0004】
また、現像ロールを感光体ドラム表面に直接接触させて感光体ドラム表面にトナー像を形成する方式の場合、現像ロールの特性として低硬度化が要求されるが、低硬度化した場合には、感光体ドラムとの圧接部分にヘタリが生じるという問題がおこるためゴム層の反発弾性を大きくすることで接触部が変形した場合でも、元の形状にいち早く復元することができると知られている(特許文献1)。
【0005】
また、オキシラン化合物を重合してなるポリエーテル系重合物を使用した半導電性ゴム材料の場合、有機過酸化物で架橋してなる半導電性ゴム材料は、硫黄で加硫してなる半導電性ゴム材料より感光体の汚染性が小さいことは一般的に知られている(特許文献2)。しかし、体積抵抗率は硫黄で架橋してなる半導電性ゴム材料より高くなる。
【0006】
また、本出願人は有機過酸化物で架橋してなる半導電性ゴム材料における検討において、銅化合物を用いた配合について検討している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3489384号公報
【特許文献2】特開平6−208289号公報
【特許文献3】国際公開第2013/051689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本出願人が行った有機過酸化物、銅化合物を用いた検討においては、反発弾性が十分ではないという課題があり、その解決が求められてきた。
【0009】
本発明は、かかる事情を背景としてなされたものであり、有機過酸化物、銅化合物を組み合わせて配合した組成物を用いた半導電性ゴム材料において、体積抵抗率を低減し、かつ体積抵抗率の環境依存性を小さくとする効果を維持しつつ、反発弾性を改善することを可能とする半導電性ゴム組成物及び半導電性ゴム組成物を用いてなる半導電性ゴム材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、(a)ゴム成分として、ポリエーテル系重合物、(b)銅化合物、(c)有機過酸化物(d)架橋助剤を含有する半導電性ゴム組成物及び半導電性ゴム組成物を用いてなる半導電性ゴム材料により、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下に関する。
項1 (a)ゴム成分として、ポリエーテル系重合物、(b)銅化合物、(c)有機過酸化物、(d)架橋助剤を含有することを特徴とする半導電性ゴム組成物。
項2 前記ポリエーテル系重合物が、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、エピクロロヒドリン、アリルグリシジルエーテルから選択される少なくとも二つのユニットを構成単位に含むことを特徴とする項1に記載の半導電性ゴム組成物。
項3 前記(b)銅化合物が、酸化銅、水酸化銅、炭酸銅、塩化銅、硫化銅、硫酸銅から選択される無機銅化合物、カルボン酸の銅塩及びジチオカルバミン酸の銅塩から選択される少なくとも一種であることを特徴とする項1又は2に記載の半導電性ゴム組成物。
項4 前記(b)銅化合物が、酸化銅、ステアリン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅から選択される少なくとも一種の銅化合物を含有することを特徴とする項1〜3のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
項5 前記(d)架橋助剤が、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアネート、o,o`‐ジベンゾイル、p‐キノンジオキシム、m‐フェニレンジマレイミドから選択される少なくとも一種であることを特徴とする項1〜4のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
項6 前記(b)銅化合物の配合量が、前記(a)ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上であることを特徴とする項1〜5のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
項7 前記(a)ゴム成分100質量部に対する前記(c)有機過酸化物の含有量をX質量部、前記(c)有機過酸化物の活性酸素量をY(%)としたとき、
0.4≦X×Y≦200
であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
項8 更に、(e)導電剤を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物。
項9 項1〜8のいずれかに記載の半導電性ゴム組成物を用いてなる半導電性ゴム材料。
項10 項9に記載の半導電性ゴム材料を用いた半導電性ゴムロール又は半導電性無端ゴムベルト。
項11 項10に記載の半導電性ゴムロール又は半導電性無端ゴムベルトを用いてなる電子写真機器。
【発明の効果】
【0012】
本発明の半導電性ゴム組成物により得られた半導電性ゴム材料は、有機過酸化物を架橋剤として用いているため汚染性が低い。また、体積抵抗率が低く、かつ体積抵抗率の環境依存性の小さいことを維持しつつ、反発弾性に優れる。このため、かかる半導電性ゴム材料はコピー機、プリンター等の半導電性ゴムロール及びベルト等に非常に有用である。
【0013】
本発明の半導電性ゴム組成物において、(b)銅化合物の配合量が、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上とすることにより、(d)架橋助剤との組み合わせの効果であると考えられるが、更に半導電性ゴム組成物により得られた半導電性ゴム材料の体積抵抗率の環境依存性を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明の半導電性ゴム組成物は、(a)ゴム成分として、ポリエーテル系重合物、(b)銅化合物、(c)有機過酸化物、(d)架橋助剤を含有することを特徴とする半導電性ゴム組成物である。
【0016】
本発明に使用される、ポリエーテル系重合物(ゴム)としては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、n−ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイド類、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテルなどのグリシジル類、エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリンなどのエピハロヒドリン類、スチレンオキサイドなどから選択される化合物の単独重合体又は共重合体であり、これらの単独重合体又は共重合体を一種又は二種以上併用して使用することができる。
【0017】
ポリエーテル系重合物としては、エピクロロヒドリン、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、アリルグリシジルエーテルから選択される二つのユニットを構成単位に含むことが好ましく、エチレンオキサイド及びアリルグリシジルエーテルのユニットを構成単位に含むことがより好ましく、エピクロロヒドリン、エチレンオキサイド及びアリルグリシジルエーテルのユニットを構成単位に含むことが特に好ましい。
【0018】
ポリエーテル系重合物としては、エチレンオキサイドに基づく構成単位を全重合単位に対して、50〜85モル%であることが好ましく、58〜80モル%であることがより好ましく、65〜75モル%であることが特に好ましい。
ポリエーテル系重合物としては、アリルグリシジルエーテルに基づく構成単位を全重合単位に対して、1〜15モル%であることが好ましく、2〜12モル%であることがより好ましく、3〜10モル%であることが特に好ましい。
ポリエーテル系重合物としては、エピクロロヒドリンに基づく構成単位を全重合単位に対して、10〜45モル%であることが好ましく、15〜35モル%であることがより好ましく、20〜30モル%であることが特に好ましい。
【0019】
本発明の半導電性ゴム組成物においては、(a)ゴム成分の全量を100質量部としたとき、ポリエーテル系重合物を10質量%以上含有することが好ましく、30質量%以上含有することがより好ましく、70質量%以上含有することが特に好ましく、90質量%以上含有することが最も好ましい。
【0020】
本発明のポリエーテル系重合物を具体的に例示すると、エピクロロヒドリン単独重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロロヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロロヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体等であり、複数の重合体をブレンドすることにより、構成されていてもよい。ポリエーテル系重合物の分子量は特に制限されないが、通常ムーニー粘度表示でML1+4(100℃)=20〜150程度となる分子量であればよい。
【0021】
ポリエーテル系重合物の製造は、触媒としてオキシラン化合物を開環重合させ得るものを使用し、温度−20〜100℃の範囲で溶液重合法、スラリー重合法等により実施できる。このような触媒としては、例えば有機アルミニウムを主体としこれに水やリンのオキソ酸化合物やアセチルアセトン等を反応させた触媒系、有機亜鉛を主体としこれに水を反応させた触媒系、有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系等が挙げられる。例えば本出願人による米国特許第3,773,694号明細書に記載の有機錫−リン酸エステル縮合物触媒系を使用して本発明のポリエーテル系重合物を製造することができる。なお、このような製法により、共重合させる場合、これらの成分を実質上ランダムに共重合することが好ましい。
【0022】
本発明の半導電性ゴム組成物においては、(a)ゴム成分として、ポリエーテル系重合物のみを含有しても良く、前記ポリエーテル系重合物以外のゴム種をさらに含有しても良い。ポリエーテル系重合物以外のゴムとしては、天然ゴム又は合成ゴムが挙げられ、合成ゴムとしては、イソプレンゴム(IR)、1,2−ポリブタジエン(VBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CPE)、アクリルゴム(ACM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(H−NBR)が挙げられ、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0023】
本発明の半導電性ゴム組成物のゴム成分として、前記ポリエーテル系重合物以外のゴム種を含有する場合には、ゴム成分中、前記ポリエーテル系重合物が10〜90質量%、前記ポリエーテル系重合物以外のゴム種90〜10質量%を含有することが好ましく、前記ポリエーテル系重合物30〜90質量%、前記ポリエーテル系重合物以外のゴム種70〜10質量%を含有することがより好ましく、前記ポリエーテル系重合物70〜90質量%、前記ポリエーテル系重合物以外のゴム種30〜10質量%を含有することが特に好ましい。
【0024】
本発明における(b)銅化合物は、無機銅化合物、有機銅化合物を限定することなく用いることができ、これらの具体例として、無機銅化合物としては、チオシアン酸銅(ロダン銅)、シアン化銅(青化銅)、青化銅ソーダ、青化銅カリ、硫酸銅、硝酸銅、炭酸銅、ヨウ素酸銅、アセト亜ヒ酸銅、ピロリン酸銅、ホウフッ化銅、酸化銅、水酸化銅、過酸化銅、塩化銅、ヨウ化銅、臭化銅、フッ化銅、炭化銅、硫化銅、塩化第二銅アンモニウム、アジ化銅などが例示され、有機銅化合物としては酢酸銅、オクチル酸銅、ナフテン酸銅、ステアリン酸銅、安息香酸銅、ラウリン酸銅、テレフタル酸銅などのカルボン酸の銅塩、ジメチルジチオカルバミン酸銅、ジエチルカルバミン酸銅、ジブチルジチオカルバミン酸銅、N−エチル−N−フェニルジチオカルバミン酸銅、N−ペンタメチレンジチオカルバミン酸銅、ジベンジルジチオカルバミン酸銅などのジチオカルバミン酸の銅塩、フタロシアニン銅(フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン)が例示される。本発明の(b)銅化合物においては、酸化銅、水酸化銅、炭酸銅、塩化銅、硫化銅、硫酸銅から選択される無機銅化合物、カルボン酸の銅塩及びジチオカルバミン酸の銅塩であることが好ましく、酸化銅、ステアリン酸銅、ジメチルジチオカルバミン酸銅であることが好ましい。
【0025】
前記(b)銅化合物の配合量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、下限は0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.2質量部以上であることが更に好ましく、0.25質量部以上であることが特に好ましく、上限は20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
【0026】
本発明の半導電性ゴム組成物において、(b)銅化合物の配合量が、(a)ゴム成分100質量部に対して、0.2質量部以上とすることにより、更に半導電性ゴム組成物により得られた半導電性ゴム材料の体積抵抗率の環境依存性を小さくすることができる。
【0027】
本発明における半導電性ゴム組成物を架橋するために用いる(c)有機過酸化物の具体例としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、1,1,3,3,−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、1,1−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジtert−ブチルパーオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジtertジブチルパーオキシヘキシン−3、1,3−ビスtert−ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジベンゾイルパーオキシヘキサン、1,1−ビスtert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビスtert−ブチルパーオキシバレレート、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキサイドイソブチレート、tert−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカルボナート、tert−ブチルパーオキシアリルモノカルボナート、p−メチルベンゾイルパーオキサイドが挙げられ、少なくとも一種を含むことが好ましい。また、(a)ポリエーテル系重合物を含むゴム成分を架橋する際に用いられる公知の架橋剤との併用も可能である。
【0028】
前記(c)有機過酸化物の配合量は、前記(a)ゴム成分100質量部に対する前記(c)有機過酸化物の含有量をX質量部、前記(c)有機過酸化物の活性酸素量をY(%)としたとき、
0.4≦X×Y≦200
であることが好ましく、
0.4≦X×Y≦100
であることがより好ましく、
0.4≦X×Y≦80であることが特に好ましい。
X×Yについては、0.6以上であってよく、1以上であってよく、60以下であってよく、40以下であってよく、30以下であってよい。
(c)有機過酸化物の活性酸素量Y(%)は化合物の理論活性酸素量(%)と使用した化合物の純度(%)により算出することができる。理論活性酸素量は下記式(1)で算出される。
理論活性酸素量(%)={(分子中の過酸化結合数×16)/分子量}×100 (1)
【0029】
本発明における(d)架橋助剤の具体例としては、硫黄、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の硫黄化合物、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、m‐フェニレンジマレイミド、トルイレンビスマレイミド等の多官能性単量体類、p−キノンオキシム、p,p‘−ベンゾイルキノンオキシム、o,o‘−ジベンゾイル−p−キノンジオキシム等のオキシム化合物などが例示される。
本発明の(d)架橋助剤においては、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、o,o`−ジベンゾイル−p−キノンジオキシム、m−フェニレンジマレイミドから選択される少なくとも一種であることが好ましい。
【0030】
前記(d)架橋助剤の配合量は、(a)ゴム成分100質量部に対して、下限は、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることがより好ましく、0.1質量部以上であることが更に好ましく、0.2質量部以上であることがより更に好ましく、0.3質量部以上であることが特に好ましく、上限は10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
【0031】
本発明の半導電性ゴム組成物においては、上記(a)、(b)、(c)、(d)成分に加えて、更に、(e)導電剤を添加しても良い。本発明における(e)導電剤としては、例えば第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、過塩素酸塩、カリウム塩、界面活性剤、リチウム塩等が挙げられる。具体的には、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムパークロレート、エチルトリブチルアンモニウムエトサルフェート、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、ラウリルトリメチルアンモウニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、トリオクチルプロピルアンモニウムブロミド、ジメチルアルキルラウリルベタイン、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が挙げられ、少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0032】
前記(e)導電剤の含有量は、前記(a)ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部であることが好ましく、0.2〜8質量部であることが更に好ましく、0.3〜5質量部であることが特に好ましい。
【0033】
本発明で用いられる老化防止剤としては、公知の老化防止剤を使用できるが、例としては、フェニル−α−ナフチルアミン、p−トルエンスルホニルアミド−ジフェニルアミン、4,4−α,α−ジメチルベンジルジフェニルアミン、ジフェニルアミンとアセトンの高温反応生成品、ジフェニルアミンとアセトンの低温反応生成品、ジフェニルアミン,アニリン,アセトンの低温反応品、ジフェニルアミンとジイソブチルレンの反応生成品、オクチル化ジフェニルアミン、置換ジフェニルアミン、アルキル化ジフェニルアミン、ジフェニルアミン誘導体、N,N´−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−イソプロピル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N´−3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ビス1−メチルヘプチル−p−フェニレンジアミン、N,N´−ビス1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン、N−1,3−ジメチルブチル−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン、ジアリル−p−フェニレンジアミンの混合品、フェニル,オクチル−p−フェニレンジアミン、フェニル−α−ナフチルアミンとジフェニル−p−フェニレンジアミンの混合品、2,2,4−トリメチル−1,2ジヒドロキノリンの重合物、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,5−ジ−tert−アミルヒドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、1−オキシ−3−メチル−4−イソプロピルベンゼン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノールと2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノールとオルト−tert−ブチルフェノールの混合物、スチレン化フェノール、アルキル化フェノール、アルキル及びアラルキル置換フェノールの混合品、フェノール誘導体、2,2´−メチレン−ビス−4−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,2´−メチレン−ビス−4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール、2,2´−メチレン−ビス−4−エチル−6−tert−ブチルフェノール、4,4−メチレン−ビス−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、メチレン架橋した多価アルキルフェノール、アルキル化ビスフェノール、p−クレゾールとジシクロペンタジエンのブチル化反応生成物、ポリブチル化ビスフェノールAの混合物、4,4−チオビス−6−tert−ブチル−3−メチルフェノール、4,4´チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4−ブチリデンビス−3−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ビスオクチルチオメチル−O−クレゾール、ヒンダートフェノール、ヒンダートビスフェノール、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイメダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、4と5−メルカプトメチルベンズイミダゾール、4と5−メルカプトメチルベンズイミダゾールの亜鉛塩、ジオクタデシルジスルフィド、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、1,3−ビスジメチルアミノプロピル−2−チオ尿素、トリブチルチオ尿素、ビス2−メチル−4−3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ−5−tert−ブチルフェニルスルフィド、ビス3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルスルフィド、混合ラウリルステアリンチオジプロピオネート、環状アセタール、ポリマーポリオール60%と水添シリカ40%の混合品、ポリエチレンとポリエチレングリコールの2分子構造による特殊ポリエチレングリコール加工品、不活性フィラーとポリマーポリオールの特殊設計混合品、複合系老化防止剤、エノールエーテル、1,2,3−ベンゾトリアゾール、3−N−サリチロイルアミノ−1,2,4−トリアゾル、トリアジン系誘導体複合物、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、N,N´−ビス3−3,5−ジ−tert−4−ヒドロキシフェニルプロピオニルヒドラジン、テトラキス−メチレン−3−3´,5´−ジ−tert−ブチル4´ヒドロキシフェニルプロピオネートメタン等が挙げられる。
【0034】
本発明の半導電性ゴム組成物に対しては、本発明の効果を損なわない限り、上記の他に当該技術分野で行われる各種の受酸剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、難燃剤、顔料、加硫促進剤等を任意で配合することができる。さらに本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている、ゴム、樹脂等のブレンドを行うことも可能である。
【0035】
本発明の半導電性ゴム組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段を用いることができ、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を用いることができる。成型方法としては、金型による圧縮成型、押出成型、インジェクション成型等が例示できるが、本発明の半導電性ゴム組成物を用いた押出成型、インジェクション成型することが好ましい。
【0036】
本発明の半導電性ゴム組成物を用いたゴム材料は、特に製法は限定されないが、架橋して得られることが好ましい。具体的には通常100〜200℃に加熱することで得られ、架橋時間は温度により異なるが、0.5〜300分の間で行われるのが通常である。架橋成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、エアーバス、赤外線あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【0037】
以下において実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
まず、表1〜4に示す各配合剤を120℃の加圧式ニーダーにて混練りし、A練りコンパウンドを作成した。このA練りコンパウンドをオープンロールにて混練りし、B練りコンパウンドを作成した。表中のAとはA練りコンパウンドの原料であり、Bとは、B練りコンパウンドを作成する際に、A練りコンパウンドに配合する原料を示すものである。
【0039】
以下に実施及び比較例で用いた配合剤を示す。
※1 株式会社大阪ソーダ製 エピクロロヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体「EPION−301」
※2 扶桑化学工業株式会社製「プラストロジンJ」
※3 大内新興化学工業株式会社製「ノクラック300」
※4 白石カルシウム株式会社製 軽質炭酸カルシウム「シルバーW」
※5 日本油脂株式会社製「パークミルD(ジクミルパーオキサイド98%品・活性酸素量5.80%)」
※6 日本油脂株式会社製「パークミルD‐40(ジクミルパーオキサイド40%品・活性酸素量2.37%)」
※7 大内新興化学工業株式会社製「バルノックPM」
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
<体積抵抗率>
前記で作成したB練りコンパウンドをシート化したものを160℃で15分プレス加硫した。得られた架橋シートを10℃/15%RH環境下、23℃/50%RH環境下、35℃/85%RH環境下にてそれぞれ状態調整を行った後、JIS K6271に準拠し、二重リング電極を用いた三菱油化株式会社製ハイレスタを用いて、10V印加、1分後の体積抵抗率を測定する。
【0045】
<体積抵抗率の環境変動>
体積抵抗率の測定で得られた10℃/15%RH環境下、35℃/85%RH環境下、それぞれの体積抵抗率をもとに、体積抵抗率の環境変動を求めた。尚、体積抵抗率の環境変動の数値が小さいほど体積抵抗率の環境依存性が小さいことになる。本願の体積抵抗率の環境変動は低温低湿環境下(10℃/15%RH環境下)での体積抵抗率の対数と高温高湿環境下(35℃/85%RH環境下)での体積抵抗率の対数の差より算出され、より具体的には以下の計算式で算出される。
log10(10℃×15%RH体積抵抗率)−log10(35℃×85%RH体積抵抗率)
【0046】
<反発弾性率>
反発弾性率の測定は、JISK6255に従い振子式試験方法で、測定装置「高分子計器株式会社製、卓上型反発弾性試験機」RT−90にて測定を行った。
【0047】
各試験方法より得られた実施例、比較例の試験結果を表5〜表8に示す。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【表7】
【0051】
【表8】
【0052】
表5、表6、表7、表8の実施例及び比較例が示すように、実施例1〜20は、(a)ゴム成分として、オキシラン化合物を重合してなるポリエーテル系重合物、(b)銅化合物、(c)有機過酸化物(d)架橋助剤を含有することで、(d)架橋助剤を含有しなかった比較例1と比較して、反発弾性率が大きくなっている。
また、実施例6と実施例7〜10、実施例11と実施例12〜15、実施例16と実施例17〜20を比較すると、(b)銅化合物を増量することにより、(d)架橋助剤との組み合わせの効果であると考えられるが、環境依存性を低減することができている。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の対象となる半導電性ゴム組成物は、半導電性を維持しつつ、体積抵抗率の環境依存性に優れたものとなっておりレーザープリンタ、コピー機における現像、帯電、転写ロールとして幅広く応用可能である。